JP2004203749A - SiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安定的にSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造できる手段を提供すること。
【解決手段】SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)とSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)を金属原子を含有するヒドロシリル化触媒(C)及び酸素(D)の存在下で反応槽内において反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する際に、前記反応槽中の反応液を前記反応槽の上部空間へ導入する。
【選択図】なし
【解決手段】SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)とSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)を金属原子を含有するヒドロシリル化触媒(C)及び酸素(D)の存在下で反応槽内において反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する際に、前記反応槽中の反応液を前記反応槽の上部空間へ導入する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、SiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SiH基を含有する有機系化合物は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物に対する相溶性が一般に良好であるため、SiH基を含有するシリコーン系化合物では対応しきれない種々の物性を有する硬化物を得ることができる。このようなSiH基を含有する有機系化合物の製造法が開示されている(例えば特開昭50−100号公報、特開平3−95266号公報、特開平5−320173号公報、特開平8―143778号公報)。またSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造法が開示されている(例えば特開昭50−100号公報、特開平3−95266号公報、特開平5−320173号公報)。
【0003】
特開昭50−100号公報では、SiH基を含有するイソシアヌル酸系の含窒素有機系化合物の製造法が実施例3に開示されているが、小スケールでの製造例であるとともに、気相部の雰囲気に関しては明細書および実施例中に開示されていない。また該公報の明細書中では、SiH基やSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合等の活性な基が多数存在すると空気中の水分、酸素と反応し、劣化を起こす恐れのあることが開示されている。特開平3−95266号公報では、SiH基を含有する有機系化合物を製造する際に用いることのできるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物として含窒素有機系化合物が例示されているが、気相部の雰囲気に関する開示はない。実施例にはSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造例はなく、またSiH基を含有する含窒素有機系化合物ではない有機系化合物の製造例は全て窒素雰囲気下で行われている。特開平5−320173号公報では、SiH基を含有するイミド系の含窒素有機系化合物の製造法が開示されているが、気相部の雰囲気に関する開示はない。また実施例も小スケールの製造例である。
【0004】
窒素原子を含有する化合物は金属原子に対する配位能力が高いために、金属原子を有するヒドロシリル化触媒を用いてSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する化合物とSiH基を含有する化合物を反応させる際には、窒素原子を含有する化合物の存在がヒドロシリル化触媒の活性を低下させることが良く知られている。
【0005】
この性質を利用して、特定の窒素原子を含有する化合物を少量添加することにより金属原子を有するヒドロシリル化触媒の触媒活性を制御する方法が開示されている(例えば特開平8−143778号公報)。
【0006】
先行文献に、ヒドロシリル化反応の制御を白金触媒に対する酸素の溶液濃度を制御することにより行なう方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。また、酸素雰囲気下でヒドロシリル化を行う方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
本発明者らは反応系中の酸素について詳細な観察をしたところ、反応の経過に伴って反応槽に仕込んだ酸素が消費されて減少すること、及び、酸素が減少するとヒドロシリル化の反応速度が低下することが分かった。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−213972号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平8−269070号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
酸素を反応槽の上部空間に導入した場合、反応液中への酸素の移動は気液界面を通して行われるため、反応槽のスケールアップにより単位液容量あたりの気液界面積が小さくなると酸素の供給速度が低下し、それに伴い反応液中の酸素濃度が低下して反応が進行しなくなることが懸念される。反応速度が低下すると、金属原子を有するヒドロシリル化触媒を多く用いる必要がありコスト高となるし、副反応の進行などにより品質が低下し目的とするSiH基を含有する含窒素有機系化合物が安定的に得られないという問題がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる実情に鑑み鋭意研究した結果、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)とSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)を金属原子を含有するヒドロシリル化触媒(C)及び酸素(D)の存在下で反応槽内において反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する際に、前記反応槽中の反応液を前記反応槽の上部空間へ導入することにより、安定的にSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち本発明は、
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)とSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)を金属原子を含有するヒドロシリル化触媒(C)及び酸素(D)の存在下で反応槽内において反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する方法であって、前記反応槽中の反応液を前記反応槽の上部空間へ導入することを特徴とする、SiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項1)、
反応槽中の反応液を反応槽の上部空間へ導入する手段は、反応液を外部に取り出すための反応槽接液部に設けられた吸引口、並びに、外部に取り出された反応液を反応槽の上部空間へ導入するための送液ポンプ及び液体吐出ノズルからなる請求項1記載の方法。(請求項2)
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)が、下記一般式(1)
【0013】
【化5】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である。)で表されるイソシアヌル酸系化合物、下記一般式(2)
【0014】
【化6】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である。)で表されるシアヌル酸系化合物、下記一般式(3)
【0015】
【化7】
(式中R2は炭素数4〜30の4価の有機基を表し、R3はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよい。)で表されるイミド系化合物、からなる群より選ばれる少なくとも一の成分である、請求項1ないし2のいずれか1項に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項3)
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)が、下記一般式(4)
【0016】
【化8】
(式中R3はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する炭素数1〜50の一価の有機基を表す。)で表されるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基を、1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物である、請求項1ないし2のいずれか1項に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項4)
SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)が、常圧における沸点が200℃以下である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項5)
SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)が、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも一の成分である、請求項5に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項6)、である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の(A)成分であるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物について説明する。
【0019】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物であれば特に制限がなく種々の化合物を用いることができる。
【0020】
入手性の点から好ましいSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物としては、下記一般式(1)
【0021】
【化9】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基である。)で表されるイソシアヌル酸系化合物、下記一般式(2)
【0022】
【化10】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基である。)で表されるシアヌル酸系化合物、下記一般式(3)
【0023】
【化11】
(式中R2は炭素数4〜30の4価の有機基を表し、R3はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよい。)で表されるイミド系化合物などが例示できる。
【0024】
上記一般式(1)および(2)のR1としては、入手性の点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0025】
【化12】
等が挙げられるが、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基である。
【0026】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基は、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基の例としては、ビニル基、アリル基、
【0027】
【化13】
等が挙げられる。
【0028】
反応性の点からSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)は、下記一般式(4)
【0029】
【化14】
(式中R3はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する炭素数1〜50の一価の有機基を表す。)で表されるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基を、1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物が好ましく、これら少なくとも2個のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は異なっていても同一であってもよい。
【0030】
反応性と粘度の点からSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)は、下記一般式(1)
【0031】
【化15】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である。)で表されるイソシアヌル酸系化合物であることがより好ましい。
【0032】
以上のような一般式(1)で表されるイソシアヌル酸系化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0033】
【化16】
等が挙げられ、より好ましい具体例はトリアリルイソシアヌレート、
【0034】
【化17】
である。
【0035】
(A)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0036】
本発明の(B)成分であるSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物について説明する。
【0037】
SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物は、特に制限がなく種々の化合物を用いることができる。
【0038】
好ましいSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物としては、下記一般式(5)
【0039】
【化18】
(但し、式中R4〜R6はそれぞれ同一もしくは異種の置換もしくは非置換のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは2以上の整数、mは0以上の整数で、n+mは3以上の整数である。)
で表される環状ポリオルガノシロキサン、下記一般式(6)
【0040】
【化19】
(但し、式中R7〜R13はそれぞれ同一もしくは異種の置換もしくは非置換のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Xは水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Xが水素原子のときpは0以上の整数、Xが水素原子でないときpは2以上の整数であり、qは0以上の整数である。)
で表される鎖状ポリオルガノシロキサンが例示できる。
【0041】
具体的には、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、末端トリメチルシリル基封止メチル水素シロキサン重合体(Hオイル)、ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン共重合体などが挙げられる。
【0042】
これらのSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物うち、反応後に脱揮回収が困難でないため、常圧における沸点が200℃以下である化合物がより好ましい。具体的には1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン(沸点135℃未満)、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(沸点135℃)、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン(沸点170℃)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(沸点70℃)、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(沸点128℃)、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(沸点170℃)などが挙げられる。
【0043】
中でも入手性と相溶性の点から、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンか好ましく、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが特に好ましい。
(B)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0044】
また30重量%以下の範囲内でトリメチルシラン、トリエチルシランなどのトリアルキルシラン類、ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンなどSiH基を1分子中1個含有する化合物類を(B)成分に添加あるいは(B)成分の副生成物として含有させてもよい。
【0045】
上述した(A)成分中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数と(B)成分中のSiH基のモル数の比は、SiH基が過剰であれば特に限定されないが、1:1.1〜1:100であることが好ましい。SiH基が小過剰であると得られるSiH基を含有する含窒素有機系化合物の粘度が高く、また反応の制御が困難であるため好ましい下限は1:2、より好ましい下限は1:4、さらにより好ましい下限は1:6である。SiH基が大過剰であるとSiH基を含有する含窒素有機系化合物の収量が低下したり、副反応が起こりやすくなるため、好ましい上限は1:50であり、より好ましい上限は1:25、さらにより好ましい上限は1:15である。好ましい範囲は(A)成分の含窒素有機化合物1分子中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数と、(B)成分の化合物1分子中のSiH基の数により異なる。
【0046】
本発明の(C)成分である金属原子を含有するヒドロシリル化触媒について説明する。
【0047】
用いることのできる金属原子を含有するヒドロシリル化触媒としては特に制限されず、白金の単体、アルミナ、シリカ、活性炭等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0048】
また、白金化合物以外の触媒としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4などが挙げられる。
【0049】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0050】
金属原子を含有するヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、十分な反応性と、製造されたSiH基を含有する含窒素有機系化合物の貯蔵安定性の確保の点から、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合1モルに対して10-8モルから10-2が好ましく、より好ましい下限は10-6モルであり、より好ましい添加量の上限は10-3モル、さらに好ましい添加量の上限は10-4モルである。
【0051】
(C)成分である金属原子を含有するヒドロシリル化触媒の添加方法としては、(C)成分と(B)成分を予め混合しておき、ここへ(A)成分を添加してもよく、(C)成分と(A)成分を予め混合しておき、これを(B)成分に添加してもよい。また、(C)成分と(A)成分を同時ではない方法で独立して(B)成分に添加してもよい。
【0052】
本発明の(D)成分である酸素について説明する。
(D)成分である酸素の供給形態としては特に制限されないが、空気、除湿空気、窒素ガスに一定割合の酸素ガスを混合した酸素含有窒素として供給することが好ましい。水分の混入による副反応を抑制するため、除湿空気あるいは酸素含有窒素が好ましい。気相部を爆発雰囲気にならないようにするため、また酸素の過剰供給による副反応抑制のため、不活性ガスに一定割合の酸素ガスを混合した酸素含有不活性ガスがより好ましい。酸素含有窒素中の酸素含有量は0.1体積%から10体積%が好ましく、より好ましい下限は1体積%、さらに好ましい下限は2体積%であり、より好ましい上限は6体積%、さらに好ましい上限は4体積%である。
【0053】
空気又は酸素と混合され反応槽内の気相を構成する不活性ガスとしては特に限定されないが、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、窒素等が好ましい。
【0054】
(D)成分の反応系への供給方法は、空気、除湿空気あるいは酸素含有窒素を、原料あるいは反応液に対するバブリング、反応容器気相部の置換などにより行なうことができる。また両者を併用することも可能である。大気下に開放された反応容器に原料を仕込むことによっても反応系への酸素の供給は可能である。反応系への酸素の供給は1回のみでも良く、複数回行なっても良い。また連続でも良く、断続的でもよい。また加圧により酸素供給量を増加させてもよい。
【0055】
上述の方法で反応系へ酸素を供給することにより酸素の存在した状態でヒドロシリル化反応を行なうことができる。前記(A)成分と前記(B)成分を前記(C)成分の存在下、窒素雰囲気で反応を行ない、ヒドロシリル化の反応速度が低下した場合に、上述の方法で反応系へ酸素を供給することにより反応を継続させ、目的とするSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造することもできる。また上述の方法で予め反応系に酸素を供給しておいた状態で反応を開始し、反応速度が低下した場合あるいは反応速度を低下させないように酸素を供給することによっても目的とするSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造することができる。
【0056】
反応時の操作圧力としては特に限定されないが、大気圧以上の圧力で実施することが好ましい。これは、ヒドロシリル化反応では触媒活性が反応液中の酸素濃度に依存するため、特に爆発組成を考慮して所定の酸素濃度に調整した混合ガスを反応槽に導入する場合、気相の圧力が高いほど、反応液中の酸素濃度を高くすることができるからである。
【0057】
酸素の導入時期としては特に限定されないが、ヒドロシリル化反応の開始直前に反応槽に導入するのが好ましい。
【0058】
本発明においては、前記(A)成分と前記(B)成分を前記(C)成分である金属原子を含有するヒドロシリル化触媒の存在下で反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する際に、酸素(D)の存在した状態で反応を行なうが、前記(A)成分中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合が残存した状態で反応を終了させることが重要である。(C)成分である金属原子を含有するヒドロシリル化触媒の存在下、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合が存在しない状態で酸素が供給され続けると、酸素とSiH基含有化合物が関与した副反応により高分子量体が生成して高粘度化したり、製品の貯蔵安定性を低下させる原因となることがある。従って、本反応により得られるSiH基を含有する含窒素有機系化合物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の反応率は100%未満であることが好ましく、99%以下がより好ましい。本反応により得られるSiH基を含有する含窒素有機系化合物はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物と反応させることにより硬化物を得ることができる。この場合は、SiH基を含有する含窒素有機系化合物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の反応率は80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらにより好ましい。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の反応率が30〜80%のものは加熱することによりそれ自身で硬化可能である。反応液中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の存在量をモニターしながら、酸素供給量を制御することが好ましい。反応液中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の存在量は、1H−NMR、ガスクロマトグラフィー、赤外スペクトルなどによりモニターすることができる。
【0059】
ヒドロシリル化反応は、一般に0〜150℃の温度範囲で行われるが、期待されない副反応が起こらないように制御し易くするために、60〜120℃で行われるのが好ましい。反応温度の調節、反応系の粘度の調節、副反応の抑制など必要に応じて、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの溶剤又はプロセスオイルなどの可塑剤を用いてもよい。ヒドロシリル化反応を実施するための装置としては、特に制限はないが、各種原料及び溶媒の沸点近傍以上の温度で反応を行う場合や、酸素供給のために加圧が必要な場合にはオートクレーブなどの耐圧容器が好ましい。さらに、均一に反応を進行させるために、十分な攪拌能力を持った装置が好ましい。
【0060】
本発明は、以上のようなヒドロシリル化において、反応槽中の反応液を反応槽の上部空間へ導入する手段を用いるものである。
【0061】
ひとつの実施形態としては、反応液を外部に取り出すための反応槽接液部に設けられた吸引口、並びに、外部に取り出された反応液を反応槽の上部空間へ導入するための送液ポンプ及び液体吐出ノズルからなるものである。
【0062】
送液ポンプの形態は特に限定されないが、反応槽内の温度及び圧力に耐え、反応液中の成分により劣化しないものが好ましい。
【0063】
液体吐出ノズルの形態は特に限定されないが、ノズルから吐出した後に形成される液滴の径が小さいほど気液の界面積が大きく反応液中への酸素の導入量が多くなるため、液を分散させる形状のものが好ましい。
【0064】
本発明の製造法により得られたSiH基を含有する含窒素有機系化合物を用いた硬化物は、電子材料、光学材料、封止材、コーティング材などに用いることができる。
【0065】
【実施例】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
(反応率の測定)
島津製GC−14B、カラムTC−1701(30m×0.25mm)を用い、窒素ガス流量40ml/分、200℃2分ホールド後10℃/分の速度で280℃まで昇温した。内部標準の面積と7.6分〜7.8分のピークの面積の和の比を求め、1H−NMRから求めたアリル基反応率との間で検量線を引いた。その検量線を用いて、GC結果より反応率の算出を実施した。
(実施例1)
500Lのグラスライニング製の撹拌機付き耐圧反応槽に、窒素雰囲気下でトルエン153kg、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン130kgを入れ、攪拌しながら反応液温を95℃に加熱し、その後酸素3%の酸素/窒素混合ガスで反応槽気相部を置換した。100LのSUS製撹拌機付き槽にトリアリルイソシアヌレート18kg、トルエン18kg及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)130mlの混合液を入れて撹拌混合したものを、反応槽に定量ポンプを用いて30分かけて一定速度で滴下した。滴下終了後に、反応液温度を105℃に上げ、酸素3%の酸素/窒素混合ガスで0.1MPaまで加圧した。30〜60分おきに反応液のサンプリングを行い、気相部のガスを0.02MPaまで抜いて、0.1MPaまで酸素3%の酸素/窒素混合ガスで加圧した。
【0066】
反応槽下部に液抜き出し口を設置し、また反応槽上部に液の導入口を設置し、その間にポンプを接続して反応液を循環できるようにした。反応経時255分から260分の間、 50L/分の流量で反応液を循環した。サンプリング液のGC測定から算出した反応率の経時を図1に、アリル基に対して1次反応を仮定した場合の各時刻の反応速度係数の経時を図2に記す。
【0067】
液循環を実施した前後の反応経時255分と300分のサンプルより算出した反応速度係数は、反応速度定数が一定である反応率91%以下(420分まで)の反応速度定数の平均値よりも43%大きく、その区間のばらつき範囲(平均値に対し最大20%)を大きく上回っており、液循環による反応速度向上の効果が大きいことが確認できた。
(比較例1)
液循環を実施しないこと以外は実施例1と同一の操作を実施した。サンプリング液のGC測定から算出した反応率の経時を図3に、アリル基に対して1次反応を仮定した場合の各時刻の反応速度係数の経時を図4に記す。
【0068】
反応速度定数が一定である反応率91%以下(420分まで)では反応速度係数は、平均値に対し最大14%のばらつき範囲の中に入っており、ほぼ一定である。
【0069】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、気相部から液相部への酸素供給の不足に起因する反応速度低下を改善することができ、反応時間の短縮による生産性の向上や使用触媒量の低減が達成されるとともに、反応が遅延した際に生じる副反応が少なくなることにより安定的な品質のSiH基を有する含窒素有機系化合物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における反応時間とアリル基反応率の関係を示す。
【図2】実施例1における反応時間と反応速度係数の関係を示す。
【図3】比較例1における反応時間とアリル基反応率の関係を示す。
【図4】比較例1における反応時間と反応速度係数の関係を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、SiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SiH基を含有する有機系化合物は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物に対する相溶性が一般に良好であるため、SiH基を含有するシリコーン系化合物では対応しきれない種々の物性を有する硬化物を得ることができる。このようなSiH基を含有する有機系化合物の製造法が開示されている(例えば特開昭50−100号公報、特開平3−95266号公報、特開平5−320173号公報、特開平8―143778号公報)。またSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造法が開示されている(例えば特開昭50−100号公報、特開平3−95266号公報、特開平5−320173号公報)。
【0003】
特開昭50−100号公報では、SiH基を含有するイソシアヌル酸系の含窒素有機系化合物の製造法が実施例3に開示されているが、小スケールでの製造例であるとともに、気相部の雰囲気に関しては明細書および実施例中に開示されていない。また該公報の明細書中では、SiH基やSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合等の活性な基が多数存在すると空気中の水分、酸素と反応し、劣化を起こす恐れのあることが開示されている。特開平3−95266号公報では、SiH基を含有する有機系化合物を製造する際に用いることのできるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物として含窒素有機系化合物が例示されているが、気相部の雰囲気に関する開示はない。実施例にはSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造例はなく、またSiH基を含有する含窒素有機系化合物ではない有機系化合物の製造例は全て窒素雰囲気下で行われている。特開平5−320173号公報では、SiH基を含有するイミド系の含窒素有機系化合物の製造法が開示されているが、気相部の雰囲気に関する開示はない。また実施例も小スケールの製造例である。
【0004】
窒素原子を含有する化合物は金属原子に対する配位能力が高いために、金属原子を有するヒドロシリル化触媒を用いてSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する化合物とSiH基を含有する化合物を反応させる際には、窒素原子を含有する化合物の存在がヒドロシリル化触媒の活性を低下させることが良く知られている。
【0005】
この性質を利用して、特定の窒素原子を含有する化合物を少量添加することにより金属原子を有するヒドロシリル化触媒の触媒活性を制御する方法が開示されている(例えば特開平8−143778号公報)。
【0006】
先行文献に、ヒドロシリル化反応の制御を白金触媒に対する酸素の溶液濃度を制御することにより行なう方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。また、酸素雰囲気下でヒドロシリル化を行う方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
本発明者らは反応系中の酸素について詳細な観察をしたところ、反応の経過に伴って反応槽に仕込んだ酸素が消費されて減少すること、及び、酸素が減少するとヒドロシリル化の反応速度が低下することが分かった。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−213972号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平8−269070号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
酸素を反応槽の上部空間に導入した場合、反応液中への酸素の移動は気液界面を通して行われるため、反応槽のスケールアップにより単位液容量あたりの気液界面積が小さくなると酸素の供給速度が低下し、それに伴い反応液中の酸素濃度が低下して反応が進行しなくなることが懸念される。反応速度が低下すると、金属原子を有するヒドロシリル化触媒を多く用いる必要がありコスト高となるし、副反応の進行などにより品質が低下し目的とするSiH基を含有する含窒素有機系化合物が安定的に得られないという問題がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる実情に鑑み鋭意研究した結果、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)とSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)を金属原子を含有するヒドロシリル化触媒(C)及び酸素(D)の存在下で反応槽内において反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する際に、前記反応槽中の反応液を前記反応槽の上部空間へ導入することにより、安定的にSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち本発明は、
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)とSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)を金属原子を含有するヒドロシリル化触媒(C)及び酸素(D)の存在下で反応槽内において反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する方法であって、前記反応槽中の反応液を前記反応槽の上部空間へ導入することを特徴とする、SiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項1)、
反応槽中の反応液を反応槽の上部空間へ導入する手段は、反応液を外部に取り出すための反応槽接液部に設けられた吸引口、並びに、外部に取り出された反応液を反応槽の上部空間へ導入するための送液ポンプ及び液体吐出ノズルからなる請求項1記載の方法。(請求項2)
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)が、下記一般式(1)
【0013】
【化5】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である。)で表されるイソシアヌル酸系化合物、下記一般式(2)
【0014】
【化6】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である。)で表されるシアヌル酸系化合物、下記一般式(3)
【0015】
【化7】
(式中R2は炭素数4〜30の4価の有機基を表し、R3はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよい。)で表されるイミド系化合物、からなる群より選ばれる少なくとも一の成分である、請求項1ないし2のいずれか1項に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項3)
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)が、下記一般式(4)
【0016】
【化8】
(式中R3はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する炭素数1〜50の一価の有機基を表す。)で表されるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基を、1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物である、請求項1ないし2のいずれか1項に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項4)
SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)が、常圧における沸点が200℃以下である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項5)
SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)が、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも一の成分である、請求項5に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。(請求項6)、である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の(A)成分であるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物について説明する。
【0019】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物であれば特に制限がなく種々の化合物を用いることができる。
【0020】
入手性の点から好ましいSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物としては、下記一般式(1)
【0021】
【化9】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基である。)で表されるイソシアヌル酸系化合物、下記一般式(2)
【0022】
【化10】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基である。)で表されるシアヌル酸系化合物、下記一般式(3)
【0023】
【化11】
(式中R2は炭素数4〜30の4価の有機基を表し、R3はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよい。)で表されるイミド系化合物などが例示できる。
【0024】
上記一般式(1)および(2)のR1としては、入手性の点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0025】
【化12】
等が挙げられるが、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基である。
【0026】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基は、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する基の例としては、ビニル基、アリル基、
【0027】
【化13】
等が挙げられる。
【0028】
反応性の点からSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)は、下記一般式(4)
【0029】
【化14】
(式中R3はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する炭素数1〜50の一価の有機基を表す。)で表されるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基を、1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物が好ましく、これら少なくとも2個のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は異なっていても同一であってもよい。
【0030】
反応性と粘度の点からSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)は、下記一般式(1)
【0031】
【化15】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよく、これらR1の少なくとも2個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である。)で表されるイソシアヌル酸系化合物であることがより好ましい。
【0032】
以上のような一般式(1)で表されるイソシアヌル酸系化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0033】
【化16】
等が挙げられ、より好ましい具体例はトリアリルイソシアヌレート、
【0034】
【化17】
である。
【0035】
(A)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0036】
本発明の(B)成分であるSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物について説明する。
【0037】
SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物は、特に制限がなく種々の化合物を用いることができる。
【0038】
好ましいSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物としては、下記一般式(5)
【0039】
【化18】
(但し、式中R4〜R6はそれぞれ同一もしくは異種の置換もしくは非置換のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは2以上の整数、mは0以上の整数で、n+mは3以上の整数である。)
で表される環状ポリオルガノシロキサン、下記一般式(6)
【0040】
【化19】
(但し、式中R7〜R13はそれぞれ同一もしくは異種の置換もしくは非置換のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Xは水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Xが水素原子のときpは0以上の整数、Xが水素原子でないときpは2以上の整数であり、qは0以上の整数である。)
で表される鎖状ポリオルガノシロキサンが例示できる。
【0041】
具体的には、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、末端トリメチルシリル基封止メチル水素シロキサン重合体(Hオイル)、ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン共重合体などが挙げられる。
【0042】
これらのSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物うち、反応後に脱揮回収が困難でないため、常圧における沸点が200℃以下である化合物がより好ましい。具体的には1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン(沸点135℃未満)、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(沸点135℃)、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン(沸点170℃)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(沸点70℃)、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(沸点128℃)、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(沸点170℃)などが挙げられる。
【0043】
中でも入手性と相溶性の点から、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンか好ましく、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが特に好ましい。
(B)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0044】
また30重量%以下の範囲内でトリメチルシラン、トリエチルシランなどのトリアルキルシラン類、ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンなどSiH基を1分子中1個含有する化合物類を(B)成分に添加あるいは(B)成分の副生成物として含有させてもよい。
【0045】
上述した(A)成分中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数と(B)成分中のSiH基のモル数の比は、SiH基が過剰であれば特に限定されないが、1:1.1〜1:100であることが好ましい。SiH基が小過剰であると得られるSiH基を含有する含窒素有機系化合物の粘度が高く、また反応の制御が困難であるため好ましい下限は1:2、より好ましい下限は1:4、さらにより好ましい下限は1:6である。SiH基が大過剰であるとSiH基を含有する含窒素有機系化合物の収量が低下したり、副反応が起こりやすくなるため、好ましい上限は1:50であり、より好ましい上限は1:25、さらにより好ましい上限は1:15である。好ましい範囲は(A)成分の含窒素有機化合物1分子中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数と、(B)成分の化合物1分子中のSiH基の数により異なる。
【0046】
本発明の(C)成分である金属原子を含有するヒドロシリル化触媒について説明する。
【0047】
用いることのできる金属原子を含有するヒドロシリル化触媒としては特に制限されず、白金の単体、アルミナ、シリカ、活性炭等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0048】
また、白金化合物以外の触媒としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4などが挙げられる。
【0049】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0050】
金属原子を含有するヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、十分な反応性と、製造されたSiH基を含有する含窒素有機系化合物の貯蔵安定性の確保の点から、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合1モルに対して10-8モルから10-2が好ましく、より好ましい下限は10-6モルであり、より好ましい添加量の上限は10-3モル、さらに好ましい添加量の上限は10-4モルである。
【0051】
(C)成分である金属原子を含有するヒドロシリル化触媒の添加方法としては、(C)成分と(B)成分を予め混合しておき、ここへ(A)成分を添加してもよく、(C)成分と(A)成分を予め混合しておき、これを(B)成分に添加してもよい。また、(C)成分と(A)成分を同時ではない方法で独立して(B)成分に添加してもよい。
【0052】
本発明の(D)成分である酸素について説明する。
(D)成分である酸素の供給形態としては特に制限されないが、空気、除湿空気、窒素ガスに一定割合の酸素ガスを混合した酸素含有窒素として供給することが好ましい。水分の混入による副反応を抑制するため、除湿空気あるいは酸素含有窒素が好ましい。気相部を爆発雰囲気にならないようにするため、また酸素の過剰供給による副反応抑制のため、不活性ガスに一定割合の酸素ガスを混合した酸素含有不活性ガスがより好ましい。酸素含有窒素中の酸素含有量は0.1体積%から10体積%が好ましく、より好ましい下限は1体積%、さらに好ましい下限は2体積%であり、より好ましい上限は6体積%、さらに好ましい上限は4体積%である。
【0053】
空気又は酸素と混合され反応槽内の気相を構成する不活性ガスとしては特に限定されないが、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、窒素等が好ましい。
【0054】
(D)成分の反応系への供給方法は、空気、除湿空気あるいは酸素含有窒素を、原料あるいは反応液に対するバブリング、反応容器気相部の置換などにより行なうことができる。また両者を併用することも可能である。大気下に開放された反応容器に原料を仕込むことによっても反応系への酸素の供給は可能である。反応系への酸素の供給は1回のみでも良く、複数回行なっても良い。また連続でも良く、断続的でもよい。また加圧により酸素供給量を増加させてもよい。
【0055】
上述の方法で反応系へ酸素を供給することにより酸素の存在した状態でヒドロシリル化反応を行なうことができる。前記(A)成分と前記(B)成分を前記(C)成分の存在下、窒素雰囲気で反応を行ない、ヒドロシリル化の反応速度が低下した場合に、上述の方法で反応系へ酸素を供給することにより反応を継続させ、目的とするSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造することもできる。また上述の方法で予め反応系に酸素を供給しておいた状態で反応を開始し、反応速度が低下した場合あるいは反応速度を低下させないように酸素を供給することによっても目的とするSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造することができる。
【0056】
反応時の操作圧力としては特に限定されないが、大気圧以上の圧力で実施することが好ましい。これは、ヒドロシリル化反応では触媒活性が反応液中の酸素濃度に依存するため、特に爆発組成を考慮して所定の酸素濃度に調整した混合ガスを反応槽に導入する場合、気相の圧力が高いほど、反応液中の酸素濃度を高くすることができるからである。
【0057】
酸素の導入時期としては特に限定されないが、ヒドロシリル化反応の開始直前に反応槽に導入するのが好ましい。
【0058】
本発明においては、前記(A)成分と前記(B)成分を前記(C)成分である金属原子を含有するヒドロシリル化触媒の存在下で反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する際に、酸素(D)の存在した状態で反応を行なうが、前記(A)成分中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合が残存した状態で反応を終了させることが重要である。(C)成分である金属原子を含有するヒドロシリル化触媒の存在下、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合が存在しない状態で酸素が供給され続けると、酸素とSiH基含有化合物が関与した副反応により高分子量体が生成して高粘度化したり、製品の貯蔵安定性を低下させる原因となることがある。従って、本反応により得られるSiH基を含有する含窒素有機系化合物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の反応率は100%未満であることが好ましく、99%以下がより好ましい。本反応により得られるSiH基を含有する含窒素有機系化合物はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物と反応させることにより硬化物を得ることができる。この場合は、SiH基を含有する含窒素有機系化合物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の反応率は80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらにより好ましい。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の反応率が30〜80%のものは加熱することによりそれ自身で硬化可能である。反応液中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の存在量をモニターしながら、酸素供給量を制御することが好ましい。反応液中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の存在量は、1H−NMR、ガスクロマトグラフィー、赤外スペクトルなどによりモニターすることができる。
【0059】
ヒドロシリル化反応は、一般に0〜150℃の温度範囲で行われるが、期待されない副反応が起こらないように制御し易くするために、60〜120℃で行われるのが好ましい。反応温度の調節、反応系の粘度の調節、副反応の抑制など必要に応じて、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの溶剤又はプロセスオイルなどの可塑剤を用いてもよい。ヒドロシリル化反応を実施するための装置としては、特に制限はないが、各種原料及び溶媒の沸点近傍以上の温度で反応を行う場合や、酸素供給のために加圧が必要な場合にはオートクレーブなどの耐圧容器が好ましい。さらに、均一に反応を進行させるために、十分な攪拌能力を持った装置が好ましい。
【0060】
本発明は、以上のようなヒドロシリル化において、反応槽中の反応液を反応槽の上部空間へ導入する手段を用いるものである。
【0061】
ひとつの実施形態としては、反応液を外部に取り出すための反応槽接液部に設けられた吸引口、並びに、外部に取り出された反応液を反応槽の上部空間へ導入するための送液ポンプ及び液体吐出ノズルからなるものである。
【0062】
送液ポンプの形態は特に限定されないが、反応槽内の温度及び圧力に耐え、反応液中の成分により劣化しないものが好ましい。
【0063】
液体吐出ノズルの形態は特に限定されないが、ノズルから吐出した後に形成される液滴の径が小さいほど気液の界面積が大きく反応液中への酸素の導入量が多くなるため、液を分散させる形状のものが好ましい。
【0064】
本発明の製造法により得られたSiH基を含有する含窒素有機系化合物を用いた硬化物は、電子材料、光学材料、封止材、コーティング材などに用いることができる。
【0065】
【実施例】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
(反応率の測定)
島津製GC−14B、カラムTC−1701(30m×0.25mm)を用い、窒素ガス流量40ml/分、200℃2分ホールド後10℃/分の速度で280℃まで昇温した。内部標準の面積と7.6分〜7.8分のピークの面積の和の比を求め、1H−NMRから求めたアリル基反応率との間で検量線を引いた。その検量線を用いて、GC結果より反応率の算出を実施した。
(実施例1)
500Lのグラスライニング製の撹拌機付き耐圧反応槽に、窒素雰囲気下でトルエン153kg、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン130kgを入れ、攪拌しながら反応液温を95℃に加熱し、その後酸素3%の酸素/窒素混合ガスで反応槽気相部を置換した。100LのSUS製撹拌機付き槽にトリアリルイソシアヌレート18kg、トルエン18kg及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)130mlの混合液を入れて撹拌混合したものを、反応槽に定量ポンプを用いて30分かけて一定速度で滴下した。滴下終了後に、反応液温度を105℃に上げ、酸素3%の酸素/窒素混合ガスで0.1MPaまで加圧した。30〜60分おきに反応液のサンプリングを行い、気相部のガスを0.02MPaまで抜いて、0.1MPaまで酸素3%の酸素/窒素混合ガスで加圧した。
【0066】
反応槽下部に液抜き出し口を設置し、また反応槽上部に液の導入口を設置し、その間にポンプを接続して反応液を循環できるようにした。反応経時255分から260分の間、 50L/分の流量で反応液を循環した。サンプリング液のGC測定から算出した反応率の経時を図1に、アリル基に対して1次反応を仮定した場合の各時刻の反応速度係数の経時を図2に記す。
【0067】
液循環を実施した前後の反応経時255分と300分のサンプルより算出した反応速度係数は、反応速度定数が一定である反応率91%以下(420分まで)の反応速度定数の平均値よりも43%大きく、その区間のばらつき範囲(平均値に対し最大20%)を大きく上回っており、液循環による反応速度向上の効果が大きいことが確認できた。
(比較例1)
液循環を実施しないこと以外は実施例1と同一の操作を実施した。サンプリング液のGC測定から算出した反応率の経時を図3に、アリル基に対して1次反応を仮定した場合の各時刻の反応速度係数の経時を図4に記す。
【0068】
反応速度定数が一定である反応率91%以下(420分まで)では反応速度係数は、平均値に対し最大14%のばらつき範囲の中に入っており、ほぼ一定である。
【0069】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、気相部から液相部への酸素供給の不足に起因する反応速度低下を改善することができ、反応時間の短縮による生産性の向上や使用触媒量の低減が達成されるとともに、反応が遅延した際に生じる副反応が少なくなることにより安定的な品質のSiH基を有する含窒素有機系化合物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における反応時間とアリル基反応率の関係を示す。
【図2】実施例1における反応時間と反応速度係数の関係を示す。
【図3】比較例1における反応時間とアリル基反応率の関係を示す。
【図4】比較例1における反応時間と反応速度係数の関係を示す。
Claims (6)
- SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)とSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)を金属原子を含有するヒドロシリル化触媒(C)及び酸素(D)の存在下で反応槽内において反応させてSiH基を含有する含窒素有機系化合物を製造する方法であって、前記反応槽中の反応液を前記反応槽の上部空間へ導入することを特徴とする、SiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。
- 反応槽中の反応液を反応槽の上部空間へ導入する手段は、反応液を外部に取り出すための反応槽接液部に設けられた吸引口、並びに、外部に取り出された反応液を反応槽の上部空間へ導入するための送液ポンプ及び液体吐出ノズルからなる請求項1記載の方法。
- SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する含窒素有機化合物(A)が、下記一般式(1)
- SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)が、常圧における沸点が200℃以下である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。
- SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物(B)が、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも一の成分である、請求項5に記載のSiH基を含有する含窒素有機系化合物の製造方法。
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