印刷物や立体物の色は、これまで見本色との照合を目視観測で行う方法が採用されてきたが、目視観測は十分な経験が必要とされるため、検査結果にバラツキが生じて正確性に問題が生じる。また、検査工程の機械化が進まず、省力化に対して大きな制約がある。印刷物の複数の色を、数値等に置き換えて定量化すれば迅速で正確に色判別できるようになる。そのような色判別方法は、検査工程の自動化による大幅な省力化を図ることができるだけでなく、色のデジタル化によって定量化が可能になることから期待が大きく、実現化が強く望まれている。
しかしながら、前記の特許文献1及び2に記載の色判別方法は、それぞれ2色カラーコピーで使用する色を自動的に選択する方法、及びオリジナルの印刷物とは異なる印刷形態で作成された複製物を検出する方法としてサンプリング手段で抽出された画素について色の判別を行う方法である。したがって、色を平面で読み取って一括でデジタル処理して行う色判別方法とは原理的に異なり、工業用のシールやラベル等の印刷物や塗装された自動車等の立体物の色を製品ごとに短時間に、且つ、高精度で判別する用途には適さない。
また、特許文献3に記載の画像処理装置は、有彩色の画素を白色の画素に置き換える変換手段と変換された無彩色画像に対して諧調手段を施す手段とを有するものであるが、着色された有彩色部分の色判別方法については記載も示唆もされていない。したがって、工業用のシールやラベル等の印刷物や塗装された自動車等の立体物に配色された複数の色に対しては、その技術をそのまま適用することが困難である。
さらに、前記特許文献4に記載の色判別方法は、適用がカラーベースのイメージコードに限られており、複雑な配色が施された印刷物や立体物の色判別を想定したものではなく、それらの用途に適用するには技術的な改良が必要である。
一方、特願2015−84669号に記載の色判別方法は、輝度値を優先して解析する方法であり、輝度値が非常に近い色を判別する場合や複数の色を簡便に数値化して、迅速に、且つ、高精度な色判別を行なう場合には、さらに検討を進める必要があることが分かった。
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、一般的な印刷物に比べて色の再現性等の点で精密さや厳密さが求められる工業用のシールやラベル等の2次元印刷物又は立体物塗装品等の3次元印刷物に対して、簡略な方法で、より迅速に、かつ正確に色判別を行うことができる印刷物の色判別方法及び色判別装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために、印刷物の色の判別を平面で行うときに基材や色の種別又は照明等の外的環境による影響を低減するとともに、色のデジタル化により複数の色を一括して定量的に、且つ簡略な方法で色判別を行なう方法として、印刷物等の色を面で読み取ったバイナリーデータに基づいて無彩色と区別して分離した有彩色を有するピクセルについて、あらかじめ設定する所定の範囲に含まれる色相値及び輝度値を有するピクセル数が多い色を、前記ピクセル数が多い順に色判別解析用のピーク色として選別し、そのピーク色周辺のピクセルが有する算出輝度値を平均化処理して得られる輝度値を色判別用の評価パラメータとして使用することにより、迅速で正確な色判別を行うことができることを見出し本発明に到った。
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
本発明の請求項1に係る色判別方法は、2次元の印刷物又は3次元の立体物の色を数値化することにより色を判別する方法であって、
前記印刷物又は立体物の色を平面で読み取るステップと、
該平面で読み取った画像のピクセル(画素)位置に相当する領域に保存されるバイナリデータから赤、緑、青の各値を取得するステップと、
該赤、緑、青の各値の差が大きいピクセル及び小さいピクセルを、それぞれ有彩色及び無彩色として判定するステップと、
有彩色を有するピクセルの色相値及び輝度値を算出するステップと、
前記算出された色相値及び輝度値の組合せの中で、検出頻度が最も高い組合せをピーク値として決定するステップと、
前記ピーク値を構成するピクセルの数が多い順に、前記ピーク値を色判別解析用のピーク色として選択するステップと、
前記ピーク値を中心にして前記色相値及び輝度値にあらかじめ所定の範囲を設定するステップと、
前記あらかじめ設定した所定の範囲に含まれる輝度値及び色相値を有するピクセルすべてのRGB平均値を算出し、画像の平均化を行うステップと、
前記RGB平均値を前記ピーク色の輝度平均値として決定するステップと、を有する。
本発明の色判別方法によれば、一般的な印刷物だけでなく、工業用シール・ラベル等の2次元印刷物や立体塗装品等の3次元印刷物に着色されている有彩色をデジタル化することにより、様々な色を区別して一括で判別することができる。また、印刷物の図案、模様及び文字や照明等の外的環境の変化があっても、それらによって影響を受けない状態で正確な色判別を行うことができる。
本発明の請求項2に係る色判別方法は、前記ピーク色として選択するステップにおいて、前記算出される色相値及び輝度値の組合せの中から色相値に着目し、前記色相値の検出頻度の高い有彩色をピーク色として、検出頻度の高い順に従って色相値環上で等分に区分けされた各色に割り当てるステップを有する。それにより、色判別評価対象となる色を簡便な方法で、容易に選択抽出することができる。
本発明の請求項3に係る色判別方法は、さらに、前記ピーク色の色相値に基づいて、色相値の範囲を前記あらかじめ設定した範囲より狭い範囲で再設定するステップと、前記ピーク色の算出色相値が前記再設定する色相値の範囲に含まれるか否かを確認するステップと、を有する。
本発明の色判別方法によれば、この構成により、2次元印刷物や3次元印刷物において、色相値が非常に接近するため前記所定の範囲に複数の色が混在する場合に、再度、色相値の範囲を狭めた形で再設定することにより、正確な色判別が行われたか否かを容易に把握することができる。
本発明の請求項4に係る色判別方法は、さらに、画像全体のピクセル数に対する前記有彩色を有するピクセル数の比率を、合格最低ピクセル割合として所定の値以上に設定するステップを有する。
本発明の色判別方法によれば、この構成により、2次元印刷物や3次元印刷物において印刷ムラ、シミ又は異物等に起因する色が評価対象から除外されるため、前記色相値及び輝度値を算出するときの精度を高めることができ、正確な色判別を行なうことが可能になる。
本発明の請求項5に係る色判別方法は、さらに、前記赤、緑、青の各値の差から有彩色及び無彩色として振り分けるときの基準値として使用する前記各値の差の絶対値を無彩色判定値とするとき、該無彩色判定値を小さくするとともに、前記ピーク色を判別解析用の色として選出するステップにおいて、前記ピーク色を1つに設定することにより、前記印刷物又は立体物に配色されたグレーに近い色を判別することを特徴とする。
本発明の色判別方法によれば、この構成により、前記印刷物又は立体物に配色されたグレーに近い色を判別することができる。したがって、本発明の色判別方法は、有彩色以外のグレーの色判別にも適用することができ、使い勝手に優れる。
本発明の請求項6に係る色判別方法は、さらに、前記ピーク色の算出輝度値に基づいて、前記あらかじめ設定した所定の範囲よりも狭い範囲で輝度値の範囲を再設定するステップと、
前記ピーク色及びその周辺のピクセルが有する算出輝度値を、前記再設定した範囲と同じ範囲内で平均化して平均基準輝度値を求めるステップと、
前記平均基準輝度値が前記再設定する輝度値の範囲に含まれるか否かを判定するステップと、
を有する。
本発明の色判別方法によれば、前記ピーク色及びその周辺のピクセルにおいて、前記平均輝度値が、前記再設定する輝度値の範囲に含まれるか否かを判定することにより、色相値が近い色が混在する場合であっても各色の判別を正確に行うことができる。
本発明の請求項7に係る色判別方法は、前記再設定する輝度値の範囲が前記算出輝度値に応じて勾配を有しており、前記算出輝度値が0から255と大きくなるに伴って段階的に又は連続的に小さくなるように設定されることを特徴とする。
本発明の色判別方法は、この構成により、実際に人間が目視して感じるときと同じような状態で色の解析を行うことができ、色判別が実情に即したものとなる。
本発明の請求項8に係る色判別方法は、前記印刷物又は立体物の見本サンプル及び測定サンプルを用いて請求項6又は7に記載の色判別方法によって色の解析を行うときに、
前記見本サンプルにおいて、前記ピーク色が有する輝度値の範囲を前記あらかじめ設定した範囲よりも狭く再設定した範囲の形で基準設定データとして蓄積するステップと、前記測定サンプルにおいて、前記ピーク色及びその周辺のピクセルが有する算出輝度値を前記見本サンプルで再設定した範囲と同じ範囲内で平均化して算出される平均基準輝度値が、前記見本サンプルの基準設定データの範囲内に含まれるか否かによって、前記測定サンプルの色が所望の色であるか否かを判定するステップと、を有することを特徴とする色判別方法を提供する。
本発明の色判別方法は、この構成により、前記印刷物又は立体物の見本サンプルと測定サンプルとの対比を行うとき、前記測定サンプルの平均基準輝度値が前記見本サンプルの基準設定データに含まれるか否かの判定によって、様々な色を、簡単に、且つ高精度に検査又は選別できるため、色判別検査の自動化による大幅な省力化を図ることができる。
本発明の請求項9に係る色判別方法は、前記印刷物又は立体物の色を平面で読み取るステップが、スキャナー、デジタルマイクロスコープ、固体撮像素子、カメラ及び面受光用バンドル光ファイバーの少なくとも何れかの手段によって画像化して行われる。
本発明の色判別方法は、この構成により、前記印刷物又は立体物の色の読取を簡単に行うことができ、適用範囲を広げることができる。それらの読取手段の中で、デジタルマイクロスコープは小型であり、携帯性と使い勝手に優れるだけでなく、人間の視覚に準じる色の読取が可能になるため特に有効な手段である。
本発明の請求項10に係る色判別装置は、2次元の印刷物又は3次元の立体物の色を数値化することにより色を判別する装置であって、
前記印刷物又は立体物の色を平面で読み取る手段、
該平面で読み取った画像のピクセル位置に相当する領域に保存されるバイナリデータから赤、緑、青の各値を取得するステップと、前記赤、緑、青の各値の差が小さいピクセル及び大きいピクセルを、それぞれ有彩色及び無彩色として判定するステップと、有彩色を有するピクセルの色相値及び輝度値を算出するステップと、有彩色を有するピクセルの色相値及び輝度値を算出するステップと、前記算出された色相値及び輝度値の組合せの中で、検出頻度が最も高い組合せをピーク値として決定するステップと、前記ピーク値を構成するピクセルの数が多い順に、前記ピーク値を色判別解析用のピーク色として選択するステップと、前記ピーク値を中心にしてあらかじめ設定した所定の範囲に含まれる輝度値及び色相値を有するピクセルすべてのRGB平均値を算出し、画像の平均化を行うステップと、前記RGB平均値を前記ピーク色の輝度平均値として決定するステップとを行う計算手段、及び
該計算手段に使用する解析パラメータ、解析結果、及び判定結果の少なくともいずれかを表示する表示手段を備える。
本発明の請求項11に係る色判別装置は、前記ピーク色として選択するステップが、前記算出される色相値及び輝度値の組合せの中から色相値に着目し、前記色相値の検出頻度の高い有彩色をピーク色として、検出頻度の高い順に従って色相値環上で等分で区分けされた各色に割り当てるステップを有する。その構成により、色判別評価対象となる色を簡便な方法で容易に選択抽出することができる装置を構築することができる。
本発明の請求項12に係る色判別装置は、さらに、前記計算手段が、前記ピーク色の算出色相値が適切であるのか否かを確認するため、前記表示されたピーク色の色相値に基づいて、前記色相値の範囲を前記あらかじめ設定した範囲より狭い範囲で再設定するステップを有する。この構成により、色相値が非常に接近していて前記所定の範囲に複数の色が混在する場合に、再度、色相値の範囲を狭めた形で再設定することにより、正確な色の判別が行われたか否かを容易に把握することができる装置を構築することができる。
本発明の請求項13に係る色判別装置は、前記計算手段が、さらに、画像全体のピクセル数に対する前記有彩色を有するピクセル数の比率を、合格最低ピクセル割合として所定の値以上に設定するステップを有する。この構成により、前記色相値及び輝度値を算出するときの精度を高めることができる。
本発明の請求項14に係る色判別装置は、さらに、前記計算手段が、前記ピーク色の算出輝度値に基づいて、前記あらかじめ設定した所定の範囲よりも狭い範囲で輝度値の範囲を再設定するステップと、前記ピーク色及びその周辺のピクセルが有する算出輝度値を前記再設定した範囲と同じ範囲内で平均化して平均基準輝度値を求めるステップと、前記平均基準輝度値が前記再設定する輝度値の範囲に含まれるか否かを判定するステップと、を有する。
本発明の請求項15に係る色判別装置は、さらに、前記計算手段において、前記再設定する輝度値の範囲が、前記ピーク色の算出輝度値に応じて勾配を有しており、前記算出平均値が0から255と大きくなるに伴って、段階的に又は連続的に小さくなるように設定するステップを有する。この構成により、実際に人間が目視して感じるときと同じような状態で色の解析が可能となるため、実情に即した色判別装置を構築することができる。
本発明の請求項16に係る色判別装置は、請求項14又は15に記載の色判別装置が、前記印刷物又は立体物の見本サンプル及び測定サンプルの色を平面で読み取る手段、及び前記見本サンプル及び測定サンプルの各画像を画像データとして記憶する手段を有し、さらに、前記計算手段が、前記見本サンプルにおいて、前記ピーク色が有する輝度値の範囲を前記あらかじめ設定した範囲よりも狭く再設定した範囲の形で基準設定データとして蓄積するステップと、前記測定サンプルにおいて、前記ピーク色及びその周辺のピクセルが有する算出輝度値を前記見本サンプルで再設定した範囲と同じ範囲内で平均化して算出される平均基準輝度値が、前記見本サンプルの基準設定データの範囲内に含まれるか否かによって、前記測定サンプルの色が所望の色であるか否かを判定するステップと、を有することを特徴とする。この構成により、前記印刷物又は立体物の見本サンプルと測定サンプルとの対比を簡単に、且つ、正確に行うことが可能となり、自動化と省力化が図れる色判別装置を構築することができる。
本発明の請求項17に係る色判別装置は、前記印刷物又は立体物の色を平面で読み取る手段が、スキャナー、デジタルマイクロスコープ、固体撮像素子、カメラ及び面受光用バンドル光ファイバーの少なくとも何れかである。この構成により、前記印刷物又は立体物の色の読取を簡単に行うことが可能となり、広い適用範囲を有する色判別装置が構築することができる
本発明による色判別方法は、一般的な印刷物だけでなく、工業用シール・ラベル等の2次元印刷物や立体塗装品等の3次元印刷物に着色されている有彩色をデジタル化することにより、様々な色を区別して一括で判別する方法であり、従来よりも簡便な方法で容易に色判別を行なうことができる。加えて、印刷物の図案、模様及び文字や照明等の外的環境が変化しても、それらの因子によって影響を受けない状態で色判別をより高精度で正確に行うことができる。また、本発明の色判別方法によって解析される色は、実際に人間の視覚で感じるものとほとんど変わらないたため、様々な色を実情に即した形で、簡単かつ高精度で検査又は選別を行うことができる。したがって、色判別検査の自動化による大幅な省力化が図れる。
本発明の色判別方法を実施するための色判別装置は、印刷物を読み取って画像化する手段と、読み取った画像データから色相値及び輝度値に変換する手段と、これらの光学物性値を解析して色判別を行うコンピュータ等の計算手段と、色判別結果を表示する手段とからなるシンプルな構成であるため、機能的に高い色判別機能と性能を有しながら、汎用性に富む安価な装置を提供することができる。
図1は本発明による印刷物又は立体物の色判別方法の工程を示す図であり、色判別は印刷物又は立体物の輝度値及び色相値を用いて行われる。図1に示すように、本発明による印刷物の色判別方法はS1〜S22の各工程を有する。
まず、平面又は立体の印刷物又は立体物を設置し(S1)、それらの色を平面で画像として読み取り(S2)、該平面で読み取った画像データからビットマップ画像を形成して(S3)、該ビットマップ画像のピクセル位置に保存されるバイナリ―データをピクセルごとに光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの値を取得する(S4)。ここで、前記赤、緑、青の各値の差から有彩色及び無彩色として振り分けるときの基準値として使用する前記各値の差の絶対値を「無彩色判定値」と定義して設定する。次いで、取得した赤(R)、緑(G)、青(B)の各値の差を、予め設定した前記無彩色判定値と対比し(S5)、該許容値よりも大きい部分及び小さい部分をそれぞれ有彩色及び無彩色として判定する(S6及びS7)。そして、無彩色として判定された場合は色識別対象から除外する処理を行う(S8)。一方、有彩色として判定されたピクセルは、輝度値及び色相値が算出され(S9)、その算出値から輝度・色相グラフを生成する(S10)。S5のステップで使用する無機色判定値としては、経験的に30〜35の範囲で使用するのが実用的である。
次いで、本発明の色判別方法において色判別解析の対象となるピーク色の設定を行う。ピーク色の設定は、ピーク色の検出(S11)及びピーク色の数の設定(S12)から構成される。まず、S9のステップで算出された色相値及び輝度値の組合せの中で、検出頻度が最も高い組合せをS11のステップにおいてピーク値として決定し、該ピーク値を、ピーク値を構成するピクセルの数が多い順に、色判別解析用のピーク色として選択するS12のステップによって行われる。これらS11及びS12により、色判別評価対象となる色を簡便な方法で、容易に選択抽出することができる。選択されるピーク色は、S10で生成される輝度・色相グラフにおいて、例えば、色相値とピクセル(画素)数との関係、及び輝度値と輝度分布との関係をそれぞれ表示することにより、ピーク色の存在及びその分布程度を把握することができる。
このようにして選択されたピーク色は、高精度で正確な色判別を行なうときに必要となる基準の色相値及び輝度値を設定するため、S13以降のステップに従って、色相値及び輝度値の平均化、及び色相値及び輝度値の適切な範囲をそれぞれ設定する。まず、S13のステップにおいてピーク色の輝度値及び色相値にあらかじめ所定の範囲(輝度値範囲L1及び色相値範囲H1)を設定し、次いで、S14のステップにおいて、前記あらかじめ設定した所定の範囲に含まれる輝度値及び色相値を有するピクセルすべてのRGB平均値を算出し、画像の平均化を行う。S14のステップで平均化された画像はステップ15で解析画像として生成され、必要に応じて表示することができる。
次いで、S15のステップにおいて輝度・色相グラフとして作成された画像から、色相値のH1の範囲内に複数色が存在するか否かを判断する(S16)。H1の色相範囲内に複数の色が存在しないときは、S14でRGB平均値として算出した値を、L1の範囲内に含まれるすべてのピクセルが有する輝度値の平均値(輝度平均値)として決定する(S17)。
仮に、H1の色相範囲内に複数の色が存在すると判断される場合は、S18において色相値範囲としてH1より狭いH2を再設定し、該当するピーク色の新たな色相値範囲とする。それと同時に、H2に含まれる色相値を有するピクセルで算出色相値を平均化し、新たな色相平均値を求める。そして、画像を再生成し(S19)、色相値範囲H2に含まれるピクセル情報が単一のピーク色であることを確認した後、S17のステップに進む。この操作によっても複数のピーク色によるピクセル情報が色相値範囲H2に含まれると判断される場合には、色相値範囲としてH2より狭いH3を再設定し、新たな色相平均値の算出を行う。この操作は、設定した色相値範囲内に複数のピーク色によるピクセル情報が含まれなくなるまで繰り返す。このように色相値の範囲を狭めた形で再設定することにより、色相値が非常に接近する複数の色が混在する場合でも、正確な色の判別が行うことができる。
S13で設定する輝度値範囲L1は、判別する色の漏れを防止するため、やや広く設定することが実用的である。しかしながら、H1又はH2の色相値範囲内に含まれるピーク色であっても、ピーク輝度値が近いピーク色が輝度値範囲L1内に複数で存在する場合がある。その場合は、S15のステップで作成された画像から、輝度値値範囲(L1)内に分布するピーク色が複数で存在するか否かを後述するS20〜S22のステップによって判定することが好ましい。L1の輝度値範囲内に複数の色が存在しないと確認できるときは、S14でRGB平均値として算出した値を、L1の範囲内に含まれるすべてのピクセルが有する輝度値の平均値(輝度平均値)として決定する(S17)。
輝度値範囲の再設定を行うS18及びS19のステップは、色相値が互いに接近する複数の色が混在する場合に採用されるものであり、本発明の色判別方法は、基本的にS1〜S17のステップを有する。それらのステップの中で、特に、色判別解析の対象となるピーク色の設定を行うためにS11及びS12のステップを有することが大きな特徴である。S11のステップにおいては、S9のステップで算出される輝度値及び色相値の中から、特に色相値の方に着目し、算出色相値を所定の範囲で区分けされた色相値に分類する。そして、前記色相値の検出頻度の高い有彩色をピーク色として、検出頻度の高い順に従って色相環上で等分に区分けされた各色に割り当てる。割り当てるピーク色の数はステップS12で決める。このようにして、色判別評価対象となる色を、簡便な方法で容易に選択抽出することができる。
本発明の色判別方法は、ピーク輝度値が近い有彩色が輝度値範囲L1内に複数で存在する場合に色判別の正確性が十分に担保できるように精度向上を図るため、さらに図1に示すS20〜S22のステップを有することが実用的である。
S20のステップにおいて、S17のステップで決定されたピーク色の輝度平均値に基づいて、S13のステップで設定した所定の範囲よりも狭い範囲で輝度値の範囲が再設定される。次いで、S21のステップにおいて、前記ピーク色及びその周辺のピクセルが有する算出輝度値を、S20で再設定した範囲と同じ範囲内(L2)で平均化して平均基準輝度値を求める。S20で設定する輝度値範囲及びS21で求める平均基準輝度値は、画像データ中の有彩色を厳密に特定する上で有効なパラメータであるため、S22のステップにおいて測定した色が所望の色であるか否か等を判別するときに使用する。
ステップS22に従って色判別を行うときにS16で「NO」と判定される場合は、色相値範囲H1及びその色相値範囲で平均化して算出される色相平均値とともに、S20で再設定する輝度値範囲L2及びS21で設定する平均基準輝度値を用いる。一方、S16の判定で「YES」の場合は、色相値範囲H2及びその範囲で平均化して算出される色相平均値とともに、S20で再設定する輝度値範囲L2及びS21で設定する平均基準輝度値を用いる。両者の何れかの手順に従って、例えば、検査用又は試験用の測定画像が規格品である基準画像に対して色の再現が確実に行われているか否かを判定する。
以上のように本発明によって色判別を行うとき、S17及びS21の何れかのステップに応じて、測定画像の平均輝度値が輝度値範囲L1に含まれるもの、又は平均基準輝度値がL2の輝度値範囲に含まれるものを規格内品(合格品)とし、他方で、それらの範囲に含まれない場合は規格外品(不合格品)として選別除外する。本発明においては、ピーク色が有する輝度値の判定基準をより厳格なものとすることにより、色相値が近い色が混在する場合であっても色判別の精度が向上し、色の違いを正確に判別できるように、輝度値範囲をより狭く設定するS20〜S22のステップを採用することが好ましい。
次に、図1に示す各工程について詳細に説明する。
S4〜S7の工程で行う有彩色及び無彩色の判定方法は、図2の模式図に従って行う。図2には、例として、印刷物1の多分割されたピクセル中から選択した任意の一つピクセル2を抜き出して取得した、光の三原色である赤(R)、緑(G)及び青(B)のそれぞれの値を示している。
図2に示すように、S4のステップにおいてピクセル2について測定したR、G、Bの各値の差が所定の許容値内に含まれる否かで有彩色及び無彩色の判定を行う。ここで、所定の許容値は「無彩色判定値」として定義する。ピクセル2においてR、G、Bの各値の差が無彩色判定値より小さい場合は、S5のステップによって「NO」と判断され、S7のステップにおいて無彩色として判定されたピクセルは色判別を行うための解析用データから除外される。仮に、RGBの各値の差が無彩色判定値を超える場合は「YES」と判断され、S6のステップにおいてピクセル2の部分が有彩色として判定されることによって解析用データとして使用される。ここで、前記無彩色判定値は、従来の測定データの解析に基づいて35以内とするのが実用的である。
本発明の無彩色の判定方法において、黒画像又は白画像の場合にはR、G、Bの各値は差がほとんどみられない。また、無彩色がグレー画像である場合には、R、G、Bの各値が小さくなる。例えば、グレー画像は、バイナリ―データからのR、G、Bの各値がそれぞれR=115、G=121及びB=119となる。
それに対して、有彩色である場合、例えば有彩色が青であるカラー画像のときは、R=77、G=109及びB=243となり、各値の差が大きくなる。そこで、最も高い値を有する色である青(B)が指定色となる。この特徴を利用して、印刷物又は塗装品等のすべてのピクセルを前記の無彩色判定値に基づいて有彩色又は無彩色に分離することができる。
図2に示す方法によって無彩色と判定されたピクセル画像は、グレースケール輝度値として変換後の輝度値が0である黒色、若しくは輝度値が255である白色のどちらか近い方の両端に振り分けられる。ここで、無彩色と判定されたピクセル画像のすべてについて、変換後の輝度値は、無彩色の測定輝度値を振り分けるときの基準となる臨界輝度値に基づいて255若しくは0のどちらかの輝度値に振り分ける。この臨界輝度値は、0〜255の輝度値の中間領域である120〜130の範囲の何れかの値、一般的には0〜255の中間値である127に設定する。
次に、S9のステップで行うピクセルの輝度値及び色相値の算出方法について説明する。本発明は、RGB色空間やHSV色空間等いくつかの色空間の中で、HLS色空間を使用する。HLS色空間において、Hは色の色相を表す色相、Lは明るさを表す輝度、Sは色の鮮やかさを表す彩度である。S6で有彩色として判定されたピクセルのRGB値は、画像の中から特定の色を抜き出すためにS9のステップにおいてグレースケール輝度値として算出される。R、G、Bの各値からグレースケール輝度値への変換方法は、下記の一般式(1)によって求める。
L=0.299R+0.587G+0.114B (1)
ここで、LはHLS色空間における輝度を示し、R、G及びBは、それぞれRGB色空間における赤、緑及び青の値である。上記一般式(1)において、RGBの各係数は、“人間の眼はそう感じているようだ”という経験則から導かれたものである。図3は、S6の工程によって有彩色と判定された画像ピクセルで取得したR、G、Bの各値を、上記の一般式(1)によってグレースケール輝度値へ変換した例である。
S9のステップにおいては、前記グレースケール輝度値の他にも色相値の算出を行う。R、G、Bの各値から色相値への変換方法は、下記の一般式(2)によって求める。
ここで、Hは色相値を示し、R、G及びBは、それぞれRGB色空間における赤、緑及び青の値である。
S9のステップにおいて色相値を算出する理由は、グレースケール輝度値だけではカラー画像の色判別に対して十分に機能しないためである。例えば、カラー画像において青と赤が混在する場合、両者のグレースケール輝度のピーク値は80〜85の範囲に含まれる場合があり、グレースケール輝度値では確実な色の判別を行なうことが困難である。それに対して、赤及び青の色相ピーク値はそれぞれ358°及び202°であり、色相値を用いることによって両者の色判別を容易に行うことができる。ここで、色相値による色判別は、検出頻度の高い色相値を有する色をピーク色として検出するS11、検出するピーク色の数を設定するS12、及び適切な色相値の範囲を設定するS13の各ステップにより行う。
色相は、赤、黄、緑、青、紫といった色の様相の相違であり、特定の波長が際立つことにより色を定性的に区別することができる。色相値は一括でデータ処理できるものの、色相はスペクトル上の色であるため、数値で表しても微細な色の違いを区別することが難しい場合がある。一方、グレースケール輝度値は、平面で読み取った様々な色を一括でデータ処理できるだけでなく、色判別を精度良く、且つ簡便に行なうことができる。したがって、本発明の色判別方法においては、カラー画像として印刷されている色を差別化するために有彩色ピクセルが有する色相値を用いて区分けし、さらに区別したカラー色が有するグレースケール輝度値を用いて数値解析を行う方法を採用する。このように、本発明は、色相値と輝度値の特徴を相乗的に利用することにより定量的な色判別を行うことができる点に大きな特徴を有する。
上記色相値を用いて行うカラー色の区分けは、色相の総体を順序立てて円環にして並べた色相環を利用して行う。色円環は理論的には境目が無く連続的なものであるが、一般的には20等分や40等分、RGBカラーでは6等分や12等分で表現される。本発明においては、RGBカラーを表現するため12等分で表現するのが実用的であるが、12等分に限定されるものではない。
図4に、例として色相ピーク値を色相円環上で12等分に振り分ける方法を示す。図4に示すように、色相環上で12等分にした色相値範囲に対して、赤、黄、緑、青、紫といった色に応じて、色相値Hはそれぞれ0°、90°、120°、240°、300°である。それらの色に近似する色については、S13のステップにおいて前記色相値Hを中心にして所定の範囲を設定することにより判別が可能になる。例えば、S11及びS12のステップにおいて検出されるピーク色を赤として区分けする場合は、S13のステップでH=345〜15°のように等分の色相値範囲に設定する。それにより、あるピクセルで算出された色相ピーク値がその範囲に含まれる場合は赤色として割り振ることができる。黄、緑、青、紫の近似した色についても、同様に色相値範囲を設けて各色の色を12等分して割り振る。ここで設定する色相値範囲は、図4に示す色相環において等分された範囲で設定する必要はなく、経験則に基づいて、例えば赤色はH=348〜12°のように狭い範囲で設定してもよい。
本発明の色判別方法では、評価用パラメータとして色相値及び輝度値を使用するときの解析方法及びその特徴について図5〜図8を用いて説明する。なお、解析方法の詳細については後述の実施例で説明する。
図5はS10のステップで生成される輝度・色相グラフの一例であり、有彩色の例として赤と青が混在するときの画像を模式的に示す図である。図5の(a)及び(b)に、有彩色と判定されたピクセルの色相値と輝度値の算出データから検出される各ピークを示している。図5の(a)に示すように、赤及び青は色相ピーク値がそれぞれ358°及び202°であるため、色相によって確実な色判別を行うことができる。それに対して、図5の(b)に示す輝度値の場合は、赤と青の各グレースケール輝度ピーク値が80〜85の範囲に含まれるため、輝度値で確実な色の判別を行なうことが困難である。したがって、色相では色の違いが明確に判別できるにもかかわらず、輝度値が近い色同士の色判別を数値で行う場合には、S14のステップにおいて色相値範囲H1及びこの範囲で平均化した色相値を用いることが有効である。
図6は、有彩色としてオレンジ系統の2色(濃いオレンジと淡いオレンジ)が混在するときの輝度・色相グラフの例を模式的に示す図であり、(a)及び(b)は、有彩色と判定されたピクセルの色相値と輝度値の算出データから検出される各ピークを示す図である。図6の(a)に示すように、2色のオレンジは色相ピーク値が近いため、S13のステップにおいて淡いオレンジ色に対して広い範囲で設定した色相値範囲H1では、2色として判別することが困難である。他方、図6の(b)に示すように、両者の色は輝度ピーク値が離れているため、輝度値で観測することにより色の判別が可能になる。しかしながら、S13において輝度値範囲L1を広く設定する場合は、輝度値でも色判別が困難になる場合がある。そのため、図6の(a)に示す色相値範囲をH1より狭くしたH2の範囲で設定し、H2の範囲に含まれる色相値を有するピクセルの色相値を平均化することにより2色の判別が可能になる。この操作が、図1に示すS18のステップに相当するものである。さらに、図6の(b)に示す輝度値の範囲もL1より狭くすれば、輝度値でも2色を明確に区別して判別できるようになる。
図7は、有彩色として赤系統の2色(濃い赤と薄い赤)が混在するときの輝度・色相グラフの例を模式的に示す図である。図7において、(a)は、有彩色と判定されたピクセルの色相値の算出データから検出される各ピークを示す図であり、(b)〜(d)は、有彩色と判定されたピクセルの輝度値の算出データから検出される各ピークを示す図である。図7に示す2色の有彩色は、色相値が非常に近接しているため、2色の色相ピーク値をそれぞれ分離して観測することができない。S18のステップにおいて色相値範囲を狭める操作を行っても、色相値だけでは2色をそれぞれ区別して判別することが困難である。
図7に示す2色は、輝度値を色判別用の測定パラメータとして使用する場合でも2色の輝度ピーク値が互いに近くに位置する。したがって、輝度値範囲が広く設定される傾向にあるL1の範囲では対象とする色(薄い赤色)に別の異なる色(濃い赤色)の輝度値情報が混入するため、色判別の精度が十分でなく、2色を区別して判別することができない(図7の(b))。そこで、図7の(c)に示すように、L1の範囲に含まれる輝度値を有するピクセルすべてのRGB平均値を算出することにより一点鎖線で示す輝度平均値を求める。しかしながら、この輝度平均値は測定対象の薄い赤色の輝度ピーク値からやや離れた輝度値で算出されることになる。これらの操作が、図1に示すS14〜S16のステップに相当する。そのため、S20のステップにおいて輝度値範囲をL1より狭くしたL2に再設定し、S21においてL2の輝度値範囲に含まれるピクセルの輝度値を平均化して求める輝度値を、図7の(d)において点線で示す平均標準輝度値として設定する。このようにして設定する平均基準輝度値は、薄い赤の輝度ピーク値に近い値を有することから、輝度値による色判別の精度向上が図れる。したがって、平均基準輝度値は、輝度値範囲L2とともに、画像データ中の有彩色を数値で厳密に特定するために有効なパラメータとして使用することが可能になる。
図1においてはS17〜S21のステップを1回行うときの工程を示しているが、本発明の色判別方法に適用し、より厳密な色判別を行なう場合は、輝度値範囲をL2よりさらに狭くする目的で図1に示すS21のステップの後に、引き続いてS17〜S21と同じ操作を行ってもよい。
以上のように、図7に示す解析方法によって本発明の効果を十分に奏することができるが、本発明においては、前記の輝度値範囲L2が重要な意味を持ってくる。そこで、輝度値範囲L2の設定方法について、以下に説明する。
本発明の工程において適用する輝度値範囲L2は、図8の模式図に示す方法に従って設定する。図8の縦軸及び横軸はそれぞれ輝度値範囲L2及び算出輝度値を表しており、輝度値範囲L2は、図7の(c)で示す算出輝度値を基準輝度値と定義し、該基準輝度値を中心として±値の形で設定する。例えば、輝度平均値が小さいときの輝度値範囲を34とするときは基準輝度値(算出輝度値)±34とし、輝度値範囲L2が68となる。
図8に示すように、本発明の特徴は、輝度値範囲L2を輝度平均値のすべてについて一定の値に固定するのではなく、ピーク色の算出輝度値に応じて勾配をつけ、算出輝度値が0に近づくときに大きく(又は広く)設定し、255に近づくときに小さく(又は狭く)なるような設定を行うことにある。そもそも人間は白色(輝度値が255に近い色)に対しては感度が高く、黒色(輝度値が0に近い色)では感度が低い。したがって、輝度範囲を指定色の輝度平均値に応じて勾配をつけて設定する方が、人間の目の働きに近い機能を有するようになり、色判別を実情に即して、且つ、効率的に高精度で行うことができるためである。
図8において実線で示すように、輝度値範囲L2は、輝度平均値に対して階段状で段階的に変化させて設定する方が操作する上で容易であり実用的であるが、本発明においては輝度平均値が大きくなるに伴い輝度値範囲L2が小さくなるように設定するものであれば、点線で示すように連続的に変化するように設定することもできる。また、階段状の設定と連続的な設定とを混合してもよい。具体的に設定する輝度値範囲L2は、図8に示すように測定対象となる色が有する輝度平均値に応じて変わるが、色判別の精度を向上させるため、通常は輝度値が0(ゼロ)のときに60(±30)以下で設定し、輝度値が大きくなるに伴い徐々に小さくなるように設定することが好ましい。
S20のステップで再設定する輝度値範囲L2は、S13のステップで設定する輝度値範囲L1よりも小さな範囲を設定するが、具体的にはL2の範囲に含まれる輝度値を有するピクセル数の比率が、L1の範囲に含まれるピクセル数に対して80〜95%となるような範囲を選ぶことが好ましい。輝度値範囲L2に含まれるピクセル数の比率が輝度値範囲L1の場合に対して80%未満の範囲であると、輝度値の平均化のステップにおいてピクセルデータから計算時に除かれるデータ量が多くなり、より正確な色判別を行うことが難しくなる。また、この比率が95%を超える場合は、逆に、標準輝度値から遠く離れたデータまで含めて修正平均を計算することとなり、色判別の精度向上という目的を達成できなくなる。
なお、S13のステップで設定する輝度値範囲L1は、本発明において最初の輝度値範囲の設定であり、具体的にどのような色が配色された画像をあらかじめ把握することが困難な場合がある。その場合は、輝度値範囲L1として一定の値を使用し、輝度ピーク値±αとしてαの絶対値が20〜60の広い範囲で設定することが実用的である。そうでない場合、例えば、輝度ピーク値があらかじめ把握できるときは、輝度値範囲L1にも輝度値範囲L2と同じように、S11のステップで検出されるピーク色の輝度ピーク値に応じて勾配を設けてもよい。その後のS20のステップでは、輝度値範囲としてL1より狭いL2の設定が行われる。
以上が本発明の色判別方法における各ステップの基本的な概要であるが、2次元又は3次元の印刷物から取り込む平面画像には印刷ムラ、シミ又は異物等に起因する色が混じることがある。また、外的要因によって、わずかな比率で別の類似色が含まれると認識される場合がある。平面画像を構成する配色にほとんど影響を与えない比率で含まれるこれらの色は、本発明による色判別解析を煩雑にするだけでなく、処理時間の増加という問題を発生させる要因になる。そのため、本発明の色判別方法は、前記色相値及び輝度値を算出するときの精度を高めるため、さらに、画像全体のピクセル数に対する前記有彩色を有するピクセル数の比率を、合格最低ピクセル割合として所定の値以上に設定するステップを有することが好ましい。この合格最低ピクセル割合の数値は、S5のステップを行う前に入力することが好ましいが、S13のステップにおいて色相値及び輝度値の範囲を設定するときに合せて入力してもよい。合格最低ピクセル割合の数値としては、5%以下の値を設定することが実用的であるが、色判別に誤差が生じない割合の数値として経験的に3%以下が好ましく、さらに1%以下がより好ましい。このようにして設定される合格最低ピクセル割合以下の色は評価対象から除外できるため、前記色相値及び輝度値を算出するときの精度を高めることができ、正確な色判別を行なうことが可能になる。
本発明は、基本的に平面画像に含まれる有彩色の色判別のために適用されるが、次の2つのステップを行うことにより無彩色のグレーに近い色を判別することが可能である。すなわち、S5のステップにおいて赤、緑、青の各値の差から有彩色及び無彩色として振り分けるときの基準値として使用する前記各値の差の絶対値を無彩色判定値とするとき、該無彩色判定値を小さくするとともに、有彩色としてピーク色を判別解析用の色として選出するS12のステップにおいて、前記ピーク色を1つに設定する方法である。
前記無彩色判定値を小さくすれば(又は下げれば)、グレーに近い色も無彩色として判定されず、測定色ピークとすることができる。しかし、無彩色は図4に示す色相環に存在しないことから、本発明の方法では誤判定を招く場合があるため、最初のステップとしては無彩色判定値のデフォルト値として30〜40の何れかの値を使用することが好ましい。その後、順次、無彩色判定値を小さくする(又は下げる)とともに、S12のステップにおいて判別解析用の色として設定するピーク色の最大数を1に設定する。それにより、グレーに近い色であってもバイナリ―データをピクセルごとに取得する赤(R)、緑(G)、青(B)の各値の差が小さい有彩色として振り分けられ、その色だけについて色相値及び輝度値の平均化とそれぞれの範囲の設定を行うことができる。このように、本発明の色判別方法は、グレーに近い色を色相値及び輝度値で数値的に判別することができ、有彩色以外の無彩色に近い色にも適用することができるため、使い勝手に優れる。
本発明の色判別方法は、ステップ1で設置された印刷物又は立体物の色を平面で画像化して読み取るステップ2が、スキャナー、デジタルマイクロスコープ、固体撮像素子、カメラ及び面受光用バンドル光ファイバーの少なくとも何れかの手段によって行われる。被測定対象物が印刷物の場合は色を平面で画像データとしてスキャナー、デジタルマイクロスコープ、又はカメラ等で一括して読み取ることが容易である。他方、3次元の塗装品等の場合は色の読取り手段としてスキャナーを使用することはできず、例えば、デジタルマイクロスコープ、固体撮像素子(CCD又はMOS)、カメラ及び面受光用バンドルファイバーを用いて塗装品の表面又は曲面に沿って移動するか、又は読取り手段を固定して被測定物である塗装品を移動することによって色を移動距離の関数として読み取りながら画像データとして収集する。
本発明の色判別方法で使用する読取方法は、上記の様々な手段により画像の色の読取を効率的に短時間で行うことができるだけでなく、照明等の外的環境や微小境域の色ブレによって影響を小さくできるため、適用範囲を広げることができる。上記の読取手段の中で、デジタルマイクロスコープは小型であり、携帯性と使い勝手に優れるだけでなく、人間の視覚に準じる色の読取が可能になるため特に有効な手段である。さらに、デジタルマイクロスコープによる画像読取方法は、視野を狭くして外的影響を極力除いた状態で使用することができるため、印刷物だけでなく、3次元の塗装品、人間の肌又は工業製品等の検査に対して局所的な色判別方法として好適である。
上記で説明した本発明の色判別方法は、例えば、印刷物又は立体物の見本サンプル及び測定サンプルを用いて両者の色の対比を行うときに適用することができる。具体的な評価方法としては、図1に示すS20と同じステップに従って、前記見本サンプルにおいて有彩色のピーク色が有する輝度値の範囲を前記あらかじめ設定した範囲よりも狭く再設定し、その再設定した範囲L2を基準設定データとして蓄積するステップと、前記測定サンプルにおいて、前記ピーク色と周辺のピクセルが有する算出輝度値を前記見本サンプルで再設定した範囲L2と同じ範囲内で平均化して平均基準輝度値を算出し、前記平均基準輝度値が、前記見本サンプルの基準設定データの範囲内(L2)に含まれるか否かによって、前記測定サンプルの色が所望の色であるか否かを判定するステップと、を有する。
以上のステップに従い、前記測定サンプルの平均基準輝度値が前記見本サンプルの基準設定データに含まれるか否かの判定によって、様々な色を、簡単に、且つ高精度に検査又は選別できる。そのため、前記印刷物又は立体物の見本サンプルと測定サンプルとの対比に適用するときに色判別検査の自動化による大幅な省力化を図ることができる。
次に、本発明の色判別方法を実施するために色判別装置について図9及び図10を用いて説明する。
図9は、本発明による色判別装置の構成を示す図であり、図1に示す色判別方法を実施するために使用するものである。図9に示す色判別装置100は、基本的に光源110から印刷物又は塗装物に向けて照明用の光を当て、前記印刷物又は塗装物の色を平面的に読み取ってピクセルごとの画像データとする色の読取り装置120、読み取った画像データをピクセルごとに光の三原色である赤、緑、青の値を取得するR、G、Bの各値の取得手段130、有彩色及び無彩色の判定を行い、有彩色が有するR、G、Bの各値を輝度値及び色相値に変換し、検出と選出とを行なったピーク色を有する有彩色について所定の範囲で色相平均値及び輝度平均値を決定し、前記色相平均値及び輝度平均値を用いて色判別を行なうための計算手段140、及びピーク色を表す画像、輝度値と色相値の計算結果、選別結果等の少なくとも何れかを表示するための表示手段150から構成される。R、G、Bの各値の取得手段130、計算手段140及び表示手段150は、これらすべての機能を1台のコンピュータに内蔵させることができる。
前記の計算手段140は、コンピュータ等に具備される計算手段のアルゴリズムに従って、有彩色及び無彩色の判定を行うステップ141、有彩色ピクセルの輝度値及び色相値の算出を行うステップ142、有彩色の中からピーク色の検出と選出とを行なうステップ143、及びあらかじめ所定の範囲(輝度値範囲L1及び色相値範囲H1)に含まれる輝度値及び色相値を有するピクセルすべてのRGB平均値を算出し、画像の平均化を行うステップ144を備える。ステップ144の行うときに必要な輝度値及び色相値の範囲(L1、H1)は事前に入力する。また、必要であれば、ステップ141を行う前に、有彩色及び無彩色として振り分けるときの基準値である無彩色判定値を入力する。さらに、ステップ143の行う前にも、画像全体のピクセル数に対する有彩色を有するピクセルの数の比率である合格最低ピクセル割合を入力することができる。前記無彩色判定値及び合格最低ピクセル割合は、上記の色判別方法で説明したように、無彩色のグレーに近い色の判別を行うとき、及び前記色相値及び輝度値を算出するときの精度向上を行うときにそれぞれ使用するパラメータである。
また、ステップ144の計算結果に基づいて、色相値範囲をH1より狭く設定することが好ましいと判断するときには再設定した色相値範囲H2を入力し、前記H2の範囲内で色相平均値の算出を行うステップ145、及びステップ146で決定する輝度平均値を用いて色判別を行うステップ147を備える。
有彩色及び無彩色の判定ステップ141においては、無彩色と判定されたピクセルは輝度値0の黒色及び輝度値255の白色のどちらか近い方に振り分けられる。そのとき、判定ステップ141には、無彩色の測定輝度値を振り分けるときの基準となる臨界輝度値を前記有彩色の標準輝度値に応じて調整するステップが含まれることが好ましい。すなわち、前記臨界輝度値の調整は、該有彩色の標準輝度値が80〜210の範囲にあるときに相対的に小さくなるように設定する。それによって、被測定物である印刷物又は塗装品に存在する画像の形状や輪郭を正しく反映した高精度の色判別を行うことができる。
図9に示す表示手段150は、例えば、ステップ143で選出したピーク色の色相環による表示、ステップ144で画像の平均化が行われた後の画像の表示、ステップ145及び146で算出される輝度値とその平均値及び色相値とその平均値の算出結果の表示、並びにステップ147の色判別結果の表示のために使用する。色判別装置100の測定者及び使用者は、輝度値の平均化処理の前後で得られる画像を把握したいときに、それぞれ「処理前」及び「処理後」として表示手段150によって画像を表示する。このように、色判別装置100によって得られる計算経過や結果は、測定者又は使用者が必要に応じて適宜選択して表示できるようになっている。
色判別装置100においては、図9の点線矢印で示すように、輝度値及び色相値の範囲(L1、L2及びH1、H2)等を含めた各種の数値パラメータを測定者又は使用者が表示手段150の画面上で入力する。しかしながら、本発明の色判別装置はこの方法に限定されない。初期にデフォルト値としてコンピュータのソフト内で予め設定しておき、測定者又は使用者が必要に応じてそのデフォルト値を変更できる設定としてもよい。
図9に示す光源110としては、蛍光灯、白熱灯又は白色LECの少なくとも何れかを用いる。また、色の読取り手段120としては、スキャナー、デジタルマイクロスコープ、固体撮像素子(CCD又はMOS)、カメラ及び面受光用バンドルファイバーの少なくとも何れかが使用される。被測定対象物が印刷物の場合は色を平面で画像データとして一括して読み取ることが容易である。被測定対象物が印刷物の場合は色を平面で画像データとしてスキャナー、デジタルマイクロスコープ、又はカメラ等で一括して読み取ることが容易である。他方、3次元の塗装品の場合は色の読取り手段としてスキャナーを使用することはできず、例えば、デジタルマイクロスコープ、固体撮像素子(CCD又はMOS)、カメラ及び面受光用バンドルファイバーを用いて塗装品の表面又は曲面に沿って移動するか、又は読取り手段を固定して被測定物である塗装品を移動することによって色を移動距離の関数として読み取りながら画像データとして収集する。本発明の読取手段120としては、前記でも述べたように、デジタルマイクロスコープが有効であり、取扱い性及び使い勝手の良さの観点からLED等の照明用光源を内蔵するデジタルスコープがより好ましい。
図10は、本発明の色判別装置の変形例である。図10に示す色判別装置200は、計算手段240においてステップ246までの構成及び機能が図9に示す色判別装置100と基本的に同じであるが、さらに、あらかじめ設定した輝度値範囲L1より狭く設定した輝度値範囲L2で輝度値を平均化して平均基準輝度値を設定するステップ248及び前記平均基準輝度値を用いて色判別を行うステップ249を備える。
図10に示す色識別装置200は、光源210から印刷物又は塗装物に向けて照明光を当て、前記印刷物又は塗装物の色を平面的に読み取ってピクセルごとの画像データとする色の読取り装置220、読み取った画像データをピクセルごとに光の三原色である赤、緑、青の値を取得するR、G、Bの各値の取得手段230、有彩色及び無彩色の判定を行い、有彩色が有するR、G、Bの各値を輝度値及び色相値に変換し、検出と選出を行なったピーク色を有する有彩色について所定の範囲で色相平均値及び輝度平均値を決定し、前記輝度平均値からさらに輝度値範囲を狭めた形で求めた平均基準輝度値を用いて色判別を行なうための計算手段240、及びピーク色を表す画像、輝度値と色相値の計算結果、選別結果等の少なくとも何れかを表示するための表示手段250から構成される。ここで、計算手段240には、コンピュータ等に具備される計算手段のアルゴリズムに従って、有彩色及び無彩色の判定を行うステップ241、有彩色ピクセルの輝度値及び色相値の算出を行うステップ242、有彩色の中からピーク色の検出と選出とを行なうステップ243、及びあらかじめ所定の範囲(輝度値範囲L1及び色相値範囲H1)に含まれる輝度値及び色相値を有するピクセルすべてのRGB平均値を算出し、画像の平均化を行うステップ244を行う。ステップ244の行うときに必要な輝度値及び色相値の範囲(L1、H1)は事前に入力によって行う。また、必要であれば、ステップ241を行う前に、有彩色及び無彩色として振り分けるときの基準値である無彩色判定値を入力する。さらに、ステップ243の行う前にも、画像全体のピクセル数に対する有彩色を有するピクセルの数の比率である合格最低ピクセル割合を入力することができる。
次いで、ステップ244の計算結果に基づいて、色相値範囲をH1より狭く設定することが好ましいと判断するときには再設定した色相値範囲H2を入力し、前記H2の範囲内で色相平均値の算出を行うステップ245を経た後、ステップ246で輝度平均値を決定する。さらに、ステップ246で求めた輝度平均値では色判別の精度が不十分であると判断するときは、輝度値範囲L1より狭い範囲で再設定した輝度値範囲L2を入力し、そのL2の範囲内で算出輝度値の平均化を行い平均基準輝度値を求めるステップ248を実施する。このようにして、ステップ248で設定した平均基準輝度値を用いてステップ249において色判別を行う。
図10に示す色判別装置200は、ステップ248及び249を備えることにより、図6及び7に示すように、互いの色相値が近接しているか、又はほぼ重なり合っている2色について輝度値を用いて色判別を行う必要があるときに、互いの輝度値が近接している場合であっても色判別を行うことができる。このように、色判別装置200は、より高精度で正確な色判別を行うときには好適である。
本発明の色判別装置は、例えば、印刷物又は立体物の見本サンプル及び測定サンプルを用いて両者の色の対比を行うときに適用することができる。具体的には、図9に示す色判別装置100において計算手段140のステップ147が、前記見本サンプルを測定するときに検出される有彩色のピーク色が有する輝度値の範囲L1を基準設定データとして蓄積するステップと、前記測定サンプルを測定するときに前記ピーク色と周辺のピクセルが有する算出輝度値を前記見本サンプルであらかじめ設定した範囲L1で平均化して求める輝度平均値が、前記見本サンプルの基準設定データの範囲内(L1)に含まれるか否かによって、前記測定サンプルの色が所望の色であるか否かを判定するステップと、を有する。
また、図10に示す色判別装置200においては、計算手段240のステップ249が、前記見本サンプルを測定するときに有彩色のピーク色が有する輝度値の範囲を前記あらかじめ設定した範囲L1よりも狭く再設定し、その再設定した範囲L2を基準設定データとして蓄積するステップと、前記測定サンプルを測定するときに前記ピーク色と周辺のピクセルが有する算出輝度値を前記見本サンプルで再設定した範囲L2と同じ範囲内で平均化して平均基準輝度値を算出し、前記平均基準輝度値が、前記見本サンプルの基準設定データの範囲内(L2)に含まれるか否かによって、前記測定サンプルの色が所望の色であるか否かを判定するステップと、を有する。
以上のステップを有する色判別装置を用いて、前記測定サンプルの平均輝度値が前記見本サンプルの基準設定データに含まれるか否かの判定によって、様々な色を、簡単に、且つ高精度に検査又は判別できる。そのため、前記印刷物又は立体物の見本サンプルと測定サンプルとの対比に適用するときに色判別検査の自動化による大幅な省力化を図ることができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図11に、本実施例で使用する画像取り込み部の例を概略図で示す。図11の(a)は、CCD又はMOS等の撮像デバイス4及び光源5から構成される画像取り込み部3である。一方、図11の(b)は、画像取り込み部7が照明用のLED光源を内蔵するデジタルマイクロスコープ8から構成される。これらの画像取り込み部3、7は、本発明の色判別装置における色の読み取り手段120又は220として使用する。
図11の(a)に示す画像取り込み部3は、印刷物等の測定ターゲット6が撮像デバイス4の先端から距離Lの位置に配置されており、本実施例においては距離Lを60〜70cmとして使用する。また、撮像デバイス4としては、解像度が5(Mpx)、撮像速度が7(fps)、視野が120×100(mm)のCCDを使用する。また、光源5は、60W相当の白色LED照明を入射角〜40°で設置する。
図11の(b)に示す画像取り込み部7は、ピントと光学ズームの調節を行うフォーカスリング9を有するデジタルマイクロスコープ8を、測定ターゲット10に接触するように配置して使用する。デジタルマイクロスコープ8は、例えば、4個〜8個のLEDを内蔵しており、該LEDは測定ターゲット10に向けて周りから均質に照明できるように円周対称形に配置されている。デジタルマイクロスコープ8は装置構成がシンプルであり形態性に優れるため、測定ターゲット10としては印刷物だけでなく、3次元の塗装品、人間の肌又は工業製品等に適用することができ、それらの局所的な画像を得るのに好適である。
図12に、本実施例の色判別方法による画像解析結果及び色相・輝度グラフを示す。画像解析は、計算手段と表示手段とを具備し、図11の(a)の画像取り込み部3の撮像デバイス4を接続させたパーソナルコンピュータを用いて行った。図12の(a)は測定ターゲット6の例として使用した印刷物である。印刷物の上部に見られる「警告」の文字はオレンジ色を背景として黒字で印刷されている。印刷物の上部1段目と2段目は黄色の背景に黒の模様が印刷されている。印刷物の3断面の模様は、白地に赤色で丸印と斜線が印刷されており、丸印の内部にある模様は黒色である。また、印刷物の4段目の模様は、青色を背景として白色で人間と本の模様が印刷されている。それ以外の背景となる部分は、文字が黒色で印刷されていることを除き、残りは全て白色である。
図12の(b)は、図1に示す色判別方法においてステップS1〜S22の手順に従い、ステップS16では「NO」と判定して解析を行った結果を示す図である。図12の(b)には、S15で生成した輝度・色相グラフを合わせて示している。まず、ステップS1〜S17の手順について説明する。図12の(b)の上段右側に示すように、ステップS13であらかじめ設定する色相値範囲H1及び輝度値範囲L1は、それぞれ色相ピーク値±15及び輝度ピーク値±30を入力する。それにより、前記のH1及びL1は、それぞれ30及び60の一定値で設定されることになる。そのとき、合わせて合格最低ピクセル割合を1%に設定する。この設定により1%未満のピクセル割合で検出される有彩色は測定対象から除外される。
図12の(b)に示すように、印刷物に印刷された有彩色は、色相値の検出頻度の高い有彩色をピーク色として、検出頻度の高い順に従って色相環上で12等分に区分けされた各色に割り当てられる。出頻度の高い有彩色は、上段から順にオレンジ、青、黄及び赤の4色検出されており、最も検出頻度の高い色はオレンジであることが分かる。これらの色の検出頻度の順序は、図12の(b)の左側に示す色相・輝度のピーク面積に対応したものであることが分かる。
図12の(a)に示す印刷物は、印刷物に有彩色としてグレースケール輝度ピーク値が82〜85の範囲に含まれる赤と青が印刷されている。そのため、図12の(b)に示す輝度グラフから明らかなように、輝度値では両者の色は重なり合い、判別が困難である。その場合は、図5に示す色相・輝度グラフの模式図を用いて説明したように、色相による色判別が有効である。このようにして、図12の(a)に示す印刷物に印刷されている有彩色は輝度だけで判別するのが困難であり、色相によってそれぞれ分離して判別することが可能になる。
参考までに、ステップS20〜22の手順に従って、狭い輝度値範囲を用いて行う色判別方法について説明する。S20のステップで再設定する輝度値範囲L2は、図12の輝度グラフに示す輝度ピーク値に応じて勾配を設けて、図8の実線で示すように段階的に小さくなるように設定する。ここで、算出される測定輝度値を基準輝度と定義し、例えば、(1)0〜89、(2)90〜179、及び(3)180〜255の3つの場合に分け、それぞれ輝度ピーク値±αとして下記の表1のように輝度値範囲L2を前記のL1(30)より狭い範囲で再設定する。
表1に示すような範囲で輝度値範囲L2を再設定することにより、S21で算出して設定される平均基準輝度値は、図12の(b)において測定輝度として示すように、輝度判定基準の範囲内に含まれるため、ステップS22の合否判定において合格と判定される。
本実施例においては、S20〜22の手順に従って解析を行わなくても、図12の(b)で示す測定輝度(輝度平均値に相当するもの)が輝度判定基準の範囲内に含まれる。そのため、図12の(a)に示す印刷物は、結果的にS1〜S17の手順で各有彩色の色判別を行うことができることが分かった。しかしながら、S1〜S17に限定する色判別方法では、様々な色が混色で存在する全ての印刷物に対して十分に対応できるものではなく、色判別結果に誤りや漏れを生む可能性がある。また、S20〜22の手順に従って行う解析方法は、S1〜S17の手順で行った色判別結果の信憑性を確認するためにも好都合である。そのため、本発明の色判別方法は、色判別精度の向上と適用拡大を図るために、S1〜S17に加えて、S20〜22の手順に従って解析を行うことが好ましい。
図13は、色相による色判別の精度を高めるため、S16のステップで「YES」と判定し、S18の手順に従って解析を行った結果を示す図である。図には、S19で生成した輝度・色相グラフと合わせて示している。S18のステップにおいては、色相値範囲H2を色相ピーク値±10とし、前記H1より狭い範囲で20に設定する。それにより、印刷物に印刷されている各有彩色を明確に判別できることが、図13の上段に示す色相グラフから容易に理解できる。さらに、色相値の検出頻度の高い有彩色をピーク色として検出頻度の高い順に従って色相環上で12等分に区分けされた各有彩色が、上段からオレンジ、黄、青及び赤の順に検出されることが分かる。図13に示す解析結果は、2番目と3番目の順番が図12に示す結果と異なる。この違いは、黄色(色相ピーク値=55°)とオレンジ色(色相ピーク値=34°)が互いに近い色相値を有するため、図12に示す解析結果では広い色相値範囲H1を設定することにより、オレンジ色として検出されるピクセル情報の一部が黄色のピクセル情報として検出されたことに起因すると考えられる。この課題は、S18のステップにおいて色相値範囲H1より狭い色相値範囲H2を再設定することにより解消される。そのため、図13に示す解析結果は、検出頻度の高い有彩色の序列を正確に反映している。
以上のように、ステップS18を行うことにより正確な色の判別が行うことができる。ステップS18に加え、さらにステップS20〜22の手順に従って解析を行えば、色判別精度の一層の向上を図ることができ、色判別における誤りや漏れを防止することができる。
<実施例2>
本実施例において、あらかじめ設定する色相値範囲H1では色判別が困難であり、色相値範囲H2を再設定することにより色判別が可能になった別の解析例を説明する。 図14に、本実施例の色判別方法による画像解析結果と輝度・色相グラフを示す。図14において、(a)は色相値範囲H1として60(色相ピーク値±30)をあらかじめ設定して行った解析結果及び輝度・色相グラフであり、(b)は色相値範囲H2として10(色相ピーク値±5)を再設定して行った解析結果及び輝度・色相グラフである。図14の(a)には、色判別を行った画像を合わせて示している。一方、輝度値範囲L1は、図14の(a)及び(b)ともに60(輝度ピーク値±30)と一定の値を用いて解析を行っている。
図14の(a)に示すように、色相値範囲H1を60にあらかじめ設定して色相環上で区分けしたピーク色は、検出頻度が高い順に、(1)淡いオレンジ(色相値範囲:19〜79)、(2)赤(色相範囲:337〜37)、(3)茶色(色相値範囲:330〜30)、及び(4)濃いオレンジ(色相値範囲:6〜66)である。これら4色が有する色相値範囲は330〜79の範囲であり、60と広く設定した色相値範囲H1を用いて色判別を行う場合はそれぞれの色を明確に判別することが困難である。
それに対して、色相値範囲H2を10に再設定することにより色相環上で区分けしたピーク色は、図14の(b)に示すように、(1)淡いオレンジ(色相値範囲:44〜54)、(2)赤(色相範囲:2〜12)、(3)濃いオレンジ(色相値範囲:33〜43)、及び(4)茶色(色相値範囲335〜5)となり、第3番目と第4番目の色の順番が色相値範囲L1の場合と逆転している。図14の(b)に示す色の順番は、色相グラフに示される各有彩色のピーク高さと面積と対比しても、各有彩色の検出頻度を正確に反映していることが分かる。色相値範囲L1による解析では、茶色は濃いオレンジよりもピーク高さが低いにもかかわらず広範囲に分布している色相値を有するため、検出頻度が見掛け上多くカウントされたためと考えられる。それに対して、色相値範囲H2を用いて行う処理は、各色の色相値範囲が10であるため4色を明確に区別して判別することができる。したがって、本実施例のように色相値範囲H2を色相値範囲L1より狭く再設定することにより、色判別の精度が向上することが確認される。
<実施例3>
本実施例において、あらかじめ設定する輝度値範囲L1より狭い範囲で再設定する輝度値範囲L2を用いて行った解析例を説明する。本実施例は、図7に示す解析方法に基づいて解析を行ったものである。
図15に、本実施例の色判別方法による画像解析結果と輝度・色相グラフを示す。図15において、(a)は輝度値範囲L1として60(輝度ピーク値±30)をあらかじめ設定して行った解析結果及び輝度・色相グラフであり、(b)は輝度値範囲L2として30(輝度ピーク値±15)を再設定して行った解析結果及び輝度・色相グラフである。図15の(a)には、解析に使用した画像を合わせて示している。一方、色相値範囲H1は、図15の(a)及び(b)ともに60(色相ピーク値±30)と一定の値を用いて解析を行っている。
図15に示す色相グラフから分かるように、本実施例で色判別の解析を行う画像は、検出頻度の高い色として(1)オレンジ(色相値範囲:329〜29)と(2)赤(色相値範囲:323〜23)の2色が検出される。しかしながら、両者は色相値範囲が重なり合うため、色相値から両者を区別して判別することが困難である。そこで、輝度値による解析を行う。
図15の(a)に示すように、輝度値範囲L1を60にあらかじめ設定して解析を行う場合は、(1)淡いオレンジ(輝度値範囲:79〜139)のピクセル情報に、(2)赤(輝度値範囲:45〜105)のピクセル情報が混入する程度が高くなるため、それぞれの輝度値範囲で平均化を行った輝度平均値は互いに近い値を有する。その場合、両者の輝度平均値は輝度値範囲L1に含まれるようになるため、両者の色を輝度値範囲L1を用いて判別することが困難である。
それに対して、(1)淡いオレンジの色について輝度値範囲L1より狭い輝度値範囲L2(30)を再設定することにより、図15の(b)に示すように、(1)淡いオレンジ(輝度値範囲:94〜124)のピクセル情報に、(2)赤(輝度値範囲:45〜105)のピクセル情報が混入する程度を小さくすることができる。それにより、(1)オレンジが有する輝度値範囲L2及び(2)赤が有する輝度値範囲L1の重なり合いが少なくなるため、それぞれの輝度値範囲で平均化された輝度値は互いに異なるものとなる。したがって、平均化によって得られる一方の輝度平均値は、他方の異なる色の輝度値範囲には含まれなくなるため、両者の色をそれぞれ区別して判別することが可能になる。したがって、本実施例のように輝度値範囲L2を輝度値範囲L1より狭く再設定することにより、色判別の精度が向上するため正確な色判別を行うことができる。
<実施例4>
本発明の色判別方法は、赤、緑、青の各値の差が大きいピクセル及び小さいピクセルを、それぞれ有彩色及び無彩色として判定するステップにおいて、有彩色及び無彩色を振り分けるときの基準値として無彩色判定値を使用する。この無彩色判定値の設定は色判別の精度に影響を与える場合がある。本実施例において、前記無彩色判定値の設定によって色判別の精度に影響を与える例を説明する。
図16に、本実施例の色判別方法による画像解析結果と輝度・色相グラフを示す。図16において、(a)は無彩色判定値として35を設定して行った解析結果及び輝度・色相グラフであり、(b)は無彩色判定値として30を設定して行った解析結果及び輝度・色相グラフである。図16の(a)には、解析に使用した画像を合わせて示している。なお、色相値範囲H1及び輝度値範囲L1は、図15の(a)及び(b)ともに、それぞれ60(色相ピーク値±30)及び60(輝度値ピーク値±30)を用いて解析を行った。
図16の(a)に示すように、無彩色判定値を35に設定して解析を行う場合、色相値範囲H1を60にあらかじめ設定して色相環上で区分けしたピーク色は、検出頻度が高い順に、(1)青(色相値範囲:185〜245、輝度値範囲:57〜117)、(2)黄(色相範囲:27〜87、輝度値範囲:180〜240)、(3)赤(色相値範囲:328〜28、輝度値範囲:76〜136)、及び(4)薄い青(色相値範囲:187〜247、輝度値範囲:107〜167)である。
それに対して、無彩色判定値を30に設定して解析を行うと、図16の(a)に示すように、検出頻度が高い順に、(1)青(色相値範囲:185〜245、輝度値範囲:57〜117)、(2)黄(色相範囲:27〜87、輝度値範囲:180〜240)、(3)赤(色相値範囲:328〜28、輝度値範囲:76〜136)、及び(4)緑(色相値範囲:117〜177、輝度値範囲:107〜167)の色が検出される。上記の無彩色判定値を35で設定する場合には、4番目の色して緑は検出されず、薄い青が検出されるのに対して、無彩色判定値をやや小さい値30で設定すると緑が検出される。図16の(a)の右端に示す実際の画像を観測すると、緑の存在が確認されており、色判別の精度が高いのは図16の(b)に示す解析結果である。
図16に示す解析結果に基づいて、実際の画像を無彩色と有彩色に分け、有彩色については輝度値の平均化を行った処理後の画像を図17に示す。図17において、(a)は無彩色判定値を35に設定して解析を行った場合であり、(b)は無彩色判定値を30に設定して解析を行った場合である。図17の(a)に示す画像の底部には、輝度値が0(ゼロ)である黒の無彩色に振り分けられた文字(→で示す2箇所)が観測されるのに対して、図17の(b)では、そのような文字が観測されていない。したがって、無彩色判定値を35と高く設定する場合は、実際には有彩色である緑色で配色された文字が有彩色として判定されず、誤って黒に振り分けられる結果になったものと考えられる。
このように、本発明による色判別方法では、RGBの各値が近い有彩色を判別する場合でも最適な無彩色判定値を設定することによって、より正確な色判別を行うことができる。また、無彩色判定値の設定は、有彩色だけでなく、グレーに近い色を判別する場合にも利用できる。その場合は、上記で述べたように、無彩色判定値を小さく設定するとともに、ピーク色を判別解析用の色として選出するS11のステップにおいて、前記ピーク色を1つに設定すればよい。
<実施例5>
本実施例において、本発明の色判別方法を適用することにより、ピーク色周辺のピクセルを輝度値で平均化し、平均基準輝度値を算出する処理の例を図18を用いて説明する。図18の(a)は、スキャナーで取り込んだ画像の全ピクセルの色相値及び輝度値に組合せから検出頻度の高いピーク色を解析した結果である。また、図18の(b)は、ピーク周辺のピクセルにおいて算出輝度値の平均化を行う処理前と処理後の輝度グラフである。
図18の(a)に示す画像は、ピーク色1及び2がそれぞれオレンジ(色相値:27°(色相値範囲±5)、輝度値:162(輝度値範囲±16)及びブルー(色相値:205°(色相値範囲±5)、輝度値:87(輝度値範囲±25)である。それ以外の色については省略する。ここで、色相値範囲及び輝度値範囲は、それぞれH2及びL2として再設定したものを使用する。
図18(b)の左側に示す画像の輝度グラフは、処理前では輝度値が分布幅を有する帯(バンド)で表されるのに対し、輝度値の平均化処理によってピーク色1であるオレンジ及びピーク色2であるブルーの平均基準輝度値が、それぞれ162及び90と一つの数値で設定できる。そじて、これら輝度値範囲及び平均基準輝度値は、色判別を行うときの判定パラメータとして使用する。
<実施例6>
図19は、図18に示すものとは別の画像についてピーク周辺のピクセルの算出輝度値を平均化し、平均基準輝度値の算出を行う処理前及び処理後の輝度グラフの全体画像を表す図である。図19の(a)において、右側が平均化処理前であり、左側が平均化処理後である。処理前は各ピーク色の輝度値が分布幅を有するバンド(帯)で表示され、各色の境界が明確でない。それに対して、処理後では、各ピーク色の輝度値が平均基準値で表示されているため、色判別が非常に明確になる。
図19の(a)に示す画像の中から、例として図19の(b)に示す画像を選択して行った色判別方法について説明する。まず、図19の(b)に示す画像を有する基準サンプル画像について解析を行い、平均基準輝度値及び輝度値範囲L2を設定する。この場合、平均基準輝度値は74であり、輝度値範囲L2は輝度ピーク値±2に再設定し、72〜76である。次いで、測定サンプル画像について基準サンプル画像と同じ解析処理を行い、平均基準輝度値を求める。図19の(b)には、2種類の測定サンプル画像について青色の輝度平均値(平均基準輝度値の相当するもの)を示しているが、75の輝度平均値を有する測定サンプルは、72〜76の輝度値範囲L2に含まれることから合否判定の結果は「合格」となる。他方、102の輝度平均値を有する測定サンプルは、前記の輝度値範囲L2に含まれず、範囲外であることから「不合格」と判定する。このように、測定サンプルの平均基準輝度値が、基準サンプルにおいて狭い範囲で再設定した輝度値範囲に含まれるか否かによって、測定サンプルが所望の色であるか否かを判定することができる。
以上のように、本発明による色判別方法は、一般的な印刷物だけでなく、工業用シール・ラベル等の2次元印刷物や立体塗装品等の3次元印刷物に着色されている有彩色をデジタル化することにより、様々な色を区別して一括で判別することができるだけでなく、従来よりも簡便な方法で容易に色判別を行なうことができる。加えて、印刷物の図案、模様及び文字や照明等の外的環境が変化しても、それらの因子によって影響を受けない状態で色判別をより高精度で正確に行うことができる。また、本発明の色判別方法によって解析される色は、実際に人間の視覚で感じるものとほとんど変わらないたため、様々な色を実情に即した形で、簡単かつ高精度で検査又は選別を行うことができる。したがって、本発明の色判別方法を使用することにより、色判別検査の自動化による大幅な省力化が図れる。
また、本発明の色判別方法を実施するための色判別装置はシンプルな構成を有するため、機能的に高い色判別機能と性能を有しながら、汎用性に富む安価な装置を提供することができる。本発明の色判別方法及び色判別装置は、測定対象を2次元の印刷物だけでなく、3次元の工業製品や人間の皮膚等の様々なものに拡大できるため、その有用性が極めて高い。