JP2010080931A - 電子部品モジュールおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 製造工程を短縮することができ、しかも電子部品の高温動作を行なうことが可能な信頼性の高い電子部品モジュールを提供する。
【解決手段】 放熱板6と、放熱板6により凹部4aが塞がれて内側空間Sを形成している蓋体4と、内側空間Sから蓋体4を貫通して外部へ導出された接続端子3と、内側空間Sに放熱板6と間隔をあけて収納され、電子部品1が実装されているとともに接続端子3に接続された配線基板5と、内側空間Sに一様に充填された樹脂7とを備えた電子部品モジュールである。従来の電子部品モジュールの構成において存在した、配線基板の放熱板への接着に用いられる樹脂と収納容器内の封止に使用される樹脂との界面が形成されないので、電子部品1の発熱による熱膨張と熱収縮のサイクルによる界面での亀裂の発生を防ぐことができ、信頼性の高い電子部品モジュール10を提供することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子部品の高温動作を行なうことができ、製造工程が簡略化できる、信頼性の高い電子部品モジュールおよびその製造方法に関するものである。
自動車のエンジンコントロールユニット(ECU)および各種装置の制御ユニットに使用される電子部品モジュールは、自動車のエンジンルーム内に搭載されるため、高い温度条件下で使用される。また、自動車用の電子部品モジュールは、パソコンにあるいは携帯電話等の通信機器に使用される電子部品モジュールと比較して、制御用の電子部品において大電流を消費するため発熱量が大きい。さらに、自動車用の電子部品モジュールの中でも、パワーアシストハンドルやモータードライブ等の制御に使用される電子部品モジュールは、制御用の電子部品に特に大きな電流が流れるので発熱量が増大する。
このような自動車用の従来の電子部品モジュールとしては、例えば樹脂封止型電子装置として、電子部品が実装されて電子回路が形成された配線基板を接着剤によって放熱板に接着し、電子部品と配線基板と放熱板とをモールド樹脂中に封止する構造が採用されている(例えば、特許文献1を参照。)。電子部品からの発熱量が大きい場合であっても、この電子装置における構造のように配線基板に接着された放熱板を用いることによって、電子部品で発生した熱を放熱板によって外部へ逃がすことができる。
特許第3866880号公報
特許文献1に開示されたようなモールド樹脂中に封止された電子部品モジュールは、そのままではモールド樹脂が耐環境性に良好であるとは言えないことから、通常は、耐環境性に優れた樹脂あるいは金属からなる収納容器に、放熱板は外部に良好に放熱できるように収納容器の一部を構成するようにして収納され、必要に応じて収納容器内が配線基板を放熱板に接着する接着剤とは別の封止樹脂で充填されて使用される。
しかしながら、そのように配線基板が放熱板に接着されてなる電子装置を放熱板がその一部を構成するように収納容器に収納して電子部品モジュールとするのは、電子部品モジュールの製造工程が長くなることによって、製造効率を高めるのが難しくなり、そのため低価格化が強く要求されている中で製造コストを低減するのも難しくなるという問題点があった。
また、配線基板が放熱板に接着剤で接着されてなる電子装置を収納容器に収納して、容器内部に封止樹脂を充填した電子部品モジュールにおいては、接着剤の樹脂と封止樹脂との間に界面が形成されることとなり、両者の樹脂が異なる場合はもとより同じ種類の樹脂を用いた場合であっても、両者の界面には、電子部品の発熱に伴って熱膨張と熱収縮を繰り返すことによって亀裂が生じやすく、その結果、封止性が損なわれたり、亀裂から湿気が侵入して配線基板における絶縁性が損なわれたりしてしまうという問題点があった。
本発明は、上記のような従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造工程の簡略化が可能であり、しかも配線基板を放熱板に接着するのに用いられる樹脂と収納容器内の封止に使用される樹脂との界面に生じる亀裂の発生を防ぐことができて電子部品の高温動作を安定して行なうことが可能な、信頼性の高い電子部品モジュールを提供することにある。
本発明の電子部品モジュールは、放熱板と、該放熱板により凹部が塞がれて内側空間を形成している蓋体と、前記内側空間から前記蓋体を貫通して外部へ導出された接続端子と、前記内側空間に前記放熱板と間隔をあけて収納され、電子部品が実装されているとともに前記接続端子に接続された配線基板と、前記内側空間に一様に充填された樹脂とを備えたことを特徴とするものである。
また、本発明の電子部品モジュールは、上記構成において、前記樹脂はシリコーン樹脂から成ることを特徴とするものである。
また、本発明の電子部品モジュールは、上記構成において、前記樹脂はエポキシ樹脂から成ることを特徴とするものである。
また、本発明の電子部品モジュールは、上記構成において、前記放熱板はアルミニウムを含む材料から成ることを特徴とするものである。
また、本発明の電子部品モジュールは、上記各構成において、前記放熱板は、前記内側空間の側の主面に開口部が前記配線基板よりも大きい凹みが形成されており、該凹みに前記配線基板が入り込んでいることを特徴とするものである。
本発明の電子部品モジュールの製造方法は、放熱板により塞がれて内側空間を形成する凹部が設けられており、前記内側空間から外側へ貫通する貫通孔を有するとともに前記内側空間から外部へ導出するように接続端子が取り付けられた蓋体を準備する工程と、前記内側空間に、電子部品が実装されている配線基板を前記放熱板と間隔があくように配置して前記接続端子に接続する工程と、前記放熱板を前記配線基板と間隔をあけて前記凹部の開口部に取り付けて、前記内側空間に前記配線基板を収納する工程と、しかる後、前記貫通孔を通して前記内側空間に樹脂を注入して、前記内側空間に前記樹脂を一様に充填する工程とを含むことを特徴とするものである。
本発明の電子部品モジュールによれば、放熱板と、該放熱板により凹部が塞がれて内側空間を形成している蓋体と、前記内側空間から前記蓋体を貫通して外部へ導出された接続端子と、前記内側空間に前記放熱板と間隔をあけて収納され、電子部品が実装されているとともに前記接続端子に接続された配線基板と、前記内側空間に一様に充填された樹脂とを備えていることから、放熱板と蓋体とで構成される収納容器の内側空間に充填される樹脂によって配線基板の放熱板への接着と収納容器内の封止とが同じ樹脂で行なわれているので、従来の電子部品モジュールのように配線基板の放熱板への接着と、その電子装置の収納容器への収納と、封止樹脂による収納容器内の封止とを別々の工程で行なう必要がなく、製造工程の簡略化が可能である。しかも、従来の電子部品モジュールの構成で存在した、配線基板を放熱板に接着するのに用いられる樹脂と収納容器内の封止に使用される樹脂との界面が形成されないので、配線基板を放熱板に接着するのに用いられる樹脂と収納容器内の封止に使用される樹脂との界面に生じる亀裂の発生をなくすことができ、電子部品の発熱による熱膨張および熱収縮のサイクルによる樹脂の界面での亀裂発生を防ぐことができて、封止性や配線基板における絶縁性を損なうことがなく、電子部品の高温動作を安定して行なうことが可能な、信頼性の高い電子部品モジュールを提供することができる。
また、本発明の電子部品モジュールによれば、樹脂がシリコーン樹脂から成るときには、シリコーン樹脂はエポキシ樹脂やフェノール樹脂と比較して熱伝導性が高いので、使用時の電子部品から発生した熱を、より速やかに電子部品モジュールの外部に逃がすことができる。また、シリコーン樹脂はウレタン樹脂と比較して耐熱性が優れているため、高温条件下での使用が可能になる。また、シリコーン樹脂は柔軟性が高いので、電子部品の発熱による熱膨張および熱収縮に伴う熱応力による亀裂の発生に対して耐性が高いものとできる。
また、本発明の電子部品モジュールによれば、樹脂がエポキシ樹脂から成るときには、樹脂がシリコーン樹脂から成る場合と比較すると、収納容器内の内側空間に充填される樹脂の機械的強度が高くなる。従って、例えば、電子部品を配線基板に実装するため、または接続端子を配線基板に接続するために半田を用いた場合に、エポキシ樹脂が電子部品または接続端子を配線基板に対して強固に固定していることから、電子部品から発生した熱による熱膨張および熱収縮に伴う熱応力による半田における亀裂の発生および伸展を抑制することができる。その結果、電子部品モジュールの耐久性を向上させることができる。
また、樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合には、樹脂の機械的強度が高いものであるので、本発明の電子部品モジュールに用いられている蓋体の厚みを薄くすることができる。従って、蓋体の質量を低減することができるので、電子部品モジュールを軽量化することができる。
また、樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合には、耐薬品性を向上させることができる。
また、本発明の電子部品モジュールによれば、上記構成において、放熱板がアルミニウム(Al)を含む材料から成るときには、Alは鉄(Fe)等の一般的な構造材料としての金属材料と比べて熱伝導性が高く、使用時に電子部品から生じた熱をより効率的に電子部品モジュールの外部に放熱できるので、電子部品を安定して正常に動作させることができる。また、Alは銅(Cu)あるいは銅−タングステン(Cu−W)等の他の高熱伝導性材料と比較して、入手しやすく安価であることから、電子部品モジュールの低コスト化にも有利になる。
また、本発明の電子部品モジュールによれば、放熱板は、内側空間の側の主面に開口部が配線基板よりも大きい凹みが形成されており、この凹みに配線基板が入り込んでいるときには、配線基板との間で充填された樹脂と接する放熱板の表面積が大きくなるので、放熱板が凹みのない平板の形状であるときより、使用時の電子部品から生じた熱をより効率的に放熱できるものとなる。
本発明の電子部品モジュールの製造方法によれば、放熱板により塞がれて内側空間を形成する凹部が設けられており、内側空間から外側へ貫通する貫通孔を有するとともに内側空間から外部へ導出するように接続端子が取り付けられた蓋体を準備する工程と、内側空間に、電子部品が実装されている配線基板を放熱板と間隔があくように配置して接続端子に接続する工程と、放熱板を配線基板と間隔をあけて凹部の開口部に取り付けて、内側空間に配線基板を収納する工程と、しかる後、貫通孔を通して内側空間に樹脂を注入して、内側空間に樹脂を一様に充填する工程とを含むことから、配線基板と放熱板との隙間にも樹脂が一様に充填されているため、この樹脂によって配線基板の放熱板への接着と、電子部品が実装された配線基板の収納容器内での封止とが同時に行なえるので、従来の電子部品モジュールにおけるように樹脂中に界面が生じることがなく、熱膨張および熱収縮のサイクルによる樹脂の界面での亀裂の発生を防ぐことができ、電子部品の高温動作を安定して行なうことが可能な、信頼性の向上が図れる電子部品モジュールを提供することができる。
また、配線基板の放熱板への接着と、電子部品が実装された配線基板の収納容器内での封止とを同時に行なうことによって、製造工程を短縮することができ、効率的に製造することができる。従って、製造コストを低減する上でも有利となる。
本発明の電子部品モジュールの実施の形態の一例を示す断面図である。 本発明の電子部品モジュールの実施の形態の他の例を示す断面図である。 (a)〜(e)は、それぞれ本発明の電子部品モジュールの製造方法の実施の形態の一例を模式的に示す工程毎の断面図である。 (a)〜(e)は、それぞれ本発明の電子部品モジュールの製造方法の実施の形態の他の例を模式的に示す工程毎の断面図である。
以下に、本発明の電子部品モジュールについて添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の電子部品モジュールの実施の形態の一例を示す断面図である。
図1に示す本例の電子部品モジュール10は、放熱板6と、この放熱板6により凹部4aが塞がれて内側空間Sを形成している蓋体4と、内側空間Sから蓋体4を貫通して外部へ導出された接続端子3と、内側空間Sに放熱板6と間隔をあけて収納され、電子部品1が実装されているとともに接続端子3に接続された配線基板5と、内側空間Sに一様に充填された樹脂7とを備えている。
このような構成により、放熱板6と蓋体4とで構成される収納容器の内側空間Sに充填される樹脂7によって配線基板5の放熱板6への接着と収納容器内の封止とが同じ樹脂7で行なわれているので、従来の電子部品モジュールのように配線基板の放熱板への接着と、その電子装置の収納容器への収納と、封止樹脂による収納容器内の封止とを別々の工程で行なう必要がなく、製造工程の簡略化が可能である。
しかも、従来の電子部品モジュールの構成で存在した、配線基板5を放熱板6に接着するのに用いられる樹脂と収納容器内の封止に使用される樹脂との界面が形成されなくなる。従来の電子部品モジュールの構成では、配線基板の放熱板6への接着に用いられる樹脂と収納容器内の封止に使用される樹脂とは通常は異なる種類であるため、また同じ種類の樹脂であっても接着と封止とを別の工程で行なうため、両樹脂間に界面を形成してしまう。これに対して、本発明の電子部品モジュールによれば、配線基板5の放熱板6への接着と収納容器内の封止とに使用されるのが同じ樹脂7であるので、樹脂7中に樹脂の界面が形成されない。その結果、電子部品1の発熱による熱膨張および熱収縮のサイクルによる樹脂7中での亀裂の発生を防ぐことができ、封止性および配線基板における絶縁性を保ちながら、電子部品1の高温動作を安定して行なうことが可能な、信頼性の高い電子部品モジュール10を提供することができる。
なお、本例の電子部品モジュール10を示す図1において、2は電子部品1を配線基板5の配線導体(図示せず)に電気的に接続するボンディングワイヤである。また、4bは蓋体4に内側空間Sから外側へ貫通するように形成された貫通孔であり、後述するように、この貫通孔4bから樹脂7が内側空間Sに充填されて、内側空間Sが封止される。
電子部品1は、自動車のECUおよびパワーアシストハンドルやモータードライブ等の各種装置の制御ユニットに使用される制御用のデバイスであり、例えばパワートランジスタ,電源IC等の能動素子である。
配線基板5は、絶縁基板に配線導体が形成され、電子部品1および他の受動素子である電子部品が実装されて電子回路を形成しているものである。その絶縁基板には、アルミナ(Al)あるいは窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスや、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂など、高強度で絶縁性に優れ、耐環境性にも優れた材料が使用されることが好ましい。中でも、比較的入手しやすく、熱伝導率も十分なAlを用いるのが好ましい。Alから成る絶縁基板には、例えば、Al原料に焼結助材として0.2〜3質量%の酸化マグネシウム(MgO)と0〜3質量%の酸化カルシウム(CaO)と0〜5質量%の二酸化ケイ素SiO)とをこれらの総量で0.2〜10質量%含有するものを、1500〜1700℃で焼成して得られる焼結体が使用される。そして、この絶縁基板に導体ペーストを印刷して、または金属箔を貼付し、あるいは金属層を蒸着してパターニングして、配線導体および接続パッド1aを形成して、配線基板5が形成される。
蓋体4は、樹脂あるいは金属から成り、凹部4aが設けられるとともに貫通孔4bを有しており、放熱板6により凹部4aが塞がれて配線基板5を収納する内側空間Sを形成して、放熱板6とともに収納容器を構成するものである。
蓋体4に用いられる材料としては、放熱性,耐熱性,耐環境性および軽量性の点から、銅,アルミ等の金属あるいはポリブチルテレフタレート(PBT),ポリフェニレンサルファイト(PPS)等の樹脂を使用することが好ましい。中でも、入手しやすさの点から、PBT樹脂を用いることが望ましい。また、PBT樹脂には、20〜30質量%のガラス繊維を添加しておくことが、機械的強度が増大するので好ましい。
接続端子3は、蓋体4に内側空間Sから蓋体4を貫通して外部へ導出するように取り付けられている、導電性の端子である。この接続端子3の内側空間S側の端部には配線基板5の接続パッド1aが接続され、蓋体4の外部の端部には外部の電子回路(図示せず)や電源(図示せず)等が接続される。この接続端子3は、導電性の端子に用いられる各種の金属、例えばCuおよびCu合金,AlおよびAl合金,FeおよびFe合金,ステンレススチール(SUS)等から成るものである。
放熱板6は、使用時の電子部品1から生じた熱を、電子部品モジュール10の外部に放熱するためのものである。この放熱板6には、Al,Cu,Cu−W等の高熱伝導性材料が使用されるのが好ましい。特に、Alを使用するのが好ましく、AlはFe等の一般的な構造材料としての金属材料と比べて熱伝導性が高く、使用時に電子部品1から生じた熱をより効率的に電子部品モジュール10の外部に放熱できるので、電子部品1を安定して正常に動作させることが可能となる。また、AlはCuあるいはCu−W等の他の高熱伝導性材料と比較して、入手しやすく安価であることから、電子部品モジュール10の低コスト化にも有利になる点で優れている。
また、放熱板6の形状は、通常は平板状であるが、図3に図1と同様の断面図で示す実施の形態の他の例のように、蓋体4の内側空間Sの側の主面に開口部が配線基板5よりも大きい凹み6aが形成されており、凹みに配線基板5が入り込んでいるものが好ましい。この場合には、配線基板5との間で内側空間Sに充填された樹脂7と接する放熱板6の表面積が、凹み6aに配線基板5が入り込んだ分だけではあるが大きくなるので、使用時の電子部品1から生じた熱をより効率的に放熱することができるものとなる。
樹脂7は、蓋体4の凹部4aとこの凹部4aを塞ぐように蓋体4に取り付けられた放熱板6とで形成され、電子部品1が実装されているとともに接続端子3に接続された配線基板5が放熱板6と間隔をあけて収納されている内側空間Sに一様に充填されているものである。これにより、樹脂7によって配線基板5の放熱板6への接着と収納容器内の内側空間Sの封止とが同じ樹脂7で行なわれているので、従来の電子部品モジュールのように配線基板の放熱板への接着と、その電子装置の収納容器への収納と、封止樹脂による収納容器内の封止とを別々の工程で行なう必要がなく、製造工程の簡略化が可能である。しかも、この樹脂7中には、従来の電子部品モジュールの構成で存在した、配線基板を放熱板に接着するのに用いられる樹脂と収納容器内の封止に使用される樹脂との界面が形成されないので、配線基板を放熱板に接着するのに用いられる樹脂と収納容器内の封止に使用される樹脂との界面に生じる亀裂の発生をなくすことができ、熱膨張および熱収縮のサイクルによる樹脂の界面での亀裂発生を防ぐことができて、封止性や配線基板5における絶縁性を損なうことがなく、電子部品1の高温動作を安定して行なうことが可能な、信頼性の高い電子部品モジュール10となる。
なお、ここで、樹脂7による配線基板5の封止が必要な理由を説明する。
もし、蓋体4と放熱板6とで形成された内側空間Sに、収納された配線基板5の他に何の物質も存在しない場合は、使用時の電子部品1で生じた熱が主に伝導する対象が放熱板6しか存在しないこととなるため、放熱が困難な状態になることがある。これに対して、内側空間Sが樹脂7で充填されていると、放熱板6だけでなくこの樹脂7を通して蓋体4からも放熱させることが可能になる。また、内側空間Sを樹脂7で充填しておくことにより、内側空間Sへの湿気等の侵入を阻止することができる。従って、内側空間Sに樹脂7を一様に充填するである。また、収納空間の封止に一般的に使用される樹脂は、シリコーン樹脂,エポキシ樹脂,ウレタン樹脂,フェノール樹脂等であり、これらは絶縁性,耐環境性,封止性が高いため、このような樹脂7を内側空間Sに一様に充填することにより、電子部品モジュール10の信頼性を高めることができる。
この樹脂7には、熱伝導性,絶縁性,耐環境性および封止性の点から、シリコーン樹脂,エポキシ樹脂,フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。特に、シリコーン樹脂から成るのが好ましい。その理由は次のようなものである。
本発明の電子部品モジュール10においては、配線基板5の絶縁基板にはAlが好適に使用され、放熱板6にはAlが好適に使用される。両者の熱膨張率は、それぞれ配線基板5の絶縁基板は約9×10−6/Kであり、放熱板6は約23×10−6/Kであって、大きな差があることから、電子部品1の発熱に伴う熱膨張および熱収縮のサイクルにおいて、両者の熱膨張差による熱応力によって機械的な負荷が配線基板5の絶縁基板にかかることとなる。この機械的な負荷が繰り返し何度もかかると、配線基板5の絶縁基板は破断する場合もある。しかし、配線基板5を放熱板6に接着する接着剤としても用いられる樹脂7がシリコーン樹脂である場合は、その柔軟性によって、配線基板5の絶縁基板にかかる機械的な負荷が軽減され、絶縁基板の破断を防ぐことができる。よって、樹脂7には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等より柔軟性の高いシリコーン樹脂を使用するのが好ましい。
また、樹脂7には、エポキシ樹脂を用いることも好ましい。本発明の電子部品モジュール10において、樹脂7がエポキシ樹脂から成るときには、樹脂7がシリコーン樹脂等から成る場合と比較して、収納容器内の内側空間Sに充填される樹脂7の機械的強度が高くなる。従って、例えば、電子部品1を配線基板5に実装するため、または接続端子3を配線基板5に接続するために半田を用いた場合に、エポキシ樹脂が電子部品1または接続端子3を配線基板5に対して強固に固定していることから、電子部品1から発生した熱による熱膨張および熱収縮に伴う熱応力による半田における亀裂の発生および伸展を抑制することができる。その結果、電子部品モジュール10の耐久性を向上させることができる。
また、樹脂7としてのエポキシ樹脂には、シリカを主成分とするフィラーを70〜85質量%含有させることが好ましい。そうすることによって、エポキシ樹脂の曲げ弾性率を7〜13GPaとし、熱膨張率が10〜15×10−6/Kとすることが好ましい。この場合は、樹脂7としてシリコーン樹脂を使用した場合と同様に、その柔軟性によって、配線基板5の絶縁基板にかかる機械的な負荷が軽減され、絶縁基板5の破断を防ぐことができる。その結果、絶縁基板5の破断を防ぐことができ、かつ電子部品1と配線基板5との間の半田および接続端子3を配線基板5に接続するための半田における熱応力による亀裂の発生および進展を抑制することもできるようになるので好ましい。
また、樹脂7としてエポキシ樹脂を用いた場合には、耐薬品性を向上させることができる。例えば、耐ガソリン性については、シリコーン樹脂のガソリン浸漬時の体積膨張率が30〜70%であるのに対して、エポキシ樹脂のガソリン浸漬時の体積膨張率は10%以下なので、仮に電子部品モジュール10にガソリンが付着したとしても、樹脂7が膨張しないことから、放熱板6等との間で剥離が生じることを抑制することができる。
また、樹脂7としてエポキシ樹脂を用いた場合には、機械的強度が高いので、本発明の電子部品モジュール10に用いられている蓋体4の厚みを薄くすることができる。従って、電子部品モジュール10を軽量化することができる。
また、エポキシ樹脂は十分な機械的強度を有していることから、蓋体4を有さない電子部品モジュール10としてもよい。この場合には蓋体4が必要なくなるので、電子部品モジュール10を軽量化することができ、また製造コストを低減することができる。
次に、本発明の電子部品モジュールの製造方法について、図3を参照しつつ説明する。図3(a)〜(e)は、それぞれ本発明の電子部品モジュールの製造方法の実施の形態の一例を模式的に示す工程毎の断面図である。以下に、本発明の電子部品モジュールの製造方法の実施の形態の一例を工程毎に説明する。
まず、図3(a)に示すように、放熱板6により塞がれて内側空間Sを形成する凹部4aが設けられており、内側空間Sから外側へ貫通する貫通孔4bを有するとともに内側空間Sから外部へ導出するように接続端子3が取り付けられた蓋体4を準備する。この工程においては、蓋体4と接続端子3とを一体成形する方法、または成形した蓋体4に後から接続端子3を取り付ける方法のいずれを採用してもよい。
一方で、図3(b)に示すように、電子部品1が実装され、電極パッド1aが形成された配線基板5を準備する。
次に、図3(c)に示すように、内側空間Sに、電子部品1が実装されている配線基板5を放熱板6と間隔があくように配置して接続端子3に接続する。この工程においては、配線基板5の電極パッド1aを接続端子3に接続することとなるが、接続端子3への電極パッド1aの接続は、両者の間に半田を配しておいて、加熱炉に投入するなどして加熱して半田を溶融させることによって、あるいは貫通孔4bから両者の接合部にレーザ光を照射して加熱して半田を溶融させることによって行なえばよい。
次に、図3(d)に示すように、放熱板6を配線基板5と間隔をあけて凹部4aの開口部に取り付けて、内側空間Sに配線基板5を収納する。この工程においては、放熱板6と配線基板5との間隔を50μm〜100μmにするのが好ましい。この間隔が50μmを下回ると、電子部品1に高電圧で大電流を流したとき等に配線基板5における絶縁性が維持できなくなることがあり、また、放熱板6と絶縁基板5との間の熱膨張差を緩和できなくなることがあり、その結果、信頼性が低下してしまうことがある。一方、この間隔が100μmを上回ると、放熱板6と絶縁基板5との間隔が大きくなってしまい、配線基板5から放熱板6への樹脂7を介しての熱伝導性が、電子部品1を安定して高温動作させることが難しくなる程度に低下してしまうことがあるからである。
そして、しかる後、図3(e)に示すように、蓋体4の貫通孔4bを通して内側空間Sに樹脂7を注入して、内側空間Sに樹脂7を一様に充填する。これにより、樹脂7によって配線基板5の放熱板6への接着と、電子部品1が実装されている配線基板5の内側空間S内への封止とが同時に行なわれる。
このような本発明の電子部品モジュールの製造方法によれば、絶縁基板5と放熱板6の間にも樹脂7が一様に充填されて、絶縁基板5の放熱板6への接着と電子部品1が実装された配線基板5の内側空間Sへの封止とが同時に行なえるので、樹脂7中には、従来の電子部品モジュールにおける配線基板を放熱板に接着する接着剤と収納容器内を封止する樹脂との間に形成されるような界面が形成されることがなく、電子部品1の発熱による熱膨張および熱収縮のサイクルによる樹脂7中の界面での亀裂の発生を防ぐことができ、電子部品1の高温動作を安定して行なうことが可能な、信頼性の向上が図れる電子部品モジュール10を提供することができる。
そして、本発明の電子部品モジュールの製造方法によれば、絶縁基板5の放熱板6への接着と電子部品1が実装された配線基板5の内側空間Sへの封止とを同時に行なうことによって、従来の電子部品モジュールの製造方法よりも製造工程を短縮することができ、効率的に製造することができ、より低コストで製造することができる。
さらに、従来の電子部品モジュールの製造方法では、放熱板上に接着剤を放射線状に付与し、その上に配線基板を載置し加圧して接着を行なうので、放熱板に対する配線基板の平行度が失われやすく、両者の対向する主面間に形成される接着剤樹脂の厚さが不均等になりやすい。これに対して、本発明の電子部品モジュールの製造方法によれば、配線基板5と放熱板6との間に予め設けられた隙間に樹脂7が入り込んで、内側空間S内が樹脂7によって一様に充填されるため、配線基板5と放熱板6との間の樹脂7の厚みを所望の間隔で制御するのが容易である。その結果、樹脂7の厚みが不均等になることがなくなり、電子部品モジュール10の信頼性を高めることができる。
次に、蓋体4を有さない電子部品モジュールの製造方法について、図4を参照しつつ説明する。図4(a)〜(e)は、それぞれ本発明の電子部品モジュール10の製造方法の実施の形態の他の例を模式的に示す工程毎の断面図である。以下に、本発明の電子部品モジュール10の製造方法の実施の形態の他の例を工程毎に説明する。
まず、図4(a)に示すように、電子部品1が実装され、電極パッド1aが形成され、その電極パッド1aに接続端子3が接続された配線基板5を準備する。接続端子3への電極パッド1aの接続は、両者の間に半田を配しておいて、加熱炉に投入するなどして加熱して半田を溶融させることによって行なう。
次に、図4(b)に示すように、放熱板6の周縁部に取り付けられることにより、内側空間Pが形成されている枠体11を準備する。
次に、図4(c)に示すように、内側空間Pで配線基板5が放熱板6との間で間隔を有する状態となるように、接続端子3の、電極パッド1aに接続されているのとは反対側の端部を支持する。
次に、図4(d)に示すように、内側空間Pに樹脂7を注入して、内側空間Pに樹脂7を一様に充填する。これにより、樹脂7によって配線基板5の放熱板6への接着と、電子部品1が実装されている配線基板5の内側空間P内への封止とが同時に行なわれる。
そして、しかる後、図4(e)に示すように、枠体11を取り外す。
このように製造された電子部品モジュール10は、蓋体4が必要なくなるので、軽量化することができ、製造コストを低減することができる。
まず、配線基板の絶縁基板を、Alが96%の無機粉末にバインダ,可塑剤および有機溶剤を加えて十分に混合してセラミックスラリーを作製し、このセラミックスラリーを用いてドクターブレード法により一定の厚みに形成した後に有機溶剤を乾燥させてセラミックグリーンシートを作製し、得られたセラミックグリーンシートを所定の寸法に切断し積層した後、焼成することによってバインダおよび可塑剤を分解するとともに無機粉末を焼結させて作製した。このとき、通常の配線基板の製造方法と同様にして、配線導体および電極パッドも形成して、配線基板を得た。そして、この配線基板の表面に、耐熱温度約150℃の電子部品を載置し、配線導体にボンディングワイヤを介して電気的に接続して実装した。
一方、凹部が設けられた開口面のある箱型形状であるとともに、この凹部の内側から外側へ貫通する貫通孔を有し、凹部の内側から外部へ導出するように接続端子が一体成形された、PBT樹脂から成る蓋体を準備した。
なお、接続端子は、一端が蓋体の凹部内に配置され、かつ他端が蓋体の上面を貫通して外部へ導出されているものとした。
さらに、Al(JIS品番:A5052、Mg含有量:2.2〜2.8%)製で平板状の放熱板を準備し、蓋体の凹部の開口部を覆うように載置することによって、放熱板の主面と配線基板の主面との間に所定の間隔をあけた状態で、配線基板が収納された内側空間を形成した。
そして、蓋体と放熱板とで形成された内側空間に、熱硬化性樹脂であるシリコーン樹脂(硬さ:JIS A70、熱伝導率:2W/(m・K))を貫通孔から注入して充填して、一様に充填された樹脂中に配線基板を埋設した状態とし、この樹脂を硬化させることによって、本発明の実施例の電子部品モジュールを作製した。
次に、比較例として従来の構造の電子部品モジュールを作製した。この電子部品モジュールにおいては、配線基板を放熱板に接着する接着剤にはシリコーン樹脂(硬さ:JIS A85、熱伝導率:2W/(m・K))を使用し、収納容器内を封止する封止樹脂にはエポキシ樹脂(弾性率:10GPa、線膨張率:18×10−6/K)を使用した。この比較例の電子部品モジュールにおいては、接着剤と封止樹脂との間に界面が形成されているものであった。
得られた実施例および比較例の電子部品モジュールを用いて、−40℃および+125℃の各温度に制御した恒温槽に15分ずつ保持することを1サイクルとして3000サイクル繰り返す熱サイクル加速試験を行なった。そして、熱サイクル加速試験が終わった電子部品モジュールを切断して、断面形状の概観検査を行ない、樹脂中に亀裂が発生しているか、また樹脂が蓋体,配線基板または放熱板から剥離しているかどうかを確認した。ここで、試験した電子部品モジュールの個数はそれぞれ20個とした。
その結果、比較例である従来の構造の電子部品モジュールには配線基板の放熱板への接着に用いられる接着剤の樹脂と配線基板の封止に用いられる封止樹脂との界面に亀裂が見られ、信頼性が損なわれたものとなっていた。これに対して、実施例である電子部品モジュールは、内側空間に樹脂が一様に充填されているものであることから、樹脂中には界面がなく、従って界面における亀裂も発生しておらず、良好な信頼性を維持したものであった。
まず、本発明の実施例の電子部品モジュール10の樹脂7を、シリカを主成分とするフィラーを80質量%含有させたエポキシ樹脂とした電子部品モジュール10を作製して、本実施例の電子部品モジュール10とした。また、このエポキシ樹脂は、曲げ弾性率が11GPaであり、熱膨張率が11×10−6/Kであるものとした。
また、この場合の比較例としては、本発明における樹脂7の違いによる効果を比較するために、実施例1の、樹脂7にシリコーン樹脂(硬さ:JIS A70、熱伝導率:2W/(m・K))を用いている電子部品モジュール10を作製した。
得られた実施例および比較例の電子部品モジュール10を用いて、−40℃および+125℃の各温度に制御した恒温槽に15分ずつ保持することを1サイクルとして4000サイクル繰り返す熱サイクル加速試験を行なった。そして、熱サイクル加速試験が終わった電子部品モジュール10を切断して断面形状の外観検査を行ない、配線基板5が破断しているかどうか、また電子部品1と配線基板5との間の半田および接続端子3を配線基板5に接続するための半田において亀裂が生じているかどうかを確認した。
その結果、実施例および比較例の電子部品モジュール10の両方とも、配線基板5は破断していなかった。しかしながら、比較例の電子部品モジュール10における電子部品1と配線基板5との間の半田および接続端子3を配線基板5に接続するための半田には、致命的な大きさの亀裂が生じており、電子部品1および接続端子3において、配線基板5との電気的な接続不良が生じていた。一方、実施例の電子部品モジュール10における電子部品1と配線基板5との間の半田および接続端子3を配線基板5に接続するための半田には、亀裂が生じてはいたが、微小な大きさであり、電子部品1および接続端子3における配線基板5との電気的な接続には問題がなかった。
この結果より、樹脂7がエポキシ樹脂から成ることにより、エポキシ樹脂が電子部品1または接続端子3を配線基板5に対して強固に固定することから、電子部品1と配線基板5との間の半田および接続端子3を配線基板5に接続するための半田における、熱応力による亀裂の発生および進展を抑制することができ、かつ絶縁基板5の破断を防ぐことができるようになることが分かった。
1:電子部品
1a:電極パッド
2:ボンディングワイヤ
3:接続端子
4:蓋体
4a:凹部
4b:貫通孔
5:配線基板
6:放熱板
6a:凹み
7:樹脂
10:電子部品モジュール
11:枠体

Claims (6)

  1. 放熱板と、該放熱板により凹部が塞がれて内側空間を形成している蓋体と、前記内側空間から前記蓋体を貫通して外部へ導出された接続端子と、前記内側空間に前記放熱板と間隔をあけて収納され、電子部品が実装されているとともに前記接続端子に接続された配線基板と、前記内側空間に一様に充填された樹脂とを備えたことを特徴とする電子部品モジュール。
  2. 前記樹脂はシリコーン樹脂から成ることを特徴とする請求項1に記載の電子部品モジュール。
  3. 前記樹脂はエポキシ樹脂から成ることを特徴とする請求項1に記載の電子部品モジュール。
  4. 前記放熱板はアルミニウムを含む材料から成ることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子部品モジュール。
  5. 前記放熱板は、前記内側空間の側の主面に開口部が前記配線基板よりも大きい凹みが形成されており、該凹みに前記配線基板が入り込んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子部品モジュール。
  6. 放熱板により塞がれて内側空間を形成する凹部が設けられており、前記内側空間から外側へ貫通する貫通孔を有するとともに前記内側空間から外部へ導出するように接続端子が取り付けられた蓋体を準備する工程と、前記内側空間に、電子部品が実装されている配線基板を前記放熱板と間隔があくように配置して前記接続端子に接続する工程と、前記放熱板を前記配線基板と間隔をあけて前記凹部の開口部に取り付けて、前記内側空間に前記配線基板を収納する工程と、しかる後、前記貫通孔を通して前記内側空間に樹脂を注入して、前記内側空間に前記樹脂を一様に充填する工程とを含むことを特徴とする電子部品モジュールの製造方法。
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