JP2004182877A - 生分解性樹脂組成物、生分解性樹脂製品及びその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本質的に生分解性でない汎用プラスチックに生分解性を付与することで、物理的強度を損なわずに生分解性を高めた成形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の生分解性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂とナノカーボンとの混練生成物を含んでなるもので、更に、デンプンやセルロース等の多糖類系、ポリ乳酸系などの生分解性高分子材料を加えてなるものが好ましい。
この生分解性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂に対して有効量のナノカーボンを配合し、少なくとも該ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上の低酸素濃度環境下で混練して生分解性の混練生成物として得るか、又は該混練生成物にデンプンやセルロース等の多糖類系、ポリ乳酸系などから選ばれた少なくとも1種の生分解性高分子材料を配合して融和条件下で混練して製造する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性樹脂組成物に関し、特に包装用資材や消耗品などに加工してそのまま廃棄しても、環境に対して負荷をかけることが少ない生分解性樹脂製品を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、種々のプラスチック製品が使用されているが、使用されたのちに廃棄されると、分解されないまま環境中に残ることが多く、長年月にわたって環境に負荷をかける恐れがある。そこで廃棄物を資源やエネルギー源として回収利用することが推奨されているが、回収利用できない廃棄物も無くならない。そこで、従来のプラスチック製品に代えて、廃棄物として環境中に排出されても、比較的短期間に生物により分解処理されるか、或いは崩壊風化するなどして、環境に対する負荷が少ない成形材料を用いた製品が求められている。
【0003】
上記のような成形材料として、生物による分解が容易なデンプンなどを利用したものが種々行われているが、デンプンは親水性があるために強度や耐久性に問題があり、その用途にも制約があって、実用化が進んでいない。また、デンプンを原料として、プルランやポリ乳酸などの生分解性のプラスチックを製造し、これを用いて環境負荷が少ない使い捨て品などを製造する提案もあるが、コストが嵩むために用途の拡大は進んでいない。
【0004】
一方、デンプン系のプラスチックの耐久性や物性などを改良するために、ポリエチレンなどの汎用プラスチックと配合する試みもなされている。しかし、配合条件などを工夫して環境中での崩壊を容易とすることができても、ポリエチレンなどの汎用プラスチックは本質的に生分解性でないため、廃棄物となれば環境汚染を引き起こすこととなり、環境負荷の軽減にはならない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情において、本質的に生分解性でない汎用プラスチックに生分解性を付与することによって、製品を廃棄しても環境負荷を増大させない、新規なプラスチック系成形材料を提供することを目的としたもので、特に物理的強度を損なわずに生分解性を高めた物品成形用の樹脂組成物を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することができる本発明の生分解性樹脂組成物は、請求項1に記載したように、ポリオレフィン系樹脂とナノカーボンとの混練生成物を含んでなることを特徴とするものである。
そして本発明の生分解性樹脂組成物は、請求項2に記載したように、ポリオレフィン系樹脂とナノカーボンとの混練生成物に加えて、デンプンやセルロース等の多糖類系、ポリ乳酸系などの生分解性高分子材料を含んでなるものであると、種々の用途に適したそれぞれの樹脂製品を容易に提供できる利点がある。
【0007】
また、本発明の生分解性樹脂製品は、請求項3に記載したように、前記請求項1又は2に記載の生分解性樹脂組成物を成形してなるものであり、その成形方法は、それぞれ目的とする樹脂製品の形状や構造などに応じて、適切な手段を選択することができる。
【0008】
更に、本発明の生分解性樹脂組成物の製造法は、請求項4に記載したように、ポリオレフィン系樹脂に対して有効量のナノカーボンを配合し、少なくとも該ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上の低酸素濃度環境下で混練するものであり、より具体的には、請求項5に記載したように、ポリオレフィン系樹脂に対して有効量のナノカーボンを配合し、少なくとも該ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上の低酸素濃度環境下で混練して生分解性の混練生成物を得、該混練生成物にデンプンやセルロース等の多糖類系、ポリ乳酸系などから選ばれた少なくとも1種の生分解性高分子材料を配合して融和条件下で混練するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の生分解性樹脂組成物の原料であるポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体などのほか、酢酸ビニル共重合エチレンポリマー、アクリル酸エチル共重合エチレンポリマー、酸変性ポリエチレン等が挙げられる。中でも低密度ポリエチレンなどが好ましく用いられるが、用途に応じて適宜選択して利用することができる。
【0010】
また、本発明の生分解性樹脂組成物の製造に用いられるナノカーボンは、例えば、アクリル系樹脂を炭化させて得た放電電極と、触媒電極との間でのアーク放電させて得た、カーボンナノチューブ(CNT)やフラーレン等を含む炭素材料、或いは例えば、極微粒触媒の存在下に炭化水素ガスを熱分解させて得た、カーボンファイバー(VGCF)等を含む炭素材料などを包含する、極微細炭素材料を意味し、特にアモルファス構造の表面を有するCNTを含む炭素材料が,好ましく用いられる。
【0011】
本発明の組成物を製造するに当たっては、ナノカーボンとポリオフィン系樹脂とを、その溶融温度以上、例えば220〜240℃などとし、例えば酸素分圧が10−1〜10−2Torr程度の低酸素濃度環境下で混練すると、ナノカーボンがポリオレフィン系樹脂のCH2−CH2 結合構造に作用し、二重結合を生成すると共に、残る一方の水素(H)を水酸基(OH)に変えるように機能する。なお、この混練環境を低酸素濃度とする手段としては、混練装置内を不活性ガス等で置換するか、又は空気を排除して真空とする方法を用いることができ、或いはこれらを併用する方法を用いてもよい。
【0012】
そして、このようなナノカーボンによるポリオレフィン系樹脂の変成は、例えば公知の押出型ミキサなどを利用して行うことができるが、酸素分圧の調整と混練温度の調整ができるものであれば、これに限定されることなく適宜の装置を利用することができる。またポリオレフィン系樹脂の変成の際に配合するナノカーボンの量は、少ないときはポリオレフィン系樹脂の生分解性が低くなり、多すぎるときはポリオレフィン系樹脂の引張強さが低下する傾向があるので、使用するポリオレフィン系樹脂の種類に応じて予備試験を行い、適切な配合量範囲を選択すると共に混練時間を決定することが望ましい。
【0013】
こうして得た混練生成物は、それ自体が生分解性材料であるが、同時にデンプンのようなポリオール化合物と親和性がある構造(即ち水酸基)を備えているので、多糖類系やポリ乳酸系などの生分解性高分子材料と混合した組成物は、物理的強度特性の向上が期待できる。従って、この混練生成物は単独で、又はデンプンなどを増量材や充填材として用いて、各種の生分解性樹脂製品の成形材料として利用できるほか、逆にデンプン系生分解性樹脂製品の物理的強度を補う補強材料としても、利用することもできる。
【0014】
このように、上記の変成されたポリオレフィン系樹脂からなる混練生成物を、多糖類系やポリ乳酸系などの生分解性高分子材料と混合して、本発明の生分解性樹脂組成物を製造するには、例えば公知の押出型ミキサなどを用いて、例えば120〜160℃程度などの、双方の材料が融和できる温度条件で混練することが望ましい。この際、追加配合される生分解性高分子材料の可塑性が不十分である場合にば、例えば可塑剤や融和剤などを添加して、融和を促進することができる。本発明の生分解性樹脂組成物において、追加配合される生分解性高分子材料がデンプンである場合、融和剤としては、公知の添加剤であるグリセリン、エチレングリコール、水などを、適宜に利用することができる。
【0015】
以上のようにして製造された本発明の生分解性樹脂組成物を用いて、生分解性樹脂製品を製造するには、従来より公知の成形用装置、即ち押出成形機、射出成形機、或いはカレンダーロールなどから、樹脂製品の形状や構造、或いは寸法などに応じて適宜の成形用装置を選択し、成形加工に利用することができる。
【0016】
また、本発明により製造された生分解性樹脂製品は、通常の生活環境内で使用するに耐える強度と耐久性を保持しているが、屋外で風雨に曝されたり、土砂などと接触した状態で放置された場合などでは、劣化が進んで崩壊し、更に微生物や細菌等によって分解されるので、自然環境における物質循環サイクルに影響を及ぼすことが殆どなく、環境への負荷が極めて小さいものである。
【0017】
【実施例】
(第1実施例)
ポリオレフィン系樹脂として、低密度ポリエチレンペレットA(住友化学製、スミカセン)100重量部に対し、ナノカーボンとして、前記のアーク放電法によって得たCNT(直径8〜10nm、長さ10〜40nm)を含む炭素材料Bの3重量部を配合し、内部を0.5×10−1Torrに減圧した押出型ミキサに供給し、温度240±2℃で20分間混練処理して、灰色の混練生成物Cのペレットを製造した。
【0018】
(第2実施例)
第1実施例における炭素材料Bの配合量3重量部を、4重量部から7重量部まで4段階に変化させたほかは、第1実施例と全く同様にして、低密度ポリエチレンペレットAと炭素材料Bとの配合物を混練処理し、それぞれの混練生成物D〜Gのペレットを製造した。
【0019】
これらの第1実施例と第2実施例で得た混練生成物C〜Gと、原材料である低密度ポリエチレンペレットAとを、熱プレスによって厚さ2mmの板状体に成形して、それぞれ試験用の試料とした。そして、JIS−Z1702に記載された引張強さ試験法に従って、それぞれの引張強さ(MPa) を求めると共に、下記の生分解性試験法に従って、それぞれの生分解性能(%)を評価し、それらの結果を表1に示した。
これらの結果をみると、炭素材料Bの配合割合が高くなるに連れて生分解性能は向上するが、引張強さが低下することが分かる。
【0020】
生分解性試験法:
内容1Lのガラス製処理容器に、5cm×5cm×2mmの試料片2個と共に、含水率500%の活性汚泥500mLを仕込み、温度を25℃に保って毎分3Lの空気を供給し、曝気しながら揺動処理した。そして、30日の処理の後に試料片を取り出し、赤外分光光度法により残留ポリエチレン量を測定して、初期の試料片のポリエチレン量からの減量率(%)を求めて、生分解性能とした。
【0021】
【表1】
Figure 2004182877
【0022】
(第3実施例)
本発明の生分解性樹脂組成物に配合される生分解性高分子材料として、コーンスターチを選び、コーンスターチ100重量部に対してグリセリン3重量部、及び水1重量部を均一に混合して、デンプン材料Sを調製した。そして、第2実施例において製造した混練生成物Eと、前記のデンプン材料Sとの配合割合(E:S)を、重量比で6/4、4/6、3/7となるようにそれぞれ配合して、押出型ミキサにより120℃近傍で混練し、本発明の生分解性樹脂組成物H〜Jのペレットを製造した。
【0023】
そして、これらの生分解性樹脂組成物H〜Jについて、第2実施例と全く同様に、熱プレスによって厚さ2mmの板状体に成形したのち、引張強さと生分解性との評価を行った。その結果を、第2実施例において評価して表1に記載した混練生成物Eの評価結果と共に、表2に示した。
この結果から、デンプン材料の配合比率が大きくなるに連れて、生分解性能は向上するが、引張強さは低下することが分かる。
【0024】
【表2】
Figure 2004182877
【0025】
【発明の効果】
本発明の生分解性樹脂組成物は、従来から生分解性が期待できないと考えられていたポリオエフィン系樹脂を変成して、生分解性樹脂として使用することを可能にしたもので、更にこの生分解性樹脂が、デンプン系やポリ乳酸系などの生分解性高分子材料と親和性が良いことを利用して、物理的強度が高くて耐久性に富み、且つ安価で環境負荷が少ない生分解性樹脂製品を、潤沢に供給できるという効果を有するものである。

Claims (5)

  1. ポリオレフィン系樹脂とナノカーボンとの混練生成物を含んでなることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
  2. ポリオレフィン系樹脂とナノカーボンとの混練生成物に加えて、デンプンやセルロース等の多糖類系、ポリ乳酸系などの生分解性高分子材料を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
  3. 前記請求項1又は2に記載の生分解性樹脂組成物を成形してなる生分解性樹脂製品。
  4. ポリオレフィン系樹脂に対して有効量のナノカーボンを配合し、少なくとも該ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上の低酸素濃度環境下で混練することを特徴とする生分解性樹脂組成物の製造法。
  5. ポリオレフィン系樹脂に対して有効量のナノカーボンを配合し、少なくとも該ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上の低酸素濃度環境下で混練して生分解性の混練生成物を得、該混練生成物にデンプンやセルロース等の多糖類系、ポリ乳酸系などから選ばれた少なくとも1種の生分解性高分子材料を配合して融和条件下で混練することを特徴とする生分解性樹脂組成物の製造法。
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