JP2013505300A - ペプチド模倣大環状分子 - Google Patents

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Abstract

αへリックスのようなへリックスを含むペプチド模倣大環状分子、および癌などの疾患の処置のためにこのような大環状分子を用いる方法を開示する。他の局面では、このペプチド模倣大環状分子は、α,α−二置換アミノ酸を含むか、または少なくとも2つのアミノ酸のa位置の架橋を含んでもよく、またはこのような2つのアミノ酸の少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸であってもよい。Tcf4−/3−カテニン複合体などのWntシグナル伝達経路の成分の標的化をさらに包含する。

Description

相互参照
この出願は、2009年9月22日に出願された米国仮出願第61/244,819号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
発明の背景
β−カテニンは、カドヘリンタンパク質複合体のサブユニットである。β−カテニンは、細胞接着にとって、およびWnt経路の細胞内メディエーターとして決定的に必要とされる。Wntシグナル伝達経路は、胚発生および腫瘍形成において重要な役割を果たす。核および細胞質におけるβカテニンのさらに小さいプールは、Wntシグナルによって調節される。Wntシグナル伝達は、Tcf/LEFファミリーのDNA−結合高移動度群(high monility group)(HMG)−ボックスタンパク質とβ−カテニンとの間の複合体形成を通じて遺伝子転写を活性化する。未刺激細胞では、細胞質のβカテニンは、ユビキチンリガーゼ−プロテオソーム系によって構成的に分解される。Wntシグナル伝達は、このプロセスを阻害し、これによって、β−カテニンの蓄積およびそれに続く核へのトランスロケーションを可能にし、ここでβ−カテニンが転写因子のTCF/LEF−1ファミリーのメンバーとの転写活性化複合体を形成する。Tcf/LEF−1タンパク質それ自体は、固有の転写活性を有さず、かつプロモーターに対してコリプレッサーを補充することによってWnt標的遺伝子の転写を抑制する。標的遺伝子の転写活性化は、β−カテニンが、Tcf/LEF−1因子に結合して、p300/CBPおよびTATA結合タンパク質などの転写因子をプロモーターに補充する場合に、生じる。(非特許文献1)。遺伝学的研究および生化学的研究によって、Wntシグナル伝達経路は、脊椎動物および無脊椎動物の両方で胚発生における多くの過程を制御することが示されている。Wnt細胞内経路の不適切な活性化は、種々のヒトの癌、特に結腸癌に関連している(非特許文献2)。結腸直腸癌、肝細胞癌(HCC)および他の癌における重要な分子病変は、T細胞因子(TCF)依存性の遺伝子、例えば、c−myc、サイクリンD1、VEGFなどのβ−カテニン依存性のトランス活性化によって生じる。腫瘍形成については、β−カテニンとTCFとの間の複合体の形成は、Wnt標的遺伝子の活性化における重要な工程である(非特許文献3)。細胞のβ−カテニンレベルの重要な調節因子である、大腸腺腫性ポリポーシス(APC)遺伝子の変異は、ほとんどの結腸直腸癌で見出される。Tcf4−β−カテニンタンパク質複合体の形成および活性などの、Wnt経路におけるAPCの下流のエレメントを標的化することは、一般的なヒトの癌を処置する潜在的に強力な手段であって、Tcf4−β−カテニン複合体などのWntシグナル伝達経路の成分を標的化する治療的アプローチが強く必要とされる。
Hecht,A.ら、J.Biol.Chem.(1999)274,18017〜18025頁 K.W.KinzlerおよびB.Vogelstein,Cell(1996)87,159〜170頁 M.BienzおよびH.Clevers Cell(2000)103,311〜320頁
本発明の概要
一局面において、本発明は、表1のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約60%、約80%、約90%または約95%同一であるアミノ酸配列を含むペプチド模倣大環状分子を提供する。あるいは、上記ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸配列は、表1のアミノ酸配列からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、ペプチド模倣大環状分子は、α−へリックスなどのへリックスを含む。他の実施形態では、ペプチド模倣大環状分子は、α,α−二置換アミノ酸を含む。本発明のペプチド模倣大環状分子は、少なくとも2つのアミノ酸のα位同士を接続する架橋剤を含むものであり得る。前記2つのアミノ酸の少なくとも1つはα,α−二置換アミノ酸であり得る。
いくつかの実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、式:
Figure 2013505300
を有し、
式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
Figure 2013505300
、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールであるか、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールであるか、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
他の実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、ペプチド模倣大環状分子内で第1のアミノ酸の骨格アミノ基を第2のアミノ酸に接続する架橋剤を含むものであり得る。例えば、本発明は、式(IV)または(IVa):
Figure 2013505300
(式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
Figure 2013505300
、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルであるか、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
vおよびwは独立して、1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して、0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である)
のペプチド模倣大環状分子を提供する。
さらに、本発明は、被験体に本発明のペプチド模倣大環状分子を投与することを含む、上記被験体の癌を処置する方法を提供する。また、被験体に本発明のペプチド模倣大環状分子を投与することを含む、上記被験体においてβ−カテニンの活性を調節する方法、または被験体にこのようなペプチド模倣大環状分子を投与することを含む、上記被験体においてβ−カテニンとTCF/LEFタンパク質との間の相互作用をアンタゴナイズする方法を提供する。
文献の引用
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的にかつ個々に参照により組み込まれて示されるのと同程度まで、参照により本明細書に援用される。
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲で詳細に説明される。本発明の特徴および利点は、本発明の原理を利用し、図面を伴った例示的な実施形態を説明する、以下の詳細な説明を参照することにより、さらに十分に理解される。
図1は、β−カテニンに対する本発明のTCFペプチド模倣大環状分子前駆体の可能性のある結合方式を図示する。 図2は、β−カテニンに対する本発明のTCFペプチド模倣大環状分子前駆体の可能性のある結合方式を図示する。 図3は、β−カテニンに対する本発明のTCFペプチド模倣大環状分子前駆体の可能性のある結合方式を図示する。 図4a〜図4cは、本発明の例示的なペプチド模倣大環状分子を示す。 図4a〜図4cは、本発明の例示的なペプチド模倣大環状分子を示す。 図4a〜図4cは、本発明の例示的なペプチド模倣大環状分子を示す。
本明細書において用いる場合、「大環状分子(macrocycle)」という用語は、少なくとも9個の共有結合された原子によって形成されるリングまたはサイクルを含む化学構造を有する分子を指す。
本明細書において用いる場合、「ペプチド模倣大環状分子(peptidomimetic macrocycle)」または「架橋ポリペプチド」という用語は、同じ分子内の第一の天然に存在するアミノ酸残基、または天然に存在しないアミノ酸残基(またはアナログ)および第二の天然に存在するアミノ酸残基、または天然に存在しないアミノ酸残基(またはアナログ)の間で大環状分子を形成する、複数のペプチド結合および少なくとも1つの大環状分子形成リンカーによって結合された複数のアミノ酸残基を含む化合物を指す。ペプチド模倣大環状分子は、大環状分子形成リンカーが、第一のアミノ酸残基(またはアナログ)のα炭素を第二のアミノ酸残基(またはアナログ)のα炭素に連結する実施形態を含む。ペプチド模倣大環状分子は必要に応じて、1つ以上のアミノ酸残基および/またはアミノ酸アナログ残基の間の1つ以上の非ペプチド結合を含み、そして必要に応じて、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸残基またはアミノ酸アナログ残基を、大環状分子を形成する任意のものに加えて、含む。「対応する非架橋ポリペプチド」は、ペプチド模倣大環状分子との関連においていう場合、大環状分子と同じ長さであり、上記大環状分子に対応する野生型配列の等価な天然アミノ酸を含むポリペプチドに関すると理解されたい。
別段の記載がない限り、本明細書に言及される化合物および構造はまた、1つ以上の同位体が濃縮された原子の存在においてのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、水素がジュウテリウムもしくはトリチウムで置換されているか、または炭素原子が13Cもしくは14C濃縮炭素で置換されているか、または炭素原子がケイ素で置換されている、現状の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。本発明の化合物はまた、このような化合物を構成する原子のうちの1つ以上で、不自然な割合の原子の同位体を含んでもよい。例えば、この化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位体で放射性標識されてもよい。本発明の化合物の全ての同位体変動は、放射性であろうとなかろうと、本発明の範囲内に包含される。
本明細書において用いる場合、「安定性」という用語は、円二色性、NMR、または別の生物物理学的手段によって測定される、本発明のペプチド模倣大環状分子によって溶液中で規定される二次構造の維持、またはインビトロもしくはインビボにおけるタンパク質分解性の分解に対する抵抗性を指す。本発明において企図される二次構造の非限定的な例は、α−へリックス、β−ターン、およびβ−プリーツシートである。
本明細書において用いる場合、「へリックス安定性(helical stability)」という用語は、円二色性またはNMRによって測定される、本発明のペプチド模倣大環状分子によるα−へリックス構造の維持を指す。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、対応する架橋されていない大環状分子と比較して、円二色性によって決定されるαヘリシティにおいて、少なくとも1.25、1.5、1.75、または2倍の増大を示す。
「α−アミノ酸」または単に「アミノ酸」という用語は、α−炭素と呼ばれる炭素に結合したアミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する分子を指す。適切なアミノ酸としては、限定するものではないが、天然に存在するアミノ酸のD−異性体およびL−異性体の両方、ならびに有機合成または他の代謝経路によって調製される天然に存在しないアミノ酸が挙げられる。文脈が具体的に別のことを示さない限り、本明細書において使用されるアミノ酸という用語は、アミノ酸アナログを含むものとする。
「天然に存在するアミノ酸」という用語は、自然界において合成されるペプチドにおいて一般に見つけられ、一文字の略語、A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、およびVによって公知の20個のアミノ酸のうちのいずれか1つを指す。
「アミノ酸アナログ」または「非天然アミノ酸」という用語は、アミノ酸に構造的に類似しており、かつペプチド模倣大環状分子の形成においてアミノ酸の代わりに用いることができる分子を指す。アミノ酸アナログとしては、限定するものではないが、アミノ基とカルボキシル基の間に1つ以上の追加のメチレン基を包含すること(例えばα−アミノβ−カルボキシ酸)を除いて、または同様に反応性の基によってアミノ基もしくはカルボキシ基が置換されること(例えば第二級もしくは第三級アミンでの第一級アミンの置換またはエステルでのカルボキシ基の置換)を除いて、本明細書において規定されるアミノ酸と構造的に同一である化合物が挙げられる。
「非必須」アミノ酸残基は、その必須の生物学的または生化学的活性(例えばレセプター結合または活性化)を消失することも、実質的に改変することもなく、ポリペプチドの野生型配列から改変することができる残基である。「必須」アミノ酸残基とは、ポリペプチドの野生型配列から改変された場合に、結果として、ポリペプチドの必須の生物学的または生化学的活性を消失し、または実質的に消失することになる残基である。
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基と交換される置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えばK、R、H)、酸性の側鎖(例えば、D、E)、非荷電極性側鎖(例えば、G、N、Q、S、T、Y、C)、非極性側鎖(例えば、A、V、L、I、P、F、M、W)、β分枝側鎖(例えば、T、V、I)、および芳香族側鎖(例えば、Y、F、W、H)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、ポリペプチドにおける、予測される非必須アミノ酸残基は、例えば、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基と交換される。許容できる置換の他の例は、等比体積の(isosteric)考慮(例えば、メチオニンに対するノルロイシン)または他の特性(例えば、フェニルアラニンに対する2−チエニルアラニン)に基づく置換である。
大環状分子または大環状分子形成リンカーと組み合わせて、本明細書において用いられる「メンバー」という用語は、大環状分子を形成し、または大環状分子を形成することができる原子を指し、そして置換基または側鎖の原子を除外する。類推によって、シクロデカン、1,2−ジフルオロ−デカン、および1,3−ジメチルシクロデカンは全て、水素またはフルオロ置換基またはメチル側鎖が大環状分子の形成に参加しないので、10員の大環状分子と考えられる。
記号
Figure 2013505300
は、分子構造の一部として用いられる場合、単結合またはトランスもしくはシス二重結合を指す。
「アミノ酸側鎖」という用語は、アミノ酸におけるα−炭素に結合した部分を指す。例えば、アラニンについてのアミノ酸側鎖は、メチルであり、フェニルアラニンについてのアミノ酸側鎖は、フェニルメチルであり、システインについてのアミノ酸側鎖は、チオメチルであり、アスパルテートについてのアミノ酸側鎖は、カルボキシメチルであり、チロシンについてのアミノ酸側鎖は、4−ヒドロキシフェニルメチルであるなどである。他の天然に存在しないアミノ酸側鎖、例えば、自然界において生じるもの(例えば、アミノ酸代謝物)または合成的に作製されるもの(例えば、α,α二置換アミノ酸)もまた含まれる。
用語「α,α二置換アミノ」酸という用語は、2つの天然または非天然アミノ酸側鎖に結合した炭素(α−炭素)に結合したアミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する分子または部分を指す。
「ポリペプチド」という用語は、共有結合(例えば、アミド結合)によって結合した、2個以上の天然に存在するアミノ酸、または天然に存在しないアミノ酸を包含する。本明細書において記載されるポリペプチドとしては、完全長タンパク質(例えば、完全に処理された(processed)タンパク質)およびより短いアミノ酸配列(例えば、天然に存在するタンパク質の断片または合成ポリペプチド断片)が挙げられる。
本明細書において使用される場合、「大環状分子化試薬(macrocyclization reagent)」または「大環状分子形成試薬」という用語は、2つの反応基の間の反応を媒介することによって、本発明のペプチド模倣大環状分子を調製するために用いられ得る任意の試薬を指す。反応性の基は、例えば、アジドおよびアルキンであってもよく、この場合には、大環状分子化試薬としては、限定するものではないが、CuBr、CuI、またはCuOTfなどの反応性Cu(I)種、ならびにアスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムなどの還元剤の添加によってインサイチュにおいて活性Cu(I)試薬に変換することができる、Cu(COCH、CuSO、およびCuClなどのCu(II)塩を提供する試薬などのCu試薬が挙げられる。大環状分子化試薬としては、例えば、CpRuCl(PPh、[CpRuCl]、または反応性Ru(II)種を提供し得る他のRu試薬などの、当該分野において公知のRu試薬をさらに挙げることができる。他の場合において、反応基は、末端のオレフィンである。そのような実施形態において、大環状分子化試薬または大環状分子形成試薬は、第VIII族遷移金属カルベン触媒などの、安定した後遷移金属カルベン錯体触媒を含むが、これらに限定されないメタセシス(metathesis)触媒である。例えば、そのような触媒は、+2酸化状態を有し、16の電子数を有し、かつ五配位のRuおよびOs金属中心である。追加の触媒は、Grubbsら、「Ring Closing Metathesis and Related Processes in Organic Synthesis」Acc.Chem.Res.1995、28、446〜452頁および米国特許第5,811,515号において開示される。さらに他の場合において、反応基は、チオール基である。そのような実施形態において、大環状分子化試薬は、例えば、ハロゲン基などの2つのチオール反応性基で官能化されたリンカーである。
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素またはその基を指す。
「アルキル」という用語は、示された数の炭素原子を含有する、直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。例えば、C〜C10は、基が、その中に1〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。いかなる数の指示もない場合、「アルキル」とは、その中に1〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
「アルキレン」という用語は、二価アルキル(つまり−R−)を指す。
「アルケニル」という用語は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。アルケニル部分は、示された数の炭素原子を含有する。例えば、C〜C10は、その基が、その中に2〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。「低級アルケニル」という用語は、C〜Cアルケニル鎖を指す。いかなる数の指示もない場合、「アルケニル」とは、その中に2〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
「アルキニル」という用語は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。アルキニル部分は、示された数の炭素原子を含有する。例えば、C〜C10は、その基が、その中に2〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。「低級アルキニル」という用語は、C〜Cアルキニル鎖を指す。いかなる数の指示もない場合、「アルキニル」とは、その中に2〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
「アリール」という用語は、6個の炭素の単環式または10個の炭素の二環式芳香族環系を指し、ここで各々の環の0、1、2、3、または4個の原子は、置換基によって置換される。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。「アリールアルキル」という用語または「アラルキル」という用語は、アリールで置換されたアルキルを指す。「アリールアルコキシ(arylalkoxy)」という用語は、アリールで置換されたアルコキシを指す。
「アリールアルキル」とは、上記に規定されるアリール基であって、そのアリール基の水素原子のうちの1つが、上記に規定されるC〜Cアルキル基で置き換えられているものを指す。アリールアルキル基の代表的な例としては、限定するものではないが、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、3−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2−プロピルフェニル、3−プロピルフェニル、4−プロピルフェニル、2−ブチルフェニル、3−ブチルフェニル、4−ブチルフェニル、2−ペンチルフェニル、3−ペンチルフェニル、4−ペンチルフェニル、2−イソプロピルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、2−イソブチルフェニル、3−イソブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、2−sec−ブチルフェニル、3−sec−ブチルフェニル、4−sec−ブチルフェニル、2−t−ブチルフェニル、3−t−ブチルフェニル、および4−t−ブチルフェニルが挙げられる。
「アリールアミド」とは、上記に規定されるアリール基であって、そのアリール基の水素原子のうちの1つが、1つ以上の−C(O)NH基で置き換えられているものを指す。アリールアミド基の代表的な例としては、2−C(O)NH2−フェニル、3−C(O)NH−フェニル、4−C(O)NH−フェニル、2−C(O)NH−ピリジル、3−C(O)NH−ピリジル、および4−C(O)NH−ピリジルが挙げられる。
「アルキルヘテロ環」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、ヘテロ環で置き換えられているものを指す。アルキルヘテロ環基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHCH−モルホリン、−CHCH−ピペリジン、−CHCHCH−モルホリン、および−CHCHCH−イミダゾールが挙げられる。
「アルキルアミド」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、−C(O)NH基で置き換えられているものを指す。アルキルアミド基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CH−C(O)NH、−CHCH−C(O)NH、−CHCHCHC(O)NH、−CHCHCHCHC(O)NH、−CHCHCHCHCHC(O)NH、−CHCH(C(O)NH)CH、−CHCH(C(O)NH)CHCH、−CH(C(O)NH)CHCH、−C(CHCHC(O)NH、−CH−CH−NH−C(O)−CH、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH3、および−CH−CH−NH−C(O)−CH=CHが挙げられる。
「アルカノール」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、ヒドロキシル基で置き換えられているものを指す。アルカノール基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、−CHCHCHCHOH、−CHCHCHCHCHOH、−CHCH(OH)CH、−CHCH(OH)CHCH、−CH(OH)CH、および−C(CHCHOHが挙げられる。
「アルキルカルボキシ」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、−−COOH基で置き換えられているものを指す。アルキルカルボキシ基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−CHCHCHCOOH、−CHCHCHCHCOOH、−CHCH(COOH)CH、−CHCHCHCHCHCOOH、−CHCH(COOH)CHCH、−CH(COOH)CHCH、および−C(CHCHCOOHが挙げられる。
「シクロアルキル」という用語は、本明細書において用いる場合、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、およびより好ましくは3〜6個の炭素を有する飽和環式炭化水素基および部分的に不飽和の環式炭化水素基であって、ここでそのシクロアルキル基が、必要に応じてさらに置換されている環式炭化水素基を包含する。いくつかのシクロアルキル基としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
「ヘテロアリール」という用語は、単環式である場合、1〜3個のヘテロ原子、二環式である場合、1〜6個のヘテロ原子、または三環式である場合、1〜9個のヘテロ原子を有する芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式環系を指し、このようなヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子と、単環式、二環式、または三環式である場合、それぞれ、1〜3、1〜6、または1〜9個のO、N、またはSのヘテロ原子)、ここで各々の環の0、1、2、3、または4個の原子が、置換基によって置換されている。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、またはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニル、またはチエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリルなどが挙げられる。
「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを指す。
「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを指す。
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式である場合、1〜3個のヘテロ原子、二環式である場合、1〜6個のヘテロ原子、または三環式である場合、1〜9個のヘテロ原子を有する非芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式環系を指し、このようなヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子と、単環式、二環式、または三環式である場合、それぞれ、1〜3、1〜6、または1〜9個のO、N、またはSのヘテロ原子)、各々の環の0、1、2、または3個の原子は、置換基によって置換される。ヘテロシクリル基の例としては、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル(dioxanyl)、モルホリニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
「置換基」という用語は、任意の分子、化合物、または部分の上の水素原子などの第2の原子または基を交換する基を指す。適切な置換基としては、限定するものではないが、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、およびシアノ基が挙げられる。
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心を含有し、従ってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー、ならびにジアステレオマー混合物として存在する。これらの化合物の全てのそのような異性体形態は、別段明確に規定されない限り、本発明に含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物はまた、複数の互変異性形態で表され、そのような事例において、本発明は、本明細書において記載される化合物の全ての互変異性形態を含む(例えば、環系のアルキル化が、複数の部位でアルキル化をもたらす場合、本発明は、全てのそのような反応産物を含む)。そのような化合物の全てのそのような異性体形態は、別段明確に規定されない限り、本発明に含まれる。本明細書において記載される化合物の全ての結晶形態は、明確に規定されない限り、本発明に含まれる。
本明細書において用いる場合、「増加」および「減少」という用語は、統計的に有意に(すなわち、p<0.1)、それぞれ、少なくとも5%の増加または減少を引き起こすことを意味する。
本明細書において用いる場合、変数についての数値的な範囲の記述は、本発明が、その範囲内の値のうちのいずれかに等しい変数で実行されてもよいことを伝えるように意図される。従って、本質的に不連続の変数については、変数は、その範囲の終点を含む数値的な範囲内の任意の整数値と等しい。同様に、本質的に連続の変数については、変数は、その範囲の終点を含む数値的な範囲内の任意の実際の値と等しい。例として、限定するものではないが、0および2の間の値を有するとして記載される変数は、その変数が本質的に不連続の場合、値0、1、または2をとり、その変数が本質的に連続の場合、値0.0、0.1、0.01、0.001、または任意の他の実際の値≧0かつ≦2をとる。
本明細書において用いる場合、具体的に別のことを示されない限り、「または(あるいは、もしくは)」という単語は、「いずれか/または」の排他的な意味ではなく、「および/または」の包括的な意味で用いられる。
「平均して」という用語は、各データポイントについての、少なくとも3回の独立した反復の実行に由来する平均値を表す。
「生物学的活性」という用語は、本発明の大環状分子の構造的および機能的特性を包含する。生物学的活性は、例えば、構造的安定性、α−ヘリシティ、標的に対する親和性、タンパク質分解性の分解に対する抵抗性、細胞透過性、細胞内安定性、インビボ安定性、またはその任意の組合せである。
本発明の1つ以上の特定の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の説明において記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、本明細書本文および図面からならびに本特許請求の範囲から明白となる。
いくつかの実施形態では、ペプチド配列は、β−カテニン結合ドメイン(CBD)を含むタンパク質に由来する。
β−カテニンの一次構造は、そのリン酸化反応依存性の分解に必要な約130個の残基のN末端領域と、転写コアクチベーターを補充するC末端の約100残基のセグメントと、12個のアルマジロリピートに亘る残基134〜668の中央ドメインとを含む(Peifer M.ら、Cell 76,789〜791,1994)。このコアアルマジロリピート領域は、カドヘリン、APCおよびTcfファミリー転写因子と相互作用する。この領域の結晶構造によって、各々のアルマジロリピートは、3つのへリックスからなること;12個のリピートはかさなって、へリックスのスーパーへリックス構造を形成することが明らかになる。結果として生じたロッド形状の構造は、相互作用するタンパク質中で酸性の配列についての結合部位であると想定された、長い、正に荷電された表面を有する。これらの結合パートナーは、β−カテニンの表面上の別個の領域に結合する類似でかつ多様な配列を用いる。
Tcf/LEFファミリーには4つのメンバーが存在する。Tcf/LEF−1ファミリーのメンバーは、12個のアルマジロリピートを含むタンパク質の大型の中央コアでβ−カテニンに結合する。各々のアルマジロリピートは、3個のα−へリックスからなり、12個のリピートと一緒になって、長い、正に荷電された溝を特徴とするスーパーへリックスを形成する(A.H.Huber、W.J.NelsonおよびW.I.Weis,Cell 90(1997),871〜882頁)。TCF1、TCF3、およびTCF4を含む、Tcf/LEF−1ファミリーのメンバーのCBDは、このタンパク質の最もN末端の約60個のアミノ酸に相当する(J.Behrens,ら、Nature 382(1996),638〜642頁)。例えば、Tcf4/β−カテニン複合体の構造によって、タンパク質との間の2つの別個の相互作用部位が明らかになる:β−カテニンアルマジロリピート4〜9に結合する伸長領域(Tcf4の残基13〜25)、およびアルマジロリピート3〜5に結合するC末端へリックス(残基40〜50)(Poy F,ら、 Nat Structural Biol.2001年,第8巻、12号)。Tcf4ペプチドの伸長部分(残基13〜25)は、連続したアルマジロリピートの間のねじれによって生じる正に荷電された溝中で結合する。Asp16およびGlu17は、認識溝(recognition groove)のいずれかの側にある結合ペプチドに隣接する、β−カテニンのLys435およびLys508それぞれと塩橋の水素結合を形成する。伸長領域のC末端はまた、Tcf4中のGlu24とβ−カテニン中のLys312との間の塩橋である、静電気的相互作用によって係留される。介在性接触の多くは、事実上疎水性であり;Tcf4残基Ile19およびPhe21の側鎖は、β−カテニン残基Cys466、Pro463およびArg386の脂肪族部分によって裏打ちされる裂溝(cleft)中に一緒にパッキングされる。熱量測定に関する研究によって、Tcf4中のAsp16は、高親和性結合のための重要な残基であることが確認されている。β−カテニン中のLys435またはLys312の変異は、アフリカツメガエルのTcf3(XTcf3)の共沈を消失させる(Graham,T.A.,Weaver,C.,Mao,F.,Kimelman,D.および Xu,W.Cell 103,885〜896 2000)。Tcf4中の残基40〜50は、β−カテニン中のアルマジロリピート3、4および5によって形成される浅い溝中に受容される(cradled)両親媒性のへリックスを形成する。Tcf4へリックスの一方の面の疎水性残基は、この溝の底にインターカレートする。Tcf4残基であるAsp40、Lys45およびSer47は、この溝の縁にそって極性および静電気的な相互作用を形成し、へリックスの認識に寄与する。Asp40の側鎖は、β−カテニン中のArg376とLys335との間で伸長し、Lys45は、His260およびAsn261と水素結合し、Ser47は、Lys292と水素結合する。これらの相互作用はまた、XTcf3−β−カテニン複合体にも存在する。http://www.nature.com/nsmb/journal/v8/n12/full/nsb720.html−B19#B19(Graham,T.A.,Weaver,C.,Mao,F.,Kimelman,D.およびXu,W.Cell 103,885−896(2000))。
全てのTcf/LEF−1ファミリーのメンバーはまた、タンパク質のC末端側の半分に位置する高度に保存されたHMG DNA結合ドメインを有する。詳細には、アフリカツメガエル由来のXTcf3−CBDは、N末端からC末端へ、βヘアピンモジュール、βストランドを含む伸長領域、およびα−へリックスからなる。XTcf3−CBDは、スーパーへリックス構造の主軸にそって逆平行でβ−カテニンのアルマジロリピート領域の周りを包む(Graham TAら、 Cell,第103巻 2000年6月発行)。XTcf3−CBDのへリックス領域は、残基Asp−40〜Glu−51からなる。XTcf3−CBDのへリックスは、β−カテニン中のアルマジロリピート3および4の第三のへリックスに対してほぼ逆平行である。XTcf3−CBDへリックスは、Tcf/LEF−1ファミリーのコンセンサス配列N’−DLAKSSLV−C’からなる。XTcf3−CBDのAsp−40およびLys−45の側鎖は、β−カテニンのLys−335およびAsn−261の側鎖それぞれと同調する(coordinate)。これらの2つの相互作用は、係留(tether)として機能して、へリックスの相対的な配置を安定化し得る。xTcf3のα−へリックス結合領域は、β−カテニンのアームリピート3および4のH3へリックスに対してパッキングする。XTcf3−CBDへリックス中の4つの疎水性残基、Leu−41、Val−44、Leu−48およびVal−49は、β−カテニンの溝に相補的な表面を形成する(Graham TAら、Cell,第103巻、2000年6月発行)。β−カテニンとTCFとの間の相互作用をブロックする化合物は、Wnt経路の不適切な活性化から生じる癌の処置のために有用な薬物であり得るので、本発明の方法によって生成されるCBDペプチドの任意の新規な構造は、Wnt経路が一定の役割を果たす、多様な種類の癌を予防および/または処置するのに有用である。このような癌としては、結腸直腸腫瘍、肝細胞癌、黒色腫およびWnt経路の構成要素に変異がある他の腫瘍が挙げられる。
β−カテニン/TCF相互作用を標的化することによって、限定するものではないが、結腸直腸腫瘍、肝細胞癌、黒色腫およびWnt経路の構成要素に変異がある他の腫瘍を含めて多くの種類の癌の選択的標的化が、β−カテニン/TCF複合体を阻害することにより可能になる。現在、β−カテニン/TCF相互作用の低分子インヒビターは存在しない。他のTcfファミリーのメンバー、カドヘリンおよび可能性のあるAPC自体によって用いられる結合表面での実質的な重複によって、β−カテニン/TCF相互作用を破壊するインヒビターとしての薬物開発における問題点は、β−カテニン/カドヘリン相互作用またはβ−カテニン/APCまたはアキシン相互作用を破壊し得ることが示される。これらの複合体のいずれかを不安定化することによって、毒性を生じ得るか、またはAPCの場合には、正常な細胞においてTcf4の悪性活性化を誘発し得る。β−カテニンリガンドの間の結合において熱力学的に相違した局所領域によって、E−カドヘリンおよびxTcf3結合機構においてみられる類似性にかかわらず、β−カテニン−Tcf相互作用の特異的なインヒビターを設計することが可能になり得る。変異の研究によって、α−へリックス領域は、β−カテニンに対するカドヘリンの結合に関して重要性が低く、従ってβ−カテニン/TCF相互作用に対してより特異的であることが示唆される。従って、本発明はまた、β−カテニンに対する本発明のTCFペプチド模倣大環状分子を投与することを包含する、癌および過剰増殖性疾患を含むがこれらに限定されない疾患を処置する方法を提供する。
本発明で使用するための適切なβ−カテニン/TCFペプチドの非限定的かつ例示的なリストを以下に示す:
Figure 2013505300
Figure 2013505300
表1は、ペプチド模倣大環状分子の合成に適切なβ−カテニン/TCF配列を示す。「スペーサー」とは、PEGnなどの非ペプチドリンカー鎖を示す。
本発明のペプチド模倣大環状分子
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式(I):
Figure 2013505300
を有し、
式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
Figure 2013505300
、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールであるか、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールであるか、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも3である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各出現(occurrence)は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。同様に、uが1より大きい場合、各々の本発明の化合物は、同じまたは異なるペプチド模倣大環状分子を包含し得る。例えば、本発明の化合物は、異なるリンカーの長さまたは化学組成を含むペプチド模倣大環状分子を含み得る。
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−へリックスである二次構造を含み、Rは、−Hであり、へリックス内水素結合を可能にする。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
Figure 2013505300
である。
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−へリックスなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
一実施形態において、式(I)のペプチド模倣大環状分子は:
Figure 2013505300
である。
ここで、RおよびRは各々独立して、独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルである。
関連する実施形態において、式(I)のペプチド模倣大環状分子は:
Figure 2013505300
である。
他の実施形態では、式(I)のペプチド模倣大環状分子は、下に示される式のいずれかの化合物である:
Figure 2013505300
Figure 2013505300
式中「AA」は、任意の天然アミノ酸または非天然アミノ酸の側鎖を表し、かつ
Figure 2013505300
は、上記で定義した[D]、[E]であり、nは、0と、20、50、100、200、300、400または500との間の整数である。いくつかの実施形態では、nは0である。他の実施形態では、nは、50未満である。
大環状分子形成リンカーLの例示的な実施形態は、下記に示される。
Figure 2013505300
いくつかの実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式(II):
Figure 2013505300
を有しており、
式中:
A、C、DおよびEはそれぞれ独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然のアミノ酸、アミノ酸アナログ、
Figure 2013505300
、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式
Figure 2013505300
の大環状分子形成リンカーであり;
、L、およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールであるか、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
一例では、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方とも、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも3である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−へリックスである二次構造を含み、Rは、−Hであり、これによってへリックス内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
Figure 2013505300
である。
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−へリックスなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
大環状分子形成リンカーLの例示的な実施形態は、下記に示される。
Figure 2013505300
Figure 2013505300
他の実施形態において、本発明は、式(III)のペプチド模倣大環状分子:
Figure 2013505300
を提供し、
式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
Figure 2013505300
、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
、L、L、およびLは、独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であって、それぞれ、非置換であるかまたはRで置換され;
Kは、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも3である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各々の出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−へリックスである二次構造を含み、Rは、−Hであり、これによってへリックス内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
Figure 2013505300
である。
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカー[−L−S−L−S−L−]の長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−へリックスなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
大環状分子または大環状分子前駆体は、例えば液相法または固相法によって合成され、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方を含むことができる。例えばChemistry and Biochemistry of the Amino Acids、G.C.Barrett編、Chapman and Hall、1985の中のHunt、「The Non−Protein Amino Acids」を参照のこと。いくつかの実施形態では、チオール部分は、アミノ酸残基L−システイン、D−システイン、α−メチル−Lシステイン、α−メチル−D−システイン、L−ホモシステイン、D−ホモシステイン、α−メチル−L−ホモシステイン、またはα−メチル−D−ホモシステインの側鎖である。ビスアルキル化試薬は、一般式X−L−Yで表されるものであり、式中、Lは、リンカー部分であり、XおよびYは、Lとの結合を形成するために−SH部分によって置き換えられる脱離基である。いくつかの実施形態において、XおよびYは、I、Br、またはClなどのハロゲンである。
他の実施形態において、式I、II、またはIIIの化合物におけるDおよび/またはEは、細胞の取り込みを促進するためにさらに改変される。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣大環状分子の脂質付加(lipidating)またはペグ化(PEGylating)は、細胞の取り込みを促進し、バイオアベイラビリティを増大させ、血液循環を増加させ、薬物動態を改変し、免疫原性を低下させ、および/または必要とされる投与の頻度を減少させる。
他の実施形態において、式I、II、またはIIIの化合物における、[D]および[E]の少なくとも1つは、上記ペプチド模倣大環状分子が、少なくとも2つの大環状分子形成リンカーを含むような、追加の大環状分子形成リンカーを含む部分を表す。特定の実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、2つの大環状分子形成リンカーを含む。
本発明のペプチド模倣大環状分子では、本明細書に記載されている任意の大環状分子形成リンカーは、表1〜4に示される任意の配列との任意の組み合わせで、および本明細書において示される任意のR−置換基との任意の組合せでも、用いられてもよい。
いくつかの実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、少なくとも1つのα−へリックスモチーフを含む。例えば、式I、II、またはIIIの化合物におけるA、B、および/またはCは、1つ以上のα−へリックスを含む。一般的な問題として、α−へリックスは、1ターンあたり3〜4個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子のα−へリックスは、1〜5個のターン、および従って3〜20個のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態において、α−へリックスは、1個のターン、2個のターン、3個のターン、4個のターン、または5個のターンを含む。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、上記ペプチド模倣大環状分子内に含まれるα−へリックスモチーフを安定化させる。従って、いくつかの実施形態において、第1のCαから第2のCαまでの大環状分子形成リンカーLの長さは、α−へリックスの安定性を増加させるために選択される。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、α−へリックスの1ターン〜5ターンまでの間に架かる(span)。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、α−へリックスの約1ターン、2ターン、3ターン、4ターン、または5ターンに架かる。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーの長さは、α−へリックスの1ターンあたり約5Å〜9Åまたはα−へリックスの1ターンあたり約6Å〜8Åである。大環状分子形成リンカーが、α−へリックスの約1ターンに架かる場合、その長さは、約5個の炭素−炭素結合〜13個の炭素−炭素結合、約7個の炭素−炭素結合〜11個の炭素−炭素結合、または約9個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−へリックスの約2ターンに架かる場合、その長さは、約8個の炭素−炭素結合〜16個の炭素−炭素結合、約10個の炭素−炭素結合〜14個の炭素−炭素結合、または約12個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−へリックスの約3ターンに架かる場合、その長さは、約14個の炭素−炭素結合〜22個の炭素−炭素結合、約16個の炭素−炭素結合〜20個の炭素−炭素結合、または約18個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−へリックスの約4ターンに架かる場合、その長さは、約20個の炭素−炭素結合〜28個の炭素−炭素結合、約22個の炭素−炭素結合〜26個の炭素−炭素結合、または約24個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−へリックスの約5ターンに架かる場合、その長さは、約26個の炭素−炭素結合〜34個の炭素−炭素結合、約28個の炭素−炭素結合〜32個の炭素−炭素結合、または約30個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−へリックスの約1ターンに架かる場合、その連結は、約4個の原子〜12個の原子、約6個の原子〜10個の原子、または約8個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約2ターンに架かる場合、その連結は、約7個の原子〜15個の原子、約9個の原子〜13個の原子、または約11個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約3ターンに架かる場合、その連結は、約13個の原子〜21個の原子、約15個の原子〜19個の原子、または約17個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約4ターンに架かる場合、その連結は、約19個の原子〜27個の原子、約21個の原子〜25個の原子、または約23個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約5ターンに架かる場合、その連結は、約25個の原子〜33個の原子、約27個の原子〜31個の原子、または約29個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約1ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約17員〜25員、約19員〜23員、または約21員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約2ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約29員〜37員、約31員〜35員、または約33員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約3ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約44員〜52員、約46員〜50員、または約48員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約4ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約59員〜67員、約61員〜65員、または約63員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記α−へリックスの約5ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約74員〜82員、約76員〜80員、または約78員を含有する環を形成する。
他の実施形態において、本発明は、式(IV)または(IVa)のペプチド模倣大環状分子を提供し、
Figure 2013505300
式中、
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
Figure 2013505300
、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルであるか、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも1である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、少なくとも2である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各々の出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−へリックスである二次構造を含み、かつRは、−Hであり、これによってへリックス内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
Figure 2013505300
である。
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−へリックスなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
大環状分子形成リンカーL−L−の例示的な実施形態は、下記に示される。
Figure 2013505300
ペプチド模倣大環状分子の調製
本発明のペプチド模倣大環状分子は、当技術分野において公知の任意の種々の方法によって調製され得る。例えば、表1、2、3または4において「X」で示される任意の残基が、同じ分子中の第2の残基またはそのような残基の前駆体とクロスリンカーを形成し得る残基で置換されてもよい。
ペプチド模倣大環状分子の形成をもたらすための種々の方法が、当技術分野において公知である。例えば、式Iのペプチド模倣大環状分子の調製は、Schafmeisterら,J.Am.Chem.Soc.122:5891−5892(2000);Schafmeister & Verdine,J.Am.Chem.Soc.122:5891(2005);Walenskyら,Science 305:1466−1470(2004);および米国特許7,192,713において記載されている。引用文献において開示されているα,α−二置換アミノ酸およびアミノ酸前駆体を、ペプチド模倣大環状分子の前駆体ポリペプチドの合成において使用してもよい。例えば、「S5−オレフィンアミノ酸」は、(S)−α−(2’−ペンテニル)アラニンであり、「R8オレフィンアミノ酸」は(R)−α−(2’−オクテニル)アラニンである。このようなアミノ酸を前駆体ポリペプチド中に組み込んだ後、末端オレフィンをメタセシス触媒と反応させ、これによってペプチド模倣大環状分子の形成をもたらす。
他の実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式IVまたはIVaである。このような大環状分子の調製のための方法は、例えば、米国特許第7,202,332号において記載されている。
いくつかの実施形態において、これらのペプチド模倣大環状分子の合成は、アジド部分およびアルキン部分を含有するペプチド模倣物前駆体の合成;その後ペプチド模倣物前駆体を大環状分子化試薬と接触させて、トリアゾール結合ペプチド模倣大環状分子を生成させることを特徴とする複数段階工程を含む。このようなプロセスは、例えば、2008年2月25日に出願された米国出願第12/037,041号に記載される。大環状分子または大環状分子前駆体は、例えば、液相法または固相法によって合成され、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸の両方を含有することができる。例えば、Chemistry and Biochemistry of the Amino Acids、G.C.Barrett編、Chapman and Hall、1985年の中のHunt、「The Non−Protein Amino Acids」を参照のこと。
いくつかの実施形態において、アジドはある残基のα−炭素に結合しており、アルキンは別の残基のα−炭素に結合している。いくつかの実施形態において、アジド部分は、アミノ酸L−リジン、D−リジン、α−メチル−L−リジン、α−メチル−D−リジン、L−オルニチン、D−オルニチン、α−メチル−L−オルニチンまたはα−メチル−D−オルニチンのアジド−アナログである。別の実施形態において、アルキン部分は、L−プロパルギルグリシンである。さらに別の実施形態において、アルキン部分は、L−プロパルギルグリシン、D−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸および(R)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸からなる群より選択されるアミノ酸である。
いくつかの実施形態において、本発明は、ペプチド模倣大環状分子を合成するための方法であって、式Vまたは式VI:
Figure 2013505300
であって、
式中、v、w、x、y、z、A、B、C、D、E、R、R、R、R、LおよびLは式(II)で定義されたとおりであり、大環状分子化試薬がCu試薬である場合R12は−Hであり、大環状分子化試薬がRu試薬である場合R12は−Hまたはアルキルである、ペプチド模倣物前駆体を、大環状分子化試薬と接触させる工程を含み、さらにこの接触させる工程が、式IIIまたは式IVにおいてアルキンとアジド部分との間に形成される共有結合をもたらす、方法を提供する。例えば、大環状分子化試薬がRu試薬である場合、R12はメチルであってもよい。
本発明のペプチド模倣大環状分子において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの両方が独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態において、A、B、C、DまたはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。1つの例では、Bはα,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、DまたはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。
例えば、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換される、アルキルである。別の例において、RおよびRの両方が独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換される、アルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つはメチルである。他の実施形態において、RおよびRはメチルである。大環状分子化試薬は、Cu試薬であっても、またはRu試薬であってもよい。
いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物前駆体は、接触工程の前に精製される。他の実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子は、接触工程の後に精製される。さらに他の実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子は、接触工程の後に再折り畳み(リフォールディング)される。この方法は溶液中で行われてもよいし、または、あるいは、この方法は固体支持体上で行われてもよい。
上記結合に有利な条件下でペプチド模倣物前駆体またはペプチド模倣大環状分子に結合する、標的高分子の存在下で本発明の方法を行うこともまた、本発明において想定される。いくつかの実施形態において、この方法は、上記結合に有利な条件下でペプチド模倣物前駆体またはペプチド模倣大環状分子に優先的に結合する標的高分子の存在下で行われる。またこの方法を適用して、ペプチド模倣大環状分子のライブラリーを合成してもよい。
いくつかの実施形態において、式Vまたは式VIのペプチド模倣物前駆体のアルキン部分は、L−プロパルギルグリシン、D−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸、および(R)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。他の実施形態において、式Vまたは式VIのペプチド模倣物前駆体のアジド部分は、ε−アジド−L−リジン、ε−アジド−D−リジン、ε−アジド−α−メチル−L−リジン、ε−アジド−α−メチル−D−リジン、δ−アジド−α−メチル−L−オルニチン、およびδ−アジド−α−メチル−D−オルニチンからなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。
いくつかの実施形態において、x+y+zは3であり、A、BおよびCは独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸である。他の実施形態において、x+y+zは6であり、A、BおよびCは独立して天然アミノ酸または非天然アミノ酸である。
いくつかの実施形態において、接触工程は、プロトン性溶媒(protic solvent)、水性溶媒、有機溶媒、およびこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。例えば、溶媒は、HO、THF、THF/HO、tBuOH/HO、DMF、DIPEA、CHCNまたはCHCl、ClCHCHClまたはこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。溶媒は、へリックス形成に有利な溶媒であってもよい。
代替であるが等価な保護基、脱離基または試薬は置換され、かつ特定の合成工程は、代替の順番または所望の化合物を生成する順序で行われる。本明細書に記載の化合物の合成において有用な、合成化学による変換および保護基の方法論(保護および脱保護)としては、例えば、Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989);GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley and Sons(1991);FieserおよびFieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);およびPaquette編、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)、ならびにこれらの後続の版において記載されているものなどを含む。
本発明のペプチド模倣大環状分子は、例えば、Fieldsら、Synthetic Peptides:A User’s Guideの第3章、Grant編、W.H.Freeman&Co.、New York、N.Y.、1992年、77頁において記載されているものなどの化学合成法によって製造される。従って、例えば、ペプチドは、固相合成の自動化メリフィールド(Merrifield)技術を用いて、側鎖保護アミノ酸を用いてtBocまたはFmoc化学のいずれかによって保護されたアミンを用いて、例えば、自動ペプチド合成機(例えば、Applied Biosystems(Foster City、CA)、430A、431、または433型)において合成される。
本明細書に記載のペプチド模倣物前駆体およびペプチド模倣大環状分子を製造する1つの方法は、固相ペプチド合成(SPPS)を用いる。C末端アミノ酸は、リンカー分子との酸不安定結合を介して架橋ポリスチレン樹脂に結合している。この樹脂は、合成に用いられる溶媒において不溶性であり、このため比較的簡単にかつ迅速に過剰な試薬および副産物を洗い流すようになる。N末端は、Fmoc基で保護されており、酸において安定であるが塩基によって除去することができる。側鎖官能基は、必要に応じて塩基に安定だが酸に不安定な基で保護されている。
より長いペプチド模倣物前駆体は、例えば、自然な化学的ライゲーション(native chemical ligation)を用いて個々の合成ペプチドを結合することによって作製される。あるいは、より長い合成ペプチドは、周知の組換えDNA技術およびタンパク質発現技術によって生合成される。このような技術は、周知の標準的マニュアルにおいて詳細なプロトコールとともに提供されている。本発明のペプチド模倣物前駆体をコードする遺伝子を構築するために、アミノ酸配列を逆翻訳して、好ましくは遺伝子が発現される生物体に最適なコドンを有する、アミノ酸配列をコードする核酸配列を得る。次に、合成遺伝子を、典型的には、必要であればペプチドおよび任意の調節エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することによって作製する。合成遺伝子を適切なクローニングベクター中に挿入し、宿主細胞中にトランスフェクトする。次いでペプチドを、選択した発現系および宿主に適した適切な条件下で発現させる。ペプチドを標準的な方法によって精製し特徴付ける。
ペプチド模倣物前駆体は、例えば、ハイスループット多チャンネルコンビナトリアル合成装置(例えば、CreoSalus、Louisville、KY製のThuramed TETRASマルチチャンネルペプチド合成装置またはAAPPTEC、Inc.、Louisville、KY製のModel Apex 396マルチチャンネルペプチド合成装置)を用いるハイスループットなコンビナトリアル法において、例えば作製される。
以下の合成スキームは、本発明を例示するためだけに提供され、本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図するものではない。図面を簡略化するために、例示的なスキームは、アジドアミノ酸アナログであるε−アジド−α−メチル−L−リジンおよびε−アジド−α−メチル−D−リジン、ならびにアルキンアミノ酸アナログであるL−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、および(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸を表す。従って、以下の合成スキームにおいて、各々のR、R、RおよびRは、−Hであり;各々のLは−(CH−であり;各々のLは−(CH)−である。しかしながら、上記の詳細な説明の全体にわたって述べたように、多くの他のアミノ酸アナログを使用することが可能で、ここでR、R、R、R、LおよびLは、本明細書に開示されている種々の構造から独立して選択することができる。
合成スキーム1
Figure 2013505300
合成スキーム1は、本発明のいくつかの化合物の調製を示す。キラル補助基(S)−2−[N−(N’−ベンジルプロリル)アミノ]ベンゾフェノン(BPB)およびグリシンまたはアラニンなどのアミノ酸に由来するシッフ塩基のNi(II)複合体は、Belokonら(1998)、Tetrahedron Asymm.9:4249〜4252において記載されているとおり調製する。得られた複合体を引き続き、アジドまたはアルキニル部分を含むアルキル化試薬と反応させて、鏡像異性的に濃縮された本発明の化合物を得る。必要に応じて、ペプチド合成において使用するために、得られた化合物を保護してもよい。
合成スキーム2
Figure 2013505300
合成スキーム2に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、液相または固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。次いでペプチド模倣物前駆体は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。ペプチド模倣物前駆体を、粗混合物として反応させるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてCu(I)などの大環状分子化試薬との反応の前に精製する(Rostovtsevら(2002)、Angew.Chem.Int.Ed.41:2596〜2599;Tornoeら(2002)、J.Org.Chem.67:3057〜3064;Deitersら(2003)、J.Am.Chem.Soc.125:11782〜11783;Punnaら(2005)、Angew.Chem.Int.Ed.44:2215〜2220)。一実施形態において、トリアゾール形成反応は、α−へリックス形成に有利な条件下で行われる。一実施形態において、大環状分子化工程は、HO、THF、CHCN、DMF、DIPEA、tBuOHまたはこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。別の実施形態において、大環状分子化工程はDMFにおいて行われる。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、緩衝化された水性の溶媒または部分的に水性の溶媒において行われる。
合成スキーム3
Figure 2013505300
合成スキーム3に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いた、固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。ペプチド模倣物前駆体を、樹脂上で粗混合物としてCu(I)試薬などの大環状分子化試薬と反応させる(Rostovtsevら(2002)、Angew.Chem.Int.Ed.41:2596〜2599;Tornoeら(2002)、J.Org.Chem.67:3057〜3064;Deitersら(2003)、J.Am.Chem.Soc.125:11782〜11783;Punnaら(2005)、Angew.Chem.Int.Ed.44:2215〜2220)。次いで、得られたトリアゾール含有ペプチド模倣大環状分子を、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護して、固相樹脂から切断する。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、CHCl、ClCHCHCl、DMF、THF、NMP、DIPEA、2、6−ルチジン、ピリジン、DMSO、HOまたはこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、緩衝化された水性の溶媒または部分的に水性の溶媒において行われる。
合成スキーム4
Figure 2013505300
合成スキーム4に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、液相または固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。次いでペプチド模倣物前駆体は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。ペプチド模倣物前駆体は、粗混合物として反応させるか、またはRu(II)試薬、例えば、CpRuCl(PPhもしくは[CpRuCl]などの大環状分子化試薬と反応させる前に精製する(Rasmussenら(2007)、Org.Lett.9:5337〜5339;Zhangら(2005)、J.Am.Chem.Soc.127:15998〜15999)。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、DMF、CHCNおよびTHFからなる群より選択される溶媒において行われる。
合成スキーム5
Figure 2013505300
合成スキーム5に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、かつ市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。ペプチド模倣物前駆体を、粗混合物として樹脂上でRu(II)試薬などの大環状分子化試薬と反応させる。例えば、試薬はCpRuCl(PPhまたは[CpRuCl]であってもよい(Rasmussenら(2007)、Org.Lett.9:5337〜5339;Zhangら(2005)、J.Am.Chem.Soc.127:15998〜15999)。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、CHCl、ClCHCHCl、CHCN、DMF、およびTHFからなる群より選択される溶媒において行われる。
本発明は、本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子の合成における天然に存在しないアミノ酸およびアミノ酸アナログの使用を想定する。安定なトリアゾール含有ペプチド模倣大環状分子の合成のために使用される合成方法を行い易い任意のアミノ酸またはアミノ酸アナログを、本発明において用いることができる。例えば、L−プロパルギルグリシンが本発明において有用なアミノ酸として想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含む他のアルキン含有アミノ酸もまた、本発明において有用である。例えば、L−プロパルギルグリシンは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖のアルキンとの間に1つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素とアルキンとの間に複数のメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。また、アミノ酸であるL−リジン、D−リジン、α−メチル−L−リジン、およびα−メチル−D−リジンのアジド−アナログが、本発明において有用なアミノ酸であると想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含有する他の末端アジドアミノ酸もまた、本発明において有用である。例えば、L−リジンのアジドアナログは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖の末端アジドとの間に4つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素と末端アジドとの間に4つ未満のメチレン単位または4つより多いメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。表2は、本発明のペプチド模倣大環状分子の調製において有用ないくつかのアミノ酸を示す。
Figure 2013505300
表2は、本発明のペプチド模倣大環状分子の調製において有用な例示的アミノ酸を示す。
いくつかの実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはD−配置のものである。他の実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはL−配置のものである。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物中に含有されるアミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はD−配置のものであるが、アミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はL−配置のものである。いくつかの実施形態においてアミノ酸アナログは、α−メチル−L−プロパルギルグリシン、α−メチル−D−プロパルギルグリシン、ε−アジド−α−メチル−L−リジン、およびε−アジド−α−メチル−D−リジンなどのα,α−二置換のものである。いくつかの実施形態においてアミノ酸アナログは、N−アルキル化、例えば、N−メチル−L−プロパルギルグリシン、N−メチル−D−プロパルギルグリシン、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンである。
いくつかの実施形態において、そのアミノ酸の−NH部分は、−Fmocおよび−Bocを含むがこれらに限定されない保護基を用いて保護される。他の実施形態において、そのアミノ酸は、ペプチド模倣大環状分子の合成の前には保護されていない。
他の実施形態において、式IIIのペプチド模倣大環状分子が合成される。このような大環状分子の調製は、例えば、2007年12月17日に出願された米国出願第11/957,325号に記載される。以下の合成スキームは、そのような化合物の調製を記載する。図面を簡略化するために、例示的なスキームは、LおよびLが両方とも−(CH)−であるL−システインまたはD−システインに由来するアミノ酸アナログを示す。しかしながら、上記の詳細な説明の全体にわたって述べたように、多くの他のアミノ酸アナログを使用することができ、LおよびLは、本明細書に開示されている種々の構造から独立して選択することができる。「[AA]」、「[AA]」、「[AA]」という記号は、天然または非天然アミノ酸などのアミド結合による結合部分の配列を表す。以前に記述されているとおり、「AA」のそれぞれの出現は任意の他の「AA」の出現とは無関係であり、「[AA]」などの式は、例えば、同一ではないアミノ酸の配列ならびに同一なアミノ酸の配列を包含する。
合成スキーム6
Figure 2013505300
スキーム6において、ペプチド模倣物前駆体は2つの−SH部分を含み、かつN−α−Fmoc−S−トリチル−L−システインまたはN−α−Fmoc−S−トリチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708〜2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって適切に保護されたN−α−Fmoc−S−トリチルモノマーに変換される。次いで前駆体ペプチド模倣物は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。前駆体ペプチド模倣物は、粗混合物として反応されるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてX−L−Yとの反応の前に精製される。いくつかの実施形態においてアルキル化反応は、大環状分子化を容易にし、重合を回避するために希釈条件下(すなわち0.15mmol/L)で行われる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40:233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、6MのグアニジニウムHCL、pH8などの水性溶液中で行われる(Brunelら(2005)、Chem.Commun.(20):2552〜2554)。他の実施形態において、アルキル化反応に使用される溶媒はDMFまたはジクロロエタンである。
合成スキーム7
Figure 2013505300
スキーム7において、前駆体ペプチド模倣物は2つ以上の−SH部分を含んでおり、その2つは特別に保護されていて、それにより大環状分子形成のためのその選択的な脱保護およびその後のアルキル化が可能になる。前駆体ペプチド模倣物は、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−L−システインまたはN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708−2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって、適切に保護されたN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチルモノマーに変換される。次いでペプチド模倣物前駆体のMmt保護基は、標準的な条件(例えば、DCM中1%TFAなどの弱酸)によって選択的に切断される。次いで前駆体ペプチド模倣物を、樹脂上で有機溶液においてX−L−Yと反応させる。例えば、この反応は、ジイソプロピルエチルアミンなどの立体障害塩基の存在下で起こる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40:233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化反応は、DMFまたはジクロロエタン中で行われる。次いでペプチド模倣大環状分子は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。
合成スキーム8
Figure 2013505300
スキーム8において、ペプチド模倣物前駆体は2つ以上の−SH部分を含んでおり、その2つが特別に保護されており、大環状分子形成のため、その選択的な脱保護およびその後のアルキル化が可能になる。ペプチド模倣物前駆体は、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−L−システイン、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−D−システイン、N−α−Fmoc−S−S−t−ブチル−L−システイン、およびN−α−Fmoc−S−S−t−ブチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708−2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって、適切に保護されたN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチルまたはN−α−Fmoc−S−S−t−ブチルモノマーに変換される。ペプチド模倣物前駆体のS−S−tブチル保護基は、公知の条件によって選択的に切断される(例えば、DMF中20%2−メルカプトエタノール、参照:Galandeら(2005)、J.Comb.Chem.7:174−177)。次いで前駆体ペプチド模倣物を、樹脂上で、有機溶液においてモル過剰のX−L−Yと反応させる。例えば、反応は、ジイソプロピルエチルアミンなどの立体障害塩基の存在下で起こる。次いでペプチド模倣物前駆体のMmt保護基は、標準的な条件(例えば、DCM中1%TFAなどの弱酸)によって選択的に切断される。次いでペプチド模倣物前駆体は、樹脂上で有機溶液における立体障害塩基による処理によって環化される。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、NH/MeOHまたはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。次いでペプチド模倣大環状分子は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。
合成スキーム9
Figure 2013505300
スキーム9において、ペプチド模倣物前駆体は、2つのL−システイン部分を含む。ペプチド模倣物前駆体は、生きた細胞中で公知の生物学的発現系によって、または公知のインビトロの無細胞発現方法によって合成される。前駆体ペプチド模倣物は、粗混合物として反応されるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてX−L2−Yとの反応の前に精製される。いくつかの実施形態においてアルキル化反応は、大環状分子化を容易にし、重合を回避するために希釈条件下(すなわち0.15mmol/L)で行われる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40 :233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、6MグアニジニウムHCL、pH8(Brunelら(2005)、Chem.Commun.(20):2552−2554)などの水性溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、DMFまたはジクロロエタン中で行われる。別の実施形態において、アルキル化は非変性水溶液中で実行され、さらに別の実施形態においてアルキル化は、α−へリックス構造形成に有利な条件下で行われる。さらに別の実施形態において、アルキル化は、前駆体ペプチド模倣物が別のタンパク質に結合するのに有利な条件下で行われ、その結果、アルキル化の間に結合α−へリックス高次構造の形成がもたらされる。
チオール基との反応に適切な、XおよびYについての種々の実施形態が想定される。一般に、各々のXまたはYは独立して、表5に示す一般的なカテゴリーから選択される。例えば、XおよびYは、−Cl、−Brまたは−Iなどのハロゲン化物である。本明細書に記載の任意の大環状分子形成リンカーを、表1〜4に示す任意の配列との任意の組合せ、そしてまた、本明細書に示す任意のR−置換基との任意の組合せでも用いてもよい。
Figure 2013505300
本発明は、式(III)のペプチド模倣大環状分子の合成における、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方のアミノ酸およびアミノ酸アナログの使用を想定する。安定なビス−スルフヒドリル含有ペプチド模倣大環状分子の合成に使用される合成方法を行い易い任意のアミノ酸またはアミノ酸アナログを、本発明において用いてもよい。例えば、システインが、本発明における有用なアミノ酸として想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含むシステイン以外の含硫アミノ酸もまた、有用である。例えば、システインは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖の末端−SHとの間に1つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素と末端−SHの間に複数のメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。非限定的な例としては、α−メチル−L−ホモシステインおよびα−メチル−D−ホモシステインが挙げられる。いくつかの実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログは、D−配置のものである。他の実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはL−配置のものである。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物に含有されるアミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はD−配置のものであるが、アミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はL−配置のものである。いくつかの実施形態において、アミノ酸アナログは、α−メチル−L−システインおよびα−メチル−D−システインなどのα,α−二置換のものである。
本発明は、大環状分子形成リンカーを用いてペプチド模倣物前駆体内の2つ以上の−SH部分を連結させて本発明のペプチド模倣大環状分子が形成される、大環状分子を包含する。上述したように、大環状分子形成リンカーは、立体構造の剛性、代謝安定性の増加および/または細胞透過性の増加を付与する。さらに、いくつかの実施形態において、大環状形成の連結は、ペプチド模倣物の大環状分子のα−へリックス二次構造を安定化させる。大環状分子形成リンカーは式X−L−Yのものであり、ここで、上記で定義したとおりXおよびYは両方とも同じ部分または異なる部分である。XおよびYは両方とも、1つの大環状分子形成リンカー−L−によるビス−スルフヒドリル含有ペプチド模倣物前駆体のビスアルキル化を可能にするという化学的特性を有する。上記で定義されているとおり、リンカー−L−は、上記で定義されているとおり、全てが必要に応じてR基で置換することができる、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレンもしくはヘテロシクロアリーレン、または−R−K−R−を含む。さらに、スルフヒドリル含有アミノ酸の−SHに結合している炭素以外の、大環状分子形成リンカー−L−内の1〜3個の炭素原子は、N、SまたはOなどのヘテロ原子で必要に応じて置換される。
大環状分子形成リンカーX−L−YのL成分は、とりわけ、ペプチド模倣大環状分子を形成するために用いられる2つのアミノ酸アナログの位置の間の距離に依存して、長さが変化し得る。さらに、大環状分子形成リンカーのL成分および/またはL成分の長さが変化するので、安定なペプチド模倣大環状分子の形成に適切な全長のリンカーを生み出すために、Lの長さもまた変化し得る。例えば、使用されるアミノ酸アナログがさらなるメチレン単位をLおよびLのそれぞれに付加することによって変化する場合、Lの長さは、LおよびLの増加した長さを相殺するために約2メチレン単位に相当する(equivalent)長さだけ減少する。
いくつかの実施形態において、Lは、式−(CH−のアルキレン基であり、nは約1〜約15の整数である。例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。他の実施形態において、Lはアルケニレン基である。さらに別の実施形態において、Lはアリール基である。
表4は、X−L−Y基のさらなる実施形態を示す。
Figure 2013505300
本発明を実行するために適切であると想定される、ペプチド模倣大環状分子を形成するためのさらなる方法としては、Mustapa,M.Firouz Mohdら、J.Org.Chem(2003)、68、8193〜8198頁;Yang、Binら Bioorg Med.Chem.Lett.(2004)、14、1403〜1406頁;米国特許第5,364,851号;米国特許第5,446,128号;米国特許第5,824,483号;米国特許第6,713,280号;および米国特許第7,202,332号によって開示されているものが挙げられる。そのような実施形態において、α位にさらなる置換基R−を含有しているアミノ酸前駆体が用いられる。そのようなアミノ酸は、架橋剤が置換される位置、または、あるいは、大環状分子前駆体の配列中のどこか他の場所であってもよい所望の位置で、大環状分子前駆体中に組み込まれる。次いで前駆体の環化を、示される方法に従って達成する。
アッセイ
本発明のペプチド模倣大環状分子の性質は、例えば、後述する方法を使用することによりアッセイされる。いくつかの実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、本明細書に記載の置換基がない対応するポリペプチドに比べて改善された生物学的特性を有する。
αヘリシティを決定するためのアッセイ
溶液中で、α−へリックスドメインを有するポリペプチドの二次構造は、ランダムコイル構造とα−へリックス構造との間の動的平衡に到達し、「ヘリシティパーセント(percent helicity)」として表される場合が多い。従って、例えば、非改変α−へリックスドメインは大部分が、溶液中で通常25%未満のα−へリックス含量を有するランダムコイルである。一方、最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドのそれよりも少なくとも2倍高いαヘリシティを有する。いくつかの実施形態において、本発明の大環状分子は、50%より高いαヘリシティを有する。本発明のペプチド模倣大環状分子のヘリシティをアッセイするために、上記化合物を、水性溶液(例えば、pH7の50mMのリン酸カリウム溶液、または蒸留水(distilled HO)、25〜50μMの濃度まで)に溶解する。標準的な測定パラメーター(例えば、温度、20℃;波長、190〜260nm;ステップ分解能、0.5nm;速度、20nm/秒;蓄積、10;応答、1秒;帯域幅、1nm;光路長(path length)、0.1cm)を用いて、分光偏光計(例えば、Jasco J−710)において円二色性(CD)スペクトルを得る。平均残基楕円率(例えば、[Φ]222obs)をへリックスデカペプチドモデル(Yangら(1986)、Methods Enzymol.130:208)について報告されている値で割ることによって、各ペプチドのα−へリックス含量を計算する。
融解温度(Tm)を決定するためのアッセイ
α−へリックスなどの二次構造を含む本発明のペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドよりも高い融解温度を示す。代表的には、本発明のペプチド模倣大環状分子は、水性溶液中で高度に安定な構造を表す60℃超のTmを示す。融解温度に対する大環状分子形成の影響をアッセイするために、ペプチド模倣大環状分子または非改変ペプチドを、蒸留水中に溶解(例えば、50μMの最終濃度で)し、分光偏光計(例えば、Jasco J−710)において標準的なパラメーター(例えば、波長222nm;ステップ解像度、0.5nm;速度、20nm/秒;蓄積、10;応答、1秒;帯域幅、1nm;温度上昇速度:1℃/分;光路長、0.1cm)を用いて、ある温度範囲(例えば、4〜95℃)にわたって楕円率の変化を測定することによって、Tmを決定する。
プロテアーゼ耐性アッセイ
ペプチド骨格のアミド結合は、プロテアーゼによる加水分解を受けやすく、そのためペプチド性化合物は、インビボでの急速な分解に対して脆弱になる。しかし、ペプチドへリックス形成は、代表的にはアミド骨格を埋没させ、従って、タンパク質分解性の切断からアミド骨格を保護することができる。本発明のペプチド模倣大環状分子をインビトロのトリプシンタンパク質分解に供して、対応する架橋されていないポリペプチドと比較した分解速度の変化について評価し得る。例えば、ペプチド模倣大環状分子および対応する架橋されていないポリペプチドを、トリプシンアガロースでインキュベートし、遠心分離によって種々の時点で反応をクエンチして、その後HPLC注入して、280nmでの紫外線吸収により残存基質を定量する。簡潔に述べると、ペプチド模倣大環状分子およびペプチド模倣物前駆体(5μg(mcg))を、トリプシンアガロース(Pierce)(S/E約125)で0、10、20、90、および180分間インキュベートする。高速での卓上遠心分離によって反応をクエンチし、HPLCによる280nmでのピーク検出によって単離した上清中の残存している基質を定量する。タンパク質分解反応は一次反応速度式(first−order kinetics)を示し、時間に対するln[S](k=−1X勾配)のプロットから速度定数、kを決定する。
エキソビボ安定性アッセイ
最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドのそれよりも少なくとも2倍高いエキソビボ半減期を有し、かつ12時間以上のエキソビボ半減期を有する。エキソビボの血清安定性研究には、種々のアッセイを用いてもよい。例えば、ペプチド模倣大環状分子または対応する架橋されていないポリペプチド(2μg)を、新鮮なマウス血清、ラット血清および/またはヒト血清(2mL)とともに、37℃で0、1、2、4、8、および24時間インキュベートする。インタクトな化合物のレベルを決定するために、以下の手順を用いてもよい:100μlの血清を2mlの遠心管に移すこと、その後に10μLの50%ギ酸および500μLのアセトニトリルを添加し、4±2℃で10分間、14,000RPMで遠心分離することによって、サンプルを抽出する。次いで上清を新しい2mlのチューブに移し、TurbovapにおいてN<10psi下、37℃でエバポレートさせる。サンプルを100μLのアセトニトリル:水(50:50)中で再構成し、LC−MS/MS分析にかける。
インビトロ結合アッセイ
アクセプタータンパク質に対するペプチド模倣大環状分子およびペプチド模倣物前駆体の結合および親和性を評価するために、例えば、蛍光偏光アッセイ(FPA)を用いる。FPA技術は、偏光および蛍光トレーサーを用いて分子の配向および運動性を測定する。偏光によって励起されると、高い見かけの分子量を有する分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、FITC)(例えば、大きなタンパク質に結合したFITC標識ペプチド)は、より小さい分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、溶液中で遊離しているFITC標識ペプチド)と比較してそのより遅い回転速度のために、より高いレベルの偏光蛍光を発する。
例えば、フルオレセイン化(fluoresceinated)ペプチド模倣大環状分子(25nM)を、結合緩衝液(140mMのNaCl、50mMのTris−HCL、pH7.4)中で、アクセプタータンパク質(25〜1000nM)と一緒に室温で30分間インキュベートする。結合活性を、例えば、ルミネッセンス分光光度計(例えば、Perkin−Elmer LS50B)において蛍光偏光によって測定する。Kd値は、例えば、Graphpad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)を用いて、非線形回帰分析によって決定し得る。本発明のペプチド模倣大環状分子は、場合によっては、対応する架橋されていないポリペプチドと同様のまたはそれより低いKdを示す。
ペプチド−タンパク質相互作用のアンタゴニストを特徴付けるためのインビトロ置換アッセイ
ペプチドとアクセプタータンパク質との間の相互作用をアンタゴナイズする化合物の結合および親和性を評価するために、例えば、ペプチド模倣物前駆体配列に由来するフルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子を利用する蛍光偏光アッセイ(FPA)を用いる。このFPA技術は、偏光および蛍光トレーサーを用いて分子の配向および運動性を測定する。偏光によって励起されるとき、高い見かけの分子量を有する分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、FITC)(例えば、大きなタンパク質に結合したFITC標識ペプチド)は、より小さい分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、溶液中で遊離しているFITC標識ペプチド)と比較してそのより遅い回転速度のために、より高いレベルの偏光蛍光を発する。フルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子とアクセプタータンパク質との間の相互作用をアンタゴナイズする化合物は、競合的結合FPA実験において検出される。
例えば、推定アンタゴニスト化合物(1nM〜1mM)およびフルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子(25nM)を、結合緩衝液(140mMのNaCl、50mMのTris−HCL、pH7.4)中で、アクセプタータンパク質(50nM)と一緒に室温で30分間インキュベートする。アンタゴニスト結合活性を、例えば、ルミネッセンス分光光度計(例えば、Perkin−Elmer LS50B)において蛍光偏光によって測定する。Kd値は、例えば、Graphpad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)を用いて非線形回帰分析によって決定することができる。
有機低分子、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質などの任意のクラスの分子を、このアッセイにおいて推定アンタゴニストとして検査してもよい。
親和性選択−質量分析によるタンパク質−リガンド結合についてのアッセイ
タンパク質に対する試験化合物の結合および親和性を評価するために、例えば、親和性−選択質量分析アッセイを用いる。タンパク質−リガンド結合実験は、システム全体のコントロール実験について概説した以下の代表的な手順に従い、1μMのペプチド模倣大環状分子に加えて5μMの標的タンパク質を用いて行う。ペプチド模倣大環状分子の40μMのストック溶液の1μLのDMSOのアリコートを、19μLのPBS(リン酸緩衝化生理食塩水:50mM,pH7.5のリン酸緩衝液であって、150mMのNaClを含有)に溶解する。得られた溶液を反復ピペッティングによって混合して、10000gで10分間の遠心分離によって清澄化する。得られた上清の4μLのアリコートに、PBS中10μMの標的タンパク質を4μL添加する。これによって、各々の8.0μLの実験サンプルは、PBS中に5.0μMの濃度で40pmol(1.5μg)のタンパク質、さらに、1μMのペプチド模倣大環状分子および2.5%のDMSOを含む。各々の濃度ポイントでこのように調製した二連のサンプルを、室温で60分間インキュベートし、次いで4℃まで冷却した後に、5.0μLの注射のサイズ排除クロマトグラフィーLC−MS分析を行う。標的タンパク質、タンパク質−リガンド複合体および未結合の化合物を含むサンプルをSECカラム上に注入し、ここでこの複合体は、迅速なSEC工程によって非結合成分から分離される。このSECカラム溶出液を、UV検出器を用いてモニターして、早期に溶出するタンパク質画分(SECカラムの空隙容積中に溶出する)が、カラム上に保持される未結合成分から十分分離されていることを確認する。タンパク質およびタンパク質−リガンド複合体を含有するピークが一次UV検出器から溶出した後、これがサンプルループに入って、ここでSECステージのフローストリームから切り出され、バルブ機構を介してLC−MSに直接移される。ペプチド模倣大環状分子の(M+3H)3+イオンは、ESI−MSによって予想のm/zで観察され、これによってタンパク質−リガンド複合体の検出が確認される。
タンパク質−リガンドKd滴定実験のアッセイ
タンパク質に対する試験化合物の結合および親和性を評価するため、例えば、タンパク質−リガンドKd滴定実験を行う。タンパク質−リガンドKd滴定実験は、以下のとおり行う:滴定剤(titrant)ペプチド模倣大環状分子の連続希釈ストック溶液の2μLのDMSOアリコート(5、2.5、...、0.098mM)を調製し、次に38μLのPBSに溶解する。得られた溶液を、反復ピペッティングによって混合して、10000gで10分間の遠心分離によって清澄化する。得られた上清の4.0μLのアリコートに対して、PBS中10μMの標的タンパク質の4.0μLを添加する。これによって、各々の8.0μLの実験サンプルは、PBS、種々の濃度(125、62.5、...、0.24μM)の滴定剤ペプチド、および2.5%のDMSO中に、5.0μMの濃度で40pmol(1.5μg)のタンパク質を含む。各々の濃度ポイントでこのように調製した二連のサンプルを、室温で30分間インキュベートし、次いで4℃まで冷却した後に、2.0μLの注射のSEC−LC−MS分析を行う。(M+H)1+、(M+2H)2+、(M+3H)3+、および/または(M+Na)1+イオンは、ESI−MSによって観察される;抽出したイオンのクロマトグラムを定量し、次いで、「A General Technique to Rank Protein−Ligand Binding Affinities and Determine Allosteric vs.Direct Binding Site Competition in Compound Mixtures.」Annis,D.A.;Nazef,N.;Chuang,C.C.;Scott,M.P.;Nash,H.M.J.Am.Chem.Soc.2004,126,15495〜15503;また、「ALIS:An Affinity Selection−Mass Spectrometry System for the Discovery and Characterization of Protein−Ligand Interactions」D.A.Annis,C.−C.Chuang,およびN.Nazef.In Mass Spectrometry in Medicinal Chemistry.Wanner K,Hoefner G編:Wiley−VCH;2007:121〜184.Mannhold R,Kubinyi H,Folkers G(シリーズ編集者):Methods and Principles in Medicinal Chemistryに記載されるように結合親和性Kを導く式にあてはめる。
親和性選択−質量分析による競合結合実験のアッセイ
試験化合物がタンパク質に対して競合的に結合する能力を決定するために、例えば、親和性選択質量分析アッセイを行う。1つの成分あたり40μMのリガンドの混合物を、3つの化合物の各々の400μMのストックの2μLアリコートと14μLのDMSOとを合わせることによって調製する。次いで、1つの成分の混合物あたりこの40μMの1μLのアリコートを、滴定剤ペプチド模倣大環状分子の連続希釈ストック溶液(10、5、2.5、...、0.078mM)の1μLのDMSOアリコートと合わせる。これらの2μLのサンプルを、38μLのPBSに溶解する。得られた溶液を、反復ピペッティングによって混合し、10000gで10分間の遠心分離によって清澄化した。得られた上清の4.0μLのアリコートに対して、PBS中の10μMの標的タンパク質の4.0μLを添加する。これによって、各々の8.0μLの実験サンプルは、PBS中に5.0μMの濃度で40pmol(1.5μg)のタンパク質、さらに0.5μMのリガンド、2.5%のDMSO、および種々の濃度(125、62.5、...、0.98μM)の滴定剤ペプチド模倣大環状分子を含む。各々の濃度ポイントでこのように調製した二連のサンプルを、室温で60分間インキュベートし、次いで、4℃まで冷却した後に、2.0μLの注射のSEC−LC−MS分析を行う。これらの方法および他の方法に対する追加の詳細は、「A General Technique to Rank Protein−Ligand Binding Affinities and Determine Allosteric vs.Direct Binding Site Competition in Compound Mixtures.」Annis,D.A.;Nazef,N.;Chuang,C.C.;Scott,M.P.;Nash,H.M.J.Am.Chem.Soc.2004,126,15495〜15503;また、「ALIS:An Affinity Selection−Mass Spectrometry System for the Discovery and Characterization of Protein−Ligand Interactions」D.A.Annis,C.−C.Chuang,およびN.Nazef.In Mass Spectrometry in Medicinal Chemistry.Wanner K,Hoefner G編:Wiley−VCH;2007:121〜184.Mannhold R,Kubinyi H,Folkers G(シリーズ編集者):Methods and Principles in Medicinal Chemistryにも示される。
インタクトな細胞における結合アッセイ
インタクトな細胞における、それらの天然アクセプターに対するペプチドまたはペプチド模倣大環状分子の結合は、免疫沈降実験によって測定することが可能である。例えば、インタクトな細胞を、血清の非存在において、フルオレセイン化(fluoresceinated)(FITC標識)化合物とともに4時間インキュベートし、その後血清補充(serum replacement)を行い、さらに4〜18時間の範囲でインキュベートする。次いで細胞をペレットにして、溶解緩衝液(50mMのTris[pH7.6]、150mMのNaCl、1%CHAPSおよびプロテアーゼインヒビターカクテル)中で、10分間4℃でインキュベートする。抽出物を14,000rpmで15分間遠心分離にかけ、上清を回収して10μlのヤギ抗FITC抗体と4℃で回転させながら2時間インキュベートし、その後さらに4℃で2時間、プロテインA/Gセファロース(50μlの50%ビーズスラリー)とインキュベートする。短時間の遠心分離の後、ペレットを、漸増する塩濃度(例えば、150、300、500mM)を含有する溶解緩衝液中で洗浄する。次いで、ビーズを、150mMのNaClで再平衡化させて、その後SDS含有サンプル緩衝液の添加および煮沸を行う。遠心分離後、上清を必要に応じて、4%〜12%勾配Bis−Trisゲルを用いて電気泳動し、その後Immobilon−Pメンブレンに移す。ブロッキング後、必要に応じて、ブロットを、FITCを検出する抗体と、また、ペプチド模倣大環状分子に結合するタンパク質を検出する1つ以上の抗体とともに、インキュベートする。
細胞透過性アッセイ
ペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する非架橋の大環状分子に比較してさらに細胞透過性である。最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は例えば、対応する非架橋大環状分子よりも少なくとも2倍大きい細胞透過性を保有し、かつ適用した(applied)ペプチド模倣大環状分子のうち20%以上が4時間後に細胞を透過したことが観察される場合が多い。ペプチド模倣大環状分子および対応する非架橋大環状分子の細胞透過性を測定するために、インタクトな細胞を、フルオレセイン化したペプチド模倣大環状分子または対応する架橋されていない大環状分子(10μM)とともに4時間、無血清培地中で37℃でインキュベートし、培地を用いて2回洗浄し、トリプシン(0.25%)とともに10分間37℃でインキュベートする。細胞を再度洗浄し、PBS中に再懸濁する。細胞の蛍光を、例えば、FACSCaliburフローサイトメーター、またはCellomics’KineticScan(登録商標)HCS Readerのいずれかを用いることによって分析する。
細胞効力アッセイ
特定のペプチド模倣大環状分子の効力は、例えば、ヒト細胞集団またはマウス細胞集団に由来する種々の腫瘍形成性および非腫瘍形成性の細胞系統ならびに初代細胞を用いる細胞ベースの死滅アッセイにおいて決定される。細胞生存度を、例えば、ペプチド模倣大環状分子(0.5〜50μM)との24時間〜96時間のインキュベーションにわたってモニターして、EC50<10μMで死滅させるペプチド模倣大環状分子を特定する。細胞生存度を測定するいくつかの標準的なアッセイが市販されており、ペプチド模倣大環状分子の効力を評価するために必要に応じて用いられる。さらに、ペプチド模倣大環状分子がアポトーシス機構を活性化することによって細胞を死滅させるか否かを評価するために、アネキシンVおよびカスパーゼ活性化を測定するアッセイが必要に応じて用いられる。例えば、細胞内ATP濃度の関数として細胞生存度を決定するCell Titer−gloアッセイが用いられる。
インビボ安定性アッセイ
ペプチド模倣大環状分子のインビボ安定性を検討するために、化合物を、例えば、マウスおよび/またはラットに、IV、IP、POまたは吸入経路によって0.1〜50mg/kgの範囲の濃度で投与し、注入後0分、5分、15分、30分、1時間、4時間、8時間および24時間で血液検体を採取する。次いで25μLの新鮮血清中のインタクトな化合物のレベルをLC−MS/MSによって上記のとおり測定する。
動物モデルにおけるインビボ効力
インビボでの本発明のペプチド模倣大環状分子の抗腫瘍形成活性を決定するために、化合物を、例えば、単独で(IP、IV、PO、吸入または鼻腔内経路によって)または最適以下の用量の関連する化学療法(例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、エトポシド)と組み合わせて与える。一例において、ルシフェラーゼを安定に発現する5×10個のRS4;11細胞(急性リンパ芽球性白血病患者の骨髄から樹立した)を、NOD−SCIDマウスの尾静脈内に、全身照射を受けてから3時間後に注入する。処置しないまま放置した場合、この形態の白血病はこのモデルにおいて3週間以内に死に至る。白血病は、例えば、マウスにD−ルシフェリン(60mg/kg)を注入し、麻酔をかけた動物をイメージングする(例えば、Xenogen In Vivo Imaging System、Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)ことによって、容易にモニターされる。全身の生物発光を、Living Image Software(Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)による光子フラックス(photonic flux)(光子/秒)の積分によって定量する。ペプチド模倣大環状分子単独または最適以下の用量の関連する化学療法剤と組み合わせたペプチド模倣大環状分子を、例えば、白血病マウス(注入の10日後/実験の1日目、14〜16の生物発光の範囲)に尾静脈またはIP経路で0.1mg/kg〜50mg/kgの範囲の用量で7〜21日間投与する。必要に応じて、実験中1日おきにマウスをイメージングし、実験期間中、毎日生存をモニターする。実験が終了したマウスを必要に応じて、実験終了の時点で解剖する。別の動物モデルは、ルシフェラーゼを安定に発現する、ヒト濾胞性リンパ腫に由来する細胞系統DoHH2の、NOD−SCIDマウスへの移植である。これらのインビボ試験では必要に応じて、予備的な薬物動態データ、薬力学データおよび毒性データを作成する。
臨床試験
ヒトの処置に対する本発明のペプチド模倣大環状分子の適合を決定するために、臨床試験を行う。例えば、癌と診断されかつ処置を必要とする患者を選択して、処置群および1つ以上のコントロール群に分け、処置群には本発明のペプチド模倣大環状分子を投与し、一方コントロール群には、プラセボ、または公知の抗癌剤を与える。従って、本発明のペプチド模倣大環状分子の処置の安全性および効力は、生存およびクオリティー・オブ・ライフなどの要因に関して患者群の比較を行うことによって評価することができる。この例において、ペプチド模倣大環状分子で処置した患者群は、プラセボで処置した患者コントロール群と比較して長期生存の改善を示す。
医薬組成物および投与経路
本発明のペプチド模倣大環状分子はまた、薬学的に受容可能な誘導体またはそのプロドラッグも含む。「薬学的に受容可能な誘導体」とは、レシピエントへの投与の際、本発明の化合物を(直接的または間接的に)提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、エステルの塩、プロドラッグまたは他の誘導体を意味する。特に好ましい薬学的に受容可能な誘導体は、哺乳動物に投与される場合、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増加させる(例えば、経口投与された化合物の血液中への吸収を増加させることによって)か、またはその親種と比較して生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への活性な化合物の送達を増加させるものである。いくつかの薬学的に受容可能な誘導体は、水溶解度(aqueous solubility)または胃腸粘膜の能動輸送を増大する化学基を含む。
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、選択的な生物学的特性を増強するために、適切な官能基を共有結合または非共有結合で結合することによって改変される。そのような改変としては、所与の生物学的コンパートメント(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透性を増大させる、経口の利用可能性を増加させる、可溶性を増大させて注入による投与を可能にする、代謝を変化させる、および排泄率を変化させる改変が挙げられる。
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機の酸および塩基に由来する塩ならびに有機の酸および塩基に由来する塩が挙げられる。適切な酸塩(acid salt)の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモエート、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アンモニウム塩およびN−(アルキル) 塩が挙げられる。
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に受容可能なキャリアとしては固体または液体のいずれかのキャリアが挙げられる。固体形態の調製物としては、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性粒剤が挙げられる。固体キャリアは、希釈剤、着香剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても機能する1つ以上の物質であってもよい。処方および投与のための技術に関する詳細は、科学文献および特許文献において十分に記述されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Maack Publishing Co、Easton PAの最新版を参照のこと。
粉末剤においては、キャリアとは、微粉化した(finely divides)活性成分と混合されている微粉化した固体である。錠剤において、活性成分は、必要な結合特性を有するキャリアと適切な割合で混合され、所望の形状および大きさに圧縮される。
適切な固体賦形剤は炭水化物またはタンパク質増量剤(filler)であり、これには、限定するものではないが、糖、例としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、または別の植物由来のデンプン;セルロース、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム;ならびにアラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質が挙げられる。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのこれらの塩のような崩壊剤または可溶化剤を加える。
液体形態の調製物としては、液剤、懸濁剤、および乳剤、例えば、水または水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注入用に、液体調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液に処方することができる。
薬学的調製物は、好ましくは単位剤形である。このような形態では、調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に小分割される。単位剤形は、バイアルまたはアンプル中に、小分けされた錠剤、カプセル、および粉末など、個別量の調製物を収容しているパッケージであるパッケージ調製物であってもよい。また、単位剤形は、それ自体カプセル剤、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジであってもよく、または、適切な数の任意のこれらのパッケージ化形態であってもよい。
本発明の組成物がペプチド模倣大環状分子と1つ以上のさらなる治療剤または予防剤の組合せを含む場合、化合物およびさらなる薬剤の両方は、単独療法レジメンにおいて通常投与される投薬量の約1〜100%、およびより好ましくは約5〜95%の投薬量レベルで存在するべきである。いくつかの実施形態において、さらなる薬剤は、反復投与レジメンの一部として、本発明の化合物とは別々に投与される。あるいは、これらの薬剤は1つの剤形の一部であり、1つの組成物中で本発明の化合物と一緒に混合される。
使用方法
一局面では、本発明は、ペプチド模倣大環状分子がモデリングされる、タンパク質またはペプチドの天然のリガンド(単数または複数)に結合する剤を特定するために競合的結合アッセイで有用な新規なペプチド模倣大環状分子を提供する。例えば、TCF/βーカテニンの系では、TCFのCBDペプチドに基づく標識されたペプチド模倣大環状分子を、βーカテニンに競合的に結合する低分子と一緒にβーカテニン結合アッセイで用いてもよい。競合的な結合研究によって、TCF/βーカテニンの系に特異的である薬物候補の迅速なインビトロでの評価および決定が可能になる。このような結合研究を、本明細書に開示される任意のペプチド模倣大環状分子およびそれらの結合パートナーで行ってもよい。
本発明はさらに、ペプチド模倣大環状分子に対する抗体の生成を提供する。いくつかの実施形態では、これらの抗体は、ペプチド模倣大環状分子およびそのペプチド模倣大環状分子が関連する前駆体ペプチド(例えば、TCF−CBD)の両方に特異的に結合する。このような抗体は、例えば、天然のタンパク質−タンパク質の相互作用、例えば、TCFとβ−カテニンとの間の結合を破壊する。
他の局面では、本発明は、β−カテニンを含む分子の異常な(例えば、不十分なもしくは過剰な)発現もしくは活性に関連する障害のリスクがある(もしくはその障害に対して感受性である)か、またはその障害を有する被験体を処置する予防法および治療法の両方を提供する。
別の実施形態では、障害は、少なくとも部分的には、異常なレベルのβ−カテニン(例えば、過剰発現または過小発現)によって、または異常な活性を示すβ−カテニンの存在によって生じる。したがって、TCFのようなCBD含有タンパク質由来のペプチド模倣大環状分子による、β−カテニンのレベルおよび/もしくは活性の低減、またはβ−カテニンのレベルおよび/もしくは活性の増強を用いて、例えば、障害の有害な症状を緩和または軽減する。
別の局面では、本発明は、例えば、TCFおよびβ−カテニンの間の結合パートナーの間の相互作用または結合を妨げることによって、過剰増殖性疾患および炎症性障害を含む疾患を、処置または予防するための方法を提供する。これらの方法は、ヒトを含む温血動物に対して本発明の化合物の有効量を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物の投与は、細胞増殖停止またはアポトーシスを誘発する。
本明細書において使用される場合、「処置」という用語は、疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を、治療する、治癒する、軽減する、緩和する、変化させる、治す、改善する、好転させる、または影響を与えるという目的で、その疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を有する患者への治療剤の適用もしくは投与、または、その患者から単離した組織もしくは細胞系統への治療剤の適用もしくは投与として定義される。
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子を用いて、癌および腫瘍性の状態を処置、予防、および/または診断する。本明細書において用いる場合「癌」、「過剰増殖性」および「腫瘍性」という用語は、自律的増殖能、すなわち、急速に増殖する細胞増殖によって特徴付けられる異常な状況または状態を有する細胞のことをいう。過剰増殖性疾患および腫瘍性疾患の状況は、病的なもの、すなわち、疾患状況を特徴付けているかまたは構成しているものとして分類してもよいし、または非病的なもの、すなわち、正常な状況から逸脱しているが疾患状況を伴わないものとして分類してもよい。この用語は、組織病理学的タイプまたは侵襲性のステージに関係なく、全てのタイプの癌増殖または腫瘍形成過程、転移組織または悪性形質転換した細胞、組織、もしくは器官を含むことを意味する。転移性腫瘍は、乳房、肺、肝臓、結腸および卵巣の起源の腫瘍を含むがこれらに限定されない、複数の原発性腫瘍型から生じる可能性がある。「病的過剰増殖性」細胞は、悪性腫瘍増殖によって特徴付けられる疾患状況において発生する。非病的な過剰増殖性細胞の例としては、創傷回復に伴う細胞の増殖が挙げられる。細胞増殖性障害および/または分化性障害の例としては、癌、例えば、癌腫、肉腫、または転移性障害が挙げられる。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、そのような癌の転移などを制御するための新規な治療剤である。
癌または腫瘍性状態の例としては、限定するものではないが、線維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭頸部癌、皮膚癌、脳の癌、扁平上皮癌、皮脂腺腺癌(sebaceous gland carcinoma)、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、グリオーマ、星状膠細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽腫、白血病、リンパ腫、またはカポジ肉腫が挙げられる。
増殖性障害の例としては、造血性新形成障害が挙げられる。本明細書において用いられる場合、「造血性新形成障害」という用語は、造血起源の、例えば、骨髄系、リンパ系または赤血球系、またはこれらの前駆体細胞から生じる、過形成/新形成細胞を伴う疾患を包含する。好ましくは、その疾患は、低分化急性白血病、例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じる。さらなる例示的な骨髄障害としては、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus(1991)、Crit Rev.Oncol./Hemotol.11:267〜97に概説されている)が挙げられるがこれらに限定されず;リンパ性悪性疾患としては、限定するものではないが、B細胞系ALLおよびT細胞系ALLを含む急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病(HLL)およびワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)が挙げられる。悪性リンパ腫のさらなる形態としては、限定するものではないが、非ホジキンリンパ腫およびその変種、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ性白血病(LGF)、ホジキン病およびリード−シュテルンベルグ(Reed−Stemberg)病が挙げられる。
乳房の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、増殖性乳房疾患、例としては、例えば、上皮過形成、硬化性腺症、および小管乳頭腫;腫瘍、例えば、線維腺腫、葉状腫瘍、および肉腫などの間質性腫瘍、ならびに大管乳頭腫などの上皮腫瘍;上皮内腺管癌(ductal carcinoma in situ)(パジェット病を含む)および上皮内小葉癌を含む上皮内(非侵襲性)癌を含む乳房の癌、ならびに、侵襲性腺管癌、侵襲性小葉癌、髄様癌、膠様(粘液性)癌、管状癌、および侵襲性乳頭状癌を含むがこれらに限定されない侵襲性(浸潤性)癌、ならびに混合型悪性新生物が挙げられる。男性乳房における障害としては、女性化乳房および癌腫を含むがこれらに限定されない。
肺の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、気管支原性癌、例としては、腫瘍随伴症候群、細気管支肺胞癌、神経内分泌腫瘍、例えば、気管支カルチノイド、混合型腫瘍、および転移性腫瘍;肋膜の病理、例としては、炎症性胸水、非炎症性胸水、気胸、および胸膜腫瘍、例としては、孤立性線維性腫瘍(胸膜線維腫)および悪性中皮腫が挙げられる。
結腸の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、非新形成ポリープ、腺腫、家族性症候群、結腸直腸発癌、結腸直腸癌、およびカルチノイド腫瘍が挙げられる。
肝臓の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、結節性過形成、腺腫、ならびに悪性腫瘍、例としては、肝臓の原発性癌および転移性腫瘍が挙げられる。
卵巣の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、卵巣腫瘍、例えば、体腔上皮の腫瘍、漿液性腫瘍、粘液性腫瘍、子宮内膜性腫瘍、明細胞腺癌、嚢胞性線維腺腫(cystadenofibroma)、ブレンナー腫瘍、表層上皮腫瘍;胚細胞腫瘍、例えば、成熟型(良性)奇形腫、単胚葉性奇形腫(monodermal teratoma)、未熟型悪性奇形腫、未分化胚細胞種、内胚葉洞腫瘍、絨毛癌;性索間質性腫瘍、例えば、顆粒膜夾膜細胞腫、莢膜細胞腫線維腫(thecomafibroma)、アンドロブラストーマ、ヒル(hill)細胞腫瘍、および性
腺芽腫;ならびに転移性腫瘍、例えば、クルーケンベルグ腫瘍が挙げられる。
他の実施形態またはさらなる実施形態では、本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子を用いて、過活動性細胞死または生理的傷害などによる細胞死によって特徴付けられる状態を処置、予防または診断する。早発性のまたは望ましくない細胞死によって特徴付けられる状態、またはあるいは望ましくないまたは過剰な細胞増殖のいくつかの例としては、限定するものではないが、細胞低形成性(hypocellular)/低形成性、無細胞性/無形成性、または細胞過形成性(hypercellular)/過形成性の状態が挙げられる。いくつかの例としては、血液系の障害、例としては、限定するものではないが、ファンコニー貧血、再生不良性貧血、サラセミア、先天性好中球減少症、および骨髄異形成が挙げられる。
他の実施形態またはさらなる実施形態において、アポトーシスを減少させるように作用する本発明のペプチド模倣大環状分子を用いて、望ましくないレベルの細胞死に関連する障害を処置する。従って、いくつかの実施形態において、本発明の抗アポトーシスペプチド模倣大環状分子を用いて、ウイルス感染、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染に関連する感染に伴う細胞死を引き起こすものなどの障害を処置する。広範な神経学的な疾患が、特定のセットのニューロンのゆっくりとした消失によって特徴付けられる。1つの例はアルツハイマー病(AD)である。アルツハイマー病は、大脳皮質および特定の皮質下領域におけるニューロンおよびシナプスの喪失によって特徴付けられる。この喪失の結果、罹患した領域全体の委縮が生じる。アミロイド斑および神経原線維のもつれの両方がADに罹患した脳に現れる。アルツハイマー病は、脳における異常に折り畳まれたA−βおよびτタンパク質の蓄積に起因する、タンパク質の誤って折り畳まれた疾患(protein misfolding disease)として特定されている。斑は、β−アミロイドから形成される。β−アミロイドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と呼ばれるさらに大きいタンパク質由来のフラグメントである。APPはニューロンの成長、生存および損傷後の修復に重要である。ADでは、未知のプロセスによってAPPが、酵素によるタンパク質分解を通じてより小さいフラグメントに切断される。これらのフラグメントのうち1つは、β−アミロイドの原線維であり、これは老人斑として公知の、密集した形成物(dense formation)としてニューロンの外側に沈着する集塊を形成する。斑は、もつれ(tangle)と呼ばれることも多い、神経細胞内で不溶性のねじれた線維へと成長し続ける。従って、β−アミロイドとその天然のレセプターとの間の相互作用の破壊はADの処置に重要である。本発明の抗アポトーシス性ペプチド模倣大環状分子を、いくつかの実施形態では、ADおよび細胞アポトーシスに関連する他の神経学的障害の処置に用いる。そのような神経学的障害としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症(ALS)色素性網膜炎、脊髄性筋委縮症、および種々の形態の小脳変性症が挙げられる。これらの疾患における細胞消失は、炎症応答を引き起こさず、アポトーシスが細胞死の機構であるようである。
さらに、いくつかの血液系疾患が、血球の産生減少と関連している。これらの障害としては、慢性疾患に伴う貧血、再生不良性貧血、慢性好中球減少症、および骨髄異形成症候群が挙げられる。骨髄異形成症候群および一部の形態の再生不良性貧血などの血球産生の障害は、骨髄内のアポトーシス細胞死の増加と関連している。これらの障害は、アポトーシスを促進する遺伝子の活性化、間質細胞もしくは造血性生存因子の後天性欠乏、または毒素および免疫応答のメディエーターの直接的作用に起因する可能性がある。細胞死と関連する2つのよく見られる障害は、心筋梗塞および脳卒中(stroke)である。両方の障害において、急激な血流の喪失という事象において生じる虚血の中心部内の細胞は、壊死の結果として急速に死滅するように見える。しかしながら、中心虚血領域の外部では、細胞はより長い期間にわたって死滅し、形態学的にはアポトーシスによって死滅するように見える。他の実施形態またはさらなる実施形態では、本発明の抗アポトーシスペプチド模倣大環状分子を用いて、望ましくない細胞死に関連する全てのこのような障害を処置する。
本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子で処置される神経障害のいくつかの例としては限定するものではないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、オランダ型遺伝性脳出血アミロイドーシス(Dutch Type Hereditary Cerebral Hemorrhage Amyloidosis)、反応性アミロイドーシス、蕁麻疹および難聴を伴う家族性アミロイド腎症、マックルウェルズ症候群、特発性骨髄腫;マクログロブリン血症随伴性骨髄腫、家族性アミロイド多発性神経炎、家族性アミロイド心筋症、孤立性心アミロイド、全身性老人性アミロイドーシス、成人発症糖尿病、インスリノーマ、孤立性心房性アミロイド、甲状腺髄様癌、家族性アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、家族性アミロイド性多発性ニューロパシー、スクレイピー、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマンストロイスラー−シャインカー症候群、ウシ海綿状脳症、プリオン媒介疾患、およびハンチントン病が挙げられる。
別の実施形態では、本明細書に記載されるペプチド模倣大環状分子を用いて、炎症性障害を処置、予防または診断する。多くの種類の炎症性障害が存在する。特定の炎症性疾患は、免疫系、例えば、自己免疫疾患に関連する。自己免疫疾患は、身体に正常に存在する物質および組織、すなわち自己抗原に対して身体の過度の免疫応答を生じる。言いかえれば、免疫系が自己の細胞を攻撃する。自己免疫疾患は免疫媒介性疾患の主な原因である。関節リウマチは、自己免疫疾患の例であり、ここでは免疫系が関節を攻撃し、これが炎症(すなわち、関節炎)および破壊を生じる。これはまた、肺および皮膚などのいくつかの器官を損傷し得る。関節リウマチは、機能性および運動性の実質的な喪失をもたらし得る。関節リウマチは、血液検査、特にリウマチ因子試験で診断される。本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子で処置される自己免疫疾患のいくつかの例としては、限定するものではないが、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、セリアック病(coeliac disease)、シャーガス病、チャーグ・ストラウス症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病、皮膚筋炎、1型糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本病、化膿性汗腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患(IBD)、間質性膀胱炎、紅斑性狼蒼、限局性強皮症、多発性硬化症、重症筋無力症、ナルコレプシー、神経ミオトニー(neuromyotonia)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、リウマチ性多発筋痛、原発性胆汁性肝硬変症、乾癬、関節リウマチ、統合失調症、強皮症、シェーグレン症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても公知)、高安動脈炎、脈管炎、白斑およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
本明細書に記載されるペプチド模倣大環状分子で処置される炎症性障害の他のタイプのいくつかの例としては、限定するものではないが、アレルギー、例としては、アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎、皮膚アレルギー(蕁麻疹(urticaria)/じんましん(hives)、血管性浮腫、アトピー性皮膚炎)、食物アレルギー、薬物アレルギー、昆虫アレルギーおよび、肥満細胞症などのまれなアレルギー障害、喘息、関節炎、例としては、変形性関節炎、関節リウマチおよび脊椎関節症、CNSの原発性血管炎、サルコイドーシス、器官移植片拒絶、線維筋痛症、線維症、膵炎および骨盤の炎症性疾患が挙げられる。
本発明のペプチド模倣大環状分子で処置または予防される心臓血管障害(例えば、炎症性障害)の例としては、限定するものではないが、大動脈弁狭窄、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、血栓症、動脈瘤、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心臓突然死、高血圧性心疾患;細動脈硬化症、小血管疾患、腎症、高グリセリド血症、高コレステロール血症、高脂血症、黄色腫症、喘息、高血圧症、気腫および慢性肺疾患などの非冠動脈疾患;あるいは新脈管形成術後の再狭窄、シャント、ステント、合成もしくは天然切除移植片、留置カテーテル、弁または別の移植可能なデバイスの留置などの介入処置を伴う心臓血管状態(「処置による血管外傷」)が挙げられる。好ましい心臓血管障害としては、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、動脈瘤、および発作が挙げられる。
実施例1
本発明のペプチド模倣大環状分子は、例えば、配列RDLADVKSSLVNESで開始して、α,α二置換アミノ酸(例えば、S5オレフィンアミノ酸)で4番目および8番目のアミノ酸を置き換えることによって、調製される。オレフィンメタセシス反応を行い、iからi+4の架橋を含むペプチド模倣大環状分子を生じる。α−へリックス状架橋ポリペプチドを、前に記載(Schafmeisterら、(2000),J.Am.Chem.Soc.122:5891〜5892;Walenskyら、(2004)Science 305:1466〜70;Walenskyら、(2006)Mol Cell 24:199〜210)のとおり、合成し、精製して、分析する。引用文献に開示されるα,α−二置換アミノ酸およびアミノ酸前駆体は、ペプチド模倣大環状分子前駆体ポリペプチドの合成に使用されてもよい。オレフィン側鎖を含むα,α−二置換の非天然のアミノ酸は、Williamsら、(1991)J.Am.Chem.Soc.113:9276;およびSchafmeisterら、(2000)J.Am.Chem Soc.122:5891に従って合成する。架橋ポリペプチドを、対応する合成アミノ酸で2つの天然に存在するアミノ酸(上記参照)を置き換えることによって設計する。置換は、iおよびi+4の位置で、ならびにiおよびi+7の位置で行う。さらなるペプチド模倣大環状分子を、図4a〜図4cに示すとおり合成する。
図4a〜図4cおよび他のいずれかに示される配列では、Nleはノルロイシンを示し、Acは、N−末端アセチルを示し、NH2はC末端アミドを示し、PEG3は、NH−(PEG)−COOH(16原子)リンカー(Novabiochemカタログ番号01−63−0199)を示し、PEG4は、NH−(PEG)−COOH(19原子)リンカー(Novabiochemカタログ番号01−63−0200)を示し、PEG5は、NH−(PEG)−COOH(22原子)リンカー(Novabiochemカタログ番号01−63−0204)を示す。$として示されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全炭素架橋剤によって接続される、(S)−α−(2’−ペンテニル)アラニン(「S5−オレフィンアミノ酸」)である。$r8として示されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全炭素架橋剤によって接続される、(R)−α−(2’−オクテニル)アラニン(「R8オレフィンアミノ酸」)である。
非天然アミノ酸(五炭素のオレフィンアミノ酸のRおよびS鏡像異性体ならびに八炭素のオレフィンアミノ酸のS鏡像異性体)を、核磁気共鳴(NMR)分光法(Varian Mercury 400)および質量分析法(Micromass LCT)により特徴付ける。ペプチド合成を、固相条件、リンクアミドAM樹脂(rink amide AM resin)(Novabiochem)およびFmoc主鎖保護基化学を用いて、手作業または自動ペプチド合成装置(Applied Biosystems,model 433A)のいずれかで行う。天然Fmoc保護アミノ酸(Novabiochem)のカップリングのために、10当量のアミノ酸および1:1:2モル比のカップリング試薬HBTU/HOBt(Novabiochem)/DIEAを使用する。非天然のアミノ酸(4当量)を、1:1:2モル比のHATU(Applied Biosystems)/HOBt/DIEAを用いてカップリングする。オレフィンメタセシスを、脱気したジクロロメタンに溶解した10mMのGrubbs触媒(Blackewellら,1994、上記)(Materia)を用いて、固相において行い、室温において2時間反応させる。メタセシスされた化合物の単離は、トリフルオロ酢酸が媒介する脱保護および切断、粗生成物を得るためのエーテル沈殿、ならびに純粋な化合物を得るための逆相C18カラム(Varian)における高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)(Varian ProStar)により達成する。純粋な生成物の化学組成は、LC/MS質量分析(Agilent 1100 HPLCシステムとインターフェース接続したMicromass LCT)およびアミノ酸分析(Applied Biosystems、モデル420A)により確認する。
実施例2
TCF/β−カテニン競合蛍光偏光アッセイ
以下の実験は、他に注記しない限り、室温で行う。第一に、アッセイ緩衝液は、25mMのTris−Hcl(pH7.5)、200mMの塩化ナトリウム、および5mMのCHAPSから構成して調製する。次に、1MのDTTを、2mMの最終濃度までアッセイ緩衝液に添加する。C末端の6×ヒスチジン−タグつきβ−カテニンのアリコート(アミノ酸134〜668,59KD,Poy F.ら,Nature Structure Bio.,8,1053(2001)を参照のこと)(50.8μMのストック)を氷上で解凍して、アッセイ緩衝液中で125nMの最終濃度まで希釈する。このタンパク質ストックの40μlを96ウェルプレートのうち6つのウェル(これは、ペプチドなしおよびブランクとして機能する)を除いて全てのウェルに添加する。試験の競合因子ペプチドを、アッセイ緩衝液中で1mMのDMSOストックから2×の作業ストックに希釈する。さらなる希釈を、全てのウェル中で一定のDMSO濃度を維持するようにアッセイ緩衝液−DMSO中で行う。この希釈は、ペプチドが40μM〜0.7μM(2×)の作業濃度範囲を有するように行う。基準点(benchmark)として、線形の非架橋ペプチド競合因子を、上記のとおり、ただし、13〜0.7μMという作業濃度範囲で調製する。50μlの競合因子の2×ストックを、事前にアッセイの96ウェルプレートに移してある40μlのタンパク質溶液に添加する。次に、蛍光プローブの10×ストックを調製する。このプローブは、β−アラニンスペーサーとのFAMフルオロフォアのn末端結合体化以外は、線形の基準点のペプチドと同一である。このプローブの1mMのDMSOストックを、25nM(10×)の最終濃度まで連続希釈し、このストックの10μlを、ブランクとして機能するウェル以外は、全てのウェルに添加する。このアッセイプレートを、暗所で保管し、反応を室温で3時間行う。次いで、この反応物を、以下の設定でBiotek Synergy 2で読み取る:100 ms遅延、1ウェルあたり40測定、ここで485/20nMの励起フィルター、および528/20nMの発光フィルターを使用。次いで、データを、Graphpad Prismで分析する。
ペプチド模倣大環状分子は、表5に示されるように、β−カテニンに対する結合能力について試験した。
Figure 2013505300
Figure 2013505300
実施例3
TCf4/b−カテニン活性のHEK293T−3XTCF一過性レポーターアッセイ
1%抗真菌−抗生物質懸濁物を補充したDMEM/10% FBS培地中で培養したHEK−293T細胞を、トランスフェクションの1日前に100mmディッシュあたり4百万個という細胞の密度で播種する。細胞を、インキュベーター中で37℃、5%COで一晩で約60%コンフルエンシーとした。トランスフェクションの日に、細胞を洗浄して、一過性トランスフェクションについての製造業者の指示に従って、3XTCF−lucレポーター(Millipore,カタログ番号21−170)(14.25μg)およびpRL−TK(renilla−Luc)レポーター(Promega Inc,カタログ番号 E224A)(0.75μg)の組み合わせで、Fugene 6トランスフェクション試薬(Roche カタログ番号 11814443001)を3:1(Fugene:DNA)の比で用いて、一過性にトランスフェクトした。簡潔にいうと、45μlのFugeneを、OptiMemに希釈して、全部で15μgのDNAを添加する。複合体を、血清なしの条件下で30分間室温で形成し、DMEM−10% FBS培地(抗生物質も選択用薬剤(selection agent)もなし)中の細胞に添加する。プレートを、24時間インキュベーターに戻す。トランスフェクションにDNAを用いない模擬(mock)トランスフェクションのプレートを、陰性のコントロールとして保持する。トランスフェクションの24時間後、細胞を回収し、洗浄して、カウントする。次いで、細胞を、OptiMem(無血清)またはOptiMemに添加した特定の%のFBSのいずれかの中に、1ウェルあたり20,000個の細胞/60μlという密度で96ウェルプレート中に播種する。ペプチド模倣大環状分子を、滅菌水中で10mMのDMSOストックから8×の作業ストックに希釈する。さらなる希釈を、DMSO−水溶媒中で行って、全てのウェル中でDMSOの最終濃度を一定に保持する。10μlの希釈した大環状分子(10×の所望の濃度)を各々のウェルに添加する。基準点の分子として、NO−アスピリンを、20μM〜0.4μMの濃度範囲で用いる。β−カテニンシグナル伝達経路を、GSK−3b−インヒビターIV(BIO,CalBiochem カタログ番号361550))を2μMの最終濃度で用いて活性化する。TCF活性レポーターを、製造業者の指示どおり、Dual−Glo Luciferaseアッセイシステム(Promega,カタログ番号E2940)を用いて、大環状分子での処理の24時間および/または48時間後にSynergy Multiplateリーダーで測定する。レポーター活性の阻害は、Bioで刺激したDMSO処理細胞に対して算出する。
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載しているが、このような実施形態が例示目的のみで提供されていることは当業者には明らかであろう。多くの変形、改変および置き換えが、本発明から逸脱することなく当業者には思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の種々の代替は、本発明の実践に使用可能であると理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義しており、そして本特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物が本発明の範囲に包含されるものとする。

Claims (21)

  1. 表1のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含むペプチド模倣大環状分子。
  2. 前記ペプチド模倣大環状分子の前記アミノ酸配列が、表1のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%同一である、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
  3. 前記ペプチド模倣大環状分子の前記アミノ酸配列が、表1のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%同一である、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
  4. 前記ペプチド模倣大環状分子の前記アミノ酸配列が、表1のアミノ酸配列からなる群より選択される、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
  5. へリックスを含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
  6. α―へリックスを含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
  7. α,α−二置換アミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
  8. 少なくとも2つのアミノ酸のα位を連結する架橋剤を含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
  9. 前記2つのアミノ酸の少なくとも1つがα,α−二置換アミノ酸である、請求項8に記載のペプチド模倣大環状分子。
  10. 式:
    Figure 2013505300
    を有する、請求項8に記載のペプチド模倣大環状分子であって、式中:
    A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であり;
    Bは、天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
    Figure 2013505300
    、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
    およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
    は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
    Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
    およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
    はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
    Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
    はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
    はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
    は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールであるか、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
    は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールであるか、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
    vおよびwは独立して、1〜1000の整数であり;
    u、x、yおよびzは独立して、0〜10の整数であり;かつ
    nは1〜5の整数である、ペプチド模倣大環状分子。
  11. 前記ペプチド模倣大環状分子内の第1のアミノ酸の骨格アミノ基を第2のアミノ酸に連結させる架橋剤を含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
  12. 式(IV)または(IVa):
    Figure 2013505300
    を有する、請求項11に記載のペプチド模倣大環状分子であって、式中:
    A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であり;
    Bは、天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
    Figure 2013505300
    、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
    およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルであるか、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
    は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
    およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
    はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
    Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
    はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
    はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
    は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
    vおよびwは独立して、1〜1000の整数であり;
    u、x、yおよびzは独立して、0〜10の整数であり;かつ
    nは1〜5の整数である、ペプチド模倣大環状分子。
  13. 請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子を被験体に投与することを含む、前記被験体の癌を処置する方法。
  14. 請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子を被験体に投与することを含む、前記被験体におけるβ−カテニンの活性を調節する方法。
  15. 請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子を被験体に投与することを含む、前記被験体においてβ−カテニンとTCF/LEFタンパク質との間の相互作用をアンタゴナイズする方法。
  16. およびLが、独立してアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンである、請求項10に記載のペプチド模倣大環状分子。
  17. およびLが、独立してC〜C10アルキレンまたはC〜C10アルケニレンである、請求項10に記載のペプチド模倣大環状分子。
  18. およびLが、独立してC〜CアルキレンまたはC〜Cアルケニレンである、請求項16に記載のペプチド模倣大環状分子。
  19. およびRがHである、請求項10に記載のペプチド模倣大環状分子。
  20. およびRが、独立してアルキルである、請求項10に記載のペプチド模倣大環状分子。
  21. およびRがメチルである、請求項10に記載のペプチド模倣大環状分子。
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