JP2731345B2 - 異染混繊糸およびその製造方法 - Google Patents

異染混繊糸およびその製造方法

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JP2731345B2 JP5346616A JP34661693A JP2731345B2 JP 2731345 B2 JP2731345 B2 JP 2731345B2 JP 5346616 A JP5346616 A JP 5346616A JP 34661693 A JP34661693 A JP 34661693A JP 2731345 B2 JP2731345 B2 JP 2731345B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、染色性の異なる複数の
フィラメント糸が混繊された混繊糸に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】染色性の異なる複数の合成繊維フィラメ
ント糸からなる混繊糸は、これを編織した後染色を施す
と染色部分が不均一に現れ杢調の特異な外観が得られる
ため、従来より種々の提案が存在する。
【0003】例えば、特開昭59−204937号公報
には、ポリエチレンテレフタレートとカチオン染料可染
性ポリエステルとを延撚機で混繊し(延撚混繊)、前記
のような混繊糸を得ることが開示されている。また、特
開昭49−19166号公報には塩基性染料可染性ポリ
エステルと酸性染料可染性ポリエステルとを同一の紡糸
口金から紡糸して混繊し(紡糸混繊)、前記のような混
繊糸を得ることが開示されている。
【0004】更に、特開昭3−279428号公報に
は、3000m/分以上の引き取り速度で溶融紡糸され
た沸水収縮率7〜12%のポリエステルフィラメント
と、沸水収縮率5%以下のポリエステルフィラメントと
を紡糸延伸後、一旦捲き取ることなく合糸し交絡処理を
施すことが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
如き従来技術には以下の如き問題点がある。すなはち、
紡糸混繊法は製造設備が固定されるため、多品種小ロッ
ト的な生産にはそぐわず、また各糸条の熱収縮率や伸度
等の物性を細かくコントロールすることが困難なため、
杢の微妙な調整を行うことができない。また、延撚混繊
法は混繊方法としては最も一般的で技術的にも確立され
た方法ではあるが、紡糸後に糸条を一旦パーンに捲き取
る際や延撚時にこれを解舒する際に若干の実撚が糸条に
付与されて各糸条が集束するため、十分に均一な混繊が
行えないという問題点があった。
【0006】更に、特開昭3−279428号公報に開
示された方法によれば、各糸条に実撚を付与することな
く混繊糸を得ることができるが、同公報に開示されたも
のは2種の糸条の熱収縮率差や伸度差が大きいため、得
られた混繊糸は芯鞘状の構造となって一方の糸条のみが
表面に現れ、特に染色性が著しく異なる異ポリマー糸を
混繊すると粗い杢が発生してしまうという欠点があっ
た。
【0007】このため、本出願人は先に提案をした特開
平1−221505号等の紡糸延伸装置を用いた異収縮
混繊糸の製造技術を鋭意研究し、該方法を改良して転用
することにより、極めて均一性に優れた混繊糸が得られ
ることを見出し、本発明に至ったのである。
【0008】すなはち、本発明は前記の如き問題点を解
決するものであって、その目的は、染色性の異なる複数
のフィラメント糸を極めて均一に混繊することにより、
細かな杢を発生することのできる異染混繊糸を提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、染色性の異な
るポリマーからなる複数のフィラメント糸が流体交絡処
理されてなるマルチフィラメント糸において、該複数種
のフィラメント糸の沸水収縮率の差が12%以下、伸
度の差が8.0%以下であり、更に各フィラメント糸は
実質的に無撚であることを特徴とする異染混繊糸であ
り、かかる異染混繊糸は、隣接する紡糸延伸装置に、互
いに染色性の異なるポリマーを供給して複数のフィラメ
ント糸を紡糸し、該複数のフィラメント糸の沸水収縮率
の差が12%以下、伸度の差が8.0%以下となるよう
に延伸、熱処理した後、一旦捲き取ることなく合糸し、
次いで流体交絡処理を施すことにより得られる。
【0010】本発明のフィラメント糸としては、繊維形
成性のポリマーであるポリエステル,ポリアミド,ポリ
オレフィン等を用いることができ、ポリエステルとして
は、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフ
タレート,ポリエチレンオキシベンゾエート,ポリジメ
チルシキロヘキサンテレフタレート,ポリピバロラクト
ン等のホモポリエステルや、これらのポリエステル成分
に第二酸成分として、イソフタル酸,スルホイソフタル
酸を共重合させたものや、第二アルコール成分としてポ
リピレングリコール,ポリエチレングリコールを共重合
させたもの等を用いることができる。
【0011】また、ポリアミドとしては、ナイロン6,
ナイロン66,ナイロン610,ナイロン11,ナイロ
ン12,ビス(パラアミノシクロヘキシル)メタンとド
デカン二酸との縮合体や、これらのポリアミド形成成分
間で共重合させたものや、他のジカルボン酸やジアミン
を共重合させたもの等を用いることができ、ポリオレフ
ィンとしては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のホモ
ポリオレフィンや、少量の第2成分を含むものを用いる
ことができる。
【0012】また、染色性の異なるフィラメント糸の組
み合わせとしては、ポリエステルとポリアミドのように
異なった種類のものを組み合わせても良いが、后加工や
染色処理の容易性から同種のポリマーの共重合体で、染
色性が大きく異なる組み合わせを選ぶことが好ましく、
例えば、ポリエチレンテレフタレートとカチオン可染性
ポリエステルとの組み合わせ等を挙げることができる。
さて、本発明の混繊糸に特徴的なことは、第1に染色性
の異なるポリマーからなる複数のフィラメント糸の物性
が近似している点であり、第2に各フィラメント糸が実
撚によって集束し群を形成することがない状態で混繊さ
れている点にある。
【0013】先ず、各フィラメント糸の物性について説
明する。本発明の混繊糸は、各フィラメント糸の熱収縮
率が極めて近似しており、所謂異収縮混繊糸とは異なる
ものである。例えば、カチオン可染性ポリエステルのよ
うな共重合ポリエステルの場合、ポリエチレンテレフタ
レートと同様の延伸条件や熱履歴、例えばポリエチレン
テレフタレートの場合沸水収縮率が6.0〜8.0%の
範囲となるような条件で製造を行うと、ポリエチレンテ
レフタレートとは1.5%以上の沸水収縮率差を生じて
しまう。本発明では、両糸の条件を夫々設定すること等
によって、沸水収縮率の差を1.2%以下、好ましくは
0.8%以下とする。また、本発明の混繊糸の沸水収縮
率は5〜10%とすることが好ましい。
【0014】更に、本発明の混繊糸は各フィラメント糸
の伸度の差も8.0%以下、好ましくは4.0%以下と
なっており、製品となった際、糸長差によって芯鞘形状
等の一方の糸条だけが表面に現れる構造を呈することの
ないものである。また、各フィラメント糸の総繊度は2
0〜200デニール程度で、各フィラメント糸間の繊度
差は混繊糸の総繊度の1/3以下であることが好まし
い。
【0015】次に、各フィラメント糸の集束性について
説明する。本発明の混繊糸は、各フィラメント糸が実質
的に集束することなく混繊されているものである。これ
は、具体的には各フィラメント糸が実質的に実撚を有し
ないことを意味する。実撚が付与されると、各フィラメ
ント糸は長手方向に沿って連続的に集束せしめられ、こ
のような糸条同志に交絡処理を施してももはや十分に均
一な混繊を行うことはできない。また、かかる実撚の撚
数としては、延伸装置においてパーンを捲き取る際のス
ピンドルの回転により付与されるものや、該パーンを解
舒する際に付与される解舒撚り等の5T/M程度以上の
ものを指す。
【0016】以下、本発明の混繊糸を製造する方法につ
いて説明する。本発明方法で用いる紡糸延伸装置は、所
謂スピンドロー(紡糸直接延伸)装置と呼ばれるもの
で、例えば特開平1−221505号公報等に記載され
たものを用いることができる。
【0017】図1はかかる紡糸延伸装置の概略を示す説
明図である。同図に示す如く、通常の紡糸延伸装置では
複数の紡糸系列(錘)が併設されており、本発明方法で
はかかる2錘を1組として用いる。同図の場合、Sは紡
糸部、Dは延伸部を示し、ペレット貯蔵槽1a,1bに
貯蔵された各フィラメント糸の原料ポリマーは、溶融押
出機2a,2bにより溶融されてギヤポンプ3a,3b
により紡糸口金4a,4bより夫々溶融紡糸され、冷却
装置5a,5bによって冷却個化される。
【0018】次いで、紡糸冷却された糸条は、第1ゴデ
ットローラ6a,6bに引き取られ、第2ゴデットロー
ラ7a,7bとの間で所定の延伸が施される。延伸され
た2つの糸条は右部紡糸系列の第2ゴデットローラ7a
上で合糸され流体交絡ノズル8によって混繊交絡処理さ
れた後、パッケージ9に巻き取られる。
【0019】本発明方法では、前記ペレット貯蔵槽1
a,1bに染色性の異なる原料ポリマーチップ例えば、
右部紡糸系列のペレット貯蔵槽1aにポリエチレンテレ
フタレートチップを、左部紡糸系列のペレット貯蔵槽1
bにカチオン可染性ポリエステルチップを夫々投入す
る。
【0020】そして、紡糸糸条を第1ゴデットローラ6
a,6bにより引き取るとともに、第2ゴデットローラ
7a,7bとの間で延伸がなされるが、かかる条件は例
えば、ポリエチレンテレフタレートとカチオン可染性ポ
リエステルの場合、ポリエチレンテレフタレートの系列
は第1ゴデットローラ6aの速度を、1000〜140
0m/min程度、表面温度を80〜100℃程度、第
2ゴデットローラ6bの速度を、3000〜4500m
/min程度、表面温度を135〜155℃程度とする
ことが好ましく、かかる条件によれば沸水収縮率が7%
前後の延伸糸を得ることができる。また、カチオン可染
性ポリエステルの系列は第1ゴデットローラ6aの速度
を、1200〜1800m/min程度、表面温度を8
0〜100℃程度、第2ゴデットローラ6bの速度を、
3000〜4500m/min程度、表面温度を120
〜140℃程度とすることにより、前記ポリエチレンテ
レフタレート糸と同程度の熱収縮率、伸度を有した糸条
を得ることができる。さらに、流体交絡処理は、糸条の
走行速度を3700m/min程度とした場合、2.0
〜5.0kg/cm3 程度の圧力にて15〜60個/m
の交絡数(フック法)となるように行うことが好まし
い。
【0021】以上の如く得られた混繊糸は、これを必要
に応じて追撚したり、他の糸条と交撚したりして用い、
一方のフィラメント糸のみを染色したり、夫々のフィラ
メント糸を異色に染めたりすることによって、杢調の外
観を得ることができる。
【0022】
【実施例】
(実施例1)固有粘度(η)0.635のポリエチレン
テレフタレートチップと、ポリエチレンテレフタレート
にスルホイソフタル酸を2.5モル%共重合したカチオ
ン可染性ポリエステルチップを用意し、図1に示す紡糸
延伸装置のチップ貯蔵槽に投入し、以下の条件で150
d/48fの異染混繊糸を得た。
【0023】〔ポリエチレンテレフタレート〕 繊度 75d/24f 溶融温度 287℃ 第1ゴデットローラ 表面速度 1150m/min 表面温度 90℃ 第2ゴデットローラ 表面速度 3750m/min 表面温度 130℃
【0024】〔カチオン可染性ポリエステル〕 繊度 75d/24f 溶融温度 287℃ 第1ゴデットローラ 表面速度 1500m/min 表面温度 87℃ 第2ゴデットローラ 表面速度 3750m/min 表面温度 146℃ 交絡処理 30個/m 各フィラメント糸の物性値を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】次いで、かかる混繊糸に300T/Mの追
撚を施した後、これを経緯糸に用いて平織物を製織し、
カチオン染料により灰色に染色したところ、均一で微細
な杢の見られる外観となった。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、従来の異染混繊糸では
得られなかった細かな杢調の外観を有した繊維製品を得
ることができる。また、本発明方法は、かかる異染混繊
糸を極めて効率良く製造することが可能であって、その
有用性は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法で用いる紡糸延伸装置の概略を示す
説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−279428(JP,A) 特開 平4−352835(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 染色性の異なるポリマーからなる複数の
    フィラメント糸が流体交絡処理されてなるマルチフィラ
    メント糸において、該複数種のフィラメント糸の沸水収
    縮率の差が1.2%以下、伸度の差が8.0%以下であ
    り、更に各フィラメント糸は実質的に無撚であることを
    特徴とする異染混繊糸。
  2. 【請求項2】 隣接する紡糸延伸装置に、互いに染色性
    の異なるポリマーを供給して複数のフィラメント糸を紡
    糸し、該複数のフィラメント糸の沸水収縮率の差が1.
    2%以下、伸度の差が8.0%以下となるように延伸、
    熱処理した後、一旦捲き取ることなく合糸し、次いで流
    体交絡処理を施すことを特徴とする異染混繊糸の製造方
    法。
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