JP2020033244A - グラフェン−Si複合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも簡易な方法でリチウムイオン電池の負極活物質に適したグラフェン−Si複合体を作製することが可能なグラフェン−Si複合体の製造方法を提供する。【解決手段】グラフェン−Si複合体を製造する方法は、酸化グラフェンを水に分散させた酸化グラフェン水分散液を作製する工程と、酸化グラフェン水分散液に、テトラエチルオルソシリケートと、Mg,Al,Ti,Caの少なくとも何れか1種からなる金属還元剤と、を添加して混合液を得る工程と、混合液を乾燥させて酸化グラフェン、シリカおよび金属還元剤を含有する混合物を得る工程と、混合物を熱還元することでグラフェン−Si複合体を作製する工程と、を有している。【選択図】 図2

Description

この発明はリチウムイオン電池の負極活物質として好適に用いられるグラフェン−Si複合体の製造方法に関する。
リチウムイオン電池では、正極と負極との間でリチウムイオン(以下、Liイオンとする場合がある)が移動して充電と放電とが行われ、負極側では充電時に負極活物質中にLiイオンが吸蔵され、放電時には負極活物質からLiイオンが放出される。
従来、正極側の活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)が用いられ、また負極活物質として黒鉛(グラファイト)が広く使用されていた。しかしながら、負極活物質の黒鉛は、その理論容量が372mAh/gに過ぎず、より一層の高容量化が望まれていた。そこで最近では炭素系負極活物質の代替材料として、高容量化が期待できるSi、Sn等の金属材料(Siの理論容量は4198mAh/g,Snの理論容量は993mAh/gである)が盛んに研究されている。
ところが、SiやSnはLiとの合金化反応によりLiイオンの吸蔵を行うために、Liイオンの吸蔵・放出に伴って大きな体積膨張・収縮を生じる。従ってSi,Sn単独で負極活物質を構成した場合、その膨張・収縮応力によってSiやSnの粒子が割れたり集電体から剥離したりして、充放電を繰り返したときの容量維持特性であるサイクル特性が悪化する問題があった。
Siを用いた負極活物質において、サイクル特性を向上させる手段については、種々の提案がなされている。例えば下記特許文献1では、Si核の周囲をSn-Cu系合金マトリクスやSi系合金により取り囲むことでSi核の膨張を抑え、Si核の崩壊を抑制している。
また、他の手段として、下記特許文献2では、グラフェンシート内にSi粒子を保持させたグラフェン−Si複合体が開示されている。このようなグラフェン−Si複合体からなる電極材料は、高いサイクル特性を有するとされている。しかしながら特許文献2に記載のグラフェン−Si複合体は、シリコンナノ粒子とグラフェンを別々に作って複合化するため製造工程が煩雑化してしまう問題があった。
特開2012−94490号公報 特表2014−518835号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、従来よりも簡易な方法でリチウムイオン電池の負極活物質に適したグラフェン−Si複合体を作製することが可能なグラフェン−Si複合体の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
而して本発明は、グラフェン−Si複合体を製造する方法であって、
酸化グラフェンを水に分散させた酸化グラフェン水分散液を作製する工程と、
前記酸化グラフェン水分散液に、テトラエチルオルソシリケートと、Mg,Al,Ti,Caの少なくとも何れか1種からなる金属還元剤と、を添加して混合液を得る工程と、
前記混合液を乾燥させて酸化グラフェン、シリカ、および金属還元剤を含有する混合物を得る工程と、
前記混合物を熱還元することで、グラフェンとSi粒子を含む複合体を作製する工程と、
を有していることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、導電性に優れたグラフェンの層間にSi粒子が配設された形態のグラフェン−Si複合体を製造することができる。かかる形態のグラフェン−Si複合体では、Si粒子の周りに予めSi粒子の膨張を許容するスペースが設けられているため、Si粒子が膨張収縮しても複合体自体の構造は保たれる。また、Si粒子とグラフェンの間には多数のコンタクトポイント形成されるため、仮にSi粒子が崩壊した場合でもSi−グラフェン間の電気的なコンタクトを維持することができる。このようなことから、本発明の製造方法によるグラフェン−Si複合体を負極活物質に用いた場合には、充放電を繰り返したときのサイクル特性の向上を図ることができる。
本発明の製造方法では、Mgなどの金属還元剤を用いた熱還元の工程により、グラフェン−Si複合体の材料である酸化グラフェンおよびシリカを、同時に(一度に)還元する。このため、Si粒子をグラフェンとは別に作って、これらを複合化させる従来の製造方法に比べて、容易にグラフェン−Si複合体を得ることができる。
グラフェン−Si複合体を構成するグラフェン(C)とSiとで理論容量を比較すると、Siの理論容量が著しく高い。高容量化を図るためには、前記混合液中のSiの割合を、Cの割合よりも多くすることが望ましい。
ここで、混合液中のSi含有量を、質量%比で、混合液中のC含有量の2倍以上とすれば、負極活物質を黒鉛とした場合に比べ、約2倍以上の初期放電容量を得ることができる。
本発明の製造方法では、熱還元の工程でシリカを十分にSiに還元できない場合、所定の容量が得られない。このため高容量化のためには一定量以上の金属還元剤を配合する必要がある。金属還元剤がMgの場合、混合液中のMgの割合を、Siの割合よりも多くすることが望ましく、さらには、混合液中のMg含有量を、質量%比で、Si含有量の3倍以上とすることが望ましい。
本発明の一実施形態に係るグラフェン−Si複合体の製造方法のフローチャートである。 図1に示した各製造工程の内容を説明するための図である。 実施例4に係るグラフェン−Si複合体の電子顕微鏡写真で、(a)は外観を、(b)は断面を示している。 実施例4に係るグラフェン−Si複合体におけるサイクル特性を、比較例1のサイクル特性とともに示した図である。
次に、本発明の一実施形態の製造方法について具体的に説明する。
本例では、酸化グラフェンとシリカの混合物を、Mgを用いた熱還元法により還元して、グラフェン−Si複合体を得る。図1にその製造方法のフローチャートを示している。
<酸化グラフェン水分散液作製工程(S102)>
同工程では、まずグラファイト(S101)を酸化させて酸化グラフェンを作製する。グラファイトを酸化させる方法としては、公知の方法(例えば、Hummers法、Broide法、Staud法)や、これら公知の方法を改良した方法を使用することができる。
本実施形態においては、例えば、Hummers法を改良した方法を使用することができる。この方法は、まず、硫酸(H2SO4)とペルオキソ二硫酸ジカリウム(K2S2O8)と五酸化二リン(P2O5)の混合溶液に、天然グラファイトを加え、所定時間、攪拌する。次に、この溶液を室温に戻した後、蒸留水で希釈し、所定時間、攪拌する。その後、濾過を行い、中性になるまで蒸留水で洗浄した後、所定時間、室温で乾燥させて、プレ酸化グラファイトを得る。次に、所定温度の条件下で、得られたプレ酸化グラファイトに硫酸と過マンガン酸カリウムを加えた後、所定温度で所定時間、攪拌する。次に、蒸留水を加えて、所定時間、攪拌した後、過酸化水素水を含む水溶液を加えて濾過を行い、塩酸水溶液で洗浄し、例えば、1週間、透析した後、水に分散させる。そして、作製した酸化グラフェン水分散液を水により希釈することにより、所定の濃度を有する酸化グラフェンの水分散液を作製する。
図2(a)に示すように、原材料の天然グラファイトはシート状のグラフェンが何層にも積み重なって構成されているが、酸化されることで各グラフェンの層間が広げられた状態となる。
<酸化グラフェン/シリカ/Mg混合液作製工程(S103)>
次に、作製した酸化グラフェン水分散液に、テトラエチルオルソシリケート(以下、TEOSとする)およびMg粉末を所定の比率で添加し、超音波処理により均一に分散させる。酸化グラフェン水分散液においては、酸と水が存在しているため、ゾル−ゲル反応が進行しTEOSからシリカが生成される。生成されたシリカの粒子は、図2(b)に示すように、酸化グラフェンの層間に形成された隙間に入り込む。シリカおよびMgを均一に分散させるための同工程における撹拌時間は、5分以下とすることが好ましい。
<乾燥工程(S104)>
前の工程で作製した酸化グラフェン/シリカ/Mg混合液を燃焼ボード上にて所定温度で乾燥させて、水分を除去し、酸化グラフェン/シリカ/Mg混合粉末を得る。
<熱還元工程(S105)>
次に、作製した酸化グラフェン/シリカ/Mg混合粉末を、不活性雰囲気中(真空中、窒素雰囲気下、または希ガス雰囲気下)において、所定温度で熱還元することにより、図2(c)に示すように、酸化グラフェンおよびシリカが、グラフェンおよびSiにそれぞれ還元される。その結果、グラフェンとSi粒子を含んだグラフェン/Si/MgO混合粉末を得る。なお、熱還元温度は、650〜1000℃の範囲が望ましい。
<Mg除去工程(S106)>
次に、作製したグラフェン/Si/MgO混合粉末を、図2(d)に示すように、HCl溶液中で所定時間撹拌する。その後、脱イオン水で洗浄し、濾過することによりMgをMgCl2として除去する。
<シリカ除去工程(S107)>
次に、Mgを除去した後の混合粉末を自然乾燥させた後、図2(e)に示すように、HF溶液中で所定時間エッチングして、未反応のシリカ粒子を除去する。
<乾燥工程(S108)>
次に、シリカを除去した後の混合粉末を自然乾燥させた後、所定温度で所定時間加熱し乾燥させることで、負極活物質として好適に用いることができるグラフェン−Si複合体粉末を得ることができる。
なお、本発明におけるグラフェン−Si複合体の形態は、特に限定されるものではなく、粉末状のほか、薄片状などの形態を例示することができる。
(負極について)
上記グラフェン−Si複合体粉末を負極活物質に用いて成る負極は、次のようにして構成することができる。
具体的には、負極は、導電性基材と、導電性基材の表面に積層された導電膜とを含んで構成する。導電膜は、バインダ中に少なくとも上述した本発明の負極活物質を含有している。導電膜は、他にも、必要に応じて、導電助材を含有していても良い。導電助材を含有する場合には、電子の導電経路を確保しやすくなる。
また、導電膜は、必要に応じて、骨材を含有していても良い。骨材を含有する場合には、充放電時の負極の膨張・収縮を抑制しやすくなり、負極の崩壊を抑制できるため、サイクル特性を一層向上させることができる。
上記導電性基材は、集電体として機能する。その材質としては、例えば、Cu、Cu合金、Ni、Ni合金、Fe、Fe基合金などを例示することができる。好ましくは、Cu、Cu合金であると良い。また、具体的な導電性基材の形態としては、箔状、板状等を例示することができる。好ましくは、電池としての体積を小さくできる、形状自由度が向上するなどの観点から、箔状であると良い。
上記バインダの材質としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸などを好適に用いることができる。これらは1種または2種以上併用することができる。これらのうち、機械的強度が強く、活物質の体積膨張に対しても良く耐え得、バインダの破壊によって導電膜の集電体からの剥離を良好に防ぐ意味で、ポリイミド樹脂が特に好ましい。
上記導電助材としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレンなどを例示することができる。これらは1または2以上併用しても良い。これらのうち、好ましくは、電子伝導性を確保しやすいなどの観点から、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどを好適に用いることができる。
上記導電助材の含有量は、導電性向上度、電極容量などの観点から、負極活物質100質量部に対して、好ましくは、0〜30質量部、より好ましくは、4〜13質量部の範囲内であると良い。また、上記導電助材の平均粒子径は、分散性、扱い易さなどの観点から、好ましくは、10nm〜1μm、より好ましくは、20〜50nmであると良い。
上記骨材としては、充放電時に膨張・収縮しない、または、膨張・収縮が非常に小さい材質のものを好適に用いることができる。例えば、黒鉛、アルミナ、カルシア、ジルコニア、活性炭などを例示することができる。これらは1または2以上併用しても良い。これらのうち、好ましくは、導電性、Li活性度などの観点から、黒鉛などを好適に用いることができる。
上記骨材の含有量は、サイクル特性向上などの観点から、負極活物質100質量部に対して、好ましくは、10〜400質量部、より好ましくは、43〜100質量部の範囲内であると良い。また、上記骨材の平均粒子径は、骨材としての機能性、電極膜厚の制御などの観点から、好ましくは、10〜50μm、より好ましくは、20〜30μmであると良い。なお、上記骨材の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
負極は、例えば、適当な溶剤に溶解したバインダ中に、負極活物質、必要に応じて、導電助材、骨材を必要量添加してペースト化し、これを導電性基材の表面に塗工、乾燥させ、必要に応じて、圧密化や熱処理等を施すことにより製造することができる。
(リチウムイオン電池について)
負極を用いてリチウムイオン電池を構成する場合、上記負極以外の電池の基本構成要素である正極、電解質、セパレータなどについては、特に限定されるものではない。
上記正極としては、具体的には、例えば、アルミニウム箔などの集電体表面に、LiCoO2、LiNiO2、LiFePO4、LiMn24などの正極活物質を含む層を形成したものなどを例示することができる。
上記電解質としては、具体的には、例えば、非水溶媒にLi塩を溶解した電解液などを例示することができる。その他にも、ポリマー中にLi塩が溶解されたもの、ポリマーに上記電解液を含浸させたポリマー固体電解質などを用いることもできる。
上記非水溶媒としては、具体的には、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記Li塩としては、具体的には、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiAsF6などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
また、その他の電池構成要素としては、セパレータ、缶(電池ケース)、ガスケット等が挙げられるが、これらについても、リチウムイオン電池で通常採用される物であれば、何れの物であっても適宜組み合わせて電池を構成することができる。
なお、電池形状は、特に限定されるものではなく、筒型、角型、コイン型など何れの形状であっても良く、その具体的用途に合わせて適宜選択することができる。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
1.負極活物質の作製
下記表1に示す7種類の負極活物質を作製した。
実施例1〜4では、図1の手順に沿ってグラフェン−Si複合体を作製した。なお、表1におけるグラフェン/Si、Si/Mgの配合比率は、酸化グラフェン/シリカ/Mg混合液作製工程(S103)における、酸化グラフェン含まれるC、TEOSに含まれるSi、およびMg粉末の各質量%により算出される。
(実施例1)
まず、酸化グラフェン水分散液作製工程(S102)では、硫酸(H2SO4)1mLとペルオキソ二硫酸ジカリウム(K2S2O8)100mg、五酸化二リン(P2O5)100mgを加えた80℃の溶液に、天然グラファイト粉末(SECカーボン社製、商品名:SNO−10)205mgを加え、5時間攪拌した。
次に、室温に戻した後、蒸留水200mLで希釈し、12時間攪拌した。そして、濾過後、中性になるまで蒸留水で洗浄し、室温で12時間乾燥させ、プレ酸化グラファイトを得た。
次に、得られたプレ酸化グラファイトに対して、硫酸(H2SO4)8mLと過マンガン酸カリウム(K2MnO4)804mgを20℃以下に保ちながら加えた後、35℃で2時間、攪拌した。
次に、蒸留水10mLを50℃以下に保ちながら加え、さらに2時間、攪拌した後、30%の過酸化水素水1mLを含む水溶液40mLを加えて濾過した。
次に、1:10の塩酸水溶液(50mL)で洗浄し、1週間、透析した後、水に分散させて水分散液(濃度は25mg/mL)を得た。そして、この水分散液6mLに対し、水4mLを加えて希釈することにより、15mg/mLの濃度を有する酸化グラフェン水分散液を作製した。
次に、酸化グラフェン/シリカ/Mg混合液作製工程(S103)では、5mg/mLに濃度調整した酸化グラフェン水分散液15mLに、TEOS667mgおよびMg粉末234mgを添加し、超音波処理を5分間実施することにより均一に分散させた。このときの混合液中のCとSiの配合比率は、C:Si=3:7である。また、混合液中のSiとMgの配合比率は、Si:Mg=1:3である。
乾燥工程(S104)では、前の工程で作製した混合液を燃焼ボード上にて80℃で乾燥させて、水分を除去し、酸化グラフェン/シリカ/Mg混合粉末を得た。
次に、熱還元工程(S105)では、作製した酸化グラフェン/シリカ/Mg混合粉末を、真空中で800℃、30分熱還元処理し、酸化グラフェンおよびシリカを、グラフェンおよびSiにそれぞれ還元して、グラフェン/Si/MgO混合粉末を得た。
次に、Mg除去工程(S106)では、グラフェン/Si/MgO混合粉末を、1M HCl溶液中で24時間撹拌処理を実施した。その後、脱イオン水で洗浄し、濾過することによりMgをMgCl2として除去した。
次に、シリカ除去工程(S107)では、Mgを除去した後の混合粉末を自然乾燥させた後、46%HF溶液中で12時間エッチングして、シリカ粒子を除去した。
次に、乾燥工程(S108)では、シリカを除去した後の混合粉末を自然乾燥させた後、95℃で5時間乾燥させ、グラフェン−Si複合体粉末を得た。
(実施例2)
上記実施例1と同様にして、酸化グラフェン水分散液を作製した。次に、5mg/mLに濃度調整した酸化グラフェン水分散液15mLに、TEOS2577mgおよびMg粉末662mgを添加し、超音波処理を5分間実施することにより均一に分散させた。このときの混合液中のC(グラフェン)とSiの配合比率は、C:Si=1:9である。また、混合液中のSiとMgの配合比率は、Si:Mg=1:3である。以降、実施例1と同様の手順にてグラフェン−Si複合体粉末を得た。
(実施例3)
上記実施例1と同様にして、酸化グラフェン水分散液を作製した。次に、5mg/mLに濃度調整した酸化グラフェン水分散液15mLに、TEOS667mgおよびMg粉末364mgを添加し、超音波処理を5分間実施することにより均一に分散させた。このときの混合液中のC(グラフェン)とSiの配合比率は、C:Si=3:7である。また、混合液中のSiとMgの配合比率は、Si:Mg=1:4.5である。以降、実施例1と同様の手順にてグラフェン−Si複合体粉末を得た。
(実施例4)
上記実施例1と同様にして、酸化グラフェン水分散液を作製した。次に、5mg/mLに濃度調整した酸化グラフェン水分散液15mLに、TEOS622mgおよびMg粉末413mgを添加し、超音波処理を5分間実施することにより均一に分散させた。このときの混合液中のC(グラフェン)とSiの配合比率は、C:Si=3:7である。また、混合液中のSiとMgの配合比率は、Si:Mg=1:5である。以降、実施例1と同様の手順にてグラフェン−Si複合体粉末を得た。
(比較例1)
ガスアトマイズ法により作製した純Si粉末(平均粒径4μm)を、比較例1に係る負極活物質とした。
(比較例2,3)
ガスアトマイズ法により作製した純Si粉末(平均粒径4μm)と、グラファイト(平均粒径18μm)を表1の配合比率に沿って準備し、これらを遊星ボールミルにより混合し、それぞれ比較例2,3に係る負極活物質とした。
2.負極活物質の組織観察等
各実施例に係る負極活物質について、走査型電子顕微鏡(SEM)による組織観察を行った。図3(a)及び(b)に、実施例4に係るグラフェン−Si複合体粉末の走査型電子顕微鏡写真が示してある。
図3(a)中で相対的に大きな塊状のものがグラフェンであり、またその表面に多数付着している小さな粒子がSi粒子である。同図(b)の断面写真で示すように、グラフェンは層状に積み重ねられた形状をなしており、本発明のグラフェン−Si複合体粉末にあっては、隣接するグラフェンの間(層間)に隙間が形成され、かかる隙間部分に多数のSi粒子が収容されている。
3.負極活物質の評価
3.1 充放電試験用コイン型電池の作製
初めに、各負極活物質100質量部と、導電助材としてのケッチェンブラック(ライオン(株)製)6質量部と、結着剤としてのポリイミド(熱可塑性樹脂)バインダ19質量部とを配合し、これを溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合し、各負極活物質を含む各ペーストを作製した。
以下の通り、各コイン型半電池を作製した。ここでは、簡易的な評価とするため、負極活物質を用いて作製した電極を試験極とし、Li箔を対極とした。先ず、負極集電体となるSUS316L箔(厚み20μm)表面に、ドクターブレード法を用いて、50μmになるように各ペーストを塗布し、乾燥させ、各負極活物質層を形成した。形成後、ロールプレスにより負極活物質層を圧密化した。これにより、実施例および比較例に係る試験極を作製した。
次いで、実施例および比較例に係る試験極を、直径11mmの円板状に打ち抜き、各試験極とした。
次いで、Li箔(厚み500μm)を上記試験極と略同形に打ち抜き、各対極を作製した。また、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との等量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lの濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
次いで、各試験極を各正極缶に収容するとともに(各試験極はリチウムイオン電池では負極となるべきものであるが、対極をLi箔としたときにはLi箔が負極となり、試験極が正極となる)、対極を各負極缶に収容し、各試験極と各対極との間に、ポリオレフィン系微多孔膜のセパレータを配置した。
次いで、各缶内に上記非水電解液を注入し、各負極缶と各正極缶とをそれぞれ加締め固定した。
3.2 充放電試験
各コイン型半電池を用い、電流値0.2mAの定電流充放電を1サイクル分実施し、この放電容量を初期容量C0とした。2サイクル目以降は、1/5Cレートで充放電試験を実施した(Cレート:電極を(充)放電するのに要する電気量C0を1時間で(充)放電する電流値を1Cとする。5Cならば12分で、1/5Cならば5時間で(充)放電することとなる。)。この放電時に使用した容量(mAh)を活物質量(g)で割った値を各放電容量(mAh/g)とした。
本実施例では、上記充放電サイクルを50回行うことにより、サイクル特性の評価を行った。そして、得られた各放電容量から容量維持率(50サイクル後の放電容量/初期放電容量(1サイクル目の放電容量)×100)を求めた。サイクル特性についての目標は、60%とした。
その結果が表1に併せて示してある。
表1の結果から次のことが分かる。
比較例1は、負極活物質に純Siを用いた例である。初期放電容量は高いが、サイクル特性が悪い。Si粒子の膨張収縮の程度が大きく、Si粒子の割れや集電体からの剥離がサイクル特性低下の原因と推測される。
比較例2,3は、純Si粉末とグラファイトの混合粉を負極活物質として用いた例である。これら比較例2,3では、負極活物質としてのSiの一部がグラファイトに置き換えられているため、比較例1に比べて、初期放電容量は低くなる一方、サイクル特性は向上している。しかしながら比較例2,3は、純Si粉末とグラファイトとを単に混合したものであるため、本実施形態の複合体のような構造となっていない。50サイクル後の容量維持率は50%未満であり、サイクル特性については、いまだ十分なレベルではない。
これに対し実施例1〜4は、50サイクル後の容量維持率が68〜74%と、比較例1〜3に比べて高く、サイクル特性の向上が図られている。
実施例1と実施例2を比較してみると、Si比率が高い実施例2では、初期放電容量が高くなる一方で、50サイクル後の容量維持率については若干の低下が認められる。
実施例3は、実施例1に対しグラフェン/Siの比率は同じで、Siに対するMgの比率を高めた例である。グラフェン/Siの比率が同じにも拘らず実施例1よりも初期放電容量が高くなっている。Mgの比率を高めたことにより、シリカからSiへの還元比率が高まったことによる効果と思われる。
実施例4は、実施例3に対しMgの比率を更に高めた例である。実施例3に対して、初期放電容量が更に高くなっている。なお、図4では、実施例4におけるサイクル毎の放電容量の変化を示している。
以上の結果から、本発明の製造方法では、グラフェン/Siの比率、Si/Mgの比率を調整することにより、グラフェン−Si複合体を、高容量かつサイクル安定性の高い負極活物質とすることができることが分る。
以上本発明のグラフェン−Si複合体の製造方法について詳しく説明したが、本発明は上記実施形態,実施例に限定されるものではない、たとえば酸化グラフェンおよびシリカの還元に用いる金属酸化剤については、Mgに代えてAl,Ti,Caを用いることも可能である等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (5)

  1. 酸化グラフェンを水に分散させた酸化グラフェン水分散液を作製する工程と、
    前記酸化グラフェン水分散液に、テトラエチルオルソシリケートと、Mg,Al,Ti,Caの少なくとも何れか1種からなる金属還元剤と、を添加して混合液を得る工程と、
    前記混合液を乾燥させて酸化グラフェン、シリカ、および金属還元剤を含有する混合物を得る工程と、
    前記混合物を熱還元することで、グラフェンとSi粒子を含む複合体を作製する工程と、
    を有していることを特徴とするグラフェン−Si複合体の製造方法。
  2. 前記混合液中のSiの割合は、前記混合液中のCの割合よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のグラフェン−Si複合体の製造方法。
  3. 前記混合液中のSi含有量は、質量%比で、前記混合液中のC含有量の2倍以上であることを特徴とする請求項2に記載のグラフェン−Si複合体の製造方法。
  4. 前記金属還元剤がMgであって、前記混合液中のMgの割合が、前記混合液中のSiの割合よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のグラフェン−Si複合体の製造方法。
  5. 前記混合液中のMg含有量は、質量%比で、前記Si含有量の3倍以上であることを特徴とする請求項4に記載のグラフェン−Si複合体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP7506887B2 (ja) 2020-05-26 2024-06-27 国立大学法人東北大学 炭素金属複合成形体及びその製造方法

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