JP2004138156A - ばね装置 - Google Patents

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JP2004138156A JP2002303223A JP2002303223A JP2004138156A JP 2004138156 A JP2004138156 A JP 2004138156A JP 2002303223 A JP2002303223 A JP 2002303223A JP 2002303223 A JP2002303223 A JP 2002303223A JP 2004138156 A JP2004138156 A JP 2004138156A
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Takeshi Minegishi
峰岸 健
Kazuo Kikuchi
菊地 一夫
Takashi Ebihara
海老原 隆
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Abstract

【課題】シート等に用いられ、軽量で通気性および乗り心地が良いばね装置を提供する。
【解決手段】ばね装置10は、目付量0.03〜0.3g/cmの樹脂ばね体12と、樹脂ばね体12を取付けるフレーム11とを備えている。樹脂ばね体12は、熱可塑性エラストマ−樹脂からなる線径0.2〜1.5mmの複数本の連続線状体を互いの交絡点において融着したものである。樹脂ばね体12の縁部を折返し、互いに重なる部位を加熱加圧することにより、融着部46が形成されている。この融着部46に取付け孔31が形成されている。取付け孔31にフレーム11に形成されたフック部30が挿入され、樹脂ばね体12にテンションを与えた状態で樹脂ばね体12がフレーム11に支持されている。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両や船舶,航空機等の乗り物に装備されるシート、あるいはソファ等の家具類などに使用されるばね装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば車両のシート等の構成要素として、Sばねやフォームドワイヤあるいはコンターマットなどからなる金属ばねと、この金属ばねの上に重ねる軟質ウレタンフォーム等の樹脂フォームからなるパッドが知られている。しかしSばねやフォームドワイヤ等は鋼製であるため、シートを軽量化する上で不利である。
【0003】
また、金属ばねの上に軟質ウレタンフォーム等のパッドを直接重ねると、金属ばねとパッドとの接触部に局部的な荷重が加わるため、パッドが破損しやすいという問題がある。その対策として、金属ばねとパッドとの間にフェルトや不織布を介在させることも行なわれているが、その分、シートの部品数が増えかつ重量も増えるという問題がある。
【0004】
上記の問題を解決するために、下記特許文献1に示すように、合成樹脂製フィルムをシートのフレームに取付けたものや、下記特許文献2に示すように、伸縮性織物からなる面状ばね体をシートのフレームに取付けたシート構造などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4,842,257号明細書
【0006】
【特許文献2】
実開昭64−14053号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載されているシート用のフィルムは、ポリテトラメチレンテレフタレートポリエステルと、ポリテトラメチレンエーテルとのブロック共重合体からなる。このブロック共重合体は、化学構造的に分子の配列により性能が発揮されるため、延伸することによって分子の配列が整えられている。このフィルムは材料が高価であるばかりか、延伸加工が必要であり、しかも通気性を確保するために孔明け加工が必要である。このため製造に手間がかかり、コストが高くつくという問題がある。
【0008】
材料コストを下げるために、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いることも提案されている。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ジイソシアネートと短鎖ジオールとの付加反応生成物の硬質セグメントと、ポリエーテルジオール類またはポリエステルジオール類からなる軟質セグメントとからなり、要求される性能に応じて硬質セグメントと軟質セグメントの割合を調整している。
【0009】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、軟質セグメントの比率が多くなると硬度が下がり、歪みの復元性が良くなる反面、伸びやすくなる。このため所望の強度を得るには全体の厚さをかなり大きくする必要があり、材料の使用量が増え、軽量化の要望に反する。逆に、軟質セグメントの比率を下げ、硬質セグメントを増やすと硬くなり、強度は高くなるが、歪みの復元性が悪くなるなど、軟質セグメントと硬質セグメントの比率の適正化が難しい。
【0010】
特許文献2に記載されているシート構造は、シートの乗り心地を改善するために、背もたれ上部のばね定数を小さくし、腰部のばね定数を大きくしている。この場合、ばね定数を調整するために、面状ばね体に樹脂製の支持パネルを取付けているが、工数と部品数が増加するためコストアップになり、重量も増えるという問題がある。
【0011】
従って本発明の目的は、軽量で通気性および復元性が良い面状の樹脂ばね体を備えたばね装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を果たすための本発明のばね装置は、熱可塑性エラストマ−樹脂からなる線径0.2〜1.5mmの複数本の連続線状体を互いの交絡点において融着し網状に形成してなる目付量0.03〜0.3g/cmの樹脂ばね体と、前記樹脂ばね体を取付けるフレームとを具備している。
【0013】
前記熱可塑性エラストマ−樹脂は、好ましくは熱可塑性ポリエステルエラストマ−樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマ−樹脂との混合物からなり、該熱可塑性ポリエステルエラストマ−樹脂の混合比が20〜50%である。
【0014】
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマ−樹脂は、好ましくはポリオール成分としてポリテトラメチレングリコール、イソシアネート成分としてピュアージフェニルメタンジイソシアネート、鎖延長剤として1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを用いる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記樹脂ばね体の縁部を折返して互いに重なる部位を融着した融着部と、該融着部に形成した取付け孔と、前記フレームに形成され前記取付け孔に挿入されるフック部とを具備している。さらに、前記樹脂ばね体の前記融着部に前記縁部に沿う芯材を設け、該芯材の近傍に形成された前記取付け孔に前記フック部を挿入してもよい。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記樹脂ばね体は、第1の目付量の低目付部と、該低目付部よりも目付量が大きい第2の目付量の高目付部とを有している。また前記樹脂ばね体の両側部間の一部に、該樹脂ばね体を厚み方向に加熱圧着し前記連続線状体どうしを局部的に融着させてなるウエルドパターン部を形成してもよい。
【0017】
前記樹脂ばね体の製造方法において、低目付部と高目付部を形成するために、押出し機のノズル部に、ノズル有効部の一部を覆うことのできる可動プレート等の遮蔽部材を設けてもよい。ノズル有効部のうち該遮蔽部材によって覆われた領域では、吐出される連続線状体の数が減るため低目付部が形成され、遮蔽部材によって覆われない領域では、吐出される連続線状体の数が多いため高目付部が形成される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の第1の実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。
図1に示すばね装置10は、フレーム11と、網状の樹脂ばね体12とを備えている。図2に樹脂ばね体12の一部を拡大して示す。フレーム11は、左右一対のサイドフレーム部13と、アッパフレーム部14と、ロアフレーム部15などを備えている。
【0019】
このばね装置10は、例えば図3に示すように、シート20の背もたれ部(シートバック)21あるいは座部(シートクッション)22などに使用される。シート20は、面状に広がる前記樹脂ばね体12と、樹脂ばね体12の上に配置された軟質ウレタンフォームなどからなるパッド部材25と、パッド部材25の表面等を覆うカバー部材26などを備えている。
【0020】
左右一対のサイドフレーム部13のそれぞれの内側面の複数箇所に、フック部30が設けられている。図4に一部を示すように、それぞれのフック部30を、樹脂ばね体12の両側部に形成された取付け孔31に挿入することにより、樹脂ばね体12にテンションを与えた状態で、樹脂ばね体12がフレーム11に取付けられている。
【0021】
図5に示すように、樹脂ばね体12の左右両側の縁部45をそれぞれ折返し、重なり合う部分を高周波ウエルダーによって加熱加圧することにより、融着部46が形成されている。この融着部46に前記取付け孔31が形成されている。取付け孔31はフック部30と対応した位置に形成されている。
【0022】
なお、フック部30はサイドフレーム部13とは別の部品を溶接によってサイドフレーム部13に固定してもよいし、あるいは、サイドフレーム部13の一部を内面側に切起こすことによってフック部30を形成してもよい。
【0023】
樹脂ばね体12は、線径0.2〜1.5mm(例えば線径0.7mm)の熱可塑性エラストマ−樹脂からなる複数本の連続線状体40を互いの交絡点において融着し、網状に形成したもので、目付量が0.03〜0.3g/cmの範囲にある。これら連続線状体40は、ランダムなループ状に曲がりくねった状態で、各ループの接触部が互いに融着している。
【0024】
樹脂ばね体12は、図6に示した樹脂ばね製造装置50によって製造される。樹脂ばね製造装置50は、押出し機51と、速度を調整可能なコンベア52と、切断機53などを備えている。コンベア52は、モータ等を駆動源とする駆動機構58によって、矢印Aで示す方向に無端走行する。
【0025】
図7に示すように、ノズル部54は、一例として幅W1が10cm、長さL1が60cmのノズル有効面54aを有している。ノズル有効面54aに、例えば孔径0.7mmの多数のノズル孔55が所定のピッチ(例えば7mm間隔)で設けられている。ノズル部54は、ノズル有効面54aの一部を遮蔽することのできる遮蔽部材の一例として、可動プレート56を備えている。
【0026】
押出し機51の材料供給部57に、樹脂ばね体12の材料である熱可塑性エラストマー樹脂が供給される。押出し機51に供給された熱可塑性エラストマー樹脂は、その融点より10℃ないし80℃高い温度(例えば240℃)に加熱されて溶融する。
【0027】
押出し機51は、ノズル孔1つ当りの吐出量が0.5g〜1.5g/分となるように、上記熱可塑性エラストマー樹脂をノズル孔55からコンベア52に向かって押出す。
【0028】
ノズル部54から押出された熱可塑性エラストマー樹脂は、図8に示すように線状に連続してコンベア52上に自由落下するため、ノズル孔55の数に応じた本数の連続線状体40が形成される。
【0029】
こうしてコンベア52上に落下した熱可塑性エラストマー樹脂は、曲がりくねりながら、ランダムなループを形成しつつ、ループどうしの接触部が互いに融着し、コンベア52上で冷却され硬化することにより、厚さ数mm程度の面状に広がる網状構造の樹脂ばね体12が形成される。
【0030】
コンベア52上の樹脂ばね体12は、コンベア52によって搬送されながら、例えばヒータ線を備えた切断機53によって所望形状に切断される。切断手段としては、ヒータ線を用いる以外に、例えばウォータジェットによる切断でもよいし、プレス型による切断でもよい。
【0031】
この樹脂ばね体12は、熱可塑性エラストマー樹脂からなる多数の連続線状体40のランダムループが互いの交絡点において融着し、面状に広がる網状構造をなしている。このため大きい応力で変形を与えたときに、多数の連続線状体40が互いに協働して変形しつつ応力を吸収する。そして応力が解除されると、連続線状体40の弾性復元力によって樹脂ばね体12が元の形状に戻る。
【0032】
なお、樹脂ばね体12の目付量が0.03g/cm未満になると反発力が小さくなり過ぎ、ばね体として不適当である。目付量が0.3g/cmを越えると弾性が強くなり過ぎて座り心地が悪くなるので、ばね体として不適当となる。従って樹脂ばね体12の目付は、0.03g/cm以上、0.3g/cm以下が望ましい。
【0033】
また、連続線状体40の線径が0.2mm未満では強度が低下し、反発力が低下するので好ましくない。線径が1.5mmを越えると、樹脂ばね体12の単位面積当たりの連続線状体40の構成本数が少なくなり過ぎて伸び特性等が悪くなるので好ましくない。従って連続線状体40の線径は、0.2mm以上、1.5mm以下が望ましい。
【0034】
樹脂ばね体12の材料である熱可塑性エラストマー樹脂は、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂との混合物である。図6に示す押出し機51では、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂のペレットと、熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂のペレットが所望の配合比率で混合され、材料供給部57に供給される。
【0035】
熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂の一例は商品名ペルプレン90B(東洋紡績)である。熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂としては、下記のAタイプとBタイプとがある。ペルプレン90Bのシュア−硬さはA96である。熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂のAタイプのシュア−硬さはA94、Bタイプのシュア−硬さはD58である。
【0036】
ペルプレン90Bには硬質セグメントとしてポリブチレンテレフタレート、軟質セグメントとしてポリテトラメチレングリコールが使われるが、硬質セグメントが多く含まれているため溶融温度が高い。このためペルプレン90Bを単独で用いると、ノズル部54からコンベア52上に落下する際の温度低下により、ループどうしが強固に結合しない。これに対し熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂は、ループどうしが強固に結合できるが、高温による熱劣化を生じやすい。これらの問題を考慮して、材料の加熱温度を適正に設定する。
【0037】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂のAタイプの配合比は、ポリテトラメチレングリコール分子量1000(g/mole)2.5kg、ピュアージフェニルメタンジイソシアネート1.75kg,鎖延長剤として1.4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(以下、BHEBと称す)0.75kgである。
【0038】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂のBタイプの配合比は、ポリテトラメチレングリコール分子量1000(g/mole)2.5kg、ピュアージフェニルメタンジイソシアネート2kg,BHEBが0.945kgである。なお、Aタイプ,Bタイプとも、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。これらの熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂を、一般的なプレポリマー合成法によって合成したのち、ペレタイザーを用いてペレット化し、熟成させた。
【0039】
前記Aタイプは軟質セグメントの比率が大きいため、溶融したループどうしが強固に結合することができる。しかし、Aタイプは強度が低いため、Aタイプ単独では材料の使用量を多くする必要があり、重量が増えるという問題がある。これに対しBタイプは、硬質セグメントが多いため、Aタイプのような問題は無いが、ノズル部54からコンベア52上に落下する際の温度低下によってループどうしが強固に結合しないことがある。
【0040】
下記の表1に示されるように、ポリマーアロイの均一性と、連続線状体40のループどうしの結合強度などから、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂の配合割合は、20%以上で、最大50%までが望ましく、最も好ましい比率は30%であった。引張り強度に関しては、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂の量が少な過ぎても強度が低くなるし、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂の量が多過ぎても強度が低くなる。
【0041】
【表1】
Figure 2004138156
[製造例1]
前記ペレプレン90Bと熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂のAタイプを30:70の混合比で混合してなる熱可塑性エラストマー樹脂材料を、材料供給部57から押出し機51に供給した。この熱可塑性エラストマー樹脂を240℃に加熱し、ノズル部54から下方に100mm離れたコンベア52上に押出し、冷却後に切断機53で切断することにより、目付量0.045g/cmの樹脂ばね体12(背もたれ仕様に相当)を製造した。樹脂ばね体12の寸法は、幅330mm、長さ430mmである。
【0042】
製造例1で得られた樹脂ばね体12は、392N時の撓みが54mm、重量が64gであった。従来の金属ばねからなるばね装置は、背もたれ仕様では重量が127g、392N時の撓み54mm、座部仕様では重量が312g、392N時の撓み20mm、588N時の撓み26mmであった。すなわち製造例1で得られた樹脂ばね体12の重量は、従来の背もたれ仕様のばね装置の約半分であった。
【0043】
樹脂ばね体12の伸びと荷重との関係を図9に示す。製造例1で得られた樹脂ばね体12の引張り試験を行なったところ、50%伸び時の強度が15.7N/cm、弾性領域での伸び100%時の強度が19.8N/cm、破断強度が21N/cmであった。引張り試験の条件は、サンプルサイズの幅25mm、長さ100mm、引張り速度100mm/分である。
【0044】
上記樹脂ばね体12は、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂との混合物を用いるため、延伸工程を省略することができる。すなわち、シートの背もたれは一般的に392N程度の力が背もたれ全体にかかり、撓み量は40mm程度が一般的である。そのとき必要な樹脂ばね体12の伸びは、10%/cm程度である。このため、延伸工程を行なわなくても、熱可塑性ウレタンエラストマー樹脂の化学構造に基く凝集力で対応できるからである。
【0045】
しかもポリエステルエラストマー樹脂とポリウレタンエラストマー樹脂とを混合して使用するため、高価なポリエステルエラストマー樹脂の使用量を減らすことができ、材料費を安くすることができる。
【0046】
[製造例2]
コンベア52の移動速度を変えることにより、目付量0.211g/cmの樹脂ばね体12(座部仕様に相当)を製造した。樹脂ばね体12の寸法の一例は幅340mm、長さ320mmである。この樹脂ばね体12は、392N時の撓みが20mm、588N時の撓みが25mmと、座部仕様の従来品とほぼ同じ値が得られた。製造例2によって得られた樹脂ばね体12の重量は250gであり、従来品の重量(312g)と比較して62g軽量であった。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について、図10と図11に基いて説明する。第2の実施形態の樹脂ばね体12は、左右両側の縁部45の融着部46に、棒状の芯材60が埋設されている。芯材60は金属、あるいは連続線状体40よりも引張り強度の大きい樹脂からなり、樹脂ばね体12の縁部45に沿って埋設されている。
【0048】
図11に示すように芯材60の近傍に取付け孔31が形成されており、この取付け孔31にフック部30を挿入することにより、樹脂ばね体12をフレーム11に支持させている。それ以外の構成は第1の実施形態のばね装置10と同様であるから、第1の実施形態と共通の個所に第1の実施形態と同一の符号を付して説明は省略する。
【0049】
図12は本発明の第3の実施形態の樹脂ばね体12Aを示している。この樹脂ばね体12Aは、第1の実施形態で説明した樹脂ばね製造装置50と熱可塑性エラストマー樹脂を用いて製造される。
【0050】
図12に示す樹脂ばね体12Aは、第1の目付量の低目付部70と、低目付部70よりも目付量が大きい第2の目付量の高目付部71とを備えている。低目付部70の目付量の一例は0.045g/cmであり、高目付部71の目付量の一例は0.129g/cmである。樹脂ばね体12Aの寸法の一例は、幅W2が400mm、高さL2が460mmである。高目付部71の高さL3は150mmである。
【0051】
低目付部70は、シートの背もたれの肩部に相当する位置に形成され、高目付部71は腰部に相当する位置に形成されている。このように背もたれの位置に応じて目付量を異ならせることにより、腰部では、ばね定数が高くなり、肩部ではばね定数を小さくすることができるため、乗り心地がさらに改善される。
【0052】
このような低目付部70と高目付部71を有する樹脂ばね体12Aは、図7に示すノズル部54の可動プレート56によってノズル有効部54aの一部を遮蔽することにより、形成することができる。すなわち、ノズル孔55の少ない領域では連続線状体40の数が少なくなるため低目付部70が形成される。ノズル孔55の多い領域では、連続線状体40の数が多いため高目付部71を形成することができる。
【0053】
低目付部70については、50%伸び時の強度が15.7N/cm、弾性域での100%伸び時の強度が19.8N/cm、破断強度21N/cmであった。高目付部71については、50%伸び時の強度が43N/cm、弾性域の伸びが170%で強度54N/cm、破断強度が81N/cmであった。
【0054】
この樹脂ばね体12Aを、図1に示すフレーム11に取付け、392N時の撓みを調べたところ、低目付部70の撓みが54.8mm、高目付部71の撓みが49.1mmであった。鋼製ばねを用いた従来品の場合には、肩部の撓みが54.0mm、腰部の撓みが46.6mmであった。重量に関し、従来品が214gであったのに対し、樹脂ばね体12Aは123gであり、91gの軽量化が図れた。
【0055】
樹脂ばね体12Aをフレーム11に組付け、さらに樹脂ばね体12Aの上に軟質ウレタンフォームを配置したシートの乗り心地を評価する試験を行なったところ、従来のシートと同等以上の乗り心地が得られた。また294Nの負荷で15万回の振動耐久性テストを実施したところ、耐久性についても合格であった。
【0056】
図13は本発明の第4の実施形態の樹脂ばね体12Bを示している。この樹脂ばね体12Bも、目付量0.045g/cmの低目付部70と、目付量0.08g/cmの高目付部71を有し、さらに乗り心地を改善する手段として、ウエルドパターン部80を形成している。
【0057】
ウエルドパターン部80は、5kW高周波ウエルダーの電極ブレードを用い、300mA、5秒間で融着を行なった。この場合、樹脂ばね体12Bの両側縁部45間の一部分が厚み方向に加熱圧着されることにより、連続線状体40どうしが局部的に融着し、ウエルドパターン部80が形成される。ウエルドパターン部80のそれぞれの寸法の一例は、長さ100mm、幅10mmである。
【0058】
樹脂ばね体12Bにウエルドパターン部80を形成することにより、背もたれの腰部と肩部のばね定数を調整することができた。例えば腰部に相当する高目付部71では、単位面積当たりのウエルドパターン部80の数を低目付部70よりも多くすることにより、高目付部71のばね定数をさらに高めることができた。
【0059】
下記表2は、低目付部70と高目付部71において、ウエルドパターン部80の有無による伸び強度等を比較したものである。
【0060】
【表2】
Figure 2004138156
表2から判るように、低目付部70と高目付部71は、いずれもウエルドパターン部80を形成することにより、伸び強度を高めることができた。また、低目付部70にウエルドパターン部80を設けた場合の方が、高目付部71にウエルドパターン部80を設けた場合に比べて、50%伸び時の強度を大幅に高めることができた。
【0061】
なお、図14に示すように、樹脂ばね体12Bの両側部の融着部46と、ウエルドパターン部80との融着工程を、共通の高周波ウエルダー81を用いて行なうようにすれば、作業工程を大幅に短縮することができる。
【0062】
【発明の効果】
請求項1に記載した発明によれば、通気性が良く軽量でかつ歪みの復元性の良い樹脂ばね体を備えたばね装置を提供することができる。しかもこの樹脂ばね体は、連続線状体どうしが融着しているからバインダが不要であり、再溶融によるリサイクル使用が容易である。
【0063】
請求項2と3に記載した発明によれば、熱可塑性ポリエステルエラストマ−樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマ−樹脂との混合物からなる熱可塑性エラストマ−樹脂により、本発明の目的にかなうばね装置を得ることができる。
【0064】
請求項4に記載した発明によれば、縁部を折返し、融着部を形成することにより、樹脂ばね体のフレームに対する取付個所の強度を高めることができる。
【0065】
請求項5に記載した発明によれば、縁部に芯材を設けることにより、樹脂ばね体のフレームに対する取付個所の強度をさらに高めることができる。
【0066】
請求項6に記載した発明によれば、樹脂ばね体に低目付部と高目付部を形成することにより、乗り心地をさらによくすることができる。
【0067】
請求項7に記載した発明によれば、樹脂ばね体にウエルドパターン部を設けることにより、乗り心地をさらによくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のばね装置を示す斜視図。
【図2】図1に示されたばね装置に設ける樹脂ばね体の一部の拡大図。
【図3】図1に示されたばね装置を備えたシートを一部断面で示す斜視図。
【図4】図1に示されたばね装置のフック部付近の断面図。
【図5】図1に示された樹脂ばね体の融着部を示す斜視図。
【図6】樹脂ばね製造装置の概略図。
【図7】図6に示された樹脂ばね製造装置のノズル部の斜視図。
【図8】図6に示された樹脂ばね製造装置のコンベアと連続線状体を示す斜視図。
【図9】樹脂ばね体の荷重と伸びとの関係を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態を示す樹脂ばね体の一部の斜視図。
【図11】図10に示された樹脂ばね体とフレームの一部の断面図。
【図12】本発明の第3の実施形態を示す樹脂ばね体の平面図。
【図13】本発明の第4の実施形態を示す樹脂ばね体の平面図。
【図14】図13に示された樹脂ばね体と高周波ウエルダーの一部を示す図。
【符号の説明】
10…ばね装置
11…フレーム
12,12A,12B…樹脂ばね体
20…シート
30…フック部
31…取付け孔
40…連続線状体
46…融着部
50…樹脂ばね製造装置
60…芯材
70…低目付部
71…高目付部
80…ウエルドパターン部

Claims (7)

  1. 熱可塑性エラストマ−樹脂からなる線径0.2〜1.5mmの複数本の連続線状体を互いの交絡点において融着し網状に形成してなる目付量0.03〜0.3g/cmの樹脂ばね体と、
    前記樹脂ばね体を取付けるフレームとを具備したことを特徴とするばね装置。
  2. 前記熱可塑性エラストマ−樹脂が、熱可塑性ポリエステルエラストマ−樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマ−樹脂との混合物からなり、該熱可塑性ポリエステルエラストマ−樹脂の混合比が20〜50%であることを特徴とする請求項1に記載のばね装置。
  3. 前記熱可塑性ポリウレタンエラストマ−樹脂は、ポリオール成分としてポリテトラメチレングリコール、イソシアネート成分としてピュアージフェニルメタンジイソシアネート、鎖延長剤として1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを用いることを特徴とする請求項2に記載のばね装置。
  4. 前記樹脂ばね体の縁部を折返して互いに重なる部位を融着した融着部と、該融着部に形成した取付け孔と、前記フレームに形成され前記取付け孔に挿入されるフック部とを具備したことを特徴とする請求項1に記載のばね装置。
  5. 前記樹脂ばね体の前記融着部に前記縁部に沿う芯材を設け、該芯材の近傍に形成された前記取付け孔に前記フック部を挿入することを特徴とする請求項4に記載のばね装置。
  6. 前記樹脂ばね体は、第1の目付量の低目付部と、該低目付部よりも目付量が大きい第2の目付量の高目付部とを有していることを特徴とする請求項1に記載のばね装置。
  7. 前記樹脂ばね体の両側部間の一部に、該樹脂ばね体を厚み方向に加熱圧着し前記連続線状体どうしを局部的に融着させてなるウエルドパターン部を形成したことを特徴とする請求項1または6に記載のばね装置。
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