JP2008136971A - 意匠性塗膜、その形成方法、塗装物品、塗装金属板及びその製造方法 - Google Patents

意匠性塗膜、その形成方法、塗装物品、塗装金属板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】これまで塗装によっては形成することができなかった独特の光輝感及び立体感を有する新規な外観を有する意匠性塗膜を提供する。
【解決手段】光反射の異方性を生じさせるエンボス面を表面に有する着色塗膜層からなる意匠性塗膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、意匠性塗膜、その形成方法、塗装物品、塗装金属板及びその製造方法に関する。
各種工業製品、建築材料、大型構造物等の多くの物品の表面には、表面保護、意匠性の付与を目的として塗膜を形成することが行われている。このような塗膜によって物品の表面に意匠性を付与するに際しては、塗料中に種々の成分を配合するほかに、塗膜自体に加工を施すことによって特異な外観を得る試みが多くなされている。
このような意匠性塗膜の一つとして、塗膜表面に凹凸を形成した塗膜を挙げることができる。このような塗膜としては、例えば、凹凸パターンが形成されたデザインローラを塗膜に押し付けることによって、塗膜表面に凹凸パターンを形成させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
このような凹凸パターンは、ピッチの大きい凹凸を塗膜表面に形成させ、この凹凸によって生じる凹凸パターンを視覚的に認識させることによって、平滑な塗膜では得られない立体的な意匠性を得ようとするものである。
しかし、近年、消費者の嗜好の多様化によって、消費者が商品を選択する上での意匠の重要性が益々高まっている。このため、このような単純な凹凸パターンとは異なる新たな外観を有する塗膜が要望されている。
特許文献2には、透明プラスチック材料に着色ビーズを所定量混合し成形してなる上地フィルムに、着色した下地フィルムを加熱融着して積層するとともに、上地フィルム層の表面をエンボス加工により艶消し仕上げしたプラスチック化粧シートが開示されている。このシートの下地には、着色したフィルムが用いられており、上地としては、成形されたフィルムが用いられている。また、エンボス加工によって行われているのは、艶消し仕上げである。よって、塗膜に新たな意匠性を付与することは記載されていない。
特許文献3には、着色された基材の表面に、彫刻模様状に透明化した樹脂層が設けられ、基材の色が模様状に発現した着色エンボス紙が開示されている。このエンボス紙は基材に着色がされたものであり、エンボス加工が施された樹脂層は透明である。また、基材は、紙、プラスチックフィルム、合成紙等であり、エンボス加工によって形成されているのは、彫刻模様であり、本発明のように、塗膜に新たな意匠性を付与することは記載されていない。
特開2000−33332号公報 特開平5―318693号公報 特開2002−285492号公報
本発明は、上記現状に鑑み、これまで塗装によっては形成することができなかった独特の光輝感及び立体感を有する新規な外観を有する意匠性塗膜、その形成方法、塗装物品、塗装金属板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、光反射の異方性を生じさせるエンボス面を表面に有する着色塗膜層からなる意匠性塗膜である。
上記エンボス面は、エンボス幅が20〜1000(line/inch)の凹凸構造であることが好ましい。
本発明は、着色塗膜層を形成する工程(1)、上記工程(1)によって形成された塗膜を部分硬化させて半硬化塗膜とする工程(2)、上記工程(2)によって形成された半硬化塗膜に光反射の異方性を生じさせるエンボス加工を行う工程(3)、上記工程(3)によって形成されたエンボス面を有する塗膜を硬化する工程(4)からなることを特徴とする上記意匠性塗膜の形成方法でもある。
上記意匠性塗膜の形成方法は、更に、上記工程(4)によって硬化された塗膜上にクリヤー塗料を塗布する工程(5)及び上記工程(5)によって形成された塗膜を硬化させる工程(6)を有するものであってもよい。
上記エンボス加工は、エンボス型を有するロールによって行うものであることが好ましい。
上記工程(1)は、プライマー塗装を施した被塗物上に行うものであってもよい。
被塗物は、金属板であることが好ましい。
本発明は、上述した意匠性塗膜を有することを特徴とする塗装物品でもある。
本発明は、金属板と、上記金属板の表面に形成された上記意匠性塗膜とを有する塗装金属板でもある。
本発明は、金属板に着色塗膜層を形成する工程(1)、上記工程(1)によって形成された塗膜を部分硬化させて半硬化塗膜とする工程(2)、上記工程(2)によって形成された半硬化塗膜に光反射の異方性を生じさせるエンボス加工を行う工程(3)、上記工程(3)によって形成されたエンボス面を有する塗膜を硬化する工程(4)を含む上記塗装金属板の製造方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、着色塗膜層と、上記着色塗膜層に形成されたエンボス面とによって光反射の異方性を生じさせて、これまでにない新たな光輝感及び立体感のある意匠性を有する塗膜を形成することを目的とするものである。
以下で図面に基づいて説明するが、光反射の異方性を生じさせるエンボス面は、その表面において特徴的な光反射を生じさせる性質を有する。
これらの光反射に関する特殊な性質が相互作用しあうことによって、本発明の塗膜はこれまでにない極めて特異的な美しい外観を呈することとなり、従来にない新たな意匠性を有する塗膜が得られる。
これを図面に基づいて説明する。図1に、エンボスを形成させた塗膜の一例を示す。図1においては、図中の縦方向に連続的かつ直線的な溝が形成されている。このエンボスは、微細な凹凸であることから、その一つ一つの凹凸は、視覚的に認識されるような意匠性を有するものではない。
本発明は、着色顔料を含有することにより着色を呈する塗膜層が光反射の異方性を生じさせるエンボス面を有し、これまでにない新たな意匠性を有する塗膜を形成することを目的とするものである。すなわち、着色顔料を含有する塗膜層が有する発色性能とその塗膜層の表面におけるエンボス面によって生じる光反射の異方性とによって、これまでにない新たな意匠性を得ることができるのである。
本発明の意匠性塗膜がこのような新たな意匠性を有する作用を、図1〜3に基づいて説明する。図1に、エンボスを形成させた塗膜の一例を示す。図1においては、図中の縦方向に連続的かつ直線的な凹凸のエンボスが形成されている。なお、図1は拡大図であり、エンボスは視覚的に認識されるように記載しているが、現実にはこのエンボスは、微細な凹凸であり、その一つ一つの凹凸は線図としての認識によって意匠性が得られるものではない。図7,8では、実施例によって得られた本発明の塗膜表面をスキャナーによってスキャンしたものを示した。図7として示した実寸のものは、凹凸が視覚上認識することができないが、6倍に拡大した図8においては、凹凸を認識することができることが分かる。
そして、光源1から塗膜に対して光を照射し観察点1から塗膜を見た場合と、光源2から塗膜に対して光を照射し観察点2から塗膜を見た場合とを比較する。これらの2つの場合においては光源の位置と観察点の位置がエンボスの連続方向に対してタテ方向であるかヨコ方向であるか、という点以外には相違点はない。
図2、図3に図1の断面1及び断面2の断面図を示し、この方向に光が入射した場合を図示した。
本発明の塗膜は、表面で一定割合の光を反射する性質を有する。この反射は塗膜表面に発現した凹凸形状の影響を大きく受けるものであるが、大きく分けると図2のような反射の要素と図3のような反射の要素とが存在し、これらが混合しあって全体の反射が生じている。光源1から光を照射して観測点1から塗膜表面を観察した場合、図2で示したような反射の要素はタテ方向の反射要素として認識され、図3で示したような反射の要素はヨコ方向の反射要素として認識される。これに対して、光源2から光を照射して観測点2から観察すると、それぞれの要素はタテヨコが逆に認識される。
このため、これらの2つの場合においては、光の反射状態が全く異なるものとなり、視覚的に全く異なった外観として認識される。このように、光源位置と観察点とが相違することによって、視覚的に相違する外観として認識されるような状態が得られるようなエンボスを本明細書においては、「光反射の異方性を生じさせるようなエンボス」と記載するものである。なお、凹凸の幅が大きすぎれば、視覚的に単なる凹凸として観察され、光反射の異方性としては観察されない。凹凸の幅が小さすぎる場合は、光の回折現象が生じ、虹色を呈するような意匠として観察されるため、本発明の目的とは相違する場合がある。このような着色顔料を含有する塗膜によって、光輝性顔料を使用しなくても、特有のガラス調の光沢感のある外観を与えるものである。
上記光反射の異方性を生じさせるようなエンボスを利用することによって、塗膜に絵、連続模様等を形成することもできる。このようにして形成された絵や連続模様は、単なる凹凸模様や色の塗り分け等によって描いたものとは全く異なり、見る方向によって表面の反射状態が異なることによる特異的な外観を呈するものである。
このような本発明の塗膜の一例を図4に示した。図4に示した塗膜においては、9つの長方形の部分に切り分けられ、それぞれに方向が異なる凹凸の連続したエンボスが形成されている。これらはいずれも光の反射の異方性を有するものであるから、見る方向によって光の反射状態が相違して認識される。そして、9つの部分はそれぞれエンボスの方向が異なるものであるから、それぞれの部分が視覚的に相違するものとして認識される。そして、見る角度が変化するに応じて、視覚的な効果は変化していくという特異的な意匠性を有するのである。
上記光反射の異方性を生じさせるようなエンボスは、一定幅で略平行に形成された直線もしくは曲線、又は、光反射の異方性を生じさせるように配置された点群であることが好ましい。なお、ここで光反射の異方性を生じさせるように配置された点群とは、例えば、点群ではあるが、完全に均一な状態で配置された点ではなく、点が上記略平行に形成された直線もしくは曲線と同様の性質を有するように配置したようなものを挙げることができる。より具体的には、一定幅で略平行に形成された直線もしくは曲線を破線によって形成したもの等を挙げることができる。
上記エンボスは、20〜1000line/インチのピッチで形成されたものであることが好ましい。このような幅で形成されたものであることによって、良好な光反射の異方性を得ることができる。20line/インチ未満であると、荒い凹凸模様となるために、光反射の異方性を充分に得ることができない場合がある。1000line/インチを超えると、微細加工が極めて困難となり、安定して製造することが困難になる場合がある。上記エンボスは、40〜800line/インチであることが好ましく、60〜600line/インチ以上であることがより好ましい。なお、ここでいう「line/インチ」は、凹凸形成によって形成された線の1インチあたりの数であり、塗膜表面をルーペ等で拡大する等の方法で数えることができる。
上記エンボスは、深さが1〜100μmであることが好ましい。1μm未満であると、光反射の異方性が弱くなり、優れた意匠性が得られない場合がある。100μmを超えると、加工が困難という問題が生じる場合がある。上記深さは、1〜30μmの範囲内であることがより好ましく、3〜10μmの範囲内であることが更に好ましい。
本発明は、着色塗膜層を有するものである。着色塗膜は、公知の着色顔料によって任意の色に着色されたものであってよい。上記着色塗膜の色としては、特に限定されるものではなく、例えば、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、白、黒、灰、ベージュ等を挙げることができる。
上記顔料としては、特に限定されず、例えば、有機系のアゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等、無機系の黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック等、また体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等を挙げることができる。
また、上記着色塗膜層は、上記着色顔料に加えて、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性樹脂等の樹脂を含有するものである。
上記着色塗膜層は、被塗物の性質によっては、プライマー塗装を施した被塗物状に塗装するものであってもよい。上記プライマー塗装としては特に限定されず、例えば、アクリル系、アクリルエマルション系、エポキシ系、ウレタン、ポリイソシアネート、ケイ酸ソーダ等の公知のプライマーによる塗装を挙げることができ、水性シーラー、溶剤系シーラーのいずれであってもよい。
上記着色顔料の含有量は、塗膜固形分に対して5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が5質量%未満であると、被覆が不充分となり、充分な隠蔽性や反射性が得られずに、目的とする意匠性が得られないおそれがある。上記含有量が30質量%を超えると、塗料化が困難、塗膜中に着色顔料を保持できないおそれがある。上記含有量は、10〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記着色顔料を含有する塗膜は、上記着色顔料及び上記樹脂のほかに、硬化剤、消泡剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、滑剤、架橋性重合体粒子等、塗膜を形成するために通常使用される成分を使用することができる。上記樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性樹脂等を挙げることができる。
本発明の意匠性塗膜は、上記着色塗膜層にエンボス加工を施した塗膜(例えば図5で示したものがこれに該当する)であっても、更にクリヤー塗膜層を有する複層塗膜であってもよい。図6は、着色塗膜層にエンボス面を形成し、その上にクリヤー塗膜層を形成した複層塗膜を示す模式図である。
上述したような意匠性塗膜は、例えば、以下のような方法によって形成することができる。以下に示す意匠性塗膜の形成方法も本発明の一部である。
本発明の意匠性塗膜の形成方法における工程(1)は、被塗物に着色塗膜層を形成する工程である。着色塗膜層の形成は、上述したような着色塗膜を形成することができるような任意の着色塗料を塗装することによって行うことができる。塗料の形態としては特に限定されず、水性塗料、溶剤系塗料、粉体塗料等の任意の形態の塗料を使用することができる。
上記着色顔料を含有する塗料は、硬化性を有するものであることが必要である。硬化性を有するものであることによって、充分な塗膜物性を得ることができる。硬化性は、常温硬化性、熱硬化性であってもエネルギー線硬化性(例えば、紫外線硬化性等)であってもよく、これらの性質を兼ね備えた塗料であってもよい。工程管理の容易性等の点から、熱硬化性の塗料であることが好ましい。
上記着色顔料を含有する塗料の硬化系としては特に限定されず、メラミン硬化系、イソシアネート硬化系等の任意の硬化系のものを使用することができる。
上記着色顔料を含有する塗料は、市販のものを使用するものであってもよく、例えば、ニッペスーパーコート360HQ(日本ファインコーティングス株式会社製)等を使用することができる。
上記着色顔料を含む塗料は、3〜300g/m(固形分換算)の塗布量で塗装を行うことが好ましい。3g/m以下であると、着色顔料による隠蔽効果が不充分となったり、エンボスが良好に形成されなかったりするおそれがあるため、好ましくない。300g/mを超える塗布量での塗装を行っても、効果が良好とならないので経済的に不利である。
工程(2)は、上記工程(1)によって形成された塗膜を部分硬化させて半硬化塗膜とする工程である。すなわち、熱、エネルギー線照射等を行うことによって、部分的に塗膜表面を硬化させ、上述した光反射の異方性を生じさせるエンボス加工を行うことができる状態とする工程である。
エンボス加工を未硬化状態の塗膜に対して施した場合には、樹脂の流動性が完全には消失していない状態でのエンボス加工となるため、硬化を行うまでの十分な時間にわたってエンボス加工を維持することができずに、良好な意匠性を有する塗膜を形成することができなくなる。また、完全に硬化した状態の塗膜は、加工性を有さないものであることから、エンボス形成を行うことが極めて困難である。従って、上記工程(2)によって塗膜を部分硬化させて半硬化状態とし、次いでエンボス加工を行うことによって良好なエンボス加工を行うことができるものである。
上記半硬化塗膜とは、塗膜表面がエンボスを形成することができる程度に硬化反応が進行した状態の塗膜をいうものであり、塗料の組成、性質、エンボス形成の方法、エンボス形成条件等によって変動するものであり、必要に応じて硬化条件を調整しながら硬化条件を見出すことによって行うことが好ましい。特に、熱硬化によって硬化を行う場合は、以下の工程(4)によって再度加熱したとき、一時的に樹脂の流動性が高くなるため、工程(3)によって形成した凹凸形状が維持できなくなる場合がある。従って、この場合には、上記工程(2)における部分硬化はこのような問題が生じることがない程度の硬化状態を指す。
すなわち、使用する塗料について、種々の条件での硬化を行い、その後以下で詳述する工程(3)を行い、これによって良好なエンボス面が形成される条件を見出し、見出された塗装条件によって工程(2)の好適な処理条件を見出すことができる。
例えば、エンボス面が施される塗膜として、実施例で記載したようなポリエステル樹脂/メラミン樹脂を20g/mで塗装し、金属ロール圧着によるエンボス加工を施す場合の硬化条件の確認試験を実際に行った結果を図9に示した。図9においては、時間を横軸、硬化温度を縦軸とした2つのグラフに挟まれた範囲内で良好な硬化を行うことができることを示すものである。エンボス面を形成する塗膜を形成する塗料について、このようなグラフを作成すれば、グラフに従って硬化条件を設定し好適なエンボスを形成することができる。
例えば、エンボス面を施される着色塗膜層が20g/mであり、金属ロール圧着によるエンボス加工を施す場合には、上記実験によって工程(2)の処理条件を判断したところ、130℃60秒という条件が適切であることが明らかになった。
上記工程(3)は、上記工程(2)によって形成された半硬化塗膜に光反射の異方性を生じさせるエンボス加工を行う工程である。すなわち、上述したような本発明の意匠性塗膜において効果を得る上で必須となるエンボス形状を形成するための工程である。
上記エンボス加工を施す方法としては特に限定されず、目的とする凹凸形状を表面に形成したロールを上記半硬化状態の塗膜上に押し付けることによって形成させる方法、目的とする凹凸形状を表面に形成したシートを上記半硬化状態の塗膜上にプレス等の圧着によって形成される方法等を挙げることができる。
上記凹凸を表面に形成したロールは、金属製、ゴム製、樹脂製等の任意の素材からなるものを使用することができ、ロール上への凹凸の形成も公知の加工方法によって行うことができる。
上記工程(3)の方法として具体的には、例えば、被塗物が金属板のような連続形状を有するものである場合は、ライン上においてエンボス加工用ロールによる処理工程を設けることによって工場での連続生産を行うことができる点で好ましい。
工程(4)は、上記工程(3)を行った塗膜を硬化させる工程である。すなわち、上記工程(2)は、上記工程(3)を行うことができる程度の硬度まで部分硬化させる工程であるから、良好な塗膜物性を得るためにはエンボス形成後に再度硬化を行うことによって、塗膜を硬化させることが必要となるのである。硬化方法は特に限定されず、熱照射、エネルギー線照射等の方法を挙げることができる。
本発明の意匠性塗膜の形成方法は、上記工程(4)を行った後、クリヤー塗料組成物を塗布することによって、クリヤー塗膜層を形成する工程を有するものであってもよい。これによってエンボス形状の凹凸の磨耗を防止することができ、耐久性に優れる塗膜とすることができる。このような塗膜は、クリヤー塗膜を形成する工程(5)、及び、上記工程(5)によって形成された塗膜を硬化させる工程(6)によって形成するものであることが好ましい。
上記工程(5)において使用することができるクリヤー塗料としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性樹脂等を含有するクリヤー塗料を挙げることができる。また、水性塗料、溶剤系塗料、粉体塗料等の任意の形態の塗料を使用することができる。
上記工程(6)における硬化条件は特に限定されず、使用するクリヤー塗料の種類に応じて好適な条件を選択して行うことができる。
本発明の意匠性塗膜の形成方法は、亜鉛めっき鋼板、亜鉛/アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板、亜鉛/鉄合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム板、またはステンレス鋼板等の金属板;スレート、セメント、ケイ酸カルシウム板、木片セメント板等の窯業系基材;セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石材、コンクリート、繊維、布帛、紙、これらのうち複数の基材からなるもの、これらの積層体、弾性防水膜、シーリング等の任意の素材に対する塗装に適用することができる。なかでも、金属板、プラスチック等のような平面性を有する素材はロールによって好適に微細な凹凸を形成させることができる点から好ましいものである。
上記意匠性塗膜を形成してなる塗装物品も本発明の一つである。上記塗装物品は、特に限定されず、建材、インテリア用品、電気製品、自動車部品等を挙げることができる。
本発明の塗装金属板は、金属板と、上記金属板の表面に形成された上記意匠性塗膜とを有するものである。すなわち、上記塗装金属板は、本発明の塗装物品における被塗物を金属板としたものである。上記金属板としては、特に限定されるものではないが、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛/アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板、亜鉛/鉄合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム板、ステンレス鋼板等を挙げることができる。
上記塗装金属板は、本発明の塗装金属板の製造方法により製造され得る。上記塗装金属板の製造方法は、金属板に着色塗膜層を形成する工程(1)、上記工程(1)によって形成された塗膜を部分硬化させて半硬化塗膜とする工程(2)、上記工程(2)によって形成された半硬化塗膜に光反射の異方性を生じさせるエンボス加工を行う工程(3)、上記工程(3)によって形成されたエンボス面を有する塗膜を硬化する工程(4)を含む。上記塗装金属板の製造方法は、例えば、図10に示す工程図に従って行われる。図10には、金属板がコイル状である場合の製造方法を示しているが、金属板が切り板状である場合、板の搬送を工夫することで、同様に製造することができる。
図10は、コイル状の金属板に意匠性塗膜を形成するための塗装装置の一例を模式的に示すシステム構成図である。なお、本発明の塗装金属板の製造方法は、図10に示す例に限定されるものではない。
この塗装装置においては、まず巻き戻しリール11に巻き付けられているコイル状の金属板12が巻き戻され、巻き戻された金属板12は一時的に入口側アキュムレータ13に蓄えられる。
金属板12は表面処理装置14に入り、ここで金属板12の表面に付着している油分等の異物又は錆を除去するとともに金属板12への塗料の接着性を高めるための表面処理(前処理)が施される。上記表面処理後に、裏側はプライマー塗装装置を設け、表側は必要に応じて設けるものであってもよい。プライマー塗装を行うことによって、金属板の防錆性能をより向上させることができる。
表側処理が施された後、金属板12は、ロールコータ16及びローラ15を備えた塗装機(図示せず)に入り、ここで金属板12の表側に、液状の着色塗料が塗装され、未硬化の着色塗膜層が形成される(工程(1))。
次に、金属板12は、加熱装置17に入り、ここで金属板12の表面に形成された未硬化の塗膜が部分硬化され、半硬化塗膜となる(工程(2))。
次に、金属板12は、エンボス加工用ローラ19及びローラ18を備えたエンボス加工機(図示せず)に入り、ここで半硬化塗膜に光反射の異方性を生じさせるエンボス加工が行われる(工程(3))。
次に、金属板12は、焼付け装置20に入り、ここで焼付け処理が施され、エンボス面を有する塗膜が硬化する(工程(4))。
その後、上記(1)〜(4)の処理が行われることにより製造された塗装金属板21は、出口側アキュムレータ22に一時的に蓄えられ、この後、巻取りリール23に巻き取られる。
着色塗膜層及び上記着色塗膜層に形成されたエンボス面によってガラス調の光反射の異方性を生じさせることができる。これにより、これまでにない新たな意匠性を有する塗膜を形成することができる。
光反射の異方性を生じさせるエンボス面は、その表面において特徴的な光反射を生じさせる性質を有する。
これらの光反射に関する特殊な性質が相互作用しあうことによって、光反射はますます複雑なものとなり、本発明の塗膜はこれまでにない極めて特異的な美しい外観を呈することとなるのであり、従来にない新たな意匠性を有する塗膜が得られる。
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
(実施例1)
着色塗料としては、以下の表1に示した組成(商品名「ニッペスーパーコート360HQ」、日本ファインコーティングス株式会社製)で色相は灰色のものを使用した。被塗物としては、亜鉛めっき鋼板に、リン酸処理後、プライマーを5μm塗布したものを使用した。
被塗物上に、上記着色顔料を含有する塗料を塗布量が20g/mとなるようにロールコータによって塗布した。上記着色顔料含有塗料を塗布した試験片に対して、表2に示した条件で半硬化させた後、凹凸形状を付したロールを圧着することによって、表面に凹凸を形成させた。その後、180℃10分で硬化させた。なお、圧着工程において使用したロールは、図7、8に示すような凹凸形状を表面に有するロールである。ここでのロールのエンボスのピッチは、250Line/インチ、深さ8μmである。また、上記半硬化は、HIGH−TEMP OVEN HPS−222(TABAI社製)を使用し、排気ダンパー開度30°で試験を行った。
得られた塗膜の外観を工程(3)の終了時点及び工程(4)の終了時点において視覚によって観察し、以下の基準に基づいて判断した。結果を表2に示す。
○:塗膜表面に完全な凹凸が形成された。
△:塗膜表面に不完全な鮮鋭性の劣る、凹凸が形成された。
×:粘着性があり、ロールに塗膜が付着。
×:エンボス後の硬化で、レベリングし凹凸形状が消滅。
××:塗膜が硬化しすぎで、エンボス加工で凹凸が形成されず。
更に、詳細に硬化時間及び硬化温度を変化させながら上記試験を繰り返し、硬化可能な硬化条件を探索した。結果を図9に示す。この図に記載された範囲内が、上記塗料を使用した場合の適正な硬化条件である。
実施例において180℃10分で処理を行った場合の塗膜の表面をスキャナーでスキャンしたものを図7として示した。更に、図7の表面の拡大図を図8として示した。図8から、実施例によって得られた塗膜は、ロールと同様の250Line/インチの凹凸が形成されていることが明らかとなった。また、光学顕微鏡により測定して得られた塗膜のエンボスの深さは8μmであった。
上記130℃60秒で半硬化を行った場合の塗膜は、見る角度によって外観が変化し、キラキラとした独特の光輝性を有する新規な美しい外観を有するものであった。
(実施例2)
上記実施例1において、130℃60秒で半硬化を行った場合の塗膜(工程4までを行ったもの)上に、クリヤー塗料(日本ファインコーティングス社製 スーパーラックDI−F J15)をロールコータによって塗装した。塗布量は、20g/mとした。このようにして得られた塗膜も、上記実施例1の塗膜と同様、新規な美しい外観を有するものであった。エンボスは250Line/インチ、深さ8μmであった。
特に、すべての条件において良好な評価結果となった130℃60秒の半硬化条件で行った実験により得られた塗膜の表面は、キラキラとした独特の光輝感及び立体感をシルバー調の外観を有するものであった。
(実施例3)
使用した着色塗料の着色顔料の種類をかえて、色相を灰色からベージュ色の色相にかえた塗料とした以外は、実施例1と同様に塗膜の形成を行った。塗装条件は、半硬化工程を130℃60秒、硬化工程を180℃10分で行った。得られた塗膜は、実施例1によって得られた塗膜とは異なる光輝感及び立体感の明るく柔らかな色調の外観を有するものであった。得られた塗膜は、ロールと同様の250Line/インチの凹凸が形成されていた。なお、エンボスの深さは8μmであった。
本発明の意匠性塗膜は、建材、インテリア用品、電気製品、自動車部品等の種々の物品上に優れた意匠性を付与するために使用することができるものである。
本発明の意匠性塗膜を説明するための図である。 図1における光源1から入射した光の反射を説明するための模式図である。 図1における光源2から入射した光の反射を説明するための模式図である。 本発明の意匠性塗膜の一例を示す図である。 本発明の意匠性塗膜の断面図の一例を示す図である。 本発明の意匠性塗膜の断面図の一例を示す図である。 実施例1の意匠性塗膜をスキャナーによって読み取った画像である。 実施例1の意匠性塗膜のスキャナーによって読み取った画像を拡大したものである。 実施例1における半硬化塗膜とする工程(2)の好適な硬化範囲を示す図である。 本発明の塗装金属板の製造方法の一例を模式的に示す図である。
符号の説明
1 本発明の意匠性塗膜の表面
2 着色塗膜層
3 被塗物
4 光反射の異方性を生じさせるエンボス面
5 クリヤー塗膜
11 巻き戻しリール
12 金属板
13 入り口側アキュムレータ
14 表面処理装置
15、18 ローラ
16 ロールコータ
17 加熱装置
19 エンボス加工用ローラ
20 焼き付け装置
21 塗装金属板
22 出口側アキュムレータ
23 巻取りリール

Claims (10)

  1. 光反射の異方性を生じさせるエンボス面を表面に有する着色塗膜層からなる意匠性塗膜。
  2. エンボス面は、エンボス幅が20〜1000(line/inch)の凹凸構造である請求項1記載の意匠性塗膜。
  3. 着色塗膜層を形成する工程(1)、
    前記工程(1)によって形成された塗膜を部分硬化させて半硬化塗膜とする工程(2)、
    前記工程(2)によって形成された半硬化塗膜に光反射の異方性を生じさせるエンボス加工を行う工程(3)、
    前記工程(3)によって形成されたエンボス面を有する塗膜を硬化する工程(4)
    からなることを特徴とする請求項1又は2記載の意匠性塗膜の形成方法。
  4. 更に、前記工程(4)によって硬化された塗膜上にクリヤー塗料を塗布する工程(5)及び
    前記工程(5)によって形成された塗膜を硬化させる工程(6)
    を有する請求項3記載の意匠性塗膜の形成方法。
  5. エンボス加工は、エンボス型を有するロールによって行うものである請求項3又は4記載の意匠性塗膜の形成方法。
  6. 上記工程(1)は、プライマー塗装を施した被塗物上に行うものである請求項3、4又は5記載の意匠性塗膜の形成方法。
  7. 被塗物は、金属板である請求項3、4、5又は6記載の意匠性塗膜の形成方法。
  8. 請求項1又は2記載の意匠性塗膜を有することを特徴とする塗装物品。
  9. 金属板と、前記金属板の表面に形成された請求項1又は2記載の意匠性塗膜とを有することを特徴とする塗装金属板。
  10. 金属板に着色塗膜層を形成する工程(1)、
    前記工程(1)によって形成された塗膜を部分硬化させて半硬化塗膜とする工程(2)、
    前記工程(2)によって形成された半硬化塗膜に光反射の異方性を生じさせるエンボス加工を行う工程(3)、
    前記工程(3)によって形成されたエンボス面を有する塗膜を硬化する工程(4)
    を含むことを特徴とする請求項9記載の塗装金属板の製造方法。
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