JP2008184123A - 車両のヨーモーメント制御装置 - Google Patents

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JP2008184123A JP2007021267A JP2007021267A JP2008184123A JP 2008184123 A JP2008184123 A JP 2008184123A JP 2007021267 A JP2007021267 A JP 2007021267A JP 2007021267 A JP2007021267 A JP 2007021267A JP 2008184123 A JP2008184123 A JP 2008184123A
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Tomoo Matsuda
智夫 松田
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Abstract

【課題】 3軸以上の多数の車軸を備えた車両をヨーモーメント制御するにあたり、車
両走行時の挙動修正を的確に行い、車両走行時の安定性を高める。
【解決手段】 3軸以上の車軸が設けられた車両100の最も前の車軸と最も後ろの車軸
を除いた中間軸のタイヤに加えるブレーキ力を調整することにより、車両100のヨーモ
ーメントを制御する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、3以上の車軸が設けられた車両のヨーモーメントを制御する装置に関するも
のである。
乗用車などの一般自動車の分野では、車体のヨー(ヨーイング)方向、つまり車体を上
からみて重心を中心にして回転するような方向のモーメント(モーメント力)を制御する
ことで、車両の走行安定性を向上させたり、操縦性を向上させたりするという発明が種々
提案されており、後掲する各種特許文献によって公知となっている。
各特許文献に開示された発明の概要を図18、図19を用いて説明する。
図18は、車両1100を上からみた図である。
車両1100は、車体1101の前側の車軸1111と後ろ側の車軸1112を備えた
2軸、4輪の車両である。前側車軸1111は、操舵される軸であり、操舵に応じて前輪
のタイヤ1121、1122の車体1101に対する向き、つまり転舵角δが変化する。
なお、転舵角δは、ステアリングの操舵角γに対応している。後ろ側車軸1112は非操
舵軸であり、後輪のタイヤ1123、1124の車体1101に対する向きは固定されて
いる。
図18において、車両重心Gをとおり上下鉛直方向軸をZ軸として、Z軸回りの角度を
ヨー角α、同Z軸回りの角速度をヨーレートrと定義する。また、車両1100の姿勢方
向と車両1100の進行方向とがなす角を、すべり角(横すべり角)βと定義する。
図19(a)は、後輪のタイヤ1123、1124にブレーキをかけた場合に車体11
01に作用するヨーモーメントΔML、ΔMRを説明する図である。
すなわち、左後輪のタイヤ1123にブレーキ力(制動力)FLが作用すると、車両重
心Gの左回りにヨーモーメント、
ΔML=dL×FL
が作用する。なお、dLは、車両重心Gからブレーキ力FLの方向線分までの距離である。
また、右後輪のタイヤ1124にブレーキ力FRが作用すると、車両重心Gの右回りに
ヨーモーメント、
ΔMR=dR×FR
が作用する。なお、dRは、ヨーモーメントの腕の長さ、つまり車両重心Gからブレー
キ力FRの方向線分までの距離である。
図19(b)は、前輪のタイヤ1121、1122にブレーキをかけた場合に車体11
01に作用するヨーモーメントΔML´、ΔMR´を説明する図である。
すなわち、左前輪のタイヤ1121にブレーキ力FL´が作用すると、車両重心Gの左回
りにヨーモーメント、
ΔML´=dL´×FL´
が作用する。なお、dL´は、車両重心Gからブレーキ力FL´の方向線分までの距離で
ある。
また、右前輪のタイヤ1122にブレーキ力FR´が作用すると、車両重心Gの右回りに
ヨーモーメント、
ΔMR´=dR´×FR´
が作用する。なお、dR´は、車両重心Gからブレーキ力FR´の方向線分までの距離で
ある。
下記する各文献では、車両1100のヨー角α、ヨーレートr、すべり角β、車速など
のパラメータのいずれか、またはすべてを検出して、これら検出値に基づいてブレーキ力
を調整することによってヨーモーメントを制御して、車両1100の走行時の挙動を安定
化させたり、回頭性を高めて操縦性を向上させるようにしている。
特開平7-215190号公報(特許第3303500号公報) 特開平3-112754号公報(特許第2572856号公報) 特開平8-310366号公報(特許第3303605号公報) 特開平9-99821号公報(特許第3116787号公報) 特開平9-99826号公報(特許第3132371号公報) 堀,"電気自動車制御技術の現況と革新に向けて", 電子情報通信学会東京支部シンポジウム,1998.9.18
一般自動車とは異なる特殊車両の分野では、3軸以上の多数の車軸を備えた車両が通例
である。
図1は、4軸、8輪の車両100を上からみた図である。
車両100は、車体101の前から後ろに向かって第1軸11、第2軸12、第3軸1
3、第4軸14の車軸が設けられた車両である。第1軸11、第2軸12は、操舵される
軸であり、第3軸13、第4軸14は非操舵軸である。第1軸11には、左右のタイヤ2
1、22が設けられ、第2軸12には、左右のタイヤ23、24が設けられ、第3軸13
には、左右のタイヤ25、26が設けられ、第4軸14には、左右のタイヤ27、28が
設けられている。
このような4軸の車両100においても、2軸の車両1000と同様に、ヨーモーメン
トを制御したいとの要請がある。
この場合、4軸の車両100の前側の操舵軸である第1軸11、第2軸12をまとめて、
2軸の車両1000の前側の操舵軸である車軸1111と等価な車軸111とみなすとと
もに、4軸の車両100の後ろ側の非操舵軸である第3軸13、第4軸14をまとめて、
2軸の車両1000の後ろ側の非操舵軸1112と等価な車軸112とみなして、2軸の
車両1000に適用される制御を利用するという考え方がある。
すなわち、図19(a)に示したのと同様に、車両100の等価後ろ側車軸112の左
後輪のタイヤ25、27にブレーキをかけて、車両重心Gの左回りにヨーモーメントΔML
を発生させたり、車両100の等価後ろ側車軸112の右後輪のタイヤ26、28にブレ
ーキをかけて、車両重心Gの右回りにヨーモーメントΔMRを発生させるようにする。
また、図19(b)に示したのと同様に、車両100の等価前側車軸111の左前輪の
タイヤ21、23にブレーキをかけて、車両重心Gの左回りにヨーモーメントΔML´を発
生させたり、車両100の等価前側車軸111の右前輪のタイヤ22、24にブレーキを
かけて、車両重心Gの右回りにヨーモーメントΔMR´を発生させるようにする。
しかし、このように複数(2つ)の車軸を等価な1つの車軸とみなして、ヨーモーメン
ト制御のシミュレーションを行なったところ、車両100の走行時の挙動修正が的確に行
なわれずに、車両走行時の安定性が損なわれることがあるという問題が発生した。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、3軸以上の多数の車軸を備えた
車両をヨーモーメント制御するにあたり、車両走行時の挙動修正を的確に行い、車両走行
時の安定性を高めることを解決課題とするものである。
第1発明は、
3以上の車軸が設けられた車両の最も前の車軸と最も後ろの車軸を除いた中間軸のタイ
ヤに加えるブレーキ力を調整することにより、車両のヨーモーメントを制御するヨーモー
メント制御手段を備えたことを特徴とする。
第2発明は、第1発明において、
車体の前から後ろに向かって第1軸、第2軸、第3軸の車軸が設けられた車軸数が3の
車両に適用され、
前記ヨーモーメント制御手段は、中間軸である第2軸のタイヤに加えるブレーキ力を調
整することにより、車両のヨーモーメントを制御すること
を特徴とする。
第3発明は、第1発明において、
車体の前から後ろに向かって第1軸、第2軸、第3軸、第4軸の車軸が設けられた車軸
数が4の車両に適用され、
前記ヨーモーメント制御手段は、中間軸である第2軸または/および第3軸のタイヤに
加えるブレーキ力を調整することにより、車両のヨーモーメントを制御すること
を特徴とする。
第4発明は、第1発明において、
中間軸が、操舵される軸である場合には、操舵角に応じて、中間軸のタイヤに加えるブ
レーキ力を調整すること
を特徴とする。
タイヤに印加可能なブレーキ力を判断する考え方に、「タイヤの摩擦円」という考え方が
ある。
図2(a)に示すように、タイヤには、駆動力とブレーキ力との合力である駆動・ブレ
ーキ力Fbtと、車体101の横方向へ向かう横力Fhとが作用する。これら駆動・ブレ
ーキ力Fbtと、横力Fhとの合力Faが最終的にタイヤに作用する力である。なお、タ
イヤに駆動力が殆ど作用していない場合には、駆動・ブレーキ力Fbtは、ブレーキ力F
bとみなされる。合力Faの大きさがタイヤの摩擦円Scを超えると、タイヤに横すべり
(スリップ)が発生し、合力Faの大きさがタイヤの摩擦円Scを超えない限りは、タイ
ヤに横すべりは発生しない。
3以上の車軸が設けられた多軸車両、たとえば図1に示す4軸の車両100は、車体長
が長いため、車両重心Gから離れた最も前側の第1軸11と最も後ろ側の第4軸14のタ
イヤ21、22、27、28には、車体横方向へ強い横力Fhが作用することがある。た
とえば図3に示すように、車両100が高速走行中にレーンチェンジされて急激かつ正反
対の方向への操舵が連続的に行われると、ヨー角αが振動的に変化して、最も前側のタイ
ヤ21、22、最も後ろ側のタイヤ27、28の横方向への変形量が極めて大きくなって、
強い横力Fhが作用する。こうした状況でブレーキ力Fbを調整してヨーモーメントΔM
を制御しようとすると、図2(b)に示すように、合力Faの大きさがタイヤの摩擦円S
cを超えてしまい、最も前側のタイヤ21、22、最も後ろ側のタイヤ27、28で横す
べりが発生しやすくなる。図2(b)に示すように、最も前側のタイヤ21、22、最も
後ろ側のタイヤ27、28に印加可能なブレーキ力Fb(駆動・ブレーキ力Fbt)、つま
り合力Faがタイヤ摩擦円Scを越えない範囲で最大となるブレーキ力は、非常に小さい。
一方、図3と同じ状況で、車両重心Gから近い前側と後ろ側の中間の車軸である第2軸
12と第3軸13のタイヤ23、24、25、26には、作用する横力Fhは比較的小さ
い。すなわち、ヨー角αが振動的に変化したとしても、中間のタイヤ23、24、25、
26の横方向への変形量が比較的小さく、作用する横力Fhは比較的小さい。このため同
じ大きさのブレーキ力Fbを加えてヨーモーメントを制御したとしても、タイヤの摩擦円
Scに対して、合力Faは下回っており、ブレーキ力に余裕があり、強いブレーキをかけ
たとしても横すべりが発生しにくい。図2(c)に示すように、中間のタイヤ23、24、
25、26に印加可能なブレーキ力(駆動・ブレーキ力Fbt)、つまり合力Faがタイヤ
摩擦円Scを越えない範囲で最大となるブレーキ力は、非常に大きい。このためヨーモー
メント制御を行う際に、スリップなどの不安定な挙動が発生しにくくなり、車両100を
安定して走行させることが可能となる。
そこで、本発明は、3以上の車軸が設けられた車両100の最も前の車軸と最も後ろの
車軸を除いた中間軸のタイヤに加えるブレーキ力を調整することにより、車両100のヨ
ーモーメントを制御するものである(第1発明)。
図4に例示するように、車両100の前から後ろに向かって第1軸11、第2軸12、
第3軸13の車軸が設けられた車軸数が3の車両100にあっては、中間軸である第2軸
12のタイヤ23、24に加えるブレーキ力を調整することにより、車両100のヨーモ
ーメントを制御するものである(第2発明)。
図5に例示するように、車両100の前から後ろに向かって第1軸11、第2軸12、
第3軸12、第4軸14の車軸が設けられた車軸数が4の車両100にあっては、中間軸
である第2軸12または/および第3軸13のタイヤに加えるブレーキ力を調整すること
により、車両100のヨーモーメントを制御するものである(第3発明)。
図5に例示するように、中間軸が、操舵される軸(第2軸12)である場合には、ステ
アリングハンドル等の操舵角に応じて、つまりこの操舵角に対応するタイヤの転舵角δ、
δ´に応じて、中間軸のタイヤ23、24に加えるブレーキ力が調整される。これは、同
じヨーモーメントΔMを加える場合でも、モーメントの腕の長さd、d´が転舵角の大き
さδ、δ´によって異なり、それによってブレーキ力Fb、Fb´が異なるため、転舵角
の大きさδ、δ´によって、ブレーキ力Fb、Fb´を変更しなければならないからであ
る。したがって、操舵角γの大きさにかかわらず一定のヨーモーメントΔMを得たい場合
には、操舵角γに応じてブレーキ力Fbを補正する必要がある。
本発明によれば、図5に例示する4軸の車両100にみられるように、車軸数が3以上
の多軸車両100は、レーンチェンジを行う場合などヨー角が振動的に変化する場合には
中間軸12、13のタイヤ23、24、25、26に作用する横力Fhが小さいという特
性がある。この特性に鑑み、中間軸12、13のタイヤ23、24、25、26に加える
ブレーキ力を調整してヨーモーメントΔMを制御するようにしたので、車両100の安定
性および操縦性(回頭性)が向上する。
たとえば図3に示すように、最も前側の第1軸11と、最も後ろ側の第4軸14のタイヤ
21、22、27、28に作用する横力Fhが強くて横すべりしやすい状況であったとし
ても、横力Fhが弱く横すべりしにくい中間軸である第2軸12、第3軸12のタイヤ2
3、24、25、26にブレーキ力Fbが加えられてヨーモーメントΔMが制御されるた
め、タイヤに横すべりを生じさせることなく、つまり車両全体としてスピンやドリフトア
ウトなどの不安定な挙動を引き起こすことがない。このため多軸車両であっても、2軸車
両と同等かそれ以上に、極めて安定して、車両走行時の安定性を向上させることができる
とともに、車両旋回時の回頭性を向上させることができる。
なお、車軸数が3以上の多軸車両100は、加速時および減速時においてピッチングに
起因した重心移動によって、最も前の車軸11、最も後ろの車軸14のタイヤ21、22、
27、28の荷重が大きく変化するが、中間軸12、13では、ピッチングの影響が少な
く常に安定した荷重を維持できるという特性がある。このため加速時および減速時におい
てもタイヤに安定してブレーキ力を加えることができ、一層、制御の精度が向上するとい
う利点がある。
以下、図面を参照して本発明に係る車両のヨーモーメント制御装置の実施の形態につい
て説明する。
実施形態で想定している車両100は、図5に例示するように、4軸、8輪の車両10
0である。図5は車両100を上からみた図で、操舵系の装置の構成を示している。
車両100は、車体101の前から後ろに向かって第1軸11、第2軸12、第3軸1
3、第4軸14の車軸が設けられた車両である。第1軸11、第2軸12は、操舵される
軸であり、第3軸13、第4軸14は非操舵軸である。第1軸11には、左右のタイヤ2
1、22が設けられ、第2軸12には、左右のタイヤ23、24が設けられ、第3軸13
には、左右のタイヤ25、26が設けられ、第4軸14には、左右のタイヤ27、28が
設けられている。なお、車軸11、12、13、14の各軸間距離は、ほぼ均等に設定さ
れている。なお、民生用のトラックなどの車両では、前側の車輪、後ろ側の車輪のそれぞ
れが、近接して配置された2つの車輪で構成されたものがあるが、これは2軸、4輪の車
両とみなすことができるため、本発明が対象としている多軸の車両ではないものとする。
図6は、車両100の駆動系の装置の構成図である。本実施例では、全輪駆動の車両を
想定している。
すなわち、エンジン1の出力軸には、トルクコンバータ2の入力軸が連結されている。
トルクコンバータ2の出力軸には、トランスミッション3の入力軸が連結されている。ト
ランスミッション3の出力軸は、駆動ギヤ4の入力軸に連結されている。駆動ギヤ4の出
力軸は、共通駆動軸5に連結されている。共通駆動軸5は、各車軸11、12、13、1
4に設けられたディファレンシャルギヤ11D、12D、13D、14Dの入力軸に連結
されている。このためエンジン1の駆動力が各車軸11、12、13、14を介して各タ
イヤ21、22、23、24、25、26、27、28に伝達される。
図7は、実施形態の制御系の装置構成をブロック図で示している。
制御対象は、多軸の車両100であり、4軸の車両100にあっては、中間軸である第
2軸12または/および第3軸13のタイヤに加えるブレーキ力を調整することにより、
車両100のヨーモーメントを制御するものである。
ヨー角制御部40は、車両100のセンサ部70で検出された操舵角γ等のセンサ信号
に基づいて車両100の状態を推定して、車両100を安定走行若しくは回頭性を向上さ
せるのに必要なヨーモーメント指令値、つまりヨーモーメントの目標値ΔMdを生成し、
ヨーモーメント制御部50に出力する。センサ部70で検出されヨー角制御部40に入力
されるセンサ信号は、制御対象の車両100の運転操作や物理的な運動データであり、こ
れらを計測する操舵角センサ、タイヤ回転センサ、車体加速度センサ、車体ヨーレートセ
ンサなどのセンサ信号から直接あるいは推定計算によって間接的に操舵角γ、車体ヨーレ
ートr、車速V、すべり角βなどが求められる。
ヨーモーメント制御部50は、ヨーモーメントの目標値ΔMdに応じて、車両100の
中間軸に加えるべきブレーキ力を求め、そのブレーキ力が得られるようにブレーキ用の制
御弁を調整して、車両100のヨーモーメントを制御する。ヨーモーメント制御部50は、
選択信号に基づいて中間軸である第2軸12、第3軸13のうちいずれかの車軸または両
方の車軸のブレーキを調整すべきかを判断し、判断した車軸のブレーキ力を調整する。操
舵軸である第2軸12のブレーキ力を調整すると判断された場合には、車両100の操舵
角γに応じてブレーキ力を求める。
本実施例では、図5に例示するように、中間軸、たとえば第3軸13の左右のタイヤ2
5、26のブレーキ力FbL、FbRを調整して、車両重心Gの時計回り方向を正の方向
とするヨーモーメントΔM、
ΔM=d0×(FbR−FbL)
を発生させるようにしている。
図8は、図7に示す制御系の装置の構成例をブロック図にて示している。
同図8に示すように、実施例の装置は、大きくは、センサ部70と、選択部80と、コ
ントローラ30と、第2軸左自動制御弁55、第2軸右自動制御弁56、第3軸左自動制
御弁57、第3軸右自動制御弁58とから構成されている。
コントローラ30は、ヨー角制御部40、配分部51、第2軸ブレーキエア算出部52、
第3軸ブレーキエア圧算出部53、ブレーキシリンダ圧力制御部54とを含んで構成され
ている。配分部51、第2軸ブレーキエア算出部52、第3軸ブレーキエア圧算出部53、
ブレーキシリンダ圧力制御部54、第2軸左自動制御弁55、第2軸右自動制御弁56、
第3軸左自動制御弁57、第3軸右自動制御弁58は、図7のヨーモーメント制御部50
の構成要素に対応している。
つぎに、図9を参照して実施例のブレーキ系の装置の構成について説明する。実施例の
ブレーキ装置は、空圧源で発生した高圧のエアを、油圧に変換し、油圧によってブレーキ
シリンダのピストンを、ブレーキディスクに押圧する側に作動させて、車輪を制動すると
いうエアブレーキ装置で構成されている。なお、本実施例で制御対象としている車両10
0は、一般自動車よりもはるかに重量と慣性モーメントが大きく、姿勢変化の応答が緩や
かである。したがって、比較的、応答が遅いといわれるエアブレーキ装置を用いてヨーモ
ーメントを発生させて車両100の姿勢を変化させるようにしても、車両の安定性、回頭
性の向上を図るに十分な制御精度が得られる。
同図9に示すように、8個のタイヤ21、22、23、24、25、26、27、28
にはそれぞれ、独立してブレーキシリンダ91、92、65、66、67、68、93、
94が設けられている。
これらブレーキシリンダのうち、中間軸である第2軸12と第3軸13のブレーキシリ
ンダ65、66、67、68にはそれぞれ、自動制御弁55、56、57、58が取り付
けられている。
高圧のエアは、エアタンク60から管路62を経由し、分岐管路62a、62b、62
c、62dを介して、中間軸の自動制御弁55、56、57、58に供給される。自動制
御弁55、56、57、58が開弁動作している場合には、自動制御弁55、56、57、
58それぞれを通過したエアが、中間軸である第2軸12と第3軸13のブレーキシリン
ダ65、66、67、68に供給される。
また、中間軸である第2軸12と第3軸13のブレーキシリンダ65、66、67、6
8には、ブレーキペダル90の踏込み操作量に応じた圧力のエアが供給される。すなわち、
高圧のエアは、エアタンク60から管路62を経由し、分岐管路62e、62fを介して、
ブレーキバルブ61に供給される。ブレーキバルブ61は、ブレーキペダル90の踏込み
操作によって動作する。ブレーキバルブ61からは、ブレーキペダル90の踏込み操作量
に応じた圧力のエアが管路63A、63Bに供給され、管路63Aの分岐管路63c、6
3dを介して、中間軸のうち第2軸12の左右の自動制御弁55、56に供給されるとと
もに、管路63Bの分岐管路63e、63fを介して、中間軸のうち第3軸13の左右の
自動制御弁57、58に供給される。自動制御弁55、56、57、58が開弁動作して
いる場合には、自動制御弁55、56、57、58それぞれを通過したエアが、中間軸で
ある第2軸12と第3軸13のブレーキシリンダ65、66、67、68に供給される。
コントローラ30は、ブレーキペダル90が踏込まれている場合には、自動制御弁55、
56、57、58からブレーキペダル90の踏込み操作量に応じた圧力のエアがブレーキ
シリンダ65、66、67、68に供給されるように制御する。
一方、第1軸11と第4軸14のブレーキシリンダ91、92、93、94には、ブレ
ーキペダル90の踏込み操作量に応じた圧力のエアが供給される。すなわち、高圧のエア
は、エアタンク60から管路62を経由し、分岐管路62e、62fを介して、ブレーキ
バルブ61に供給される。ブレーキバルブ61からは、ブレーキペダル90の踏込み操作
量に応じた圧力のエアが管路63A、63Bに供給され、管路63Aの分岐管路63g、
63hを介して、第1軸11の左右のブレーキシリンダ91、92に供給されるとともに、
管路63Bの分岐管路63i、63jを介して、第4軸13の左右のブレーキシリンダ9
3、94に供給される。ブレーキペダル90が踏込まれている場合には、ブレーキペダル
90の踏込み操作量に応じた圧力のエアがブレーキシリンダ91、92、93、94に供
給される。
自動制御弁55、56、57、58には、3つの励磁コイル69a、69b、69cが
設けられている。自動制御弁55、56、57、58にはそれぞれ、ブレーキシリンダ6
5、66、67、68のエア圧P2L、P2R、P3L、P3Rを検出する圧力センサ69dが
設けられている。コントローラ30のブレーキシリンダ圧力制御部54は、後述の第2軸
ブレーキエア圧算出部52、第3軸ブレーキエア圧算出部53よりブレーキシリンダ65、
66、67、68の目標エア圧P2Ld、P2Rd、P3Ld、P3Rdを入力するとともに、圧
力センサ69dからブレーキシリンダ65、66、67、68の実際の検出エア圧P2L、
P2R、P3L、P3Rを入力し、目標エア圧P2Ld、P2Rd、P3Ld、P3Rdが得られるよ
うに、自動制御弁55、56、57、58の励磁コイル69a、69b、69cに対して
指令信号i(ia、ib、ic)を出力する。励磁コイル69aには、エア圧を増圧させ
るための指令信号iaが加えられ、励磁コイル69bには、エア圧を現状の圧力値に保持
させるための指令信号ibが加えられ、励磁コイル69cには、エア圧を減圧させるため
の指令信号icが加えられる。
増圧指令用の励磁コイル69aに指令信号iaが加えられると、励磁コイル69aが励
磁され、これによりエアタンク60からの元圧をブレーキシリンダ65、66、67、6
8に流入させてエア圧P2L、P2R、P3L、P3Rを増圧するように、自動制御弁55、5
6、57、58が動作する。また、保持指令用の励磁コイル69bに指令信号ibが加え
られると、励磁コイル69bが励磁され、自動制御弁出力側のエアの出入りを遮断してブ
レーキシリンダ65、66、67、68側のエア圧P2L、P2R、P3L、P3Rを保持する
ように、自動制御弁55、56、57、58が動作する。また、減圧指令用の励磁コイル
69cに指令信号icが加えられると、励磁コイル69cが励磁され、これによりエア圧
P2L、P2R、P3L、P3Rを減圧するように、自動制御弁55、56、57、58が動作
する。ブレーキペダル90には、ブレーキペダル90の踏込み操作量Sbを検出するセン
サ72が設けられている。センサ72の検出信号Sbは、コントローラ30のブレーキシ
リンダ圧力制御部54に入力される。コントローラ30のブレーキシリンダ圧力制御部5
4では、入力信号Sbに基づいて、ブレーキペダル90が操作されているか否かを判断し、
ブレーキペダル90が操作されていない場合には、上述したごとく、目標エア圧P2Ld、
P2Rd、P3Ld、P3Rdを得るために自動制御弁55、56、57、58の励磁コイル6
9a、69b、69cに対して指令信号iを出力するが、ブレーキペダル90が操作され
た場合には、目標エア圧P2Ld、P2Rd、P3Ld、P3Rdの指令入力にかかわらず、ブレ
ーキペダル90の操作に応じたエア圧が得られるように、自動制御弁55、56、57、
58の励磁コイル69a、69b、69cに対する指令信号iをオフにする。これは、オ
ペレータの意思にかかわらず自動的にかかるブレーキ力よりも、オペレータの意思に基づ
くマニュアル操作に応じたブレーキ力を優先するという考え方に基づくものである。自動
制御弁55、56、57、58の3つの励磁コイル69a、69b、69cのいずれにも
指令信号ia、ib、icが加えられず、3つの励磁コイル69a、69b、69cのい
ずれもが励磁しない場合には、自動制御弁55、56、57、58は、ブレーキシリンダ
65、66、67、68とブレーキバルブ61を結ぶ単純な配管として機能する。自動制
御弁55、56、57、58の励磁コイル69a、69b、69cのいずれもが励磁され
ない状態でブレーキペダル90が踏込まれると、エアタンク60からの高圧エアがブレー
キバルブ61に流入され、ブレーキバルブ61によって調整された圧力のエアがそのまま
自動制御弁55、56、57、58を通過してブレーキシリンダ65、66、67、68
に流入する。同様に自動制御弁55、56、57、58の励磁コイル69a、69b、6
9cのいずれもが励磁されない状態で、踏んでいたブレーキペダル90から足を離し開放
されると、Lにて示す経路にて、ブレーキシリンダ65、66、67、68に充満してい
た高圧エアが自動制御弁55、56、57、58をそのまま逆流して、ブレーキバルブ6
1から大気へ開放される。なお、本実施例の自動制御弁55、56、57、58は、2つ
以上の励磁コイルに同時に通電されないように構成されている。また、自動制御弁55、
56、57、58は、励磁のON-OFFによって十分高速に開閉されるように構成されて
いる。コントローラ30のブレーキシリンダ圧力制御部54では、以下のようなアルゴリ
ズムにて指令信号iを生成し出力する。たとえば目標エア圧を示す指令信号P3Rdが入力
されたものとする。指令信号P3Rdが入力されると、この指令信号が指示する目標エア圧
P3Rdと、対応する第3軸右自動制御弁58から入力された圧力センサ検出信号が指示す
る現在のエア圧P3Rを、下記のごとく比較し、比較結果に基づいて励磁コイル69a、69
b、69cのいずれか1つを励磁する。
以下、現在のエア圧P3Rが、目標エア圧P3Rd に一致するまで下記の処理を繰り返す。
1)P3R<P3Rdであれば、第3軸右自動制御弁58の励磁コイル69aを励磁して増圧
する。
2)P3RがP3Rdに概ね等しければ、第3軸右自動制御弁58の励磁コイル69b
を励磁して、エア圧力を保持する。
3)P3R>P3Rdであれば、第3軸右自動制御弁58の励磁コイル69cを励磁して
減圧する。つぎに、ヨー角制御部40で行なわれる処理について事例を挙げて説明す
る。図10は、本発明の制御が行なわれないとした場合の車両100の挙動の一例を
示す。図10(a)は、車両100がトンネル1000の出口からトンネル1000
の外に出た瞬間に強い横風を受けた場面を示す。トンネル1000を抜けた瞬間、ま
ず車両100の前部左側面に横風を受けるため、運転者が操舵操作しないにもかかわ
らず、前側のタイヤ21、22、23、24に右向きの横力Fhが生じ、車体101
には、時計回り(右回り)にヨーモーメントΔMnを生じて、ヨーレートrが発生す
る。
仮に、このまま操縦者がステアリングハンドルを操作しなければ、図10(b)に示す
ように、車両100は、同じ時計回り方向(右方向)に姿勢を変えて、直進方向から斜め
方向に向きを変えることなる。このとき運転者にとっては突然ハンドルをとられたような
感覚におそわれる。
車両100を直進方向に復帰させるには、運転者は受けた外乱の影響を打ち消す方向に、
つまり外乱によって生じたヨーモーメントΔMn、ヨーレートrを打ち消す方向にステア
リングハンドルをきって車両100の進路、姿勢を修正しなければならない。
このような事例に鑑みてヨー角制御部40では以下のような処理が実行される。
すなわち、
1)センサ部70で検出された制御対象の車両100のヨーレートr、ヨー加速度などか
ら、すべり角βを推定演算する。なお、すべり角を直接検出するようにセンサ部70を構
成してもよい。
2)つぎに、センサ部70より、制御対象の車両100のステアリングハンドルの操舵角
γを読み取る。
3)つぎに、操舵角γの大きさに基づいて、理想的なすべり角βdの大きさが求められる。
ここで、操舵角γの大きさに対応する理想的なすべり角βdのデータが予め記憶されてい
る。これは、操舵角γの大きさが定まれば、車両100を安定して走行させたり回頭性よ
く走行させたりすることができる理想的なすべり角βdの値あるいは範囲が一義的に定ま
ることによるからである。図10の事例のごとく、車両100が未だトンネル1000内
を走行していて、操舵角γを中立付近に保持して車両100を直進させている場合には、
理想的なすべり角βdは、ゼロであるべきであると判断される。
4)つぎに、理想的なすべり角βdと現実のすべり角βとの間で所定以上のずれが生じた
か否かが判断される。
図10の事例のように、車両100がトンネル1000を抜け出ると、車両100は横
風を受け、前述したごとく、外乱によってヨーモーメントΔMn、ヨーレートrが発生し、
車体101の向きと進行方向に差異が生じ、実際のすべり角βがゼロからずれてくる。
5)つぎに、理想的なすべり角βdと現実のすべり角βとの間で所定以上のずれが生じた
場合には、車体101に外乱のヨーモーメントΔMn、ヨーレートrを打ち消して、すべ
り角βを理想的なすべり角βd(ゼロ)にするためのヨーモーメントΔMdを与えるべき
と判断される。
6)つぎに、センサ部70の検出信号より、車体101に加わっている外乱のヨーモーメ
ントΔMn、ヨーレートrを推定演算あるいは直接的に検出し、これらを打ち消し、すべ
り角βを理想的なすべり角βd(ゼロ)にするために必要な車両100に与えるべきヨー
モーメントの目標値ΔMdを演算し、コントローラ30の配分部51に指令値として出力
する。
図10は、車両100の直進状態を保持する事例であるが、つぎに図11を参照して、
車両100が旋回しているときの事例について説明する。
図11は、車両100が右旋回している場合の各軌跡LN0、LN1、LN2、LN3
を示しており、いずれも同じ量の操舵角γを与えた場合の軌跡である。
軌跡LN0は、本発明の制御を行なわなかった場合の軌跡であり、路面状態が良好かつ
積載物が適正な範囲での軌跡を示している。これに対して、軌跡LN3は、本発明の制御
を行なわなかった場合の軌跡であり、路面状態が悪かったり、あるいは積載物が適正な範
囲を超えた場合の軌跡を示している。すなわち、操舵角γに比較して極端にすべり角βが
大きくなり、理想的なすべり角βdと現実のすべり角βとの間で大きなずれが生じると、
車両100は、右方向に大きくドリフトしたり、スピンアウトすることがある。
軌跡LN1は、軌跡LN0よりもアンダーステア傾向の軌跡である。軌跡LN1は、軌
跡LN0に比較して、すべり角βが小さい。軌跡LN2は、軌跡LN0よりもオーバース
テア傾向の軌跡である。軌跡LN2は、軌跡LN0に比較して、すべり角βが大きい。
車両旋回時にヨー角制御部40が行なう制御は、たとえば以下のとおりである。
a)車両100に直進性に与え車両旋回時の走行安定性を向上させたい場合には、軌跡L
N0よりもアンダーステアとなる軌跡LN1に沿って旋回走行させるために必要な、車体
101に左回りのヨーモーメントΔMLを演算して、これを目標値とするヨーモーメント
指令値ΔMdを出力する。このような制御を行なうためには、操舵角γに対して理想的な
すべり角βdの値は、小さめの値が予め設定される。
b)車両100に回頭性に与え車両旋回半径を小さくして車両旋回時の操縦性を向上させ
たい場合には、軌跡LN0よりもオーバーステアとなる軌跡LN2に沿って旋回走行させ
るために必要な、車体101に右回りのヨーモーメントΔMRを演算して、これを目標値
とするヨーモーメント指令値ΔMdを出力する。このような制御を行なうためには、操舵
角γに対して理想的なすべり角βdの値は、大きめの値が予め設定される。
c)路面状態が悪くなったり、積載物が適正範囲を超えて、車両100の理想的なすべり
角βdと現実のすべり角βとの間で大きなずれが生じ、軌跡LN3を辿るおそれがあると
判断された場合には、ドリフトやスピンアウトの挙動を打ち消すための車体左回りのヨー
モーメントを演算し、これを目標値とするヨーモーメント指令値ΔMdを出力する。なお、
どのような軌跡に復帰させるかは、操舵角γに対する理想的なすべり角βdの大きさの設
定次第である。アンダーステア傾向の軌跡に復帰させたい場合には、操舵角γに対して理
想的なすべり角βdの値を、小さめの値に設定すればよく、オーバーステア傾向の軌跡に
復帰させたい場合には、操舵角γに対して理想的なすべり角βdの値を、大きめの値に設
定すればよい。
つぎに、選択部80について説明する。
選択部80は、ブレーキ力Fbを与えるべき対象の車軸を選択操作するために設けられ
ている。選択部80は、たとえば運転席の操作盤に設けられた手動のスイッチで構成され
ている。
4軸、8輪の車両100の場合には、中間軸たる第2軸12、第3軸13のタイヤ23、
24、25、26にブレーキ力Fbを付与する。しかし、多軸車両100の場合には、同
じ中間軸であっても、操舵軸である第2軸12にブレーキをかけた場合と、非操舵軸であ
る第3軸13にブレーキをかけた場合とでは、後述するように、その目的、効果は異なる。
また、中間軸11、12の全てにブレーキをかけた場合と、いずれか一方の中間軸のみに
ブレーキをかけた場合とでは、その目的、効果は異なる。選択部80は、このような事情
に鑑み、状況に応じてブレーキをかけるべき車軸を選択するために設けられている。
操作盤には、「全中間軸制動」と「単軸制動」の2種類のモードを選択する手動スイッチ
が設けられている。「全中間軸制動」モードは、中間軸11、12の全てにブレーキをかけ
るときに選択されるモードである。「単軸制動」モードは、一方の中間軸のみにブレーキを
かけるときに選択されるモードである。4軸車両の場合には、「単軸制動」モードは、「第
2軸」を選択するモード、つまり第2軸12にブレーキをかけることを選択するモードと、
「第3軸」を選択するモード、つまり第3軸13にブレーキをかけることを選択するモー
ドに更に分けられている。以下、各モードを選択する目的、効果について説明する。
(1)「全中間軸制動」モード選択時
図2を用いて前述したように、ひとつのタイヤで発生させることができるブレーキ力F
bの最大値は、摩擦円Scによって制約される。このため、多数の中間軸、つまり4軸車
両100の場合には、第2軸12と第3軸13の両方のブレーキを、同時に作動させれば、
個々の中間軸単独にブレーキを作動させた場合よりも、強いヨーモーメントΔMを発生さ
せることができる。また、全ての中間軸(第2軸12と第3軸13)の合計で発生し得る
最大ブレーキ力が大きいため、ブレーキ力の強さの調整範囲が広く、ブレーキ力の自動調
整により、車両全体で発生し得るヨーモーメントΔMの強さの調整範囲を広くとれる利点
がある。
しかし、その反面、複数の中間軸の多数のタイヤにブレーキ力を作用させているため車
両全体に働くブレーキ力が強くなり、その結果、運転者がブレーキペダル90を踏まない
にもかかわらず、また公道走行仕様の車両にあってはブレーキ灯が点灯することなく、車
両100が急減速するおそれがある。このため車両100の速度が落ちて一時的にせよ作
業効率が損なわれたり、公道走行をしている他車両に影響を与えるおそれがある。したが
って、このモードは、減速してもよい状況、あるいは公道以外の場所で使用することが望
ましい。なお、車両100の減速度をセンサ部70の検出信号より検出して、減速度が所
定の値を超えた場合には、ブレーキ灯を自動的に点灯させるようにしてもよい。
(2)「単軸制動」モード選択時
公道走行時などの急減速が好ましくない状況では、比較的、ブレーキ力の小さなこの「単
軸制動」のモードを使用することが望ましい。「単軸制動」モードのうち、操舵軸である「第
2軸」モードを選択した場合と、非操舵軸である「第3軸」モードを選択した場合とでは、
発生するヨーモーメントΔMが、制御中における操舵角γの値と制動輪の役割(=外輪、
内輪)に応じて、車両の挙動が異なるので注意が必要である。
これについて図11、図12を併せ参照して説明する。
図12は、図11に示すように車両100の右旋回時に各中間軸の各タイヤにブレーキ
をかけたときにそれぞれ発生するヨーモーメントを対比した図である。
車両100の中間軸12、13の各タイヤ23、24、25、26には、同じ大きさF
0のブレーキ力F2L、F2R、F3L、F3Rが作用するものとする。また車両重心Gから左
右それぞれのタイヤまでの距離をd0とする。
車両重心Gから第2軸12の左タイヤ23までのヨーモーメントの腕の長さをd2Lと
し、車両重心Gから第2軸12の右タイヤ24までのヨーモーメントの腕の長さをd2R
とし、車両重心Gから第3軸13の左タイヤ25までのヨーモーメントの腕の長さをd3L
とし、車両重心Gから第3軸13の右タイヤ26までのヨーモーメントの腕の長さをd3R
とする。
例えば、車両100の挙動を安定化させる目的でアンダーステア傾向の軌跡LN1を辿
るべく、第2軸12だけにブレーキ力F0を与えて左回りのヨーモーメントΔML(F2L
×d2L)を発生させようとする場合には、同じブレーキ力F0を第3軸13だけに与えた
場合のヨーモーメント(F3L×d3L(=d0))よりも強いヨーモーメントが得られる。
これは、操舵軸である第2軸12を右に操舵して右旋回しているときに、外輪側(安定化
させる働きを持つ)の左タイヤ23に加わるブレーキ力F2Lのモーメントアームd2Lは、
操舵角γ、つまりタイヤの転舵角δの影響で、非操舵軸である第3軸13の同じ左タイヤ
25に加わるブレーキ力F3Lのモーメントアームd3L(=d0)よりも長くなるからであ
る。したがって、「単軸制動」モードで車両100をアンダーステア傾向で旋回走行させる
場合であって、ブレーキ力の調整範囲を広くとり車両全体で発生し得るヨーモーメントΔ
Mの強さの調整範囲を広くとりたい状況のときには、ブレーキ力が比較的強い「第2軸」
モードを選択することが望ましい。また、「単軸制動」モードで車両100をアンダーステ
ア傾向で旋回走行させる場合であって、ブレーキ力を弱くして車両100の減速を望まな
い状況のときには、ブレーキ力が比較的弱い「第3軸」モードを選択することが望ましい。
逆に、車両100の回頭性を高める目的でオーバーステア傾向の軌跡LN2を辿るべく、
第2軸12だけにブレーキ力F0を与えて右回りのヨーモーメントΔMR(F2R×d2R)
を発生させようとする場合には、同じブレーキ力F0を、第3軸13だけに与えた場合の
ヨーモーメント(F3R×d3R(=d0))よりも弱いヨーモーメントが得られる。これは、
操舵軸である第2軸12を右に操舵して右旋回しているときに、内輪側(=旋回半径を縮
小する働きを持つ)の右タイヤ24に加わるブレーキ力F2Rのモーメントアームd2Rは、
操舵角γ、つまりタイヤの転舵角δの影響で、非操舵軸である第3軸13の同じ右タイヤ
26に加わるブレーキ力F3Rのモーメントアームd3R(=d0)よりも短くなるからであ
る。したがって、「単軸制動」モードで車両100をオーバーステア傾向で旋回走行させる
場合であって、ブレーキ力の調整範囲を広くとり車両全体で発生し得るヨーモーメントΔ
Mの強さの調整範囲を広くとりたい状況のときには、ブレーキ力が比較的強い「第3軸」
モードを選択することが望ましい。また、「単軸制動」モードで車両100をオーバーステ
ア傾向で旋回走行させる場合であって、ブレーキ力を弱くして車両100の減速を望まな
い状況のときには、「第2軸」モードを選択することが望ましい。
また、非操舵軸の第3軸13にブレーキ力を与える「第3軸」モード選択時には、操舵
角角γ、つまりタイヤの転舵角δの影響でヨーモーメントが変動することがない。このた
め、第3軸13は、車両旋回走行時に操舵角γに依存することなく安定して一定の最大の
ヨーモーメントを発生させることができるという利点がある。したがって、「第3軸」モー
ドは、車両旋回走行時に安定して一定の最大ヨーモーメントを発生させることが必要な状
況で選択することが望ましい。
なお、上述の説明では、選択部80によって、オペレータが任意に、全ての中間軸を、
またはいずれか一方の中間軸を選択するものとしているが、このような選択をコントロー
ラ30が車両100の状態に応じて自動的に行なう実施も可能である。たとえば、車両1
00を状況に応じて、「第2軸」モードを自動的に選択してアンダーステア傾向で旋回走行
させたり、「第3軸」モードを自動的に選択してオーバーステア傾向で走行させるような実
施も可能である。
つぎに、コントローラ30の配分部51について説明する。
配分部51は、選択部80で選択されたモードと、ヨー角制御部40から出力されたヨ
ーモーメント指令値ΔMdを入力して、この指令値で指示されるヨーモーメント目標値Δ
Mdを、選択されたモードで指示される中間軸に配分する処理部である。配分部51では、
以下に示す処理にて、中間軸である第2軸12、第3軸13で発生すべきそれぞれの第2
軸ヨーモーメント指令値ΔM2、第3軸ヨーモーメント指令値ΔM3が算出される。
1)選択部80で第2軸12、第3軸13のいずれもが選択されてない場合には、
ΔM2=ΔM3=0 …(31)
とする。
2)選択部80で、第2軸12だけが選択された場合には、
ΔM2=ΔMd、ΔM3=0 …(32)
とする。ただし、ヨーモーメント目標値ΔMdが、その時点の操舵角γで第2軸12で発
生し得る最大ヨーモーメントを超える場合には、ヨーモーメントが頭打ちになって飽和す
ることになる。
3)選択部80で、第3軸13だけが選択された場合には、
ΔM3=ΔMd、ΔM2=0 …(33)
とする。ただし、ヨーモーメント目標値ΔMdが、第3軸13で発生し得る最大ヨーモー
メントを超える場合には、ヨーモーメントが頭打ちになって飽和することになる。
4)選択部80で、第2軸12と第3軸13が同時に選択された場合には、操舵角γに影
響されない第3軸13にヨーモーメントを主として配分し、第3軸13で発生し得るヨー
モーメントで不足する分を第2軸12でまかななうようにする。すなわち、
(a)ヨーモーメント目標値ΔMdが第3軸13で発生し得るヨーモーメントΔM3の最
大値ΔM3maxよりも小さい場合には、
ΔM3=ΔMd、ΔM2=0 …(34)
とする。
(b)ヨーモーメント目標値ΔMdが第3軸13で発生し得るヨーモーメントΔM3の最
大値ΔM3maxを超える場合には、
ΔM3=ΔM3max、ΔM2=ΔMd−ΔM3max …(35)
とする。ただし、第2軸のヨーモーメントの目標値ΔM2が、その時点の操舵角γで第2
軸12で発生し得る最大ヨーモーメントを超える場合には、ヨーモーメントが頭打ちにな
って飽和することになる。
上記のごとく算出された第2軸ヨーモーメント指令値ΔM2、第3軸ヨーモーメント指
令値ΔM3はそれぞれ、第2軸ブレーキエア圧算出部52、第3軸ブレーキエア圧算出部
53に出力される。
つぎに、第2軸ブレーキエア圧算出部52、第3軸ブレーキエア圧算出部53で行なわ
れる処理について説明する。
第2軸ブレーキエア圧算出部52は、センサ部70のセンサ71で検出されたステアリ
ングハンドルの操舵角γを入力するとともに、配分部51で算出された第2軸ヨーモーメ
ント指令値ΔM2を入力して、現在の操舵角γで、ヨーモーメント目標値ΔM2を得るた
めに必要な第2軸左ブレーキシリンダ65、第2軸右ブレーキシリンダ66の目標エア圧
P2Ld、P2Rdを算出して、この算出した目標エア圧P2Ld、P2Rdをブレーキシリンダ
圧力制御部54に出力する。
第3軸ブレーキエア圧算出部53は、配分部51で算出された第3軸ヨーモーメント指
令値ΔM3を入力して、ヨーモーメント目標値ΔM3を得るために必要な第3軸左ブレー
キシリンダ67、第3軸右ブレーキシリンダ68の目標エア圧P3Ld、P3Rdを算出して、
この算出した目標エア圧P3Ld、P3Rdをブレーキシリンダ圧力制御部54に出力する。
(第3軸ブレーキエア圧算出部53で行なわれる処理)
図13は、図5、図12と同じく車両100を上面からみた図で、第3軸13の左右の
タイヤ25、26それぞれにブレーキ力F3L、F3Rを作用させることによって、車両重
心G周りにヨーモーメントΔM3が発生することを説明する図である。
なお、車両100によっては、重心Gの位置は、左右のタイヤ間の中心に存在するとは
限らない。車両重心Gから左側タイヤの中心線までの距離をdLとし、車両重心Gから右
側タイヤの中心線までの距離をdRとすると、第3軸13の左タイヤ25に作用するブレ
ーキ力F3Lによるヨーモーメントの腕の長さはdLとなり、第3軸13の右タイヤ26に
作用するブレーキ力F3Rによるヨーモーメントの腕の長さはdRとなる。
第3軸左タイヤ25、第3軸右タイヤ26それぞれに作用するブレーキ力F3L、F3Rに
よって車両重心Gの時計方向(右方向)回りに発生するヨーモーメントΔM3は、
ΔM3=dR・F3R−dL・F3L …(1)
となる。
したがって、上記(1)式のヨーモメントΔM3の極性が正であるならば、車両100
に右回りのヨーモーメントが発生し、上記(1)式のヨーモメントΔM3の極性が負であ
るならば、車両100に左回りのヨーモーメントが発生することになる。
図14は、第3ブレーキエア圧算出部53、第2ブレーキ圧算出部52で行なわれる処
理手順を示すフローチャートである。
すなわち、入力された第3軸ヨーモメント目標値ΔM3の絶対値を読み取るとともに、
その極性が正であるか負であるかが判断される(ステップ201)。この結果、第3軸ヨー
モーメント目標値ΔM3の絶対値が無視できるほど小さい場合には、第3軸左タイヤ25、
第3軸右タイヤ26それぞれに作用させるべきブレーキ力F3L、F3Rはゼロとみなし、対
応する第3軸左ブレーキシリンダ67、第3軸右ブレーキシリンダ68の目標エア圧P
3Ld、P3Rdをゼロとする(ステップ203)。
第3軸ヨーモーメント目標値ΔM3の極性が正、つまりΔM3>0である場合には、Δ
M3>0となる条件で後述のごとく第3軸左ブレーキシリンダ67、第3軸右ブレーキシリ
ンダ68の目標エア圧P3Ld、P3Rdを算出する(ステップ202)。
第3軸ヨーモーメント目標値ΔM3の極性が負、つまりΔM3<0である場合には、Δ
M3<0となる条件で後述のごとく第3軸左ブレーキシリンダ67、第3軸右ブレーキシリ
ンダ68の目標エア圧P3Ld、P3Rdを算出する(ステップ204)。
(ΔM3>0となる条件(右回りのヨーモーメントを発生させる条件)で目標エア圧P3Ld、
P3Rdを算出する処理)
車両重心Gの周りにヨーモーメントを発生させるにあたり、車両100を無駄に減速さ
せないためには、発生させたい方向のヨーモーメントを打ち消す方向に作用するブレーキ
力はゼロにすることが望ましい。しかし、実際には、ブレーキ配管内に与圧を与えて応答
を早める必要があるなどの理由で、上記打ち消す方向のブレーキ力をゼロにすることはで
きず、最小の値を印加する必要がある。このため右方向のヨーモーメントを打ち消す方向
に作用するブレーキ力、つまり第3軸左タイヤ25に作用するブレーキ力F3Lを、最小の
ブレーキ力F3Lmin(固定値)とする。したがって、第3軸13に発生するヨーモーメント
ΔM3は、下記の式で与えられる。
ΔM3=dR・F3R−dL・F3Lmin -…-(2)
したがって、第3軸ヨーモーメント目標値ΔM3を発生させるために、右タイヤ26に作用
させるべきブレーキ力F3Rは、下式で与えられる。
F3R=(1/dR)・(ΔM3+dL・F3Lmin) …(3)
ブレーキシリンダ65〜68に加えられるエア圧Pと、対応するタイヤ23〜26に作
用するブレーキ力Fとの間には、F=f(P)なる関数関係がある。ここでは説明の便宜
のために、関数fを線形化して、
F=S0・P+Fe …(4)
とすれば、エア圧Pは、
P=(F−Fe)/S0 …(5)
で表される。ただし、S0はブレーキシリンダ65〜68の有効断面積であり、Feは定数
である。
よって、右回りのモーメントΔM3を発生させるために第3軸13の左右タイヤ25、2
6に対応するブレーキシリンダ67、68に印加すべきエア圧P3Ld、P3Rdは、下式で
与えられる。
第3軸右タイヤ26に対応するブレーキシリンダ68に印加すべきエア圧P3Rdは、
(3)式、(5)式を用いて、
P3Rd=(F3R−Fe)/S0
=(1/S0・dR)・(ΔM3+dL・F3Lmin)−Fe/S0 …(6)
となる。
第3軸左タイヤ25に対応するブレーキシリンダ67に印加すべきエア圧P3Ldは、既
知のブレーキ力F3Lmin(固定値)、(5)式を用いて、
P3Ld=(F3Lmin−Fe)/S0 …(7)
となる。
このようにして、ΔM3>0となる条件で第3軸左ブレーキシリンダ67、第3軸右ブレ
ーキシリンダ68に印加すべき目標エア圧P3Ld、P3Rdがそれぞれ、上記(7)式、(6)
式のごとく算出される。

(ΔM3<0となる条件(左回りのヨーモーメントを発生させる条件)で目標エア圧P3Ld、
P3Rdを算出する処理)
上述したのと同様に、左方向のヨーモーメントを打ち消す方向に作用するブレーキ力、
つまり第3軸右タイヤ26に作用するブレーキ力F3Rは、最小のブレーキ力F3Rmin(固
定値)とする。したがって、第3軸13に発生するヨーモーメントΔM3は、下記の式で
与えられる。
ΔM3=dR・F3Rmin−dL・F3L -…-(8)
したがって、第3軸ヨーモーメント目標値ΔM3を発生させるために、左タイヤ25に作用
させるべきブレーキ力F3Lは、下式で与えられる。

F3L=(1/dL)・(dR・F3Rmin−ΔM3) …(9)
よって、左回りのモーメントΔM3を発生させるために第3軸13の左右タイヤ25、2
6に対応するブレーキシリンダ67、68に印加すべきエア圧P3Ld、P3Rdは、下式で
与えられる。
第3軸左タイヤ25に対応するブレーキシリンダ67に印加すべきエア圧P3Ldは、
(9)式、前記した(5)式を用いて、
P3Ld=(F3L−Fe)/S0
=(1/S0・dL)・(dR・F3Rmin−ΔM3)−Fe/S0 …(10)
となる。
第3軸右タイヤ26に対応するブレーキシリンダ68に印加すべきエア圧P3Rdは、既
知のブレーキ力F3Rmin(固定値)、前記した(5)式を用いて、
P3Rd=(F3Rmin−Fe)/S0 …(11)
となる。
このようにして、ΔM3<0となる条件で、第3軸左ブレーキシリンダ67、第3軸右ブ
レーキシリンダ68に印加すべき目標エア圧P3Ld、P3Rdがそれぞれ、上記(10)式、
(11)式のごとく算出される。
(第2軸ブレーキエア圧算出部52で行なわれる処理)
図15は、図5、図12、図13と同じく車両100を上面からみた図で、第2軸12
の左右のタイヤ23、24それぞれにブレーキ力F2L、F2Rを作用させることによって、
車両重心G周りにヨーモーメントΔM2が発生することを説明する図である。
車両重心Gから直進時における左側タイヤの中心線までの距離をdLとし、車両重心G
から直進時における右側タイヤの中心線までの距離をdRとすると、直進時に第2軸12
の左タイヤ23に作用するブレーキ力F2Lによるヨーモーメントの腕の長さはdLとなり、
直進時に第2軸12の右タイヤ24に作用するブレーキ力F2Rによるヨーモーメントの
腕の長さはdRとなる。
車両重心Gと第2軸12との距離をhとすると、第2軸右タイヤ24の転舵角がδRで
あるときに第2軸右タイヤ24に作用するブレーキ力F2Rによるヨーモーメントの腕の
長さDRは、
DR=dR・cosδR−hsinδR …(12)
となる。
一方、第2軸左タイヤ23の転舵角がδLであるときに第2軸左タイヤ23に作用する
ブレーキ力F2Lによるヨーモーメントの腕の長さDLは、
DL=dL・cosδL+hsinδL …(13)
となる。
ステアリングハンドルの角度(操舵角)γと、第2軸左右タイヤ23、24の転舵角度
δL、δRは、ステアリングのリンク機構の構造できまる関数fL、fRを用いて下式で表
される。
δL=fL(γ) …(14)
δR=fR(γ) …(15)
これら(12)、(13)、(14)、(15)式より、
DR=dR・cos(fR(γ))−hsin(fR(γ)) …(16)
DL=dL・cos(fL(γ))+hsin(fL(γ)) …(17)
が得られる。
上記式に実施例の車体101の寸法を適用した場合の操舵角γと、左右のタイヤ23、
24までのモーメント腕の長さDR,DLを車幅W0の半分D0を基準(=1)にしたパラメ
ータDR/D0,DL/D0との関係を、図16に示す。
例えば、ステアリングハンドルを右にきって操舵角を、ある正の値γにすると、DR/D
=0.80, DL/D0=1.15となり、右タイヤ24のブレーキに比べ左タイヤ23の
ブレーキによるヨーモーメントの腕の長さが大きい。この事例では、操舵角γで右旋回し
ているとき、左右のタイヤ23、24に同じブレーキ力をかければ、右タイヤ24よりも
左タイヤ23のブレーキによるヨーモメントが多く発生するので、車体全体としては反時
計回りのヨーモーメントが発生することがわかる。
第2軸左タイヤ23、第2軸右タイヤ24それぞれに作用するブレーキ力F2L、F2Rに
よって車両重心Gの時計方向(右方向)回りに発生するヨーモーメントΔM2は、
ΔM2=DR・F2R−DL・F2L …(18)
となる。
したがって、上記(18)式のヨーモメントΔM2の極性が正であるならば、車両10
0に右回りのヨーモーメントが発生し、上記(18)式のヨーモメントΔM2の極性が負
であるならば、車両100に左回りのヨーモーメントが発生することになる。
よって前述したのと同様に図14に示すフローチャートにしたがって演算処理を行えば
よい。
(ΔM2>0となる条件(右回りのヨーモーメントを発生させる条件)で目標エア圧P2Ld、
P2Rdを算出する処理)
この場合、前述したのと同様に、右方向のヨーモーメントを打ち消す方向に作用するブ
レーキ力、つまり第2軸左タイヤ23に作用するブレーキ力F2Lを、最小のブレーキ力
F2Lmin(固定値)とする。
したがって、前述したのと同様に右方向のヨーモーメントΔM2を発生させるために第
2軸12の右タイヤ24に対応するブレーキシリンダ66に印加すべきエア圧P2Rdは、
下式で与えられる。
P2Rd=(F2R−Fe)/S0
=(1/S0・DR)・(ΔM2+DL・F2Lmin)−Fe/S0 …(19)
一方、第2軸左タイヤ23に対応するブレーキシリンダ65に印加すべきエア圧P2Ld
は、既知のブレーキ力F2Lmin(固定値)を用いて、
P2Ld=(F2Lmin−Fe)/S0 …(20)
となる。
このようにして、ΔM2>0となる条件で第2軸左ブレーキシリンダ65、第2軸右ブレ
ーキシリンダ66に印加すべき目標エア圧P2Ld、P2Rdがそれぞれ、上記(20)式、
(19)式のごとく算出される。
(ΔM2<0となる条件(左回りのヨーモーメントを発生させる条件)で目標エア圧P2Ld、
P2Rdを算出する処理)
この場合、前述したのと同様に、左方向のヨーモーメントを打ち消す方向に作用するブ
レーキ力、つまり第2軸右タイヤ24に作用するブレーキ力F2Rを、最小のブレーキ力
F2Rmin(固定値)とする。
したがって、前述したのと同様に左方向のヨーモーメントΔM2を発生させるために第
2軸12の左タイヤ23に対応するブレーキシリンダ65に印加すべきエア圧P2Ldは、
下式で与えられる。
P2Ld=(F2L−Fe)/S0
=(1/S0・DL)・(DR・F2Rmin−ΔM2)−Fe/S0 …(21)
一方、第2軸右タイヤ24に対応するブレーキシリンダ66に印加すべきエア圧P2Rd
は、既知のブレーキ力F2Rmin(固定値)を用いて、
P2Rd=(F2Rmin−Fe)/S0 …(22)
となる。
このようにして、ΔM2<0となる条件で第2軸左ブレーキシリンダ65、第2軸右ブレ
ーキシリンダ66に印加すべき目標エア圧P2Ld、P2Rdがそれぞれ、上記(21)式、
(22)式のごとく算出される。
図17は、コントローラ30で行なわれる処理手順のフローチャートを示している。
まず、センサ72の検出信号Sbに基づいて運転者がブレーキペダル90を踏込み操作
しているか否かが判断される(ステップ301)。この結果、運転者がブレーキペダル90
を踏込み操作していると判断された場合には、自動制御弁55〜58の励磁コイル69a、
69b、69cに対する指令信号ia、ib、icをオフにし、励磁コイル69a、69
b、69cの励磁を中止する。これによりブレーキペダル90の操作量Sbに対応するブ
レーキ力Sbが各タイヤ21〜28に作用する(ステップ307)。
ステップ301で、運転者がブレーキペダル90を踏込み操作していないと判断された
場合には、選択部80において、第3軸13が選択されたか否かが判断される(ステップ
302)。第3軸13が選択されている場合には、前述の(33)、(34)式を用いて、ヨ
ーモーメントの目標値ΔMdを、主として第3軸13に配分する(ステップ303)。
つぎに、選択部80において、第2軸13が選択されたか否かが判断される(ステップ
304)。
この結果、選択部80で第2軸12、第3軸13のいずれもが選択されてないと判断さ
れた場合には、前述の(31)式を用いて、第2軸12、第3軸13に配分すべきヨーモ
ーメントΔM2、ΔM3をそれぞれゼロにする。
選択部80で、第2軸12だけが選択されていると判断された場合には、前述の(32)
式を用いて、ヨーモーメントの目標値ΔMdを、第2軸12に配分する。
選択部80で、第2軸12と第3軸13が同時に選択された場合には、(34)式あるい
は(35)式に従い、第2軸12に配分すべきヨーモーメントΔM2をゼロにするか、あ
るいは第3軸13が発生するヨーモーメントで不足する分を第2軸12でまかななうよう
にする(ステップ305)。
つぎに、このように第2軸12、第3軸に配分されたヨーモーメントΔM2、ΔM3が得
られるように、第2軸12、第3軸13のブレーキシリンダ65、66、67、68のエ
ア圧P2L、P2R、P3L、P3Rを調整し、車両100にヨーモーメント目標値ΔMdが発
生するようにヨーモーメントを制御する(ステップ306)。
なお、以上の説明では、図5に例示するように、車両100の前から後ろに向かって第
1軸11、第2軸12、第3軸12、第4軸14の車軸が設けられた車軸数が4の車両1
00を想定して説明した。しかし、少なくとも車軸数が3つあり、最も前の車軸と最も後
ろの車軸を除いた中間軸が少なくとも1つある車両100であれば、同様にして本発明を
適用することができる。
図4は、車両100の前から後ろに向かって第1軸11、第2軸12、第3軸13の車
軸が設けられた車軸数が3の車両100を例示している。なお、この車両100は、第1
軸11、第2軸12が操舵軸で、第3軸13が非操舵軸として構成されている。このよう
な3軸車両100についても、上述した実施例と同様に、中間軸である第2軸12のタイ
ヤ23、24に加えるブレーキ力を調整することにより、車両100のヨーモーメントを
制御することができる。
同様に、5軸以上の車軸を備えた車両、3軸以上の中間軸を備えた車両にも本発明を適
用することができる。
図1は、4軸、8輪の車両の上面図で、2軸、4輪の車両と等価な車軸、車輪を説明する図である。 図2(a)、(b)、(c)は、摩擦円を説明する図である。 図3は、車両が高速走行中に、レーンチェンジされて急激かつ正反対の方向への操舵が連続的に行なわれた場合の車両の挙動を説明する図である。 図4は、3軸、6輪の車両の上面図である。 図5は、4軸、8輪の車両の上面図である。 図6は、図5に示す車両の駆動系の装置の構成図である。 図7は、実施形態の制御系の装置構成を示すブロック図である。 図8は、図7に示す制御系の装置の構成例を示したブロック図である。 図9は、図5に示す車両のブレーキ系の装置の構成図である。 図10(a)、(b)は、本発明の制御が行なわれないとした場合の車両の挙動の一例を示した図である。 図11は、車両が右旋回している場合の各軌跡を示した上面図である。 図12は、図11に示す車両右旋回時に各中間軸の各タイヤにブレーキをかけたときにそれぞれ発生するヨーモーメントを対比した図である。 図13は、車両の上面図で、第3軸の左右のタイヤそれぞれにブレーキ力を作用させることによって、車両重心周りにヨーモーメントが発生することを説明する図である。 図14は、第3ブレーキエア圧算出部、第2ブレーキ圧算出部で行なわれる処理手順を示すフローチャートである。 図15は、車両の上面図で、第2軸の左右のタイヤそれぞれにブレーキ力を作用させることによって、車両重心周りにヨーモーメントが発生することを説明する図である。 図16は、操舵角と、左右のタイヤまでのモーメント腕の長さとの関係を示したグラフである。 図17は、コントローラで行なわれる処理の手順を示したフローチャートである。 図18は、2軸、4輪の車両の上面図である。 図19(a)は、図1の車両の後輪タイヤにブレーキをかけた場合に発生するヨーモーメントを説明する図で、図19(b)は、図1の車両の前輪タイヤにブレーキをかけた場合に発生するヨーモーメントを説明する図である。
符号の説明
12 第2軸(中間軸)、13 第3軸(中間軸)、24、25、26、27 タイヤ(中
間軸のタイヤ)、30 コントローラ、40 ヨー角制御部、50 ヨーモーメント制御部、
55〜58 自動制御弁(中間軸の自動制御弁)、65〜68 ブレーキシリンダ(中間軸
のブレーキシリンダ)、100 車両

Claims (4)

  1. 3以上の車軸が設けられた車両の最も前の車軸と最も後ろの車軸を除いた
    中間軸のタイヤに加えるブレーキ力を調整することにより、車両のヨーモーメントを制御
    するヨーモーメント制御手段を備えたことを特徴とする車両のヨーモーメント制御装置。
  2. 車体の前から後ろに向かって第1軸、第2軸、第3軸の車軸が設けられた
    車軸数が3の車両に適用され、
    前記ヨーモーメント制御手段は、中間軸である第2軸のタイヤに加えるブレーキ力を調
    整することにより、車両のヨーモーメントを制御すること
    を特徴とする請求項1記載の車両のヨーモーメント制御装置。
  3. 車体の前から後ろに向かって第1軸、第2軸、第3軸、第4軸の車軸が設
    けられた車軸数が4の車両に適用され、
    前記ヨーモーメント制御手段は、中間軸である第2軸または/および第3軸のタイヤに
    加えるブレーキ力を調整することにより、車両のヨーモーメントを制御すること
    を特徴とする請求項1記載の車両のヨーモーメント制御装置。
  4. 中間軸が、操舵される軸である場合には、操舵角に応じて、中間軸のタイ
    ヤに加えるブレーキ力を調整すること
    を特徴とする請求項1記載の車両のヨーモーメント制御装置。
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