JP2013147370A - 炭酸化スラグの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便で、高生産性、かつ低コスト化可能な方法で、製鋼スラグから炭酸化スラグを製造する。
【解決手段】反応槽本体10内において、水16の中に製鋼スラグ15を浸漬させ、撹拌を行いながら、二酸化炭素含有ガス12を水16の中に吹き込み、そのときの水16のpHが11.8以下かつ8.5以上の範囲にきたときに、ガス12の吹き込みを終了する。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭酸化スラグの製造方法に関し、特に、主に製鋼工程で副生するスラグから炭酸化スラグを製造する方法に関する。詳述すれば、本発明は、製鋼プロセスで副生するスラグの有効なリサイクルを促進する技術の開発に関し、さらに具体的には、製鋼スラグの効率的な炭酸化処理、および炭酸化スラグの製造方法に関する。
製鋼プロセスにおいて発生する製鋼スラグは、鉄分、マグネシウム、カルシウム、リン(燐)、珪素といった、生物環境にとって有効なミネラルを含む。例えば、脱リンスラグのように、リンを含む場合には、肥料としての利用価値が高い。
しかし、一方で、そのようなスラグは、再利用にあたって、遊離性カルシウムに起因するアルカリ水の生成、海水の白濁などの問題を引き起こし、生物などの環境に悪影響を与える可能性がある。
ここで、遊離性カルシウムとは、他の酸化物と結晶体を構成していないCaO(以下、「f−CaO」と記述することもある)である。
遊離性カルシウムを安定化させる有力な方法の1つとして、f−CaOをCaCOとする炭酸化処理がある。炭酸カルシウム(CaCO)は遊離性カルシウムが炭酸化することにより得られ、天然には、炭酸カルシウムを主成分とする大理石、石灰石等として安定に存在する。このため、遊離性カルシウムを炭酸化することにより、環境への影響が小さくなるのは容易に想像できる。このように炭酸化によりスラグ中の遊離性カルシウムを安定化させるという考え方は、化学工学的に自然な発想であり、従来から多くの提案がなされている。
特許文献1には、製鋼スラグを、水の共存下において機械攪拌を付与しつつ、CO含有ガスを供給し、炭酸化反応を行わせる製鋼スラグの処理方法が記載されている。また、製鋼スラグ中の遊離CaOの濃度を1質量%以下とするために、40分から1時間程度の処理を行う技術が開示されている。
特許文献2には、水槽に超音波印加設備を設置することにより、大型の機械攪拌や加圧装置を必要とせずに、製鋼スラグを炭酸化処理する方法が開示されている。
特許文献3には、CO又はCO含有ガスを直径1μm以下の気泡の状態で水中に分散させたナノバブル含有水を製鋼スラグと接触させることによって、製鋼スラグを炭酸化処理する方法が開示されている。
特許文献4には、特許文献3と同様に、CO含有ガスをマイクロバブルとして分散させた水で鉄鋼スラグ粉末の流動層を形成させることによって、鉄鋼スラグを炭酸化処理する方法が開示されている。
特許文献5には、スラグと水との質量比(スラグ/水)を0.6以下として水中に保持した粒状製鋼スラグと、二酸化炭素含有ガスを吹き込み、炭酸イオンを溶解させた水とを、水温を60℃以下に維持し、0.5時間以上接触させることにより、製鋼スラグ粒子表層に炭酸カルシウム層を形成させる製鋼スラグの炭酸化処理方法が開示されている。
特許第4328215号公報 特開2009−057257号公報 特開2010−120782号公報 特開2011−016710号公報 特開2011−051831号公報
しかし、これらの従来技術では、スラグをなるべく円滑に炭酸化処理することに注力されているため、結果として、高額な設備投資や複雑な処理条件やその制御が必要である。このため、工業的規模で広く普及を図るうえでは更なる改善が望まれる。また、これらの従来技術のなかで、粒状スラグと水との溶液に炭酸ガス含有ガスを吹き込む炭酸化処理方法が記載されているものがあるが、炭酸化処理を工業的に実施可能とすることについては一切開示されていない。このことは、製鋼スラグの炭酸化処理(炭酸カルシウムの生成)に関して、生産性の低下及びロスコストを招くという問題を有している。
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、遊離CaOを含むスラグ(以下、製鋼スラグとも云う)を炭酸化処理して炭酸化スラグを製造するにあたり、簡便で、高生産性であり、かつ低コスト化が可能な実用性の高いスラグの炭酸化処理方法を提供することを目的とする。
製鋼スラグを浸漬させた水の中に炭酸ガス含有ガスを吹き込む手法において、炭酸化処理中の反応は下記式(1)及び(2)に示す通りである。
CaO + HO ⇔ Ca(OH) (1)
Ca(OH) + CO ⇔ CaCO + HO (2)
しかし、過剰に二酸化炭素を供給すると、下記式(3)に示す反応のように炭酸水素カルシウムとなり、ほぼ完全に電離して炭酸水素カルシウム溶液となる。
CaCO + HO + CO ⇔ Ca(HCO (3)
ここに、炭酸化スラグの製造という点に着目すると、炭酸化処理の終了判定は非常に重要である。
炭酸化反応が不足の場合には、未反応CaOやCa(OH)が残留し、アルカリ水問題や固結等が生じ、本発明が解決しようとする課題が解決できない。
一方、過剰に二酸化炭素を供給すると、生成した炭酸カルシウムが水溶性の炭酸水素カルシウムとなり、炭酸化スラグの製造法としては、生産性や歩留が低下してロスコストを招くという新たな問題が発生するので、この問題を解決する手法も望まれている。
過不足なく炭酸化処理を行う為には、処理中の製鋼スラグを浸漬させた水からサンプルを採水し、Ca2+、CO 2−、HCO の濃度を分析し、その分析値から炭酸化処理の進行具合を確認する必要があるが、分析値判明までの時間とその費用がかかる為、現実的ではない。
そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、製鋼スラグ粒子を浸漬させた水の中に炭酸ガス含有ガスを吹き込む手法において、浸漬水のpH推移に着目することにより、簡便で、高生産性かつ低コスト化が可能である炭酸化スラグの製造方法が実現できるという知見に至った。
ここに、本発明は、広義には、製鋼スラグを浸漬した水の中に二酸化炭素含有ガスを吹き込み、この二酸化炭素含有ガスの吹き込みを続け、当該水のpHが11.8以下、8.5以上となった時点で二酸化炭素含有ガスの吹き込みを終了することを特徴とする炭酸化スラグの製造方法である。
本発明は、より具体的には、次の通りである。
(1)反応槽内において、製鋼スラグを浸漬させた水に、二酸化炭素含有ガスの吹き込みを行うこと、前記反応槽内において、二酸化炭素含有ガスを前記水の中に吹き込みながら、前記製鋼スラグと水との撹拌を行うこと、前記二酸化炭素ガスの吹き込みおよび撹拌を行っている間、当該水のpHを測定すること、そして、pHの測定値が11.8以下かつ8.5以上の範囲内になったときに、前記二酸化炭素含有ガスの吹き込みを終了することを特徴とする、製鋼スラグからの炭酸化スラグの製造方法。
(2)前記製鋼スラグの粒度は粒径40mm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の炭酸化スラグの製造方法。
(3)前記水と前記製鋼スラグとの質量比は、製鋼スラグ/水として、0.10以上、1.0以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の炭酸化スラグの製造方法。
(4)前記攪拌は、前記反応槽内に固定された攪拌羽または前記水の中に設けられたインペラを用いて行なわれ、前記反応槽またはインペラの毎分あたりの回転数は10rpm以上、50rpm以下であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の炭酸化スラグの製造方法。
本発明によれば、製鋼スラグを炭酸化処理して炭酸化スラグを製造するにあたり、簡便で、高生産性であり、かつ低コスト化が可能な炭酸化スラグの製造方法を提供することができる。
本発明に係る製鋼スラグからの炭酸化スラグの製造方法に用いる反応槽の模式図である。
本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る製鋼スラグ15の炭酸化処理に用いる反応槽1の模式図である。反応槽1は、反応槽本体10、攪拌羽11、二酸化炭素含有ガス12を槽内の水中に吹き込むガス吹き込み管13、pH電極14を備える。図示例では、反応槽本体10の内部には攪拌羽11が設けられており、反応槽が回転するようになっている。
ガス吹き込み管13は、反応槽本体10に導入された水16に二酸化炭素含有ガス12を吹き込む。pH電極14は、炭酸化処理の終了判定で必要な水16のpHを測定する。図中、符号20はデータ処理装置を示す。
本発明に係る製鋼スラグ15からの炭酸化スラグ製造方法は、反応槽本体10内に製鋼スラグ15と水16とを導入し、水16の中に製鋼スラグ15を浸漬させること、反応槽本体10内において二酸化炭素含有ガス12を水16の中に吹き込みながら、製鋼スラグ15および水16を攪拌すること、そして、撹拌している最中の水16のpHを測定し、pHが11.8以下かつ8.5以上の範囲内となったとき二酸化炭素含有ガス12の吹き込みを終了することからなる。以下、詳述する。
まず、反応槽本体10内に製鋼スラグ15と水16とを導入し、原料となる製鋼スラグ15を水16中に浸漬させる。製鋼スラグ15は、遊離性カルシウムを含有するものであり、溶銑予備処理スラグ(脱硫スラグ、脱珪スラグ、脱リンスラグ)、転炉スラグ、電気炉スラグ、ステンレススラグ等が例示されるが、溶鋼を溶製するために利用可能なあらゆる精錬容器で形成されたスラグである。製鋼スラグ15の粒度は、反応性を向上させる観点から直径40mm以下であることが好ましく、炭酸化されたスラグの再利用先でのハンドリングを考慮すると5mm以下であることがさらに好ましい。
水16としては、例えば、水道水、純水等が挙げられる。反応槽本体10には、浸漬した製鋼スラグ15が肉眼で見えなくなる程度の量が導入されている。反応槽本体10に導入された水16と製鋼スラグ15との質量比は、製鋼スラグ/水として、0.10以上であり1.0以下であることが好ましい。質量比が0.10より小さいと、製鋼スラグ15の質量と比較して水16の質量が多くなるので、設備や動力が必要以上に過剰になるためである。一方、質量比が1.0を超えると、撹拌操作等において製鋼スラグ15が安定に水16中に浸漬できない可能性がある。より好ましくは、0.25〜0.40である。
次に、反応槽本体10内において二酸化炭素含有ガス12を水16の中に吹き込みながら、製鋼スラグ15および水16を攪拌する。図1に示すように、製鋼スラグ15および水16の攪拌は、反応槽本体10が回転することにより攪拌羽11で行われる。攪拌は、攪拌羽11の代わりにインペラを反応槽本体10内に設けて行ってもよい。
攪拌が反応槽本体10を用いて行われる場合、反応槽本体10の毎分あたりの回転数は、10rpm以上であり50rpm以下であることが好ましい。毎分あたりの回転数が10rpmより小さいと撹拌力が十分でなく炭酸化処理が十分に進まないおそれがある。一方、毎分あたりの回転数が50rpmを超えると、設備や動力が必要以上に過剰となるとともに、効果が飽和することになる。攪拌がインペラを用いて行われる場合、インペラの径にもよるが、概ね反応槽本体10の回転数と同程度の回転数で行う。
攪拌している最中の水16のpHを測定し、pHが11.8以下かつ8.5以上の範囲内で二酸化炭素含有ガス12の吹き込みを終了し、炭酸化処理を終了する。
攪拌している最中の水16のpHは、11.8以下であり8.5以上であることが好ましい。
pHが11.8より大きいと未反応CaOやCa(OH)が残留し、アルカリ水問題や固結が発生してしまう。一方、pHが8.5より小さいと、一旦生成した炭酸カルシウムが水溶性の炭酸水素カルシウムとなってしまう。
このように、本発明によれば、製鋼スラグ15の炭酸化処理中に水16のpHを測定し、所定の範囲に入ったときに二酸化炭素含有ガス12の吹き込みを終了させるため、製鋼スラグ15の炭酸化処理を過不足なく行うことができる。また、本実施の形態では、従来の攪拌装置1にpH電極14を設けるだけでよく、また、攪拌している最中の水16のpH値に応じて炭酸化処理を終了する。このため、製鋼スラグ15を炭酸化処理するにあたり、簡便で、高生産性であり、かつ低コスト化を実現することが可能となる。
本発明にあっては、pHが8.5から11.8の範囲は、反応が前述の式(2)から(3)へ遷移する領域で、その範囲内でガス吹込みを停止すれば、過不足なく炭酸化処理を終了でき、生産性が高まり、低コストが実現できる。
本例では、製鋼スラグとして、脱リン工程で発生した下記表1に示す物性の脱リンスラグを使用した。この脱リンスラグ45kgと水道水(水16)140kgを図1に示す反応槽本体10(コンクリートミキサ)に導入し、反応槽本体10を15rpmで回転させつつ、純度99.99%の二酸化炭素ガスを100Nl/minで吹き込み、炭酸化処理を行った。
Figure 2013147370
表2に脱リンスラグの炭酸化処理中のpH推移及び成分推移を示す。
Figure 2013147370
処理時間が45分以下では、pHは12.4〜12.5とほぼ一定で、Ca2+=702〜749mg/L、CO 2−=3.3〜7.2mg/Lであった。またHCO <0.1mg/Lでほとんど存在しなかった。この領域では、前述の式(1)(2)に示すように、スラグと水道水で生成したCa(OH)と吹き込んだCOが反応し、CaCOが生成するので、Ca2+やCO 2−は存在するが、HCO はほとんど存在しない。
処理開始が45分から75分以下では、pHは12.4から8.5に低下し、Ca2+が702から20.2mg/Lに減少し、CO 2−は3.3から0.5mg/Lに減少した。HCO は0.1未満から34.1mg/Lに増加した。この領域では、スラグからのCa(OH)の供給が停滞し、反応が前述の式(2)から(3)に変化する為、Ca2+、CO 2−及びHCO が存在し、その濃度が最小となった。
処理時間が75分から180分までは、pHは8.5から6.8に低下し、Ca2+が20.2から48.9mg/Lに増加し、HCO 2−は34.1から541mg/Lに増加した。また、CO 2−は0.2から0.5mg/Lで低位一定であった。この領域における反応は、前述の式(3)が支配的で、吹き込んだCOは生成したCaCOと反応してCa(HCOを生成し、生成したCa(HCOが解離してCa2+とHCO となり増加する。
以上のことから、8.5≦pH≦11.8で処理終了するのが最も効率が良いことが確認できた。
次いで、上述の炭酸化処理後の炭酸化スラグを回収し、この炭酸化スラグ10gに純水を通水し、通水後の溶液のpHを測定した。また、比較のため、炭酸化処理を行っていない脱リンスラグについても同様のpH測定を行った。pH測定は市販の測定器((株)堀場製作所製D−54S)を使用して行った。
炭酸化処理後の炭酸化スラグの物性を表3に示す。炭酸化処理後のスラグの通水試験結果を表4に示す。炭酸化処理を行っていない脱リンスラグの通水試験結果を表5に示す。表4及び表5中、液固比とは、スラグの質量とスラグを通過した純水の質量との比(純水/スラグ)である。
Figure 2013147370
Figure 2013147370
Figure 2013147370
表4より、炭酸化スラグでは通水初期から概ねpH<10を示した。また、表5より、炭酸化処理を行っていない脱リンスラグでは通水初期からpH>11の高い推移を示した。このように、炭酸化スラグでは通水量を増加させてもpHの増加は認められず、長期的なアルカリ溶出も低減できていることが確認された。
1 反応槽
10 反応槽本体
11 攪拌羽
12 二酸化炭素含有ガス
13 二酸化炭素含有ガス吹き込み管
14 pH電極
15 製鋼スラグ
16 水

Claims (4)

  1. 反応槽内において、製鋼スラグを浸漬させた水に、二酸化炭素含有ガスの吹き込みを行うこと、前記反応槽内において、二酸化炭素含有ガスを前記水の中に吹き込みながら、前記製鋼スラグと水との撹拌を行うこと、前記二酸化炭素ガスの吹き込みおよび撹拌を行っている間、当該水のpHを測定すること、そして、pHの測定値が11.8以下かつ8.5以上の範囲内になったときに、前記二酸化炭素含有ガスの吹き込みを終了することを特徴とする、製鋼スラグからの炭酸化スラグの製造方法。
  2. 前記製鋼スラグの粒度は粒径40mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭酸化スラグの製造方法。
  3. 前記水と前記製鋼スラグとの質量比は、製鋼スラグ/水として、0.10以上、1.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸化スラグの製造方法。
  4. 前記攪拌は、前記反応槽内に固定された攪拌羽または前記水の中に設けられたインペラを用いて行なわれ、前記反応槽またはインペラの毎分あたりの回転数は10rpm以上、50rpm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭酸化スラグの製造方法。
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