JP2006104635A - 不織布 - Google Patents

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孔 大西
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Abstract

【課題】 初期特性として透水性が低く、かつ十分な強度を有し、経時変化後には透水性が増加し、かつ強度が低下する不織布の提供を目的とするものである。
【解決手段】 吸水性材と熱融着性材とを含有する不織布であって、前記不織布の
透水係数が1.0×10-4〜1.0×10-1cc/cm2/sec、
破断強力が15N/5cmであり、かつ、
サンシャインウエザオメーターにおける200時間照射後の前記不織布の透水係数が1.0×10-1cc/cm2/sec以上であることを特徴とする不織布。

Description

本発明は、不織布に関するものであり、より詳細には、法面保護用不織布に関するものである。
道路建設、土地造成などによって形成される法面については、崩壊を防止する手段を講じる必要がある。また、自然災害を防止する観点から、沢や崖などの傾斜地(法面)の崩壊を防止することも必要である。法面の崩壊を防止する保護手段としては、例えば、種子吹き付け工法、コンクリート吹き付け工法、保護シートを敷設する方法などがある。種子吹きつけ工法やコンクリート吹き付け工法では、法面の土質や法面の勾配などによって制約を受ける場合があり、保護シートを用いて法面を保護する工法が簡便である。
保護シートを用いて、法面を保護する方法としては、例えば、以下のような提案がなされている(特許文献1〜4)。
特許文献1には、「不透水性基材シート及び透水性シートの少なくとも2層から積層されていて、前記不透水性基材シートの表面に所定の分布密度で形成されている所定の形状の突起片が、前記透水性シートを貫通し全体として一体に成形されている複合シート」が開示されている。
特許文献2には、「経方向適宜間隔ごとに疎密を繰り返す植生用ネットにおいて、密部を構成する横糸が細デニールの腐蝕性繊維で構成され、且つ密部が植物の侵入を許さぬ程度に密に編織され、疎部を構成する横糸が太デニールの腐蝕性繊維で構成され、該ネットの全面もしくは一部に、種子、肥料、土壌改良材、保水材の一種以上を装着したことを特徴とする法面緑化ネット」が開示されている。
特許文献3には、「不織布等の繊維状物によりシート状に形成した吸排水基材の表面または内部に、天然繊維、合成繊維、あるいは両者を混合して形成した網状体を一体化したことを特徴とする土木用強化シート」が開示されている。
特許文献4には、「実質的に生分解性を有しない合成繊維を用いて構成され、該合成繊維表面に生分解性物質からなる被膜が被覆されていることを特徴とする土木用シート類」が開示されている。
特開平9−11378号公報 特開平10−60898号公報 特開2000−319885号公報 特開2004−42484号公報
造成によって新たに形成された法面の土砂崩れを防止し、法面を安定(固着)させるためには、造成後の初期段階として、まず、降雨によって多量の雨水が法面へ侵入するのを防ぐ必要がある。初期段階では法面が固まっておらず、多量の雨水が入ると細かい土粒子が流され、法面が崩れ易くなるからである。一方、法面に全く雨水などが浸入しない場合にも、やはり法面は安定しない。法面の土壌を固めるためにはある程度の水分が必要だからである。また、法面に植物が発芽、生育し、植物の根付きにより土壌を更に安定にするためには、植物の生育のために十分な水分が必要である。
つまり、法面保護用シートとしては、初期段階では、多量の雨水などが法面に浸入することを抑制し、徐々に雨水などが法面に浸入するようにして、法面を安定化できるものが理想的である。また、法面が崩壊するのを防止するためには、土壌などの流失を防止できる程度の強度も必要になる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、初期特性として透水性が低く、かつ十分な強度を有し、経時的に透水性が高くなる不織布、より詳細には、法面保護用不織布を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決することのできた本発明の不織布とは、吸水性材と熱融着性材とを含有する不織布であって、前記不織布の透水係数が1.0×10-4〜1.0×10-1cc/cm2/sec、破断強力が15N/5cm以上、かつ、サンシャインウエザオメーターにおける200時間照射後の前記不織布の透水係数が1.0×10-1cc/cm2/sec以上であることを特徴とする不織布である。
すなわち、本発明の不織布は、吸水性材と熱融着性材とを含有し、前記吸水性材が、初期特性として、降雨の際に雨水などを吸水して膨潤し、不織布を構成する繊維間の空隙を塞いで不織布全体の透水性を低下させるとともに、経時的特性として、太陽光などの紫外線照射により吸水率及び膨潤率が低下して、雨水などを吸水しても、繊維間の空隙を維持する割合が高くなり、不織布全体の透水性を徐々に高くするという作用を利用するところに要旨がある。
そして、本発明の不織布は、初期特性として、降雨の際に必要最低限量の水分を透水させるとともに、多量の雨水が透水するのを抑制するため、1.0×10-4〜1.0×10-1cc/cm2/secの透水係数を有する。さらに、本発明の不織布は、経時的に透水性を高めるため、サンシャインウエザオメーターにおける200時間照射後の特性として、1.0×10-1cc/cm2/sec以上の透水係数を有する。
また、本発明で使用する熱融着性材は、不織布を構成する繊維間同士を固着して、得られる不織布の強度を高める作用を有する。本発明の不織布は、法面の土壌の崩壊を物理的に防止すると言う観点から、ある程度の強度が必要になり、初期特性として、15N/5cm以上の破断強力を有する。
本発明において、不織布全体中の熱融着性材の含有比率が、5質量%〜30質量%であることも好ましい態様である。また、本発明において、前記不識布が、生分解性繊維を含有し、前記吸水性材の含有率が、生分解性繊維と吸水性材との合計質量の20質量%以上であることも好ましい態様である。生分解性繊維を含有させることによって、不織布が経時的に劣化しやすくなり、経時的透水性が高くなるとともに、植物の発芽、生育なども促進されるからである。
前記吸水性材としては、例えば、吸水性能として10cc/g以上の吸水量を有するものを使用することが好ましい。このような吸水性材として好ましいのは、例えば、吸水性繊維または吸水性樹脂からなるパウダーである。前記熱融着性材として好ましいのは、例えば、熱融着性繊維または熱融着性樹脂からなるパウダーである。前記熱融着性繊維としては、例えば、高融点樹脂成分と低融点樹脂成分からなるサイドバイサイドあるいは芯鞘の構造を有する複合繊維であり、かつ前記低融点樹脂成分の融点が100℃〜180℃であるものを使用することが好ましい。また、前記生分解性繊維として好ましいのは、例えば、綿、ウールまたはレーヨンである。
本発明の不織布は、法面保護用として好適である。
本発明の不織布は、初期特性として、透水性が低く、かつ破断強力が大きいが、経時的に透水性が高くなるという効果を奏する。斯かる効果により、本発明の不織布は、造成後の法面保護に好適であり、さらに沢、崖などの傾斜地などの保護用としても利用できる。
本発明の不織布は、吸水性材と熱融着性材とを含有する不織布であって、前記不織布の透水係数が1.0×10-4〜1.0×10-1cc/cm2/sec、破断強力が15N/5cm以上であり、かつ、サンシャインウエザオメーターにおける200時間照射後の前記不織布の透水係数が1.0×10-1cc/cm2/sec以上であることを特徴とする。
本発明の不織布は、初期特性として、透水係数が1.0×10-1cc/cm2/sec以下であり、より好ましくは、5×10-2cc/cm2/sec以下、さらに好ましくは、1.0×10-2cc/cm2/sec以下である。透水係数を1.0×10-1cc/cm2/sec以下とするのは、安定化の初期段階では、降雨の際、法面に多量の雨水などが浸入するのを抑制する必要があるからである。また、土壌を固めて安定化させるためには、ある程度の水分を法面に供給する必要があることから、本発明の不織布の透水係数は、初期特性として、1.0×10-4cc/cm2/sec以上であり、より好ましくは、5×10-4cc/cm2/sec以上、さらに好ましくは、1.0×10-3cc/cm2/sec以上である。
本発明の不織布は、初期特性として、破断強力が15N/5cm以上であり、より好ましくは20N/5cm以上、更に好ましくは、25N/5cm以上である。破断強力を15N/5cm以上とするのは、法面から土壌などが流出するのを物理的に抑制する実用レベルの強度を確保するためである。また、初期特性としての破断強力の上限は、特に限定されないが、60N/5cmである。法面の安定性、敷設時の取り扱い性を良好に保ちつつ、劣化後の破断強力も植物生育にとって適度なものとするためである。また、過剰品質を防止でき、コスト面からも好ましい。
本発明の不織布は、経時的特性として、サンシャインウエザオメーター200時間照射後の透水係数が1.0×10-1cc/cm2/sec以上であり、より好ましくは1.5×10-1cc/cm2/sec以上、さらに好ましくは5.0×10-1cc/cm2/sec以上である。本発明では、吸水性材の吸水率及び膨潤率が経時的に低下して、降雨の際に、雨水などを吸水しても、不織布を構成する繊維間の空隙を維持する割合が高くなり、不織布全体の透水性を徐々に高くするという作用を利用し、斯かる作用により、法面に徐々に雨水を浸透させて、法面を安定化するためである。尚、サンシャインウエザオメーター200時間照射は、約1年間の屋外暴露に相当する。
また、本発明の不織布は、経時的特性として、サンシャインウエザオメーター200時間照射後の強度保持率が50%以下であり、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。強度保持率を50%以下とすることにより、不織布が経時劣化して、土壌表面を露出させ、植生が発育するために必要な空間を与えることができる。前記強度保持率は、サンシャインウエザオメーター200時間照射後の破断強力を、初期破断強力に対する百分率として表す。
本発明で使用する吸水性材は、初期特性として、吸水性を有し、経時的に吸水性が低下するものであれば、特に限定されない。例えば、初期特性として、10cc/g以上であり、より好ましくは30cc/g以上、さらに好ましくは100cc/g以上の吸水性能を有する吸水性材を使用することが好ましい。初期の吸水量を10cc/g以上とすることにより、吸水性材の膨潤率が高くなって、不織布を構成する繊維間の空隙が塞がれて、初期透水性が低下するからである。
このような吸水性材として、例えば、吸水性繊維および吸水性樹脂からなるパウダーを挙げることができる。前記吸水性繊維として、例えば、表層加水分解変性アクリル系繊維およびポリアクリル酸塩架橋繊維等を挙げることができる。
前記表層加水分解変性アクリル系繊維として、例えば、特開昭54−138693号、特開昭57−21549号に開示される、親水性架橋重合体からなる外層とアクリロニトリル系重合体及び/又は他の重合体からなる内層部とから構成される高吸水性繊維を挙げることができる。前記高吸水性繊維は、例えば、アクリロニトリル系重合体からなる繊維に特定のアルカリ金属水酸化物水性溶液を作用せしめて加水分解し、前記繊維の外層部のみを選択的に親水架橋化(ヒドロゲル化)することにより得られる。
前記ポリアクリル酸塩架橋繊維として、特開昭63−159405号、特開昭63−159440号、特開平6−128829号に開示される、カルボン酸基を与えるモノマーと、カルボン酸基と反応してエステル架橋結合を形成するヒドロキシル基を与えるモノマーとを共重合により架橋した高吸水性繊維を挙げることができる。前記高吸水性繊維は、例えば、水溶液中でポリマー重合し、さらに繊維形状化した後、加熱して架橋することにより得られる。
本発明で使用する吸水性樹脂からなるパウダーとしては、吸水性樹脂からなる顆粒、粉末などが挙げられる。前記吸水性樹脂からなるパウダーは、略球状であり、その平均粒子径は、前記吸水性能を満たすものであれば、特に限定されないが、例えば、60μm以上、300μm以下であることが好ましい。このような吸水性樹脂からなるパウダーとして、例えば、アクリル酸塩共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール架橋物、スチレン無水マレイン酸共重合体塩、ビニルアルコール無水マレイン酸反応物塩、ポリアクリル酸ポリビニルアルコール共重合体塩、イソブチレン無水マレイン酸塩、高吸水性ポリウレタン、高分子量ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。
また、本発明における吸水性材は、太陽光線などの紫外線照射によって経時的に劣化するものが好適である。本発明で使用する吸水性材として、前記吸水性繊維あるいは吸水性樹脂からなるパウダーのいずれかを使用しても、吸水性繊維と吸水性樹脂からなるパウダーとを同時に使用しても良い。
本発明で使用する熱融着性材は、加熱により溶融を開始し、前記溶融温度以下に冷却することにより融着するものであれば、特に限定されない。例えば、融点が100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、180℃以下、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下である熱融着性材を使用することが好ましい。このような熱融着性材として、例えば、熱融着性繊維および熱融着性樹脂からなるパウダーを挙げることができる。
前記熱融着性繊維として、例えば、融点の異なる2種類の樹脂成分からなる複合繊維であり、前記2種類の樹脂成分のうち、少なくとも融点の低いほうの樹脂成分(「低融点樹脂成分」、以下、「低融点成分」という。また、もう一方の融点が高いほうの繊維を「高融点樹脂成分」、以下「高融点成分」という)が、前記温度範囲で溶融を開始するものを使用することが好ましい。前記複合繊維として、例えば、高融点成分と低融点成分とからなるサイドバイサイド構造を有する複合繊維、または、高融点成分と低融点成分とからなる芯鞘構造の複合繊維を使用することが好ましい。斯かる複合繊維においては、低融点成分の融点が、前記温度範囲であることが好ましい。また、高融点成分と低融点成分の融点の差は、特に限定されないが、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上である。
このような熱融着性繊維として、例えば、ポリエステル−変性ポリエステル複合繊維を含むポリエステル系繊維、6ナイロン−66ナイロン複合繊維を含むポリアミド系繊維、ポリエステル−変性ポリエステルを含むポリオレフィン系繊維等が挙げられ、これらの中でも、芯鞘構造を有するポリエステル(鞘)−変性ポリエステル(芯)複合繊維を使用することがより好ましい。
本発明で使用する熱融着性樹脂からなるパウダーとしては、熱融着性樹脂からなる顆粒、粉末などが挙げられる。前記熱融着性樹脂からなるパウダーは、略球状であり、その平均粒子径は、前記温度範囲を満たすものであれば、特に限定されないが、例えば、60μm以上、300μm以下であることが好ましい。このような熱融着性樹脂からなるパウダーとして、例えば、低融点ポリエステル、低融点ポリエチレン、低融点ナイロン、低融点ポリプロピレン等を挙げることができる。これらの中でも、低融点ポリエチレンが好ましい。前記熱融着性樹脂からなるパウダーとしては、例えば、ポリエチレンUM8510(宇部興産(株)製)を使用することが好ましい。
また、本発明に使用する熱融着性材は、不織布を構成する繊維間同士を接着し、不織布に強力を持たせるものが好適である。本発明で使用する熱融着性材として、前記熱融着性繊維あるいは熱融着性樹脂からなるパウダーのいずれかを使用しても、熱融着性繊維と熱融着性樹脂からなるパウダーとを同時に使用しても良い。
本発明の好ましい態様では、不織布全体中の熱融着性材の含有比率が、5質量%〜30質量%である。
前記熱融着材の含有比率は、本発明の不織布における初期透水性および強度を満足するものであれば、特に限定されない。例えば、本発明で使用する、熱融着性材の不織布全体中の含有比率は5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%以上とすることにより、不織布を構成する繊維間の接着状態が良好になり、不織布表面における繊維の毛羽立ちが抑制され、さらに十分な初期破断強力を有するからである。また、前記熱融着性材の含有比率は30質量%以下であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。30質量%を越えると、不織布を構成する繊維間の接着が必要以上に強固になり、斯かる繊維間の空隙が減少することによって、初期透水性が十分に得られないからである。
また、本発明の不織布は、前記吸水性材と熱融着性材の他に、生分解性繊維を含有することもできる。生分解性繊維を含有させることによって、不織布が経時的に劣化しやすくなり、経時的透水性が高くなるとともに、植物の発芽、生育なども促進されるからである。
本発明で使用する生分解性繊維は、自然界において微生物によって分解される繊維であれば、特に限定されない。前記生分解性繊維としては、例えば、天然繊維、再生繊維、合成繊維を使用することが好ましい。天然繊維としては、綿、ウール、麻、ケナフ等が、再生繊維としては、レーヨン、ポリノジック、キュプラ等が、合成繊維としては、ポリ乳酸繊維、ポリラクトロン繊維、ポリヒドロキシブチネート繊維、ポリエチレンサクシネート繊維等が挙げられる。前記生分解性繊維の中でも、綿、ウールまたはレーヨンを使用することがより好ましい。
本発明において、前記生分解性繊維を含有する場合、前記吸水性材の含有率が、生分解性繊維と吸水性材との合計質量の20質量%以上であることも好ましい態様である。
本発明で使用する吸水性材の含有率は、前記本発明の不織布における初期透水性、および経時透水性を満足するものであれば、特に限定されない。例えば、20質量%以上であり、好ましくは50%質量以上であり、より好ましくは80質量%以上である。前記吸水性材の含有率を高めることによって、一層優れた初期透水性および経時的透水性が得られるからである。
本発明に使用できる吸水性繊維、熱融着性繊維および生分解性繊維の繊維長は、前記繊維を使用して得られる不織布が、本発明における初期透水性、および経時透水性を満足するものであれば、特に限定されない。例えば、30mm以上、120mm以下といった短繊維が好ましい。
本発明に使用できる吸水性繊維、熱融着性繊維および生分解性繊維の繊度範囲は、前記繊維を使用して得られる不織布が、本発明における初期透水性、および経時的透水性を満足するものであれば、特に限定されない。例えば、1デシテックス以上が好ましく、より好ましくは1.5デシテックス以上、さらに好ましくは2デシテックス以上である。繊度を1デシテックス以上とすることにより、不織布の高密度化を抑え、必要最低限の透水性を確保することができるからであり、さらに高コストとなることを防ぐことができる。また、本発明の不織布が過度に粗くなることを抑え、低透水性を確保するために、前記繊度は15デシテックス以下が好ましく、より好ましくは12デシテックス以下、さらに好ましくは10デシテックス以下である。
本発明の不織布は、上述した吸水性材と熱融着性材とを含有する不織布であり、例えば、以下の様に構成されるものを挙げることができるが、斯かる態様に限定されるものではない。
(1)吸水性材として吸水性繊維と、熱融着性材として熱融着性繊維とを含有する不織布、
(2)吸水性材として吸水性繊維と、熱融着性材として熱融着性繊維と、生分解性繊維とを含有する不織布、
(3)吸水性材として吸水性樹脂からなるパウダーと、熱融着性材として熱融着性樹脂からなるパウダーと、長繊維不織布とを含有する不織布、
(4)吸水性材として吸水性樹脂からなるパウダーと、熱融着性材として熱融着性パウダーと、短繊維不織布とを含有する不織布、
(5)吸水性材として吸水性樹脂からなるパウダーと、熱融着性材として熱融着性繊維とを含有する不織布。
前記(3)〜(5)の態様において、吸水性材として吸水性樹脂からなるパウダー、および熱融着性材として熱融着性樹脂からなるパウダーを使用する場合には、斯かるパウダーを2層以上の不織布で挟み込んだ態様を挙げることができる。前記パウダーの少なくとも1部は、積層された各不織布層に分散することによって、各不織布層中に吸水性材および熱融着性材が存在することになり、本発明の透水性および強度が発現される。
前記積層される不織布としては、長繊維不織布、短繊維不織布のいずれであっても良い。前記長繊維不織布として、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布が挙げられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるものが挙げられる。前記短繊維不織布としては、例えば、従来公知の短繊維不織布、あるいは本発明の短繊維からなる不織布が挙げられる。前記長繊維不織布および短繊維不織布は、それぞれ単独で積層しても、短繊維不織布と長繊維不織布とを組み合わせて積層しても良い。
前記(1)、(2)の態様において、吸水性材として吸水性繊維、および熱融着性材として熱融着性繊維を使用する場合には、不織布の構成は1層(単層)であることが好ましい。吸水性材および熱融着材が1層の不識布中に存在することによって、本発明の透水性および強度が発現されるからである。
本発明の不織布は、適度に空気を通過させることが好ましい。本発明の不織布は、200cc/cm2/sec以上、より好ましくは300cc/cm2/sec以上、さらに好ましくは400cc/cm2/sec以上の通気度を有することが好ましい。通気度を200cc/cm2/sec以上とすることにより、本発明の不織布が雨水などを吸収していないときには、適度の空気を法面へ通過させることにより、法面の土壌を活性化させるためである。
本発明の不織布の厚みは、適度な厚みを有すれば良く、特に制限されない。例えば、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは1.6mm以下である。
次に、本発明の不織布の製造方法について説明する。本発明の不織布の製造方法は、当業者に公知の方法を採用することができる。
例えば、生分解性繊維(短繊維)、吸水性繊維(短繊維)および熱融着性繊維(短繊維)を混繊した後、カーディングにより開繊してウエッブとなし、引き続きエンボスカレンダーで繊維間を熱接着する製造方法を挙げることができる。
また、例えば、スパンボンド不織布あるいはメルトブロー不織布を2枚用いて、第1の基布上に、吸水性樹脂からなるパウダーおよび熱融着性樹脂からなるパウダーを分散し、第2の基布を重ねた後、加熱処理して熱接着する製造方法を挙げることができる。
あるいは、例えば、前記吸水性繊維(短繊維)と生分解性繊維(短繊維)とを混合、開繊して作製した不織布を2枚用いて、第1の基布上に、吸水性樹脂からなるパウダーおよび熱融着性樹脂からなるパウダーを分散し、第2の基布を重ねた後、加熱処理して熱接着する製造方法を挙げることができる。
前記製造方法において、吸水性材、熱融着性材、生分解性繊維の含有率、目付量等を適宜調整することにより、得られる不織布の初期透水性、経時的透水性等を制御できる。また、前記目付量は、本発明の不織布における初期透水性および強度、および経時的透水性を満足させるものであれば、特に限定されない。例えば、本発明の不織布の目付量は30g/m2以上が好ましく、より好ましくは40g/m2以上、さらに好ましくは50g/m2以上である。目付量を30g/m2以上とすることにより、初期における透水性が低下すると共に、初期強度が高くなるからである。また、経時的透水性を高めるために、併せて、十分な通気度も得られ、過剰品質も防ぐために、目付量は、150g/m2以下が好ましく、より好ましくは140g/m2、さらに好ましくは130g/m2以下である。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、以下における目付量、厚さ、破断強力、通気度、吸水量、透水係数および耐候性試験は下記の方法により行った。
(1)目付量
目付量は、JIS L1096の8.4.2に記載の方法に準拠して求めた。
(2)厚さ
厚さは、JIS L1096の8.5.1に記載の方法に従って荷重2kPaで測定した。
(3)通気度
通気度は、JIS L1096の6.27.1に記載のブランジール形試験機で測定した。
(4)吸水量
試料10cm×10cmを25℃に保った水中に30分浸漬し、ナイロン濾布(200メッシュ)に包んで遠心分離機(160G×5分)により繊維間の水を除去して浸漬前後の重量を測定し、下記計算式で吸水量を算出した。
吸水量 = (M2−M1)/M1 (cc/g)
M1:浸漬前試料重量、 M2:水切り後の試料重量
(5)透水係数
透水係数は、JIS A1218の3.1(1)に記載の透水試験方法に従って測定した。
(6)破断強力および伸度
東洋ボールドイン社製500kgテンシロンを用い、下記条件で測定した。
試料:200mm(試料巾:50mm)
測定試料長:100mm(試料巾:50mm)
引っ張り速度:200mm/min
n=3
(7)耐候性試験
装置:サンシャインカーボンアーク灯式ウエザオメーター
照射条件:温度63℃±3℃、
60分間中12分間水スプレー
200時間照射
試料:30cm×40cm
実施例1
繊度5.6デシテックス、繊維長51mmのレーヨン短繊維(大和紡績(株)製)65質量%と、繊度5.6デシテックス、繊維長51mmの吸水性繊維(ランシールF)20質量%と、繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(芯鞘型複合繊維、低融点ポリエステル融点:110℃)15質量%とを均一混合した後(目付質量約60g/m2)、カーディング加工を施し均一なウエッブを作製し、連続して一対の加熱ロール(上ロール鉄温度160℃、下ロールゴム非加熱)に処理速度5m/min、ロール間圧力20kgf/cm2で繊維間接着処理をして本発明の不織布を得た。この不織布について初期特性および経時的特性の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
実施例2
繊度5.6デシテックス、繊維長51mmのレーヨン短繊維(大和紡績(株)製)35質量%と、繊度5.6デシテックス、繊維長51mmの吸水性繊維(ランシールF)50質量%と、繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(芯鞘型複合繊維、低融点ポリエステル融点:110℃)15質量%とを均一混合した後(目付質量約60g/m2)、カーディング加工を施し均一なウエッブを作製し、連続して一対の加熱ロール(上ロール鉄温度160℃、下ロールゴム非加熱)に処理速度5m/min、ロール間圧力20kgf/cm2で繊維間接着処理をして本発明の不織布を得た。この不織布について実施例1と同様の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
実施例3
繊度5.6デシテックス、繊維長51mmのレーヨン短繊維(大和紡績(株)製)5質量%と、繊度5.6デシテックス、繊維長51mmの吸水性繊維(ランシールF)80質量%と、繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(芯鞘型複合繊維、低融点ポリエステル融点:110℃)15質量%とを均一混合した後(目付質量約60g/m2)、カーディング加工を施し均一なウエッブを作製し、連続して一対の加熱ロール(上ロール鉄温度160℃、下ロールゴム非加熱)に処理速度5m/min、ロール間圧力20kgf/cm2で繊維間接着処理をして本発明の不織布を得た。この不織布について実施例1と同様の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
実施例4
繊度5.6デシテックス、繊維長51mmの吸水性繊維(ランシールF)85質量%と、繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(芯鞘型複合繊維、低融点ポリエステル融点:110℃)15質量%とを均一混合した後(目付質量約60g/m2)、カーディング加工を施し均一なウエッブを作製し、連続して一対の加熱ロール(上ロール鉄温度160℃、下ロールゴム非加熱)に処理速度5m/min、ロール間圧力20kgf/cm2で繊維間接着処理をして本発明の不織布を得た。この不織布について実施例1と同様の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
比較例1
繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル短繊維85質量%と、繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(芯鞘型複合繊維、低融点ポリエステル融点:110℃)15質量%とを均一混合した後(目付質量約60g/m2)、カーディング加工を施し均一なウエッブを作製し、連続して一対の加熱ロール(上ロール鉄温度160℃、下ロールゴム非加熱)に処理速度5m/min、ロール間圧力20kgf/cm2で繊維間接着処理をして本発明の不織布を得た。この不織布について実施例1と同様の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
比較例2
繊度5.6デシテックス、繊維長51mmのレーヨン短繊維(大和紡績(株)製)85質量%と、繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合短繊維(芯鞘型複合繊維、低融点ポリエステル融点:110℃)15質量%とを均一混合した後(目付質量約60g/m2)、カーディング加工を施し均一なウエッブを作製し、連続して一対の加熱ロール(上ロール鉄温度160℃、下ロールゴム非加熱)に処理速度5m/min、ロール間圧力20kgf/cm2で繊維間接着処理をして本発明の不織布を得た。この不織布について実施例1と同様の測定を行った。結果を表1および表2に示す。
Figure 2006104635
Figure 2006104635
表1および表2から明らかなように、実施例1〜4の不織布の透水係数は、初期では0.006cc/cm2/sec〜0.014cc/cm2/secと低いが、耐候性の促進試験により、0.128cc/cm2/sec〜0.173cc/cm2/secと高くなった。この結果より、本発明の不織布は、初期特性として、透水性が低く、経時的に透水性が高くなることが分かる。一方、比較例1および2の不織布は、初期の透水係数が低いが、耐候性の促進試験を行っても透水係数はほとんど変化しなかった。
また、実施例1〜4の不織布はいずれも、初期の破断強力が15N/5cm以上であり、耐候性の促進試験により、破断強力が初期破断強力に対して50%以下に低下していることが分かる。一方、比較例1および2の不織布では、強度保持率が約80%以上と高くなった。
この結果より、本発明の不織布は、造成後の法面に敷設した場合に、初期には、土壌の流出を抑制する程度の実用強度を有しているが、経時によって強度が劣化し、土壌表面を露出させ、植生を発育させるために必要な空間を与えることができると考えられる。
尚、本発明において、透水性や破断強力が経時的に劣化するのは、生分解性繊維を使用しているというよりはむしろ、吸水性材を使用していることによる影響が大きいと考えられる。これは、比較例1および2の不織布が、生分解性繊維を含有しているにも拘わらず、経時(耐候性の促進試験)によって、透水性がほとんど変化せず、強度の低下率も小さいことから明らかである。

Claims (9)

  1. 吸水性材と熱融着性材とを含有する不織布であって、前記不織布の
    透水係数が1.0×10-4〜1.0×10-1cc/cm2/sec、
    破断強力が15N/5cm以上であり、かつ、
    サンシャインウエザオメーターにおける200時間照射後の前記不織布の透水係数が1.0×10-1cc/cm2/sec以上であることを特徴とする不織布。
  2. 不織布全体中の熱融着性材の含有比率は、5質量%〜30質量%である請求項1に記載の不織布。
  3. 前記不織布が、生分解性繊維を含有し、前記吸水性材の含有率は、生分解性繊維と吸水性材との合計質量の20質量%以上である請求項1または2に記載の不織布。
  4. 前記吸水性材が、吸水性能として10cc/g以上の吸水量を有する請求項1〜3のいずれかに記載の不織布。
  5. 前記吸水性材は、吸水性繊維または吸水性樹脂からなるパウダーである請求項1〜4のいずれかに記載の不織布。
  6. 前記熱融着性材は、熱融着性繊維または熱融着性樹脂からなるパウダーである請求項1〜5のいずれかに記載の不織布。
  7. 前記熱融着性繊維が、高融点樹脂成分と低融点樹脂成分からなるサイドバイサイドあるいは芯鞘の構造を有する複合繊維であり、かつ前記低融点樹脂成分の融点が100℃〜180℃である請求項6に記載の不織布。
  8. 前記生分解性繊維は、綿、ウールまたはレーヨンである請求項3〜7のいずれかに記載の不織布。
  9. 前記不織布は、法面保護用不織布である請求項1〜8のいずれかに記載の不織布。

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