JP2008154368A - 整流子 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータの小形軽量化、性能向上、高入力化、高速化に伴いブラシ寿命が極端に短くなる課題がある。
【解決手段】銅または銅合金よりなる整流子片1の回転方向両側端面に溝部2を形成し、この溝部2にバリスタ電圧が子片間電圧以上で、かつ整流切替時に発生する誘起電圧以下に設定された円筒状のバリスタピン3を圧入し、前記バリスタピン3の表面には異方導電性接着剤6を塗布し、バリスタピン3をブラシ7の接触位置より巻線側に配置して、整流子片1により押圧保持された状態でモールド樹脂4により一体成形されたことを特徴とするモールド整流子。
【選択図】図2

Description

本発明は、掃除機や電動工具などに使用される整流子モータの整流を行うモールド整流子および前記整流子を用いた電動送風機に関するものである。
家電機器の掃除機に使用される整流子モータは、モータの小型軽量化、性能向上、高入力化に伴い、モータ回転中にブラシと整流子片間に生ずる火花放電(以下、「スパーク」と記載する。)が大きくなり、ブラシ寿命が確保できなくなる課題がある。
前記課題を解決するためには、整流時に発生する誘起電圧を小さくする必要がある。この誘起電圧は、交流電動機においては、速度起電力とリラクタンス電圧および整流子とブラシの接触電圧により発生するものである。この誘起電圧が高くなると整流時にスパークが発生する確率が高くなる。従来、この対策としては、ブラシの比抵抗の高いものを使用したり、電機子のインダクタンスを少なくしたりするなどの対策を行い、ブラシ寿命を確保してきた。
しかしながら、前記のような方法では、モータの効率を低下させ、ブラシの発熱によりさらにブラシの摩耗を増加させるもので、最良の対策ではないのが現状である。
また、整流子片間に電気的接合した誘起電圧を低減させることができる手段を備えた整流子の場合、すなわち可変抵抗体(以下、バリスタという)を備えた整流子の場合、整流切り替わり時に発生する誘起電圧を低減する効果が得られ、ブラシ寿命の長寿命化とモータノイズの低減が可能となる。
しかしながら、掃除機に使用されるモータは高電圧(50〜350V)であり、バリスタ電圧の低いバリスタを使用すると、整流子片間短絡を引き起こす危険性がある。また、円盤状のバリスタを外付けすると、高速回転に耐え切れず破壊の危険性もある。更には、掃除機に使用される整流子モータは、情報機器などに使用される低電圧駆動の整流子モータよりも整流子片の数が多いため、電気的接合箇所が小さくなるうえ、接合箇所も増加することから、製造が極めて困難であった。
特開平2−151243号公報 特開平10−308302号公報
本発明の課題は、安価で生産性の高い誘起電圧低減機能を有するモールド整流子を使用することで、ブラシの長寿命化を図り、高電圧で使用の可能な整流子モータを得ることにある。
前記課題を解決するために、本発明の第1の発明(以下、「第1発明」と記載する。)は、電機子巻線に接続された銅または銅合金よりなる整流子を備えた電機子と、銅子片間に圧入した前記整流子に接触しながら電気を供給するブラシとが、接触している間の銅子片間の短絡回路内において誘起する電圧を低減する手段を備えた整流子である。
また、前記課題を解決する本発明の第2の発明(以下、「第2発明」と記載する。)は、第1発明に使用する銅子片間に圧入した前記整流子に接触しながら電気を供給するブラ
シとが、接触している間の銅子片間の短絡回路内において誘起する電圧を低減する手段がバリスタ素子であって、酸化亜鉛系組成物で押出成形により成形され焼成されたものとし、整流子子片間のバリスタ電圧は、整流子子片間電圧<短絡回路内に誘起する電圧の1/2以下にバリスタ電圧を設定したことを特徴とする整流子である。
また、前記課題を解決する本発明の第3の発明(以下、「第3発明」と記載する。)は、請求項1または請求項2記載の誘起する電圧を低減する手段が、ブラシ接触位置より巻線側に埋設、配置したことを特徴とする整流子である。
また、前記課題を解決する本発明の第4の発明(以下、「第4発明」と記載する。)は、円筒状のバリスタの表面に異方性の導電接着剤を塗布し、圧入したことを特徴とする請求項1、請求項2および請求項3記載のモールド整流子である。
また、前記課題を解決する本発明の第5の発明(以下、「第5発明」と記載する。)は、かかる整流子を用いた電動送風機を用いた掃除機である。
本発明は、安価で生産性の高い誘起電圧低減機能を有するモールド整流子を使用することで、ブラシの長寿命化を図り、高電圧で使用の可能な整流子モータを提供することが可能である。
次に本発明について詳細に記載する。
第1発明は、電機子巻線に接続された銅または銅合金よりなる整流子を備えた電機子と、銅子片間に圧入した前記整流子に接触しながら電気を供給するブラシとが、接触している間の銅子片間の短絡回路内において誘起する電圧を低減する手段を備えた整流子である。
第2発明は、第1発明に使用する銅子片間に圧入した前記整流子に接触しながら電気を電機子に供給するブラシとが、接触している間の銅子片間の短絡回路内において誘起する電圧を低減する手段が、バリスタ素子であって、酸化亜鉛系組成物で押出成形により成形され焼成されたものとし、整流子子片間のバリスタ電圧は、整流子子片間電圧<短絡回路内に誘起する電圧の1/2以下にバリスタ電圧を設定したことを特徴とする整流子である。
バリスタ素子とは、非直線性を示す可変抵抗素子であり、バリスタの特性は、以下の数式により表わされる。
ここでIは、バリスタ素子間に印加される電流、Kはバリスタ定数、Vはバリスタ電圧、αは非直線抵抗指数を表わす。バリスタ特性は、適正なバリスタ電圧と高い非直線抵抗指数を持つことが要求される。
適正なバリスタ電圧とは、電源電圧÷(整流子片数÷極数)により決定される整流子片間電圧以上に設定され、さらに回転速度と電機子と界磁巻線量によって決定される子片間
に発生する速度電圧とリラクタンス電圧による誘起電圧以下に設定する必要がある。
また、非直線抵抗指数αは、20〜50程度のものが良く、α値が高すぎると急激な電流がバリスタに流れることになり、バリスタの発熱が大きくなってしまう。
バリスタ素子の組成物は、酸化亜鉛(ZnO)粉末に酸化ビスマス(Bi23)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マンガン(MnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化クロム(Cr23)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン(Sb23)などの酸化物を添加したものである。
前記、酸化亜鉛を主体とする粉末にポリビニルアルコールなどのバインダーを添加し成形が可能な粉末とする。しかしながら、整流子片の回転方向両側端面に合致する円筒状の径は1〜2mm程度で長さは5〜15mm程度のものであるため、前記粉末を金型内に充填しプレス成形により円筒状の成形品を得るには、非常に困難であり、生産性の観点から見ても非常に不利となる。従って、前記粉末を押出成形することで、連続的にしかも寸法精度の良好な円筒状成形品を得ることが可能となる。
掃除機や電動工具などに使用される整流子モータの使用電圧は100Vおよび240Vの交流で使用されるのが一般的であり、前記モータに使用される整流子子片間電圧は、100V仕様の場合は8V、240V仕様の場合は30V程度である。また、ブラシ間電圧をオシロスコープにて測定すると、短絡回路内で誘起される電圧は、100V仕様の場合は約80V、240V仕様の場合は200Vである。上記の場合、100V仕様の整流子片間バリスタ電圧αは、誘起電圧の1/2以下であることが望ましいため、(数2)のようになる。
また、240V仕様の整流子片間バリスタ電圧αは、同様の理由で(数3)のようになる。
上記により、整流切替時の短絡回路内に発生する誘起電圧を低減することができるものである。
第3発明は、請求項1または請求項2記載の誘起する電圧を低減する手段が、ブラシ接触位置より巻線側に埋設、配置したことを特徴とする整流子である。
ブラシ短絡回路内の誘起電圧を低減するためには、巻線側で誘起電圧が発生することから、できるだけ巻線との接続部の近くにバリスタピンを配置、埋設させることが望ましい。これにより、より効率的な誘起電圧の低減が可能となる。
具体的には、バリスタピンがブラシ摺動部よりも巻線側に位置するように埋設する。こ
れは、ブラシ摺動接点部に流れる電流を有効にバリスタ回路側に流すためである。
第4発明は、円筒状のバリスタの表面に異方導電性接着剤を塗布し、圧入したことを特徴とする請求項1、請求項2および請求項3記載のモールド整流子である。
異方性導電材料は、接着、導電、そして絶縁という3つの機能を同時に有する接続材料である。特に、ACF(異方性導電フィルム)およびACP(異方性導電ペースト)と呼ばれる高分子材料は、熱圧着加工により、圧着部における厚み方向に対しては導通性、一方、その圧着部面方向に対しては絶縁性という電気的異方性を示す。一般的に、接着剤(エポキシ樹脂など)の中に導電性の微粒子粉末を存在させ、圧力がかかった部分のみに導電性を発揮するものである。これは、整流子片間に円筒形バリスタピンを挿入し、成形金型に圧入時にバリスタピンと整流子片の接触面のみに圧力がかかり、整流子片とバリスタピンとの電気的接触を安定化するものである。導電性の微粒子粉末の配合量は、入れすぎると短絡するので注意が必要である。
第5発明は、かかる整流子を用いた電動送風機を用いた掃除機である。
以下本発明の実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
図4は、従来の、セラミックピンを整流子間に入れたモールド整流子である。図1は、本発明のモールド整流子を回転軸に垂直な面で切断した断面図を示すものである。
整流子片1は、導電性が良好な電気銅に耐加工性を向上するため約0.08wt%の銀が添加された銅合金を使用している。子片形状は異形ダイスを使用し、連続的に引き抜いた状態で長手方向の子片形状を作り、その後プレス加工にて最終形状に加工している。
バリスタピン3は、整流子片の回転方向両側端面の溝部2と合致する円筒状のバリスタピンである。前記、整流子片24個とバリスタピン24本を交互に組合せ仮組みし、モールド成形用リングに圧入することで、整流子片1によりバリスタピン3が押圧保持された状態となっている。
また、バリスタピン3には酸化亜鉛(ZnO)粉末に酸化ビスマス(Bi23)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マンガン(MnO)、酸化クロム(Cr23)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン(Sb23)の酸化物を添加し混合した粉末を使用している。前記粉末にバインダーとしてポリビニルアルコールを添加し、成形可能な状態とする。その後、押出成形を行い、所定の長さに切断して焼成しバリスタピン3を作製した。
なお、酸化亜鉛粉末の平均粒径は0.6μm〜3μmを使用し、焼成温度は900℃〜1300℃、焼成時間は10時間から30時間、昇温速度は25℃/時間〜50℃/時間の条件にて実施することで、酸化亜鉛の結晶粒径を調整し、所定のバリスタ電圧になるよう調整を行った。
モールド樹脂4は、ガラス繊維や無機充填剤が添加されたフェノール樹脂を使用して成形を実施した。ボス5は、モータシャフトとの固定に使用されるものである。
次に図2は、上記バリスタピン3の中心aをブラシ7の中心bより巻線側に配置埋設した状態を示したものである。この時、整流子片1とバリスタピン3が電気的接続する部分
が、できるだけブラシ摺動部より巻線側になるように埋設することが重要である。
図3は、上記バリスタピン3の表面に異方導電性接着剤6を塗布した状態を示す。これを図1のように整流子片1の間に圧入することによって、バリスタピン3と整流子片1との接合状態を安定化させることができる。
表1に示すように、円筒形のバリスタピン3に異方導電性接着剤6を表面に処理を実施したものと未処理の整流子子片を各々組み合わせた状態でモールド整流子を作製した。なお、バリスタピン径を選定することでモールド成形用リングに圧入する時の圧入荷重は2kNになるよう調整した。
バリスタピン3は酸化亜鉛粉末の平均粒径、焼成温度、焼成時間を検討し、整流子片間のバリスタ電圧を表1に示すように誘起電圧に対し三種類(80V、170V、250V)に設定し、モータは、吸込み風量1.5m3にて100Vの交流電圧を印加し、44000r/minの回転数の条件でブラシ(モータ)寿命を測定した。さらにバリスタピン3の埋設位置をブラシ7の摺動部より巻線側に配置した。
表1は、ピンの材質を一般的なセラミック材料である酸化アルミニウムを使用した以外は本発明と同様にしてモールド整流子を作製し、本発明と同一条件にてブラシ(モータ)寿命を測定したものである。
実験結果としては、以下の通りである。
表1において、酸化亜鉛系組成物(バリスタピン)を用いた場合は、酸化アルミニウム製のピンを使用した場合よりも長寿命の効果があることがわかる。
さらに、酸化亜鉛系組成物(バリスタピン)を用いた場合で、かつ異方導電性接着剤を塗布した場合は、塗布しない場合よりも長寿命の効果があることがわかる。
また、前記の最もブラシ寿命が長い場合は、酸化亜鉛系組成物(バリスタピン)を用いた場合でかつ異方導電性接着剤を塗布し、モールド成形後の整流子子片間のバリスタ電圧が80V(すなわち、誘起電圧に伴うパルス電圧が170Vの1/2以上)であることがわかる。
本発明は、安価で生産性の良い長寿命な整流子モータを提供できることから、高電圧で使用される掃除機用のモータなどに有用である。
本発明のモールド整流子を回転軸に垂直な面で切断した断面図 バリスタピンの中心aをブラシの中心bより巻線側に配置埋設した状態を示す図 バリスタピンの表面に異方導電性接着剤を塗布した状態を示す図 従来のモールド整流子を回転軸に垂直な面で切断した断面図
符号の説明
1 整流子片
2 整流子間溝部
3 バリスタピン
4 モールド樹脂
5 ボス
6 異方導電性接着剤
7 ブラシ
a バリスタピンの中心
b ブラシの中心

Claims (5)

  1. 電機子巻線に接続された銅または銅合金よりなる整流子を備えた電機子と、銅子片間に圧入した前記整流子に接触しながら電気を供給するブラシとが、接触している間の銅子片間の短絡回路内において誘起する電圧を低減する手段を備えた整流子。
  2. 誘起する電圧を低減する手段として、銅子片間を円筒状のバリスタによって電気的に接続し、整流子子片間電圧以上かつ短絡回路内に誘起する電圧の1/2以下にバリスタ電圧を設定したことを特徴とするモールド整流子。
  3. 請求項1または請求項2記載の誘起する電圧を低減する手段、およびバリスタをブラシ接触位置より巻線側に埋設、配置したことを特徴とする。
  4. 円筒状のバリスタの表面に異方導電性接着剤を塗布し、圧入したことを特徴とする請求項1、請求項2および請求項3記載のモールド整流子。
  5. 請求項1または請求項2記載のモールド整流子を使用した掃除機用モータ。
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