JP2017020014A - フッ素樹脂 - Google Patents

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裕子 岩松
Yuko Iwamatsu
裕子 岩松
市川 賢治
Kenji Ichikawa
賢治 市川
一暢 内田
Kazunobu Uchida
一暢 内田
一輝 細田
Kazuki Hosoda
一輝 細田
和哉 浅野
Kazuya Asano
和哉 浅野
忠洋 藪
Tadahiro Yabu
忠洋 藪
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Abstract

【課題】熱的に安定なフッ素樹脂であって、溶融成形時又は焼成時に発泡が生じないフッ素樹脂を提供する。
【解決手段】ビニリデンフルオライド単位を含むフッ素樹脂であって、主鎖末端に−CONH基を有しており、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜100モル%であることを特徴とするフッ素樹脂。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ビニリデンフルオライド単位を含むフッ素樹脂に関する。
ビニリデンフルオライド単位を含むフッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性等に優れると同時に、融点と熱分解温度との差が大きく、加工が容易であることから、幅広い用途に使用されている。
ビニリデンフルオライド単位を含むフッ素樹脂の製造方法として、例えば、特許文献1には、ジアルキルパーオキシジカーボネートを使用するビニリデンフルオライドポリマーの製造方法が記載されている。
特開平11−193269号公報
しかしながら、重合開始剤としてジアルキルパーオキシジカーボネートを用いると、得られるフッ素樹脂の主鎖末端に熱的に不安定な基が生成する。フッ素樹脂を加熱により溶融させて成形すると、不安的な基が分解してガスを生成するので、得られる成形体に発泡痕が残る問題があった。
本発明は、上記現状に鑑み、熱的に安定なフッ素樹脂であって、溶融成形時又は焼成時に発泡が生じないフッ素樹脂を提供することを目的とする。
本発明は、ビニリデンフルオライド単位を含むフッ素樹脂であって、主鎖末端に−CONH基を有しており、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜100モル%であることを特徴とするフッ素樹脂である。
上記フッ素樹脂は、更にテトラフルオロエチレン単位を含み、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜70.0モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の30.0〜85.0モル%であることが好ましい。
上記フッ素樹脂は、更にテトラフルオロエチレン単位、並びに、式(1)及び式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーからなる群より選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー単位を含み、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜44.9モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の50.0〜85.0モル%であり、エチレン性不飽和モノマー単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の0.1〜5.0モル%であることが好ましい。
式(1): CX1112=CX13(CX1415n1116
(式中、X11〜X16は同一または異なってH、F又はClを表し、n11は0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
式(2): CX2122=CX23−O(CX2425n2126
(式中、X21〜X26は同一または異なってH、F又はClを表し、n21は0〜8の整数を表す。)
本発明のフッ素樹脂は、上記構成を有することから、熱的に安定である。従って、溶融成形時に不安定な基に起因する発泡が生じないので、発泡痕がない成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、上記構成を有することから、発泡痕がなく、外観が良好である。
本発明の粉体塗料は、上記構成を有することから、焼成時に不安定な基に起因する発泡が生じないので、発泡痕がない塗膜を形成できる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のフッ素樹脂は、上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜100モル%のビニリデンフルオライド単位を含むものであり、主鎖末端に−CONH基を有していることを特徴とする。
主鎖末端に−CONH基が存在すると、赤外吸収スペクトル分析により得られる上記フッ素樹脂の赤外吸収スペクトルにおいて、吸収波長3400〜3470cm−1に−CONH基のN−H由来のピークが現れる。このピークの存在を確認することにより、主鎖末端に−CONH基が存在することを確認できる。−CONH基は、熱的に安定な末端基である。
上記フッ素樹脂は、主鎖末端に、主鎖炭素数10個あたり20個以上の−CONH基を有していることが好ましい。−CONH基の個数は、30個以上であることがより好ましい。上限は特に限定されず、500個以下であってよく、250個以下であってよい。
−CONH基の個数は、厚さ200μmのフィルムについて赤外吸収スペクトル分析を行い、得られた赤外吸収スペクトルにおける主鎖のCH基に起因する2900〜3100cm−1に現れるピークの吸光度を1.0に規格化し、そのスペクトルの3400〜3470cm−1付近に現れる末端NH基のNH結合に起因するピークの吸光度Aを求め、次式により算出する。
主鎖炭素数10個当たりの−CONH基の個数=4258×A
上記フッ素樹脂は、熱的安定性の観点で、主鎖末端に、主鎖炭素数10個あたり0〜40個の不安定末端基を有していることが好ましい。上記不安定末端基の個数は、0〜20個であることがより好ましく、0個であることが更に好ましい。
上記不安定末端基は、−COF基、−COOH基、−COOCH基、−CF=CF基、−OH基及びROCOO−基からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。ROCOO−基のRは、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、上記アルキル基は炭素数が1〜15であってよい。
上記不安定末端基の個数は、厚さ200μmのフィルムについて赤外吸収スペクトル分析を行い、得られた赤外吸収スペクトルにおける主鎖のCH基に起因する2900〜3100cm−1に現れるピークの吸光度を1.0に規格化し、そのスペクトルに現れる不安定末端基に起因するピークの吸光度Aを求め、次式により算出する。係数Kは表1に示すとおりである。
主鎖炭素数10個当たりの不安定末端基の個数=K×A
Figure 2017020014
上記フッ素樹脂は、更にテトラフルオロエチレン単位を含むことが好ましい。この場合、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜70.0モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の30.0〜85.0モル%であることが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の15.0〜60.0モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の40.0〜85.0モル%である。
上記フッ素樹脂は、更にテトラフルオロエチレン単位、並びに、式(1)及び式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーからなる群より選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー単位を含むことが好ましい。
式(1): CX1112=CX13(CX1415n1116
(式中、X11〜X16は同一または異なってH、F又はClを表し、n11は0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
式(2): CX2122=CX23−O(CX2425n2126
(式中、X21〜X26は同一または異なってH、F又はClを表し、n21は0〜8の整数を表す。)
式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマーとしては、CF=CFCl、CF=CFCF、下記式(3):
CH=CF−(CFn1116 (3)
(式中、X16及びn11は上記と同じ。)、及び、下記式(4):
CH=CH−(CFn1116 (4)
(式中、X16及びn11は上記と同じ。)
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF=CFCl、CH=CFCF、CH=CH−C、CH=CH−C13、CH=CF−CH及びCF=CFCFからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、CF=CFCl、CH=CH−C、CH=CH−C13、CH=CF−CH及びCH=CFCFから選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーとしては、CF=CF−OCF、CF=CF−OCFCF及びCF=CF−OCFCFCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記フッ素樹脂が更にテトラフルオロエチレン単位及び上記エチレン性不飽和モノマー単位を有する場合、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜44.9モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の50.0〜85.0モル%であり、エチレン性不飽和モノマー単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の0.1〜5.0モル%であることが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の15.0〜49.9モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の50.0〜70.0モル%であり、エチレン性不飽和モノマー単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の0.1〜5.0モル%である。
また、上記フッ素樹脂が更にテトラフルオロエチレン単位及び上記エチレン性不飽和モノマー単位を有する場合、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜49.9モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の50.0〜85.0モル%であり、エチレン性不飽和モノマー単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の0.1〜5.0モル%であってもよい。
本発明のフッ素樹脂は、
55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
5.0〜49.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜10.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体であることが好ましい。
より好ましくは、
55.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
10.0〜44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体である。
さらに好ましくは、
55.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
13.0〜44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜2.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体である。
フッ素樹脂の高温での機械的強度を向上させる観点に加えて、フッ素樹脂の低透過性が特に優れることから、式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマーがCF=CFCl、CH=CH−C、CH=CH−C13及びCH=CF−CHからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーであることが特に好ましい。好ましくは、式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマーがCH=CH−C、CH=CH−C13及びCH=CF−CHからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーであり、かつ、フッ素樹脂が
55.0〜80.0モル%のテトラフルオロエチレン、
19.5〜44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.6モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体であることである。
本発明のフッ素樹脂は、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
10.0〜41.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体であってもよい。
本発明のフッ素樹脂は、
55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
9.2〜44.2モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.8モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体であることも好ましい。
より好ましくは、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
14.5〜39.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体である。
本発明のフッ素樹脂は、
55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
5.0〜44.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜10.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、及び、
0.1〜0.8モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体であることも好ましい。
より好ましくは、
55.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
9.5〜44.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、及び、
0.1〜0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体である。
さらに好ましくは
55.0〜80.0モル%のテトラフルオロエチレン、
19.8〜44.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜2.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、及び、
0.1〜0.3モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体である。本発明のフッ素樹脂がこの組成を有する場合、低透過性に特に優れる。
本発明のフッ素樹脂は、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
9.5〜39.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和モノマー、及び、
0.1〜0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマー、
の共重合単位を含む共重合体であってもよい。
本発明のフッ素樹脂は、各モノマーの含有量が上述の範囲内にあると、高温での機械的強度、耐薬品性及び低透過性に優れる。高温での低透過性とは、例えばメタン、硫化水素、CO、メタノール、塩酸等に対する低透過性である。
共重合体の各モノマーの含有量は、NMR、元素分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることでモノマー単位の含有量を算出できる。
本発明のフッ素樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10minであることが好ましく、0.1〜50g/10minであることがより好ましく、0.1〜10g/10minであることが更に好ましい。
上記MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、メルトインデクサー(東洋精機社製)を用いて、297℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)である。
本発明のフッ素樹脂は、融点が180℃以上であることが好ましく、上限は290℃であってよい。より好ましい下限は200℃であり、上限は270℃である。
上記融点は、示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、得られる吸熱曲線のピークにあたる温度を融点とする。
本発明のフッ素樹脂は、熱分解開始温度(1%質量減温度)が360℃以上であるものが好ましい。より好ましい下限は370℃であり、更に好ましい下限は380℃である。上記熱分解開始温度は、上記範囲内であれば、上限を例えば410℃とすることができる。
上記熱分解開始温度は、加熱試験に供したフッ素樹脂の1質量%が分解する温度であり、以下の方法により求めることができる。
示差熱・熱重量測定装置(TG−DTA6200(日立ハイテクサイエンス社製))を用い、フッ素樹脂粉末又はペレット10mgを測定に用いて、空気雰囲気下で、10℃/分で昇温し、1質量%減少する時の温度を測定する。
本発明のフッ素樹脂は、重合開始剤の存在下にビニリデンフルオライドを重合することによりフッ素樹脂を得る工程、及び、上記フッ素樹脂をアミド化処理する工程を含む製造方法により製造できる。
上記アミド化処理は、重合により得られたフッ素樹脂を、アンモニア水、アンモニアガス又はアンモニアを生成しうる窒素化合物と接触させることにより行うことができる。
重合により得られたフッ素樹脂にアンモニア水を添加することにより、処理前のフッ素樹脂をアンモニア水と接触させることができる。上記アンモニア水としては、アンモニアの濃度が0.01〜28質量%であるものを使用することができ、接触時間は1分〜24時間であってよい。アンモニア水の濃度及び接触時間を調整することにより、−CONH基の個数を調整することができる。
処理前のフッ素樹脂をアンモニアガスと接触させる方法としては、反応容器内に処理前のフッ素樹脂を設置し、アンモニアガスを反応容器内に供給する方法が挙げられる。反応容器内へのアンモニアガスの供給は、アミド化に不活性な気体と混合して混合ガスとしてから行ってもよい。
上記アミド化に不活性な気体としては特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。上記アンモニアガスは、混合ガスの1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、上記範囲内であれば、80質量%以下であってもよい。
上記アミド化処理は、0℃以上、100℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上であり、また、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。温度が高すぎるとフッ素樹脂が分解したり、融着したりするおそれがあり、低すぎると処理に長時間を要する場合があり、生産性の点で好ましくない。
上記アミド化処理の時間は、フッ素樹脂の量にもよるが、通常、1分〜24時間程度である。
上記アミド化処理は、上記アミド化処理前のフッ素樹脂が有する不安定末端基に対する、上記アミド化処理後のフッ素樹脂が有する−CONH基の割合が25%以上となるように実施することが好ましい。上記割合は、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、100%であってもよい。上記割合が大きいほど、得られるフッ素樹脂の熱的安定性が高い。
上記不安定末端基は、−COF基、−COOH基、−COOCH基、−CF=CF基、−OH基及びROCOO−基からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。ROCOO−基のRは、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、上記アルキル基は炭素数が1〜15であってよい。
上記ビニリデンフルオライドの重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等であってよいが、工業的に実施が容易である点で、乳化重合又は懸濁重合が好ましく、懸濁重合がより好ましい。
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できるが、油溶性ラジカル重合開始剤が好ましい。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとして挙げられる。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、なかでも、ジアルキルパーオキシカーボネートが好ましく、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート及びジsec−ブチルパーオキシジカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記の重合においては、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
上記界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4〜20の直鎖又は分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。添加量(対重合水)は、好ましくは50〜5000ppmである。
上記連鎖移動剤としては、例えば、エタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素などがあげられる。添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01〜20質量%の範囲で使用される。
上記溶媒としては、水、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
上記懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性及び経済性の面から、水性媒体に対して10〜100質量%が好ましい。
重合温度としては特に限定されず、0〜100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0〜9.8MPaGであってよい。
本発明のフッ素樹脂は、いかなる形態であってもよく、水性分散液、粉末、ペレット等であってよい。
本発明のフッ素樹脂は、様々な成形体に成形することができ、得られる成形体は、高温下での機械的強度および耐薬品性、高温下での低透過性等に優れる。
上記成形体の形状としては特に限定されず、例えば、ホース、パイプ、チューブ、シート、シール、ガスケット、パッキン、フィルム、タンク、ローラー、ボトル、容器等であってもよい。
フッ素樹脂の成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、射出成形、ロト成形、ロトライニング成形、静電塗装等が挙げられる。本発明のフッ素樹脂をパイプに成形する場合は、押出し成形が好ましい。
本発明のフッ素樹脂に、充填剤、可塑剤、加工助剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤、脱フッ化水素剤などを混合した後、成形してもよい。充填剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、マイカ、シリカ、タルク、セライト、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム等があげられる。導電剤としてはカーボンブラック等があげられる。可塑剤としては、ジオクチルフタル酸、ペンタエリスリトール等があげられる。加工助剤としては、カルナバワックス、スルホン化合物、低分子量ポリエチレン、フッ素系助剤等があげられる。脱フッ化水素剤としては有機オニウム、アミジン類等があげられる。
本発明のフッ素樹脂は、海底油田又はガス田において海底から海面上に物資を輸送するライザー管に好適に使用できる。また、地中、地上、海底を問わず、原油や天然ガスの流体移送金属配管の最内面および最外面のコーティング材料、ライニング材料としても好適に使用できる。最内面にコーティング、ライニングする目的は原油や天然ガス中には金属配管の腐食の原因となる二酸化炭素や硫化水素が含まれており、これをバリアーし、金属配管の腐食を抑制したり、高粘度の原油の流体摩擦を低減したりするためである。最外面も同じく海水や酸性水等による腐食を抑制するためである。最内面、最外面にライニング、コーティングする際には本発明のフッ素樹脂の剛性や強度をさらに向上させるために、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド樹脂、マイカ、シリカ、タルク、セライト、クレー、酸化チタン等を充填してもよい。また、金属と接着させるため接着剤を使用したり金属表面を荒らしたりする処理を施してもよい。
更に、以下の成形体の成形材料としても好適に利用できる。
上記成形体としては、例えば、
食品包装用フィルム、食品製造工程で使用する流体移送ラインのライニング材、パッキン、シール材、シート等の食品製造装置用流体移送部材;
薬品用の薬栓、包装フィルム、薬品製造工程で使用される流体移送ラインのライニング材、パッキン、シール材、シート等の薬液移送部材;
化学プラントや半導体工場の薬液タンクや配管の内面ライニング部材;
自動車の燃料系統並びに周辺装置に用いられるO(角)リング・チューブ・パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材等、自動車のAT装置に用いられるホース、シール材等の燃料移送部材;
自動車のエンジン並びに周辺装置に用いられるキャブレターのフランジガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材、ホース等、自動車のブレーキホース、エアコンホース、ラジエーターホース、電線被覆材等のその他の自動車部材;
半導体製造装置のO(角)リング、チューブ、パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材、ロール、ガスケット、ダイヤフラム、継手等の半導体装置用薬液移送部材;
塗装設備用の塗装ロール、ホース、チューブ、インク用容器等の塗装・インク用部材;
飲食物用のチューブ又は飲食物用ホース等のチューブ、ホース、ベルト、パッキン、継手等の飲食物移送部材、食品包装材、ガラス調理機器;
廃液輸送用のチューブ、ホース等の廃液輸送用部材;
高温液体輸送用のチューブ、ホース等の高温液体輸送用部材;
スチーム配管用のチューブ、ホース等のスチーム配管用部材;
船舶のデッキ等の配管に巻き付けるテープ等の配管用防食テープ;
電線被覆材、光ファイバー被覆材、太陽電池の光起電素子の光入射側表面に設ける透明な表面被覆材および裏面剤等の各種被覆材;
ダイヤフラムポンプのダイヤフラムや各種パッキン類等の摺動部材;
農業用フィルム、各種屋根材・側壁等の耐侯性カバー;
建築分野で使用される内装材、不燃性防火安全ガラス等のガラス類の被覆材;
家電分野等で使用されるラミネート鋼板等のライニング材;
等が挙げられる。
上記自動車の燃料系統に用いられる燃料移送部材としては、更に、燃料ホース、フィラーホース、エバポホース等が挙げられる。上記燃料移送部材は、耐サワーガソリン用、耐アルコール燃料用、耐メチルターシャルブチルエーテル・耐アミン等ガソリン添加剤入燃料用の燃料移送部材として使用することもできる。
上記薬品用の薬栓・包装フィルムは、酸等に対し優れた耐薬品性を有する。また、上記薬液移送部材として、化学プラント配管に巻き付ける防食テープも挙げることができる。
上記成形体としては、また、自動車のラジエータタンク、薬液タンク、ベロース、スペーサー、ローラー、ガソリンタンク、廃液輸送用容器、高温液体輸送用容器、漁業・養魚タンク等が挙げられる。
上記成形体としては、更に、自動車のバンパー、ドアトリム、計器板、食品加工装置、調理機器、撥水撥油性ガラス、照明関連機器、OA機器の表示盤・ハウジング、電照式看板、ディスプレイ、液晶ディスプレイ、携帯電話、プリント基盤、電気電子部品、雑貨、ごみ箱、浴槽、ユニットバス、換気扇、照明枠等に用いられる部材も挙げられる。
上記フッ素樹脂からなることを特徴とする粉体塗料も本発明の一つである。上記粉体塗料は、平均粒子径が10〜500μmであってよい。平均粒子径はレーザー回析式粒度分布測定機を用いて測定できる。上記粉体塗料を静電塗装により基材の上に吹きつけた後、焼成することにより、発泡痕の無い塗膜を得ることができる。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
フッ素樹脂のモノマー組成
核磁気共鳴装置AC300(Bruker−Biospin社製)を用い、測定温度を(ポリマーの融点+20)℃として19F−NMR測定を行い、各ピークの積分値およびモノマーの種類によっては元素分析を適宜組み合わせて求めた。
融点
示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
メルトフローレート〔MFR〕
MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、メルトインデクサー(東洋精機社製)を用いて、297℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)をMFRとした。
熱分解開始温度(1%質量減温度)
示差熱・熱重量測定装置(TG−DTA6200(日立ハイテクサイエンス社製))を用い、フッ素樹脂粉末又はペレット10mgを測定に用いて、空気雰囲気下で、10℃/分で昇温し、1質量%減少する時の温度を熱分解開始温度とした。
フッ素樹脂の−CONH基(アミド基)の個数の求め方
フッ素樹脂の各粉末(またはペレット)の切断片を室温で圧縮成形し、厚さ200μm(±5μm)のフィルムを作製した。これらのフィルムの赤外吸収スペクトル分析を行った。Perkin−Elmer SpectrumVer3.0を用いて128回スキャンして、得られた赤外吸収スペクトルを解析し、ピークの吸光度を測定した。
また、フィルムの厚さはマイクロメーターにて測定した。
得られた赤外吸収スペクトルにおける主鎖のCH基に起因する2900〜3100cm−1に現れるピークの吸光度を1.0に規格化した。
そのスペクトルの3400〜3470cm−1付近に現れるアミド基(−CONH)のNH結合に起因するピークの吸光度を求める。自動でベースラインを判定させ、ピーク高さをピーク吸光度Aとして求める。アミド基(−CONH)由来のピークの吸光度Aを用いて、次式により、炭素数10個あたりのアミド基の個数(個)を求める。
炭素数10個あたりのアミド基の個数=K×A
A:アミド基(−CONH)由来のピークの吸光度
K:係数 4258
フッ素樹脂の不安定末端基の個数の求め方
アミド基由来のピークの吸光度Aを求める方法と同様にして、各不安定末端基の吸光度Aを求め、次式により、炭素数10個あたりの各不安定末端基の個数を求める。
炭素数10個あたりの各不安定末端基の個数=K×A
A:各不安定末端基由来のピークの吸光度
K:表2に示す係数
Figure 2017020014
不安定末端基の個数は、上記の式により求めた各不安定末端基の個数を足しあわせて算出する。
比較例1
3000L容積のオートクレーブに蒸留水900Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン674kgを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度140rpmに保った。次いで、CH=CHCFCFCFCFCFCF207g、テトラフルオロエチレン(TFE)62.0kgおよびビニリデンフルオライド(VDF)18.1kgを順次仕込んだ後、重合開始剤ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液2.24kg添加して重合を開始した。重合開始と同時に酢酸エチルを7.0kg仕込んだ。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE/VDF混合ガスモノマー(TFE/VDF:60.2/39.8(モル%))を仕込み、また追加する混合ガス100部に対してCH=CHCFCFCFCFCFCFを1.21部になるように同時に仕込み、系内圧力を0.8MPaに保った。最終的に混合ガスモノマーの追加仕込み量が110kgになった時点で重合を停止し、放圧して大気圧に戻した後、得られたTFE/VDF/CH=CHCFCFCFCFCFCF共重合体を水洗、乾燥して400kgの粉末を得た。
得られた粉末は以下の組成及び物性を有していた。
TFE/VDF/CH=CHCFCFCFCFCFCF:59.9/39.8/0.3(モル%)
融点:218℃
MFR:9.0g/10min(297℃−5kg)
比較例2〜6
連鎖移動剤である酢酸エチル及び重合開始剤であるジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの仕込み量を変更することにより、比較例1と同じ組成を有しており、しかしMFRが異なるフッ素樹脂の粉末を得た。
比較例2 0.5g/10min
比較例3 1.5g/10min
比較例4 3.4g/10min
比較例5 35.0g/10min
比較例6 80.0g/10min
比較例7
174L容積のオートクレーブに蒸留水52.2Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン39.1kgを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度200rpmに保った。次いで、パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル0.34kg、TFE6.00kgおよびVDF1.08kgを順次仕込んだ後、重合開始剤ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)の50質量%メタノール溶液を130g添加して重合を開始した。重合開始と同時に酢酸エチルを0.37kg仕込んだ。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE/VDF混合ガスモノマー(TFE/VDF:65.5/34.5(モル%))を仕込み、また追加する混合ガス100部に対してパーフルオロ(プロピル)ビニルエーテルを0.9部になるように同時に仕込み、系内圧力を0.9MPaに保った。最終的に混合ガスモノマーの追加仕込み量が8kgになった時点で重合を停止し、放圧して大気圧に戻した後、得られたTFE/VDF/パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル共重合体を水洗、乾燥して7.5kgの粉末を得た。
得られた粉末は以下の組成及び物性を有していた。
TFE/VDF/パーフルオロ(プロピル)ビニルエーテル:65.5/34.3/0.2(モル%)
融点:228℃
MFR:2.5g/10min(297℃−5kg)
比較例8
174L容積のオートクレーブに蒸留水52.2Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン39.1kgを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度200rpmに保った。次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)0.34kg、テトラフルオロエチレン(TFE)5.96kgおよびビニリデンフルオライド(VDF)0.96kgを順次仕込んだ後、重合開始剤ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)の50質量%メタノール溶液を130g添加して重合を開始した。重合開始と同時に酢酸エチルを0.40kg仕込んだ。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE/VDF/CTFE混合ガスモノマー(TFE/VDF/CTFE:64.7/32.9/2.4(モル%))を仕込み、系内圧力を0.9MPaに保った。最終的に混合ガスモノマーの追加仕込み量が8kgになった時点で重合を停止し、放圧して大気圧に戻した後、得られたTFE/VDF/CTFE共重合体を水洗、乾燥して7.5kgの粉末を得た。
得られた粉末は以下の組成及び物性を有していた。
TFE/VDF/CTFE:64.9/32.7/2.4(モル%)
融点:226℃
MFR:4.5g/10min(297℃−5kg)
実施例1〜8の作製
比較例1〜8で得られた各粉末をアンモニア水に接触させて反応させた(アミド化処理)。アンモニア水の濃度と反応温度と反応時間を変えて、−CONH基が表3に記載の個数になるように反応させた。
Figure 2017020014
比較例及び実施例で得られたフッ素樹脂について、−CONH基及び不安定末端基の個数を求めた。
比較例1〜8、実施例1〜8の主な不安定末端基は、開始剤由来のカーボネート基(ROCOO基)である。上述した「フッ素樹脂の不安定末端基の個数の求め方」により、カーボネート基の個数を不安定末端基の総数として求めた。
比較例1〜8、実施例1〜8のカーボネート基に起因するピークの付近(1780〜1830cm−1)にポリマー由来のピークが重なるため、完全アミド化ポリマーを作製して、そのポリマーのスペクトルと差スペクトルを取る。その差スペクトルのカーボネート基に起因するピーク(1780〜1830cm−1)が本来カーボネート基のピーク吸光度となる。そのピーク吸光度の値からカーボネート基の個数を計算する。
比較例1のポリマーを1wt%アンモニア水を用いて反応温度80℃で10hr反応させて完全にアミド化したポリマーを得た。そのようにして得られたポリマーは完全にアミド化されているため、不安定な開始剤末端のカーボネート基は存在しない。この得られたポリマーは、MFR9.0g/10min、アミド基145個、熱分解開始温度(1%質量減温度)390℃であった。
また、比較例及び実施例で得られたフッ素樹脂について、熱分解開始温度(1%質量減温度)を測定した。
結果を表4に示す。
Figure 2017020014
試験例
比較例及び実施例で得られたフッ素樹脂について、発泡カップテストを行った。
カップテストの方法
サンプル重量10gをアルミカップに入れ、300℃で2時間、熱風式の電気炉に入れた。
2時間後、カップを取り出し樹脂の状態を目視で観察した。
結果を表5に示す。
Figure 2017020014

Claims (3)

  1. ビニリデンフルオライド単位を含むフッ素樹脂であって、
    主鎖末端に−CONH基を有しており、
    ビニリデンフルオライド単位が前記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜100モル%である
    ことを特徴とするフッ素樹脂。
  2. 更にテトラフルオロエチレン単位を含み、
    ビニリデンフルオライド単位が前記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜70.0モル%であり、
    テトラフルオロエチレン単位が前記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の30.0〜85.0モル%である
    請求項1記載のフッ素樹脂。
  3. 更にテトラフルオロエチレン単位、並びに、式(1)及び式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーからなる群より選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー単位を含み、
    ビニリデンフルオライド単位が前記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0〜44.9モル%であり、
    テトラフルオロエチレン単位が前記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の50.0〜85.0モル%であり、
    エチレン性不飽和モノマー単位が前記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の0.1〜5.0モル%である
    請求項1記載のフッ素樹脂。
    式(1): CX1112=CX13(CX1415n1116
    (式中、X11〜X16は同一または異なってH、F又はClを表し、n11は0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
    式(2): CX2122=CX23−O(CX2425n2126
    (式中、X21〜X26は同一または異なってH、F又はClを表し、n21は0〜8の整数を表す。)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019111824A1 (ja) * 2017-12-06 2019-06-13 Agc株式会社 含フッ素弾性共重合体及び含フッ素弾性共重合体の製造方法

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WO2019111824A1 (ja) * 2017-12-06 2019-06-13 Agc株式会社 含フッ素弾性共重合体及び含フッ素弾性共重合体の製造方法

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