JP2015160447A - パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電動パワーステアリングが失陥した場合であれ、当該失陥前と同様の操舵感触が得られるパワーステアリング装置を提供する。【解決手段】パワーステアリング装置11はEPS20およびHPS30を備えている。EPS20は操舵トルクが印加されるトーションバー65の捻れ量に応じた電気信号を生成するトルクセンサ21と、当該電気信号に基づき第1の操舵補助力を発生するアシストモータ22を有する。HPS30はモータ駆動ポンプ33から供給される作動油の流量に応じて第2の操舵補助力を発生する油圧アクチュエータ31と、油圧アクチュエータ31に対する作動油の給排をトルクセンサ21と共用するトーションバー65の捻れ量に応じて制御するコントロールバルブ32とを有する。アシストモータ22は操舵トルクの伝達経路におけるトーションバー65の下流(ラック軸16に噛合するピニオンシャフト15)に減速機23を介して連結されている。【選択図】図1

Description

本発明は、パワーステアリング装置に関する。
従来、車両のステアリング系に対して補助トルクを付与するために、モータを動力源とする電動操舵補助装置と車両の車軸駆動源としての内燃機関を動力源とする油圧操舵補助装置とを備えるパワーステアリング装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)。
電動操舵補助装置はコラムアシスト式であって、ステアリングホイールに対する入力トルクにモータによる補助トルクを加えて出力トルクを生成し、当該出力トルクを油圧操舵補助装置に印加する。油圧操舵補助装置は、ロータリー式のコントロールバルブを備えたラックピニオン式の操舵補助装置である。電動操舵補助装置の出力トルクが印加されることによりコントロールバルブが操作される。当該操作を通じて油圧ポンプからラックボディに設けられたパワーシリンダへの作動油の流路および流量がコントロールバルブに内蔵されるトーションバーの捻れ角に応じて切り替わる。パワーシリンダは作動油が右操舵補助用または左操作補助用のシリンダ室に供給されることによりラック推進力(操舵補助力)を発生させる。また、油圧ポンプに連通される高圧流路とリザーバタンクに連通される低圧流路との間には電磁リリーフ弁が設けられている。
通常時、電動操舵補助装置は入力トルクが設定値未満の場合、モータによる補助トルクを生成しない。すなわち、入力トルクがそのまま電動操舵補助装置の出力トルクとなる。当該出力トルクが設定値に達するまでは油圧操舵補助装置によって当該出力トルクに応じた補助トルクが発生される。当該出力トルクが設定値に達した以降、電磁リリーフ弁が開弁されて作動油の一部分がリザーバタンクに戻されることにより油圧操舵補助装置により発生される補助トルクが制限される一方で、電動操舵補助装置による補助トルクの生成が開始される。このとき、電動操舵補助装置の出力トルクはステアリングホイールに対する入力トルクにモータによる補助トルクを加えた値となる。
電動操舵補助装置または油圧操舵補助装置が失陥した場合、残る正常な油圧操舵補助装置または電動操舵補助装置により操舵補助が継続される。
電動操舵補助装置が失陥した場合、電磁リリーフ弁を開放させる設定開放圧が通常時よりも増大される。パワーシリンダに供給される作動油の流量を通常時よりも増大させることができるので、油圧操舵補助装置は自身に印加されるトルクが設定値未満のときだけでなく、当該トルクが設定値以上のときにも当該トルクに応じた補助トルクを生成することが可能となる。すなわち、電動操舵補助装置が失陥したとき、当該失陥による補助トルクの不足分が油圧操舵補助装置による操舵補助力によって補われる。
油圧操舵補助装置が失陥した場合、電動操舵補助装置は、ステアリングホイールに対する入力トルクが設定値未満であってもモータにより補助トルクを生成する。
登録特許第5034446号公報(段落0076、図7)
特許文献1のパワーステアリング装置では、電動操舵補助装置の出力トルクに応じて油圧操舵補助装置のコントロールバルブが操作される。ここで、コントロールバルブのトーションバーの剛性(ばね定数)は、電動操舵補助装置の出力トルクに応じて設定される。すなわち、電動操舵補助装置が正常に動作するときの出力トルクが印加されることによりトーションバーは好適に捻れ、その結果、コントロールバルブの所望の動作特性が得られる。このため、電動操舵補助装置が失陥した場合、ステアリングホイールにおける入力トルクが設定値に達するまでは当該失陥前と同様の操舵感触が得られる。しかし、当該入力トルクが設定値を超える状況下で油圧操舵補助装置の能力を十分に発揮させようとするとき、モータによる補助トルクが得られない分通常時よりも大きな入力トルクを要する。また、大きな入力トルクを要することに起因してコントロールバルブの開度、ひいては油圧による操舵補助力が十分に得られないおそれもある。これは、操舵感触の悪化につながる。
本発明の目的は、電動パワーステアリングが失陥した場合であれ、当該失陥前と同様の操舵感触が得られるパワーステアリング装置を提供することにある。
上記目的を達成し得るパワーステアリング装置は、電動パワーステアリングと油圧パワーステアリングとを備えている。電動パワーステアリングは、操舵トルクが印加されるトーションバーの捻れ量に応じた電気信号を生成するトルクセンサと、前記トルクセンサにより生成される電気信号に基づき第1の操舵補助力を発生する電動アクチュエータとを有する。油圧パワーステアリングは、ポンプから供給される作動油の流量に応じて第2の操舵補助力を発生する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに対する作動油の給排を前記トルクセンサと共用する前記トーションバーの捻れ量に応じて制御するコントロールバルブとを有する。前記電動アクチュエータは操舵トルクの伝達経路における前記トーションバーの下流に設けられてなる。
この構成によれば、トーションバーに対して電動パワーステアリングによる第1の操舵補助力が印加されることはない。したがって、電動パワーステアリングが失陥した場合であれ、当該失陥前と同様の操舵感触が得られる。
上記のパワーステアリング装置において、前記伝達経路は、前記トーションバーを通じて操舵トルクが伝達されることにより回転するピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトの回転に伴い直線運動する転舵軸と、を含んでいてもよい。このとき、前記電動アクチュエータは前記伝達経路における前記トーションバーの下流である前記ピニオンシャフトまたは前記転舵軸に対して連結されることが好ましい。
この構成によれば、ピニオンシャフトまたは転舵軸に対して電動アクチュエータによる第1の操舵補助力が付与される。この第1の操舵補助力によりピニオンシャフトの回転運動または転舵軸の直線運動が補助される。
上記のパワーステアリング装置において、前記電動アクチュエータは給電により回転するモータであってもよい。そして、前記電動アクチュエータに対する給電経路を開閉するリレーと、前記リレーの開閉を制御する制御装置と、を備えていてもよい。このとき、前記制御装置は前記電動パワーステアリングが失陥したときには前記リレーを開くことが好ましい。
この構成によれば、電動パワーステアリングが失陥したときには、リレーが開放されることによりモータへの給電経路が遮断される。これにより、モータが発電モードへ移行することが抑制される。すなわち、モータにおける発電時の回転抵抗(回生抵抗)が操舵に対する制動力として作用することが抑制される。
上記のパワーステアリング装置において、前記油圧アクチュエータは前記コントロールバルブを通じて作動油の給排が選択的に切り替えられる2つの油室に発生する差圧を利用して転舵軸に対して第2の操舵補助力を付与する油圧シリンダであってもよい。そして前記コントロールバルブと前記2つの油室との間にそれぞれ連結される第1の給排管と第2の給排管との間を開閉する電動バルブと、前記電動バルブの開閉を制御する制御装置と、を備えていてもよい。このとき、前記制御装置は、前記油圧パワーステアリングが失陥したとき、前記電動バルブを開くことが好ましい。
この構成によれば、油圧パワーステアリングが失陥したときには、電動バルブが開かれることにより第1の給排管と第2の給排管との間が連通する。たとえば作動油の供給経路(油圧配管)のどこかに詰まりが発生した場合、油圧シリンダにおける一方または他方の油室内の作動油の逃げ場がなくなることが考えられる。この点、電動バルブを開くことにより一方または他方の油室内の作動油は第1または第2の給排管へ逃げることが可能となる。このため、逃げ場を失った一方または他方の油室内の作動油に起因する油圧抵抗が低減される。
本発明によれば、電動パワーステアリングが失陥した場合であれ、当該失陥前と同様の操舵感覚が得られる。
一実施形態におけるパワーステアリング装置の概略を示す構成図。 一実施形態におけるコントロールバルブおよびトルクセンサの断面図。 一実施形態におけるパワーステアリング装置の電気的な構成を示すブロック図。 他の実施形態におけるパワーステアリング装置の概略を示す構成図。 他の実施形態におけるエンジン駆動ポンプの概略を示す構成図。
以下、車両のパワーステアリング装置の一実施の形態を説明する。
<パワーステアリング装置の概略>
図1に示すように、パワーステアリング装置11では、操舵機構としてラックアンドピニオン機構12が採用されている。ラックアンドピニオン機構12はステアリングホイール13の操作にステアリングシャフト14を介して連動するピニオンシャフト15の回転を、当該ピニオンシャフト15に噛み合うラック軸16の直線運動に変換する。ラック軸16の両端にはそれぞれ図示しないボールジョイントなどを介して車輪が連結される。ラック軸16が自身の軸線方向へ移動することによって車輪の向き(舵角)が変わる。
パワーステアリング装置11は、操舵を補助するための構成としてEPS(電動パワーステアリング)20およびHPS(油圧パワーステアリング)30を備えている。
<EPS>
EPS20はピニオンシャフト15(ステアリングシャフト14)の動作を補助することにより操舵を補助する。EPS20は、トルクセンサ21、アシストモータ22、減速機23およびECU(電子制御装置)24を備えている。
トルクセンサ21はステアリングシャフト14の途中に設けられている。トルクセンサ21はステアリングホイール13を介してステアリングシャフト14に印加される操舵トルクに応じた電気信号Sτを生成する。
アシストモータ22は減速機23を介してピニオンシャフト15に連結されている。減速機23はアシストモータ22の出力軸に連結されるウォーム23a、およびステアリングシャフト14に設けられてウォーム23aに噛合うウォームホイール23bを有している。減速機23はアシストモータ22の回転を減速し、当該減速した回転力を操舵補助力(アシスト力)としてピニオンシャフト15に伝達する。
ECU24はトルクセンサ21により生成される電気信号Sτに基づき操舵トルクτを検出し、当該操舵トルクτに応じてアシストモータ22を制御する。具体的には、ECU24は操舵トルクτに基づき目標アシスト力(目標アシスト量)を演算し、当該目標アシスト力を発生させるための駆動電力をアシストモータ22に供給する。なお、ECU24は車両の走行状態を示す情報としてたとえば車速(車両の走行速度)を取得し、当該車速を加味して目標アシスト力を演算してもよい。
<HPS>
HPS30は、ラック軸16の動作を補助することにより操舵を補助する。HPS30は油圧アクチュエータ31、コントロールバルブ32、モータ駆動ポンプ33および油タンク34を備えている。
モータ駆動ポンプ33はポンプ本体33a、ポンプ本体33aを駆動するポンプモータ33bおよびポンプモータ33bを制御するポンプECU(電子制御装置)33cが一体的に設けられてなる。モータ駆動ポンプ33は油タンク34に貯留された作動油(作動流体)を吸い込み、この吸い込んだ作動油の圧力を高めて吐出する。モータ駆動ポンプ33から吐出される作動油は、コントロールバルブ32を介して油圧アクチュエータ31に供給される。
油圧アクチュエータ31は、中空のシリンダ41およびピストン42を有している。シリンダ41はラック軸16のハウジングとして兼用される。シリンダ41にはピストンロッドとしても機能するラック軸16が挿通されている。シリンダ41の内部において、ラック軸16にはピストン42が貫通した状態で固定されている。ピストン42によってシリンダ41の内部は第1の油室41aと第2の油室41bとに区画されている。ピストン42はラック軸16と一体をなしてシリンダ41の内部をラック軸16の軸線方向へ摺動する。また、第1の油室41aと第2の油室41bとの差圧によって、ラック軸16は図1に矢印で示される第1の方向LAまたは第2の方向RAへ移動する。当該差圧によるラック軸16の変位は操舵補助力として作用する。
コントロールバルブ32はトルクセンサ21と一体的に設けられている。トルクセンサ21はステアリングホイール13側に、コントロールバルブ32はピニオンシャフト15側に位置している。コントロールバルブ32はステアリングホイール13の操作、すなわちステアリングシャフト14の回転に連動して油圧アクチュエータ31に対する作動油の供給経路および排出経路をそれぞれ切り替えるロータリバルブである。
詳述すると、コントロールバルブ32のポンプポート32aは吐出管51を介してモータ駆動ポンプ33(吐出ポート)に接続されている。また、コントロールバルブ32の第1および第2のシリンダポート32b,32cは、それぞれ第1および第2の給排管52,53を介して、第1および第2の油室41a,41bにそれぞれ接続されている。また、コントロールバルブ32のタンクポート32dは排出管54を介して油タンク34に接続されている。油タンク34は吸入管55を介してモータ駆動ポンプ33(吸込ポート)に接続されている。モータ駆動ポンプ33は油タンク34に貯留されている作動油を、吸入管55を介して吸い込み、この吸い込んだ作動油の圧力を高めて吐出する。
コントロールバルブ32にはモータ駆動ポンプ33から吐出される作動油が吐出管51を介して供給される。コントロールバルブ32はステアリングホイール13に印加される操舵トルクの方向(操舵方向)および大きさ(操舵抵抗)に応じて吐出管51を介して供給される作動油を第1および第2の給排管52,53のいずれかに振り分ける。すなわち、当該作動油は第1および第2の給排管52,53のいずれか一を介して第1および第2の油室41a,41bのいずれか一に供給される。
たとえば、第1の給排管52を介して第1の油室41aに作動油が供給された場合、油圧アクチュエータ31は第2の油室41bとの間に生じる油圧差に応じた油圧力を発生し、当該油圧力が操舵補助力としてラック軸16に作用する。このとき、第2の油室41b内の作動油は押し出されて、当該押し出される作動油は第2の給排管53を介してコントロールバルブ32に戻り(環流し)、さらに排出管54を介して油タンク34に戻る。ここでは、油圧力はピストン42を介して第2の方向RA(図1中の右方向)へ作用するので、ラック軸16はピストン42と共に第2の方向RAへ移動する。このラック軸16の移動によって操舵が補助される。
なお、第1の給排管52と第2の給排管53との間はバイパス管56により接続されている。バイパス管56には電動バルブ57が設けられている。電動バルブ57はECU24の制御を通じて開閉される。通常、電動バルブ57は閉じた状態に維持される。電動バルブ57が閉じた状態から開いた状態に切り替えられることにより、第1の給排管52と第2の給排管53との間が連通する。
<トルクセンサおよびコントロールバルブ>
つぎに、トルクセンサ21およびコントロールバルブ32の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、トルクセンサ21およびコントロールバルブ32は中空円筒状のバルブハウジング61の内部に設けられている。トルクセンサ21はステアリングホイール13側に、コントロールバルブ32はピニオンシャフト15側(減速機23側)に位置している。
バルブハウジング61のステアリングホイール13側の端部(図中の上端部)には、円筒状のエンドストッパ62がねじ込まれることにより固定されている。バルブハウジング61の減速機23側の端部(図中の下端部)は、たとえば減速機23が収容される減速機ハウジング23cに連結されていてもよい。
バルブハウジング61の内部には中空円筒状の入力軸63および中空円筒状の出力軸64が同一の軸線を中心としてそれぞれ回転可能に設けられている。入力軸63と出力軸64とはこれらの内部に挿通されたトーションバー65を介して相対回転可能に連結されている。入力軸63の外端(図中の上端)はステアリングシャフト14に連結される。出力軸64の外端(図中の下端)はピニオンシャフト15に連結される。
トーションバー65はステアリングホイール13に対して操舵トルクτが印加されることにより捻れる。ステアリングホイール13には適度な反力(手応え)が必要であるところ、当該手応え感を得るためにパワーステアリング装置11ではトーションバー65の捻れを反力として利用している。すなわち、トーションバー65によりステアリングホイール13の操作に伴う手応え感、すなわちいわゆるステアリングの重さが持たせられている。路面抵抗が大きいときにはトーションバー65も大きく捻れて反力が大きくなり、路面抵抗が小さいときには捻れ角も小さく反力も小さく作用する。トーションバー65の捻り剛性(ばね定数)は運転者による操舵トルクτで無理なく(十分に)捻れる程度の値に設定される。
<コントロールバルブ>
コントロールバルブ32はインナーバルブ71およびアウターバルブ72を有している。インナーバルブ71は入力軸63の外周に設けられている。アウターバルブ72はインナーバルブ71の外周とバルブハウジング61の内周との間に設けられている。アウターバルブ72はインナーバルブ71の外周およびバルブハウジング61の内周に対して摺動回転可能である。また、アウターバルブ72はその軸線向において出力軸64に連結されている。アウターバルブ72と出力軸64との連結手段としては、たとえばピン73を利用してもよい。
ステアリングホイール13を通じて入力軸63に印加される操舵トルクに応じてトーションバー65が捻れ、当該捻れに伴ってインナーバルブ71とアウターバルブ72との間の回転方向における位置関係(相対角)が変化する。当該位置関係の変化を利用してポンプポート32aから供給される作動油の流路が第1のシリンダポート32bと第2のシリンダポート32cとの間で切り替えられる。また、インナーバルブ71の回転角とアウターバルブ72の回転角との差(バルブ作動角)に応じて絞りが形成されることにより、第1のシリンダポート32bまたは第2のシリンダポート32cへ供給される作動油の流量が調整される。
<トルクセンサ>
トルクセンサ21はいわゆる差動トランス式のトルクセンサであって、第1の筒部81、第2の筒部82および2つのコイル83,84を有している。第1の筒部81はステアリングホイール13側(図中の上側)に配置されている。第2の筒部82は減速機23側、すなわちピニオンシャフト15側(図中の下側)に配置されている。
第1の筒部81は入力軸63の外周に嵌められた状態で固定されている。第1の筒部81の外周面はエンドストッパ62の内周面に対して摺動回転可能である。第1の筒部81における第2の筒部82側の端部(図中の下端)には複数の切欠部(凹部)81aが円周方向において等間隔に設けられている。
第2の筒部82は第1の筒部81とアウターバルブ72との間に設けられている。第2の筒部82は入力軸63の外周に挿通されている。第2の筒部82の内周面は入力軸63の外周面に対して、第2の筒部82の外周面はエンドストッパ62の内周面に対してそれぞれ摺動回転可能である。また、第2の筒部82はその軸線方向においてアウターバルブ72の端部に一部分が嵌められた状態で固定されている。第2の筒部82には第1の筒部81の切欠部81aが形成された側の端部(図中の下端部)が非接触状態でわずかに挿入されている。第2の筒部82における第1の筒部81側の端部(図中の上端部)には複数の切欠部(凹部)82aが円周方向において等間隔に設けられている。各切欠部82aは第2の筒部82の半径方向において各切欠部81aと対向している。
2つのコイル83,84はエンドストッパ62(正確にはその小径部分)の外周面に設けられている。これらコイル83,84はエンドストッパ62の軸線方向において間隔をおいて並んでいる。コイル83は第1の筒部81に対応する位置に、コイル84は切欠部81a,82aに対応する位置に設けられている。2つのコイル83,84とバルブハウジング61の内周面との間には隙間が形成されている。コイル83には交流電力が供給される。
さて、操舵を通じて入力軸63に操舵トルクが加わるとき、入出力軸間に連結されたトーションバー65がねじれることにより第1の筒部81と第2の筒部82とが相対回転する。当該相対回転に伴って切欠部81aと切欠部82aとのオーバラップ量(半径方向における対向面積)が変化する。当該オーバラップ量の変化に応じてコイル84に発生する誘導起電力が変化(増減)する。コイル84に発生する誘導起電力が操舵トルクに応じた電気信号Sτとして取り出される。
なお、バルブハウジング61の内部において、2つのコイル83,84のうちコントロールバルブ32側に位置するコイル84のさらにコントロールバルブ32側の部位にはリング部材85が設けられている。リング部材85はエンドストッパ62の外周面とバルブハウジング61の内周面との間に介在されている。リング部材85の内周面(エンドストッパ62の外周面に接する面)にはシール材としてOリング86が、リング部材85の外周面(バルブハウジング61の内周面に接する面)にはシール材としてOリング87が設けられている。これらOリング86,87により、リング部材85とエンドストッパ62との間、およびリング部材85とバルブハウジング61との間の液密がそれぞれ確保される。このため、コイル83,84に作動油が接触することが防止される。ちなみに、第2の筒部82の内周面および外周面にもそれぞれシール材としてOリング88,89が設けられている。これらOリング88,89により、第2の筒部82と入力軸63との間、および第2の筒部82とエンドストッパ62との間の液密がそれぞれ確保される。
<電気的な構成>
つぎに、パワーステアリング装置の電気的な構成を説明する。
図3に示すように、ECU24には、トルクセンサ21、ポンプECU33cおよび電動バルブ57が接続されている。また、ECU24にはモータドライバ(PWMインバータ)91を介してアシストモータ22が接続されている。モータドライバ91とアシストモータ22との間の給電経路92にはリレー93(モータ端子リレー)が設けられている。
ECU24は少なくともトルクセンサ21の検出結果、すなわち操舵トルクτに基づき目標アシスト量(目標アシストトルク)を演算する。ECU24は目標アシスト量に基づきモータドライバ91のスイッチングを制御することによりアシストモータ22へ供給する駆動電力(電流量)を制御する。また、ECU24はリレー93の開閉を制御するところ、通常はリレー93を閉じた状態に維持する。また、ECU24は電動バルブ57の開閉も制御するところ、通常は電動バルブ57を閉じた状態に維持する。
<異常検出機能>
ECU24はEPS20の異常検出機能を有している。
ECU24はたとえばつぎの(A)または(B)の状態をEPS20の異常として検出する。ECU24はEPS20の異常が検出されるとき、リレー93を開放(OFF)させる。
(A)トルクセンサ21(電気信号Sτ)の異常。
・電気信号Sτの値が正常時に取り得る値を逸脱しているとき、その逸脱した電気信号Sτは異常である。
(B)アシストモータ22の異常。
・ECU24は図示しない電流センサを通じてアシストモータ22へ供給される電流を検出する。モータドライバ91に対するPWM制御信号のデューティ比を100%に設定したにも関わらずアシストモータ22に供給される電流値が零であるとき、アシストモータ22あるいはその給電経路に断線などの異常が発生している。
また、ECU24はポンプECU33cを通じてHPS30の異常を検出する。ECU24はHPS30の異常が検出されるとき、電動バルブ57を開弁させる。
ポンプECU33cはたとえばつぎの(C)の状態をHPS30の異常として検出する。ポンプECU33cはHPSの異常が検出されるとき、異常信号Spを生成する。この異常信号Spに基づきECU24はHPS30の異常を検出する。
(C)ポンプ本体33aの異常。
・ポンプECU33cは図示しない電流センサを通じてポンプモータ33bへ供給される電流を検出する。また、ポンプECU33cは図示しない回転数センサを通じてポンプ本体33aの回転数を検出する。ポンプECU33cはポンプモータ33bへ供給される電流の値とポンプ本体33aの回転数との間に比例関係が成立することを利用してポンプ本体33aなどの異常を検出する。たとえばポンプモータ33bへ供給される電流の値の割にはポンプ本体33aの回転数が小さいとき、ポンプ本体33aが正常に動作していないおそれがある。また、油圧配管の詰まりなども懸念される。
<パワーステアリング装置の動作>
つぎに、パワーステアリング装置11の動作を説明する。
まずEPS20およびHPS30が共に正常である場合、EPS20およびHPS30のそれぞれにより操舵を補助するようにしてもよい。EPS20によるアシスト量はトルクセンサ21を通じて取得される操舵トルクτによって決まる。HPS30によるアシスト量はコントロールバルブ32におけるインナーバルブ71の回転角とアウターバルブ72の回転角との差によって決まる。EPS20およびHPS30を併用する場合、EPS20によるアシスト量とHPS30によるアシスト量とを合計したアシスト量で操舵が補助される。
なお、たとえばECU24からの指令に基づきポンプECU33cはモータ駆動ポンプ33の吐出量を調節することにより、つぎのような操舵アシストを行うことも可能である。すなわち、省エネルギの観点から、できるだけEPS20により操舵をアシストする。そしてEPS20の最大能力でもアシストが不足するとき、その不足分に応じてHPS30によるアシスト量を増大させる。また、高速走行時など、必要とされるアシスト量が少ないときにはEPS20だけでアシストしてHPS30ではアシストしないようにしてもよい。EPS20とHPS30との協働を通じて、より高度なアシスト制御を実行することが可能である。
つぎに、EPS20に異常(失陥)が発生したとき、EPS20によるアシスト量は零となる。すなわち、HPS30のアシスト量がそのままトータルとしてのアシスト量となる。また、EPS20に異常が発生したとき、リレー93が開放されることによりアシストモータ22への給電経路92が遮断される。これにより、アシストモータ22が発電モードへ移行すること、すなわちアシストモータ22の発電作用が抑制される。アシストモータ22における発電時の回転抵抗(回生抵抗)が操舵に対する制動力として作用することが抑制される。
つぎに、HPS30に異常(失陥)が発生したとき、HPS30によるアシスト量は零となる。すなわち、EPS20のアシスト量がそのままトータルとしてのアシスト量となる。また、HPS30に異常が発生したとき、電動バルブ57が開かれる。これにより、第1の給排管52と第2の給排管53との間がバイパス管56を介して連通する。たとえば油圧配管、具体的には第1または第2の給排管52,53におけるバイパス管56の連結点よりもコントロールバルブ32側の部分が詰まることによって、第1または第2の油室41a,41bの内部の作動油の逃げ場がなくなることが考えられる。この点、電動バルブ57を開くことにより第1または第2の油室41a,41bの内部の作動油はバイパス管56を通って第2または第1の給排管53,52へ逃げることができる。このため、逃げ場を失った第1または第2の油室41a,41bの内部の作動油に起因する油圧抵抗が低減される。
<パワーステアリング装置の作用>
つぎに、パワーステアリング装置11の作用を説明する。
トルクセンサ21とコントロールバルブ32とで同一のトーションバー65を共用している。また、操舵トルクτの伝達経路(ステアリングシャフト12→ピニオンシャフト15→ラック軸16)において、ステアリングホイール13側を上流としたとき、アシストモータ22はトーションバー65の下流であるピニオンシャフト15に設けられている。このため、トーションバー65にEPS20(アシストモータ22)によるアシスト力が印加されることはない。したがって、EPS20が失陥した場合であれ、当該失陥前と同様の操舵感触が得られる。これは、EPS20が正常であるときであれ失陥しているときであれ、ステアリングホイール13の手応え感はトーションバー65に依存するからである。
また、トルクセンサ21およびコントロールバルブ32を分離してそれぞれにトーションバーを別個に持たせる場合に比べて、運転者の操舵感触あるいは操舵の安定性を向上させることも可能となる。操舵トルクτの伝達経路に2つのトーションバーを設けた場合、これらトーションバーが累積的に捻れることにより、柔らかめの操舵感触が得られやすい。このため、しっかりとした操舵を行う際にはやや手応え不足となることが懸念される。本例のように、トルクセンサ21とコントロールバルブ32とで同一のトーションバー65を共用することにより、しっかりとした操舵感触を得ることが可能である。
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)操舵トルクτの伝達経路において、ステアリングホイール13側を上流としたとき、アシストモータ22はトーションバー65の下流に設けられている。このため、トーションバー65にEPS20によるアシスト力が印加されることはない。したがって、EPS20が失陥した場合であれ、当該失陥前と同様の操舵感触が得られる。
(2)トルクセンサ21とコントロールバルブ32とで同一のトーションバー65を共用している。このため、しっかりとした操舵感触を確保しやすい。また、単一のトーションバー65を設ければよいので部品点数の低減に寄与する。
(3)EPS20およびHPS30のどちらか一方が失陥したときであれ、正常な他方のHPS30およびEPS20により操舵のアシストを継続することができる。独立性の高い2重系を構築することができる。
(4)EPS20またはHPS30が失陥したとき、当該失陥したEPS20またはHPS30が操舵抵抗(操舵負荷)とならないように、つぎの動作が実行される。すなわち、EPS20が失陥したときにはリレー93が、HPS30が失陥したときには電動バルブ57が開かれる。これにより、正常なHPS30またはEPS20のアシスト能力を最大限に発揮させることにより、トータルとしてのアシスト力不足を最小限に抑えることが可能である。
(5)HPS30の油圧源としてモータ駆動ポンプ33を採用した。このため、HPS30による安定したアシスト力が得られる。また、エンジンの回転を利用した油ポンプを採用する場合に比べて、燃費も低減されて省エネルギである。
<他の実施の形態>
なお、前記実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・EPS20、正確にはアシストモータ22および減速機23は、操舵トルクτの伝達経路におけるトーションバー65の下流であれば設置場所は問わない。たとえばピニオンシャフト15よりも下流にアシストモータ22および減速機23を設けてもよい。具体的にはつぎの通りである。
図4に示すように、ラック軸16においてピニオンシャフト15が噛合うラック歯16aと反対側の部位にもラック歯16bを設ける。その上で当該ラック歯16bに噛合うピニオンシャフト101を設ける。このピニオンシャフト101に対して減速機23を介してアシストモータ22を連結する。このようにしても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
・本例では、HPS30の油圧源としてモータ駆動ポンプ33を採用したが、エンジンにより駆動されるンジン駆動ポンプを採用してもよい。
図5に示すように、たとえばエンジン駆動ポンプ102はクラッチ103を介してエンジン(内燃機関)104に連結してもよい。クラッチ103が接続された状態において、エンジン104の回転がエンジン駆動ポンプ102(正確にはその駆動軸)に伝達される。エンジン駆動ポンプ102は油タンク34に貯留された作動油を吸い込み、この吸い込んだ作動油の圧力を高めて吐出する。エンジン駆動ポンプ102から吐出される作動油はコントロールバルブ32を介して油圧アクチュエータ31に供給される。
・本例では、EPS20が失陥したときにはリレー93を、HPS30が失陥したときには電動バルブ57を開くことにより当該失陥したEPS20またはHPS30に起因して発生し得る操舵抵抗を低減するようにしたが、リレー93および電動バルブ57は必ずしも設けなくてよい。たとえばリレー93および電動バルブ57の一方のみを設けてもよいし、両方とも設けなくてもよい。このようにしても、本例の(1)〜(3)の効果を得ることができる。
<他の技術的思想>
次に、前記実施の形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記ポンプはモータ駆動ポンプであること。
(ロ)前記ポンプはエンジン駆動ポンプであること。
11…パワーステアリング装置、15…ピニオンシャフト、16…ラック軸(転舵軸)、20…電動パワーステアリング、21…トルクセンサ、22…アシストモータ(電動アクチュエータ)、24…ECU(制御装置)、30…油圧パワーステアリング、31…油圧アクチュエータ、32…コントロールバルブ、33…モータ駆動ポンプ、41a…第1の油室、41b…第2の油室、52…第1の給排管、53…第2の給排管、57…電動バルブ、65…トーションバー、93…リレー。

Claims (4)

  1. 操舵トルクが印加されるトーションバーの捻れ量に応じた電気信号を生成するトルクセンサと、前記トルクセンサにより生成される電気信号に基づき第1の操舵補助力を発生する電動アクチュエータとを有する電動パワーステアリングと、
    ポンプから供給される作動油の流量に応じて第2の操舵補助力を発生する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに対する作動油の給排を前記トルクセンサと共用する前記トーションバーの捻れ量に応じて制御するコントロールバルブとを有する油圧パワーステアリングと、を備え、
    前記電動アクチュエータは操舵トルクの伝達経路における前記トーションバーの下流に設けられてなるパワーステアリング装置。
  2. 請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
    前記伝達経路は、前記トーションバーを通じて操舵トルクが伝達されることにより回転するピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトの回転に伴い直線運動する転舵軸と、を含み、
    前記電動アクチュエータは前記伝達経路における前記トーションバーの下流である前記ピニオンシャフトまたは前記転舵軸に対して連結されてなるパワーステアリング装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のパワーステアリング装置において、
    前記電動アクチュエータは給電により回転するモータであって、
    前記電動アクチュエータに対する給電経路を開閉するリレーと、
    前記リレーの開閉を制御する制御装置と、を備え
    前記制御装置は、前記電動パワーステアリングが失陥したとき、前記リレーを開くパワーステアリング装置。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のパワーステアリング装置において、
    前記油圧アクチュエータは前記コントロールバルブを通じて作動油の給排が選択的に切り替えられる2つの油室に発生する差圧を利用して転舵軸に対して第2の操舵補助力を付与する油圧シリンダであって、
    前記コントロールバルブと前記2つの油室との間にそれぞれ連結される第1の給排管と第2の給排管との間を開閉する電動バルブと、
    前記電動バルブの開閉を制御する制御装置と、を備え
    前記制御装置は、前記油圧パワーステアリングが失陥したとき、前記電動バルブを開くパワーステアリング装置。
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