JP2007257890A - 非水電解質リチウムイオン電池用正極材料およびこれを用いた電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温での保存、充放電においても、Mnの溶出を抑制し、且つ高出力を維持し、高出力充放電による内部抵抗の上昇を抑制することのできる非水電解質リチウムイオン電池用正極材料を提供する。
【解決手段】1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上であるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなることを特徴とする正極材料。
【選択図】なし
【解決手段】1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上であるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなることを特徴とする正極材料。
【選択図】なし
Description
本発明は、正極活物質にリチウムニッケルマンガン酸化物を用いてなる非水電解質リチウムイオン電池用正極材料およびこれを用いた非水電解質リチウムイオン電池に関するものである。
現在、携帯電話などの携帯機器向けの非水電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池が商品化されている。この非水電解質リチウムイオン二次電池は、携帯機器の軽量・薄型化が進むに連れ、電池自体の薄型化も必要となり、最近ではラミネートフィルムを外装材として用いる薄型電池の開発も進み、正極活物質にリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、負極活物質に黒鉛質材料や炭素質材料、非水電解質にリチウム塩を溶解した有機溶媒やポリマー電解質を用いたラミネートタイプの薄型電池が実用化されつつある。
さらに、近年、携帯機器の多機能化・高性能化に伴い、機器の消費電力は高まりつつあり、その電源となる電池に対して、高容量化の要求が一層強くなってきた。そこで、従来のリチウムコバルト酸化物に比べて、高容量化が期待できるリチウムニッケルマンガン酸化物の開発が進んでいる。
こうした用途とは別に、近年、環境保護運動の高まりを背景として電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、燃料電池車(FCV)の導入を促進すべく、これらのモータ駆動用電源やハイブリッド用補助用電源等の開発が行われている。こうした用途にも、繰り返し充放電可能な非水電解質リチウムイオン二次電池が使用されている。EV、HEV、FCVのモータ駆動等のような高出力及び高エネルギー密度が要求される用途では、単一の大型電池は事実上作れず、複数個の電池を直列に接続して構成した組電池を使用することが一般的である。このような組電池を構成する一個の電池として、ラミネートタイプの薄型の非水電解質リチウムイオン電池(単に薄型ラミネート電池という)を用いることが提案されている。
こうした高出力及び高エネルギー密度が要求される用途での薄型ラミネート電池でも、同様に、電池の外装容器を金属製シート材料に変えた電池となっている。具体的には、容器内外で水蒸気および酸素などの気体の交換が行われないようアルミニウム箔などの金属薄膜と、ポリエチレンテレフタレートなどの金属薄膜を物理的に保護する樹脂フィルムおよび、アイオノマーなどの熱融着性樹脂フィルムを重ね合わせて多層化したラミネートシートが用いられている。この薄型ラミネート電池の外装容器は平面視で矩形状をなし、所定の薄型をなしている。外装容器に板状の正極および負極を挿入し、液状の非水電解質を封入することで電池となしている。
このような薄型ラミネート電池は、個々に金属製の外装容器を持たないため軽量であり、過充電等により容器内の圧力が高圧となり破裂に至った場合でも、金属容器に比べて衝撃が少ないので、EV、HEV、FCVのモータ駆動等のような高出力及び高エネルギー密度が要求される用途においても好適である。
更に、こうしたEV、HEV、FCVのモータ駆動等のような高出力及び高エネルギー密度が要求される用途に用いられる薄型ラミネート電池においても、上述した携帯機器向けの場合と同様に、その電源となる電池に対して、高容量化の要求が一層強くなってきた。また、自動車用としては安全性が極めて重要な評価項目となる。そのため、従来のリチウムコバルト酸化物に比べて、高容量化、高安全性が期待できるリチウムニッケルマンガン酸化物の開発が進んでいる。
ところが、このリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質として含有する正極材料を用いてなるリチウムイオン電池においては、高温(45℃以上)での保存やサイクル耐久において正極材料中のMnが3価イオンとして電解液に溶出し、負極に析出し、電池の容量、出力を低下させる問題がある。
高温で安定に保存、充放電を行うために、特許文献1には、遷移金属の元素置換を行っている。
特開2005−38629号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法は、遷移金属を置換することによって、容量低下、抵抗上昇などによってHEV用としては出力が低下するとの問題があった。更に、HEV用としての高出力充放電サイクルによる内部抵抗の上昇に問題があった。
そこで、本発明は、上記の従来技術の課題に着目されたものであり、高温での保存、充放電においても、Mnの溶出を抑制し、且つ高出力を維持し、高出力充放電による内部抵抗の上昇を抑制することのできる非水電解質リチウムイオン電池用正極材料およびこれを用いた電池を提供することを目的とする。
本発明者は、正極活物質に用いられるリチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から一定の深さの領域のMnの平均価数を3.2価以上にすることで、保存、充放電においても、Mnの溶出を抑制し、且つ高出力を維持し、高出力のサイクル充放電による内部抵抗上昇を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域(単に表面近傍領域ともいう)における、Mnの平均価数が3.2以上であるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなることを特徴とする正極材料により上記目的を達成することができる。
本発明の非水電解質リチウムイオン電池用正極材料によれば、正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域のMnの平均価数を3.2価以上にすることによって、表面から電解液へのMn溶出を抑制することができる。Mnを3.2価以上にする方策としては、表面近傍領域(特に表面上)に過剰な酸素を導入する。あるいは正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域を酸素終端とする。また、表面近傍領域のMnを+2価イオン(元素)で置換する。表面近傍領域の酸素を−3価イオン(元素)によって置換する。さらに、表面近傍領域のMnを欠損させることによってもMnの価数を+4価に上昇させることができる。また、正極活物質の表面近傍領域を酸素終端にすることによって炭素系の導電助材との結着力が強まり、高出力充放電による内部抵抗の上昇を抑制することができる。
本発明の正極材料は、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上であるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなることを特徴とするものである。
本発明の正極材料に用いることのできるリチウムニッケルマンガン酸化物は、正極活物質として用いられるものであれば特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができる。これらリチウムニッケルマンガン酸化物においては、発明の効果において述べたようなMnを3.2価以上にする方策を利用して、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域におけるMnの平均価数を3.2以上にすることによって、当該酸化物表面から電解液へのMn溶出を抑制することのできる表面構造を有する酸化物が得られるものである。
これらリチウムニッケルマンガン酸化物には、上記したようにリチウム、ニッケルおよびマンガンを主成分とし、更に1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域におけるMnの平均価数が3.2以上に調整されてなるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物を含むものである。リチウムニッケルマンガン酸化物としては、例えば、LiNi0.5Mn0.5O2の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上のもののほか、ニッケル、マンガンの一部を他の遷移金属等の元素により置換したもの、例えば、LiNi0.5−xMn0.5−yCox+yO2(0<x<0.4、0<y<0.4)において、更に1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域におけるMnの平均価数が3.2以上であるもの、あるいは;下記一般式(I)において、
(式中、Mはアルカリ金属(但し、リチウムは除く)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウムを含む)、遷移金属(但し、ニッケル、マンガン、コバルトを除く)、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Aはカルコゲン元素(但し、酸素は除く)、窒素、リン、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。x、y、z、a、b、c、dについては、
0.5<x≦1.1、
0.3≦y≦0.7、
0.3≦z≦0.7、
0.0≦a≦0.4、
0.0≦b≦0.2、
1.8≦c≦2.4、
0.0≦d≦0.2
を示す。)で表されるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物などが挙げられる。本発明では、(I)式で表されるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物が使用できるが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。これらリチウムニッケルマンガン酸化物、特に特に一般式(I)の組成は、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)分析、原子吸光法、蛍光エックス線法、パーティクルアナライザー、質量分析により測定することができる。
0.5<x≦1.1、
0.3≦y≦0.7、
0.3≦z≦0.7、
0.0≦a≦0.4、
0.0≦b≦0.2、
1.8≦c≦2.4、
0.0≦d≦0.2
を示す。)で表されるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物などが挙げられる。本発明では、(I)式で表されるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物が使用できるが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。これらリチウムニッケルマンガン酸化物、特に特に一般式(I)の組成は、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)分析、原子吸光法、蛍光エックス線法、パーティクルアナライザー、質量分析により測定することができる。
本発明では、上記したように1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域におけるMnの平均価数が3.2以上であるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなることを特徴とするものである。
好ましくは、一般式(I)
(式中、Mはアルカリ金属(但し、リチウムは除く)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウムを含む)、遷移金属(但し、ニッケル、マンガン、コバルトを除く)、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Aはカルコゲン元素(但し、酸素は除く)、窒素、リン、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。x、y、z、a、b、c、dについては、
0.5<x≦1.1、
0.3≦y≦0.7、
0.3≦z≦0.7、
0.0≦a≦0.4、
0.0≦b≦0.2、
1.8≦c≦2.4、
0.0≦d≦0.2を示す。)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなる正極材料であって、Liの含有量が0.95≦x≦1.05のときの前記リチウムニッケルマンガン酸化物において、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上であることを特徴とするものである。
0.5<x≦1.1、
0.3≦y≦0.7、
0.3≦z≦0.7、
0.0≦a≦0.4、
0.0≦b≦0.2、
1.8≦c≦2.4、
0.0≦d≦0.2を示す。)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなる正極材料であって、Liの含有量が0.95≦x≦1.05のときの前記リチウムニッケルマンガン酸化物において、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上であることを特徴とするものである。
上記Mは、リチウムニッケルマンガン酸化物のLi層(Liのサイト)ないしNi、Mn、Coの遷移金属サイトに置換する元素(置換体)であって、アルカリ金属(但し、リチウムは除く)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウムを含む)、遷移金属(但し、ニッケル、マンガン、コバルトを除く)、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。
上記Mのうち、アルカリ金属、アルカリ土類金属は、リチウムニッケルマンガン酸化物のLi層(Liのサイト)に置換する元素(置換体)になり得る。Li層(Liのサイト)の一部を当該元素で置換することで、置換した部分はLiの充放電に関与しないので、充放電による構造変化を抑制することができるものである。ただし、これらの元素は、リチウムニッケルマンガン酸化物のニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)の遷移金属サイトの一部を置換する場合もあり得る。
上記アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)をいうが、ここでは、Liを除いた、Na、K、Rb、Cs、Frをいうものとする。また、アルカリ土類金属は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)をいうが、ここでは、さらにベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)を加えたものをいうものとする。
また、上記式中のMのうち、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウムを含む)、遷移金属(但し、ニッケル、マンガン、コバルトを除く)、アルミニウムは、リチウムニッケルマンガン酸化物のNi、Mn、Coの遷移金属サイトに置換する元素(M置換体)になり得る。リチウムニッケルマンガン酸化物のNi、Mn、Coのサイトの一部をこれらの元素で置換することで、表面組成を変化させた置換体を得ることが出来る。とりわけ、リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域(表面近傍領域)のMnの平均価数を3.2価以上にする方策の1つとして、表面近傍領域のNi、Mn、Coの遷移金属サイト、特にMnのサイトを+2価の金属イオンの元素(Ni、Mn、Coを除く)で置換するものである。遷移金属サイトを+2価の金属イオンの元素のM置換体(例えば、Mg、Zn等)で置換してMnの平均価数を3.2価以上にすることにより、高温での保存やサイクル耐久において、Mnが3価イオンとして表面から電解液に溶出するのを抑制することができる。その結果、溶出したMnイオンが負極に析出し、電池の容量、出力が低下するのを抑制できる。かかる観点から、M置換体としては、+2価の金属イオンの元素(アルカリ土類金属や遷移金属)が好ましく、具体的には、Mgおよび/またはZnであるが、
上記遷移金属は、周期律表の3〜12族に属する元素をいうが、ここでは、一般式(I)のリチウムニッケルマンガン酸化物の当該Ni、Mn、Coの遷移金属サイトを構成しているNi、Mn、Coは含めないものとする。
上記遷移金属は、周期律表の3〜12族に属する元素をいうが、ここでは、一般式(I)のリチウムニッケルマンガン酸化物の当該Ni、Mn、Coの遷移金属サイトを構成しているNi、Mn、Coは含めないものとする。
さらに、上記式中のAは、リチウムニッケルマンガン酸化物の酸素(O)のサイトに置換する元素(置換体)であって、カルコゲン元素(16族の元素、但し酸素は除く。)、窒素、リン、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。リチウムニッケルマンガン酸化物のOのサイトの一部を該置換体Aで置換することで、表面構造を安定化させることが出来る。とりわけ、リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域のMnの平均価数を3.2価以上にする方策の1つとして、表面近傍領域の酸素サイトを−3価の非金属イオンの元素によって置換するものである。酸素を−3価の非金属イオンのA置換体(例えば、N、P等)で置換してMnの平均価数を3.2価以上にすることにより、高温での保存やサイクル耐久において、Mnが3価イオンとして表面から電解液に溶出するのを抑制することができる。その結果、溶出したMnイオンが負極に析出し、電池の容量、出力が低下するのを抑制できる。かかる観点から、A置換体としては、−3価の非金属イオンの元素が好ましく、具体的には、Nおよび/またはPであるが、これらに制限されるものではない。
上記カルコゲン元素は、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、ポロニウム(Po)をいうが、ここでは、Oを除いた、S、Se、Te、Poをいうものとする。
上記式中のxは、リチウムニッケルマンガン酸化物中のLi含有量を示すものであり、0.5<x≦1.1、好ましくは0.66≦x≦1.0である。Li含有量xが1.1を超える場合には、そもそも酸化リチウムなどを形成しやすく、合成が困難であるほか、結晶構造が不安定化したり、これを使用したリチウム二次電池の電池容量低下を招く恐れがある。また、下限は特に制限されるものではなく、Liを必須成分として含有していればよいが、Li含有量xが0.5未満である場合には、電池としての容量の減少に加えてLiの拡散パスの減少につながり好ましくない。
上記式中のyは、リチウムニッケルマンガン酸化物中のNi含有量を示すものであり、0.3≦y≦0.7、好ましくは0.33≦y≦0.67である。Ni含有量yが0.3未満の場合には、容量の低下を招く虞れがあるほか、結晶構造が不安定化したり、高出力充放電による内部抵抗が上昇したり、高容量化の要求を十分満足させるのが困難となるおそれがある。また、Ni含有量yが0.7を超える場合には、ニッケル酸リチウムに組成が近くなるために、合成が困難、熱安定性が下がるといった問題のほか、結晶構造が不安定化し、高温での高出力充放電による内部抵抗を抑制させるのが困難となるおそれがある。
上記式中のzは、リチウムニッケルマンガン酸化物中のMn含有量を示すものであり、0.3≦z≦0.7、好ましくは0.33≦z≦0.55である。Mn含有量zが0.3未満の場合には、熱安定性が下がり、温度上昇により不安定になる。また、Mn含有量zが0.7を超える場合には、容量の低下に加え、Mnの溶出などを起こす恐れがある。
上記式中のaは、リチウムニッケルマンガン酸化物中のCo含有量を示すものであり、0.0≦a≦0.4、好ましくは0.1≦a≦0.35である。リチウムニッケルマンガン酸化物に、Coを含有させることにより容量劣化が抑制できる。Co含有量aの下限は特に規定されないが、Co含有量aが0.4を超える場合には、原料コストの上昇とともに熱安定性も悪くなる。
上記式中のbは、リチウムニッケルマンガン酸化物中のアルカリ金属(但し、リチウムは除く)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウムを含む)、遷移金属(但し、ニッケル、マンガン、コバルトを除く)、アルミニウムからなる置換体Mの含有量を示すものであり、0≦b≦0.2、好ましくは0.01≦b≦0.1である。リチウムニッケルマンガン酸化物に、置換体Mが含まれることにより容量劣化が抑制できる。置換体Mの含有量bが0.2を超える場合には、電池容量や出力の低下を引き起こす。また、置換体Mは任意成分であり、特に含有している必要はないことから、下限は特に制限されるものではない。置換体Mが含まれる場合には、置換体Mによる作用効果を有効に発揮し得る程度まで置換されているのが望ましい。かかる観点から、置換体Mの含有量bは、0.01以上であるのが望ましい。
上記式中のcは、リチウムニッケルマンガン酸化物中の置換体Aが未置換状態の酸素の含有量を示すものであり、1.8≦c≦2.4、好ましくは2.0≦c≦2.2である。当該酸素の含有量cが1.8未満の場合には、酸素数が少ないために構造が安定しない。また、当該酸素の含有量cが2.4を超える場合には、遷移金属の酸化数が高くなりすぎ熱的に不安定である。
上記式中のdは、リチウムニッケルマンガン酸化物中の置換体Aの含有量を示すものであり、0≦d≦0.2、好ましくは0.05≦d≦0.1である。特に、リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域の酸素サイトに、上記含有量dの範囲で−3価イオンの置換体Aを導入することで、表面近傍領域のMnの平均価数を3.2価以上にする方策の1つとして有効利用することができる。これにより表面から電解液へのMn溶出を抑制することができる。また高出力を維持し、高出力のサイクル充放電による内部抵抗上昇を抑制することができる。当該置換体Aの含有量dが0.2を超える場合には、構造が不安定化するので合成が困難である。また、置換体Aは任意成分であり、特に含有している必要はないことから、下限は特に制限されるものではない。置換体Aが含まれる場合には、置換体Aによる上記作用効果を有効に発揮し得る程度まで置換されているのが望ましい。かかる観点から、置換体Aの含有量dは、0.03を超えるのが望ましく、より好ましくは0.05以上である(実施例15〜20と比較例5〜6を対比参照のこと)。
なお、本発明では、上記一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物は、その1次粒子全体が上記一般式(I)で表されるものであるのが望ましい。ただし、その1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域(表面近傍領域)における組成が、上記一般式(I)で表されるものであってもよい。これは、上記したようにリチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域のMnの価数を高めることができるように表面処理を行っているが、こうした表面処理後の表面近傍領域の組成も、上記一般式(I)で規定される範囲に含まれる為である。なお、表面処理後の表面近傍領域の組成の確認は、例えば、TOF−MASS(飛行時間型質量分析法)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)によって確認できる。また、リチウムニッケルマンガン酸化物粒子のコア部分、即ち、表面近傍領域よりも深い部分の組成の確認は、例えば、X線回折パターンの低角側ピークの大きさによって確認できる。
さらに本発明では、上記リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域に過剰な酸素を導入してなること、即ち、一般式(I)においてc≧2−dであることが望ましい。リチウムニッケルマンガン酸化物の表面上に過剰な酸素を導入することにより、正極活物質表面を酸素終端とすることができるためである。これにより、リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域のMnの平均価数を3.2価以上にすることができ、表面から電解液へのMn溶出を抑制することができる。また、正極活物質の表面を酸素終端とすることによって炭素系の導電助材との結着力が強まり、高出力充放電による内部抵抗の上昇をより一層抑制することができる点でも優れている。
以上の点から、本発明では、リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面が、40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下の割合で酸素終端されていることが望ましい。1次粒子表面が、40%以上100%以下の割合で酸素終端されている場合には、遷移金属の安定性が増し、長寿命化可能である点で優れている。
かかる酸素終端率の測定は、実施例において説明するように、リチウムニッケルマンガン酸化物を製膜後に表面処理(アニール処理)して、表面近傍領域のMnの価数を高めた後に測定することができる。例えば、比較例1に示すような製造方法に従って得られた表面処理されていない既存のリチウムニッケルマンガン酸化物粉末を、適当な大きさ(例えば、直径20mm、厚さ5mm)の円柱状のペレットに成形する。このペレットを500〜1000℃、酸素雰囲気中で1〜100時間、焼結する。そのペレットをターゲットとして、例えば、パルス・レーザ・デポジッション(PLD)法を用いて、導電性を持った基板上(例えば、SrTiO3(100)基板上)に製膜する。製膜条件は、温度が室温〜700℃で、酸素分圧0.01〜10mmHg、0.01〜10時間の範囲とすることができる。作製される膜厚は、通常2〜100nm程度であれば十分な評価が可能である。製膜後に表面処理(例えば、アニール処理)として、酸素分圧0.2〜10atm、300〜1000℃で、1〜100時間アニールすることで、薄膜状のリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)を得ることができる(詳しくは、後述する実施例を参照のこと)。こうして、得られた表面処理済みの薄膜状のリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)につき、実施例に示す酸素終端率の測定方法に従って、10×10nm2の面積に占める酸素終端している面積を算出し、酸素終端率(%)を求めることができる(詳しくは、実施例に規定する「酸素終端率の測定方法」の項を参照のこと。)。ただし、かかる製膜方法は、実施例で説明するパルス・レーザ・デポジッション法(PLD)に限られず、ケミカル・ヴェーパー・デポジッション法(CVD)、PVD、スパッタリング法などを用いる事が出来る。また、基板としてもMgO、LaSrGaOなどを用いる事が出来る。また、表面処理に関しても、酸素分圧0.1気圧(atm)以上の雰囲気でのアニール処理のほか、例えば、酸素2気圧よりも高い雰囲気でのアニール処理、電解酸化処理、オゾンを用いたアニール処理などを用いて行うことができる。
また、本発明では、上記リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域で、前記1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域で遷移金属サイトの遷移金属のサイト占有率が、90%以上98%以下、好ましくは92%以上96%以下である。ここでいう遷移金属サイトとは、記リチウムニッケルマンガン酸化物のNi、Mn、Coの遷移金属サイト、特に好ましくはMnのサイトをいう。また、この遷移金属サイトでの遷移金属には、Ni、Mn、Coのほか、当該遷移金属サイトに導入し得る上記一般式(I)中のM(遷移金属に限る)が含まれ得るが、好ましくはMnである。遷移金属サイト(Mnサイト)での遷移金属(Mn)のサイト占有率を上記範囲内に調整(制御)することで、表面近傍領域のMnの平均価数を3.2価以上にする方策の1つとして有効利用することができる。言い換えれば、前記1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域でMnを欠損させる、即ち、表面近傍領域でMnサイトのMnのサイト占有率が100%よりも低い90〜98%になるように欠損させることによっても、表面近傍領域のMn(一部)の価数を+4価に上昇させることができる。これにより表面から電解液へのMn溶出を抑制することができる。また高出力を維持し、高出力のサイクル充放電による内部抵抗上昇を抑制することができる(実施例21〜22と比較例7を対比参照のこと)。
上記1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域で遷移金属サイトの遷移金属のサイト占有率(例えば、MnサイトのMnのサイト占有率)は、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域の組成から、薄膜X線解析、RHEEDといった方法により算出することができる(表8参照のこと)。
さらに、本発明では、上記リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域で1.8≦(c−d)/(y+z+a+b)≦2.4、好ましくは2≦(c−d)/(y+z+a+b)≦2.2となることが望ましい。上記次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域で、酸素含有量(c−d)/Ni+Mn+Co+M含有量(y+z+a+b)が1.8以上の場合には十分な酸素原子数があるので構造的に安定であり、2.4以下であれば、遷移金属の酸化数が高くなりすぎず、熱的安定性が保たれる点で優れている。
本発明では、上述した一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物は、いわば初期充電前の正極活物質の状態を表すものである。
本発明では、Liの含有量が0.5<x≦1.1、特に0.95≦x≦1.05のときの一般式(I)で表される前記リチウムニッケルマンガン酸化物において、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上であることを特徴とするものである。これは、+3価イオンとして溶出されるMnを、より価数の高いMnとして表面全体を覆うようにしておくことで、Mnがイオン化されて溶出するのを効果的に抑制することができる。特に表面近傍をこうしたより価数の高いMnすることで、これよりも内部のMnが溶出するのを効果的にブロッキングすることもできる。そのため、本発明では、少なくとも1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さまでの領域について、Mnの平均価数が3.2以上に制御されていればよく、その内部(粒子のより深部)のMn価数については、特に制限されるものではない。したがって、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さよりも内部(粒子のより深部)のMn価数が、3.2以上であればもちろんのこと、3.2よりも低くてもその溶出を抑制することができ、本発明の作用効果を有効に発現することができる。かかる要件を満足することにより、高温(45℃以上)での保存やサイクル耐久においてリチウムニッケルマンガン酸化物中のMnが3価イオンとして電解液に溶出するのを抑制することができる。Mnを3.2価以上にする方策としては、表面上に過剰な酸素を導入して表面を酸素終端とする。また、表面近傍領域のMnを+2価イオン(元素)で置換する。表面近傍領域の酸素を−3価イオン(元素)によって置換する。Mnを欠損させることによってもMnの価数を+4価に上昇させることなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。一方、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2未満の場合には、高温での保存やサイクル耐久において正極活物質表面からMnが3価イオンとして電解液に溶出するのを抑制するのが困難となる。その結果、高出力充放電による内部抵抗が上昇することにもなる(各表の実施例と比較例との抵抗比率1〜3、Mn溶出量を対比参照のこと。)。
ここで、「Liの含有量が0.95≦x≦1.05のとき」とは、必要に応じて、表面層に導入されるリチウム原子の量を調整することにより、Li含有量を0.95≦x≦1.05に調整したときを指すものである。なお、必要に応じてとしたのは、後述する各実施例で得られた充放電前の状態の一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物のLi含有量xが既に0.95≦x≦1.05の範囲にあるため、こうした場合は、特に上記調整を行う必要がないためである。こうした場合には、そのまま充放電前の状態の一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物につき、1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域におけるMnの平均価数を測定することができる。但し、充放電前の状態においては、一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物のLi含有量xが必ずしも0.95≦x≦1.05の範囲にある必要はなく、一般式(I)において規定したように、0.5<x≦1.1、好ましくは0.66≦x≦1.0を満足すればよい。
本発明では、Liの含有量xが上記範囲のとき、該リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域におけるMnの平均価数が3.2以上、好ましくは3.3以上である事を特徴とするものである。言い換えれば、一次粒子表面全体を価数の高いMnで覆っておくことができるものといえる。即ち、粒子表面の一部だけを価数の高いMnで覆うことによっても当該部分からのMnの溶出を抑えることができるため、一定の効果は得られる。しかしながら、価数の高いMnで覆われていない表面部分に関しては、効果的にMnの溶出を抑えることができない。本発明者が検討した結果、表面近傍領域におけるMnの平均価数が3.2以上であれば、Mnの溶出抑制効果が一様になる(ほぼ一定の値になる。表2〜8参照のこと。)ことから、この時点で一次粒子表面全体を価数の高いMnで覆うことができているものと考える。
ここで、リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域(表面近傍領域)の組成は、例えば、金属元素の定量方法としてはICP(誘導イオンプラズマ法)、非金属、金属元素の定量法としてはTOF−MASS(飛行時間型質量分析法)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)などを用いて求めることができる。こうして求めた表面近傍領域の組成から、電気中性の原理により、Mnの価数を求めることができる。ここで、一般式(I)に示す各元素(M元素の遷移元素については、第一遷移元素(3d遷移元素)を例示した)の価数の1例を下記表1に示す。
上記表中のアルカリは、Liを除いたアルカリ金属元素を表す。土類は、Be、Mgを含むアルカリ土類金属元素を表す。Xは、ハロゲン元素を表す。カルコゲンは、Oを除いたカルコゲン元素を表す。Wは、Mnの価数を表す。
従って、例えば、後述する実施例1のリチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域の組成;LiNi0.4Co0.3Mn0.3O2.06を例にとれば、以下のようにして求めることができる。
W=−(1×1+0.4×3+0.3×3+2.06×(−2))/0.3
W=3.4
なお、Li含有量が上記範囲にあるときの一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物における結晶構造(結晶の空間群の対称性)は、特に制限されるものではないが、後述する実施例に示すようにR3−mであるのが望ましい。かかる結晶構造(結晶の空間群の対称性)は、例えば、粉末X線回折装置(粉末XRD)等により確認することができる。
W=3.4
なお、Li含有量が上記範囲にあるときの一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物における結晶構造(結晶の空間群の対称性)は、特に制限されるものではないが、後述する実施例に示すようにR3−mであるのが望ましい。かかる結晶構造(結晶の空間群の対称性)は、例えば、粉末X線回折装置(粉末XRD)等により確認することができる。
本発明では、正極活物質に高容量化、高安全化が期待できる上記リチウムニッケルマンガン酸化物を用いることを特徴とするものであるが、さらに、リチウムニッケルマンガン酸化物以外に本発明の作用効果を損なわない範囲内で使用可能な他の正極活物質を含んでいてもよい。かかる他の正極活物質としては、従来公知の非水電解質リチウムイオン電池で使用される正極活物質を用いることができる。具体的には、他の正極活物質を任意で含有していてもよく、従来公知のものを用いることができる。具体的には、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)を好適に使用できる。例えば、LiMn2O4などのLi・Mn系複合酸化物、LiCoO2などのLi・Co系複合酸化物、Li2Cr2O7、Li2CrO4などのLi・Cr系複合酸化物など、LiFeO2などのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したものなどが併用できるなど、Li金属酸化物から選択し使用できるが、これらの材料に限定されるものではない。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、高容量化の点ではリチウムニッケルマンガン酸化物に及ばないものの、リチウムニッケルマンガン酸化物と同様に反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することができる。この他にも、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなどが併用できる。
上記正極活物質のリチウムニッケルマンガン酸化物粒子の平均粒径としては、その製造方法にもよるが、正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、0.1〜20μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。なお、該リチウムニッケルマンガン酸化物が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒径が0.01〜5μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、リチウムニッケルマンガン酸化物が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかるリチウムニッケルマンガン酸化物粒子の粒径および1次粒子の粒径は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)観察、透過電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。
次に、リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域のMnを3.2価以上にする方法である、以下の(1)〜(4)につき、以下に説明する。
(1)リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域への過剰酸素の導入方法
リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域への過剰酸素の導入方法としては、(i)酸素1気圧以上の雰囲気での高酸素圧アニール処理、(ii)オゾンを用いてアニール処理を用いることができる。但し、過剰酸素の導入方法については、これらの方法に何ら制限されるものではない。
リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域への過剰酸素の導入方法としては、(i)酸素1気圧以上の雰囲気での高酸素圧アニール処理、(ii)オゾンを用いてアニール処理を用いることができる。但し、過剰酸素の導入方法については、これらの方法に何ら制限されるものではない。
上記(i)の高酸素圧アニール処理としては、所望の過剰酸素を導入することができる条件であれば特に制限されるものではない。例えば、300℃〜500℃において、2気圧より高い雰囲気、好ましくは2気圧超20気圧以下の雰囲気で高酸素圧アニール処理を行うことで、リチウムニッケルマンガン酸化物表面に過剰酸素を導入することができる。
上記(ii)のオゾンアニール処理でも、所望の過剰酸素を導入することができる条件であれば特に制限されるものではない。例えば、300℃〜500℃において、オゾンを用いてアニール処理を行うことで、リチウムニッケルマンガン酸化物表面に過剰酸素を導入することができる。なお、オゾンアニールには、酸素、オゾンの混合ガスや空気、オゾンの混合ガスを用いて行うことができる。オゾンアニール時の圧力に関しても、上記高酸素アニールと同程度になるようにすればよい。また混合ガスを用いる場合の、オゾン濃度に関しても、所望の過剰酸素を導入することができる条件であれば特に制限されるものではない。
なお、当該(1)の(i)〜(ii)のいずれの場合も、表面(近傍領域)に過剰酸素を導入する前のリチウムニッケルマンガン酸化物は、後述する(3)の製造方法と同様にして作製することができる。即ち、共沈前の原材料(正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の原材料)を含有する化合物を混入させ、共沈させて、熱分解させ、焼成(アニールを含む)することにより作製することができる。
(2)リチウムニッケルマンガン酸化物の1次粒子の表面(近傍領域)を酸素終端とする方法
リチウムニッケルマンガン酸化物の表面(近傍領域)を酸素終端とする方法としては、特に制限されるものではなく、上記過剰酸素の導入方法と同様な方法で実施(確認)することができる。本発明では、上記過剰酸素の導入方法以外にも、例えば、実施例で用いたような方法を用いて酸素終端を形成することができる。即ち、レーザーパルスドデポジッション法(PLD)を用いて電子ドープ型のSrTiO3(100)基板を用い、リチウムニッケルマンガン酸化物の薄膜を作成する。その後、酸素アニールすることによって、酸素終端を形成させin situ STM(走査型トンネル顕微鏡によるその場観察装置)、RHEED(反射高速電子回折法)の回折パターンによりアニール前とアニール後の酸素の終端率を測定した。製膜方法としてはPLDに限られず、化学気相成長法(ケミカル・ヴェーパー・デポジッション法;CVD)、物理気相成長法(フィジカル・ヴェーパー・デポジッション法;PVD)、スパッタなども可能である。また、基板についても、電子ドープ型のSrTiO3(100)基板に何ら制限されるものではなく、例えば、MgO、LaSrGaOなどを用いることができる。さらに、製膜後の酸素アニール条件としては、表面(近傍領域)に所望の酸素終端を形成することができるものであればよく、特に制限されるものではない。例えば、300〜1000℃において、酸素分圧0.05気圧以上、好ましくは0.1気圧以上、より好ましくは0.1〜10気圧の雰囲気にて酸素アニールを行うことで、リチウムニッケルマンガン酸化物表面(近傍領域)に所望の酸素終端を形成することができる、リチウムニッケルマンガン酸化物表面(近傍領域)を酸素終端にすることによって炭素系の導電助材との結着力が強まり、高出力充放電による内部抵抗の上昇を抑制することができる。
リチウムニッケルマンガン酸化物の表面(近傍領域)を酸素終端とする方法としては、特に制限されるものではなく、上記過剰酸素の導入方法と同様な方法で実施(確認)することができる。本発明では、上記過剰酸素の導入方法以外にも、例えば、実施例で用いたような方法を用いて酸素終端を形成することができる。即ち、レーザーパルスドデポジッション法(PLD)を用いて電子ドープ型のSrTiO3(100)基板を用い、リチウムニッケルマンガン酸化物の薄膜を作成する。その後、酸素アニールすることによって、酸素終端を形成させin situ STM(走査型トンネル顕微鏡によるその場観察装置)、RHEED(反射高速電子回折法)の回折パターンによりアニール前とアニール後の酸素の終端率を測定した。製膜方法としてはPLDに限られず、化学気相成長法(ケミカル・ヴェーパー・デポジッション法;CVD)、物理気相成長法(フィジカル・ヴェーパー・デポジッション法;PVD)、スパッタなども可能である。また、基板についても、電子ドープ型のSrTiO3(100)基板に何ら制限されるものではなく、例えば、MgO、LaSrGaOなどを用いることができる。さらに、製膜後の酸素アニール条件としては、表面(近傍領域)に所望の酸素終端を形成することができるものであればよく、特に制限されるものではない。例えば、300〜1000℃において、酸素分圧0.05気圧以上、好ましくは0.1気圧以上、より好ましくは0.1〜10気圧の雰囲気にて酸素アニールを行うことで、リチウムニッケルマンガン酸化物表面(近傍領域)に所望の酸素終端を形成することができる、リチウムニッケルマンガン酸化物表面(近傍領域)を酸素終端にすることによって炭素系の導電助材との結着力が強まり、高出力充放電による内部抵抗の上昇を抑制することができる。
なお、当該(2)の場合も、表面(近傍領域)を酸素終端とする前のリチウムニッケルマンガン酸化物粉末は、後述する(3)の製造方法と同様にして作製することができる。即ち、共沈前の原材料(正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の原材料)を含有する化合物を混入させ、共沈させて、熱分解させ、焼成(アニールを含む)することにより作製することができる。
(3)リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域のMnを+2価イオン(元素M)で置換する方法
表面近傍領域のMnを+2価イオン(主に遷移金属元素M)で置換する方法としては、特に制限されるべきものではない。例えば、リチウムニッケルマンガン酸化物を共沈法により作製する際に、共沈前の原材料(正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の原材料)にMg、Zn等の元素Mを含有する化合物を混入させ、共沈させて、熱分解させ、焼成(アニールを含む)することにより、リチウムニッケルマンガン酸化物表面のマンガンを置換元素に置換できる。置換後、表面組成の確認はTOF−MASS、TOF−SIMSによって確認できる。また、置換元素が存在しないLi層(粒子のコア部分の組成)については、X線回折パターンの低角側ピークの大きさによって確認できる。
表面近傍領域のMnを+2価イオン(主に遷移金属元素M)で置換する方法としては、特に制限されるべきものではない。例えば、リチウムニッケルマンガン酸化物を共沈法により作製する際に、共沈前の原材料(正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の原材料)にMg、Zn等の元素Mを含有する化合物を混入させ、共沈させて、熱分解させ、焼成(アニールを含む)することにより、リチウムニッケルマンガン酸化物表面のマンガンを置換元素に置換できる。置換後、表面組成の確認はTOF−MASS、TOF−SIMSによって確認できる。また、置換元素が存在しないLi層(粒子のコア部分の組成)については、X線回折パターンの低角側ピークの大きさによって確認できる。
(4)リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域の酸素を−3価イオン(元素A)によって置換する方法
表面近傍領域の酸素を窒素、リン等の−3価イオン(元素A)に置換する方法については、特に制限されるべきものではない。例えば、上記(3)の方法において、マンガン窒素化合物、マンガンリン化合物を共沈前の原材料(一部)として用いることにより、酸素サイトに窒素、リン等の−3価イオン(元素A)を導入することができる。表面上の窒素、リンの定量方法として、TOF−MASS、TOF−SIMSなど用いることができる。
表面近傍領域の酸素を窒素、リン等の−3価イオン(元素A)に置換する方法については、特に制限されるべきものではない。例えば、上記(3)の方法において、マンガン窒素化合物、マンガンリン化合物を共沈前の原材料(一部)として用いることにより、酸素サイトに窒素、リン等の−3価イオン(元素A)を導入することができる。表面上の窒素、リンの定量方法として、TOF−MASS、TOF−SIMSなど用いることができる。
(5)リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域のMnを欠損させる方法
表面近傍領域のMnを欠損させる方法としては、特に制限されるものではない。例えば、上記(3)や(4)の方法において、共沈前の原材料(正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の原材料)のMnを含有する化合物の混入量を調整することにより、リチウムニッケルマンガン酸化物表面のマンガンを欠損させることができる。Mnを欠損させることによってもMnの価数を+4価に上昇させることができる。
表面近傍領域のMnを欠損させる方法としては、特に制限されるものではない。例えば、上記(3)や(4)の方法において、共沈前の原材料(正極活物質であるリチウムニッケルマンガン酸化物の原材料)のMnを含有する化合物の混入量を調整することにより、リチウムニッケルマンガン酸化物表面のマンガンを欠損させることができる。Mnを欠損させることによってもMnの価数を+4価に上昇させることができる。
上記(1)〜(5)で用いられるリチウムニッケルマンガン酸化物の製造方法(並びに該製造時になされるZnやMg等のM元素やNやP等のA元素の置換方法)としては、特に制限されるものではなく、従来公知の各種の複合酸化物の製造技術を適用することができる。例えば、共沈前の原材料としてリチウムニッケルマンガン酸化物の原材料に、必要に応じて、ZnやMg等のM元素やNやP等のA元素を含有する化合物を混入させ、共沈させて、熱分解させ、焼成する(アニールを含む)ことにより、リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域のMnを3.2価以上にすることができる。具体的には、共沈前の原材料として水酸化リチウム水和物と、Mn、Co、更に必要に応じてZnやMg等のM元素を含んだ水酸化ニッケルに、必要に応じてNやP等のA元素を含有する化合物として硝酸マンガン、燐酸マンガン等を混入させ、共沈させて、熱分解させ、焼成する(アニールを含む)。これにより、リチウムニッケルマンガン酸化物の表面近傍領域のMnをZnやMg等のM元素に置換し、酸素の一部を窒素やリンで置換することができ、表面近傍領域のMnを3.2価以上にすることができる。ただし、かかる製造方法に何ら制限されるものではない。
上記ZnやMg等のM元素を含有する化合物としては、Ni、Mnのほかに、更にZnやMg等のM元素を1次粒子内に含んだ水酸化物、例えば、Co、Mn、Mgを適量含んだ水酸化ニッケル;Co、Mn、Znを適量含んだ水酸化ニッケルなどを用いることが望ましい。共沈法などの水溶液系での合成が容易になるためである。
また、上記NやP等のA元素を含有する化合物としては、例えば、硝酸マンガン、燐酸マンガンなどを用いることができる。これにより、酸素を窒素、リン等のA元素で置換することができ、良好な導電性を保持することができる。ただし、本発明は、これらに何ら制限されるものではない。
上記した、原材料に、必要に応じて、ZnやMg等のM元素やNやP等のA元素を含有する化合物を混入させ(混入工程)、共沈させて(共沈工程)、熱分解させ(熱分解工程)、焼成する(焼成工程;アニールを含む)までの各処理(工程)条件に関しては、後述する各実施例に具体例を示している。より一般的な条件を以下に簡単に説明するが、本発明は、これらの範囲に何ら制限されるものではない。
(混入/共沈工程)
原材料の水酸化リチウム水和物と、マンガン、コバルト、更に必要に応じて一般式(I)に示す元素Mを含んだ水酸化ニッケルを、所望のリチウムニッケルマンガン酸化物の組成となるように純水に溶解させる。この過程で、更に必要に応じて、所望のリチウムニッケルマンガン酸化物の組成になるように、窒素、リン等の一般式(I)に示す元素Aを含む化合物を混合する。
原材料の水酸化リチウム水和物と、マンガン、コバルト、更に必要に応じて一般式(I)に示す元素Mを含んだ水酸化ニッケルを、所望のリチウムニッケルマンガン酸化物の組成となるように純水に溶解させる。この過程で、更に必要に応じて、所望のリチウムニッケルマンガン酸化物の組成になるように、窒素、リン等の一般式(I)に示す元素Aを含む化合物を混合する。
(共沈工程)(混入工程から共沈が開始するのでこのような手順(形)になる。)
ここで、混入開始後に生成した沈殿を0.1〜24時間放置し熟成した後、純水、エタノール等で濾過、洗浄し、共沈物を得る。
ここで、混入開始後に生成した沈殿を0.1〜24時間放置し熟成した後、純水、エタノール等で濾過、洗浄し、共沈物を得る。
(熱分解工程)
共沈物を0.1〜20℃/分の昇温速度にて120〜300℃の間まで昇温し、その温度範囲、好ましくは当該温度範囲内の一定温度で、空気中ないし不活性雰囲気下、1〜24時間熱分解する。該熱分解の温度によって2次粒子の空隙率がコントロールできる。
共沈物を0.1〜20℃/分の昇温速度にて120〜300℃の間まで昇温し、その温度範囲、好ましくは当該温度範囲内の一定温度で、空気中ないし不活性雰囲気下、1〜24時間熱分解する。該熱分解の温度によって2次粒子の空隙率がコントロールできる。
(焼成工程)
上記熱分解の温度から0.1〜20℃/分の昇温速度にて500〜1000℃の範囲まで昇温し、その温度範囲、好ましくは当該温度範囲内の一定温度で、酸素雰囲気中、均質化を行いながら1〜100時間焼成する。焼成後、上記焼成温度から0.1〜20℃/分の降温速度にて300〜700℃の範囲まで降温し、その温度範囲、好ましくは当該温度範囲内の一定温度で、空気中ないし酸素雰囲気下、0〜100時間、アニールを行うことで、所望のリチウムニッケルマンガン酸化物を作製することができるものである。本工程において、リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子が成長する。
上記熱分解の温度から0.1〜20℃/分の昇温速度にて500〜1000℃の範囲まで昇温し、その温度範囲、好ましくは当該温度範囲内の一定温度で、酸素雰囲気中、均質化を行いながら1〜100時間焼成する。焼成後、上記焼成温度から0.1〜20℃/分の降温速度にて300〜700℃の範囲まで降温し、その温度範囲、好ましくは当該温度範囲内の一定温度で、空気中ないし酸素雰囲気下、0〜100時間、アニールを行うことで、所望のリチウムニッケルマンガン酸化物を作製することができるものである。本工程において、リチウムニッケルマンガン酸化物の粒子が成長する。
ここまでの工程で、ZnやMg等のM元素やNやP等のA元素を含有する化合物を混入したり、Mnの混入量を調節し、所望のアニール処理を行うことで、表面近傍領域のMnの価数を3.2以上にすることができる(上記(3)〜(5)参照)。ただし、上記(1)(2)のように、上記アニール処理において上述した高酸素圧(2気圧よりも高い雰囲気での)アニール処理や製膜後に酸素アニール処理して過剰酸素を導入しても、表面近傍領域のMnの価数を3.2以上にすることができる。この場合には、M元素やA元素を含有する化合物を混入しなくてもよい。
金属元素の定量方法としてはICP(誘導イオンプラズマ法)、非金属、金属元素の定量法としてはTOF−MASS(飛行時間型質量分析法)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)などを用いることができる。
本発明の正極材料に用いることのできる他の構成成分としては、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。電池電解質層に高分子ゲル電解質を用いる場合には、従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助剤などが含まれていればよく、高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくても良い。電池電解質層に溶液電解質を用いる場合にも、正極材料には高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくてもよい。
上記導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボンファイバー(VGCF)等が挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、SBR、ポリイミドなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
上記高分子ゲル電解質は、イオン導伝性を有する固体高分子電解質に、従来公知の非水電解質リチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものであるが、さらに、リチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれるものである。
ここで、高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質支持塩および可塑剤)としては、特に制限されるべきものではなく、従来既知の各種電解液を適宜使用することができるものである。例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質支持塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の可塑剤(有機溶媒)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
イオン導伝性を有する固体高分子電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のような公知の固体高分子電解質が挙げられる。
高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
上記イオン伝導性を高めるための電解質支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
高分子ゲル電解質中のホストポリマーと電解液との比率(質量比)は、使用目的などに応じて決定すればよいが、2:98〜90:10の範囲である。すなわち、本発明では、特にLiNi酸化物からのラジカル酸素の放出により、電解液が分解されるのを抑制する観点から、非水電解質のなかでも、とりわけ電解液を用いる溶液電解質ないし高分子ゲル電解質に対して効果的に作用するものである。そのため、上記高分子ゲル電解質中のホストポリマーと電解液との比率(質量比)に関しては、電解液の分解による電池の膨れ対策目的で電解液量を制限する必要がなく、電池特性を優先することができるものである。
次に、本発明に係る非水電解質リチウムイオン電池用正極材料は、非水電解質リチウムイオン電池に幅広く適用できるものである。
即ち、本発明の正極材料を適用し得る電池としては、高容量化が期待できるリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた非水電解質リチウムイオン電池である。特に高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用等として好適に利用できるほか、携帯電話などの携帯機器向けの非水電解質二次電池にも十分に適用可能である。したがって、以下の説明では、本発明の正極材料を用いてなる非水電解質リチウムイオン二次電池につき説明するが、これらに何ら制限されるべきものではない。
[集電体]
本発明で用いることのできる集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれら金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。複合集電体を用いる場合、正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、チタンなどの導電性金属を用いることができるが、アルミニウムが特に好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができるが、SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、複合集電体においては、正極集電体と負極集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していれば良い。また、正極集電体及び負極集電体には、平板(箔)のほか、ラスプレート、すなわちプレートに切目を入れたものをエキスパンドすることにより網目空間が形成されるプレートにより構成されているものを用いることもできる。
本発明で用いることのできる集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれら金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。複合集電体を用いる場合、正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、チタンなどの導電性金属を用いることができるが、アルミニウムが特に好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができるが、SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、複合集電体においては、正極集電体と負極集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していれば良い。また、正極集電体及び負極集電体には、平板(箔)のほか、ラスプレート、すなわちプレートに切目を入れたものをエキスパンドすることにより網目空間が形成されるプレートにより構成されているものを用いることもできる。
集電体の厚さは、特に限定されないが、通常は1〜100μm程度である。
[正極活物質層]
ここで、正極活物質層の構成材料としては、本発明の正極材料を用いることを特徴とするものであり、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
ここで、正極活物質層の構成材料としては、本発明の正極材料を用いることを特徴とするものであり、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
正極活物質層の厚さは、特に限定するものではなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。一般的な正極活物質層の厚さは1〜500μm程度であり、この範囲であれば本発明でも十分に利用可能であるが、本発明の正極材料の持つ機能を有効に発現するには、特に4〜60μmの範囲とするのが望ましい。
[負極活物質層]
負極活物質層の構成材料としては、負極材料を用いるものであればよい。この負極材料に関しては、負極活物質を含むものであればよい。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。負極活物質の種類以外は、基本的に本発明の「非水電解質リチウムイオン電池用正極材料」の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
負極活物質層の構成材料としては、負極材料を用いるものであればよい。この負極材料に関しては、負極活物質を含むものであればよい。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。負極活物質の種類以外は、基本的に本発明の「非水電解質リチウムイオン電池用正極材料」の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
負極活物質としては、従来公知の溶液系のリチウムイオン電池でも使用される負極活物質を用いることができる。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、アモルファスカーボン、コークスおよびメソフェーズピッチ系炭素繊維、グラファイト、非晶質炭素であるハードカーボンなどの炭素材料から選ばれてなる少なくとも1種を主材料とする負極活物質を用いることが望ましいが、特に限定されない。この他にも金属酸化物(特に遷移金属酸化物、具体的にはチタン酸化物)、金属(特に遷移金属、具体的にはチタン)とリチウムとの複合酸化物などを用いることもできる。
[非水電解質層]
本発明では、その使用目的に応じて、(a)電解液を染み込ませたセパレータ、(b)高分子ゲル電解質、(c)高分子固体電解質のいずれにも適用し得るものである。
本発明では、その使用目的に応じて、(a)電解液を染み込ませたセパレータ、(b)高分子ゲル電解質、(c)高分子固体電解質のいずれにも適用し得るものである。
(a)電解液を染み込ませたセパレータ
セパレータに染み込ませることのできる電解液としては、既に説明した本発明の「非水電解質リチウムイオン電池用正極材料」の項の高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質塩および可塑剤)と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略するが、電解液の好適な1例を示せば、電解質として、LiClO4、LiAsF6、LiPF5、LiBOB、LiCF3SO3およびLi(CF3SO2)2の少なくとも1種類を用い、溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランおよびγ−ブチルラクトンよりなるエーテル類から少なくとも1種類を用い、前記電解質を前記溶媒に溶解させることにより、電解質の濃度が0.5〜2モル/リットルに調整されているものであるが、本発明はこれらに何ら制限されるべきものではない。
セパレータに染み込ませることのできる電解液としては、既に説明した本発明の「非水電解質リチウムイオン電池用正極材料」の項の高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質塩および可塑剤)と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略するが、電解液の好適な1例を示せば、電解質として、LiClO4、LiAsF6、LiPF5、LiBOB、LiCF3SO3およびLi(CF3SO2)2の少なくとも1種類を用い、溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランおよびγ−ブチルラクトンよりなるエーテル類から少なくとも1種類を用い、前記電解質を前記溶媒に溶解させることにより、電解質の濃度が0.5〜2モル/リットルに調整されているものであるが、本発明はこれらに何ら制限されるべきものではない。
上記セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができるものであり、例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)、不織布セパレータなどを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータなどの多孔性シートの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
不織布セパレータの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができ、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。
また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布のかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
上記セパレータ(不織布セパレータを含む)の厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできないが、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、5〜200μmであることが望ましい。セパレータの厚さが、かかる範囲にあることで、保持性、抵抗が増大するのを抑制することができる。また、セパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
上記セパレータ(ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)の微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。セパレータの微細孔の平均径が、上記範囲にあることで熱によってセパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きるという理由から、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。すなわち、過充電で電池温度が上昇していったとき(異常時)に、セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きることで、電池(電極)の正極(+)から負極(−)側にLiイオンが通れなくなり、それ以上は充電できなくなる。そのため過充電できなくなり、過充電が解消する。その結果、電池の耐熱性(安全性)が向上するほか、ガスがでて電池外装材の熱融着部(シール部)が開くのを防止できる。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
上記セパレータ(ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)の空孔率は20〜50%であることが望ましい。セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここでセパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値である。
また不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。空孔率が50%未満では、電解質の保持性が悪化し、90%超では強度が不足する。
上記セパレータへの電解液の含浸量は、セパレータの保液能力範囲まで含浸させればよいが、当該保液能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質シール部に樹脂を注入して電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保液できる範囲であれば含浸可能である。該電解液は、真空注液法などにより注液した後、完全にシールすることができるなど、従来公知の方法でセパレータに電解液を含浸させることができる。
(b)高分子ゲル電解質及び(c)高分子固体電解質
高分子ゲル電解質および高分子固体電解質としては、既に説明した本発明の「非水電解質リチウムイオン電池用正極材料」の項の高分子ゲル電解質および高分子固体電解質と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
高分子ゲル電解質および高分子固体電解質としては、既に説明した本発明の「非水電解質リチウムイオン電池用正極材料」の項の高分子ゲル電解質および高分子固体電解質と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
また、上記(b)では、上記(a)で説明したセパレータに高分子ゲル電解質を含浸・担持させてなるものも含まれるものとする。この場合の上記セパレータへの高分子ゲル電解質の含浸・担持量は、セパレータの保液・保持能力範囲まで含浸・担持させればよいが、当該保液・保持能力範囲を超えて含浸・担持させてもよい。これは、電解質シール部に樹脂を注入して電解質層(主に高分子ゲル電解質)からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保液・保持できる範囲であれば含浸・担持可能である。該高分子ゲル電解質は、セパレータに高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩を塗布・含浸後に、加熱することで、ホストポリマーを架橋させて、セパレータに高分子ゲル電解質を含浸・担持させればよいなど、特に制限されるものではない。
同様に、上記(c)でも、上記(a)で説明したセパレータに高分子固体電解質を担持させてなるものも含まれるものとする。この場合の上記セパレータへの高分子固体電解質の担持量は、セパレータの保持能力範囲まで担持させればよいが、当該保持能力範囲を超えて担持させてもよい。これは、電解質層に染み出しの原因となる電解液が存在しない為、液絡のおそれがないため、該電解質層に保持できる範囲であれば担持可能である。該高分子固体電解質は、セパレータに高分子電解質の原料のホストポリマー、溶剤(主に粘度調整用溶剤)やリチウム塩を塗布・含浸後に、加熱することで、ホストポリマーを架橋させると共に溶剤を除去して、セパレータに高分子固体電解質を担持させればよいなど、特に制限されるものではない。
なお、上記(a)〜(c)の電解質層は、1つの電池の中で併用してもよい。
また、高分子電解質は、高分子ゲル電解質層、正極活物質層、負極活物質層に含まれ得るが、同一の高分子電解質を使用してもよく、層によって異なる高分子電解質を用いてもよい。
ところで、現在好ましく使用される高分子ゲル電解質用のホストポリマーは、PEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、酸化還元電位の高い正極材料を使用する場合には、負極(活物質層)の容量が、高分子ゲル電解質層を介して対向する正極(活物質層)の容量より少ないことが好ましい。負極(活物質層)の容量が対向する正極(活物質層)の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極(活物質層)および負極(活物質層)の容量は、正極(活物質層)および負極(活物質層)を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。ただし、負極(活物質層)の容量を対向する正極(活物質層)の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
電池を構成する電解質層の厚さは、特に限定するものではない。しかしながら、コンパクトな電池を得るためには、電解質としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好まく、電解質層の厚さは5〜200μmであることが望ましい。
[正極および負極端子板]
正極および負極端子板を用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよいが、積層されてなる電極、電解質および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持するだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、端子部での内部抵抗を抑える観点から、正極および負極端子板の厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
[正極および負極端子板]
正極および負極端子板を用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよいが、積層されてなる電極、電解質および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持するだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、端子部での内部抵抗を抑える観点から、正極および負極端子板の厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
正極および負極端子板の材質は、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
正極端子板と負極端子板との材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極および負極端子板は、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
[正極および負極リード]
正極および負極リードに関しては、従来公知のリチウムイオン電池で用いられるリードと同様のものを用いることができる。なお、電池外装材(電池ケース)から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆しておくのが好ましい。
正極および負極リードに関しては、従来公知のリチウムイオン電池で用いられるリードと同様のものを用いることができる。なお、電池外装材(電池ケース)から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆しておくのが好ましい。
[電池外装材(電池ケース)]
リチウムイオン電池では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池本体である電池積層体ないし電池巻回体全体を電池外装材ないし電池ケースに収容するのが望ましい。軽量化の観点からは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)の両面をポリプロピレンフィルム等の絶縁体(好ましく耐熱性の絶縁体)で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムなど、従来公知の電池外装材を用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池積層体を収納し密封した構成とするのが好ましい。この場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて上記電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムなどを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。こうしたラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
リチウムイオン電池では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池本体である電池積層体ないし電池巻回体全体を電池外装材ないし電池ケースに収容するのが望ましい。軽量化の観点からは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)の両面をポリプロピレンフィルム等の絶縁体(好ましく耐熱性の絶縁体)で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムなど、従来公知の電池外装材を用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池積層体を収納し密封した構成とするのが好ましい。この場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて上記電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムなどを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。こうしたラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
上述してなる本発明の非水電解質リチウムイオン電池は、バイポーラ型の非水電解質リチウムイオン電池(バイポーラ電池ともいう)であってもよいし、バイポーラ型でない非水電解質リチウムイオン電池(バイポーラ型でない電池ともいう)であってもよい。
次に、本発明の非水電解質リチウムイオン二次電池の用途としては、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。この場合には、本発明の非水電解質リチウムイオン電池を複数個接続して構成した組電池とすることが望ましい。すなわち、本発明では、上記非水電解質リチウムイオン二次を複数個、並列接続または直列接続または並列−直列接続または直列−並列接続の少なくとも一つを用いて組電池(車両用サブモジュール)とすることができる。これにより、種々の車両用ごとの容量・電圧の要望を基本の電池の組み合わせで対応が可能になる。その結果、必要エネルギー、出力の設計選択性を容易にすることが可能になる。そのため種々の車両用ごとに異なる電池を設計、生産する必要がなく、基本となる電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。以下に、当該組電池(車両用サブモジュール)の代表的な実施形態につき、図面を用いて簡単に説明する。
なお、組電池の他の構成要件に関しては、何ら制限されるべきものではなく、既存のリチウムイオン二次電池を用いた組電池の構成要件と同様のものが適宜適用することができるものであり、従来公知の組電池用の構成部材および製造技術が利用できるため、ここでの説明は省略する。
次に、上記の組電池(車両用サブモジュール)を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続した複合組電池(車両用組電池)とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、新たに組電池を作製することなく、比較的安価に対応することが可能になる。すなわち、本発明の複合組電池は、組電池(本発明のバイポーラ電池ないしバイポーラ型でない電池だけで構成したもの、本発明のバイポーラ電池とバイポーラ型でない電池とを組み合わせて構成したものなど)を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続したことを特徴とするものであり、基準の組電池を製造し、それを組み合わせて複合組電池とすることで、組電池の仕様をチューニングできる。これにより、仕様の異なる沢山の組電池種を製造しなくてよいため、複合組電池コストを減少することができる。
また、上記複合組電池では、これを構成する複数の組電池をそれぞれ脱着可能に接続しておくのが望ましい。このように、組電池を複数直並列接続されてなる複合組電池では、一部の電池、組電池が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能となるためである。
また、本発明の車両は、上記組電池および/または上記複合組電池を搭載することを特徴とするものである。これにより、軽く小さい電池にすることでスペース要望の大きな車両要望に合致できる。電池のスペースを小さくすることで、車両の軽量化も達成できる。
例えば、複合組電池を、ハイブリッドカーや電気自動車や燃料電池等の車両に搭載するには、当該車両の車体中央部の座席(シート)下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、電池を搭載する場所は、座席下に限らず、車両の床下、シートバック裏、後部トランクルームの下部でも良いし、車両前方のエンジンルームでも良い。
なお、本発明では、複合組電池だけではなく、使用用途によっては、組電池を車両に搭載するようにしてもよいし、これら複合組電池と組電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明の組電池および/または複合組電池を、例えば、駆動用電源や補助電源等として搭載することのできる車両としては、通常のハイブリッドカー(ガソリンエンジンと本発明の組電池および/または複合組電池の組み合わせ)、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車等が好ましいが、これらに制限されるものではない。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の内容を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で、特に断らない場合には、「%」は、「(遷移金属原子)中のモル比の割合(mol%)」を表すものとする。
実施例及び比較例
1−1.正極(粉末)の作製(実施例1〜5、11〜22、比較例1〜2、4〜8)
水酸化リチウム水和物と、マンガン30%及びコバルト30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。この過程で、更に各実施例及び比較例のリチウムニッケルマンガン酸化物の組成に応じて、マグネシウム、亜鉛、窒素、リンを含む化合物を混合した。室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300〜500℃の間で8時間、熱分解を行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、均質化を行いながら24時間焼成した。本焼成工程において、リチウムニッケル複合酸化物の粒子が成長する。当該工程までの置換体の原材料の種類や添加量、更に本焼成後のアニール温度条件を変えて各実施例及び比較例を行った。後述する各実施例及び比較例では、当該工程につき説明するものとし、他の要件については各実施例及び比較例で全て同様であるため、以下にまとめて説明する。なお、ここで得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)粒子の平均粒径は5μmであった。
1−1.正極(粉末)の作製(実施例1〜5、11〜22、比較例1〜2、4〜8)
水酸化リチウム水和物と、マンガン30%及びコバルト30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。この過程で、更に各実施例及び比較例のリチウムニッケルマンガン酸化物の組成に応じて、マグネシウム、亜鉛、窒素、リンを含む化合物を混合した。室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300〜500℃の間で8時間、熱分解を行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、均質化を行いながら24時間焼成した。本焼成工程において、リチウムニッケル複合酸化物の粒子が成長する。当該工程までの置換体の原材料の種類や添加量、更に本焼成後のアニール温度条件を変えて各実施例及び比較例を行った。後述する各実施例及び比較例では、当該工程につき説明するものとし、他の要件については各実施例及び比較例で全て同様であるため、以下にまとめて説明する。なお、ここで得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)粒子の平均粒径は5μmであった。
得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)75質量%、導電助剤のアセチレンブラック(デンカブラック)を10質量%、バインダのポリフッ化ビニリデン(PVDFともいう)を15質量%の割合で、溶媒としてN−メチエル−2−ピロリドン(NMPともいう)を加えて撹拌してスラリーを調整して、これを正極集電体のアルミ箔(厚さ20μm)上にアプリケーターにて塗布して、真空乾燥機にて80℃程度で加熱乾燥した後、電極を直径15mmに打ち抜き、90℃にて高真空にて6時間乾燥した。打ち抜いた正極活物質層の厚さは50μmであった。
1−2.正極(薄膜)の作製(実施例6〜10及び実施例1’)
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。アニールして得られた粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてパルス・レーザ・デポジッション(PLD)法を用いて、導電性を持ったSrTiO3(100)基板上に製膜した。製膜条件は温度700℃、酸素分圧100mmHg、6時間とした。作製される膜圧は500nm程度になった。当該工程での製膜後、更にアニール温度条件を変えて実施例6〜10及び実施例1’を行った。よって、後述する実施例6〜10及び実施例1’では、当該工程につき説明するものとし、他の要件については各実施例で全て同様であるため、以下にまとめて説明する。なお、製膜後にアニール(酸素分圧0〜0.8atm、300℃)して得られた薄膜状のリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)については、表3に示す組成及び酸素終端率の測定用サンプルに用いた。一方、製膜することなく粉末のままでアニール(酸素分圧0〜0.8atm、300℃)して得られた粉末状のリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)については、ラミネートセルに用い、表3に示す抵抗比率2、3及びMn溶出量の測定を行った。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。アニールして得られた粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてパルス・レーザ・デポジッション(PLD)法を用いて、導電性を持ったSrTiO3(100)基板上に製膜した。製膜条件は温度700℃、酸素分圧100mmHg、6時間とした。作製される膜圧は500nm程度になった。当該工程での製膜後、更にアニール温度条件を変えて実施例6〜10及び実施例1’を行った。よって、後述する実施例6〜10及び実施例1’では、当該工程につき説明するものとし、他の要件については各実施例で全て同様であるため、以下にまとめて説明する。なお、製膜後にアニール(酸素分圧0〜0.8atm、300℃)して得られた薄膜状のリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)については、表3に示す組成及び酸素終端率の測定用サンプルに用いた。一方、製膜することなく粉末のままでアニール(酸素分圧0〜0.8atm、300℃)して得られた粉末状のリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)については、ラミネートセルに用い、表3に示す抵抗比率2、3及びMn溶出量の測定を行った。
得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(正極活物質)75質量%、導電助剤のアセチレンブラック(デンカブラック)を10質量%、バインダのポリフッ化ビニリデン(PVDFともいう)を15質量%の割合で、溶媒としてN−メチエル−2−ピロリドン(NMPともいう)を加えて撹拌してスラリーを調整して、これを正極集電体のアルミ箔(厚さ20μm)上にアプリケーターにて塗布して、真空乾燥機にて80℃程度で加熱乾燥した後、電極を直径15mmに打ち抜き、90℃にて高真空にて6時間乾燥した。打ち抜いた正極活物質層の厚さは50μmであった。
2.負極の作製(各実施例及び比較例で全て同じものとした)
負極活物質粉末として炭素系材料のハードカーボン(スーパーP;呉羽化学工業株式会社製)を85質量%、導電助剤のアセチレンブラック(デンカブラック)を8質量%、気相成長カーボンファイバー(VGCF)を2質量%、バインダのPVDFを5質量%に、溶媒としてNMPを加えて撹拌してスラリーを調整して、アプリケーターにて、負極集電体の銅箔(厚さ20μm)の上に塗布して、真空乾燥機にて80℃程度で加熱乾燥した後、電極を直径16mmに打ち抜き、90℃にて高真空にて6時間乾燥した。打ち抜いた負極の活物質層の厚さは80μmであった。
負極活物質粉末として炭素系材料のハードカーボン(スーパーP;呉羽化学工業株式会社製)を85質量%、導電助剤のアセチレンブラック(デンカブラック)を8質量%、気相成長カーボンファイバー(VGCF)を2質量%、バインダのPVDFを5質量%に、溶媒としてNMPを加えて撹拌してスラリーを調整して、アプリケーターにて、負極集電体の銅箔(厚さ20μm)の上に塗布して、真空乾燥機にて80℃程度で加熱乾燥した後、電極を直径16mmに打ち抜き、90℃にて高真空にて6時間乾燥した。打ち抜いた負極の活物質層の厚さは80μmであった。
3.電池の作製
上記で作製した正極(詳しくは、後述する実施例1〜22、実施例1’および比較例1〜2、4〜8参照のこと)及び負極(全て同じ)を用いて、それぞれの電池(ラミネートセル)を構成した。詳しくは、セパレータにはポリプロピレン系微多孔質セパレータ(微細孔の平均孔径800nm、空孔率35%、厚さ30μm)を用い、非水系電解液には1.0MのLiPF6のPC+EC+DEC溶液(PC:EC:DEC=2:2:6(体積比))を用いて、ラミネートセルを組んだ。正負極の容量バランスは正極支配とした。
上記で作製した正極(詳しくは、後述する実施例1〜22、実施例1’および比較例1〜2、4〜8参照のこと)及び負極(全て同じ)を用いて、それぞれの電池(ラミネートセル)を構成した。詳しくは、セパレータにはポリプロピレン系微多孔質セパレータ(微細孔の平均孔径800nm、空孔率35%、厚さ30μm)を用い、非水系電解液には1.0MのLiPF6のPC+EC+DEC溶液(PC:EC:DEC=2:2:6(体積比))を用いて、ラミネートセルを組んだ。正負極の容量バランスは正極支配とした。
4−1.電池の評価:抵抗比率1の測定(実施例1〜5、11〜22及び比較例1〜2、4〜8)
(初期充放電)
まず、サンプル数は5セルでラミネートセル作製直後、初期充電として、室温にて、正極の換算で0.2C相当で上限電圧4.2Vまで定電流充電し、更に4.2V定電圧充電で12時間充電し、室温4.2Vにて1週間保存(エージング)した。その後、25℃で放電深度(DOD)50%に調整し、3C相当で10秒間定電流放電し、電圧降下より直流によって初期抵抗を求めた。いずれも平均値を取った。
(初期充放電)
まず、サンプル数は5セルでラミネートセル作製直後、初期充電として、室温にて、正極の換算で0.2C相当で上限電圧4.2Vまで定電流充電し、更に4.2V定電圧充電で12時間充電し、室温4.2Vにて1週間保存(エージング)した。その後、25℃で放電深度(DOD)50%に調整し、3C相当で10秒間定電流放電し、電圧降下より直流によって初期抵抗を求めた。いずれも平均値を取った。
(保存試験)
次に、上記室温4.2Vにて1週間保存(エージング)後、60℃にて一ヶ月保存した。その後、25℃でDOD50%に調整し、3C相当で10秒間定電流放電し、電圧降下より一ヶ月保存後の抵抗を求めた。
次に、上記室温4.2Vにて1週間保存(エージング)後、60℃にて一ヶ月保存した。その後、25℃でDOD50%に調整し、3C相当で10秒間定電流放電し、電圧降下より一ヶ月保存後の抵抗を求めた。
各サンプルの一ヶ月保存後の抵抗と比較例1の一ヶ月保存後の抵抗から、以下に示す計算によって抵抗比率1を算出した。いずれもサンプル数は5セルで平均値を取った。
4−2.電池の評価:抵抗比率2、3の測定(実施例6〜10及び実施例1’)
(初期充放電)
まず、ラミネートセル作製直後、初期充電として、室温にて、正極の換算で0.2C相当で上限電圧4.2Vまで定電流充電し、室温4.2Vにて2時間保持し、2時間休止した。その後、25℃で放電深度(DOD)50%に調整し、1C相当で10秒間定電流放電し、電圧降下より初期抵抗を算出した。いずれもサンプル数は5セルで平均値を取った。
(初期充放電)
まず、ラミネートセル作製直後、初期充電として、室温にて、正極の換算で0.2C相当で上限電圧4.2Vまで定電流充電し、室温4.2Vにて2時間保持し、2時間休止した。その後、25℃で放電深度(DOD)50%に調整し、1C相当で10秒間定電流放電し、電圧降下より初期抵抗を算出した。いずれもサンプル数は5セルで平均値を取った。
(サイクル試験)
次に、上記初期抵抗を評価後、下記に示す条件でサイクル試験を実施した。サイクル試験後、25℃でDOD50%に調整し、1C相当で10秒間定電流放電し、電圧降下よりサイクル試験後の抵抗を算出した。
次に、上記初期抵抗を評価後、下記に示す条件でサイクル試験を実施した。サイクル試験後、25℃でDOD50%に調整し、1C相当で10秒間定電流放電し、電圧降下よりサイクル試験後の抵抗を算出した。
サイクル試験の条件:25℃にて、1C相当で定電流充電、上限電圧4.2V、休止10分、1C相当で定電流放電、下限電圧2.5V、休止10分を1サイクルとし、150サイクル実施した。
各サンプル(実施例6〜10及び実施例1’)のサイクル試験後の抵抗と、実施例1’のサイクル試験後の抵抗から、以下に示す計算によって抵抗比率2を算出した。いずれもサンプル数は5セルで平均値を取った。
また、各サンプル(実施例6〜10及び実施例1’)ごとの、サイクル試験後の抵抗と初期抵抗とから、以下に示す計算式によって抵抗比率3を算出した。いずれもサンプル数は5セルで平均値を取った。
《Mn溶出の測定》
電池(ラミネートセル)を1C相当で2.5Vまで放電し、電池を解体し、負極と、セパレータを、硝酸と硫酸の混酸中で加熱した後、不溶部分を過塩素酸と硫酸の混酸中で加熱し、完全に溶解させた。この溶解液中のMn量をICP(誘導結合プラズマ原子発光分析)により測定し、正極活物質1g当たりのMn溶出量を算出した。
電池(ラミネートセル)を1C相当で2.5Vまで放電し、電池を解体し、負極と、セパレータを、硝酸と硫酸の混酸中で加熱した後、不溶部分を過塩素酸と硫酸の混酸中で加熱し、完全に溶解させた。この溶解液中のMn量をICP(誘導結合プラズマ原子発光分析)により測定し、正極活物質1g当たりのMn溶出量を算出した。
《組成及び結晶構造の確認》
正極活物質として得られたリチウムニッケルマンガン酸化物全体及び1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域(表面近傍領域)の組成につき、TOF−MASSにより確認した。なお、各実施例及び比較例では、表面近傍領域として、1次粒子表面から結晶(R3−m結晶構造)のc軸長について、その5倍に相当する14.3Åまでの深さの領域を測定した。また、得られたリチウムニッケルマンガン酸化物の結晶構造は、粉末XRDにより確認した。さらに、各実施例及び比較例での表面近傍領域におけるMnの平均価数は、正極活物質として得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(いずれも0.5<x≦1.1の範囲内)の表面近傍領域の組成を測定し、算出した。
正極活物質として得られたリチウムニッケルマンガン酸化物全体及び1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域(表面近傍領域)の組成につき、TOF−MASSにより確認した。なお、各実施例及び比較例では、表面近傍領域として、1次粒子表面から結晶(R3−m結晶構造)のc軸長について、その5倍に相当する14.3Åまでの深さの領域を測定した。また、得られたリチウムニッケルマンガン酸化物の結晶構造は、粉末XRDにより確認した。さらに、各実施例及び比較例での表面近傍領域におけるMnの平均価数は、正極活物質として得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(いずれも0.5<x≦1.1の範囲内)の表面近傍領域の組成を測定し、算出した。
《表面処理》
各実施例及び比較例での表面処理(アニール処理)については、粉末状態でも製膜状態でも実施可能なことから、以下のようにして、それぞれにつき、実験を行った。
各実施例及び比較例での表面処理(アニール処理)については、粉末状態でも製膜状態でも実施可能なことから、以下のようにして、それぞれにつき、実験を行った。
実施例1〜5、11〜22及び比較例1〜2、4〜8の粉末に関しては、焼成後にアニールを行って実験した。実施例6〜10及び実施例1’の薄膜については、製膜後にアニールを行って実験した。これは、実施例6〜10及び実施例1’の酸素終端率を下記式のように規定していることから、製膜などにより薄膜にして面積が測定可能な状態にしておく必要があるためである。
《酸素終端率の測定方法》
in situ STM、RHEEDの回折パターンによりアニール前とアニール後の薄膜(10×10nm2面積で測定)につき、酸素の終端率を測定し、以下に示す計算式によって酸素終端率を算出した。
in situ STM、RHEEDの回折パターンによりアニール前とアニール後の薄膜(10×10nm2面積で測定)につき、酸素の終端率を測定し、以下に示す計算式によって酸素終端率を算出した。
以下の比較例1〜2及び実施例1〜5は、LiNi0.4Co0.3Mn0.3Oc(1次粒子表面から結晶(R3−m結晶構造)のc軸長について14.3Åまでの組成;1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域を含めた表面近傍の組成)のOの含有量cの値を代えて実験を行った。詳しくは、表面近傍領域に過剰な酸素を導入し(1次粒子表面の一部ないし全部を酸素終端とし)て実験を行った。
比較例1
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中で24時間焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中で24時間焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
比較例2
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中で24時間焼成した。その後、500℃にて、酸素2気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中で24時間焼成した。その後、500℃にて、酸素2気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
実施例1
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中で24時間焼成した。その後、500℃にて、酸素4気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中で24時間焼成した。その後、500℃にて、酸素4気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
実施例2
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素6気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素6気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
実施例3
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素10気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素10気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
実施例4
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素15気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素15気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
実施例5
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素20気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素20気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表2に示す。
(注)実施例5のLiNi0.4Co0.3Mn0.3O2.4よりもOの含有量cを高めたものの合成は不可能であった。
<考察>
焼成時の酸素分圧の上昇とともに活物質中での酸素組成比が上昇し、結果としてMnの価数が3.2を超えた組成で明確にMnの溶出が抑えられていることがわかる。また、抵抗も低く、劣化が抑えられていることがわかる。
焼成時の酸素分圧の上昇とともに活物質中での酸素組成比が上昇し、結果としてMnの価数が3.2を超えた組成で明確にMnの溶出が抑えられていることがわかる。また、抵抗も低く、劣化が抑えられていることがわかる。
以下の実施例1’及び実施例6〜10は、焼成後に製膜し、該製膜後のアニール条件(表面処理条件)を代えて実験を行った。詳しくは、表面近傍領域に過剰な酸素を導入し、1次粒子表面の一部ないし全部を酸素終端として実験を行った。
実施例1’
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
実施例6
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧0.1気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧0.1気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
実施例7
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧0.2気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧0.2気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
実施例8
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧0.4気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧0.4気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
実施例9
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧0.6気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧0.6気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
実施例10
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧1気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn30%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした粉末を、直径20mm、厚さ5mmの円柱状のペレットにし、850℃、酸素雰囲気中で12時間、焼結させた。そのペレットをターゲットとしてPLD法を用いて、SrTiO3(100)面上に製膜を行った。製膜後、基板温度を300℃として、酸素分圧1気圧にして24時間アニールを行った。また、製膜せずに同様の酸素分圧下でアニール処理を行った。こうして得られたリチウムニッケルマンガン酸化物(粉末及び薄膜)を用いた実験結果を表3に示す。
<考察>
本発明では、Mnの価数を3.2より上げることで電極の耐久性が上がるが、それに加えて、表面に酸素末端を導入することでより一層の効果が得られるということがわかる。
本発明では、Mnの価数を3.2より上げることで電極の耐久性が上がるが、それに加えて、表面に酸素末端を導入することでより一層の効果が得られるということがわかる。
以下の比較例4及び実施例11〜12は、LiNi0.4Co0.3MnaMbO2(1次粒子表面から結晶(R3−m結晶構造)のc軸長について14.3Åまでの組成;1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域を含めた表面近傍の組成)のM(=Mg)の含有量bの値を代えて実験を行った。詳しくは、表面近傍領域のMnを+2価イオンのMgに一部置換して実験を行った。
比較例4
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn27%及びMg3%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表4に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn27%及びMg3%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表4に示す。
実施例11
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn24%及びMg6%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表4に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn24%及びMg6%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表4に示す。
実施例12
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn20%及びMg10%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表4に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn20%及びMg10%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表4に示す。
(注)実施例12のLiNi0.4Co0.3Mn0.2Mg0.1O2よりもM=Mgの含有量bを高めたものの合成は不可能であり、不純物としてMgO相を確認した。
<考察>
さらに典型金属元素で価数の少ないものを導入することでMnの価数が増え、耐久性が増加することがわかる。
さらに典型金属元素で価数の少ないものを導入することでMnの価数が増え、耐久性が増加することがわかる。
以下の比較例5及び実施例13〜14は、LiNi0.4Co0.3MnaMbO2(1次粒子表面から結晶(R3−m結晶構造)のc軸長について14.3Åまでの組成;1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域を含めた表面近傍の組成)のM(=Zn)の含有量bの値を代えて実験を行った。詳しくは、表面近傍領域のMnを+2価イオンのZnに一部置換して実験を行った。
比較例5
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn28%及びZn2%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表5に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn28%及びZn2%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表5に示す。
実施例13
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn24%及びZn6%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表5に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn24%及びZn6%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表5に示す。
実施例14
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn20%及びZn10%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表5に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%、Mn20%及びZn10%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表5に示す。
(注)実施例14のLiNi0.4Co0.3Mn0.2Zn0.1O2よりもM=Znの含有量bを高めたものの合成は不可能であり、不純物としてZnO相を確認した。
<考察>
また、遷移金属であっても酸化数が少ないものであれば、Mnの価数の増加につながり耐久性が向上する。
また、遷移金属であっても酸化数が少ないものであれば、Mnの価数の増加につながり耐久性が向上する。
以下の比較例6及び実施例15〜17は、LiNi0.4Co0.3Mn0.3O2−dNd(1次粒子表面から結晶(R3−m結晶構造)のc軸長について14.3Åまでの組成;1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域を含めた表面近傍の組成)のN含有量dの値を代えて実験を行った。詳しくは、表面近傍領域の酸素を−3価イオンのNに一部置換して実験を行った。
比較例6
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn25%を含んだ水酸化ニッケルと、硝酸マンガン5%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表6に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn25%を含んだ水酸化ニッケルと、硝酸マンガン5%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表6に示す。
実施例15
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn22%を含んだ水酸化ニッケルと、硝酸マンガン8%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表6に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn22%を含んだ水酸化ニッケルと、硝酸マンガン8%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表6に示す。
実施例16
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn5%を含んだ水酸化ニッケルと、硝酸マンガン15%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表6に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn5%を含んだ水酸化ニッケルと、硝酸マンガン15%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表6に示す。
実施例17
水酸化リチウム水和物と、Co30%を含んだ水酸化ニッケルと、硝酸マンガン20%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表6に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%を含んだ水酸化ニッケルと、硝酸マンガン20%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表6に示す。
(注)実施例17のLiNi0.4Co0.3Mn0.3O1.8N0.2よりもNの含有量dを高めたものの合成は不可能であった。
<考察>
また、酸素原子の代わりに負の価数が大きい元素を導入することでもMnの価数を増加させる効果が得られ、耐久性の向上を見込むことができる。
また、酸素原子の代わりに負の価数が大きい元素を導入することでもMnの価数を増加させる効果が得られ、耐久性の向上を見込むことができる。
以下の比較例7及び実施例18〜20は、LiNi0.4Co0.3Mn0.3O2−dPd(1次粒子表面から結晶(R3−m結晶構造)のc軸長について14.3Åまでの組成;1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域を含めた表面近傍の組成)のP含有量dの値を代えて実験を行った。詳しくは、表面近傍領域の酸素を−3価イオンのPに一部置換して実験を行った。
比較例7
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn25%を含んだ水酸化ニッケルと、燐酸マンガン5%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表7に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn25%を含んだ水酸化ニッケルと、燐酸マンガン5%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表7に示す。
実施例18
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn22%を含んだ水酸化ニッケルと、燐酸マンガン8%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表7に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn22%を含んだ水酸化ニッケルと、燐酸マンガン8%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表7に示す。
実施例19
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn5%を含んだ水酸化ニッケルと、燐酸マンガン15%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表7に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn5%を含んだ水酸化ニッケルと、燐酸マンガン15%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表7に示す。
実施例20
水酸化リチウム水和物と、Co30%を含んだ水酸化ニッケルと、燐酸マンガン20%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表7に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%を含んだ水酸化ニッケルと、燐酸マンガン20%とを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素1気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表7に示す。
(注)実施例20のLiNi0.4Co0.3Mn0.3O1.8P0.2よりもPの含有量dを高めたものの合成は不可能であった。詳しくは、表面近傍領域のMnを欠損させることによってMnの価数を+4価に上昇させて実験を行った。
<考察>
窒素原子に限らずリン原子でもMnの価数を増加させる効果が得られ、耐久性の向上を見込むことができる。
窒素原子に限らずリン原子でもMnの価数を増加させる効果が得られ、耐久性の向上を見込むことができる。
以下の比較例8及び実施例21〜22は、LiNi0.4Co0.3Mn0.3−eO2(1次粒子表面から結晶(R3−m結晶構造)のc軸長について14.3Åまでの組成;1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域を含めた表面近傍の組成)のMn含有量eの値を代えて実験を行った。
比較例8
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn29%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素2気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表8に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn29%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素2気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表8に示す。
実施例21
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn28%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素2気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表8に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn28%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素2気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表8に示す。
実施例22
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn27%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素2気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表8に示す。
水酸化リチウム水和物と、Co30%及びMn27%を含んだ水酸化ニッケルとを、純水に溶解させた。撹拌しながら室温から300℃まで加熱し、空気中で24時間、脱水した。その後、300℃〜500℃の間で熱分解を8時間、空気中で行い、500〜850℃、酸素雰囲気中、24時間、焼成した。その後、500℃にて、酸素2気圧の雰囲気で12時間アニールした。得られたリチウムニッケルマンガン酸化物を用いた実験結果を表8に示す。
(注)実施例22のLiNi0.4Co0.3Mn0.27O2よりもMnの含有量eを小さくしたもの(Mnを欠損させたもの)の合成は不可能であった。
<考察>
Mnの価数を増やす別の方法としては、Mn自身の量を減らし、欠陥サイトすなわち0価のサイトを造ることで、Mn全体の価数を上昇させることができることもわかる。結果として耐久性が向上する。
Mnの価数を増やす別の方法としては、Mn自身の量を減らし、欠陥サイトすなわち0価のサイトを造ることで、Mn全体の価数を上昇させることができることもわかる。結果として耐久性が向上する。
Claims (14)
- 1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上であるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなることを特徴とする正極材料。
- 下記一般式(I)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなる正極材料であって、
1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域における、Mnの平均価数が3.2以上であることを特徴とする正極材料で
Aはカルコゲン元素(但し、酸素は除く)、窒素、リン、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。
x、y、z、a、b、c、dについては、充放電前の初期状態において、
0.5<x≦1.1、
0.3≦y≦0.7、
0.3≦z≦0.7、
0.0≦a≦0.4、
0.0≦b≦0.2、
1.8≦c≦2.4、
0.0≦d≦0.2を示す。 - 1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域に過剰な酸素を導入してなるリチウムニッケルマンガン酸化物を正極活物質に用いてなることを特徴とする請求項1または2に記載の正極材料。
- 前記1次粒子表面が、40%以上100%以下の割合で酸素終端されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極材料。
- 前記1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域で1.8≦(c−d)/(y+z+a+b)≦2.4となることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の正極材料。
- 前記1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域で遷移金属サイトを+2価の金属イオンで置換してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の正極材料。
- 前記+2価の金属イオンが、Mgおよび/またはZnであることを特徴とする請求項6に記載の正極材料。
- 前記1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域の酸素サイトを−3価の非金属イオンで置換してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の正極材料。
- 前記−3価の非金属イオンが、Nおよび/またはPであることを特徴とする請求項8に記載の正極材料。
- 前記1次粒子表面から結晶のc軸長の5倍の深さの領域で遷移金属サイトの遷移金属のサイト占有率が、90%以上98%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の正極材料。
- 前記リチウムニッケルマンガン酸化物であって、酸素1気圧以上の雰囲気でアニール処理を行ったものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の正極材料。
- 前記リチウムニッケルマンガン酸化物であって、酸素分圧0.1気圧以上の雰囲気でアニール処理を行ったものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の正極材料。
- 前記リチウムニッケルマンガン酸化物において、原料としてニッケル、マンガンを1次粒子内に含んだ水酸化物を用いることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の正極材料。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の正極材料を用いてなることを特徴とする非水電解質リチウムイオン電池。
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