JP2023070009A - 粘着剤および粘着シート - Google Patents

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Naoki Takeuchi
稔 中村
Minoru Nakamura
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Abstract

【課題】本発明の課題は、生分解性原料を使用し、粘着力、凝集力および塗膜の透明性に優れ、さらにはエージングが不要であり、粘着面同士の貼り合わせに好適な粘着剤を提供することにある。【解決手段】本発明の課題は、2つの水酸基を有するポリオール(A)およびポリイソシアネート(B)の反応物であるウレタン樹脂(X)を含む粘着剤であって、2つの水酸基を有するポリオール(A)は、ラクチド(a1)と、ラクトン単位を有する単量体(a2)と、分子量が200未満であるジオール(a3)とを含む混合物の共重合体からなる数平均分子量が2,000~40,000であるポリオール(Ax)を含み、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基のモル数と2つの水酸基を有する2つの水酸基を有するポリオール(A)中の水酸基のモル数の比(NCO/OH比)が0.6~0.98であり、ウレタン樹脂(X)のガラス転移温度が-20℃~30℃である、粘着剤によって解決される。【選択図】 なし

Description

本発明の実施形態は、粘着剤およびそれを用いた粘着シートに関する。
粘着剤から形成した粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることから、ラベル、テープおよび接着用途として幅広い分野で使用されている。その中でも主剤と硬化剤とからなる2液硬化型のアクリル系粘着剤は、接着性、耐候性、耐久性等に優れていることから広く普及しているが、硬化剤を用いる場合、粘着剤のポットライフが発生し、塗工作業および工程管理が複雑化するなどの課題があった。また、例えば、野菜や果物などを結束するテープは野菜や果物に貼付されたまま土中に廃棄またはコンポスト化される場合があるが、粘着ラベルを構成するアクリル系粘着剤の分解速度が極めて遅いために、粘着剤は半永久的に土中に残り生態系を破壊する原因となり得る。これらのことから、近年、生分解性原料を使用した粘着剤が推奨され始めている。
そこで、特許文献1ではアクリル樹脂とケト・エノール互変異性体と多価金属との錯化合物とを、アルコール系溶剤を含む溶媒に溶解してなる1液型のアクリル系粘着剤が開示されている。
また、特許文献2では、ポリ乳酸と、生分解性を有する材料および/ または生物由来の材料を有するガラス転移温度低下剤と、粘着性付与剤とを含有することを特徴とする粘着剤が開示されている。
さらに、特許文献3では、乳酸を主原料として反応させた脂肪族ポリエステル樹脂とロジン又はロジン誘導体を含有する生分解性粘着剤であって、前記乳酸中に含有されるL-乳酸とD-乳酸のモル比(L/D) が1~9であり、前記脂肪族ポリエステル樹脂の数平均分子量が10,000~120,000であり、且つガラス転移温度(Tg)が-5℃~-60℃であることを特徴とする生分解性粘着剤が開示されている。
特開平2-91178号公報 特開2006-70091号公報 特開2006-131705号公報
しかし、特許文献1の粘着剤を用いた場合にはポットライフの問題は解決できるものの、塗工後に粘着剤を硬化させるため一定期間エージング(養生)が必要という課題があった。また、アクリル樹脂が硬化剤により架橋されているために結束テープに必要とされる粘着面同士の密着性(自着面粘着力)が低いという問題があった。
また、特許文献2および特許文献3の粘着剤は、ロジン樹脂などの粘着付与樹脂を含んでいるため粘着力は発現するものの、凝集力が低いという問題があった。また、乳酸系樹脂と粘着付与樹脂の相溶性が悪いため塗膜が白化し、透明性が求められる用途には使用できない問題もあった。
そこで、本発明の実施形態は、生分解性原料を使用し、粘着力、凝集力および塗膜の透明性に優れ、さらにはエージングが不要であり、粘着面同士の貼り合わせに好適な粘着剤を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、本発明を完成した。すなわち、本発明の実施形態は以下に関する。しかし、本発明は以下に記載する実施形態に限定されることなく、様々な実施形態を含む。
本発明の一実施形態は、2つの水酸基を有するポリオール(A)およびポリイソシアネート(B)の反応物であるウレタン樹脂(X)を含む粘着剤であって、
2つの水酸基を有するポリオール(A)は、ラクチド(a1)と、ラクトン単位を有する単量体(a2)と、分子量が200未満であるジオール(a3)とを含む混合物の共重合体からなる数平均分子量が2,000~40,000である2つの水酸基を有するポリオール(Ax)を含み、
ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基のモル数と2つの水酸基を有するポリオール(A)中の水酸基のモル数の比(NCO/OH比)が0.6~0.98であり、
ウレタン樹脂(X)のガラス転移温度が-20℃~30℃である、
粘着剤に関する。
本発明の他の実施形態は、基材と、上記基材の少なくとも一方の面に上記実施形態の粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを有する、粘着シートに関する。
本発明によれば、生分解性原料の使用比率が高い粘着剤であって、粘着特性を充分に満足し、透明性にも優れ、さらにはエージングが不要な粘着剤の提供が可能となる。また、上記粘着剤を用いた粘着シートの提供が可能となる。
本発明の説明の前に用語を定義する。
本明細書で記載する「粘着シート」とは、基材と、本発明の粘着剤からなる粘着剤層とを有することを意味する。
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むことを意味する。
本明細書に記載する各種成分は、特に注釈しない限り、それぞれ独立して1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、2つの水酸基を有するポリオール(A)、ラクトン単位を有する単量体(a2)、分子量が200未満であるジオール(a3)、数平均分子量が2,000~40,000であるポリオール(Ax)および分子量が1,500未満であるジオール(Ay)を、それぞれ、ポリオール(A)、単量体(a2)、ジオール(a3)、ポリオール(Ax)およびジオール(Ay)と略記することがある。
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算値である。「数平均分子量(Mn)」は、GPC測定によって求めたポリスチレン換算値である。これらは、実施例の項に記載する方法によって測定することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
<1>粘着剤
本発明の一実施形態である粘着剤は、ウレタン樹脂(X)を含む。ウレタン樹脂(X)を含むことで硬化剤を使用しなくとも充分な粘着特性を発現でき、さらにはエージングが不要である。また、硬化剤を含まない1液型粘着剤であることが好ましく、硬化剤を含まないことでウレタン樹脂(X)同士が共有結合による架橋をしていないため、粘着面同士の密着性を高めることができる。
<ウレタン樹脂(X)>
ウレタン樹脂(X)は、ポリオール(A)およびポリイソシアネート(B)の反応物であり、ガラス転移温度が-20℃~30℃である。
上記「反応物」とは、ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)との反応生成物を意味する。ポリオール(A)は、1分子中に2つの水酸基を有する。ポリイソシアネート(B)は、1分子中に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネート(ジイソシアネートともいう)が好ましい。
上記ポリオール(A)は、ラクチド(a1)と、単量体(a2)と、ジオール(a3)とを含む混合物の共重合体からなる数平均分子量が2,000~40,000であるポリオール(Ax)を含む。上記ポリオール(Ax)がラクチド(a1)、単量体(a2)、およびジオール(a3)を含むことによって、ウレタン樹脂(X)を含む粘着剤の粘着力および凝集力が両立できる。ポリオール(A)はさらに、分子量が1,500未満であるジオール(Ay)を含んでもよい。
上記ポリオール(Ax)の数平均分子量(Mn)は、2,000~40,000である。Mnが前記範囲内であることで、ウレタン樹脂(X)中にウレタン結合が適度に導入され、粘着力および凝集力が向上する。
上記ジオール(Ay)の分子量は、1,500未満である。分子量が1,500未満であることで、ウレタン樹脂(X)中のウレタン結合が高密度となり、凝集力が向上する。
上記ウレタン樹脂(X)のガラス転移温度(Tg)は、-20℃~30℃である。Tgは、より好ましくは-15℃以上であり、さらに好ましくは-10℃以上である。また、より好ましくは20℃以下であり、さらに好ましくは10℃以下である。Tgが上記範囲内である場合、粘着力および凝集力を両立することが可能となり充分な粘着特性が得られる。具体的には、Tgを-20℃以上に調整した場合、充分な凝集力が得られ、保持力を容易に高めることができる。また、Tgを30℃以下に調整した場合、被着体との密着性を高めることができる。
上述のように、数平均分子量(Mn)が2,000~40,000であるポリオール(Ax)を含んだポリオール(A)を用い、かつガラス転移温度が、-20~30℃であるウレタン樹脂(X)であれば、生分解性原料の使用比率を高めるために、生分解性原料であるラクチド(a1)と、単量体(a2)、およびジオール(a3)とを多量に用いた場合でも、粘着特性の優れた粘着剤を容易に構成することができる。
ウレタン樹脂(X)の重量平均分子量(Mw)は、30,000~180,000が好ましく、より好ましくは40,000以上であり、さらに好ましくは50,000以上である。また、より好ましくは160,000以下であり、さらに好ましくは140,000以下である。ウレタン樹脂(X)のMwを上記範囲内に調整した場合、ポリマー鎖の絡み合いによる凝集力を付与することができ、粘着力を高めることが容易となる。また、ウレタン化によって形成されるウレタン結合による凝集力の向上が可能となる。
以下、粘着剤の構成成分についてより具体的に説明する。
[ポリオール(A)]
ポリオール(A)は、ラクチド(a1)と、ラクトン単位を有する単量体(a2)と、分子量が200未満であるジオール(a3)とを含む混合物の共重合体からなるポリオール(Ax)を含むことによって得られる。
ポリオール(A)は、さらに必要に応じて、分子量が1,500未満であるジオール(Ay)を含んでもよい。ジオール(Ay)を含むことでウレタン樹脂(X)中のウレタン結合の濃度および密度を制御することが可能となり粘着特性を高めることができる。
<ポリオール(Ax)>
ポリオール(Ax)は、ラクチド(a1)と、ラクトン単位を有する単量体(a2)と、分子量が200未満であるジオール(a3)とを含む混合物の共重合体からなるポリオールである。ポリオール(Ax)は分子中に2つの水酸基を有することで、ポリイソシアネート(B)と反応する際にゲル化を抑制しながら所望する重量平均分子量(Mw)のウレタン樹脂(X)を調製することができる。
生分解性原料の使用比率を高める場合には、ラクチド(a1)、単量体(a2)およびジオール(a3)が、いずれも生分解性原料であることが特に好ましい。
ポリオール(Ax)の数平均分子量(Mn)は、2,000~40,000であり、好ましくは3,000以上であり、より好ましくは4,000以上である。また、好ましくは35,000以下であり、より好ましくは30,000以下であり、さらに好ましくは25,000である。Mnを上記範囲内に調整した場合、ウレタン樹脂(X)中にウレタン結合が適度に導入され、粘着力および凝集力が向上する。具体的には、Mnを2,000以上に調整した場合、ウレタン化により得られるウレタン樹脂(X)のウレタン結合数が多くなり過ぎることを抑制でき、粘着力が確保可能となる。また、Mnを40,000以下に調整した場合、ウレタン結合数が充分となり、凝集力が低下することを抑制できる。
一実施形態において、ジオール(Ax)の含有率は、ポリオール(A)の全質量を基準として、40質量%が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。含有率が上記範囲内である場合、優れた粘着特性を発現できるウレタン樹脂(X)を得ることができる。
ポリオール(Ax)を構成する混合物は、ウレタン化において十分な反応性を得る観点から、水酸基などの活性水素を片末端にのみ有する化合物、及びスルホン酸塩などの酸性基が塩を形成している化合物を含まないことが好ましい。したがって、一実施形態において、ポリオール(Ax)を構成する単量体混合物は、ラクチド(a1)、単量体(a2)、およびジオール(a3)のみからなることが好ましい。
(ラクチド(a1))
ラクチド(a1)は、ウレタン樹脂(X)のTgを高め凝集力を付与するために使用する。ラクチド(a1)は、2分子のヒドロキシ酸においてそれぞれのヒドロキシ基とカルボキシル基が脱水縮合した分子内にエステル結合を2個有する環状化合物であり、例えば、グリコリド、3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)由来)、1,6-ジオキサシクロデカン-2,7-ジオン(4-ヒドロキシブタン酸由来)等が挙げられる。これらの中でも、いわゆる乳酸由来のラクチドは光学活性物質である場合もあり、L-ラクチド、D-ラクチド、DL-ラクチド、meso-ラクチドがある。これらの中でも、L-ラクチド、meso-ラクチドは、入手がしやすく、生分解性だけでなく植物由来原料でありバイオマス度を高くすることができるために好ましい。また、meso-ラクチドは粘着力が高まるためより好ましい。上記ラクチド(a1)は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、DL-ラクチドとは、L-ラクチドとD-ラクチドの等モル混合物を意味する。
ラクチド(a1)は、後述する単量体(a2)およびジオール(a3)と共重合させることによって、所望の特性を有するウレタン樹脂(X)を得ることができる。結晶性のあるL-ラクチドおよびD-ラクチドは単量体(a2)を共重合させることで結晶性を低下させ、粘着力および透明性を高めることができる。
一実施形態において、ラクチド(a1)の含有率は、ポリオール(Ax)を構成する混合物の全質量を基準として、25~90質量%であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは55質量%以上である。また、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以下である。なお、結晶性のあるL-ラクチドおよびD-ラクチドの使用量は、好ましくは70質量%以下である。上記含有率が上記範囲内である場合、ウレタン樹脂(X)のガラス転移温度を適切な範囲に容易に調整することができ、粘着特性を容易に向上できる点で好ましい。
(単量体(a2))
単量体(a2)は、ラクトン単位を有する単量体である。単量体(a2)を、ラクチド(a1)およびジオール(a3)と共重合させることによって、ウレタン樹脂(X)のガラス転移温度を適切な範囲に調整できる。その結果、粘着剤において優れた粘着力などの特性を実現できるウレタン樹脂(X)を得ることができる。単量体(a2)は、1種または2種以上の単量体を組み合わせて使用してもよい。
単量体(a2)としては、例えば、炭素数3~12のラクトン等が挙げられる。例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、エナントラクトン、カプリロラクトン、ラウロラクトン等が挙げられる。なかでも、生分解性原料であることからδ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンが好ましい。
一実施形態において、単量体(a2)の含有率は、ポリオール(Ax)を構成する混合物の全質量を基準として、4~60質量%であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。また、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。含有率が上記範囲内である場合、ウレタン樹脂(X)のガラス転移温度を適切に調整でき、粘着特性を容易に向上できる点で好ましい。
(ジオール(a3))
ジオール(a3)は、分子内に2つの水酸基を有し、分子量が200未満の化合物である。ジオール(a3)中の2つの水酸基はポリオール(Ax)を共重合する際の開始点となり、ラクチド(a1)および単量体(a2)が2方向に付加することで2つの末端水酸基を有するポリマー鎖が形成される。ラクチド(a1)はポリオール(Ax)のTgを高め、凝集力を付与する機能を有するが、ジオール(a3)の分子量が200未満であることで一方の水酸基に付加したラクチド(a1)と他方の水酸基に付加したラクチド(a1)の距離が近くなる効果がある。この効果によりラクチド(a1)同士の相互作用が強化されウレタン樹脂(X)の凝集力がさらに向上する。
ジオール(a3)は、脂肪族グリコール、脂環族グリコール等を使用することができるが、生分解性原料の含有率を高めるためには、ジオール(a3)についても、生分解性原料であることが好ましい。上記ジオール(a3)は、1種のみを使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ジオール(a3)として使用できる脂肪族グリコールは、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-デカンジオールなどが挙げられる。また、脂環族グリコールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。なかでも、生分解性原料であることから、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールが好ましい。
ジオール(a3)の分子量は200未満であり、より好ましくは150以下であり、さらに好ましくは100以下である。分子量が200未満であることで、ウレタン樹脂(X)の凝集力が向上する。
一実施形態において、ジオール(a3)の含有率は、ポリオール(Ax)を構成する混合物の全質量を基準として、0.1~10質量が好ましく、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上である。また、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。含有率が上記範囲内である場合、ポリオール(Ax)の数平均分子量(Mn)を適切に調整できる点で好ましい。
[触媒]
ポリオール(Ax)の製造において、必要に応じて、1種以上の触媒を用いることができる。触媒としては公知の化合物を使用できる。使用できる触媒として、例えば、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が挙げられる。
3級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
有機金属系化合物としては、例えば、錫系化合物および非錫系化合物等が挙げられる。錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルオクチル酸錫、および2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系;2-エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系;安息香酸コバルトおよび2-エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;ナフテン酸亜鉛および2-エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系;アルミニウムトリスアセチルアセトナ-ト、酢酸アルミニウム等のアルミニウム系、が挙げられる。触媒の種類および添加量は、反応が良好に進む範囲で適宜調整することができる。
触媒の使用量は、ポリオール(Ax)の構成成分の合計100質量部に対して、0.0001~1.0質量部であることが好ましい。上記使用量は、0.001~0.5質量部であることがより好ましく、0.005~0.3質量部であることがさらに好ましく、0.01~0.3質量部であることがさらにより好ましい。
ポリオール(Ax)の製造時に触媒を用いる場合、上記触媒を不活性化させてもよい。不活性化剤として、例えば、アセチルアセトン、またはリン酸化合物等を配合することができる。不活性化剤は、1種のみを使用しても、または2種以上を組合せて使用してもよい。
[溶剤]
ポリオール(Ax)の製造には、必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。使用できる溶剤として、例えば、アセトン、およびメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、トルエン、およびキシレン等の炭化水素系溶剤、並びにジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。一実施形態において、粘着剤は、ポリオール(Ax)の製造時に使用した溶剤を含んでいてもよい。
(ポリオール(Ax)の製造方法)
ポリオール(Ax)の製造方法は、特に制限されない。ポリオール(Ax)は、塊状重合法および溶液重合法等の公知の重合方法によって製造することができるが、溶剤を使用しない塊状重合法がより好ましい。製造方法としては、例えば、ジオール(a3)の水酸基を開始点として、ラクチド(a1)、単量体(a2)を開環重合する方法が挙げられ、反応が簡便であり高分子量化が容易である点から好ましい。
<ジオール(Ay)>
ジオール(Ay)は、分子量が1,500未満である。なお、ジオール(Ay)が重合体の場合には数平均分子量(Mn)が1,500未満である。ジオール(Ay)を含むことでウレタン樹脂(X)中のウレタン結合の濃度および密度を制御することが可能となり粘着特性を高めることができる。特にウレタン結合由来の水素結合の効果により、粘着面同士の相互作用を高め密着性が向上する。ジオール(Ay)は分子中に2つの水酸基を有することで、ポリイソシアネート(B)と反応する際にゲル化を抑制しながら所望する重量平均分子量(Mw)のウレタン樹脂(X)を調製することができる。
ジオール(Ay)は、上述した分子量が200未満のジオール(a3)を使用することができ、ジオール(a3)以外の化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオールなどを使用することができる。これらの中でも脂肪族ジオール、脂肪族ポリエステルポリオールが分解可能な酵素が自然界に多数存在することから特に好ましい。
ジオール(Ay)として使用できる脂肪族グリコールは、生分解性原料であることから、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールが好ましい。
ジオール(Ay)は、市販品を使用することもできる。例えば、クラレ社製のクラレポリオールP-510が挙げられる。これは、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと、アジピン酸との共重合体である、分子中に2つの水酸基を有するポリエステルポリオールである。また、例えば、ダイセル社製のプラクセルL212ALが挙げられる。これは、2官能水酸基含有化合物とε-カプロラクトンとの重合体である、分子中に2つの水酸基を有するポリエステルポリオールである。これらの中でも生分解性原料であることから、2官能水酸基含有化合物とε-カプロラクトンとの重合体が好ましい。
ジオール(Ay)の分子量または数平均分子量(Mn)は、1,500未満である。より好ましくは1,400未満であり、さらに好ましくは1,300未満である。上記範囲内であることで、ウレタン樹脂(X)中にウレタン結合を効果的に導入することが可能となり、粘着特性を高めることができる。
一実施形態において、ジオール(Ay)の含有率は、ポリオール(A)の全質量を基準として、0.5~60質量%が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、より好ましくは50質量%以下である。含有率が上記範囲内である場合、優れた粘着特性を発現できるウレタン樹脂(X)を得ることができる。
[ポリイソシアネート(B)]
ポリイソシアネート(B)としては公知の化合物を使用できる。例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート(B)は、1分子中に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネート(ジイソシアネートともいう)が好ましく、ジイソシアネートを使用することで、ポリオール(A)と反応する際にゲル化を抑制しながら所望する重量平均分子量(Mw)のウレタン樹脂(X)を調製することができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
その他のポリイソシアネートとして、例えば、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット体、アロファネート体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
ポリイソシアネート(B)としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。これらの少なくとも1種を使用した場合、適度なウレタン結合による凝集力を付与することができ、充分な粘着特性が容易に得られる。
ウレタン樹脂(X)の製造において、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基のモル数と2つの水酸基を有するポリオール(A)中の水酸基のモル数の比(NCO/OH)が0.6~0.98である。より好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。NCO/OHの値が上記範囲内であることで、所望する重量平均分子量(Mw)のウレタン樹脂(X)を調製することができる。
NCO/OHの値が0.98より大きくなると、ウレタン樹脂(X)の製造時にゲル化する場合があったり、イソシアネート基が残存し、経時でゲル化物または凝集物が生じやすくなったりする場合がある。NCO/OHの値が0.6未満になると、得られるウレタン樹脂(X)の分子量が小さくなり、充分な凝集力が得られない場合がある。
ポリイソシアネート(B)の含有率は、ウレタン樹脂(X)の全質量を基準として、0.2~25質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは0.8質量%以上である。また、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。ポリイソシアネート(B)の含有率が上記範囲内にあることで、高い粘着力および透明性を得ることができる。
ウレタン樹脂(X)の製造には、必要に応じて、触媒および溶剤等を用いることができる。触媒および溶剤は、上述したポリオール(Ax)の製造で例示する触媒および溶剤と同じであってよい。一実施形態において、粘着剤は、ウレタン樹脂(X)の製造時に使用した溶剤を含んでいてもよい。
[ウレタン樹脂(X)の製造方法]
ウレタン樹脂(X)の製造方法は、特に制限されない。ウレタン樹脂(X)は、塊状重合法および溶液重合法等の公知の重合方法によって製造することができるが、溶剤を使用しない塊状重合法がより好ましい。塊状重合により製造したウレタン樹脂(X)を用いた粘着剤は、ホットメルト型粘着剤として使用することができ、溶剤で溶解することで溶剤型粘着剤として使用することもできる。製造方法の手順としては、例えば、1種以上のポリオール(A)、1種以上のポリイソシアネート(B)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤を使用し、これらを一括してフラスコに仕込む手順が挙げられる
反応温度は、触媒を使用する場合、100℃未満が好ましく、80~95℃がより好ましい。触媒を使用しない場合、120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。
<その他の成分>
本発明の一実施形態である粘着剤は、粘着剤としての特性と生分解性を損なわない程度であれば、上記成分以外に一般的な硬化剤、粘着付与樹脂および添加剤をさらに含んでもよい。使用できる硬化剤として、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、オキサゾリン硬化剤、及びアジリジン硬化剤等が挙げられる。使用できる粘着付与樹脂として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、脂環族炭化水素樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂等が挙げられる。使用できる添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、剥離調整剤、充填剤、着色剤、老化防止剤、可塑剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
<2>粘着シート
本発明の他の実施形態は、粘着シートに関する。粘着シートは、基材の少なくとも一方の面に、上記実施形態の粘着剤から形成されてなる粘着剤層を有する。すなわち、粘着シートは、基材と、基材の一方の面に設けられた上記実施形態の粘着剤から構成される粘着剤層とを有する。一実施形態において、基材と接していない粘着剤層の他方の面には、異物の付着を防止するために剥離シートを設けてよい。通常、粘着剤層は、使用する直前まで剥離シートによって保護される。
基材は、柔軟なシートおよび板材であればよく、制限なく使用できる。基材は、プラスチック、紙、および金属箔、ならびにこれら1種以上の材料から構成される積層体等が挙げられる。
粘着剤層と接する基材の表面は、密着性向上のため、簡便な接着処理を適用してもよい。例えば、コロナ放電処理等の乾式処理、アンカーコート剤塗布等の湿式処理を適用することができる。
一実施形態において、基材を構成するプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびシクロオレフィンポリマー(COP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC)等のビニル系樹脂;ナイロン66等のアミド系樹脂;ウレタン系樹脂(発泡体を含む)等が挙げられる。
一実施形態において、基材の原料となる樹脂は生分解性を有しているのが好ましく、例えば、セルロース(CE)樹脂(日本製紙ケミカル社製溶解パルプ)、ポリビニルアルコール樹脂(三菱ケミカル社製ニチゴーGポリマー)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)樹脂(Dupon社製Apexa4026/6926)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂(BASF社製エコフレックス、Chemdo社製TH801T)、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂(PTT MCC バイオケム社製BioPBS FZ71、FZ91、FZ78)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)樹脂(PTT MCC バイオケム社製BioPBS FD92)、ポリ乳酸(PLA)樹脂(NaturteWorks社製3000~7000シリーズ、Total Corbion社製Lシリーズ、LXシリーズ、Dシリーズ)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)樹脂(PHB Industorial社製BIOCYCLE 1000)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(P4HB)樹脂(Tepha Medical Devices社製TephaFLEX)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)樹脂(カネカ社製AONILEX)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート(PHBV)樹脂(TianAn Biopolymer社製ENMAT Y1000)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB-P4HB)樹脂(CJ CheilJedang社製Yield10)等の:ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、ポリカプロラクトン樹脂(ダイセル社製プラクセルH1P、H5C、H8C)、酢酸セルロース(CA)樹脂(ダイセル社製L-シリーズ)等が挙げられる。上記生分解性を有する樹脂は、1種のみを使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記基材の他に、生分解性を促進する脂肪酸金属塩を含む分解処理液で処理された樹脂を用いることもできる。例えば、市販品としてはピーライフ・ジャパン・インク社製のP-LIFE GREEN 20(PE樹脂、分解処理液 同社製SMC2360 20%含有)やP-LIFE GREEN 20(PP樹脂、分解処理液 同社製SMC2360 20%含有)等が挙げられる。
上記樹脂用いて基材(シート)へ成形加工する方法は、押出機を用いてTダイにて押出したシートをキャストロールで冷却固化する押出成形や、インフレーション成形機により成形する方法等が適している。
基材の厚みは、一般的に10~300μmであってよい。基材としてポリウレタンシート(発泡体を含む)を使用する場合、基材(シート)の厚みは、一般的に20~50,000μmであってよい。基材として紙を使用することもできる。例えば、普通紙、コート紙、およびアート紙等が挙げられる。また、基材として金属箔を使用することもできる。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、及び銅箔等が挙げられる。
剥離シートは、公知の構成を有する剥離シートであってよい。例えば、プラスチックまたは紙等のシート状の材料表面に、シリコーン系剥離剤等の公知の剥離処理を適用した剥離シートを使用できる。
粘着シートの製造方法としては、例えば、基材の表面または両面に上記実施形態の粘着剤を塗工して塗工層を形成し、次いで必要に応じて塗工層を乾燥および硬化して、粘着剤層を形成する方法が挙げられる。粘着剤は有機溶剤に溶解して塗工しても良く、無溶剤まま熱溶融させて塗工しても良い。加熱および乾燥温度は、一般的に60~200℃であってよい。粘着剤層の厚みは、一般的に0.1~200μmであってよい。
有機溶剤に溶解して塗工する方法としては、アプリケーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーターなどが挙げられ、熱溶融させて塗工する方法としては、アプリケーター、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、スリットコーターなどが挙げられる。
また、上記方法とは別の方法として、剥離シートの表面に上記実施形態の粘着剤を塗工して塗工層を形成し、次いで必要に応じて塗工層を乾燥および硬化することによって粘着剤層を形成し、最後に粘着剤層の露出面に基材を貼り合わる方法が挙げられる。この方法において、基材の代わりに剥離シートを粘着剤層に貼り合わせると、剥離シート/粘着剤層/剥離シートの構成を有するキャスト粘着シートが得られる。
本発明の粘着シートの粘着剤層は、そのゲル分率が10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがさらに好ましい。ゲル分率が10質量%未満であることで、粘着面同士の高い密着性が発現できる。なお、本発明でゲル分率は、所定の大きさの粘着シートをSUSメッシュ(目開き:0.077mm、線径:0.05mm)に貼り付けた後、酢酸エチルに浸漬し、50℃で24時間抽出した後、100℃で30分乾燥後、下記計算式(1)で算出した数値である。
計算式(1) ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
G1:酢酸エチルで抽出する前の粘着剤層の重量
G2:酢酸エチルで抽出・乾燥した後の粘着剤層の重量
以下、本発明の実施態様について実施例によって説明する。なお、本発明の実施態様が実施例に限定されないことはいうまでもない。以下に記載する「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
また、以下に記載する実施例および表に記載された原料(溶剤を除く)の配合量は、不揮発分換算の値である。
さらに、以下に記載するMw、Mn、及びTgは、以下のようにして測定した値である。
[重量平均分子量(Mw)、および数平均分子量(Mn)の測定]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は、以下のとおりである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
(測定条件)
装置:SHIMADZUProminence(島津製作所社製)
カラム:SHODEXLF-804(昭和電工社製)を3本直列に接続
検出器:示差屈折率検出器
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.5mL/分
溶媒温度:40℃
試料濃度:0.2%
試料注入量:100μL
[ガラス転移温度(Tg)]
ロボットDSC(示差走査熱量計、セイコーインスツルメンツ社製「RDC220」)に「SSC5200ディスクステーション」(セイコーインスツルメンツ社製)を接続して、測定に使用した。約5mgの試料をアルミニウムパンに入れ、秤量して示差走査熱量計にセットし、試料を入れない同タイプのアルミニウムパンをリファレンスとして、150℃の温度で5分間保持した後、液体窒素を用いて-80℃まで急冷した。その後、昇温速度10℃/分で昇温し、得られたDSCチャートからガラス転移温度(Tg、単位:℃)を決定した。
表1~4に示した材料は、以下のとおりである。
<ポリオール(Ax)>
[ラクチド(a1)]
L-ラクチド(生分解性度100%)
D-ラクチド(生分解性度100%)
meso-ラクチド(生分解性度100%)
[単量体(a2)]
ε-カプロラクトン(生分解性度100%)
δ-バレロラクトン(生分解性度100%)
[ジオール(a3)]
EG:エチレングリコール、分子量62.1(生分解性度100%)
1,4-BG:1,4-ブタンジオール、分子量90.1(生分解性度100%)
BEPG:2-ブチル-2-エチルプロパンジオール、分子量160.3(生分解性度0%)
[その他の成分]
P-2010:クラレポリオールP-2010、Mn2,000、クラレ社製(生分解性度0%)
<ポリオール(Ay)>
EG:エチレングリコール、分子量62.1(生分解性度100%)
L212AL:プラクセルL212AL、Mn1,250、ダイセル社製(生分解性度100%)
P-510:クラレポリオールP-510、Mn500、クラレ社製(生分解性度0%)
<ポリイソシアネート(B)>
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(生分解性度0%)
2,4’-MDI:2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(生分解性度0%)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(生分解性度0%)
上記材料における生分解性は、ISO 17556、ISO 14851、ISO 14852、ISO 15985、ISO 13975、ISO 14853、ISO 14855-1、ISO 14855-2、ISO 18830、ISO 19679、ASTM D7081、およびASTM D6691等、並びにISO規格に対応するJIS規格に基づき決定した。生分解性が認められる場合、原料の生分解性度を100%とした。
[ポリオール(Ax)の製造例]
(ポリオール(Ax-1))
撹拌機、窒素導入管、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、L-ラクチドを80部、ε-カプロラクトンを19.4部、EGを0.6部、および触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトナート0.2部を仕込んだ。これら材料を、窒素雰囲気の常圧下で、190℃まで昇温させた後、10時間反応させ、重合反応を行った。その後、10mmHgまで減圧しながら、残存する未反応の単量体を1時間かけて除去し、ポリオール(Ax-1)を得た。このポリオール(Ax-1)の数平均分子量(Mn)は、10,500であった。
(ポリオール(Ax-2~Ax-14、Az-1~Az-3))
配合量(質量部)を表1に示すとおりに変更した以外は、ポリオール(Ax-1)の製造と同様にして、それぞれポリオール(Ax-2~Ax-14、Az-1~Az-3)を得た。得られたポリオールの数平均分子量(Mn)を表1に示す。
Figure 2023070009000001
[ウレタン樹脂(X)の製造例]
(ウレタン樹脂(X-1))
撹拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた反応缶内に、ポリオール(Ax-1)を100部、4,4’-MDIを2.2部仕込んだ。これらの材料を、150℃まで徐々に昇温して、5時間反応を行った。IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認した後に、反応を終了した。
このようにして得たウレタン樹脂(X-1)の重量平均分子量(Mw)は98,000、ガラス転移温度(Tg)は26℃であった。
(ウレタン樹脂(X-2~X-15、Z-1~Z-5))
ウレタン樹脂(X-1)の材料および配合量(質量部)を表2に示すとおりに変更した以外は、ウレタン樹脂(X-1)の製造と同様し、それぞれウレタン樹脂(X-2~X-15、Z-1~Z-5)を得た。得られたウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)を表2~4に示す。
なお、表2、表3において、「NCO/OH」の値は、ウレタン樹脂(X)を製造する際のポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基のモル数と2つの水酸基を有するポリオール(A)中の水酸基のモル数の比である。
[粘着剤及び粘着シートの製造例]
(実施例1)
ウレタン樹脂(X-1)100部に酢酸エチル150部を加えて溶解し、不揮発分40%の粘着剤溶液を得た。 厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の上に、アプリケーターを用いて先に調製した粘着剤溶液を乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、熱風オーブンにて100℃、2分間乾燥して粘着剤層を作製した。乾燥後、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)にラミネートし粘着シートを得た。
(実施例2~14、比較例1~5)
実施例1の材料および配合量(質量部)を表2、表3に示すとおりに変更し、これ以外は実施例1と同様にして、それぞれ実施例2~14、比較例1~5の粘着剤および粘着シートを得た。
(実施例15)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の上に、180℃に加熱したウレタン樹脂(X-15)からなる粘着剤を、アプリケーターを用いて厚みが20μmとなるように塗工し、粘着剤層を作製した。次いで、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)にラミネートし、粘着シートを得た。
(実施例16)
実施例1の材料および配合量(質量部)を表4に示すとおりに変更し、厚さ50μmのPETを厚さ50μmのセロファン(CE)フィルムに基材を変更する以外は実施例1と同様にして、実施例16の粘着剤および粘着シートを得た。
(実施例17)
実施例1の材料および配合量(質量部)を表4に示すとおりに変更し、厚さ50μmのPETを下記記載のポリ乳酸(PLA)からなる基材に変更する以外は実施例1と同様にして、実施例17の粘着剤および粘着シートを得た。
<PLAからなる基材>
ポリ乳酸(Total Corbion社製LX175)樹脂を、30mmΦインフレーション押出機(東測精密工業社製)を用いて温度180℃ にて押出成形を行い、厚さ50μmのフィルム基材を得た。
[ゲル分率]
実施例1~17、及び比較例1~5で得た粘着剤を使用して製造した粘着シートを幅30mm、長さ100mmの大きさに切り出した。次いで23℃、相対湿度50%(50%RH)の環境下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を幅40mm、長さ110mmの大きさに切り出したSUSメッシュに貼り付けた測定試料を作製した。この測定試料を、酢酸エチルに浸漬し、50℃で24時間抽出した後、100℃で30分乾燥後、上述した計算式(1)にしたがって算出した。
[粘着剤の生分解性原料の使用比率]
実施例1~17、及び比較例1~5で得た粘着剤について以下の方法にしたがい、生分解性原料の使用比率を算出した。粘着剤の生分解性原料の使用比率とは、粘着剤の総質量に対し、粘着剤の製造時に使用した生分解性の原料の質量割合であり、以下の計算式(2)にしたがって小数点第一位を四捨五入して算出した。なお、各質量は不揮発分換算である。使用比率は60%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
計算式(2)
粘着剤の生分解性原料の使用比率=[生分解性原料の使用質量%]/[粘着剤100質量%]×100
[粘着シートの物性評価]
実施例1~17、及び比較例1~5で得た粘着剤を使用して製造した粘着シートについて、塗工から1時間以内に以下の方法にしたがい測定試料を作製し、各種物性の評価を行った。結果を表2~4に示す。
(1)SUS粘着力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。次いで23℃、相対湿度50%(50%RH)の環境下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、ステンレス(SUS)板に貼付し、5kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、23℃50%RHの環境下で24時間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、剥離強度を測定した。評価は、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
AA:剥離強度が20N/25mm以上(優良)
A:剥離強度が17N/25mm以上20N/25mm未満(良好)
B:剥離強度が13N/25mm以上17N/25mm未満(使用可)
C:剥離強度が13N/25mm未満(使用不可)
(2)自着面粘着力
得られた粘着シートを2枚準備し、23℃50%RHの環境下、一方の粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着面を、他方の粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着面にラミネートした。次いで積層された粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出し、5kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、23℃50%RHの環境下で24時間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、積層された粘着シート間のT型剥離強度を測定した。評価は、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
AA:剥離強度が20N/25mm以上(優良)
A:剥離強度が17N/25mm以上20N/25mm未満(良好)
B:剥離強度が13N/25mm以上17N/25mm未満(使用可)
C:剥離強度が13N/25mm未満(使用不可)
(3)保持力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。切り出した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、幅30mm、長さ150mmのSUS板の下端部幅25mm、長さ25mmの部分に貼着し、5kgロールで1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、40℃環境下で20分保存した後、粘着シートの下端部に1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シートの貼付面上端部が元の位置から下にずれた長さを測定した。
評価基準
A:ずれた長さが2mm未満(良好)
B:ずれた長さが2mm以上10mm未満(使用可)
C:ずれた長さが10mm以上(使用不可)
(4)透明性
得られた粘着シートの粘着層の透明性を目視で確認した。評価は、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
A:粘着層は透明である(良好)
B:粘着層は微かに濁っている(使用可)
C:粘着層が白化している(使用不可)
Figure 2023070009000002
Figure 2023070009000003
Figure 2023070009000004
表2~4に示すように本発明の粘着剤(実施例)は、特定のウレタン樹脂(X)を含んでいることで、粘着剤の生分解性原料の使用比率が高く、硬化剤を必要しなくとも、粘着特性を充分に満たし、さらに透明性に優れていることが確認できた。
一方、比較例の粘着剤では、所望とする粘着特性を得ることが困難であった。比較例1は、NCO/OHの値が本発明で規定する範囲外であり、比較例2は、ガラス転移温度(Tg)が本発明で規定する範囲外である。また、比較例3、比較例4および比較例5は、ポリオール(Ax)を調製する際にラクチド(a1)、単量体(a2)およびジオール(a3)のいずれかを使用していない。
以上のことから、本発明の粘着剤は、特定のウレタン樹脂(X)の使用によって、所望とする粘着特性および透明性を実現できることが分かる。

Claims (6)

  1. 2つの水酸基を有するポリオール(A)およびポリイソシアネート(B)の反応物であるウレタン樹脂(X)を含む粘着剤であって、
    2つの水酸基を有するポリオール(A)は、ラクチド(a1)と、ラクトン単位を有する単量体(a2)と、分子量が200未満であるジオール(a3)とを含む混合物の共重合体からなる数平均分子量が2,000~40,000である2つの水酸基を有するポリオール(Ax)を含み、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基のモル数と2つの水酸基を有するポリオール(A)中の水酸基のモル数の比(NCO/OH比)が0.6~0.98であり、
    ウレタン樹脂(X)のガラス転移温度が-20℃~30℃である粘着剤。
  2. ゲル分率が10質量%未満である、請求項1に記載の粘着剤。
  3. 前記ポリオール(Ax)を構成する混合物の全質量を基準として、前記ラクチド(a1)の含有率が25~90質量%である、請求項1に記載の粘着剤。
  4. 前記2つの水酸基を有するポリオール(A)は、さらに分子量または数平均分子量が1,500未満であるジオール(Ay)を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
  5. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられた、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層とを有する粘着シート。
  6. 基材が生分解性である、請求項6記載の粘着シート。











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