JP2007315595A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】パワーローラを支持する軸部に変位軸を用いずに、安価且つ簡単な構造により、外輪とともにパワーローラをトラニオンに対して小さい摩擦抵抗で円滑に転がり案内することができる、加工性の良いトロイダル型無段変速機を提供する。
【解決手段】トラニオン15に、互いに対向しかつパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に延びる一対の案内面が設けられている。一対の案内面の間にパワーローラを回転自在に支持するスラスト玉軸受24の外輪本体部(外輪)28aが配置されている。外輪本体部の外周に設けられたラジアル軸受120により外輪本体部の外周に沿って回転自在な環状の回転部材120bが設けられている。パワーローラと共に外輪本体部が前記方向に移動する際に、回転部材が一対の案内面のうちのいずれか一方に当接した場合に、回転部材が一方の案内面に当接して転動する。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図3および図4に示すように構成されている。図3に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(回転中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図4参照)が回転自在に挟持されている。
図3中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図3の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
図3のA−A線に沿う断面図である図4に示すように、ケーシング50の内側であって、出力側ディスク3,3の側方位置には、両ディスク3,3を両側から挟む状態で一対のヨーク23A,23Bが支持されている。これら一対のヨーク23A,23Bは、鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。そして、後述するトラニオン15の両端部に設けられた枢軸14を揺動自在に支持するため、ヨーク23A,23Bの四隅には、円形の支持孔18が設けられるとともに、ヨーク23A,23Bの幅方向の中央部には、円形の係止孔19が設けられている。
一対のヨーク23A,23Bは、ケーシング50の内面の互いに対向する部分に形成された支持ポスト64,68により、僅かに変位できるように支持されている。これらの支持ポスト64,68はそれぞれ、入力側ディスク2の内側面2aと出力側ディスク3の内側面3aとの間にある第1キャビティ221および第2キャビティ222にそれぞれ対向する状態で設けられている。
したがって、ヨーク23A,23Bは、各支持ポスト64,68に支持された状態で、その一端部が第1キャビティ221の外周部分に対向するとともに、その他端部が第2キャビティ222の外周部分に対向している。
第1および第2のキャビティ221,222は同一構造であるため、以下、第1キャビティ221のみについて説明する。
図4に示すように、ケーシング50の内側において、第1キャビティ221には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図4においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、その本体部である支持板部16の長手方向(図4の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、前述したように、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図4の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。前述したように、各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、前述したように、ヨーク23A,23Bの幅方向(図4の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は球状凹面として、支持ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図4で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図4の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(枢軸14から延びる軸部)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、駆動軸22の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2および入力軸1に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図4の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、上記構成のトロイダル型無段変速機では、前述したように、入力側ディスク2から出力側ディスク3に対して押し付け力を円滑に伝えるべくトラニオン15に対してパワーローラ11が揺動できるように、パワーローラ11を支持する変位軸23の先端部23bと基端部23aとが互いにオフセットしている。すなわち、パワーローラ11をトラニオン15に対して支持する支軸(変位軸23の基端部23a)すなわち内孔21の軸心に対してパワーローラ11の回転軸(変位軸23の先端部23b)が偏心している。これは、図5に示すように外輪28と変位軸23とが一体となった構造においても同様である。
しかしながら、このような構造では、変位軸23のオフセット形状を実現するために加工コストが増大することは避けられず、また、前記オフセットに伴う制約によりトラニオン15の小型・軽量化が阻害されてしまう。更に、パワーローラ11をはじめとする変位軸23周りでの揺動回転動作により、スラスト荷重を支持する軸受が滑り運動を行なうこととなるため、揺動抵抗が大きくなってしまうという問題もある。
そのため、従来から、様々な工夫により、パワーローラ11を支持する軸部のオフセットを回避するようにした技術が提案されてきている。例えば、特許文献1には、トラニオン15と外輪28との間に介挿されたリニアベアリングのみをもって外輪28をディスクの回転中心軸方向(パワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向)にスライドできるようにトラニオン15のポケット部P内に支持することにより、外輪28をトラニオン15に対して滑り案内する構造が開示されている。
また、特許文献2には、トラニオン15の支持板部16のポケット部P側に面する支持面と外輪28とにそれぞれ所定の径斜角度を有する傾斜平面部を設け、これらの傾斜平面部同士の間にころ軸受を介挿する構造が開示されている。
特開平7−198014号公報 特開2004−138249号公報(図1)
しかしながら、特許文献1に開示された構造では、トラニオン15と外輪28との間に介挿されたリニアベアリングによりトラニオン15に対して外輪がディスクの回転中心軸方向(パワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向)に転がり案内される。また、トラニオン15に、前記外輪28を間に挟んで互いに対向する規制面(案内面)が設けられ、トラニオン15に対する枢軸14の軸方向に沿った外輪28の移動が規制されている。そして、前記規制面に対して外輪28が左右方向に滑り案内されるため、この部分での摩擦抵抗が大きく、入力側ディスク2から出力側ディスク3に対して押し付け力が円滑に伝わらない虞がある。そのため、出力側ディスク3側で押し付け力が不足する可能性もある。
一方、特許文献2に開示された構造では、前記規制面と外輪28との間にころを配置して転がり案内する構成となっており、これにより前記規制面と外輪28との間の摩擦抵抗を低減することができ、特許文献1での上述の問題が解決されている。この場合に、トラニオンに平面状の一対の規制面(平面部)を加工し、かつ、外輪28の前記規制面と対向する一対の外周部分にも平面部を加工し、これら平面部同士の間にころを配置する必要がある。この場合に高精度で加工される必要がある平面部が多くなり、加工コストが高くなるという問題がある。また、対向する平面部の移動方向の幅が極めて狭く、ころ軸受の循環機構を形成することが困難であるため、完全に転がり案内することが難しい。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、パワーローラを支持する軸部に変位軸を用いずに、安価且つ簡単な構造により、外輪とともにパワーローラをトラニオンに対して小さい摩擦抵抗で円滑に転がり案内することができる、加工性の良いトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、前記入力側ディスクと前記出力側ディスクとの間に挟持されたパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの回転中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、前記パワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承するスラスト軸受とを備え、前記スラスト軸受は、前記パワーローラによって形成される内輪と、外輪と、これらの内輪および外輪との間で転動する転動体とを有して成るトロイダル型無段変速機において、
前記トラニオンに、互いに対向しかつ前記パワーローラの回転中心軸と直交するとともに前記枢軸と直交する方向に延びる一対の案内面が設けられ、
前記一対の案内面の間に前記スラスト軸受の前記外輪が配置され、
前記外輪の外周に設けられたラジアル軸受により前記外輪の外周に沿って回転自在な環状の回転部材が設けられ、
前記パワーローラと共に前記外輪が前記パワーローラの回転中心軸と直交するとともに前記枢軸と直交する方向に移動する際に、前記回転部材が前記一対の案内面のうちのいずれか一方に当接した場合に、前記回転部材がこの一方の案内面に当接して転動することを特徴とするトロイダル型無段変速機。
この請求項1に記載された発明においては、トラニオンにパワーローラを回転自在に支持するスラスト軸受の外輪の外周にラジアル軸受が設けられている。そして、このラジアル軸受により外輪に対して回転自在な回転部材がトラニオンに設けられた一対の案内面(規制面)のうちの一方に当接し、トラニオンに対して外輪およびパワーローラがパワーローラの回転中心軸と直交するとともに枢軸と直交する方向に移動した場合に、回転部材がこの一方の案内面上を転動することになる。
したがって、外輪は案内面に対して転がり案内された状態となり、滑り案内された場合よりも摩擦抵抗を大きく低減でき、入力側ディスクから出力側ディスクに対して押し付け力が円滑に伝わらない事態を防止できる。
また、外輪の外周に、例えば、一般的な環状の軸受(ベアリング)としてのラジアル軸受を設けることで、本発明を実施できるので、外輪にも平面部を形成して平面上の案内面と外輪の平面部との間にころを配置する構成よりも加工コストを低減できる。また、ラジアル軸受は、上述のように一般的な環状の軸受の構成を使用できるので、ころ軸受の循環機構の形成に問題が生じることがない。
なお、回転部材は、ラジアル軸受の外輪とすることができる。この場合に、回転部材をラジアル軸受外輪とし、スラスト軸受の外輪をラジアル軸受の内輪として、これらの間に転動部材を配置する構成としてもよい。
また、一対の案内面同士の間隔は、回転部材の直径より僅かに長い必要がある。
すなわち、回転部材を案内面同士の間に配置した場合に、一対の案内面同士の間隔に対する回転部材のクリアランスが0だと、回転部材の外周の二箇所が一対の案内面に当接して、回転部材の回転が困難になるので、クリアランスを0より大きくし、同時に一対の案内面に回転部材が当接することがないようにする必要がある。
また、実際には、パワーローラに枢軸方向に沿う接線力が作用し、この接線力により外輪の外周の回転部材が一対の案内面のうちのいずれか一方に押し付けられた状態となり、上述のように外輪が移動した際に一方の案内面に押し付けられた回転部材が転動することで、外輪およびパワーローラがパワーローラの回転中心軸と直交するとともに枢軸と直交する方向に移動することになる。
また、トラニオンの内側面と外輪の外側面とが当接する部分には、外輪をパワーローラの回転中心軸と直交するとともに枢軸と直交する方向に案内するリニアベアリング等のスラスト軸受が必要となる。
また、請求項2に記載されたトロイダル型無段変速機は、請求項1に記載された発明において、前記トラニオンと前記スラスト軸受の前記外輪との間には、前記外輪を前記パワーローラの回転中心軸と直交するとともに前記枢軸と直交する方向に転がり案内するスラスト転がり軸受が設けられていることを特徴とする。
この請求項2に記載された発明においては、前記トラニオンの案内面に当接して回転部材が転動するものとしても、回転部材に対してラジアル軸受を介して接続される外輪が回転する必要はなく、案内面上を回転部材が転動することで外輪が直線上に移動することになり、前記トラニオンと前記スラスト軸受の前記外輪との間に配置されるスラスト転がり軸受は、前記外輪をパワーローラの回転中心軸と直交するとともに枢軸と直交する方向に転がり案内すればよいので、簡単な構成とすることができ、コストの低減を図ることができる。
また、請求項3に記載されたトロイダル型無段変速機は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記トラニオンは、支持板部と、この支持板部の前記枢軸に沿う方向両端部に該支持板部の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部とを備え、前記支持板部の内側面と前記一対の折れ曲がり壁部とにより前記外輪および前記パワーローラを収容する収容空間が形成され、この収容空間のうち、前記外輪を収容する外輪収容空間の前記枢軸に沿う方向の寸法が前記パワーローラを収容するパワーローラ収容空間の前記枢軸に沿う方向の寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする。
この請求項3に記載された発明においては、外輪を収容する外輪収容空間の枢軸に沿う方向の寸法がパワーローラを収容するパワーローラ収容空間の枢軸に沿う方向の寸法よりも小さく設定されているので、外輪の外径をパワーローラの外径より小さくできるため、パワーローラの傾転時に、外輪の外周部が入出力ディスクのトラクション面(内側面)に接触するのを防止することができる。
本発明のトロイダル型無段変速機によれば、トラニオンに対してパワーローラを回転自在に支持するスラスト軸受の外輪の移動方向をトラニオンに設けられた一対の案内面により規制するとともに案内する構成において、環状の軸受を外輪の外周に設けるだけの簡単に加工できる構成で案内面と外輪との間の摩擦抵抗を低減することができるので、加工コストの低減を図り、かつ、変位軸を用いることなく、パワーローラをパワーローラの回転中心軸と直交するとともに枢軸と直交する方向に容易に移動可能として、入力ディスクから出力ディスクに押し付け力を円滑に伝達することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の特徴は、トラニオンに対するパワーローラの支持構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図3〜図5と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1は本発明の実施形態を示している。図示のように、本実施形態においては、従来の変位軸を用いることなく、パワーローラ11を回転自在かつパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に直線移動自在とした構造が採用されている。
具体的には、外輪28は、スラスト玉軸受(スラスト軸受)24の外輪を形成する外輪本体部28aと、パワーローラ11を回転可能に支持する軸部28bとから成っている(前述した従来構造の外輪28と変位軸23の先端部23bとが一体となって、変位軸23の基端部23aを取り除いた構造を成している)。また、外輪本体部28aは、外輪本体部28aの外周面の外側面側が円筒状に切り欠かれて縮径された縮径部を有しており、この縮径部の外周面110は、パワーローラ11の回転軸と略平行に延びる円筒面となっている。これに対応して、トラニオン15には、この外周面110と略平行に対向する案内面112が設けられている。そして、外周面110と案内面112との間には、パワーローラ11のラジアル方向(図中y方向)の荷重を支承しつつディスク2,3のパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に沿う外輪28のスライド(図中x方向に沿うスライド)を許容するラジアル軸受(転がり軸受)120が介挿されている。
言い換えれば、トラニオン15の支持板部16の内側面の枢軸14,14側の両端部にそれぞれ、支持板部16の内側面から前方に突出する段差部が形成されており、これら段差部の互いに対向する部分に、枢軸14,14の軸方向と直交しかつパワーローラ11の回転中心軸に直交する方向に平行な一対の案内面112,112が設けられている。
また、外輪28の外輪本体部28aは、前記一対の案内面112,112の間に配置されており、これにより外輪28は、枢軸14,14の軸方向に沿った移動を規制されるとともに、パワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に案内される。
すなわち、トラニオン15に、互いに対向しかつパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に延びる一対の案内面112,112が設けられ、一対の案内面112の間にスラスト玉軸受24の外輪28の外輪本体部28aが配置されている。そして、前記外輪本体部28aの外周には、当該外周に沿った環状のラジアル軸受120が設けられている。
図2に示すように、ラジアル軸受120は、スラスト玉軸受24の外輪本体部28aの外周部分が内輪となり、外輪本体部28aの外周に沿った環状の回転部材120bが外輪となっている。そして、ラジアル軸受120は、これらの外輪本体部28aの外周面と回転部材120bの内周面との間に、これらの間で転動する転動体120aを有している。すなわち、ラジアル軸受120は、ラジアルニードル軸受となっている。
したがって、トロイダル型無段変速機には、外輪28の外輪本体部28aの外周に設けられたラジアル軸受120により外輪本体部28a外輪28の外周に沿って回転自在な環状の回転部材120bが設けられている。
この場合、ラジアル軸受120の回転部材120bとトラニオン15の案内面112との間には、パワーローラ11の径方向(図中y方向)の変位を許容する隙間sが設けられている。すなわち、ラジアル軸受120の回転部材120bの外径Dは、ポケット部Pを挟んで対向する案内面112,112同士の間の距離Lよりも小さく設定されている。
すなわち、一対の案内面112,112とこれらの間に配置される回転部材120bとの間には、0より大きなクリアランスが設定されており、回転部材120bは、一対の案内面112,112に同時に当接することがなく、かならず、どちらか一方に当接することになる。これにより、回転部材120bは、一対の案内面112,112のいずれか一方に当接して、一方の案内面112,112上を転動可能となっている。
なお、トラニオン15の支持板部16の内側面の一対の段差部の対向部分となる案内面112,112の左右方向(支持板部16の幅方向)両側においては、前記一対の段差部同士の間隔が、回転部材120bや外輪28の直径より短くなっている。これにより、トラニオン15に対する外輪28およびパワーローラ11のパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向への移動範囲が規制されている。なお、一対の段差部の互いに対向する部分のうちの等間隔に配置された一対の案内面112,112より外側の部分は、回転部材120bの外周面に対応する円弧面とされ、回転部材120bの外周面が一対の案内面112,112より外側の円弧面の部分に面接触可能とされている。
また、トラニオン15の支持板部16の内側面と一対の折れ曲がり壁部20,20とにより形成された凹状のポケット部Pは、外輪28およびパワーローラ11を収容する収容空間となっているが、トラニオン15に前記一対の段差部が設けられていることにより、この収容空間のうち、回転部材120b付き外輪本体部28aを収容する外輪収容空間の枢軸に沿う方向の寸法Lがパワーローラ11を収容するパワーローラ収容空間の枢軸に沿う方向の寸法よりも小さく設定されている。
また、本実施形態においては、トラニオン15と外輪本体部28aとの間に、パワーローラ11に加わるスラスト方向(図中z方向)の荷重を支承するスラストニードル軸受(スラスト転がり軸受)130が介挿されている。
すなわち、トラニオン15とスラスト玉軸受24の外輪28との間には、外輪28をパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に転がり案内するスラスト転がり軸受が設けられている。
スラストニードル軸受130においては、パワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に移動する外輪28を転がり案内すればよいので、各ころ(ニードル)131がその回転中心軸方向を、枢軸14の軸方向に平行としている。また、各ころ131は、外輪28(パワーローラ11)の中心軸を中心軸とする円周上に並んで配置されている。また、各ころ131は、外輪28の外周より内側に配置されている。なお、各ころ131は、それぞれ固定された位置で回転自在となっている。
したがって、上記構成では、パワーローラ11に対してラジアル方向(図中y方向)の接線力が作用すると、隙間sの存在に起因して、パワーローラ11が径方向に変位し、ラジアル軸受120の回転部材120bの外周面がトラニオン15の一方側の案内面112に押し付けられる。このとき、ラジアル軸受120により外輪本体部28aの外周に沿って回転自在とされた回転部材120bはトラニオン15の案内面112上を転がることができる。
すなわち、ラジアル軸受120により保持されたパワーローラ11は、トラニオン15の案内面112に対してパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向(図中x方向)に移動することができる。
言い換えれば、パワーローラ11と共に外輪28がパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に移動する際に、回転部材120bが一対の案内面112,112のうちのいずれか一方に当接した場合に、前記回転部材120bが一方の案内面112に当接して転動することになる。これにより、外輪28と案内面112,112との間に大きな摩擦抵抗を生じることなく、案内面112,112に沿って外輪28およびパワーローラ11が移動可能となる。
また、外輪28の外側面側に位置するスラストニードル軸受130は、図2に示すように、パワーローラ11がトラニオン15に対して単純にx方向に直線運動するため、それ自体の配置が容易になり、効果的にパワーローラ11を転がり案内することができる。
以上説明したように、本実施形態においては、パワーローラ11のラジアル方向の荷重を支承しつつパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向に沿う外輪本体部(外輪)28aのスライドを許容するラジアル軸受120が、パワーローラ11の径方向で互いに略平行に対向する外輪本体部28aの外周面110とトラニオン15の案内面112との間に介挿されているので、パワーローラ11を支持する軸部に変位軸23を用いることなく、外輪本体部28aとともにパワーローラ11をトラニオン15に対して小さい摩擦抵抗で円滑に転がり案内することができる。また、このような作用効果は、パワーローラ11の径方向で互いに略平行に対向する外輪本体部28aの外周面110とトラニオン15の案内面112との間にラジアル軸受120を設けるだけで実現できるので、構造が簡単であり、また、精度の高い多数の加工を施さなくても済むため(パワーローラ11を支持する軸部をオフセットさせなくて済むため)、加工性が良好であり且つ安価である。すなわち、環状の軸受は極一般的なもので、外輪本体部28aに環状のラジアル軸受120を取り付けるものとしても大きくコストが増加することがない。
また、本実施形態においては、ラジアル軸受120の回転部材120bとトラニオン15の案内面112との間に、パワーローラ11の径方向の変位を実質的に許容する隙間sが設けられているため、パワーローラ11に対してラジアル方向の荷重が作用した場合でもそれにより外輪本体部28aおよびパワーローラ11のパワーローラ11の回転中心軸と直交するとともに枢軸14と直交する方向のスライドが妨げられないで済む。したがって、トラニオン15に対するパワーローラ11の円滑な転がり案内を実現でき、入力側ディスク2から出力側ディスク3へ押し付け力を円滑に伝えることができる。
また、本実施形態においては、パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承するスラストニードル軸受130がトラニオン15と外輪本体部28aとの間に介挿されているため、トラニオン15に対するパワーローラ11の転がり案内性能を更に高めることができる。
また、本実施形態においては、トラニオン15に一対の段差部を設けることにより、ポケット部(収納空間)Pのうち、回転部材120b付き外輪本体部28aを収容する外輪収容空間の枢軸に沿う方向の寸法Lがパワーローラ11を収容するパワーローラ収容空間の枢軸に沿う方向の寸法よりも小さく設定されているので、外輪本体部28aに設けられた回転部材120bの外径がパワーローラ11の外径より小さなっているため、パワーローラ11の傾転時に、回転部材120bの外周面が入出力ディスクのトラクション面(内側面)に接触するのを防止することができる。
本発明は、様々な形態のシングルキャビティ型およびダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機に適用することができる。
本発明の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部断面図である。 図1のA−A線に沿う断面図である。 従来から知られているトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。 図3のA−A線に沿う断面図である。 外輪と変位軸とが一体化された従来のトロイダル型無段変速機の要部断面図である。
符号の説明
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
15 トラニオン
24 スラスト玉軸受(スラスト軸受)
26 転動体
28b 外輪本体部(外輪)
110 外周面
112 案内面
120 ラジアル軸受
120b 回転部材
130 スラストニードル軸受(スラスト転がり軸受)
P ポケット部(収容空間)

Claims (3)

  1. それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、前記入力側ディスクと前記出力側ディスクとの間に挟持されたパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの回転中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、前記パワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承するスラスト軸受とを備え、前記スラスト軸受は、前記パワーローラによって形成される内輪と、外輪と、これらの内輪および外輪との間で転動する転動体とを有して成るトロイダル型無段変速機において、
    前記トラニオンに、互いに対向しかつ前記パワーローラの回転中心軸と直交するとともに前記枢軸と直交する方向に延びる一対の案内面が設けられ、
    前記一対の案内面の間に前記スラスト軸受の前記外輪が配置され、
    前記外輪の外周に設けられたラジアル軸受により前記外輪の外周に沿って回転自在な環状の回転部材が設けられ、
    前記パワーローラと共に前記外輪が前記パワーローラの回転中心軸と直交するとともに前記枢軸と直交する方向に移動する際に、前記回転部材が前記一対の案内面のうちのいずれか一方に当接した場合に、前記回転部材がこの一方の案内面に当接して転動することを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 前記トラニオンと前記スラスト軸受の前記外輪との間には、前記外輪を前記パワーローラの回転中心軸と直交するとともに前記枢軸と直交する方向に転がり案内するスラスト転がり軸受が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
  3. 前記トラニオンは、支持板部と、この支持板部の前記枢軸に沿う方向両端部に該支持板部の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部とを備え、前記支持板部の内側面と前記一対の折れ曲がり壁部とにより前記外輪および前記パワーローラを収容する収容空間が形成され、この収容空間のうち、前記外輪を収容する外輪収容空間の前記枢軸に沿う方向の寸法が前記パワーローラを収容するパワーローラ収容空間の前記枢軸に沿う方向の寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
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