JP2674793B2 - 非水電解液電池 - Google Patents

非水電解液電池

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、非水電解液電池に関するものであり、特に
その負極の改良に関するものである。
〔発明の概要〕
本発明は、負極の炭素質材料の特性を規定するととも
に、十分なLiを含んだ正極を用いることで、高容量でし
かもサイクル寿命特性に優れた非水電解液電池を提供し
ようとするものである。
〔従来の技術〕
電子機器の小型化に伴い、電池の高エネルギー密度化
が要求されており、かかる要求に応えるべく,いわゆる
リチウム電池の如き種々の非水電解液電池が提案されて
いる。
しかしながら、例えば負極にリチウム金属を使用した
電池では、特に二次電池とする場合に次のような欠点を
有している。すなわち、 充電に通常5〜10時間を必要とし、急速充電性に劣る
こと、 サイクル寿命が短いこと、 等である。
これらは、いずれもリチウム金属自身に起因するもの
で、充放電の繰り返しに伴って起こるリチウム形態の変
化,デンドライト状リチウムの形成,リチウムの非可逆
的変化等がその原因とされている。
そこで、これらの問題を解決する一手法として、負極
に炭素質材料を用いることが提案されている。これは、
リチウムの炭素層間化合物が電気化学的に容易に形成で
きることを利用したものであり、例えば、炭素を負極と
して非水電解液中で充電を行うと、正極中のリチウムは
電気化学的に負極炭素の層間にドープされる。そして、
リチウムをドープした炭素は、リチウム電極として作用
し、放電に伴ってリチウムは炭素層間から脱ドープさ
れ、正極中に戻る。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、このとき炭素の単位重量当たりの電流容量
(mAH/g)は、リチウムのドープ量によって決まるた
め、このような負極ではリチウムのドープ量を出来る限
り大きくすることが望ましい。(理論的には、炭素原子
6個に対してLi原子1個の割合が上限である。) 従来、負極の炭素質材料としては、例えば特開昭62−
122066号公報,あるいは特開昭62−90863号公報等に開
示されるように、(002)面の面間隔が3.40〜3.60Å程
度,密度が1.70〜2.20g/cm3程度のものが用いられてい
る。
しかしながら、このような炭素質材料ではリチウムの
ドープ量が不十分で、理論値の半分程度に過ぎないのが
実情である。
そこで本発明は、前述の従来の実情に鑑みて提案され
たものであって、リチウムドープ量の大きな炭素質材料
を開発することを目的とし、これによりサイクル寿命特
性に優れるのみならず放電容量も大きな非水電解液電池
を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、上述の目的を達成せんものと長期に亘り研
究を重ねた結果完成されたものであって、フラン樹脂を
1500℃未満で焼成してなり、(002)面の面間隔が3.70
Å以上,真密度が1.70g/cm3未満であり、且つ示差熱分
析で700℃以上に発熱ピークを有しない炭素質材料より
なる負極と、負極炭素質材料1g当たり250mAH以上の充放
電容量相当分のLiを含んだ正極と、非水電解液とを有す
ることを特徴とするものである。
負極に使用される炭素質材料の(002)面の面間隔が
3.70Å未満であると、放電容量は減少し、サイクル寿命
も従来のものと同程度にまで劣化する。
同様に、真密度が1.70g/cm3を越えても、放電容量の
劣化やサイクル寿命の劣化が見られる。
また、種々の実験を重ねたところ、示差熱分析の結果
が電池特性に大きく影響し、700℃以上に発熱ピークを
有しないことが必要であることがわかった。
かかる特性を有する炭素質材料としては、フラン樹脂
を1500℃未満で焼成して炭素化したものが挙げられる。
フラン樹脂(例えばフルフリルアルコールの重合体)を
原料に用いても、焼成の際の温度を1500℃以上(例えば
1500℃)とすると、示差熱分析において700℃以上(743
℃)に発熱ピークが現れ、(002)面の面間隔も3.69Å
となり、本発明で規定するところの炭素質材料は得られ
ない。
出発原料となるフラン樹脂は、フルフリルアルコール
あるいはフルフラールのホモポリマー又はコポリマーよ
りなるもので、具体的にはフルフラール+フェノール、
フルフリルアルコール+ジメチロール尿素、フルフリル
アルコール多量体、フルフリルアルコール+ホルムアル
デヒド、フルフラール+ケトン類等よりなる重合体が挙
げられる。
一方、正極は十分な量のLiを含んでいることが必要
で、Liの量が充放電容量相当で負極炭素質材料1g当たり
250mAH未満であると、高容量を確保することが難しい。
逆に言えば、本発明は、このような大容量の電池に適用
したときに効果が大きく、負極炭素質材料1g当たり250m
AH以上の充放電容量相当分のLiを含むという規定は、本
発明が対象とする電池を明示したものである。本発明で
規定する負極炭素質材料を用いることで、放電容量が25
0mAH/g以上と大きな場合にも、良好なサイクル特性を示
す。
したがって、正極材料としては一般式LiMO2(ただ
し、MはCo,Niの少なくとも1種を表す。)で表される
複合金属酸化物やLiを含んだ層間化合物等が好適で、特
にLiCoO2を使用した場合に良好な特性を発揮する。
非水電解液は、有機溶媒と電解質とを適宜組み合わせ
て調製されるが、これら有機溶媒や電解質としてはこの
種の電池に用いられるものであればいずれも使用可能で
ある。
例示するならば、有機溶媒としてはプロピレンカーボ
ネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタ
ン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テ
トラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,
3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジ
エチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセ
トニトリル、プロピオニトリル、アニソール等である。
電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、Li
B(C6H5、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li等であ
る。
〔作用〕
出発材料の選択、焼成炭化プロセスによって得られる
炭素質材料の結晶構造、微細構造は多様に変化する。
このような多様な構造の炭素質材料の中で、非水電解
液電池系の負極材料として、どのような構造、ないし物
性を満たすものが好適であるかは、全く不明であったと
言っても過言ではない。
このような状況の中、前記電池系において好適な炭素
質材料の構造、物性等の条件を明らかにしたものが本発
明である。
少なくとも、本発明で規定される条件を有する炭素質
材料が、本発明に係る電池系において試みられた例は過
去にはない。
以下、本発明の基本的な考え方について説明する。
リチウムをドープした炭素は、その層間距離〔(00
2)面の面間隔〕d002が3.70Åになることが知られてい
る。したがって、従来使用されてきた炭素質材料のよう
に、d002が3.40〜3.60Åであると、リチウムがドープさ
れた場合に層間距離が拡大するものと考えられる。すな
わち、d002<3.70Åの炭素質材料では、層間を拡げなけ
ればならない分だけリチウムのドープが困難になるもの
と考えられ、これによってドープ量が少なくなるものと
考えられる。
真密度ρは、前記層間距離と密接な関係にあり、ρ>
1.70g/cm3となると前述の層間距離を確保することが難
しくなり、やはりドープ量が減少する。
黒鉛構造に近いある程度の層状構造(不完全な黒鉛構
造であったとしても)を有し、黒鉛構造をとり易い炭
素,すなわち易黒鉛化炭素質材料では、Liのインターカ
レート(ドープ)によって面間隔d002は、3.72Åとな
る。
このような易黒鉛化炭素質材料では、焼成温度を高く
して黒鉛構造を発達させると、面間隔d002は、黒鉛のそ
れ(=3.35Å)に近づく。
これらの制約から、黒鉛類似構造の炭素、すなわち易
黒鉛化炭素では、適正な面間隔d002は3.35≦d002≦3.72
となる。Liのドープを円滑に行うには、面間隔d002が3.
72Åに近いほど良いが、面間隔d002をある程度広げよう
とすると焼成温度を低くする必要があり、その結果炭化
が不十分となり電極としての性能(ドープ体の安定性)
が悪くなる。
ドープ体の安定性を考慮すると、炭化を十分に進行さ
せて、密度ρを大きく、すなわちρの下限を1.70、好ま
しくは1.80、更に好ましくは1.86と大きく(したがって
面間隔d002を小さく)する必要がある。
しかしながら、この場合には、面間隔d002を3.72Åよ
りもかなり小さくせざるを得ないため、Liのドープ時に
面間隔が広がるという現象が避けられず、ドープ反応の
円滑な進行が阻害されるために、Liのドープ量をあまり
多くすることができない。
このように、面間隔d002が大きく且つ炭化が十分な炭
素は、易黒鉛化炭素質材料では得られない。これに対し
て、本発明は、空気気流中における示差熱分析で700℃
以上に発熱ピークのない炭素質材料が両者を満足し、大
きなドープ量が可能であるという新規事実に基づくもの
である。
例えば、フルフリルアルコール樹脂を焼成して得られ
る炭素は、このような炭素質材料の一例であるが、この
炭素質材料は、高温で焼成しても黒鉛構造をとらず、例
えば1200℃での焼成体の面間隔d002は3.70Å以上であ
り、それ故、易黒鉛化炭素質材料(コークス類など)よ
りも優れたドープ能力を有し、炭化も十分で、長期サイ
クルに亘り性能が安定なものとなる。
この炭素質材料は、構造的には乱層構造をとり、先の
易黒鉛化炭素質材料とは異なって、黒鉛構造には至らな
い全く異種の炭素質材料(難黒鉛化炭素質材料)であ
る。
炭素には、大きく分けて、無定形炭素、黒鉛、ダイヤ
モンドがあり、ダイヤモンドを除いて考えると、黒鉛構
造をとり易いもの(易黒鉛化炭素)と、黒鉛構造をとり
難いもの(難黒鉛化炭素)とがある。易黒鉛化炭素は、
焼成温度を高くしていくと黒鉛構造に限りなく近づくの
に対して、難黒鉛化炭素は決して黒鉛構造には至らな
い。
なお、炭素を負極とする電池は、リチウム金属を負極
とする電池よりも充電時間が短くて済むが、本発明の電
池でもその特徴は維持される。
〔実施例〕
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
実施例 フルフリルアルコール500重量部,85%リン酸2.5重量
部,水50重量部を混合したものを湯浴上で5時間加熱
し、粘稠な重合体を得た。
次に、反応系に1規定NaOHを加えてpH5まで中和した
後、残留水及び未反応アルコールを真空蒸溜で除去し
た。
さらに、得られたポリマーを500℃で5時間窒素気流
中で炭化した後、さらに1100℃まで昇温し、1時間熱処
理した。
このようにして得られた炭素は、乱層構造を示し、X
線回折の結果(002)面の面間隔d002は3.80Åであっ
た。また、真密度ρは1.55g/cm3であった。
ここで、d002の結果は、原子散乱因子(atomic scatt
ering factor)、ローレンツ因子(Lorentz factor)な
どによる補正を行わず、ピーク位置の回折線に接線を引
き、その交点を2θ(回折角)とする簡便法によって求
めた。(第5図参照) また、真密度は、200メッシュ以下に粉砕した試料に
対して、CCl4、CHBr3、ベンゼンの混合液を用いて浮沈
法によって求めた。
更に、空気気流中における示差熱分析を行ったとこ
ろ、発熱ピークは671℃に現れた。
なお、示差熱分析の条件は、200メッシュ以下に粉砕
した試料10mgに対し、空気流量100ml/分、昇温速度10℃
/分とした。
この炭素を用いて、次のような電池を構成した。
先ず、炭素は乳鉢にて粉砕し、篩により分級して390
メッシュ以下のものを使用した。この分級した炭素90重
量部に対して、結合剤としてポリフッ化ビニリデン10重
量部を加え、ジメチルホルムアミドを用いてペースト状
にし、ステンレス網に塗布した後、4t/cm2の圧力で圧着
した。乾燥後、適当な形に打ち抜き負極として使用し
た。
一方、正極は次のようにして作成した。すなわちLiNi
0.2Co0.8O291重量部,グラファイト6重量部,ポリテト
ラフルオロエチレン樹脂3重量部からなる混合物を成形
型に入れ、2t/cm2の圧力でコンプレッション成形し、円
板状の電極とした。
このようにして得られた正極及び負極を用い、電解液
としてプロピレンカーボネート−ジメトキシエタン混合
溶媒(容量比で1:1)に1モル/dm3のLiClO4を加えたも
のを使用し、コイン型電池を作製して充放電試験を行っ
た。
なお、電池の活物質使用量は、電気化学当量として正
極>>負極となるようにし、電池容量が負極規制となる
ようにした。また、充電,放電とも電流密度0.53mA/cm2
で行った。
サイクル試験の結果を第1図に、放電曲線を第2図に
それぞれ示す。サイクル試験は、320mAH/gの充電を行
い、放電は1.5Vでカットして行った。
その結果、本実施例電池では、利用率(放電量/充電
量×100)が97%で、60サイクルを越えても劣化しない
ことがわかった。
そこでさらに、充電量を350mAH/gとしてサイクル寿命
を調べた。結果を第3図に示す。
この場合にも利用率は95%と良好で、50サイクル以降
で若干の容量劣化が見られるものの、優れたサイクル特
性を示した。
比較例1 従来例として、石油ピッチ系コークスを用いた電池に
ついても比較のためにテストした。
(002)面の面間隔d002が3.46Å,真密度ρが2.03g/c
m3のコークスを使用し、他は先の実施例と同様の方法で
電池を作製した。
この炭素の空気気流中における示差熱分析の発熱ピー
クは745℃に現れた。
得られた電池について、実施例と同様にサイクル試験
を行ったが、本例では充電量216mAH/g,1.5Vで放電カッ
トとした。結果を第4図に示す。
本例の電池は、第4図中曲線Aで示すように、利用率
は97%と高かったが、サイクル寿命は短く、20サイクル
あたりから放電容量が低下し始めた。
さらに充電量を247mAH/gと大きくすると、第4図中曲
線Bのようになり、最高到達利用率89%,サイクル寿命
は2〜3サイクル目以降で劣化が激しくなった。
比較例2 熱処理温度1100℃を1500℃とし、他は実施例と同様に
炭素を得た。得られた炭素の形態的パラメータは、面間
隔d002=3.69Å,真密度ρ=1.60g/cm3であった。
また、空気気流中における示差熱分析の発熱ピークは
679℃および743℃に現れた。
得られた炭素を用い、他は実施例と同様の方法で電池
を作製した。
この電池に対し、実施例と同様のサイクル試験(320m
AH/g充電,1.5V放電カット)を行ったところ、第1図に
示すように、利用率93%程度で、15サイクル以降で劣化
が始まった。
これら実施例及び比較例の結果に見られるように、本
発明を適用した電池では、放電容量を大幅に改善するこ
とができ、しかもサイクル劣化は従来のものより極めて
小さい。
また、特に実施例と比較例2を比較することからわか
るように、同じ原料から焼成して得られた炭素であって
も、炭素の層間距離が小さくなると放電容量は減少し、
サイクル寿命も従来例程度にまで劣化した。
〔発明の効果〕
以上の説明からも明らかなように、本発明においては
負極に使用する炭素質材料の形態的パラメータを所定の
範囲に規定しているので、放電容量が大きく、しかもサ
イクル寿命が長い非水電解液電池を提供することが可能
である。
また、本発明の電池は、炭素質材料を負極としている
ので、充電時間が短いという特徴も維持され、この点か
らも実用性に富んだ電池の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明を適用した実施例電池のサイクル寿命特
性を比較例のそれと比べて示す特性図であり、第2図は
実施例電池の放電曲線を示す特性図、第3図は350mAH/g
充電としたときのサイクル寿命特性を示す特性図であ
る。 第4図は石油系ピッチコークスを使用した電池のサイク
ル寿命特性を示す特性図である。 第5図は簡便法による回折角の求め方を説明する特性図
である。
フロントページの続き (72)発明者 小丸 篤雄 福島県郡山市日和田町高倉字下杉下1― 1 株式会社ソニー・エナジー・テック 郡山工場内 (56)参考文献 特開 昭62−90863(JP,A) 特開 昭63−69155(JP,A) 特開 昭59−64511(JP,A) 特開 昭49−109284(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フラン樹脂を1500℃未満で焼成してなり、
    (002)面の面間隔が3.70Å以上,真密度が1.70g/cm3
    満であり、且つ示差熱分析で700℃以上に発熱ピークを
    有しない炭素質材料よりなる負極と、 負極炭素質材料1g当たり250mAH以上の充放電容量相当分
    のLiを含んだ正極と、 非水電解液とを有してなる非水電解液電池。
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