JP2014063732A - 全固体型リチウムイオン電池用正極、その正極を得るために用いる混合体、それらの製造方法、および全固体型リチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リチウム源およびM1を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前駆体を得る前駆体調整工程と、前記前駆体を900℃以下で焼成して仮焼体を得る仮焼工程と、M2を含む焼結助剤と前記仮焼体とを混合し、混合体を得る混合工程と、成型加工を行い、前記混合体を含む成型体を得る成型工程と、前記成型体を焼成してリチウム複合酸化物を主成分とする焼結体を得る焼成工程と、を備える、全固体リチウムイオン電池用正極の製造方法。
【選択図】なし
Description
このような全固体型リチウムイオン電池として、例えば特許文献1〜3に記載のものが挙げられる。
また、正極の製造過程において、原料を高温で焼成する操作を行えば正極の空隙率は低くなる傾向があるが、一方で異相生成度が高くなるため、充放電容量等の電池性能は改善されないことを本発明者は見出した。
すなわち、緻密で空隙率が低く、かつ、異相生成度が低い全固体型リチウムイオン電池用正極、その正極を得るために用いる混合体、およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。また、この正極を有する電池性能に優れる全固体型リチウムイオン電池を提供することを目的とする。
(1)リチウム源およびM1を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前駆体を得る前駆体調整工程と、
前記前駆体を900℃以下で焼成して仮焼体を得る仮焼工程と、
M2を含む焼結助剤と前記仮焼体とを混合し、混合体を得る混合工程と、
を備え、
さらに成型加工および焼成することで、下記式(I)で表されるリチウム複合酸化物を主成分とし、全固体リチウムイオン電池用正極の少なくとも一部として用いることができる焼結体を得ることができる、混合体の製造方法。
式(I):Li(x+y)M1 (2-y-p)M2 pO(4-a)
ここでM1はMn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Cl、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、1.0≦x≦2.0、0≦y≦0.2、0<p≦1.0、0≦a≦1.0である。
(2)上記(1)に記載の混合体の製造方法に、さらに、
成型加工を行い、前記混合体を含む成型体を得る成型工程と、
前記成型体を焼成して式(I)で表されるリチウム複合酸化物を主成分とする焼結体を得る焼成工程と、
を備える、全固体リチウムイオン電池用正極の製造方法。
(3)前記焼成工程において、空隙率が4.5%以下である焼結体が得られる、上記(2)に記載の全固体リチウムイオン電池用正極の製造方法。
(4)前記焼成工程において、粉末X線回折測定を行って得られるXRDチャートの2θ=18.0〜19.0°に現れるスピネル型リチウム複合酸化物のピーク強度[α]に対する、2θ=36.6〜37.2°に現れる異相成分のピーク強度[β]の比(ピーク強度[β]/ピーク強度[α])が0.3以下である焼結体が得られる、上記(2)または(3)に記載の全固体リチウムイオン電池用正極の製造方法。
(5)上記(1)に記載の製造方法によって得られる混合体。
(6)上記(2)〜(4)のいずれかに記載の製造方法によって得られる全固体リチウムイオン電池用正極。
(7)上記(6)に記載の正極と、負極と、固体電解質とを有する、全固体リチウムイオン電池。
本発明は、リチウム源およびM1を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前駆体を得る前駆体調整工程と、前記前駆体を900℃以下で焼成して仮焼体を得る仮焼工程と、M2を含む焼結助剤と前記仮焼体とを混合し、混合体を得る混合工程と、を備え、さらに成型加工および焼成することで、下記式(I)で表されるリチウム複合酸化物を主成分とし、全固体リチウムイオン電池用正極の少なくとも一部として用いることができる焼結体を得ることができる、混合体の製造方法である。
式(I):Li(x+y)M1 (2-y-p)M2 pO(4-a)
ここでM1はMn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Cl、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、1.0≦x≦2.0、0≦y≦0.2、0<p≦1.0、0≦a≦1.0である。
このような混合体の製造方法を、以下では「本発明の混合体の製造方法」ともいう。
このような全固体リチウムイオン電池用正極の製造方法を、以下では「本発明の正極の製造方法」ともいう。
本発明の混合体の製造方法における前駆体調整工程について説明する。
前駆体調整工程では、初めに、リチウム源およびM1を含む原料を溶媒に含有させる。
マンガン源としては、マンガン原子を含む無機または有機の化合物(すなわち、マンガン化合物)を用いることができる。例えば、酸化マンガン、炭酸マンガン、炭酸マンガン水和物、水酸化マンガン、オキシ水酸化マンガンを用いることができる。これらの中でも酸化マンガンを用いることが好ましく、MnO2を用いることがより好ましい。工業原料として安価に入手でき、さらに、より充放電容量等の電池性能が高いリチウムイオン電池が得られる傾向があるからである。
工業原料として入手でき、結晶構造中のMnとの置換が比較的起こりやすく、より充放電容量等の電池性能が高いリチウムイオン電池が得られる傾向があるからである。
リチウム源およびM1を含む原料を含有させる溶媒は特に限定されず、例えば従来公知の溶媒、例えば水(純水等)、エタノール、アセトンなどを用いることができるが、水を用いることが好ましい。
粉砕混合の方法は特に限定されないものの、ビーズミル等を用いた湿式微粉砕機を用いた湿式粉砕法が好ましい。
この平均粒子径は0.40μm以下であることが好ましく、0.30μm以下であることがより好ましい。
また、平均粒子径は0.10μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましい。粉砕で粒径を小さくし過ぎると、以降の工程でのハンドリングが悪くなるからである。
また、微粉化エアー圧力は0.05〜0.5MPaとすることが好ましく、0.05〜0.4MPaすることがより好ましく、0.1〜0.4MPaとすることがさらに好ましい。
飛散した液滴を迅速に乾燥させるように、適当な温度や送風等の処理が施されるが、乾燥塔上部から下部に向かいダウンフローで乾燥ガスを導入することが好ましい。
本発明の混合体の製造方法における仮焼工程について説明する。
仮焼工程では、前記前駆体を900℃以下の温度で焼成する。
この仮焼温度は400℃以上であることが好ましく、450℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることがさらに好ましい。
このような範囲の仮焼温度であると、後の焼成工程によって得られる焼結体の焼結性が向上するからである。また、焼結体の空隙率がより低くなる傾向があるからである。
仮焼時間は20時間以下であることが好ましく、10時間以下であることがより好ましく、8時間以下であることがより好ましく、7時間以下であることがさらに好ましい。
仮焼時間は1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、5時間以上であることがさらに好ましい。
このような範囲の仮焼時間であると、後の焼成工程によって得られる焼結体の焼結性が向上するからである。また、焼結体の空隙率がより低くなる傾向があるからである。
本発明の混合体の製造方法における混合工程について説明する。
混合工程では、B、P、Cl、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であるM2を含む焼結助剤と前記仮焼体とを混合し、混合体を得る。
元素M2はBおよび/またはVを含むことが好ましい。
また、例えば、前記焼結助剤と前記仮焼体とを含むスラリーを得た後、このスラリーを流動しているボールの表面に付着させ、ボール表面にてスラリーを乾燥させることで、固体状の混合体を得る方法が挙げられる。
このようなその他のものの前記混合体における含有率は30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
混合体がスラリーである場合は、スラリー状の混合体へ、室温大気中にて分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液)を添加し、超音波分散および撹拌によって分散させて、このスラリーの透過率が80〜90%となるように調節した後、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算粒度分布(体積基準)を測定し、その粒度分布から求めたメジアン径を、混合体の平均粒子径(D50)とする。
混合体が固体である場合は、この混合体をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置の試料投入口へ投入し、さらに分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液)を添加した後、超音波分散および撹拌によって分散させて、このスラリーの透過率が80〜90%となるように調節した後、この装置を用いて積算粒度分布(体積基準)を測定し、その粒度分布から求めたメジアン径を、混合体の平均粒子径(D50)とする。
本発明の正極の製造方法は、本発明の混合体の製造方法が備える前駆体調整工程、仮焼工程および混合工程に加え、さらに成型工程および焼成工程を備える。
本発明の正極の製造方法における成型工程について説明する。
成型工程では、前記混合体を含む成型体を得る。
ここで、導電助剤として、例えば従来公知の酸化物系導電助剤が挙げられる。
また、結着剤として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などが挙げられる。
前記成型体における前記混合体以外のもの(導電助剤や結着剤など)の含有率は30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の正極の製造方法における焼成工程について説明する。
焼成工程では、上記のような成型工程によって得られた成型体を焼成して焼結体を得る。
この焼成温度は750℃以上であることが好ましく、800℃以上であることがより好ましく、850℃以上であることがより好ましく、900℃以上であることがより好ましく、950℃以上であることがさらに好ましい。
また、焼成温度は1200℃以下であることが好ましく、1150℃以下であることがより好ましく、1100℃以下であることがより好ましく、1050℃以下であることがさらに好ましい。
焼成温度が高すぎると、結晶構造中から酸素が離脱する可能性があり、その場合、電池性能が低下する傾向があるからである。逆に低すぎると焼結が不十分となり空隙が多い電極となりやすく、この場合も電池性能が低下する傾向がある。
焼成時間は20時間以下であることが好ましく、10時間以下であることがより好ましく、8時間以下であることがより好ましく、7時間以下であることがさらに好ましい。
焼成時間が長すぎると、結晶構造中から酸素が離脱したり、粒子間の焼結により酸素欠損したりする可能性があり、その場合、電池性能が低下する傾向があるからである。
一次粒子の成長(径の増大)が促進され、電極中の空隙が減少し、電池特性が向上する傾向があるからである。短すぎると焼結が不十分となり空隙が多い電極となりやすく、この場合は電池性能が低下する傾向がある。
このような空隙率であると、この焼結体を正極として用いてなる全固体型リチウムイオン電池の電池性能はより優れるものであるからである。
初めに、焼結体1gをるつぼに取り、300℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却する。次に、冷却した試料のうちの0.7gをセルに採取し、細孔分布測定装置PM−33GT1LP(QUANTA CROME製)を使用して水銀を細孔内へ圧入し、その時加えた圧力と押し込まれた(侵入した)水銀容積の関係から細孔容積を測定する。また、加えられた圧力と、その圧力で水銀が侵入可能な細孔径の関係から細孔分布を求める。測定は、最高圧力32273psi(細孔直径5.4nm)まで行い、解析に用いる水銀の表面張力はσ=473dynes/cm、接触角はθ=130°とする。そして、細孔径5.4nm〜2000nmまでの細孔容積(g/cm3)を、焼結体の重さ(g)、厚み(cm)、直径(cm)より算出した焼結体の体積密度(g/cm3)で割った値を空隙率とする。
このようなリチウム複合酸化物を、以下では「本発明の複合酸化物」ともいう。
このようなピーク強度比であると、この焼結体を正極として用いてなる全固体型リチウムイオン電池の電池性能が、より優れるものであるからである。
本発明の複合酸化物について説明する。
本発明の複合酸化物には、スピネル型リチウム複合酸化物、層状岩塩型リチウム複合酸化物および逆スピネル型リチウム複合酸化物が含まれ得る。
本発明の複合酸化物は、これらの中の複数種類のリチウム複合酸化物を含むものであってよい。
本発明の複合酸化物は、スピネル型リチウム複合酸化物であることが好ましい。
また、従来、作動電位が5Vレベルと高い5V型または5V級と呼ばれる場合がある置換型のスピネル型リチウム複合酸化物も、本発明の複合酸化物に含まれるものとする。
また、LiCoO2やLiNiO2をベースとする固溶体化合物も、本発明の複合酸化物に含まれるものする。この固溶体化合物には、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等が含まれる。LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2の固溶体化合物は、空間群R−3mとも呼ばれる酸化物イオンが六方晶構造をとり、立方最密充填となっていると考えられる。また、固溶体化合物として、γLi4/3M2/3O2・(1−γ)LiMO2(0<γ<1。ここでMは本発明の複合酸化物におけるM1およびM2からなる群から選ばれる少なくとも1つ。)の態様のものが含まれるとする。
式(I)においてxは、1.0≦x≦2.0の範囲であるが、1.0≦x≦1.2であることが好ましく、1.0≦x≦1.1であることがより好ましく、x=1.0であることがさらに好ましい。xが1.0に近いほどリチウム複合酸化物はスピネル型に近い。xが2.0に近いほどリチウム複合酸化物は層状岩塩型に近い。
yは、M1と置換しているLi量を意味する。本発明の複合酸化物はM1の一部がLiと置換していることが好ましい。すなわち、リチウムイオン電池の正極活物質として用いられるリチウム複合酸化物の組成式におけるLiの原子数(組成比)の理論値より過剰のLiが含まれていることが好ましい。この場合、過剰のLiの一部または全部に見合う分だけM1量を少なくすることにより、Liの少なくとも一部がM1と置換した構造をとる。
Liの置換量(y)が多くなると、電池の充放電容量は若干低下するものの、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向がある。しかしながら、yが0.2より大きくなっても常温よりも高温でのサイクル特性は大きくは向上し難い傾向がある。また、Li総量(x+y)が1.0未満になると不純物となる異相が生成され、電池の充放電性能が低下する傾向がある。
また、2−y−pの上限は2.0であるが、上限は1.95であることが好ましく、上限は1.90であることがより好ましい。2−y−pが大きすぎるとサイクル特性が劣化するからである。
式(I−1):Li(x+y)Mn(2-y-p-r)M11 rM2 pO(4-a)
式(I−1)においてM11はM1におけるMn以外の元素、すなわち、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、rはM11の置換量を意味し、0≦r≦2.0である。
また、0<2−y−p−rとする。2−y−p−rの好ましい上限と好ましい下限については、前述の2−y−pの場合と同様である。
式(I)においてaは0≦a≦1.0を満たし、a=0であることが好ましい。
酸素欠損量が小さいと(すなわちaが小さいと)充放電試験における3.2V以下容量が小さくなる傾向がある。酸素欠損量が小さいと結晶構造が安定し、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向がある。
式(I−2):Li(1+y)M1 (2-y-p)M2 pO(4-a)
式(I−2)は、式(I)におけるxが1の場合に相当する。
式(I−3):Li(1+y)Mn(2-y-p-r)M11 rM2 pO(4-a)
式(I−3)は、式(I−1)におけるxが1の場合に相当する。
式(I−3)におけるM11およびrは、式(I−1)におけるM11およびrと同様である。また、式(I−1)の場合と同様に、0<2−y−p−rとする。2−y−p−rの好ましい上限と好ましい下限については、前述の2−y−pの場合と同様である。
式(I−4):Li(2+y)M1 (2-y-p)M2 pO(4-a)
式(I−4)は、式(I)におけるxが2の場合に相当する。
式(I−5):Li(1+z)M1 (1-z-q)M2 qO(2-b)
ここで0≦z≦0.34、0<q≦1.0、0≦b≦1.0である。
zは、M1と置換しているLi量を意味する。本発明の複合酸化物が式(I−5)で表される場合、M1の一部がLiと置換していることが好ましい。すなわち、リチウムイオン電池の正極活物質として用いられるリチウム複合酸化物の組成式におけるLiの原子数(組成比)の理論値より過剰のLiが含まれていることが好ましい。この場合、過剰のLiの一部または全部に見合う分だけM1量を少なくすることにより、Liの少なくとも一部がM1と置換した構造をとる。
Liの置換量(z)が多くなると、電池の充放電容量は若干低下するものの、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向がある。しかしながら、zが0.34より大きくなっても常温よりも高温でのサイクル特性は大きくは向上し難い傾向がある。また、Li総量(1+z)が1.0未満になると不純物となる異相が生成され、電池の充放電性能が低下する傾向がある。
式(I−5)においてbは0≦b≦1.0を満たし、b=0であることが好ましい。
酸素欠損量が小さいと(すなわちbが小さいと)充放電試験における3.2V以下容量が小さくなる傾向がある。酸素欠損量が小さいと結晶構造が安定し、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向がある。
集電体は特に限定されず、例えば従来公知のネット状、シート状、フィルム状のものを用いることができる。
本発明の電池について説明する。
本発明の電池は、正極として本発明の正極の製造方法によって得られた焼結体を用いた正極を用いること以外は、通常の全固体型リチウムイオン電池と同様の構成であってよく、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などであってよい。すなわち、正極、負極および固体電解質を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば電池缶内に封入されている。正極および負極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用し、充電時には、リチウムイオンが負極中に吸蔵され、放電時には負極から離脱する。
負極は、負極活物質がリチウム、リチウム合金、または酸化物の場合は、そのまま用いるか、あるいは集電体に圧着することによって製造することができる。
また高分子固体電解質は、溶媒成分を含むゲル状であってもよい。
これらの中で、酸化還元安定性の観点などから、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
ポリマー電解質中の溶媒の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。このような割合であると、導電率が高く、機械的強度が強く、フィルム化しやすい。
リチウム源としてLiOH・H2O(関東化学社製、純度:57.8質量%)、ニッケル源としてNiO(関東化学社製、ニッケル純度:77.1質量%、平均粒子径:9.4μm)、マンガン源として電解二酸化マンガン(γ−MnO2、関東化学社製、マンガン純度:60.78質量%、平均粒子径:28.0μm)を用意した。そして、それぞれの原料を、Li:Ni:Mnのモル比が1.00:0.50:1.50となるように秤量した。
このような噴霧乾燥を行うことで、粒子状の前駆体[1]を得た。
ここで仮焼体[1]の平均粒子径は、仮焼体[1]を純水に分散させた後、前述のスラリー中の固形分の平均粒子径(メジアン径)を測定する場合と同様の方法によって測定した。
このような噴霧乾燥を行って得られたものを、以下では混合体[1]とする。
ここで混合体[1]の平均粒子径は、混合体[1]を純水に分散させた後、前述の仮焼体の平均粒子径(メジアン径)を測定する場合と同様の方法によって測定した。
そして、成型体[1]を、1000℃で6時間、空気中にて焼成して焼結体[1]を得た。
初めに、焼結体1gをるつぼに取り、300℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次に、冷却した試料のうちの0.7gをセルに採取し、細孔分布測定装置PM−33GT1LP(QUANTA CROME製)を使用して水銀を細孔内へ圧入し、その時加えた圧力と押し込まれた(侵入した)水銀容積の関係から細孔容積を測定した。また、加えられた圧力と、その圧力で水銀が侵入可能な細孔径の関係から細孔分布を求めた。測定は、最高圧力32273psi(細孔直径5.4nm)まで行い、解析に用いた水銀の表面張力はσ=473dynes/cm、接触角はθ=130°とした。そして、細孔径5.4nm〜2000nmまでの細孔容積(g/cm3)を、焼結体の重さ(g)、厚み(cm)、直径(cm)より算出した焼結体の体積密度(g/cm3)で割った値を空隙率とした。
このような方法で焼結体[1]の細孔容積を測定したところ、空隙率は4.3%であった。
得られたXRDチャートを図1に示す。
この結果、XRDチャートの2θ=18.0〜19.0°に現れるスピネル型リチウム複合酸化物のピーク強度[α]に対する、2θ=36.6〜37.2°に現れる異相成分のピーク強度[β]の比(ピーク強度[β]/ピーク強度[α])は0.031であった。
実施例1と同様の方法で仮焼体を得た。ここで得られた仮焼体を仮焼体[2]とする。
そして、得られた仮焼体[2]の平均粒子径を測定したところ、9.0μmであった。また、仮焼体[2]について、粉末X線回折測定を実施したところスピネル型リチウム複合酸化物であることを確認した。
得られた焼結体[2]について、実施例1と同様に細孔容積測定、粉末X線回折測定を行った。
その結果、焼結体[2]の空隙率は2.8%であった。
また、XRDチャートの2θ=18.0〜19.0°に現れるスピネル型リチウム複合酸化物のピーク強度[α]に対する、2θ=36.6〜37.2°に現れる異相成分のピーク強度[β]の比(ピーク強度[β]/ピーク強度[α])は、0.105であった。
これより焼結体[2]中の空隙は少なく、異相生成もほとんどないといえる。
実施例1で行ったホウ酸水溶液を用いた処理を行わないで、焼結体[11]を製造した。
具体的には、実施例1における仮焼体[1]1gを、15kN/cm2の圧力で、φ25mm/t1.2mmの円形状薄板に成型して成型体[11]を得た。
そして、成型体[11]を、1000℃で6時間、空気中にて焼成して焼結体[11]を得た。
実施例1では前駆体[1]を焼成して仮焼体[1]を得たが、比較例1ではこの操作を行わなかった。すなわち、前駆体[1]をホウ酸水溶液を添加して混合して得た混合液を用いて噴霧乾燥を行い、混合体[12]を得た。ここで混合液を構成するホウ酸水溶液および前駆体[1]に含まれるLi、Ni、MnおよびBのモル比は、実施例1と同様に、Li+Ni+Mn+B:B=3.00:0.03となるようにした。また、噴霧乾燥の条件も実施例1と同様とした。
そして、実施例1において混合体[1]から焼結体[1]を得る方法と同様の方法によって、混合体[12]から焼結体[12]を得た。
実施例1と同様に、リチウム源としてLiOH・H2O(関東化学社製、純度:57.8質量%)、ニッケル源としてNiO(関東化学社製、ニッケル純度:77.1質量%、平均粒子径:9.4μm)、マンガン源として電解二酸化マンガン(γ−MnO2、関東化学社製、マンガン純度:60.78質量%、平均粒子径:28.0μm)を用意した。そして、さらにH3BO3(関東化学社製、純度:99.9質量%)を用意し、それぞれの原料を、Li:Ni:Mn:Bのモル比が1.00:0.50:1.50であって、Li+Ni+Mn+B:B=3.00:0.01となるように秤量した。
このような噴霧乾燥を行うことで、粒子状の前駆体[13]を得た。
ここで得られたリチウム複合酸化物を、以下では混合体[13]とする。
そして、成型体[13]を、1000℃で6時間、空気中にて焼成して焼結体[13]を得た。
Claims (7)
- リチウム源およびM1を含む原料を溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥して前駆体を得る前駆体調整工程と、
前記前駆体を900℃以下で焼成して仮焼体を得る仮焼工程と、
M2を含む焼結助剤と前記仮焼体とを混合し、混合体を得る混合工程と、
を備え、
さらに成型加工および焼成することで、下記式(I)で表されるリチウム複合酸化物を主成分とし、全固体リチウムイオン電池用正極の少なくとも一部として用いることができる焼結体を得ることができる、混合体の製造方法。
式(I):Li(x+y)M1 (2-y-p)M2 pO(4-a)
ここでM1はMn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Cl、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、1.0≦x≦2.0、0≦y≦0.2、0<p≦1.0、0≦a≦1.0である。 - 請求項1に記載の混合体の製造方法に、さらに、
成型加工を行い、前記混合体を含む成型体を得る成型工程と、
前記成型体を焼成して式(I)で表されるリチウム複合酸化物を主成分とする焼結体を得る焼成工程と、
を備える、全固体リチウムイオン電池用正極の製造方法。 - 前記焼成工程において、空隙率が4.5%以下である焼結体が得られる、請求項2に記載の全固体リチウムイオン電池用正極の製造方法。
- 前記焼成工程において、粉末X線回折測定を行って得られるXRDチャートの2θ=18.0〜19.0°に現れるスピネル型リチウム複合酸化物のピーク強度[α]に対する、2θ=36.6〜37.2°に現れる異相成分のピーク強度[β]の比(ピーク強度[β]/ピーク強度[α])が0.3以下である焼結体が得られる、請求項2または3に記載の全固体リチウムイオン電池用正極の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法によって得られる混合体。
- 請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法によって得られる全固体リチウムイオン電池用正極。
- 請求項6に記載の正極と、負極と、固体電解質とを有する、全固体リチウムイオン電池。
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