上記のように、端末モジュールにおいて、各相巻線のリード端子がカシメ端子等の接続端子によって各相バスバーにそれぞれ接続され、また、各相バスバーは端子台接続構造によって端子台の各相端子が接続される。したがって、端子台接続のために、各相リード端子をカシメ端子等に接続する作業と、バスバーを端子台に接続する作業が行われる。
各相バスバーを端子台の各相端子に接続するには、例えば、各相バスバーから引出部を延ばして端子台に導く構造を取ることができる。この構造によれば、各相バスバーに設けられた各相リード端子をカシメ端子等に接続する作業は、各相バスバーの外形と、端子台との間の空間を利用し、カシメ工具等の作業工具を用いて行うことになる。したがって、端子台は、各相バスバーに対し、作業工具の作業領域を確保する間隔を離して配置する必要がある。
端子台における各相端子の配置は、例えばU相端子、V相端子、W相端子を適当に離して一列に並べる配置とすることができるが、この場合、端子台の幅等の外形が大きくなり、各相バスバーに対する各相リード線の接続作業のための作業領域を狭めることが生じる。そのため、必要な作業領域を確保するため、端子台を各相バスバーに対して、さらに離して配置しなければならないことが生じる。
すなわち、各相バスバーと各相巻線との間の接続作業、及び各相バスバーと端子台との間の接続作業を考慮すると、端子台は、その大きさに応じて、各相バスバーに対し、適当な距離を離して配置する必要がある。このことにより、上記特許文献を含む従来技術においては、端子台接続構造も含めた回転機全体の大きさが大型化する。
本発明の目的は、端子台接続に関する接続作業の作業領域を確保しながら、回転機全体の小型化を可能とする回転機の端子台接続構造及び回転機の端子台接続方法を提供することである。
本発明に係る回転機の端子台接続構造は、回転機の巻線に接続される1以上のバスバーと、外部配線に接続される1以上の端子を有する端子台との接続を行う端子台接続構造であって、一方端が端子台の端子に接続され、他方端がバスバーに接続される1以上の接続端子部と、接続端子部を支持し、絶縁材料で構成されるプレート部と、を有し、プレート部は、少なくとも1つの接続端子部について、プレート部に対する姿勢を変更可能に支持することを特徴とする。
また、本発明に係る端子台接続構造において、姿勢変更可能な接続端子部は、回転軸を有し、プレート部は、回転軸を支持する受部を有し、姿勢変更可能な接続端子部は、プレート部に対し回転することで、その姿勢を変更することが好ましい。
また、本発明に係る端子台接続構造において、姿勢変更可能な接続端子部は、その外形をプレート部の平坦面に投影したときに、その投影面積がプレート部の平坦面の領域内からはみ出して拡張する拡張姿勢と、拡張姿勢から投影面積を縮小する縮小姿勢との間で姿勢を変更可能であることが好ましい。
また、本発明に係る端子台接続構造において、複数相回転機の各相巻線に接続される各相バスバーと、外部配線に接続される各相端子を有する端子台との接続を行う端子台接続構造であって、複数の接続端子部と、複数の接続端子部に対応する複数の受部とを含み、各接続端子部は、回転軸の先に設けられ、端子台に接続される平板状の接続板を有し、プレート部の各受部は、各相バスバーにそれぞれ接続され、さらに、各接続端子部がそれぞれ拡張姿勢を取るときに各接続板がそれぞれ端子台の各相端子に接続される所定の配置関係で、プレート部に配置されることが好ましい。
また、本発明に係る端子台接続構造において、プレート部は、各接続端子部が縮小姿勢を取る状態の下で、各相バスバーに各相巻線の端末部を接続する際の作業工具の作業領域を確保できる間隔を離して各相バスバーに対し配置されることが好ましい。
また、本発明に係る端子台接続構造において、姿勢変更可能な接続端子部は、プレート部から着脱可能に支持されることが好ましい。
また、本発明に係る回転機の端子台接続方法は、複数相回転機の各相巻線にそれぞれ接続される各相バスバーと、外部各相配線に接続される端子台との接続を行う回転機の端子台接続方法であって、各相巻線が巻回されたステータに、各相のバスバーを相互に絶縁して成形された端末モジュールを配置する工程であって、端末モジュールは、一方端が端子台の各相端子に接続され、他方端が各相バスバーに接続される複数の接続端子部と、複数の接続端子部を支持し、絶縁材料で構成されるプレート部と、を有し、プレート部は、各接続端子部について、その外形をプレート部の平坦面に投影したときに、その投影面積がプレート部の平坦面の領域内からはみ出して拡張する拡張姿勢と、拡張姿勢から投影面積を縮小する縮小姿勢との間で姿勢を変更可能に支持して、ステータに配置される工程と、各接続端子部を縮小姿勢として、ステータの各相巻線の各端末部をそれぞれ所定の相のバスバーに接続する巻線接続工程と、各接続端子部を縮小姿勢として、各接続端子部の一方端を露出させる状態で、端末モジュールを樹脂モールドするモールド工程と、各接続端子部を拡張姿勢として、各接続端子部の一方端を、端子台の各相端子に接続する端子台接続工程と、を含むことを特徴とする。
上記構成の少なくとも1つにより、端子台接続構造は、一方端が端子台の端子に接続され、他方端がバスバーに接続される1以上の接続端子部と、接続端子部を支持し、絶縁材料で構成されるプレート部と、を有し、プレート部は、少なくとも1つの接続端子部について、プレート部に対する姿勢を変更可能に支持する。これにより、端子台接続に関する接続作業に合わせて接続端子部の姿勢を変更できるので、接続作業の作業領域を確保しながら、回転機全体を小型にするように姿勢を変更することが可能となる。
また、接続端子部は回転軸を有し、プレート部は回転軸を支持する受部を有し、接続端子部をプレート部に対し回転することでその姿勢を変更するので、簡単な構造で接続端子部の姿勢を変更できる。
また、姿勢変更可能な接続端子部は、その外形をプレート部の平坦面に投影したときに、その投影面積がプレート部の平坦面の領域内からはみ出して拡張する拡張姿勢と、拡張姿勢から投影面積を縮小する縮小姿勢との間で姿勢を変更可能であるので、端子台接続に関する接続作業に合わせて接続端子部の姿勢を変更し、接続作業の作業領域を確保しながら、回転機全体を小型にするように姿勢を変更することが可能となる。
また、各接続端子部は、回転軸の先に設けられ、端子台に接続される平板状の接続板を有し、プレート部の各受部は、各相バスバーにそれぞれ接続され、さらに、各接続端子部がそれぞれ拡張姿勢を取るときに各接続板がそれぞれ端子台の各相端子に接続される所定の配置関係で、プレート部に配置される。すなわち、プレート部の各受部が各相バスバーにそれぞれ接続される配置関係において、各受部に支持される回転軸を回転させると、接続板はプレート部に対し姿勢を変更できる。そして、各接続板が縮小姿勢のときは、プレート台に対し、その外形投影が縮小され、いわば折りたたまれ、こぢんまりとした全体外形となるが、拡張姿勢を取るときに、各接続板がプレート台に対し、その外形投影がはみ出して展開し、その状態において、端子台の各相端子に接続されるようになる。
つまり、プレート部における各受部の配置は、各接続板が拡張姿勢を取るときに、各相バスバーからの引出部と受部と接続板と端子台各相端子とが、それぞれ順次接続される位置関係となる。換言すれば、各相バスバーの引出部と、端子台各相端子とをそれぞれ接続するには、各接続板を回転させて拡張姿勢にすることを要する。各接続板が縮小位置に回転されているときは、各相バスバーの引出部と、端子台各相端子とを接続できないが、いわば折りたたまれ、こぢんまりとした全体外形となっており、バスバーと接続板との間隔が広がり、拡張姿勢の場合に比べ、接続作業のための領域を広く取ることができる。
したがって、簡単な構成で、拡張姿勢のときは各相バスバーの引出部と、端子台各相端子とをそれぞれ接続することを可能とし、縮小姿勢のときは接続作業のための領域を広く取ることができる。これにより、端子台接続に関する接続作業の作業領域を確保しながら、回転機全体の小型化が可能となる。
また、プレート部は、各接続端子部が縮小姿勢を取る状態の下で、各相バスバーに各相巻線の端末部を接続する際の作業工具の作業領域を確保できる間隔を離して各相バスバーに対し配置されるので、簡単な構成で、拡張姿勢のときは各相バスバーの引出部と、端子台各相端子とをそれぞれ接続することを可能とし、縮小姿勢のときは接続作業のための作業領域を確保できる。これにより、端子台接続に関する接続作業の作業領域を確保しながら、回転機全体の小型化が可能となる。
また、姿勢変更可能な接続端子部は、プレート部から着脱可能に支持されるので、接続端子部が必要ない段階ではこれらをプレート部から外し、接続作業のための領域をさらに広く取ることができる。これにより、端子台接続に関する接続作業の作業領域を確保しながら、回転機全体の小型化が可能となる。
また、上記構成の少なくとも1つにより、一方端が端子台の各相端子に接続され、他方端が各相バスバーに接続される複数の接続端子部と、複数の接続端子部を支持し、絶縁材料で構成されるプレート部とを有し、プレート部は、各接続端子部について、その外形をプレート部の平坦面に投影したときに、その投影面積がプレート部の平坦面の領域内からはみ出して拡張する拡張姿勢と、拡張姿勢から投影面積を縮小する縮小姿勢との間で姿勢を変更可能に支持し、各相のバスバーを相互に絶縁して成形された端末モジュールを準備する。そして、各相巻線が巻回されたステータに、その端末モジュールを配置し、各接続端子部を縮小姿勢として、ステータの各相巻線の各端末部をそれぞれ所定の相のバスバーに接続し、各接続端子部を縮小姿勢として、各接続端子部の一方端を露出させる状態で、端末モジュールを樹脂モールドし、各接続端子部を拡張姿勢として、各接続端子部の一方端を端子台の各相端子に接続する。
このように、端子台接続に関する接続作業に合わせて、接続端子部の姿勢を変更する。すなわち、各接続端子部を端子台の各相端子と接続するときは、拡張姿勢とし、接続に必要な配置関係とし、各相巻線をバスバーに接続するとき、及びモールドするときは、各接続端子を縮小姿勢として、プレート部に対する投影面積を縮小し、これにより、接続作業の作業領域を確保する。したがって、接続作業の作業領域を確保しながら、回転機全体を小型にするように姿勢を変更することが可能となる。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において、ステータと端末モジュールとを樹脂モールドするものとして説明するが、少なくとも端末モジュールを樹脂モールドすればよく、ステータを樹脂モールドしないものとしてもよく、また、これら以外の回転機要素を含めて樹脂モールドするものとしてもよい。また、端子台は、U相、V相、W相の3つの端子を有するものとして説明するが、端子数は1以上であればこれ以外の数であってもよい。例えば1端子の場合でもよく、N相を加えて4端子としてもよい。また、端子台接続構造が適用される回転機として3相電動機を説明するが、端子台を用いるものであれば、3相でなくてもよい。また、電動機と発電機とは基本的構成が同じであるので、以下で回転機と述べるときは、機能的な面では、電動機、発電機及び電動/発電兼用機をも包含する。回転機は、端末モジュールを用いるものであれば、巻線方式を問わない。したがって端末モジュールを有する集中巻線方式回転機でも、端末モジュールを有する分布巻方式回転機でもよい。
また、以下において、端子台接続構造の接続端子部は3つあり、いずれもプレート部に対し回転可能に支持され姿勢を変更できるとして説明するが、すべての接続端子部が姿勢変更しなくても、端子台接続部全体として、拡張された大きさと縮小された大きさとを取り得ればよい。例えば、プレート部の両端部の接続端子部のみが姿勢を変更できるものとしてもよい。また、以下に述べる形状、寸法、材質等は一例であって、回転機の仕様に適合するように、適当に変更することができる。
図1は、3相電動機に用いられる固定子10に設けられる端子台接続構造20の様子を示す図である。図1(a)は、端子台接続構造20が手前に見えるように示した図で、(b)は、(a)の固定子10を裏返しにし、端子台接続構造20を向こう側に配置し、端子台100にそのまま接続される状態を示す図である。図1において固定子10は、樹脂モールドされたステータ12と、同じく樹脂モールドされた端末モジュール14とが積層された形態として示されている。樹脂モールドは、ステータと端末モジュールとを一体成形によって行われるが、もちろんステータと端末モジュールを別々に樹脂モールドしてそれを組み立ててもよい。端子台接続構造20は、一部が樹脂モールドされた端末モジュール14の中に埋め込まれ、外部には、端子台100と接続される接続板34,35,36の部分が露出する。
樹脂モールドされたステータ12は、その内部に、3相集中巻線方式で各相巻線が巻回されたステータが埋め込まれている。3相集中巻線方式のステータは、所定の形状に電磁鋼板を打ち抜き積層して形成されたステータコアを含む。ステータコアは、円環状の外形に、その内周側に複数の突極を有する。例えば、3相12極のステータの場合には、12の突極を有する。突極はティースとも呼ばれる。各突極には、回転機の仕様に応じた巻線がそれぞれ巻回される。上記の3相12極ステータの場合は、U相、V相、W相の各相巻線が、例えば、U−V−W−U−V−W−U−・・・の順に12の突極に順次巻回される。図1には、樹脂モールドされたステータ12の内周側に、ステータコアの複数の突極の先端部13の露出の様子が示されている。なお、後述の図5から図7には、ステータコア72、各相巻線74,75の様子が一部示されている。
樹脂モールドされた端末モジュール14は、その内部に、各相用のバスバーが埋め込まれている。各相用のバスバーは、帯状板材を折り曲げて角環状としたものを、絶縁層を挟んで複数積層したもので、ステータに巻回された各相巻線の端末を端子台100の各相端子に接続するための中継手段としての機能を有する部材である。上記の3相12極ステータに対応するものとしては、U相用、V相用、W相用、及び共通電極用のN相用のバスバーとして、12角環状に帯状板材を折り曲げたものを、絶縁層を挟んで径方向に4つ積層したものを用いることができる。
各相バスバーには、対応する各相巻線のリード端子をそれぞれ接続するためのカシメ端子が各相巻線の配置に対応して設けられる。例えば上記の3相12極ステータ用の各相バスバーのうち、U相バスバーで説明すると、12角環状の4つおきの辺がステータのU相巻線の配置位置となり、その辺のそれぞれに1つずつ、各U相巻線の2つのリード端子のうちの1つを接続するために、カシメ端子が設けられる。また、N相バスバーの12角環状の各辺には、それぞれ1つずつカシメ端子が設けられるが、これらは、各相巻線のリード端子のうちの1つを共通電極用として接続するためのものである。すなわち、各相巻線の2つのリード端子のうち、1つは対応する各相バスバーのカシメ端子に接続され、もう1つは、N相バスバーのカシメ端子に接続される。なお、後述の図5には、各相巻線74,75の2つのリード端子が、各相バスバー50のカシメ端子54,51,55,52に接続される様子が示されている。
また、各相バスバーには、端子台100の各相端子に接続するための引出部が設けられる。上記の3相12極ステータ用の各相バスバーで説明すると、各相バスバーの端子台100の配置位置に対応するところで、U相バスバーからU相引出部が、V相バスバーからV相引出部が、W相バスバーからW相バスバーが、それぞれ引き出される。これらの引出部は、端子台接続構造20の対応する接続端子部に接続され、接続端子部を介して、端子台100の各相端子に接続される。また、N相バスバーは、3相電動機の接地端子等に接続される。なお、図4には、各相バスバー50と、各相引出部64,65,66の様子が示されている。
端子台100は、ステータに巻回される各相巻線の端末を3相電動機の外部各相配線に接続するための中継部材である。端子台100には、図示されていない3相電動機のハウジングに取り付け固定するための取付部102,103が設けられる。また、端子台100は、図1に示されるように、固定子10の端子台接続構造20の外部に露出する接続板34,35,36を受け入れるガイド穴を有し、このガイド穴に沿って各相端子104,105,106が設けられる。各相端子104,105,106は、図示されていない接続手段によって、それぞれ外部の電動機駆動回路の各相出力配線に接続されている。
ガイド穴の中には、端子台接続構造20の接続板34,35,36を受け入れるときに付勢力でもって各相端子104,105,106に押し付けるように、押付バネが内蔵されることが好ましい。また、各接続板34,35,36と各相端子104,105,106とを接続するための取付用ナットが内蔵されていることが好ましい。取付用ナットは、ガイド穴から脱落しないように、例えば押付バネによって支えられていることが好ましい。
この構造を用いて、端子台100と端子台接続構造20とを次のように接続することができる。まず、3相電動機のハウジングに固定された端子台100のガイド穴に向かって、固定子10を移動させて、端子台接続構造20の接続板34,35,36をガイド穴に挿入し、接続板34,35,36と各相端子104,105,106とを押付バネでもって押し付けながら位置決めする。そして、内蔵された取付用ナットに対し、接続板34,35,36と各相端子104,105,106を挟み込んで、取付用ボルトを用いて締め付け固定して接続する。これによって、端子台100の各相端子104,105,106と端子台接続構造20の各接続板34,35,36とが接続される。
図2は、端子台接続構造20の詳細を説明する図である。端子台接続構造20は、固定子10を3相電動機の構成要素としてハウジングに取り付けて端子台100と合わせるときに、モールドされた端末モジュール14に含まれる各相バスバーの引出部と、端子台100の各相端子との間を接続する機能を有するものである。端子台接続構造20は、樹脂モールドされた端末モジュール14に一部が埋め込まれ、一部が外部に露出するが、図2では、樹脂モールドの部分を破線で示して、端子台接続構造20の全体を斜視図で示されている。
端子台接続構造20は、平板状のプレート部22と、プレート部22と一体化されている3つの受部24,25,26と、プレート部22に対し着脱可能な3つの接続端子部30とから構成される。図2では、3つの接続端子部のうち、2つがプレート部22に取り付けられ、1つが取り付けられる前の状態で示されている。
取り付ける前の接続端子部30は、矩形平板状の接続板34と、接続板34に一体化して結合される回転軸32とを有し、導電性材料で構成される。接続板34は、矩形形状のほぼ中央に取付穴44を有する。この取付穴44は、端子台100の各相端子に取り付けるためのものである。取付穴44の大きさは、端子台100に内蔵される取付用ナットとかみ合うことができる取付用ボルトが挿入できる大きさに設定される。
回転軸32は、軸方向断面が円形で、一方端が接続板34に一体化されて接続され、他方端は、受部24に設けられる回転穴28に挿入しやすいように、先細り形状となっている。回転軸32の外径は、受部24の回転穴28の内径よりやや小さい。したがって、回転軸32が受部24によって回転自在に支持され、プレート部22に対し姿勢を変更できる。ここで、姿勢変更とは、受部24の軸方向周りに接続板34の正面方向を回転できることを指している。図2においては、接続端子部30が図示されたまま受部24に挿入されると、その接続板34の正面方向はプレート部22の短手方向に平行に向く姿勢を取る。そして、受部24の周りに回転することで、その接続板34の正面方向を、プレート部22の表面に鉛直方向の軸周りに任意に回転することができる。取付穴44に注目すれば、図2の状態では取付穴44の中心軸はプレート部22の長手方向に平行であるが、これを回転して、プレート部22の短手方向に平行に、長手方向に垂直な方向になるように姿勢を変更できる。
図2には、プレート部22に2つの接続端子部が取り付けられている様子が示され、ここでは、接続板35と接続板36とが、それぞれ取付穴45,46の中心軸をプレート部22の短手方向に平行な方向に配置された姿勢を取っている。3つの接続端子部の各接続板34,35,36が全部この姿勢を取るとき、プレート部22の長手方向に全部の接続板34,35,36の正面が並ぶことになり、プレート部22の長手方向に沿った接続板34,35,36の全体の長さが最も長くなるので、これを拡張姿勢と呼ぶことにする。
拡張姿勢のとき、各接続端子部の外形をプレート部22に投影すると、その投影外形は、プレート部22の平面形状をはみ出す。つまり、拡張姿勢を取ることで、プレート部22の平面形状より広い領域に接続端子部を展開することができる。
これに対し、拡張姿勢から各接続板34,35,36を受部24,25,26周りにそれぞれ角度で90度回転させると、プレート部22の短手方向に全部の接続板34,35,36の正面が並ぶことになり、プレート部22の長手方向に沿った接続板34,35,36の全体の長さが最も短くなるので、これを縮小姿勢と呼ぶことができる。縮小姿勢のとき、各接続端子部の外形をプレート部22に投影すると、その投影外形は、拡張姿勢のときのものより縮小され、プレート部22の長手方向の形状よりはみ出すことがない。つまり、縮小姿勢を取ることで、プレート部22の平面形状より狭い領域内に各接続端子部を折畳むことができる。
拡張姿勢と縮小姿勢は、上記のように、3つの接続端子部を全体としてみたときに、プレート部22の長手方向に注目して最も長い領域を取る姿勢と、最も短い領域を取る姿勢である。もちろん、各接続端子部は、その間の姿勢を任意に取ることができる。広義の意味では、拡張姿勢及び縮小姿勢は、相対的なもので、3つの接続端子部を全体としてみたときに、プレート部22の長手方向に注目して、長い領域を取る方の姿勢が拡張姿勢で、短い領域を取る方の姿勢が縮小姿勢である。
なお、接続板と回転軸の接続は、接続板の平面の中心軸に合わせて回転軸を取り付けることができる。また、図2に示すように、プレート部22の長手方向の両端に配置される接続端子については、接続板の平面の中心軸から偏心して回転軸を取り付けることが望ましい。これによって、接続板34,35,36のすべてを相互に干渉せずに拡張姿勢としたときに、3つの受部24,25,26の配置を、プレート部22の長手方向に沿って、より短い範囲に収めることができる。すなわち、プレート部22の長手方向の寸法をより短くすることができる。
このように、端子台接続構造20においては、各接続端子部がプレート部22に対し、その姿勢について、拡張姿勢と縮小姿勢とを取ることができる。このことを利用し、端子台接続に関する接続作業の作業領域を確保しながら、3相電動機全体を小型化することができる。その様子を、端子台接続の手順に従って、以下に詳細に説明する。
図3は、3相電動機の端子台接続方法の手順を示すフローチャートである。また、図4から図7は、各手順の様子を説明する図で、ここでは、接続板がプレート部に対し固定位置のままである従来技術と比較しやすいように、各図の(a)に、図2の構造の端子台接続構造20を用いる場合を示し、(b)に従来技術の端子台接続構造の場合を示してある。いずれの場合においても、端子台接続構造を除く他の要素は同一である。すなわち、いずれの場合も3相12極集中巻方式の電動機で、各巻線、各バスバー、端子台も同じ構造である。なお、図4から図7においては、12極のうち、端子台接続構造に近接する2極部分のみが示されている。また、図1、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
3相電動機においてその端子台接続を行うためには、最初に、端末モジュールを準備する(S10)。図4に、端末モジュールの様子を示す。図4(a)には、図2に説明した端子台接続構造の付近が示されている。すなわち、各相バスバー50は、紙面に垂直な方向にU相、V相、W相、N相が相互の相の間に絶縁層を挟んで積層されており、12角円環状の2辺分が示されている。この2辺は、後に図5で示すように、U相巻線74とV相巻線75に対応する辺である。各辺には、それぞれ2つずつのカシメ端子が設けられる。U相巻線に対応する辺には、U相バスバーからのカシメ端子54と、N相バスバーからのカシメ端子51とが示されている。またV相巻線に対応する辺には、V相バスバーからのカシメ端子55と、N相バスバーからのカシメ端子52とが示されている。もちろん、各カシメ端子は、他の相のバスバーと空間的にあるいは絶縁層を介して絶縁されている。
また、U相バスバー、V相バスバー、W相バスバーからは、それぞれ引出部64,65,66が引き出され、プレート部22の各受部にそれぞれ接続される。プレート部22の各受部には、それぞれ接続端子部30が回転自在に挿入され、各接続板34,35,36は、それぞれ縮小姿勢を取っている。すなわち、各接続板34,35,36は、プレート部22の長手方向に垂直な方向に平行にその面を並べ、全体として折畳まれている。この縮小姿勢のとき、カシメ端子51,54,52,55が並ぶ方向に沿って、各接続板34,35,36の長さが最も短くなっている。
図4(a)において、破線領域60は、カシメ端子54,51においてカシメ作業を行うときの作業工具の作業領域を示す。各接続板34,35,36は縮小姿勢を取るので、プレート部22に対するその外形投影はプレート部22の長手方向をはみ出さないので、破線領域60は、プレート部22の長手方向の端部がその境界となる。換言すれば、プレート部22は、その長手方向の寸法が定まれば、長手方向の端部が、作業工具の作業領域を示す破線領域60の境界に接するところまで、各相バスバー50に対して離れる方向である高さ方向の位置を下げることができる。
これを従来技術の端子台接続構造を示す図4(b)と比較する。従来技術においては、各接続板37,38,39は、後に図7で述べるように、端子台100に接続できるように、プレート部23の長手方向に平行にその面が並べられて固定されている。したがって、プレート部23の長手方向の長さも図4(a)のプレート部22の長手方向の長さよりかなり長くなり、そのままでは作業工具の作業領域を示す破線領域60と干渉する。プレート部23の端部が破線領域60と干渉するのを避けるには、プレート部23の高さ方向の位置を高くする必要がある。このように、従来技術の端子台接続構造においては、プレート部23の高さ方向の位置を、図4(a)のものに比べ、高くして、各相バスバー50から離す必要がある。
再び図3に戻り、準備された端末モジュールを、ステータに対し配置する(S12)。そして、接続端子部を縮小姿勢として、ステータの各相巻線を対応する各相バスバーのカシメ端子にそれぞれ接続する(S14)。その様子を図5に示す。ここでは、ステータ70において、ステータコア72の突極に巻回される巻線として、U相巻線74とV相巻線75とが示されている。そして、U相巻線74からの2つのリード端子は、それぞれU相バスバーに対応するカシメ端子54と、N相バスバーに対応するカシメ端子51にカシメ作業により接続される。同様に、V相巻線75からの2つのリード端子は、それぞれV相バスバーに対応するカシメ端子55と、N相バスバーに対応するカシメ端子52にカシメ作業により接続される。
図4で説明したように、作業工具の作業領域を示す破線領域60とプレート部22,23の端部とが干渉しないように、プレート部22,23の高さ位置が設定されているので、カシメ作業は問題なく進めることができる。ただし、図5(a)に示すように、接続板34,35,36が拡張姿勢にあると、接続板34,36の端部が作業工具の作業領域を示す破線領域60に干渉することが起こる。したがって、上記のように、少なくともプレート部22の長手方向に沿った両端の各接続端子は、縮小姿勢とすることを要する。
再び図3に戻り、各相巻線がそれぞれのカシメ端子に接続されると、接続端子部を縮小姿勢としたままで、モールドされる(S16)。モールド処理は、端末モジュールの接続板34,35,36を回転可能として露出させ、また、ステータの突極の先端部13を露出させ、それ以外の部分を樹脂で覆って一体成形することで行われる。接続板34,35,36の回転自在を確実に確保するために、プレート部22の一部をモールドの中に埋め込み、その一部をモールドの外に露出するようにしてもよい。なお、接続端子部をそれぞれ縮小姿勢とする理由は、接続端子部の接続板の部分がモールド部分の外に露出させるための金型構造を簡単なものとするためである。
その様子を図6に示す。図6(a)には、端子台接続構造の部分に対応して、モールドされた端末モジュール14の外周部からの盛り上がり部81の様子が示される。同様に、図6(b)には従来技術の場合において、モールドされた端末モジュール16の外周部からの盛り上がり部82の様子が示されている。上記のように、プレート部22,23の各相バスバーからの離隔間隔が図2で説明した端子台接続構造20と、従来技術の構造とで異なるので、盛り上がり部81,82は、その大きさが異なる。すなわち、図6(a)では、プレート部22の長手方向の長さと、各相バスバーからの離隔高さh1に応じて、盛り上がり部81は、長手方向の長さW1、高さH1で示される。同様に、図6(b)の従来技術では、プレート部23の長手方向の長さと、各相バスバーからの離隔高h2に応じて、盛り上がり部82は、長手方向の長さW2、高さH2で示される。
そして、h1はh2より小さく、W1はW2より小さく、H1はH2より小さい。すなわち、図2で説明した端子台接続構造20を用いることで、モールドされた端末モジュール14の外形は、従来技術より小型にできる。したがって、3相電動機用の固定子自体も小型にでき、3相電動機自体の小型化も実現できる。
再び図3に戻り、次に、接続端子部をそれぞれ拡張姿勢に変更し、端子台100に接続する(S18)。その様子を図7に示す。なお、端子台100の取付部102,103の図示は省略されているが、端子台100は、図示されていない電動機ハウジングに予め取り付けられ固定されている。図7(b)の従来技術の場合を先に説明すると、モールドされた端末モジュール16から露出する各接続板37,38,39は、端子台100の各相端子104,105,106に対応する位置関係となっている。したがって、図1に関連して説明した端子台100の各ガイド穴に、各接続板37,38,39を挿入でき、端子台100の各相端子104,105,106に設けられる各取付穴と、各接続板37,38,39に設けられる各取付穴とを合わせることができる。そして、端子台100に内蔵された各取付用ナットに対し、各接続板37,38,39と各相端子104,105,106を挟み込んで、取付用ボルトを用いて締め付け固定して接続することができる。これによって、端子台100の各相端子104,105,106と、各接続板37,38,39とを接続することができる。
図7(a)においては、モールドされた端末モジュール14から露出する各接続板34,35,36が拡張姿勢として、プレート部22の長手方向に沿って、その面が並ぶように配置される様子が示されている。この拡張姿勢のとき、端子台100に設けられる板状の各相端子104,105,106の面と、各接続板34,35,36の面とが平行になる。また、各相端子104,105,106に設けられる各取付穴の配置と、拡張姿勢における各接続板34,35,36の各取付穴の配置とが対応するようになる。換言すれば、各接続板34,35,36が拡張姿勢を取るとき、図7(b)で説明した端子台100と、各接続板との配置関係と同じとなる。したがって、図7(a)で説明したと同様の手順で、端子台100の各相端子104,105,106と、各接続板34,35,36とを接続することができる。
このように、端子台接続構造20においては、各接続端子部がプレート部に対し、その姿勢について、拡張姿勢と縮小姿勢とを取ることができるので、このことを利用し、縮小姿勢によって端子台接続に関する接続作業の作業領域を確保し、拡張姿勢によって従来技術と同様な手順で各接続端子を端子台に接続することができる。したがって、端子台接続に関する接続作業の作業領域を確保しながら、3相電動機全体を小型化することができる。
10 固定子、12 モールドされたステータ、13 突極の先端部、14、16 モールドされた端末モジュール、20 端子台接続構造、22,23 プレート部、24,25,26 受部、28 回転穴、30 接続端子部、32 回転軸、34,35,36,37,38,39 接続板、44,45,46 取付穴、50 各相バスバー、51,52,54,55 カシメ端子、60 破線領域、64,65,66 引出部、70 ステータ、72 ステータコア、74,75 各相巻線、81,82 盛り上がり部、100 端子台、102,103 取付部、104,105,106 各相端子。