JP2550644B2 - 環式モノペルオキシケタール - Google Patents

環式モノペルオキシケタール

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JP2550644B2 JP63054753A JP5475388A JP2550644B2 JP 2550644 B2 JP2550644 B2 JP 2550644B2 JP 63054753 A JP63054753 A JP 63054753A JP 5475388 A JP5475388 A JP 5475388A JP 2550644 B2 JP2550644 B2 JP 2550644B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、ラジカル反応開始剤として有用な環式モノ
ペルオキシケタール、さらに詳しくは、不飽和単量体の
重合開始剤および不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化
剤として有用な環式モノペルオキシケタールに関する。
(従来の技術) 有機過酸化物には、ジアシルペルオキシド、ペルオキ
シエステル、ジペルオキシケタール、ジアルキルペルオ
キシド、など各種タイプのものがあり、30ないし150℃
におげる不飽和単量体の重合開始剤および不飽和ポリエ
ステル樹脂組成物の硬化剤として、また、150ないし200
℃におけるポリオレフィンの架橋剤として広く利用され
ている。重合開始剤および硬化剤は、不飽和単量体のラ
ジカル付加反応を開始し、引き続く連鎖反応によって、
前者は通常のポリマーを、後者は編目構造を有するポリ
マーを与えるため、ラジカル反応開始剤の一種類である
とみなされる。これに反して、架橋剤は、通常、ポリオ
レフィンからの水素引き抜き反応によって架橋ポリマー
を与えるもので、前二者とは、機能的に全く異なり、ラ
ジカル連鎖鎖長さも非常に短いのが一般的である。最近
では、高分子有機材料の高性能化、高機能化に基づく差
別化、高付加価値製品の開発が盛んで、それに伴いラジ
カル反応開始剤に対する要望も多様化・高度化してい
る。このような製品の差別化や高付加価値化は、各種無
機化合物や複雑な構造の有機化合物からなる各種高分子
添加剤・改質剤を用いて行なうのが一般的である。従っ
てこれらの添加剤・改質剤の存在下において安定で、反
応時に良好な活性を発揮できるラジカル反応開始剤が要
望されている。また、塗料、接着剤などのコーディング
工場の分野でも、各種反応性官能基を有するモノマーの
共重合が行なわれており、これらの官能基と反応しない
重合開始剤が要望されている。このようにラジカル反応
開始剤の複合系での使用は増加している。
有機過酸化物の中で、カルボニル基を有するジアシル
ペルオキシドおよびペルオキシエステルは、例えば、酸
性または塩基性を示す無機化合物、ならびにヒドロキシ
ル基、アミノ基、スルフィド基などの官能基を有する有
機化合物との反応性に富んでいるため、複合系での使用
には好ましくない。従って複合系での用途には、カルボ
ニル基を含まないジペルオキシケタールやジアルキルペ
ルオキシドが好ましい。このような例としては、例え
ば、ネオペンチル骨格を有するジ(t−アルキルペルオ
キシ)ケタールがラジカル反応開始剤として優れている
という報告(特公昭56−29681号公報)や、モノペルオ
キシケタールがエチレンとα−オレフィンとのコポリマ
ーの架橋に有用であるという報告(特公昭43−1086号公
報)がある。
(発明が解決しようとする課題) ジペルオキシケタールおよびジアルキルペルオキシド
は化学的には安定であるが、分解温度が高いという欠点
を有している。特にジアルキルペルオキシドは、通常12
0℃以上の高温度で使用されており、ペルオキシエステ
ルと同程度の低温度での分解活性を持つものが望まれて
いる。また通常、ジペルオキシケタールおよびジアルキ
ルペルオキシドは、水素引き抜き反応を起こし易く、架
橋剤として有用なものである。重合開始剤および硬化剤
として用いられるラジカル反応開始剤は、本来、ラジカ
ル付加反応を開始するためのものであり、前述の水素引
き抜き反応が多く起こることは好ましくない。例えばコ
ーティング工業の分野では、複合系において安定である
だけでなく、分岐および架橋などの副反応が少なく、官
能基を効果的にポリマーに導入できるような重合開始剤
が望まれている。またジペルオキシケタールは2官能ペ
ルオキシドの1種で、分子量分布を広くする要因を有し
ている。さらにジペルオキシケタールにけおる同一炭素
原子上の2個のt−アルキルペルオキシル基は、炭素数
の増加により不飽和ポリエステル樹脂への相溶性を著し
く低下させ、不完全硬化に至ることが多々ある。さらに
また、モノペルオキシケタールであっても、1,1−シメ
チルエチルペルオキシケタールの場合には、他のものに
比較して非常に大きな水素引き抜き性能を有しているた
め好ましくない。このようなことから、本発明の環式モ
ノペルオキシケタールは、ジペルオキシケタールおよび
ジアルキルペルオキシドの改良に係るものであると言え
る。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、前述の欠点を解決したラジカル反応開
始剤を求めて鋭意研究を重ねた結果、次に示す特定構造
の環式モノペルオキシケタールが、安定性および分解特
性において優れた性質を有していることを見出し本発明
を完成するに至った。すなわち、本発明は一般式、 (式中、R1、R2およびR3は水素または炭素数1ないし3
のアルキル基を、R4は炭素数1ないし5のアルキル基
を、ならびにR5は炭素数1ないし3のアルキル基を示
し、さらに、R6およびR7は、分離している場合には、R6
は炭素数1ないし3のアルキル基で、R7は炭素数2ない
し10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基
を示し、結合している場合には、シクロアルカン構造を
示す。)で示される環式モノペルオキシケタールに関す
る。本発明で言うラジカル反応開始剤は、ラジカル付加
反応を主体とする不飽和単量体の重合開始剤および不飽
和ポリエステル樹脂組成物の硬化剤として利用でき、水
素引き抜き反応を主体とするポリオレフィンの架橋剤と
は異なる。
本発明の環式モノペルオキシケタールは、一般のペル
オキシケタールの公知の製造方法(例えば、米国特許第
3576826号明細書または米国特許第3468962号明細書に記
載)に従って製造できる。すなわち酸性触媒の存在下に
一般式 (式中、R1、R2、R3およびR4は前述と同じである。) で示されるジアルキルケタール、または一般式 (式中、R1、R2、R3およびR4は前述と同じである。) で示されるビニルエーテルと一般式 (式中、R5、R6およびR7は前述と同じ。) で示される第三級アルキルヒドロペルオキシドとの反
応、または一般式 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は前述と同じ
である。) で示されるジペルオキシケタールと一般式 R4−O−H (VI) (式中、R4ほ前述と同じである。) で示されるアルコールとの反応によって得られる。本発
明に用いられるケトンのアセタールは、公知の方法、す
なわち、酸性触媒存在下におけるケトンとアルコールと
の反応によって得られる。具体的には、例えば、シクロ
ヘキサノンまたは3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン
のジメチル、ジエチル、ジプロヒル、ジブチルまたはジ
ペンチルアセタールがある。また、本発明に用いられる
ビニルエーテルは、前記アセタールの脱アルコール反応
によって得られる。
本発明に用いられる第三級アルキルヒドロペルオキシ
ドの具体例としては、例えば、1,1−ジメチルエチルヒ
ドロペルオキシド、1,1−ジメチルプロピルピドロペル
オキシド、1,1−ジメチルブチルヒドロペルオキシド、
1,1,2−トリメチルプロピルヒドロペルオキシド、1,1,
3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、1−メ
チル−1−フェニルエチルヒドロペルオキシド、ピナン
ヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド
および1−メチル(p−イソプロピルフェニル)エチル
ヒドロペルオキシドがある。また、本発明に用いられる
ジペルオキシケタールは、公知の方法、すなわち、一般
には酸性触媒の存在下において酸に比較的安定なアルキ
ルヒドロペルオキシドとケトンとの反応によって得ら
れ、具体例としては、例えば、1,1−ジメチルエチルヒ
ドロペルオキシド、1,1−ジメチルプロピルヒドロペル
オキシド、1,1−ジメチルブチルヒドロペルオキシドと
シクロヘキサノンまたは3,3,5−トリメチルシクロヘキ
サノンとのジペルオキシケタールがある。さらにアルコ
ールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノ
ールおよびペンタノールなどがある。
前述のようにして得られた本発明の環式モノペルオキ
シケタールを具体例として示すと、例えば、1−メトキ
シ−1−(1,1−ジメチルプロピルペルオキシ)シクロ
ヘキサン、1−メトキシ−1−(1,1−ジメチルブチル
ペルオキシ)シクロヘキサン、1−メトキシ−1−(1,
1,2−トリメチルプロピルペルオキシ)シクロヘキサ
ン、1−メトキシ−1−(1,1,3,3−テトラメチルブチ
ルペルオキシ)シクロヘキサン、1−メトキシ−1−
(1−メチル−1−フェニルエチルベルオキシ)シクロ
ヘキサン、1−ブトキシ−1−(1,1,3,3−テトラメチ
ルブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1−メトキシ−
1−p−メンタンペルオキシシクロヘキサン、1−メト
キシ−1−ピナンペルオキシシクロヘキサン、1−メト
キシ−1−(1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキ
シ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1−ブトキ
シ−1−p−メンタンペルオキシ−3,3,5−トリメチル
シクロヘキサン、1−ブトキシ−1−ピナンペルオキシ
−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1−ブトキシ−
1−(1−メチル−1−フェニルエチルペルオキシ)−
3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどがある。
本発明の環式モノペルオキシケタールは、赤外線吸収
スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、活性酸素量および
屈折率によって化学構造が決定され、この純度は、ガス
クロマトグラフィーおよび活性酸素量によって求められ
た。また、熱分解挙動は、クメン中での分解速度定数お
よび半減期によって求められた。その結果100℃におけ
る半減期は、0.5ないし3.0時間の範囲内にあり、従来の
ラジカル反応開始剤である相当するジ(t−アルキルペ
ルオキシ)ケタールよりも短時間であり、より低温度に
おいて分解するものであることが分かった。
本発明の環式モノペルオキシケタールの製造に用いら
れる酸性触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸などの無機
酸およびトリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸な
どの有機酸があり、シリカ、アルミナ、酸性白土のよう
な無機固体酸も使用できる。また、陽イオン交換樹脂の
ようにスルホン酸基あるいは、カルボキシル基のような
酸性基を有するポリマーも触媒として利用できる。これ
らの酸性触媒の使用量は、原料に用いるジアルキルケタ
ール、ビニルエーテルまたはジペルオキシケタールに対
し0.01ないし10重量%の範囲である。
本発明の環式モノペルオキシケタールの製造には、溶
媒を使用しなくてもよいが、反応を円滑に進めるには不
活性な触媒を用いることが望ましい。具体的には、例え
ば、炭素数3ないし12の脂肪族および芳香族炭化水素、
炭素数1ないし12の有機基を含むカルボン酸エステル、
カルボン酸アミド、スルホキシド、エーテルなど通常溶
媒として用いられているものが使用できる。反応は−30
ないし70℃の温度で行うことができ、原料としてジアル
キルケタールまたはジペルオキシケタールを用いる場合
には、減圧下に行なって生成するアルコールまたはヒド
ロペルオキシドを反応系外に除去してもよい。
本発明の環式モノペルオキシケタールは、不飽和単量
体の重合開始剤として利用できる。その場合の不飽和単
量体としては、エチレンン、プロピレン、スチレン、ビ
ニルトルエン、ビニルビリジン、ビニルフェノール、ジ
ビニルベンゼンおよひα−メチルスチレンのようなオレ
フィン;1,3−ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレ
ンのような共役オレフィン、酢酸ビニル、ブロピオン酸
ビニル、ラウリン酸ビニル、安息香酸ビニルおよび炭酸
ジビニルのようなビニルエステル;酢酸アリル、炭酸ジ
アリル、安息香酸アリルおよびフタル酸ジアリルのよう
なアリルエステル;アクリロニトリルおよびメタクリロ
ニトリルのような不飽和共役ニトリル;アクリル酸およ
びメタクリル酸ならびにこれらのエステルおよびアミ
ド、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、
エチル、n−ブチル、2−エチルヘキシル、グリシジル
およびヒドロキシエチルエステル;アクリルアミドおよ
びメタクリルアミド;無水マレイン酸、マレイン酸およ
びフマル酸ならびにこれらのエステル;塩化ビニル、臭
化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化
ビニリデンのようなビニルハロゲン化物ならびにビニリ
デンハロゲン化物;トリフルオロエチレン、テトラフル
オロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクウロ
ルトリフルオロエチレンのようなペルハロオレフィン;
メチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、ア
リルグリシジルエーテルのようなビニルエーテルならび
にアリルエーテル;アクロレインならびにこれらの混合
物が包合される。
重合開始剤として用いる場合の重合は、30ないし150
℃の温度で、不飽和単量体に対して0.005ないし10重量
%の重合開始剤を使用することによって、塊状重合、溶
液重合、乳化または懸濁重合技術を含む機知の一般重合
技術により、バッチ式、連続式または不飽和単量体およ
び/または重合開始剤を添加する方法などによって行な
うことができる。さらにまた、本発明に、公知の高分子
添加剤、改質剤、例えば重合調整剤、難燃剤、各種充填
剤、耐衝撃性強化剤、補強剤、着色剤、高分子の電気的
特性・熱的特性・光学特性・磁気特性・粘着特性・摺動
特性などの付与剤を用いて実施することができる。
本発明を重合開始剤として用いる場合には、環式モノ
ペルオキシケタールと併用して、公知の他の重合開始剤
を併用して用いることができる。これらは、そのまま、
または通常の溶剤で希釈した溶液として、あるいは水で
乳化または分散したエマルジョンまたはサスペンジョン
の形態として用いることができる。
本発明の環式モノペルオキシケタールは不飽和ポリエ
ステル樹脂組成物の硬化剤としても利用できる。この樹
脂組成物には、高分子添加剤・改質剤、例えば、炭酸カ
ルシウム、シリカ、クレー、アルミナ、酸化チタン、亜
鉛華、アスベスト、カーボンブラック、ガラス繊維、炭
素繊維、着色剤を含むことができる。
好ましい樹脂組成物は、ポリエステル成分としてプロ
ピレングリコールと無水マレイン酸および無水フタル酸
のエステル化物、また不飽和単量体成分としてスチレン
がある。
硬化剤として用いる場合の不飽和ポリエステル樹脂組
成物の硬化は、20ないし250℃の温度で、不飽和ポリエ
ステルに対して0.05ないし5.0重量%の硬化剤が通常用
いられ、他の有機過酸化物やアゾ化合物を併用でき、さ
らにアミン、金属塩などの促進剤と組み合わせて使用す
ることもできる。
(作 用〕 本発明の環式モノペルオキシケタールが、公知のペル
オキシケタールに比べて優れていることは、分解速度お
よび生成物からの推定により次のような作用機構に基づ
くものとして説明できる。すなわち、環式モノペルオキ
シケタールをクメン溶媒中で熱分解させると、(1)式
で示されるように、まず溶媒かご内でのO−O結合の可
逆的な結合開裂が起こり、引き続き、アルキルラジカル
XIIIおよびIXおよびアルコキシラジカルVIIからなる3
種のラジカル活性種と、ケトンを生成する。
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は前述と同じ
であるが、R7がフェニルのときVIIおよびIXにおいてR6
とR7は交替する)。
前記3種の活性種は、次式(2)、(3)、(4)お
よび(5)式のように作用する。
(ただし、mは0または2である) すなわち、VIIは(2)式のようにβ−開裂して、IX
とケトンを生成し、また、VII、VIIIおよはIXは、
(3)、(4)および(5)式のようにクメンから水素
原子を引き抜いて、それぞれ相当するアルコール、エス
テル、アルカンとクミルラジカルを生成する。
前記環式モノペルオキシケタールが分解する際に不飽
和単量体が存在するとき、VII、VIIIおよびIXのラジカ
ル活性種は、次に示す(6)式のように優先して二重結
合に付加して重合を開始する。しかしながら、アルコキ
シラジカルVIIは、不飽和単量体、例えばメチルメタク
リレートの場合には、(7)式のような水素引き抜き反
応が起こり、ポリマー物性に好ましくない副反応を併発
する。さらに、IXは生成したポリマーからも、例えば、
(8)式のような反応を起こし、分岐したポリマーおよ
び架橋したポリマーを生成させる。
一般にこのようなアルオキシラジカルによる水素引き
抜き反応は、不飽和単量体の重合には好ましくないもの
と思われている〔例えば、ザ・ジャーナル・オブ・マク
ロモレキュラー・サイエンス・A・ケミストリー(Jour
nal of Macromolecular Science.Chemitry),第17巻,
第337頁,1982年の文献に記載。〕。
本発明の環式モノペルオキシケタールは、環式構造を
有しているため、(1)式の分解において環開裂も同時
に起こり、このためアルコキシラジカルの生成量が少な
いものである。また、1,1−ジメチルエチルペルオキシ
ケタール(R5=R6=R7=CH3)以外のものについては、
t−アルコキシラジカルのβ−開裂((1)および
(2)式)が比較的容易に起こり、アルキルラジカルを
生じ易いため、特に好ましいものである。また、溶媒か
ご内でのO−O結合開裂が可逆的平衡関係にあること
は、媒体粘度の増加、例えば、重合の後期においても、
溶媒かご内で生成したラジカル対が不活性化することな
く、もとのペルオキシケタールを再生するため、高い開
始剤効率を維持することができる。
これに対して、ジペルオキシケタール(V)が分解す
る場合には、(9)式に従って中間体としてペルオキシ
エステルのラジカル活性種(X)を生成するため複雑と
なる。
Xは化学的に不安定なペルオキシエステルであり、イ
オン的にも分解し易く、ポリマー物性に好ましくない不
活性物質を生成することも多々あり、さらに(10)式の
ように分解してビラジカルを生成し、分子量分布を広く
する原因にもなる。
(発明の効果) 本発明の環式モノペルオキシケタールは、前述の作用
機構に基づいて構成されているため、以下に示すいくつ
かの利点を有している。
第1に、新規な環式モノペルオキシケタールである。
このペルオキシケタールは、化学的に安定であるため、
高分子添加剤・改質剤の存在下にも効率よく使用でき
る。第2は、相当するビスペルオキシケタールに比較し
て、分解温度が低くなるため、低温度で使用でき、さら
に短時間にラジカル活性種を多量に発生させて重合工程
のサイクルアップに役立てることができる。第3図は、
高粘度媒体、例えば、重合の後期においても高い開始剤
効率を発現できる。第4は、生成するラジカル活性種に
はアルキルラジカルの割合が高く、水素引き抜きなど重
合に悪影響を及ぼすものが少ない。ジペルオキシケター
ルと比較して、中間にペルオキシエステルを生成するこ
とがないため、分子量が小さく、かつ分子量分布の狭い
ポリマーを得ることができる。このことは、共重合によ
って官能基をポリマー中に導入する場合に好ましいこと
である。第5には、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬
化する場合、ポットライプが長く、かつ樹脂への相溶性
のよい硬化剤を提供することができる。
次に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明
は、これによって限定されるものではない。
参考例1 〔1−メトキシ−1−(1,1−ジメチルプロピルペルオ
キシ)シクロヘキサンの製造〕 ジメチルスルホキシド15.9gとp−トルエンスルホン
酸1.2gの混合駅を2℃に保ち、シクロヘキサノンジメチ
ルアセタール29.1gと1,1−ジメチルプロピルヒドロペル
オキシド21.1gの混合液を滴下した。この時の酸濃度
は、0.1mol/kg反応混合液であった。撹拌下に20℃で3
時間かけて反応を完結させた。反応混合液に20mlの石油
エーテルを加え、10mlの水で、次いで50mlの5%NaOH水
溶液で、さらに20mlの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリ
ウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去した結果、純度86
%の1−メトキシ−1−(1,1−ジメチルプロピルペル
オキシ)シクロヘキサン33.8g(収率67%)を得た。こ
のものを0.1mmHgにおいて43−45℃で蒸溜することによ
り、純度98%の前記ペルオキシケタールを得た。
本発明のペルオキシケタールであることの確認は、活
性酸素量、元素分析、屈折率、IRおよびNMRスペクトル
により行い、その構造を次のデータに基づいて確認し
た。
活性酸素量7.22%(理論活性酸素量7.40%)、元素分
析C:65.35%,H:11.20%(計算値C:66.63%,H:11.18
%)、屈折率nD 20:1.4477、IRスペクトル:1100cm-1(−
O−Me)、NMRスペクル:δ3.3(S,−O−CH3,3H),δ
1.20(S,−C(CH32,6H),δ0.90(t,CH2−CH3,3
H)。
実施例2 〔1−メトキシ−1−(1.1−ジメチルブチルペルオキ
シ)シクロヘキサンの製造〕 ジメチルスルホキシド16.0gとp−トルエンスルホン
酸1.3gの混合液を20℃に保ち、シクロヘキサノンジメチ
ルアセタール28.8gと1,1−ジメチルブチルヒドロペルオ
キシド23.8gの混合液を滴下した。この時の酸濃度は、
0.1mol/kg反応混合液であった。以下参考例1と同様に
行なった結果、純度81%の1−メトキシ−1−(1,1−
ジメチルブチルペルオキシ)シクロヘキサン39.0g(収
率69%)を得た。このものを0.1mmHgにおいて47−50℃
で蒸溜することにより、純度97%の前記ペルオキシケタ
ールを得た。
本発明のペルオキシケタールであることの確認は、活
性酸素量、元素分析、屈折率、IRおよびNMRスペクトル
により行い、その構造を次のデータに基づいて確認し
た。
活性酸素量6.74%(理論活性酸素量6.95%)、元素分
析C:66.52%,H:11,25%(計算値C:67.79%,H%11.38
%)、屈折率nD 20:1.4486、IRスペクトル:1100cm-1(−
O−Me)、NMRスペクトル:δ3.3(S,−O−CH3,3H),
δ1.25(S,−C(CH32-,6H),δ0.95(t,CH2−CH3,3
H)。
実施例3 〔1−メトキシ−1−(1,1,3,3−テトラメチルブチル
ペルオキシ)シクロヘキサンの製造〕 ジメチルスルホキシド16.1gとp−トルエンスルホン
酸1.4gの混合液を20℃に保ち、シクロヘキサンジメチル
アセタール28.9gと1,1,3,3−テトラ−メチルブチルヒド
ロペルオキシド30,2gの混合液を滴下した。この時の酸
濃度は0.1mol/kg反応混合液であった。以下実施例1と
同様に行なった結果、純度79%の1−メトキシ−1−
(1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ)シクロヘ
キサン40.0g(収率69%)を得た。このものを0.1mmHgに
おいて33−35℃で未反応物を留去することにより、純度
90%の前記ペルオキシケタールを得た。さらにこのもの
をヘキサンを移動相としたシリカゲカラムクロマトによ
り精製することにより、純度92%の前記ペルオキシケタ
ールを得た。
本発明のペルオキシケタールであることの確認は、活
性酸素量、元素分析、屈折率、IRおよびNMRスペクトル
により行い、その構造を次のデータに基づいて確認し
た。
活性酸素量5.71%(理論活性酸素量6.19%)、元素分
析C:68.69%,H:11.81%(計算値C:69.70%,H:11.70
%)、屈折率nd20:1.4567、IRスペクトル:1100cm-1(−
O−Me)、NMRスペクトル:δ3.3(S,−O−CH33H),
δ1.30(S,−C(CH32-,6H),δ1.00(S,−C(C
H33,9H)。
実施例4 〔1−メトキシ−1−(1−メチル−1−フェニルセチ
ルペルオキシ)シクロヘキサンの製造〕 ジメチルスルホキシド16.2gとp−トルエンスルホン
餐1.4gの混合液を20℃に保ち、シクロヘキサノンジメチ
ルアセタール29.0gと1−メチル−1−フェニルエチル
ヒドロペルオキシド27,2gの混合液を滴下した。この時
の餐濃度は、0.1mol/kg反応混合液であった。以下参考
例1と同様に行なった結果、純度74%の1−メトキシ−
1−(1−メチル−1−フェニルエチルペルオキシ)シ
クロヘキサン39.5g(収率55%)を得た。このものをヘ
キサンを移動相としたシリカゲルカラムクロマトにより
精製することにより、純度97%の前記ペルオキシケター
ルを得た。
本発明のペルオキシケタールであることの確認は、活
性酸素量、元素分析、屈折率、IRおよびNMRスペクトル
により行い、その構造を次のデータに基づいて確認し
た。
活性酸素量8.87%(理論活性酸素量6.05%)、元素分
析C:72.25%,H:9.32%(計算値C:72.69%,H:9.15)、屈
折率nD 20:1.5087、IRスペクトル:1100cm-1(−O−M
e)、NMRスペクトル:δ3.2(S,−O−CH3,3H),δ7.3
−7.6(Ph−,5H)。
実施例5 〔1−メトキシ−1−(1,1−シメチルブチルペルオキ
シ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの製造〕 ジメチルスルホキシド20.7gとp−トルエンスルホン
酸1.6gの混合液を20℃に保ち、3,3,5−トリメチルシク
ロヘキサノンジメチルアセタール37.3gと1,1−ジメチル
ブチルヒドロペルオキシド23.8gの混合液を滴下した。
この時の酸濃度は、0.1mol/kg反応混合液であった。以
下実施例1と同様に行なった結果、純度75%の1−メト
キシ−1−(1,1−ジメチルブチルペルオキシ)−3,3,5
−トリメチルシクロヘキサン50.3g(収率68%)を得
た。このものを0.005mmHgにおいて、68−72℃で蒸溜す
ることにより、純度98%の前記ペルオキシケタールを得
た。
本発明のペルオキシケタールであることの確認は、活
性酸素量、元素分析、屈折率、IRおよびNMRスペクトル
により行い、その構造を次のデータに基づいて確認し
た。
活性酸素量5.64%(理論活性酸素量5.87%)、元素分
析C:69.87%,H:12.11%(計算値C:70.54:,H:11.84
%)、屈折率nD 20:1.4490、IRスペクトル:1100cm-1(−
O−Me)、NMRスペクトル:δ3.3(S,−O−CH3,3H),
δ1.27(S,−C(CH32,6H),δ1.2−0.90(>C(CH
32,>CH−CH3,CH2−CH2−CH3,16H)。
実施例6ないし10及び比較例1ないし5ならびに参考例
1及び比較参考例1〔クメン中での熱分解〕 実施例1ないし5によって得られた本発明の環式モノ
ペルオキシケタールおよび実施例1ないし5に準じて得
られた環式ビスペルオキシタケールの0.05Mクメン溶液
を調整した。各々の試料溶液から一定量をガラスアンプ
ルに採り、凍結法により脱気し、真空下で封管した。そ
れから数本のアンプルを、100℃の恒温槽に入れ所定時
間ごとに取り出し、ガスクロマトグラフィーまたは液体
クロマトグラフィーによりペルオキシケタール濃度を測
定した。各々のペルオキシケタールの消失速度から速度
定数および半減期を求めた。得られた結果を実施例6な
いし10および比較例1ないし5とし、表−1に示した。
また、実施例1に準じて1,1−ジメチルエチルペルオキ
シ誘導体を製造し、同様に熱分解を行い、その結果を参
考例1及び比較参考例1として表−1に示した。
実施例と比較例との比較により、本発明の環式モノペ
ルオキシケタールは、相当する環式ビスペルオキシタケ
ールよりもかなり速く分解し、よりいっそう低温度で活
性なペルオキシドであることが明らかとなった。
実施例2ないし4〔溶媒効果〕 溶媒をクメンの代わりに、n−ヘキサン、n−ドデカ
ンおよびn−ヘキサデカンにし、それ以外は参考例1に
準じて、1−メトキシ−1−(1,1−ジメチルエチルペ
ルオキシ)シクロヘキサンの100℃における熱分解を行
い、熱分解速度定数および半減期を求めた。その結果を
参考例2ないし3とし表−2に示した。
参考例2ないし4から、溶媒粘度の増加と共に分解速
度が遅延することから、本発明の環式モノペルオキシケ
タールの熱分解は、反応式(1)によって示されている
ように、溶媒かご内でのO−O結合の可逆的な結合開裂
を起こしていることがわかる。すなわち、溶媒粘度の増
加によって、不活性物質を生成することなくもとのペル
オキシケタールを再生する。このことは高粘度媒体中で
も高い開始剤効率を維持できることを示している。
参考例5及び比較参考例2〔クメン中での熱分解生成
物〕 参考例1および比較参考例1によって得られた熱分解
溶液についてガスクロマトグラフィーにより各種熱分解
生成物を測定した。分解した各ペルオキシケタール1mol
当りの生成物molを求めた。得られた結果をそれぞれ、
実施例5および比較例参考例2として表−3に示した。
参考例5および比較参考例2の結果は、本発明の環式
モノペルオキシケタールおよび比較例として挙げた環式
ビスペルオキシタケールが、それぞれ、(1)ないし
(5)式および(5)ないし(10)式に従って分解する
ことを示している。
実施例11ないし15および比較例6ないし11 〔クメン中での熱分解によるケトンおよびアルコールの
生成量〕 実施例6ないし10および比較例1ないし5ならびに参
考例1によって得られた熱分解溶液についてガスクロマ
トグラフィーにより生成したケトンおよびアルコールを
測定した。分解した各々のベルオキシケタール1mol当り
の生成物mol数を求めた。得られた結果を実施例11ない
し15および比較例6ないし11として表−4に示した。
(2)および(3)式より、アルコールの生成量に対
するケトンの生成比率は、アルコキシラジカルの生成量
の目安となる。表−4の実施例と比較例を比較した場
合、本発明の環式モノペルオキシケタールのほうが1−
メトキシ−1−(1,1−ジメチルエステルベルオキシ)
シクロヘキサンおよび環式ビスペルオキシタケールより
もアルコキシラジカルの生成量が少なく、また1,1−ジ
メチルエチルペルオキシル基を有するペルオキシケター
ルは、他のt−アルキルペルオキシル基を有するものよ
りもアルコキシラジカルの生成量の多いことがわかる。
実施例16ないし22ならびに比較例12ないし18 〔不飽和単量体の重合〕 実施例1ないし5によって得られた本発明の環式モノ
ペルオキシケタールおよび実施例1に準じて得られた1
−メトキシ−1−(1,1−ジメチルエチルペルオキシ)
シクロヘキサンおよび環式ビスペルオキシケタールの0.
01mol/Lスチレン溶液および2.0g/Lスチレンを調整し
た。各々の試料溶液から一定量をガラスアンプルに採
り、凍結溶解法により脱気し、真空下で封管した。それ
から数本のアンプルを、80℃の恒温槽に入れ所定時間ご
とに取り出し−20℃以下に冷却した。その後アンプルを
開封しベンゼン溶液からメタノールによりポリマーを沈
殿させ濾過した後、一昼夜真空乾燥した。重量法によ
り、重合速度を求めた。また得られたポリマーの分子量
をGPCによって測定した。重合転化率10%のときの結果
を実施例16ないし20および比較例12ないし18として表−
5に示した。
表−5の実施例と比較例との比較により、開始剤を同
一モル濃度および同一重量濃度にした場合に、本発明の
環式モノペルオキシケタールは1−メトキシ−1−(1,
1−ジメチルエチルペルオキシ)シクロヘキサンおよび
環式ビスペルオキシケタールに比較して、重合速度が速
くなり、かつ低分子量のポリマーの得られることがわか
る。
実施例21および22ならびに比較例19および20 〔シクリル樹脂の製造〕 撹拌装置、温度計および還流冷却器を備えたガラス製
反応器に、溶媒として30gのイソオクチルアセテートを
入れ、30gのブチルアクリレート、20gの2−ビドロキシ
エチルアクリレート、20gのブチルメタクリレート、30g
のスチレンおよび活性酸素量で0.030モル当量のペルオ
キシケタールとからなるモノマーおよび開始剤混合物
を、窒素雰囲気下125℃の温度において5時間を要して
滴下し、その後さらに2時間撹拌を継続し重合を完結さ
せた。開始剤としては、実施例2で製造した環式モノペ
ルオキシケタールとそれに準じて合成した1−メトキシ
−1−(1,1−ジメラエチルペルオキシ)シクロヘキサ
ンおよび環式ビスペルオキシケタールを用い、それぞれ
実施例21および比較例19および20としてその結果を表−
6に示す。分子量はポリスチレンを標準にしてGPCによ
って求めたものである。
表−6の実施例と比較例との比較は、本発明の環式モ
ノペルオキシケタールを用いて得られたアクリル樹脂の
分子量は、1,1−ジメチルエチルペルオキシル誘導体お
よび相当する環式ビスペルオキシケタールを用いた場合
よりも平均分子量が小さく、かつ分子量分布も狭くなる
ことを示している。
実施例22ないし26および比較例21ないし28 〔不飽和ポリエステル樹脂の硬化〕 使用した不飽和ポリエステル樹脂は、エポラックG110
AL(日本触媒化学工場製)であり、硬化方法はJISK6901
液状不飽和ポリエステル樹脂試験法に準じた。
環式モノペルオキシケタールを不飽和ポリエステル樹
脂に添加し80℃の恒温槽中で硬化試験を行ない、ゲル化
時間(GT)、硬化時間(CT)、最高発熱温度(PET)を
測定した。このときの触媒転化量は不飽和ポリエステル
樹脂に対して活性酸素量に換算して、t−ブチルペルオ
キシベンゾエートの1重量%に等しくした。
また触媒を含む不飽和ポリエステル樹脂の40℃におけ
るポットライフを目視により測定した。得られた結果を
実施例22ないし26ならびに比較例21ないし28として表−
7に示した。
表−7の結果から、カルボニル基を有していないペル
オキシケタールは、カルボニル基を有しているt−ブチ
ルペルオキシベンゼエートに比較して、ゲル化および硬
化時間が短いにもかかわらず、ポットライトの長いこと
がわかる。また、本発明の環式モノペルオキシケタール
は、1,1−ジメチルエチルペルオキシ誘導体および相当
する環式ビスペルオキシケタールよりもゲカ化および硬
化時間が短く、かつ後者に比較して樹脂への溶解性に優
れた硬化特性を示していることがわかる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 (式中、R1、R2およびR3は水素または炭素数1ないし3
    のアルキル基を、R4は炭素数1ないし5のアルキル基
    を、ならびにR5は炭素数1ないし3のアルキル基を示
    し、さらに、R6およびR7は、分離している場合には、R6
    は炭素数1ないし3のアルキル基で、R7は炭素数2ない
    し10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基
    を示し、結合している場合には、シクロアルカン構造を
    示す。) で示される環式モノペルオキシケタール。
  2. 【請求項2】R6およびR7が分離しており、かつR6が炭素
    数1ないし3のアルキル基で、R7は炭素数2ないし10の
    アルキル基である請求項1に記載の環式モノペルオキシ
    ケタール。
  3. 【請求項3】R6およびR7が分離しており、かつR6が炭素
    数1ないし3のアルキル基で、R7フェニル基である請求
    項1に記載の環式モノペルオキシケタール。
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