JP2010271590A - 回折光学素子を用いた光学系および装置 - Google Patents

回折光学素子を用いた光学系および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】広い波長域で色収差の良好な補正が可能であり、使用波長域内で高い解像性能を得ることができるようにすること。
【解決手段】回折効率が、光学系全体としての使用波長域での中心波長よりも短波長側で最適化されている回折光学素子11を用いる。回折効率の低下の度合いが大きい傾向にある短波長側において回折光学素子11の回折効率が最適化されていることで、広い波長域で使用する場合であっても、短波長側から長波長側まで十分な解像性能が得られる。回折光学素子11は、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.15≦(λdoe−λmin)/(λmax−λmin)≦0.40 ……(1)
ただし、λdoeは回折光学素子11の最適化波長、λminは光学系全体としての使用波長域での最短波長、λmaxは光学系全体としての使用波長域での最長波長とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、カラースキャナ等に用いられるカラー画像読取レンズ、デジタルスチルカメラやカメラ付き携帯電話機に搭載される撮像レンズ、車載用の撮像レンズ、および監視カメラに搭載される撮像レンズに回折光学素子を用いた光学系、およびその光学系を備えた装置に関する。
カラー原稿などの被写体の像を例えば撮像素子に結像し被写体のカラー情報を読み取るレンズにおいては、各色の画像情報が固体素子上で同等の大きさと同等のコントラストを持つことが望ましい。このような性能をレンズ系において実現するためには光軸方向の各波長による結像位置の差である軸上色収差と、光軸に垂直な方向の各波長による結像位置の差である倍率色収差を良好に補正すれば良い。レンズ系における色収差補正は一般には分散の小さな正レンズと分散の大きな負レンズとの組み合わせにより可能であり、例えばこの組み合わせによる接合レンズなどが用いられる(特許文献1ないし5参照)。
特開平7−151964号公報 特開2000−89108号公報 特開2001−108897号公報 特開平9−127413号公報 特開平11−64727号公報
しかしながら、波長域が広くなったり、また、各波長について結像面で高いコントラストを得ることが求められると、接合レンズなどの組み合わせレンズを複数用いなければならずレンズ枚数が増え大型化してしまう。異常分散性を持つ材料をレンズに使うことによって、レンズ枚数を抑えつつ同等の色収差補正を行うことが可能であるが、この種のレンズは加工性が悪く材料費も高いという問題がある。
一方、回折光学素子は負の大きな分散を持ちこれがレンズ材料の持つ分散と逆で異なるため、結像レンズと組み合わせることにより通常のレンズ材料の組み合わせだけのときよりも色収差を効果的に補正することができる。回折光学素子は輪帯状の鋸歯形状を有し、その鋸歯形状部分の光軸方向の深さにより回折する最適化波長が決まる。詳しくは波長λの光を最適化するためには、回折光学素子の基板の屈折率をnとしたとき鋸歯形状部分の深さはλ/(n−1)で決まる。回折光学素子を光学系に組み込む場合、一般には最適化波長を光学系全体の使用波長域での中心波長に合わせることが考えられる。しかしながら、最適化波長以外の波長での回折効率を考慮した場合、使用波長域の中心波長を回折光学素子の最適化波長にすることが、光学系全体として最適とは限らない。回折光学素子は最適化された波長以外では回折効率が低下するが、その回折効率の低下の度合いは最適化波長に対して短波長側と長波長側とで異なる傾向がある。特に短波長側での回折効率の低下の度合いが大きい傾向がある。このため、特に広い波長域で使用する場合には、短波長側で十分な解像性能が得られなくなるおそれがある。回折光学素子を光学系に組み込む場合において、従来では、そのような回折効率の傾向を考慮した設計はなされていなかった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、広い波長域で色収差の良好な補正が可能であり、使用波長域内で高い解像性能を得ることができるようにした、回折光学素子を用いた光学系および装置を提供することにある。
本発明による回折光学素子を用いた光学系は、回折効率が、光学系全体としての使用波長域での中心波長よりも短波長側で最適化されている回折光学素子を備えたものである。
本発明による光学系では、回折効率の低下の度合いが大きい傾向にある短波長側において回折光学素子の回折効率が最適化されていることで、広い波長域で使用する場合であっても、短波長側から長波長側まで十分な解像性能が得られる。
なお、本発明において「回折効率」とは、光学系として使用する回折光の光束の入射光束に対する比(回折光束/入射光束)のことをいう。
本発明による光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.15≦(λdoe−λmin)/(λmax−λmin)≦0.40 ……(1)
ただし、λdoeは回折光学素子の最適化波長、λminは光学系全体としての使用波長域での最短波長、λmaxは光学系全体としての使用波長域での最長波長とする。
本発明による光学系において、使用波長域内の全ての波長で回折光学素子による1次回折光を使用することが好ましい。回折光学素子は、一方の面に輪帯状の回折面が形成された1枚の平行平面基板から構成されていることが好ましい。
本発明による光学系は、例えば、全体として結像レンズで構成されている。本発明による光学系が結像レンズである場合、絞りの近傍に回折光学素子が配置されていることが好ましい。
本発明による光学系において、光学系全体としての使用波長域が可視領域を含む場合、回折光学素子は、少なくとも可視領域内で80%以上の回折効率が得られるように最適化されていることが好ましい。
本発明による装置は、本発明による回折光学素子を用いた光学系と、この光学系によって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子とを備えたものである。
本発明による装置では、本発明の光学系によって得られた高解像の光学像に基づいて高解像の撮像信号が得られる。
本発明の光学系によれば、光学系全体としての使用波長域での中心波長よりも短波長側で回折光学素子を最適化するようにしたので、広い波長域で色収差の良好な補正が可能であり、使用波長域内で高い解像性能を得ることができる。
また、本発明の装置によれば、上記本発明の高解像性能の光学系によって形成された光学像に応じた撮像信号を出力するようにしたので、高解像の撮影画像を得ることができる。
本発明の一実施の形態に係る回折光学素子を用いた光学系の一例としての画像読取レンズの構成例を示すものであり、実施例1に対応するレンズ断面図である。 本発明の一実施の形態に係る回折光学素子を用いた光学系の他の例としての撮像レンズの構成例を示すものであり、実施例2に対応するレンズ断面図である。 回折光学素子の構成例を示すものであり、(A)は回折光学素子の平面図、(B)は回折光学素子の断面図である。 使用波長域が可視領域である場合の回折光学素子の最適化についての説明図である。 使用波長域が可視領域と近赤外領域である場合の回折光学素子の最適化についての説明図である。 回折光学素子における最適化波長と回折効率との関係を示す特性図である。 実施例1に係る画像読取レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。 実施例1に係る画像読取レンズの横収差を示す収差図である。 実施例2に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。 実施例2に係る撮像レンズの横収差を示す収差図である。 図1に示した画像読取レンズが適用される装置の一例としての画像読取装置の構成例を示す外観図である。 図2に示した撮像レンズが適用される撮像装置の一例としてのカメラ付き携帯電話機の構成例を示す外観図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る回折光学素子を用いた光学系の一例として、画像読取レンズの構成例を示している。この構成例は、後述の第1の数値実施例のレンズ構成に対応している。図2は、本発明の一実施の形態に係る回折光学素子を用いた光学系の他の例として、撮像レンズの構成例を示している。この構成例は、後述の第2の数値実施例のレンズ構成に対応している。
図1に示した画像読取レンズは、例えばカラースキャナに用いられるものであり、カラー原稿などの被写体の像を撮像素子に結像して被写体のカラー情報を読み取るものである。使用波長域は主に可視域となっている。この画像読取レンズは、光軸Z1に沿って物体側から順に、第1レンズG1と、第2レンズG2と、第3レンズG3と、第4レンズG4と、第5レンズG5とを備えている。この画像読取レンズの結像面には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子が配置される。撮像素子は、この画像読取レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力するものである。第1レンズG1の物体側には、原稿押さえガラスGC1が配置されている。第5レンズG5の像側には、撮像素子用のカバーガラスGC2が配置されている。
この画像読取レンズにおいて、第2レンズG2と第3レンズG3との間には、開口絞りStと、この開口絞りStの像側近傍に配置された回折光学素子11とが設けられている。
図2に示した撮像レンズは、使用波長域として可視域と近赤外域とを含み、例えば暗視機能を有する監視カメラに搭載されて使用されるものである。この撮像レンズは、光軸Z1に沿って物体側から順に、第1レンズG1と、第2レンズG2と、第3レンズG3と、第4レンズG4とを備えている。第4レンズG4の像側には、撮像素子用のカバーガラスGCが配置されている。
この撮像レンズにおいて、第3レンズG3と第4レンズG4との間には、開口絞りStと、この開口絞りStの像側近傍に配置された回折光学素子12とが設けられている。
なお、本実施の形態の最大の特徴は回折光学素子を用いた光学系の最適化にあり、適用される光学系は図1に示した画像読取レンズや図2に示した撮像レンズに限定されず、種々の光学系に用いることができる。特に、色収差の補正が必要とされる結像レンズ光学系に好適に用いることができる。例えば可視光に加えて近赤外光を利用して昼夜兼用で使用されるようなドアホン用カメラや車載用カメラなどに搭載される撮像レンズに適用可能である。また、撮像レンズとしては監視カメラ用途の他、例えばデジタルスチルカメラやカメラ付き携帯電話機に搭載される撮像レンズにも適用可能である。また、使用波長は連続的である場合に限らず、飛び飛びのピーク波長を持ったものであっても良い。
図11は、図1に示した画像読取レンズが適用される装置の一例として、画像読取装置(スキャナ)の構成例を示している。この画像読取装置10は、反射原稿式のイメージスキャナであり、読み取り対象の原稿2が載置される原稿載置台3と、原稿載置台3上の原稿2へ向けて照明光を発する例えばライン状の光源5と、原稿2の画像を取り込むCCD等の撮像素子4とを備えている。画像読取レンズ1Aは、原稿2と撮像素子4との間に配置される。この画像読取レンズ1Aとして図1に示した画像読取レンズが適用される。この画像読取装置10では、光源5が、その延在方向と直交する方向(矢印Aで示した方向)に沿って原稿載置台3の上を平行移動しながら原稿2を全面に亘って順次照射する。原稿2からの反射光は、画像読取レンズ1Aによって撮像素子4上に結像され、撮像素子4によって画像情報として取り込まれる。
なお、図1に示した画像読取レンズは、反射原稿式に限らず透過原稿式の画像読取装置にも適用可能である。透過原稿式の場合、原稿2として例えばネガフィルムまたはポジフィルム等の透過原稿が透明な原稿載置台に載置される。そして、原稿載置台の裏面側から透過原稿に向けて照明光が照射され、その透過光が画像読取レンズによって撮像素子4上に結像され、撮像素子4によって画像情報として取り込まれる。
図12(A),(B)は、図2に示した撮像レンズが適用される撮像装置の一例として、カメラ付き携帯電話機を示している。図12(A),(B)に示したカメラ付き携帯電話機は、上部筐体2Aと下部筐体2Bとを備え、両者が図12(A)の矢印方向に回動自在に構成されている。下部筐体2Bには、操作キー21などが設けられている。上部筐体2Aには、カメラ部1(図12(B))および表示部22(図12(A))などが設けられている。表示部22は、LCD(液晶パネル)やEL(Electro-Luminescence)パネルなどの表示パネルによって構成されている。表示部22は、折りたたみ時に内面となる側に配置されている。この表示部22には、電話機能に関する各種メニュー表示のほか、カメラ部1によって撮影された画像などを表示することが可能となっている。カメラ部1は、例えば上部筐体2Aの裏面側に配置されている。ただし、カメラ部1を設ける位置は、これに限定されない。
カメラ部1は、本実施の形態に係る撮像レンズと、撮像レンズの結像面に対応する位置に設けられた撮像素子(図示せず)とを備えている。カメラ部1では、撮像レンズによって形成された光学像が撮像素子によって電気的な撮像信号に変換され、その撮像信号が、機器本体側の信号処理回路に出力される。このカメラ付き携帯電話機では、本実施の形態に係る撮像レンズを用いていることで、収差補正の十分なされた高解像の撮像信号が得られる。撮像機器本体側では、その撮像信号に基づいて高解像の画像を生成することができる。
図3(A),(B)は、回折光学素子11,12の構成例を示している。回折光学素子11,12は、図3(B)に示したように、例えば一方の面に輪帯状の回折面が形成された1枚の平行平面基板から構成されている。回折面は、図3(A),(B)に示したように、回折構造として例えば輪帯状の鋸歯形状を有し、その鋸歯形状部分の光軸方向の深さdにより回折する最適化波長が決まる。詳しくは波長λの光を最適化するためには、回折光学素子11,12の基板の屈折率をnとしたとき鋸歯形状部分の深さdは、
d=λ/(n−1)
で決まる。
図4は、使用波長域が可視領域である回折光学素子11の最適化の概念を示している。図5は、使用波長域が可視領域と近赤外領域である回折光学素子12の最適化の概念を示している。横軸は波長、縦軸は回折効率を示す。λdoeは回折光学素子11,12の最適化波長、λminは光学系全体としての使用波長域での最短波長、λmaxは光学系全体としての使用波長域での最長波長を示す。
図4および図5に示したように、回折光学素子11,12は、回折効率が、光学系全体としての使用波長域での中心波長(λmin+λmax)/2よりも短波長側で最適化されている。好ましくは、以下の条件式を満足すると良い。
0.15≦(λdoe−λmin)/(λmax−λmin)≦0.40 ……(1)
具体的には、可視光での使用を考えた場合、波長域は通常400nm〜700nm程度である。この波長域において良好な色収差の補正を行うためには、回折光学素子11の回折構造を波長域の中央値である550nmよりも短い波長で最適化すると良い。各波長に対してどの程度の回折効率が必要であるかは光学系の要求する解像仕様によってまちまちであるが、図1に示したようなカラー画像読取レンズに用いる場合には、RGBの各波長でそれぞれ高い解像力が必要となる。回折効率が高いほど結像に寄与する光線が増えるため高解像化が可能になる。よって図1に示したようなカラー画像読取レンズに用いる場合には、図4に示したように各波長に対し回折効率がおよそ80%以上であることを目安として回折光学素子11を最適化すると良い。また、後述するように回折構造の段差に対する感度は短波長域の方が高いので、製造誤差を考慮すれば短波長側の回折効率が長波長側の回折効率よりも高くなるように設計することが望ましい。
なお、ここでいう「回折効率」とは、光学系として使用する回折光の光束の入射光束に対する比(回折光束/入射光束)のことをいう。
また例えば図2に示したような近赤外光による暗視機能を含む監視カメラレンズに用いる場合には、可視域に対しては解像性が要求されるが、近赤外域における要求解像はその用途から緩和できる場合が多い。よって図2に示したような監視カメラレンズに用いる場合には、図5に示したように可視域では回折効率がおよそ80%以上であることを、近赤外域では回折効率がおよそ50%以上であることを目安として回折光学素子12を最適化すると良い。
次に、以上のように構成された光学系の作用および効果を説明する。なお、本実施の形態における光学系は、回折光学素子11,12の最適化に特徴があるので、以下では回折光学素子11,12による作用および効果を説明する。
図6は、回折光学素子11,12の最適化波長と回折効率との関係を示している。横軸は波長、縦軸は回折効率(最大値を1に規格化してある)を示す。図6では、回折光学素子11,12の回折面の溝の深さd(図3(B)参照)の変化による各波長の回折効率の計算値を示している。この回折効率の計算値は、一定の深さdの鋸歯形状が等ピッチで連続して並んでいる回折構造に平行光が入射されたときのモデル計算値である。実使用時における光束においては、回折面に角度を持って入射する光線や回折ではなく屈折する光線もあるため、実際には図6のような回折効率にはならないが、特性としての傾向はこのモデル計算値と大きく変わらない。
上述したように、回折光学素子11,12における鋸歯形状部分の溝の深さdは最適化する波長で決まるが、回折光学素子11,12を広い波長域で使用する場合は最適化された波長以外の回折効率が低下するため、回折光学素子11,12を結像レンズに使用するときは最適化された波長以外の波長での解像力の低下を考慮する必要がある。回折光学素子11,12では、鋸歯形状部分の溝の深さdによって各波長で光路長変化が起きるが、波長が長いほどこの光路長変化に対する感度が鈍くなる。このため、図6に示したように、回折効率の低下の度合いは最適化波長に対して短波長側と長波長側とで異なる傾向があり、特に短波長側での回折効率の低下の度合いが大きい傾向がある。このため、回折光学素子11,12を結像レンズに組み込んで使用する場合には短波長側に重点を置いて最適化することにより広い波長域で良好な性能を得ることができる。本実施の形態においては、回折光学素子11,12の回折効率が、光学系全体としての使用波長域での中心波長よりも短波長側で最適化されているので、広い波長域で良好な性能を得ることができる。
特に結像光学系における周縁部の光束は、回折光学素子11,12に対し角度を持って入射する。このため周縁部の光束の各光線が回折面を通過する光路の長さ(光路長)が、中央付近を通過する光路の長さと比べ長くなり、その差分は画角が増すほど著しくなる。よって周縁部の光束ほど光束内の各光線が回折するために必要な適切な位相を付加することができず、適切な回折が起きないため回折効率が低下してしまう。
条件式(1)は、回折光学素子11,12を用いた結像光学系が広い波長域に亘り高い解像力を得るための条件式である。条件式(1)の下限を下回ると回折面の溝の深さdが浅くなり前述の理由で画角が増すほど長波長側の回折効率が低下し、広い波長域で高い解像を得ることができない。また上限を越えると回折面の溝の深さdが深くなり、短波長側の回折効率が低下するため同様に広い波長域で高い解像を得ることができない。よって条件式(1)を満足するように光学系の使用波長域において回折構造の最適化波長を選択することによって、広い波長域で良好な色収差の補正が可能となり、広い波長域で高い解像力を得ることができる。
また、回折光学素子11,12を用いた光学系では、使用波長域内の全ての波長で回折光学素子11,12による1次回折光を使用することが好ましい。1次回折光を利用することにより広い波長域に亘って高い回折効率が得られる。
また、回折光学素子11,12の基板を平行平面板とすることで、回折構造を精度良く形成することができる。また、回折光学素子11,12を開口絞りStの近傍に置くことにより、回折格子の小型化が図れるため、加工難度の軽減が図れる。また基板が平行平面板であることとこれを開口絞りStの近傍に配置することで、中心部から周辺部の各光束において光束内の各光線が光学素子に入射する角度を同程度に保つことができる。このため、各光線に同程度の回折効果を与えることが可能となり収差補正に有利となる。
以上説明したように、本実施の形態に係る光学系によれば、光学系全体としての使用波長域での中心波長よりも短波長側で回折光学素子11,12を最適化するようにしたので、広い波長域で色収差の良好な補正が可能であり、使用波長域内で高い解像性能を得ることができる。また、本実施の形態に係る装置によれば、本実施の形態に係る高解像性能の光学系によって形成された光学像に応じた撮像信号を出力するようにしたので、高解像の撮影画像を得ることができる。
次に、本実施の形態に係る結像レンズの具体的な数値実施例について説明する。
[実施例1]
[表1],[表2]は、図1に示した画像読取レンズの構成に対応する具体的なレンズデータを示している。特に[表1]にはその基本的なレンズデータを示し、[表2]は回折面のデータを示す。[表1]に示したレンズデータにおける面番号Siの欄には、物体面を1番目として、実施例1に係る画像読取レンズについて、像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目の構成要素の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、物体側からi番目の面の曲率半径の値(mm)を示す。面間隔Diの欄についても、同様に物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔(mm)を示す。Neiの欄には、物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との間におけるe線(546.1nm)に対する屈折率の値を示す。νdjの欄には、物体側からj番目の光学要素のd線(587.6nm)に対するアッベ数の値を示す。[表1]にはまた、諸データとして、この画像読取レンズの結像倍率(横倍率)β、および実効Fナンバー(FNO.)の値についても示す。
[表1]のレンズデータにおいて、面番号の左側に付された記号「*」は、そのレンズ面が回折面であることを示す。実施例1に係る画像読取レンズは、回折光学素子11が,1枚の平行平面基板から構成され、その物体側の面S9が回折面となっている。[表2]には、その回折面のデータを示す。回折面のデータとして示した数値において、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数”であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−02」であれば、「1.0×10-2」であることを示す。
この回折面のデータは、以下の位相差関数φ(h)における係数a1〜a5の値を示している。位相差関数φ(h)は、光軸Z1からの任意の高さhにおいて与える位相差を表している。
φ(h)=a1・h2+a2・h4+a3・h6+a4・h8+a5・h10
この実施例1の画像読取レンズの使用波長域は、440nm〜650nmである。すなわち、
λmin=440nm、λmax=650nm
また、回折光学素子11の最適化波長λdoeは、
λdoe=520nm
である。条件式(1)の値は、
(λdoe−λmin)/(λmax−λmin)=0.33
となり、条件式(1)の条件範囲内にある。
Figure 2010271590
Figure 2010271590
[実施例2]
[表3]〜[表5]は、図2に示した撮像レンズの構成に対応する具体的なレンズデータを示している。特に[表3]にはその基本的なレンズデータを示し、[表4]および[表5]にはその他のデータを示す。[表3]に示したレンズデータにおける面番号Siの欄には、この実施例2に係る撮像レンズについて、最も物体側の構成要素の面を1番目として、像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、物体側からi番目の面の曲率半径の値(mm)を示す。面間隔Diの欄についても、同様に物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔(mm)を示す。Neiの欄には、物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との間におけるd線に対する屈折率の値を示す。νdjの欄には、物体側からj番目の光学要素のd線に対するアッベ数の値を示す。[表3]にはまた、諸データとして、この撮像レンズのFナンバー(FNO.)の値についても示す。
[表3]のレンズデータにおいて、面番号の左側に付された記号「*」は、そのレンズ面が回折面であることを示す。実施例2に係る撮像レンズは、回折光学素子12が,1枚の平行平面基板から構成され、その像側の面S9が回折面となっている。[表4]には、その回折面のデータを示す。この回折面のデータは、上述の位相差関数φ(h)における係数a1〜a5の値を示している。
この実施例2に係る撮像レンズの使用波長域は、440nm〜870nmである。すなわち、
λmin=440nm、λmax=870nm
また、回折光学素子12の最適化波長λdoeは、
λdoe=550nm
である。条件式(1)の値は、
(λdoe−λmin)/(λmax−λmin)=0.26
となり、条件式(1)の条件範囲内にある。
また、[表3]のレンズデータにおいて、面番号の左側に付された記号「**」は、そのレンズ面が非球面形状であることを示す。実施例2に係る撮像レンズは、第2レンズG2の両面S3,S4と、第4レンズG4の両面S10,S11とが非球面形状となっている。[表3]の基本レンズデータには、これらの非球面の曲率半径として、光軸近傍の曲率半径の数値を示している。
[表5]には実施例2に係る撮像レンズにおける非球面データを示す。非球面データとして示した数値において、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数”であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−02」であれば、「1.0×10-2」であることを示す。
実施例2に係る撮像レンズの非球面データとしては、以下の式(A)によって表される非球面形状の式における各係数Bn,Kの値を記す。Zは、より詳しくは、光軸から高さhの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さ(mm)を示す。
Z=C・h2/{1+(1−K・C2・h21/2}+ΣBn・hn ……(A)
(n=3以上の整数)
ただし、
Z:光軸方向の面の深さ(mm)
h:光軸からレンズ面までの距離(高さ)(mm)、h≧0
K:離心率
C:近軸曲率=1/R
(R:近軸曲率半径)
n:第n次の非球面係数
実施例2に係る撮像レンズは、非球面係数Bnとして20次までの次数を適宜有効に用いて表されている。
Figure 2010271590
Figure 2010271590
Figure 2010271590
図7(A)〜(C)はそれぞれ、実施例1に係る画像読取レンズにおける球面収差、非点収差、およびディストーション(歪曲収差)を示している。また、図8(A)〜(D)はタンジェンシャル方向の横収差、図8(E)〜(G)はサジタル方向の横収差を示している。各収差図には、540nmを基準波長とした収差を示す。球面収差図および横収差図には、445nmおよび650nmについての収差も示す。非点収差図において、実線はサジタル方向、破線はタンジェンシャル方向の収差を示す。FNO.はF値、ωは半画角を示す。
同様にして、実施例2に係るズームレンズについての諸収差を図9(A)〜(C)、図10(A)〜(D)および図10(E)〜(G)に示す。実施例2の各収差図には、540nmを基準波長とした収差を示す。球面収差図および横収差図には、445nmおよび650nmに加えて、近赤外域の870nmについての収差も示す。非点収差図において、実線はサジタル方向、破線はタンジェンシャル方向の収差を示す。FNO.はF値、ωは半画角を示す。
以上の各数値データおよび各収差図から分かるように、各実施例について、収差が良好に補正され、良好な光学性能が得られている。
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
GC…カバーガラス、GC1…原稿押さえガラス、GC2…カバーガラス、Gi…第iレンズ(物体側からi番目のレンズ)、St…開口絞り、Z1…光軸。

Claims (8)

  1. 回折効率が、光学系全体としての使用波長域での中心波長よりも短波長側で最適化されている回折光学素子を備えた
    ことを特徴とする回折光学素子を用いた光学系。
  2. 以下の条件式を満足する
    ことを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子を用いた光学系。
    0.15≦(λdoe−λmin)/(λmax−λmin)≦0.40 ……(1)
    ただし、
    λdoe:回折光学素子の最適化波長
    λmin:光学系全体としての使用波長域での最短波長
    λmax:光学系全体としての使用波長域での最長波長
    とする。
  3. 使用波長域内の全ての波長で前記回折光学素子による1次回折光を使用する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の回折光学素子を用いた光学系。
  4. 前記回折光学素子は、一方の面に輪帯状の回折面が形成された1枚の平行平面基板から構成されている
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回折光学素子を用いた光学系。
  5. 光学系全体として結像レンズを構成している
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回折光学素子を用いた光学系。
  6. 前記結像レンズは絞りを有し、
    前記絞りの近傍に前記回折光学素子が配置されている
    ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の回折光学素子を用いた光学系。
  7. 光学系全体としての使用波長域が可視領域を含み、
    前記回折光学素子は、少なくとも可視領域内で80%以上の回折効率が得られるように最適化されている
    ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の回折光学素子を用いた光学系。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光学系と、
    前記光学系によって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子と
    を備えたことを特徴とする回折光学素子を用いた装置。
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