JP2007141495A - 電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】充電電圧を4.2Vを超えて設定しても、サイクル特性を向上させることができる電池を提供する。
【解決手段】正極33と負極34とがセパレータ35および電解質層36を介して積層されている。完全充電時の開回路電圧は、4.25V以上6.00V以下の範囲内である。電解質層36は、電解液と高分子化合物とを含み、ゲル状となっている。電解液は、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを1.0質量%以下の範囲内で含んでいる。
【選択図】図4

Description

本発明は、一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上である電池に関する。
近年の携帯電子技術のめざましい発達により、携帯電話やノートブックコンピューターなどの電子機器は高度情報化社会を支える基盤技術と認知され始めた。また、これらの電子機器の高機能化に関する研究開発が精力的に進められており、これらの電子機器の消費電力も比例して増加の一途を辿っている。その反面、これらの電子機器は長時間の駆動が求められており、駆動電源である二次電池の高エネルギー密度化が必然的に望まれてきた。
電子機器に内蔵される電池の占有体積や質量などの観点より、電池のエネルギー密度は高いほど望ましい。現在では、リチウムイオン二次電池が優れたエネルギー密度を有することから、殆どの機器に内蔵されるに至っている。
通常、リチウムイオン二次電池では、正極にはコバルト酸リチウム、負極には炭素材料が使用されており、作動電圧が4.2Vから2.5Vの範囲で用いられている。単電池において、端子電圧を4.2Vまで上げられるのは、非水電解質材料やセパレーターなどの優れた電気化学的安定性によるところが大きい。
ところで、従来の最大4.2Vで作動するリチウムイオン二次電池では、正極に用いられるコバルト酸リチウムなどの正極活物質は、その理論容量に対して6割程度の容量を活用しているに過ぎない。このため、更に充電電圧を上げることにより、残存容量を活用することが原理的に可能である。実際に、充電時の電圧を4.25V以上にすることにより、高エネルギー密度化が発現することが知られている(特許文献1参照)。
国際公開第WO03/019713号パンフレット
しかしながら、充電電圧を4.2Vを超えて設定した電池では、特に正極表面近傍における酸化雰囲気が強まる結果、正極における電解液の分解反応により界面の抵抗が上昇して、サイクル特性が低下してしまうという問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、充電電圧を4.2Vを超えて設定しても、サイクル特性を向上させることができる電池を提供することにある。
本発明の電池は、正極および負極と共に電解液を備えたものであって、一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下の範囲内であり、電解液は、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを1.0質量%以下の範囲で含むものである。
本発明の電池によれば、完全充電時における開回路電圧を4.25V以上6.00V以下の範囲内としたので、高いエネルギー密度を得ることができる。また、電解液に5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを1.0質量%以下の範囲で含むようにしたので、電極に良好な被膜を形成することができ、電解液の分解反応を抑制することができる。よって、エネルギー密度を高くすることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
特に、電解液における5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量を0.05質量%以上とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、電極反応物質としてリチウム(Li)を用い、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどの結着材を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物,リチウムリン酸化物,リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn)および鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、化1,化2または化3に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、化4に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、あるいは化5に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiCoO2 、LiNiO2 、LiNiaCo1-a2 (0<a≦0.5)、LiNi0.50Co0.20Mn0.302 、LiNibCo1-b2 (0.5<b<1)、LiMn2 4 あるいはLiFePO4 などがある。
(化1)
Lif Mn(1-g-h) Nig M1h (2-j) k
(式中、M1は、コバルト,マグネシウム(Mg),アルミニウム,ホウ素(B),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr),鉄,銅(Cu),亜鉛(Zn),ジルコニウム(Zr),モリブデン(Mo),スズ(Sn),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f,g,h,jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0. 5、0≦h≦0. 5、g+h<1、−0. 1≦j≦0. 2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
(化2)
Lim Ni(1-n) M2n (2-p) q
(式中、M2は、コバルト,マンガン,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,クロム,鉄,銅,亜鉛,ジルコニウム,モリブデン,スズ,カルシウム,ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。m,n,pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0. 005≦n≦0. 5、−0. 1≦p≦0. 2、0≦q≦0. 1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
(化3)
Lir Co(1-s) M3s (2-t) u
(式中、M3は、ニッケル,マンガン,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,クロム,鉄,銅,亜鉛,ジルコニウム,モリブデン,スズ,カルシウム,ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。r,s,tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
(化4)
Liv Mn2-w M4w x y
(式中、M4は、コバルト,ニッケル,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,クロム,鉄,銅,亜鉛,モリブデン,スズ,カルシウム,ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。v,w,xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
(化5)
Liz M5PO4
(式中、M5は、コバルト,マンガン,鉄,ニッケル,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,ニオブ(Nb),銅,亜鉛,モリブデン,カルシウム,ストロンチウム,タングステンおよびジルコニウムからなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、これらの他にも、MnO2 ,V2 5 ,V6 13,NiS,MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
負極22は、例えば、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の結着材を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素,易黒鉛化性炭素,黒鉛,熱分解炭素類,コークス類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、放電容量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム,ホウ素,アルミニウム,ガリウム(Ga),インジウム(In),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ,鉛(Pb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),銀(Ag),亜鉛,ハフニウム(Hf),ジルコニウム,イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモン(Sb),およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、NiS,MoSなどの硫化物、あるいはLiN3 などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレンなどが挙げられる。
なお、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量が、正極21の充電容量よりも大きくなっており、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ジエチル,炭酸ジメチル,炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチルが挙げられる。
電解質塩としては、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiAsF6 、LiClO4 、LiB(C6 5 4 、LiCH3 SO3 、LiCF3 SO3 、LiN(SO2 CF3 2 、LiN(SO2 2 5 2 、LiC(SO2 CF3 3 、LiAlCl4 、Li2 SiF6 、LiCl、ジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBrなどが挙げられる。電解質塩は、1種を単独で混合して用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
電解液は、更に、添加剤として、化6に示した5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを含んでいる。正極21と反応して被膜を形成することができ、電解液の分解反応を抑制することができるからである。また、初回充電時に負極22にも被膜を形成することができ、電解液の分解反応を抑制することができるからである。
Figure 2007141495
5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量は、電解液において、1.0質量%以下であり、0.05質量%以上であれば好ましい。含有量が多すぎると、正極21との反応性が高くなりすぎてしまい、サイクル特性が低下してしまい、また、負極22に過剰な被膜を形成してしまい、抵抗が上昇してサイクル特性が低下してしまうからである。一方、含有量が少ないと、効果が十分でないからである。
この二次電池は、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上6.00V以下の範囲内になるように設計されている。よって、完全充電時における開回路電圧が4.20Vの電池よりも、同じ正極活物質であっても、単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるので、それに応じて正極活物質と負極材料との量が調整されている。これにより高いエネルギー密度が得られるようになっている。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極活物質と、導電材と、結着材とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を形成する。
また、例えば、負極材料と、結着材とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
続いて、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が形成される。
この二次電池では、充電を行うと、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。その際、電解液には、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルが1.0質量%以下の範囲で含まれているので、電極に良好な被膜が形成され、電解液の分解反応が抑制される。
このように本実施の形態では、完全充電時における開回路電圧を4.25V以上6.00V以下の範囲内としたので、高いエネルギー密度を得ることができる。また、電解液に5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを1.0質量%以下の範囲で含むようにしたので、電極に良好な被膜を形成することができ、電解液の分解反応を抑制することができる。よって、エネルギー密度を高くすることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
特に、電解液における5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量を0.05質量%以上とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、一対の正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bの側が正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ第1の実施の形態で説明した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒, 電解質塩および添加剤など)の構成は、第1の実施の形態に係る二次電池と同様である。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体,ポリテトラフルオロエチレン,ポリヘキサフルオロプロピレン,ポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイド,ポリフォスファゼン,ポリシロキサン,ポリ酢酸ビニル,ポリアクリル酸エステル,ポリメタクリル酸エステル,スチレン−ブタジエンゴム,ニトリル−ブタジエンゴム,ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性の点からはポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体が好ましい。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極33および負極34のそれぞれに、電解液を高分子化合物に保持させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次いで、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示した二次電池が完成する。
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、必要に応じて重合開始剤あるいは重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入する。
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、必要に応じて熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成し、図3および図4に示した二次電池を組み立てる。
この二次電池の作用および効果は、第1の実施の形態に係る二次電池と同様である。
更に、本発明の具体的な実施例について、詳細に説明する
(実施例1−1〜1−4)
図3,4に示した二次電池を作製した。まず、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2 )と、導電剤としてグラファイトと、結着材としてポリフッ化ビニリデンとを混合して正極合剤を調製した。次いで、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとしたのち、アルミニウム箔よりなる正極集電体33Aに均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層33Bを形成し、正極33を作製した。そののち、正極集電体33Aの一端にアルミニウム製の正極リード31を取り付けた。
また、負極材料として人造黒鉛と、結着材としてポリフッ化ビニリデンとを混合して負極合剤を調製した。次いで、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとしたのち、銅箔よりなる負極集電体34Aに均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層34Bを形成し、負極34を作製した。その際、正極33の充電容量と負極材料との充電容量を調整して、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるようにした。また、正極活物質の量と負極材料の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が実施例1−1では4.25Vとなるように、実施例1−2では4.30Vとなるように、実施例1−3では4.40Vとなるように、実施例1−4では4.50Vとなるように設計した。そののち、負極集電体34Aの一端にニッケル製の負極リード32を取り付けた。
続いて、溶媒として炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン=6:4の質量比で混合した混合溶媒に、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを添加し、更に電解質塩としてLiPF6 を溶解して電解液を作製した。電解液における5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量は0.5質量%とした。また、電解液におけるLiPF6 の濃度は0.7mol/kgとした。
次に、得られた電解液を高分子化合物であるヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの共重合体に保持させることにより、正極33および負極34のそれぞれにゲル状の電解質層36を形成した。共重合体におけるヘキサフルオロプロピレンの割合は、6.9質量%とした。
そののち、電解質層36をそれぞれ形成した正極33と負極34とを、ポリエチレンフィルムからなるセパレータ35を介して積層し、巻回して巻回電極体30を作製した。
得られた巻回電極体30をラミネートフィルムよりなる外装部材40に挟み込み、減圧封入することにより図3および図4に示した二次電池を作製した。
実施例1−1〜1−4に対する比較例1−1,1−2として、正極活物質の量と負極材料の量とを調整して、完全充電時における開回路電圧が4.20Vとなるようにしたことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして二次電池を作製した。その際、比較例1−2では、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを用いなかった。
また、比較例1−3〜1−6として、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを用いなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして二次電池を作製した。なお、完全充電時における開回路電圧は、比較例1−3では4.25Vであり、比較例1−4では4.30Vであり、比較例1−5では4.40Vであり、比較例1−6では4.50Vである。
作製した実施例1−1〜1−4および比較例1−1〜1−6の二次電池について、充放電を行い、サイクル特性を調べた。充放電は、23℃で1Cの定電流定電圧充電を上限電圧まで総充電時間を2.5時間として行ったのち、1Cの定電流で、電池電圧が3.0Vになるまで放電を行った。充電上限電圧は、表1に示したようにした。また、サイクル特性は、この充放電を繰返し、1サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の放電容量の維持率、すなわち、(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)から求めた。結果を表1に示す。なお、1Cは、理論容量を1時間で放電しきる電流値である。
Figure 2007141495
表1に示したように、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを用いた実施例1−1〜1−4によれば、これを用いていない比較例1−3〜1−6よりも、それぞれ放電容量維持率が向上した。一方、充電上限電圧を4.20Vとした比較例1−1,1−2では、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを用いることにより、放電容量維持率は低下した。
すなわち、完全充電時における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下の範囲内とし、電解液に、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例2−1〜2−5)
電解液における5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量を1.0質量%、0.2質量%、0.05質量%または0.03質量%としたことを除き、他は実施例1−3と同様にして二次電池を作製した。
実施例2−1〜2−5に対する比較例2−1として、電解液における5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量を1.2質量%としたことを除き、他は実施例2−1〜2−5と同様にして二次電池を作製した。
作製した実施例2−1〜2−5および比較例2−1の二次電池について、実施例1−3と同様にして、サイクル特性を調べた。結果を表2に示す。
Figure 2007141495
表2に示したように、放電容量維持率は、電解液における5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量が多くなるに伴い上昇し、極大値を示したのち低下する傾向が観られた。
すなわち、電解液における5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量は、1.0質量%以下とすることが好ましく、0.05質量%以上とすれば、より好ましいことが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例においては、巻回構造を有する二次電池について説明したが、本発明は、正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた他の積層構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、いわゆるコイン型,シート型,ボタン型あるいは角型などの形状を有する二次電池についても適用することができる。
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウムなどの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な正極活物質あるいは溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
更に、上記実施の形態および実施例においては、電解液あるいは電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質を用いる場合について説明したが、本発明は、他の電解質を用いる場合についても適用することができる。他の電解質としては、例えば、これらの電解質に、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子電解質、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質、溶融塩電解質を混合したものが挙げられる。
加えて、上記実施の形態および実施例では、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池について説明したが、本発明は、負極活物質にリチウム金属を用い、負極の容量が、リチウムの析出および溶解による容量成分により表されるいわゆるリチウム金属二次電池、または、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるようにした二次電池についても同様に適用することができる。
本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。 本発明の他の実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。 図3で示した巻回電極体のI−I線に沿った断面図である。
符号の説明
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構,15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A,33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質層、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム。

Claims (2)

  1. 正極および負極と共に電解液を備えた電池であって、
    一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下の範囲内であり、
    前記電解液は、5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルを1.0質量%以下の範囲で含む
    ことを特徴とする電池。
  2. 前記電解液における5−フルオロ−1,3−ジメチルウラシルの含有量は、0.05質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の電池。
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