JP2004296140A - 透明導電性薄膜積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来よりも耐環境性、具体的には塩化物イオンなどへの耐久性に優れた銀系薄膜層を有する透明導電性薄膜積層体を提供する。
【解決手段】好ましくは透明基体(10)、透明高屈折率薄膜層(20)及びインジウムとスズを含有する銀合金薄膜層(30)から透明導電性薄膜積層体を形成する。
【効果】本発明の透明導電性薄膜積層体は、塩化物イオンが存在する環境下において、銀薄膜層で銀原子の凝集を生じにくい。そのため、透明電極や電磁波遮断フィルター部材として用いた場合に銀凝集による点状欠陥が生じない利点を有する。
【選択図】図1
【解決手段】好ましくは透明基体(10)、透明高屈折率薄膜層(20)及びインジウムとスズを含有する銀合金薄膜層(30)から透明導電性薄膜積層体を形成する。
【効果】本発明の透明導電性薄膜積層体は、塩化物イオンが存在する環境下において、銀薄膜層で銀原子の凝集を生じにくい。そのため、透明電極や電磁波遮断フィルター部材として用いた場合に銀凝集による点状欠陥が生じない利点を有する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れた透明導電性薄膜積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明導電性薄膜は、透明であるにもかかわらず導電性を有する薄膜であり、その代表例は、インジウムとスズとの酸化物(ITO)からなる薄膜である。その用途は幅広い。主な用途は、表示パネルの透明電極用や電磁波遮断用である。
【0003】
表示パネルの透明電極用途としては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等に現在、広く用いられている。
【0004】
最近、表示パネルの大型化及び小型携帯化ニーズが非常に高まっている。これを実現するためには、表示素子の低消費電力化が必要である。この目的のためには、可視光線透過率を維持しつつ、抵抗値が低い透明導電性薄膜の開発が有効である。特に最近開発されつつある、有機エレクトロルミネッセンス素子に関しては、自発光タイプであり、小型携帯端末向けに主に開発されたいるため、透明導電性薄膜の低抵抗化への期待は大きい。また、現在、市場に広まりつつあるプラズマディスプレイパネル(PDP)や次世代のディスプレイとして開発されつつあるフィールドエミッションディスプレイ(FED)に関しても、それらが高消費電力な構造であるため、低抵抗透明導電性薄膜開発に対する期待は大きい。
【0005】
電磁波遮断は、重要な課題である。電磁波は、計器に障害を及ぼすことが知られており、最近では、電磁波が人体にも障害を及ぼす可能性もあるとの報告もされている。このため、電磁波放出に関しては、法的に規制される方向になっている。例えば、現在日本では、VCCI(Voluntaly Control Council for Interference by data processing equipment electronic office machine)による規制があり、米国では、FCC(Federal Communication Commission)による製品規制がある。
【0006】
電磁波遮断用途としては、テレビやコンピューター用CRTモニター向けの電磁波遮断フィルターとして広く用いられている。
【0007】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、その発光原理上強度の電磁波を表示部分から外部に放出する。強度の電磁波を遮断するためには、低抵抗であり透明な電磁波遮断フィルターが必要である。
【0008】
低抵抗透明導電性薄膜の開発にあたっては、金属薄膜層、特に純物質中で最も比抵抗が小さい銀を用いた金属薄膜層の利用が有効である。さらに透過率上昇及び金属薄膜層の安定性向上の目的で、金属薄膜層を透明高屈折率薄膜層で挟み込み透明導電性薄膜積層体を形成することが非常に効果的である。この透明導電性薄膜積層体は、各薄膜層の材料や膜厚を選ぶことによって、用途に応じて最適な光学特性及び電気特性を持つように設計することができる。
【0009】
金属薄膜層材料としてその比抵抗の低さ故に好適に用いられる銀は、反面原子の凝集を生じやすいという面を持つ。例えば、塩化物イオン存在下において容易に凝集を生じる。銀薄膜中の銀原子が凝集すると銀白色の点を生じ、本来持つ高透明性や、低抵抗性を失ってしまう。銀の凝集を抑制するための手法の1つとして、銀を合金化する方法がある。合金化に用いる金属としては、金、銅、パラジウムが一般的であり、例えば特開平10−24520号公報(特許文献1)などの報告があるが、より高い銀凝集抑制効果を有する合金が求められている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−24520号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明が解決しようとする課題は、塩化物イオンの存在下においても銀を主体とする薄膜層での銀原子の凝集が従来に比べて起こり難く、透明性や導電性の低下の少ない透明導電性薄膜積層体を提供することにある。また、点状欠陥の少ない透明電極や電磁波遮断フィルターを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属薄膜層(b)として、インジウムとスズを含有する銀合金からなる薄膜層を採用することにより、透明導電性薄膜積層体を透明電極や電磁波遮断フィルター部材として用いた場合に銀凝集による点状欠陥の発生を従来に比較して大幅に抑制することができることを見いだし、本発明に至った。
本発明は、以下の事項によって特定される。
(1) 金属薄膜層を有する透明導電性薄膜積層体であって、該金属薄膜層が、インジウム及びスズを含有する銀合金で形成される事を特徴とする透明導電性薄膜積層体であり、
(2)請求項1に記載の透明導電性薄膜積層体を用いたPDP用光学フィルターであり、
(3)請求項1に記載の透明導電性薄膜積層体を用いた透明電極
である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における透明導電性薄膜積層体は、銀とインジウムとスズが含まれている金属薄膜層を含有していることを特徴とするものである。上記の透明導電性薄膜積層体は、従来の銀や銀合金からなる薄膜層を有する透明導電性薄膜積層体に比べて、塩化物イオンに対する凝集耐性が高く、これを透明電極や電磁波遮断フィルター部材として用いた場合には、銀(合金)凝集による点状欠陥の発生を大幅に抑制することができる。
【0014】
本発明における透明導電性薄膜積層体は、インジウムおよびスズを含有する銀合金の薄膜層を有するものであるが、透明高屈折率薄膜層(a)とインジウムおよびスズを含有する銀合金薄膜層(b)との積層体であってもよい。PDPやFEDなどの光学フィルターとして使用する際に求められるような高い導電性と高い透明性を併せ持つ為には、上記の積層体構造を有することが特に好ましい。また、透明基体(A)上に上記の薄膜層を積層させたものは、種々の用途に用いる上で好ましい形態である。このような透明導電性薄膜積層体の構成は、具体的にはA/b/a、A/a/b/a、A/b/a/b/a、A/a/b/a/b/a、A/b/a/b/a/b/a、A/a/b/a/b/a/b/a、A/b/a/b/a/b/a/b/a、A/a/b/a/b/a/b/a/b/a等が挙げられる。特に(a)/(b)積層体はその両最外層が透明高屈折率薄膜層(a)であることが、好ましい。透明高屈折率薄膜層(a)とインジウムおよびスズを含有する銀合金からなる薄膜層(b)の積層数は、多いほど導電性、透明性の観点からは好ましいが、コスト、品質安定性問題から好ましくは15層以下、より好ましくは11層以下、より好ましくは9層以下である。なお各層の間には様々な機能層を含んでいても構わない。想定される機能層としては密着層、ガスバリア層、耐環境性向上のための層などである。
【0015】
本発明に用いられる透明基体(A)としては、主にフィルム状態及び板の状態のものが使用され、透明性に優れ、用途に応じた十分な機械的強度を持つものであることが好ましい。ここで、透明性に優れるとは、使用される状態での厚さにおいて、視感透過率が、40%以上であることを指す。(測定法:JIS R3106)また、透明基体(A)の透明導電層側とは反対の面に、反射防止層や防幻層が形成されていても構わない。
【0016】
透明基体用フィルムとしては、高分子フィルムが好適に用いられる。具体的に例示すると、ポリイミド、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレート(PET)及びトリアセチルセルロース(TAC)は、特に好適に用いられる。
【0017】
透明基体用フィルムの厚さに特に制限はない。通常は、20〜500μm程度である。
【0018】
板状の透明基体としては、高分子成形体及びガラス等が挙げられる。透明高分子成形体は、ガラスに比較して、軽い、割れにくい等の理由でより好適に用いられる。好ましい材料を例示すれば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を始めとするアクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等が挙げられるが、これらの樹脂に特定されるわけではない。中でもPMMAは、その広い波長領域での高透明性と機械的強度の高さから好適に使用することができる。また、透明高分子成形体には、表面の硬度または密着性を増す等の理由でハードコート層が設けられることが多い。
【0019】
ガラスは、熱及び湿気による形状変化が少ないため、微妙な精度を必要とする光学用途に対して好適に用いられる。機械的強度を持たせるために、化学強化加工または風冷強化加工を行い、半強化ガラスまたは強化ガラスにして通常用いられる。
【0020】
板状透明基体の厚さに特に制限はなく、十分な機械的強度と、平面性を維持する剛性が得られれば良い。通常は、0.5〜10mm程度である。
【0021】
透明高屈折率薄膜層(a)に用いられる材料としては、できるだけ透明性に優れたものであることが好ましい。ここで透明性に優れるとは、膜厚100nm程度の薄膜を形成したときに、その薄膜の視感透過率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であることを指す。(測定法:JIS R3106)また、高屈折率材料とは、550nmの光に対する屈折率が、1.4以上、好ましくは1.8以上の材料である。これらには、用途に応じて不純物を混入させても良い。
【0022】
透明高屈折率薄膜層用に好適に用いることができる材料例示すると、インジウムとスズとの酸化物(ITO)、カドミウムとスズとの酸化物(CTO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO2)、亜鉛とアルミニウムとの酸化物(AZO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化トリウム(ThO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化ランタン(LaO2)、酸化シリコン(SiO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化ニオブ(Nb2O3)、酸化アンチモン(Sb2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セシウム(CeO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ビスマス(BiO2)等である。
【0023】
また、透明高屈折率硫化物を用いても良い。具体的に例示すると、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)、硫化アンチモン(Sb2S3)等があげられる。
【0024】
透明高屈折率薄膜材料としては、中でも、ITO、TiO2、AZOが特に好ましい。ITO及びAZOは、導電性を持つ上に、可視領域における屈折率が、2.0程度と高く、さらに可視領域にほとんど吸収を持たない。TiO2は、絶縁物であり、可視領域にわずかな吸収を持つが、可視光に対する屈折率が2.3程度と大きい。
【0025】
透明高屈折率薄膜層の厚さに関しては、透明導電性薄膜層全体の透過性及び電気伝導性を考慮して決定される。通常は、0.5〜100nm程度である。
【0026】
用いるITO中に含まれる用いるITO中に含まれるスズの割合に特に制限はない。通常は、0〜50質量%である。また、用いるAZO中に含まれるアルミニウムの割合にも特に制限はない。ただし、アルミニウムの含有割合が高すぎるとAZO膜の透過率、特に波長300〜500(nm)の光に対する透過率が低下するため、あまり好ましくない。このため、AZO中に含まれるアルミニウムの割合は通常1〜5(質量%)程度である。
【0027】
透明電極としての利用する場合は、透明高屈折率薄膜層はITOであることが好ましい。ITO膜は導電性を有する膜とすることができるため、外部との接触抵抗が低い透明電極を作製する点で好ましい。
【0028】
本発明に用いられる銀合金薄膜層(b)に用いられる材料は銀とインジウムとスズとの合金である。銀とインジウムとスズとの合金に関して、インジウムとスズの含有割合が大きければ大きいほど透明導電性薄膜積層体の耐久性は高くなるが、透過率は低下し、また面抵抗は上昇する。用途に応じて必要な透過率及び面抵抗を考慮した上でインジウムとスズの含有割合を決定する必要がある。
【0029】
本発明におけるインジウムの含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限の好ましい範囲は15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。また、スズの含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限の好ましい範囲は10質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは、0.8質量%以下である。また、インジウムとスズとの合計が、20質量%以下であることが好ましい。
【0030】
銀合金薄膜層(b)の厚さに関しては、厚ければ厚いほど透明導電性薄膜積層体の耐久性は高くなるが透過率が低下する。用途に応じて必要な透過率及び面抵抗を考慮した上で金属薄膜層(b)の厚さを決定する必要がある。
【0031】
金属薄膜層(b)の一層当たりの厚さは通常5nm以上、20nm以下である。より好ましくは7nm以上15nm以下、さらに好ましくは9nm以上、12nm以下である。
【0032】
(金属薄膜層の説明)
透明高屈折率薄膜層、金属薄膜層の形成には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の従来公知の手法によればよい。
【0033】
透明高屈折率薄膜層(a)の形成には、イオンプレーディング法または反応性スパッタリング法が好適に用いられる。イオンプレーティング法では、反応ガスプラズマ中で所望の金属または焼結体を抵抗加熱したり、電子ビームにより加熱したりすることにより真空蒸着を行う。反応性スパッタリング法では、ターゲットに所望の金属または焼結体を使用し、スパッタリングガスにアルゴン、ネオン等の不活性ガスを用い、反応に必要なガスを加えて、スパッタリングを行う。例えば、ITO薄膜を形成する場合には、スパッタリングターゲットにインジウムとスズとの酸化物を用いて、酸素ガス中で直流マグネトロンスパッタリングを行う。
【0034】
金属薄膜層(b)の形成には、真空蒸着法またはスパッタリング法が、好適に用いられる。真空蒸着法では、所望の金属を蒸着源として使用し、抵抗加熱、電子ビーム加熱等により、加熱蒸着させることで、簡便に金属薄膜を形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合は、ターゲットに所望の金属材料を用いて、スパッタリングガスにアルゴン、ネオン等の不活性ガスを使用し、直流スパッタリング法や高周波スパッタリング法を用いて金属薄膜を形成することができる。成膜速度を上昇させるために、直流マグネトロンスパッタリング法や高周波マグネトロンスパッタリング法が用いられることも多い。
【0035】
(透明導電性薄膜積層体)
本発明の透明導電性薄膜積層体の例を図1に示した。すなわち、透明基体10上に透明高屈折率薄膜層20、金属薄膜層30、透明高屈折率薄膜層20が順に積層された構造を有しており、後述する実施例1、実施例2の透明導電性薄膜積層体がこの構造を有している。
【0036】
上記の方法により作製した、透明導電性薄膜積層体の薄膜層表面の原子組成は、オージェ電子分光法(AES)、蛍光X線法(XRF)、X線マイクロアナライシス法(XMA)、荷電粒子励起X線分析法(RBS)、X線光電子分光法(XPS)、真空紫外光電子分光法(UPS)、赤外吸収分光法(IR)、ラマン分光法、2次イオン質量分析法(SIMS)、低エネルギーイオン散乱分光法(ISS)等により測定できる。また、膜中の原子組成及び膜厚は、オージェ電子分光法(AES)や2次イオン質量分析(SIMS)を深さ方向に実施することによって調べることができる。
【0037】
透明導電性薄膜積層体の構成及び各層の状態は、断面の光学顕微鏡測定、走査型電子顕微鏡(SEM)測定、透過型電子顕微鏡測定(TEM)を用いて調べることができる。
【0038】
(塩化ナトリウム水溶液浸漬試験)
透明導電性薄膜積層体を各種用途に用いる場合、通常は大気環境と隔離された状態で使用される。しかし、その製造工程においては大気や人体との接触する工程があるので、大気中や人の汗に含まれる塩化物イオンへの耐久性は重要な性能である。塩化物イオンに対する耐久性に関しては、塩化ナトリウム水溶液浸漬試験によって調べることができる。
【0039】
ここで塩化ナトリウム水溶液浸漬試験とは、塩化ナトリウム水溶液に透明導電性薄膜を浸し、塩化物イオンによる透明導電性薄膜の銀合金薄膜層の銀凝集状態を調べる試験である。塩化ナトリウム水溶液に対する透明導電性薄膜の浸し方に特に制限はない。通常は、塩化ナトリウム水溶液を入れた容器内に、透明基体ごと沈めることが行われる。
【0040】
試験に用いられる塩化ナトリウム水溶液の濃度は、透明導電性薄膜積層体の用途に応じて適当な値を選択すればよい。透明導電性薄膜は、大気に長時間さらしておくと薄膜が凝集または化学変化を生じ、劣化する場合が多いので、通常は、大気を遮断した状態で用いられる。そのため、製造段階において、透明導電性薄膜が大気に対してむき出しになる短時間の間に透明導電性薄膜に到達する塩化物イオンの量に匹敵する状態を再現することができる濃度の塩化ナトリウム水溶液を用いて試験を実施すれば、実用に耐え得る能力をもっているかどうか判別することができる。通常は、濃度0.5mol/l、温度20℃水溶液に9時間程度浸すことによって、判別することができる。
【0041】
塩化ナトリウム水溶液浸漬試験による塩化物イオンに対する耐蝕性の定量的判断は、透明導電性薄膜の透過率低下割合を調べることによって行うことができる。指標としては、浸漬後透過率Tの浸漬前透過率T0に対する割合=T/T0を用いればよい。T/T0は1に近い程、銀凝集による点状欠陥発生頻度が小さくなるので好ましい。本発明では、濃度0.5mol/l、温度20℃塩化ナトリウム水溶液に9時間浸漬した場合のT/T0値を採用して、対塩化物イオン耐久性を評価する。一般的には、T/T0は0.8以上であることが好ましく、より好ましくは、0.9以上であることが望まれる。
【0042】
銀凝集による点状欠陥に起因する製品不良発生頻度は、透明導電性薄膜積層体の透明基体側の粘着材を介して、透明ガラス基板に貼り合わせ、さらに透明導電性薄膜積層体の透明基体と反対側にPETフィルムを、粘着材を介して貼り合わせたものを高温高湿処理し、そのとき生じる銀凝集による点状欠陥発生頻度により調べることができる。
【0043】
(透明電極として利用)
本発明における透明導電性薄膜積層体の光学特性及び電気特性は一定の制約条件下に所望の特性を選択する。光学特性に関しては、発光素子の透明電極として本発明における透明導電性薄膜積層体を用いる場合、高い視感平均透過率を有することが好ましい。好ましい視感平均透過率は50%以上であり、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。また電気特性に関しては低い面抵抗を有していることが好ましい。好ましい面抵抗は0.1Ω/□以上、15Ω/□以下、より好ましくは0.1Ω/□以上、9Ω/□以下、さらに好ましくは0.1Ω/□以上、7Ω/□以下である。
【0044】
(PDP用光学フィルターとして利用)
本発明の透明導電性薄膜積層体は、PDPフィルターに適用することが出来る。また、PDPフィルターへの適用方法は公知のあらゆる方法、たとえば色素層を用いた調色層、反射防止層、防眩層等の機能を有する層等と組み合わせて用いる方法などを採用することが出来る。
【0045】
本発明における実施例では透明導電性薄膜積層体を3層で評価を行った。しかし、実際のPDP用光学フィルターでは、5層、7層、9層として用いるため、条件を最適化することで、高い視感平均透過率と低い面抵抗を有することができる。7層での好ましい視感平均透過率は50%以上であり、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。また7層での好ましい面抵抗は0.2Ω/□以上、10Ω/□以下、より好ましくは0.2Ω/□以上、3Ω/□以下、さらに好ましくは0.2Ω/□以上、0.5Ω/□以下である。
【0046】
本発明の透明導電薄膜積層体は、これらの他にもFED用光学フィルター、液晶表示装置用フィルター、熱性遮断用の合わせ硝子等、従来の銀系透明導電膜が使用される用途に好適に用いることが出来る。
【0047】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
(透明導電性薄膜積層体の作製)
透明基体(A)としてポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム[厚さ75μm]を用いた。透明基体(A)に粘着材を介してPETフィルムを貼り合わせた上に、直流マグネトロンスパッタリング法を用いて後述する条件で成膜した。
成膜は、以下の条件で実施した。
直流マグネトロンスパッタリング法を用いて、透明基体(A)上に、インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層(a)、銀とインジウムとスズの合金薄膜層(b)をA/a[厚さ40nm]/b[厚さ10nm]/a[厚さ40nm]なる順に積層し、透明導電性薄膜を形成した。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層は、透明高屈折率薄膜層を、銀とインジウムとスズの合金薄膜層は、金属薄膜層を構成する。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層の形成には、ターゲットとして、酸化インジウムー酸化スズ焼結体[In2O3:SnO2=90:10(質量比)]、スパッタリングガスとしてアルゴン・酸素混合ガス(全圧266mPa、酸素分圧8mPa)を用いた。また、銀とインジウムとスズの合金薄膜層の形成には、ターゲットとして銀とインジウムとスズの合金[Ag:In:Sn=99.6:0.2:0.2(質量比)]を用い、スパッタガスにはアルゴンガス(全圧186mPa)を用いた。形成した透明導電性薄膜の断面図を図1に示した。
【0048】
本実施例では、上記により作製した透明導電性薄膜積層体の視感透過率[日立製作製分光光度計U−3400を用い、全光線透過率を測定し、視感透過率を求めた。]と面抵抗[共和理研製4端針表面抵抗測定装置を用いて測定した。]を測定した。合否判定は、視感平均透過率で80%以上、面抵抗で15Ω/□以下とし、この範囲内の場合は合格、範囲外の場合は不合格とした。
【0049】
また塩化ナトリウム水溶液浸漬試験では、T/T0を濃度0.5mol/l、温度20℃の塩化ナトリウム水溶液に9時間浸漬した場合の値とした。合否判定は、T/T0が0.8以上とし、これ以下のものは不合格とした。
【0050】
上記の合否判定において全ての試験で合格したものを総合評価での合格とし、1つでも不合格となれば総合評価で不合格とした。
(実施例2)
銀とインジウムとスズからなる合金薄膜層(b)の形成にターゲットとして銀とインジウムとスズの合金[Ag:In:Sn=98:1.2:0.8(質量比)]を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0051】
(比較例1)
銀とインジウムとスズからなる合金薄膜層(b)の代わりに、ターゲットとして銀を用いて銀薄膜層を形成した以外は、実施例1と同様に実施した。
以上の結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
表1から分かるように実施例1において、銀単体の場合(比較例1)と比較して、大幅な視感平均透過率の低下及び面抵抗の上昇を引き起こすこと無しに、塩化物イオンに対する耐久性が向上している。
【0053】
また、実施例2において、銀単体の場合(比較例1)と比較して、面抵抗の上昇は見られるが合格範囲内の値であり、大幅な視感平均透過率の上昇を引き起こすことなく、塩化物イオンに対する耐久性が向上している。
【0054】
【発明の効果】
本発明は透明導電性薄膜積層体の性能として、塩化物イオンに対する耐食性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】透明導電性薄膜積層体の一例を示す断面図。
【符号の説明】
10 透明基体(A)
20 透明高屈折率薄膜層(a)
30 金属薄膜層(b)
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れた透明導電性薄膜積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明導電性薄膜は、透明であるにもかかわらず導電性を有する薄膜であり、その代表例は、インジウムとスズとの酸化物(ITO)からなる薄膜である。その用途は幅広い。主な用途は、表示パネルの透明電極用や電磁波遮断用である。
【0003】
表示パネルの透明電極用途としては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等に現在、広く用いられている。
【0004】
最近、表示パネルの大型化及び小型携帯化ニーズが非常に高まっている。これを実現するためには、表示素子の低消費電力化が必要である。この目的のためには、可視光線透過率を維持しつつ、抵抗値が低い透明導電性薄膜の開発が有効である。特に最近開発されつつある、有機エレクトロルミネッセンス素子に関しては、自発光タイプであり、小型携帯端末向けに主に開発されたいるため、透明導電性薄膜の低抵抗化への期待は大きい。また、現在、市場に広まりつつあるプラズマディスプレイパネル(PDP)や次世代のディスプレイとして開発されつつあるフィールドエミッションディスプレイ(FED)に関しても、それらが高消費電力な構造であるため、低抵抗透明導電性薄膜開発に対する期待は大きい。
【0005】
電磁波遮断は、重要な課題である。電磁波は、計器に障害を及ぼすことが知られており、最近では、電磁波が人体にも障害を及ぼす可能性もあるとの報告もされている。このため、電磁波放出に関しては、法的に規制される方向になっている。例えば、現在日本では、VCCI(Voluntaly Control Council for Interference by data processing equipment electronic office machine)による規制があり、米国では、FCC(Federal Communication Commission)による製品規制がある。
【0006】
電磁波遮断用途としては、テレビやコンピューター用CRTモニター向けの電磁波遮断フィルターとして広く用いられている。
【0007】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、その発光原理上強度の電磁波を表示部分から外部に放出する。強度の電磁波を遮断するためには、低抵抗であり透明な電磁波遮断フィルターが必要である。
【0008】
低抵抗透明導電性薄膜の開発にあたっては、金属薄膜層、特に純物質中で最も比抵抗が小さい銀を用いた金属薄膜層の利用が有効である。さらに透過率上昇及び金属薄膜層の安定性向上の目的で、金属薄膜層を透明高屈折率薄膜層で挟み込み透明導電性薄膜積層体を形成することが非常に効果的である。この透明導電性薄膜積層体は、各薄膜層の材料や膜厚を選ぶことによって、用途に応じて最適な光学特性及び電気特性を持つように設計することができる。
【0009】
金属薄膜層材料としてその比抵抗の低さ故に好適に用いられる銀は、反面原子の凝集を生じやすいという面を持つ。例えば、塩化物イオン存在下において容易に凝集を生じる。銀薄膜中の銀原子が凝集すると銀白色の点を生じ、本来持つ高透明性や、低抵抗性を失ってしまう。銀の凝集を抑制するための手法の1つとして、銀を合金化する方法がある。合金化に用いる金属としては、金、銅、パラジウムが一般的であり、例えば特開平10−24520号公報(特許文献1)などの報告があるが、より高い銀凝集抑制効果を有する合金が求められている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−24520号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明が解決しようとする課題は、塩化物イオンの存在下においても銀を主体とする薄膜層での銀原子の凝集が従来に比べて起こり難く、透明性や導電性の低下の少ない透明導電性薄膜積層体を提供することにある。また、点状欠陥の少ない透明電極や電磁波遮断フィルターを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属薄膜層(b)として、インジウムとスズを含有する銀合金からなる薄膜層を採用することにより、透明導電性薄膜積層体を透明電極や電磁波遮断フィルター部材として用いた場合に銀凝集による点状欠陥の発生を従来に比較して大幅に抑制することができることを見いだし、本発明に至った。
本発明は、以下の事項によって特定される。
(1) 金属薄膜層を有する透明導電性薄膜積層体であって、該金属薄膜層が、インジウム及びスズを含有する銀合金で形成される事を特徴とする透明導電性薄膜積層体であり、
(2)請求項1に記載の透明導電性薄膜積層体を用いたPDP用光学フィルターであり、
(3)請求項1に記載の透明導電性薄膜積層体を用いた透明電極
である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における透明導電性薄膜積層体は、銀とインジウムとスズが含まれている金属薄膜層を含有していることを特徴とするものである。上記の透明導電性薄膜積層体は、従来の銀や銀合金からなる薄膜層を有する透明導電性薄膜積層体に比べて、塩化物イオンに対する凝集耐性が高く、これを透明電極や電磁波遮断フィルター部材として用いた場合には、銀(合金)凝集による点状欠陥の発生を大幅に抑制することができる。
【0014】
本発明における透明導電性薄膜積層体は、インジウムおよびスズを含有する銀合金の薄膜層を有するものであるが、透明高屈折率薄膜層(a)とインジウムおよびスズを含有する銀合金薄膜層(b)との積層体であってもよい。PDPやFEDなどの光学フィルターとして使用する際に求められるような高い導電性と高い透明性を併せ持つ為には、上記の積層体構造を有することが特に好ましい。また、透明基体(A)上に上記の薄膜層を積層させたものは、種々の用途に用いる上で好ましい形態である。このような透明導電性薄膜積層体の構成は、具体的にはA/b/a、A/a/b/a、A/b/a/b/a、A/a/b/a/b/a、A/b/a/b/a/b/a、A/a/b/a/b/a/b/a、A/b/a/b/a/b/a/b/a、A/a/b/a/b/a/b/a/b/a等が挙げられる。特に(a)/(b)積層体はその両最外層が透明高屈折率薄膜層(a)であることが、好ましい。透明高屈折率薄膜層(a)とインジウムおよびスズを含有する銀合金からなる薄膜層(b)の積層数は、多いほど導電性、透明性の観点からは好ましいが、コスト、品質安定性問題から好ましくは15層以下、より好ましくは11層以下、より好ましくは9層以下である。なお各層の間には様々な機能層を含んでいても構わない。想定される機能層としては密着層、ガスバリア層、耐環境性向上のための層などである。
【0015】
本発明に用いられる透明基体(A)としては、主にフィルム状態及び板の状態のものが使用され、透明性に優れ、用途に応じた十分な機械的強度を持つものであることが好ましい。ここで、透明性に優れるとは、使用される状態での厚さにおいて、視感透過率が、40%以上であることを指す。(測定法:JIS R3106)また、透明基体(A)の透明導電層側とは反対の面に、反射防止層や防幻層が形成されていても構わない。
【0016】
透明基体用フィルムとしては、高分子フィルムが好適に用いられる。具体的に例示すると、ポリイミド、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレート(PET)及びトリアセチルセルロース(TAC)は、特に好適に用いられる。
【0017】
透明基体用フィルムの厚さに特に制限はない。通常は、20〜500μm程度である。
【0018】
板状の透明基体としては、高分子成形体及びガラス等が挙げられる。透明高分子成形体は、ガラスに比較して、軽い、割れにくい等の理由でより好適に用いられる。好ましい材料を例示すれば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を始めとするアクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等が挙げられるが、これらの樹脂に特定されるわけではない。中でもPMMAは、その広い波長領域での高透明性と機械的強度の高さから好適に使用することができる。また、透明高分子成形体には、表面の硬度または密着性を増す等の理由でハードコート層が設けられることが多い。
【0019】
ガラスは、熱及び湿気による形状変化が少ないため、微妙な精度を必要とする光学用途に対して好適に用いられる。機械的強度を持たせるために、化学強化加工または風冷強化加工を行い、半強化ガラスまたは強化ガラスにして通常用いられる。
【0020】
板状透明基体の厚さに特に制限はなく、十分な機械的強度と、平面性を維持する剛性が得られれば良い。通常は、0.5〜10mm程度である。
【0021】
透明高屈折率薄膜層(a)に用いられる材料としては、できるだけ透明性に優れたものであることが好ましい。ここで透明性に優れるとは、膜厚100nm程度の薄膜を形成したときに、その薄膜の視感透過率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であることを指す。(測定法:JIS R3106)また、高屈折率材料とは、550nmの光に対する屈折率が、1.4以上、好ましくは1.8以上の材料である。これらには、用途に応じて不純物を混入させても良い。
【0022】
透明高屈折率薄膜層用に好適に用いることができる材料例示すると、インジウムとスズとの酸化物(ITO)、カドミウムとスズとの酸化物(CTO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO2)、亜鉛とアルミニウムとの酸化物(AZO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化トリウム(ThO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化ランタン(LaO2)、酸化シリコン(SiO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化ニオブ(Nb2O3)、酸化アンチモン(Sb2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セシウム(CeO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ビスマス(BiO2)等である。
【0023】
また、透明高屈折率硫化物を用いても良い。具体的に例示すると、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)、硫化アンチモン(Sb2S3)等があげられる。
【0024】
透明高屈折率薄膜材料としては、中でも、ITO、TiO2、AZOが特に好ましい。ITO及びAZOは、導電性を持つ上に、可視領域における屈折率が、2.0程度と高く、さらに可視領域にほとんど吸収を持たない。TiO2は、絶縁物であり、可視領域にわずかな吸収を持つが、可視光に対する屈折率が2.3程度と大きい。
【0025】
透明高屈折率薄膜層の厚さに関しては、透明導電性薄膜層全体の透過性及び電気伝導性を考慮して決定される。通常は、0.5〜100nm程度である。
【0026】
用いるITO中に含まれる用いるITO中に含まれるスズの割合に特に制限はない。通常は、0〜50質量%である。また、用いるAZO中に含まれるアルミニウムの割合にも特に制限はない。ただし、アルミニウムの含有割合が高すぎるとAZO膜の透過率、特に波長300〜500(nm)の光に対する透過率が低下するため、あまり好ましくない。このため、AZO中に含まれるアルミニウムの割合は通常1〜5(質量%)程度である。
【0027】
透明電極としての利用する場合は、透明高屈折率薄膜層はITOであることが好ましい。ITO膜は導電性を有する膜とすることができるため、外部との接触抵抗が低い透明電極を作製する点で好ましい。
【0028】
本発明に用いられる銀合金薄膜層(b)に用いられる材料は銀とインジウムとスズとの合金である。銀とインジウムとスズとの合金に関して、インジウムとスズの含有割合が大きければ大きいほど透明導電性薄膜積層体の耐久性は高くなるが、透過率は低下し、また面抵抗は上昇する。用途に応じて必要な透過率及び面抵抗を考慮した上でインジウムとスズの含有割合を決定する必要がある。
【0029】
本発明におけるインジウムの含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限の好ましい範囲は15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。また、スズの含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限の好ましい範囲は10質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは、0.8質量%以下である。また、インジウムとスズとの合計が、20質量%以下であることが好ましい。
【0030】
銀合金薄膜層(b)の厚さに関しては、厚ければ厚いほど透明導電性薄膜積層体の耐久性は高くなるが透過率が低下する。用途に応じて必要な透過率及び面抵抗を考慮した上で金属薄膜層(b)の厚さを決定する必要がある。
【0031】
金属薄膜層(b)の一層当たりの厚さは通常5nm以上、20nm以下である。より好ましくは7nm以上15nm以下、さらに好ましくは9nm以上、12nm以下である。
【0032】
(金属薄膜層の説明)
透明高屈折率薄膜層、金属薄膜層の形成には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の従来公知の手法によればよい。
【0033】
透明高屈折率薄膜層(a)の形成には、イオンプレーディング法または反応性スパッタリング法が好適に用いられる。イオンプレーティング法では、反応ガスプラズマ中で所望の金属または焼結体を抵抗加熱したり、電子ビームにより加熱したりすることにより真空蒸着を行う。反応性スパッタリング法では、ターゲットに所望の金属または焼結体を使用し、スパッタリングガスにアルゴン、ネオン等の不活性ガスを用い、反応に必要なガスを加えて、スパッタリングを行う。例えば、ITO薄膜を形成する場合には、スパッタリングターゲットにインジウムとスズとの酸化物を用いて、酸素ガス中で直流マグネトロンスパッタリングを行う。
【0034】
金属薄膜層(b)の形成には、真空蒸着法またはスパッタリング法が、好適に用いられる。真空蒸着法では、所望の金属を蒸着源として使用し、抵抗加熱、電子ビーム加熱等により、加熱蒸着させることで、簡便に金属薄膜を形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合は、ターゲットに所望の金属材料を用いて、スパッタリングガスにアルゴン、ネオン等の不活性ガスを使用し、直流スパッタリング法や高周波スパッタリング法を用いて金属薄膜を形成することができる。成膜速度を上昇させるために、直流マグネトロンスパッタリング法や高周波マグネトロンスパッタリング法が用いられることも多い。
【0035】
(透明導電性薄膜積層体)
本発明の透明導電性薄膜積層体の例を図1に示した。すなわち、透明基体10上に透明高屈折率薄膜層20、金属薄膜層30、透明高屈折率薄膜層20が順に積層された構造を有しており、後述する実施例1、実施例2の透明導電性薄膜積層体がこの構造を有している。
【0036】
上記の方法により作製した、透明導電性薄膜積層体の薄膜層表面の原子組成は、オージェ電子分光法(AES)、蛍光X線法(XRF)、X線マイクロアナライシス法(XMA)、荷電粒子励起X線分析法(RBS)、X線光電子分光法(XPS)、真空紫外光電子分光法(UPS)、赤外吸収分光法(IR)、ラマン分光法、2次イオン質量分析法(SIMS)、低エネルギーイオン散乱分光法(ISS)等により測定できる。また、膜中の原子組成及び膜厚は、オージェ電子分光法(AES)や2次イオン質量分析(SIMS)を深さ方向に実施することによって調べることができる。
【0037】
透明導電性薄膜積層体の構成及び各層の状態は、断面の光学顕微鏡測定、走査型電子顕微鏡(SEM)測定、透過型電子顕微鏡測定(TEM)を用いて調べることができる。
【0038】
(塩化ナトリウム水溶液浸漬試験)
透明導電性薄膜積層体を各種用途に用いる場合、通常は大気環境と隔離された状態で使用される。しかし、その製造工程においては大気や人体との接触する工程があるので、大気中や人の汗に含まれる塩化物イオンへの耐久性は重要な性能である。塩化物イオンに対する耐久性に関しては、塩化ナトリウム水溶液浸漬試験によって調べることができる。
【0039】
ここで塩化ナトリウム水溶液浸漬試験とは、塩化ナトリウム水溶液に透明導電性薄膜を浸し、塩化物イオンによる透明導電性薄膜の銀合金薄膜層の銀凝集状態を調べる試験である。塩化ナトリウム水溶液に対する透明導電性薄膜の浸し方に特に制限はない。通常は、塩化ナトリウム水溶液を入れた容器内に、透明基体ごと沈めることが行われる。
【0040】
試験に用いられる塩化ナトリウム水溶液の濃度は、透明導電性薄膜積層体の用途に応じて適当な値を選択すればよい。透明導電性薄膜は、大気に長時間さらしておくと薄膜が凝集または化学変化を生じ、劣化する場合が多いので、通常は、大気を遮断した状態で用いられる。そのため、製造段階において、透明導電性薄膜が大気に対してむき出しになる短時間の間に透明導電性薄膜に到達する塩化物イオンの量に匹敵する状態を再現することができる濃度の塩化ナトリウム水溶液を用いて試験を実施すれば、実用に耐え得る能力をもっているかどうか判別することができる。通常は、濃度0.5mol/l、温度20℃水溶液に9時間程度浸すことによって、判別することができる。
【0041】
塩化ナトリウム水溶液浸漬試験による塩化物イオンに対する耐蝕性の定量的判断は、透明導電性薄膜の透過率低下割合を調べることによって行うことができる。指標としては、浸漬後透過率Tの浸漬前透過率T0に対する割合=T/T0を用いればよい。T/T0は1に近い程、銀凝集による点状欠陥発生頻度が小さくなるので好ましい。本発明では、濃度0.5mol/l、温度20℃塩化ナトリウム水溶液に9時間浸漬した場合のT/T0値を採用して、対塩化物イオン耐久性を評価する。一般的には、T/T0は0.8以上であることが好ましく、より好ましくは、0.9以上であることが望まれる。
【0042】
銀凝集による点状欠陥に起因する製品不良発生頻度は、透明導電性薄膜積層体の透明基体側の粘着材を介して、透明ガラス基板に貼り合わせ、さらに透明導電性薄膜積層体の透明基体と反対側にPETフィルムを、粘着材を介して貼り合わせたものを高温高湿処理し、そのとき生じる銀凝集による点状欠陥発生頻度により調べることができる。
【0043】
(透明電極として利用)
本発明における透明導電性薄膜積層体の光学特性及び電気特性は一定の制約条件下に所望の特性を選択する。光学特性に関しては、発光素子の透明電極として本発明における透明導電性薄膜積層体を用いる場合、高い視感平均透過率を有することが好ましい。好ましい視感平均透過率は50%以上であり、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。また電気特性に関しては低い面抵抗を有していることが好ましい。好ましい面抵抗は0.1Ω/□以上、15Ω/□以下、より好ましくは0.1Ω/□以上、9Ω/□以下、さらに好ましくは0.1Ω/□以上、7Ω/□以下である。
【0044】
(PDP用光学フィルターとして利用)
本発明の透明導電性薄膜積層体は、PDPフィルターに適用することが出来る。また、PDPフィルターへの適用方法は公知のあらゆる方法、たとえば色素層を用いた調色層、反射防止層、防眩層等の機能を有する層等と組み合わせて用いる方法などを採用することが出来る。
【0045】
本発明における実施例では透明導電性薄膜積層体を3層で評価を行った。しかし、実際のPDP用光学フィルターでは、5層、7層、9層として用いるため、条件を最適化することで、高い視感平均透過率と低い面抵抗を有することができる。7層での好ましい視感平均透過率は50%以上であり、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。また7層での好ましい面抵抗は0.2Ω/□以上、10Ω/□以下、より好ましくは0.2Ω/□以上、3Ω/□以下、さらに好ましくは0.2Ω/□以上、0.5Ω/□以下である。
【0046】
本発明の透明導電薄膜積層体は、これらの他にもFED用光学フィルター、液晶表示装置用フィルター、熱性遮断用の合わせ硝子等、従来の銀系透明導電膜が使用される用途に好適に用いることが出来る。
【0047】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
(透明導電性薄膜積層体の作製)
透明基体(A)としてポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム[厚さ75μm]を用いた。透明基体(A)に粘着材を介してPETフィルムを貼り合わせた上に、直流マグネトロンスパッタリング法を用いて後述する条件で成膜した。
成膜は、以下の条件で実施した。
直流マグネトロンスパッタリング法を用いて、透明基体(A)上に、インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層(a)、銀とインジウムとスズの合金薄膜層(b)をA/a[厚さ40nm]/b[厚さ10nm]/a[厚さ40nm]なる順に積層し、透明導電性薄膜を形成した。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層は、透明高屈折率薄膜層を、銀とインジウムとスズの合金薄膜層は、金属薄膜層を構成する。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層の形成には、ターゲットとして、酸化インジウムー酸化スズ焼結体[In2O3:SnO2=90:10(質量比)]、スパッタリングガスとしてアルゴン・酸素混合ガス(全圧266mPa、酸素分圧8mPa)を用いた。また、銀とインジウムとスズの合金薄膜層の形成には、ターゲットとして銀とインジウムとスズの合金[Ag:In:Sn=99.6:0.2:0.2(質量比)]を用い、スパッタガスにはアルゴンガス(全圧186mPa)を用いた。形成した透明導電性薄膜の断面図を図1に示した。
【0048】
本実施例では、上記により作製した透明導電性薄膜積層体の視感透過率[日立製作製分光光度計U−3400を用い、全光線透過率を測定し、視感透過率を求めた。]と面抵抗[共和理研製4端針表面抵抗測定装置を用いて測定した。]を測定した。合否判定は、視感平均透過率で80%以上、面抵抗で15Ω/□以下とし、この範囲内の場合は合格、範囲外の場合は不合格とした。
【0049】
また塩化ナトリウム水溶液浸漬試験では、T/T0を濃度0.5mol/l、温度20℃の塩化ナトリウム水溶液に9時間浸漬した場合の値とした。合否判定は、T/T0が0.8以上とし、これ以下のものは不合格とした。
【0050】
上記の合否判定において全ての試験で合格したものを総合評価での合格とし、1つでも不合格となれば総合評価で不合格とした。
(実施例2)
銀とインジウムとスズからなる合金薄膜層(b)の形成にターゲットとして銀とインジウムとスズの合金[Ag:In:Sn=98:1.2:0.8(質量比)]を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0051】
(比較例1)
銀とインジウムとスズからなる合金薄膜層(b)の代わりに、ターゲットとして銀を用いて銀薄膜層を形成した以外は、実施例1と同様に実施した。
以上の結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
表1から分かるように実施例1において、銀単体の場合(比較例1)と比較して、大幅な視感平均透過率の低下及び面抵抗の上昇を引き起こすこと無しに、塩化物イオンに対する耐久性が向上している。
【0053】
また、実施例2において、銀単体の場合(比較例1)と比較して、面抵抗の上昇は見られるが合格範囲内の値であり、大幅な視感平均透過率の上昇を引き起こすことなく、塩化物イオンに対する耐久性が向上している。
【0054】
【発明の効果】
本発明は透明導電性薄膜積層体の性能として、塩化物イオンに対する耐食性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】透明導電性薄膜積層体の一例を示す断面図。
【符号の説明】
10 透明基体(A)
20 透明高屈折率薄膜層(a)
30 金属薄膜層(b)
Claims (3)
- 金属薄膜層を有する透明導電性薄膜積層体であって、該金属薄膜層が、インジウム及びスズを含有する銀合金で形成される事を特徴とする透明導電性薄膜積層体。
- 請求項1に記載の透明導電性薄膜積層体を用いたPDP用光学フィルター。
- 請求項1に記載の透明導電性薄膜積層体を用いた透明電極。
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