JP2004012504A - ズームレンズ及びそれを有する光学機器 - Google Patents

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JP2004012504A JP2002161576A JP2002161576A JP2004012504A JP 2004012504 A JP2004012504 A JP 2004012504A JP 2002161576 A JP2002161576 A JP 2002161576A JP 2002161576 A JP2002161576 A JP 2002161576A JP 2004012504 A JP2004012504 A JP 2004012504A
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白砂 貴司
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Abstract

【課題】回折光学面を用いることで良好な光学性能の特に倍率色収差の小さなズームレンズ及びそれを用いた光学機器を得ること。
【解決手段】物体側より順に、負の屈折力の第1レンズ群、ズーミングに際し光軸上移動する負の屈折力の第2レンズ群、そして全体として正の屈折力の後続レンズ群を有し、かつ、光路中の任意の位置に絞りと、回折光学面を有すること。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビデオカメラやデジタルカメラ、そしてフィルム用カメラ等の光学機器に使用され、広画角でありながら色収差を良好に補正したズームレンズ及びそれを有する光学機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器(撮影機器)の小型軽量化に伴い、それに用いる撮影用のズームレンズの小型化及び高画質化が要求されるようになっている。
【0003】
特に撮像素子としてのCCDは、一般的に従来のフィルムフォーマットより記録画面サイズが小さい為、同じ光学系を使用しても撮影画界が狭くなってしまう。この為、CCDを用いるデジタルカメラなどの光学機器では、小型で高解像であるのみではなく、より広画角な撮影レンズが求められている。
【0004】
広画角なズームレンズの構成(ズームタイプ)としては、物体側より順に、負の屈折力の第1レンズ群と正の屈折力の第2レンズ群で構成した所謂ショートズーム(2群ズームレンズ)と呼ばれるものがある。このズームタイプのズームレンズは全体の構成としては簡易な2群構成で比較的容易に広画角が達成できる為、広く用いられている。
【0005】
しかし2群ズームレンズにおいて、より広画角を達成しようとすると負の屈折力の第1レンズ群、中でも特に物体側に近い位置に配置されている負レンズに強い屈折力が必要となり、この結果、性能面では特に広角端側での画像周辺部の劣化、即ち像面湾曲、非点隔差、歪曲などが著しく悪化し、これらの収差を良好に補正することが困難となる。
【0006】
これらの問題に対し、例えば特開昭57−20713号公報では、物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群と正の屈折力の第2レンズ群で構成したズームレンズにおいて、第1レンズ群中に非球面を配置することで歪曲を始めとした諸収差を良好に補正したズームレンズを提案している。
【0007】
また、特開平6−230281号公報では、物体側から負の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群で構成し、二つの負の屈折力のレンズ群の屈折力を適正に規定することで、非球面を用いずに像面湾曲、非点隔差、歪曲などを良好に補正したズームレンズを提案している。
【0008】
一般に、非球面は諸収差の補正を容易にし、光学系の小型、高性能化に非常に大きな効果がある。しかしながら諸収差のうち色収差に関しては、その補正はレンズ系を構成する硝材の色分散特性及び正、負レンズの組み合わせによる色消し条件に関わるため、非球面効果による色収差の補正は多く期待できない。
【0009】
この色収差の発生、変動を小さく抑える方法として、回折光学素子を用いた撮像光学系が、例えば特開平4−213421号公報、特開平8−324262号公報、特開平11−133305号公報、米国特許第5268790号等で提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
一般に広画角系の撮影レンズでは、画角が広くなるに従い諸収差が増加する。特に色収差のうち倍率色収差の発生が大きくなり、この補正が困難になってくる。
【0011】
例えば、広画角を含むズームレンズでは変倍による色収差の変動が大きくなってきて全変倍範囲にわたり、又物体距離全般にわたり高い光学性能を得るのが大変難しくなってくる。
【0012】
本発明は、広画角でありながら色収差の良好に補正された高画質なズームレンズ及びそれを有する光学機器の提供を目的とする。
【0013】
この他、本発明は、回折光学面をレンズ系の適切な位置に設定することにより、広角端から望遠端に至る全変倍範囲にわたり、良好なる光学性能を有した広画角のズームレンズ及びそれを有する光学機器の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明のズームレンズは、
物体側より順に、負の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、そして全体として正の屈折力の後続レンズ群を有し、変倍に際し前記各レンズ群の間隔が変化するように少なくとも前記第2レンズ群が光軸上を移動し、かつ、光路中の任意の位置に絞りと、回折光学面を有することを特徴としている。
【0015】
請求項2の発明は請求項1の発明において、
前記後続レンズ群は、正の屈折力の第3レンズ群を有していることを特徴としている。
【0016】
請求項3の発明は請求項1の発明において、
前記後続レンズ群は、物体側より順に、正の屈折力の第3レンズ群、負の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群を有することを特徴としている。
【0017】
請求項4の発明は請求項1、2又は3の発明において、
前記回折光学面は前記第1レンズ群中に配置されていることを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明は請求項4の発明において、
φDを前記回折光学面の設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φN1Dを前記回折光学面を含む第1レンズ群全体の光学的パワー、φN2を前記第2レンズ群の光学的パワーとするとき、
|φD/φN1D|<0.15
0.3<φN1D/φN2<2.0
の条件式を満足することを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明は請求項1、2又は3の発明において、
前記回折光学面は前記後続レンズ群中の正の屈折力のレンズ群に配置されていることを特徴としている。
【0020】
請求項7の発明は請求項6の発明において、
φDを前記回折光学面の設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φPを前記回折光学面を含む正の屈折力のレンズ群全体の光学的パワーとするとき、
|φD/φP|<0.08
の条件式を満足することを特徴としている。
【0021】
請求項8の発明は請求項1、2又は3の発明において、
前記回折光学面は前記第2レンズ群中に配置されていることを特徴としている。
【0022】
請求項9の発明は請求項8の発明において、
φDを前記回折光学面の設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φN2Dを前記回折光学面を含む第2レンズ群全体の光学的パワー、φN1を前記第1レンズ群の光学的パワーとするとき、
|φD/φN2D|<0.12
0.3<φN1/φN2D<2.0
の条件式を満足することを特徴としている。
【0023】
請求項10の発明は請求項1から9のいずれか1項の発明において、
前記回折光学面は、光軸に対し回転対称な形状であることを特徴としている。
【0024】
請求項11の発明は請求項1から10の発明において、撮像素子上に像を形成するための光学系であることを特徴としている。
【0025】
請求項12の発明の光学機器は、請求項1から11のいずれか1項のズームレンズと、該ズームレンズによって形成された像を受光する撮像素子を有している。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態1の数値実施例1のズームレンズの広角端のレンズ断面図である。図2、図3は本発明の実施形態1の数値実施例1のズームレンズの広角端と望遠端における無限遠物体のときの縦収差図である。
【0027】
図4は本発明の実施形態2の数値実施例2のズームレンズの広角端のレンズ断面図である。図5、図6は本発明の実施形態2の数値実施例2のズームレンズの広角端と望遠端における無限遠物体のときの縦収差図である。
【0028】
図7は本発明の実施形態3の数値実施例3のズームレンズの広角端のレンズ断面図である。図8、図9は本発明の実施形態3の数値実施例3のズームレンズの広角端と望遠端における無限遠物体のときの縦収差図である。
【0029】
図10は本発明の実施形態4の数値実施例4のズームレンズの広角端のレンズ断面図である。図11、図12は本発明の実施形態4の数値実施例4のズームレンズの広角端と望遠端における無限遠物体のときの縦収差図である。
【0030】
図13は本発明の実施形態5の数値実施例5のズームレンズの広角端のレンズ断面図である。図14、図15は本発明の実施形態5の数値実施例5のズームレンズの広角端と望遠端における無限遠物体のときの縦収差図である。
【0031】
図16は本発明の実施形態6の数値実施例6のズームレンズの広角端のレンズ断面図である。図17、図18は本発明の実施形態6の数値実施例6のズームレンズの広角端と望遠端における無限遠物体のときの縦収差図である。
【0032】
実施形態1〜6のレンズ断面図において、L1は負の屈折力の第1群(第1レンズ群)、L2はズーミングに際し移動する負の屈折力の第2群(第2レンズ群)、RLは全体としての正の屈折力の後続レンズ群、L3は正の屈折力の第3群(第3レンズ群)、L4は負の屈折力の第4群(第4レンズ群)、L5は正の屈折力の第5群(第5レンズ群)、SPは絞りであり、ズーミングに際して移動している。IPは像面であり、撮像素子の撮像面が位置している。DLは光軸に対し回転対称な回折光学面、ALは非球面である。矢印は広角端から望遠端へのズーミングにおけるレンズ群の移動方向を示している。
【0033】
尚、各実施形態では基板面となる球面に対して回転対称な位相型の回折格子で構成される回折光学部(回折部)を設けたレンズ(回折光学素子)を1以上用いている。
【0034】
尚、回折光学部は位相型の回折格子で構成しているので、実際には所定の厚みを持つことになるが、幾何光学的には無視できる程度の厚みなので、後述する数値実施例では厚みを無視して示している。厚みを無視する場合には回折光学面と呼ぶ。広角端と望遠端とは、変倍用レンズ群が機構上、移動可能な範囲の両端に位置したときのズーム位置をいう。
【0035】
収差図において、d、g、C、Fはそれぞれd線、g線、C線及びF線、ΔM、ΔSはメリジオナル像面、サジタル像面を表している。
【0036】
図1、図10の実施形態1、4では第1レンズ群L1中に回折光学面DLを設け、図7の実施形態3では第2レンズ群L2に回折光学面DLを設けている。
【0037】
図4、図13、図16の実施形態2、5、6において、後続レンズ群RL中に回折光学面DLを設けるときは、正の屈折力のレンズ群に設けている。
【0038】
実施形態2は後続レンズ群RLが正の屈折力の第3レンズ群L3より成るので第3レンズ群L3中に設けている。
次に各実施形態のレンズ構成の特徴について説明する。
【0039】
図1の実施形態1のズームレンズは、物体側より順に、負の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力で絞りSPを含む第3レンズ群L3より構成している。広角端から望遠端へのズーミングに際し、第1レンズ群L1は固定、第2レンズ群L2は像面側に凸状の軌跡を描くように移動、第3レンズ群L3は物体側へ移動する。絞りSPは第3レンズ群L3中に配置され、ズーミングに際して第3レンズ群L3と共に移動する。
【0040】
本実施形態のズームレンズは、負の屈折力の前方レンズ群と正の屈折力の後方レンズ群RLより成り、双方のレンズ群を移動させてズーミングを行う、所謂ショートズームタイプのレンズ群配置における第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の物体側にさらに負の屈折力の第1レンズ群L1を配置したレンズ構成に相当している。
【0041】
変倍の効果(負担)を第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の移動により行い、歪曲などの収差補正は主に第1レンズ群L1で行い、これにより変倍及び収差収差の役割分担を効率的に行っている。負の屈折力の第1レンズ群L1を正レンズと負レンズより構成することで、収差補正を効果的に行っている。
【0042】
第1レンズ群L1中に回折光学面(回折部)DLを配置している。これにより、通常の屈折光学系だけでは補正が困難な色収差の補正を良好に行っている。特に本実施形態では、瞳近軸光線が光軸から高い位置を通る最も物体側のレンズのレンズ面R2を回折光学面DLとし、倍率色収差の補正を効果的に行っている。また、回折光学面DLに非球面の効果を持たせ、この非球面効果により像面湾曲、非点隔差、歪曲などの諸収差を良好に補正している。
【0043】
φDを回折光学面DLの設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー(屈折力)、φN1Dを回折光学面DLを含む第1レンズ群L1全体の光学的パワー、φN2を第2レンズ群L2の光学的パワーとするとき、
|φD/φN1D|<0.15 ・・・(1)
0.3<φN1D/φN2<2.0 ・・・(2)
を満足するようにしている。
【0044】
条件式(1)は主に色収差を良好に補正するのために必要な回折光学面DLの回折作用による光学的パワーの範囲を規定している。
【0045】
ここで回折光学面DLの光学的パワーφDの符号は、瞳近軸光線の光軸からの高さが結像位置方向と逆符号側となる絞りSPよりも物体側に回折光学面DLが配置されている場合には負の値をとり、瞳近軸光線の光軸からの高さが結像位置方向と同符号側となる絞りSPよりも像側に回折光学面DLが配置されている場合には正の値をとる。条件式(1)を満足することにより、広角端で顕著に発生する倍率色収差を良好に補正している。
【0046】
条件式(2)は、収差補正作用とズーミング作用を分担する第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の光学的パワーのバランスを規定している。条件式(2)の上限値を超えるほど第2レンズ群L2の光学的パワーが小さいとズーミング時の移動量が大きく必要となると共にズーミングによる収差変動の補正が困難となり、下限を超えるほど第1レンズ群L1の光学的パワーが小さいと第1レンズ群L1での収差補正能力が弱まり、望ましくない。
【0047】
実施形態1のズームレンズは、これらの構成をとることによって、広画角でありながら特に色収差を良好に補正し高い光学性能を達成している。
【0048】
図4の実施形態2のズームレンズは、全体のレンズ構成として実施形態1と回折光学面DLを形成するレンズ面を除き同様である。
【0049】
実施形態2では、第3レンズ群L3中に回折光学面DLを配置している。これにより、通常の屈折光学系だけでは補正困難な色収差の補正を良好に行っている。実施形態2では、特に望遠端での瞳近軸光線が比較的光軸より高い位置を通る最も像面側のレンズのレンズ面R23を回折光学面DLとしており、これにより望遠端での倍率色収差の補正を効果的に行っている。
【0050】
φDを回折光学面DLの設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φP3Dを回折光学面DLを含む正の屈折力の第3レンズ群L3全体の光学的パワーとするとき、
|φD/φP3D|<0.08 ・・・(3)
を満足するようにしている。
【0051】
条件式(3)は主に色収差を良好に補正するのために必要な回折光学面DLの回折作用による光学的パワーの条件の範囲を規定している。実施形態2のズームレンズは条件式(3)を満足することでより良好な光学性能を得ている。
【0052】
図7の実施形態3のズームレンズは物体側より順に、負の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、負の屈折力の第4レンズ群L4、正の屈折力の第5レンズ群L5より構成している。広角端から望遠端へのズーミングに際し第1レンズ群L1、第2レンズ群L2は像面側に凸状の軌跡を描くように移動、第3レンズ群L3、第4レンズ群L4、第5レンズ群L5は物体側へ移動する。絞りSPは、ズーミングに際し、第4レンズ群L4と一体的に移動する。
【0053】
実施形態3は、第2レンズ群L2中に回折光学面DLを配置している。これにより、通常の屈折光学系だけでは困難な色収差の補正を良好に行っている。特に実施形態3では、瞳近軸光線が光軸から比較的高い位置を通る最も物体側のレンズのレンズ面R4を回折光学面DLとし、倍率色収差の補正を効果的に行っている。
【0054】
φDを回折光学面DLの設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φN2Dを回折光学面DLを含む第2レンズ群L2全体の光学的パワー、φN1を第1レンズ群L1の光学的パワーとするとき、
|φD/φN2D|<0.12 ・・・(4)
0.3<φN1/φN2D<2.0 ・・・(5)
を満足するようにしている。
【0055】
条件式(4)、(5)を満足することにより、ズーミングに伴い変動する諸収差、特に色収差を良好に補正している。
【0056】
図10の実施形態4、図13の実施形態5、図16の実施形態6のズームレンズは、全体のズームタイプがいずれも図7の実施形態3のズームレンズと同じである。実施形態4、5、6は実施形態3に比べて回折光学面を形成するレンズ面が異なっている。
【0057】
図10の実施形態4は、第1レンズ群L1中のレンズ面R2を回折光学面DLとし、図13の実施形態5は、第3レンズ群L3中のレンズ面R8を回折光学面DLとし、図16の実施形態6は、第5レンズ群L5中のレンズ面R25を回折光学面DLとしている。
【0058】
実施形態4においては、
φDを回折光学面DLの設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φN1Dを回折光学面DLを含む第1レンズ群L1全体の光学的パワー、φN2を第2レンズ群L2の光学的パワー、とするとき、
|φD/φN1D|<0.15 ・・・(1)
0.3<φN1D/φN2<2.0 ・・・(2)
を満足するようにしている。
【0059】
条件式(1)、(2)を満足することにより、実施形態1と同様の効果を得ている。
【0060】
実施形態5においては、
φDを回折光学面DLの設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φP3Dを回折光学面DLを含む正の屈折力の第3レンズ群L3全体の光学的パワーとするとき、
|φD/φP3D|<0.08 ・・・(3)
を満足するようにしている。
【0061】
条件式(3)を満足することにより、実施形態2と同様の効果を得ている。
【0062】
実施形態6において、φDを前記回折光学面の設計波長、設計回折次数の回折光に対する屈折力、φP5Dを回折光学面を含む第5レンズ群L5全体の光学的パワーとするとき、
|φD/φP5D|<0.08 ・・・(6)
を満足するのが良い。
【0063】
これにより、色収差を良好に補正し、高い光学性能を得ている。尚、各実施形態における回折光学面DLの光学的パワーφDの符号は、実施形態1、3、4、5が負、実施形態2、6が正である。
【0064】
以上の各実施形態において、収差補正上更に好ましくは、各条件式(1)〜(6)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
【0065】
|φD/φN1D|<0.1 ・・・(1a)
0.35<φN1D/φN2<1.5 ・・・(2a)
|φD/φP3D|<0.05 ・・・(3a)
|φD/φN2D|<0.08 ・・・(4a)
0.35<φN1/φN2D<1.5 ・・・(5a)
|φD/φP5D|<0.04 ・・・(6a)
各実施形態では、第2レンズ群L2を光軸上に移動させることで、物体距離が無限遠から至近に変動したとき、又、その逆のときのフォーカシングを行っている。レンズ群構成が比較的大きくなる第1レンズ群L1を移動させてフォーカシングを行う方法に比べ、第2レンズ群L2でフォーカスを行う方法は、フォーカシングの為の駆動機構への負荷が軽いという利点がある。
【0066】
各実施形態では回折光学面を1つ用いているが、更に回折光学面を1以上追加しても良く、これによれば、更に良好な光学性能が得られる。追加する回折光学面は、正の光学的パワーであっても負の光学的パワーであってもよい。また、各回折光学面は球面に配置してあるが、平面又は非球面をベースとしてもよく、又、対向する両面に施してもよい。更に、ベースの材質は光を透過するものであれば、特にガラスでなくてもプラスチック等の他の材質でも良い。
【0067】
本発明に係る回折光学面はホログラフィック光学素子の制作手法であるリソグラフィック手法で2値的に製作した光学素子であるバイナリーオプテックスで製作してもよい。またこれらの方法で作成した型によって製造してもよい。また光学面にプラスチック等の膜を上記回折光学面として転写する方法(いわゆる複合型非球面、レプリカ非球面など)で作成してもよい。
【0068】
位相形状で表わされる回折光学素子の回折格子形状(回折光学面又は回折光学部ともいう。)は、例えば図19に示すキノフォーム形状が適用可能である。図20は図19に示す回折光学素子の1次回折効率の波長依存特性を示している。実際の回折光学素子101は、基材102の表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、樹脂部に波長530nmで1次回折効率が100%となるような格子厚dの格子部103を複数形成した回折格子を設けて構成している。
【0069】
図20で明らかなように設計次数での回折効率は最適化した波長530nmから離れるに従って低下し、一方設計次数近傍の次数0次、2次回折光が増大している。この設計次数以外の回折光の増加は、フレアとなり、光学系の解像度の低下につながる。
【0070】
そこで図21に示す積層型の回折格子を本発明の実施形態における回折光学素子の格子形状(回折光学面)として用いても良い。
【0071】
図22はこの構成の回折光学素子の1次回折効率の波長依存特性である。具体的な構成としては、基材上に紫外線硬化樹脂(nd=1.499,νd=54)からなる第1の回折格子104を形成し、その上に別の紫外線硬化樹脂(nd=1.598,νd=28)からなる第2の回折格子105を形成している。この材質の組み合わせでは、第1の回折格子104の格子部の格子厚d1はd1=13.8μm、第2の回折格子の格子部の格子厚d2はd2=10.5μmとしている。
【0072】
図22から分かるように積層構造の回折格子にすることで、設計次数の回折効率は、使用波長全域で95%以上の高い回折効率を有している。
【0073】
この他、図23に示すようなエアギャップをはさんだ2層構成のもの等が適用可能である。図23に示す2つの回折格子106,107を用いた回折光学素子の1次回折光の回折効率の波長依存特性を図24に示す。図23では基材102上に紫外線硬化樹脂からなる第1の回折格子107を形成し、基材102’上に紫外線硬化樹脂からなる第2の回折格子106を形成している。
【0074】
図24からわかるように設計次数の回折効率は、使用波長全域で95%以上の高い回折効率を有している。
【0075】
図25は3つの回折格子106、107、108を用いた回折光学素子の説明図である。回折格子を3層以上積層すれば、更に良好なる光学特性が得られる。
【0076】
図26は図25に示す回折光学素子の1次回折光の回折効率の波長依存特性の説明図である。
【0077】
図25で示す積層構造の回折光学素子を用いれば、空気層に触れる部分の回折格子の格子厚を薄くすることが可能となる。それにより回折格子のエッジの壁部分で発生する散乱光によるフレアが低減され、また回折格子に入射する光の入射角の増大に伴う回折効率低下の軽減も可能となり、光学性能は更に改善される。
【0078】
また、各実施形態で用いる回折光学素子を積層構造の回折格子にしてレンズの接合面または微小な空気間隔を持った隣接面に配置することにより、回折格子を外気に触れにくい構成とすることができ、ごみの付着、汚れなどによる画質を劣化させる不要な散乱光の発生を低減している。
【0079】
このように本発明の各実施形態で用いる回折光学素子として積層構造の回折格子を用いることで、光学性能を更に改善している。
【0080】
尚、前述の積層構造の回折光学素子として、材質を紫外線硬化樹脂に限定するものではなく、他のプラスチック材なども使用できるし、基材によっては、第1の回折格子を直接基材に形成してもよい。
【0081】
また、各格子厚が異なる必要はなく、材料の組み合わせによっては図27に示すように2つの格子部の格子厚を等しくできる。この場合は、回折光学素子の表面に格子形状が形成されないので、防塵性に優れ、回折光学素子の組み立て作業性が向上し、より安価な光学系を提供できる。
【0082】
図28は本発明のズームレンズをフィルム用カメラやデジタルカメラ等の一眼レフカメラに適用したときの光学機器の要部概略図である。
【0083】
図28において20はカメラ本体、21は本発明のズームレンズ、22は撮像手段であり、フィルム、CCD等から成っている。23はファインダー系であり、被写体像が形成される焦点板25、像反転手段としてのペンタプリズム26焦点版25上の被写体像を観察する為の接眼レンズ27を有している。24はクイックリターンミラーである。
【0084】
次に、本発明の実施形態1〜6に各々対応する数値実施例1〜6を示す。各数値実施例においてiは物体側からの光学面の順序を示し、riは第i番目の光学面(第i面)の曲率半径、diは第i面と第i+1面との間の間隔、niとνiはそれぞれd線に対する第i番目の光学部材の材質の屈折率、アッベ数を示す。ここで、曲率半径および面間隔の単位はmm(ミリメートル)である。
【0085】
fは焦点距離、FnoはFナンバー、ωは半画角である。またkを離心率、B、C、D、Eを4次、6次、8次、10次の非球面係数、光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位を面頂点を基準にしてxとするとき、非球面形状は、
x=(h/R)/[1+[1−(1+k)(h/R)1/2]+Bh+Ch+Dh+Eh10
で表される。但しRは曲率半径である。また、例えば「e−Z」の表示は「10−Z」を意味する。
【0086】
各数値実施例は共にDLで示す面に回折光学面が設けられており、ALで示す面は非球面である。
【0087】
ここで、各数値実施例の回折作用する回折光学部の位相形状φは、次式によって定義している。
【0088】
φ(h,m)=(2π/mλ)(C+C+C…)
但し、hは光軸に対して垂直方向の高さ、mは回折光の回折次数、λは設計波長、Ciは位相係数(i=1,2,3…)である。
【0089】
この時、任意の波長λ、任意の回折次数mに対する回折光学面Dの光学的パワーφは、最も低次の位相係数Cを用いて次のように表わすことができる。
【0090】
φ(λ,m)=−2Cmλ/λ
各数値実施例において、回折光の回折次数mは1であり、設計波長λはd線の波長(587.56nm)である。
【0091】
前述した各条件式と数値実施例1〜6の数値例との関係を表−1に示す。
【0092】
【外1】
Figure 2004012504
【0093】
【外2】
Figure 2004012504
【0094】
【外3】
Figure 2004012504
【0095】
【外4】
Figure 2004012504
【0096】
【外5】
Figure 2004012504
【0097】
【外6】
Figure 2004012504
【0098】
【表1】
Figure 2004012504
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、回折光学素子及び各レンズ群のレンズ構成を適切に設定することにより、良好なる光学性能を有したズームレンズ及びそれを有する光学機器を達成することができる。
【0100】
この他本発明によれば、レンズ系の最適な場所に回折光学素子を配置することによりズーミングやフォーカシングに伴う色収差の悪化を抑制した、高性能な写真用カメラやビデオカメラ、デジタルカメラ等に好適なズームレンズ及びそれを有する光学機器を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】数値実施例1の広角端におけるレンズ断面図
【図2】数値実施例1の広角端における無限遠物体の縦収差図
【図3】数値実施例1の望遠端における無限遠物体の縦収差図
【図4】数値実施例2の広角端におけるレンズ断面図
【図5】数値実施例2の広角端における無限遠物体の縦収差図
【図6】数値実施例2の望遠端における無限遠物体の縦収差図
【図7】数値実施例3の広角端におけるレンズ断面図
【図8】数値実施例3の広角端における無限遠物体の縦収差図
【図9】数値実施例3の望遠端における無限遠物体の縦収差図
【図10】数値実施例4の広角端におけるレンズ断面図
【図11】数値実施例4の広角端における無限遠物体の縦収差図
【図12】数値実施例4の望遠端における無限遠物体の縦収差図
【図13】数値実施例5の広角端におけるレンズ断面図
【図14】数値実施例5の広角端における無限遠物体の縦収差図
【図15】数値実施例5の望遠端における無限遠物体の縦収差図
【図16】数値実施例6の広角端におけるレンズ断面図
【図17】数値実施例6の広角端における無限遠物体の縦収差図
【図18】数値実施例6の望遠端における無限遠物体の縦収差図
【図19】本発明に係る回折光学素子の説明図
【図20】本発明に係る回折光学素子の波長依存特性の説明図
【図21】本発明に係る回折光学素子の説明図
【図22】本発明に係る回折光学素子の波長依存特性の説明図
【図23】本発明に係る回折光学素子の説明図
【図24】本発明に係る回折光学素子の波長依存特性の説明図
【図25】本発明に係る回折光学素子の説明図
【図26】本発明に係る回折光学素子の波長依存特性の説明図
【図27】本発明に係る回折光学素子の説明図
【図28】本発明の光学機器の説明図
【符号の説明】
L1  第1レンズ群
L2  第2レンズ群
RL  後続レンズ群
L3  第3レンズ群
L4  第4レンズ群
L5  第5レンズ群
SP  開口絞り
IP  像面
d  d線
g  g線
ΔS  サジタル像面
ΔM  メリディオナル像面
ω  画角
Fno  Fナンバー
101  回折光学素子
102  基板
103、104、105、106、107、108  回折格子
21  ズームレンズ
22  撮像手段
23  ファインダー系
24  クイックリターンミラー
25  焦点版

Claims (12)

  1. 物体側より順に、負の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、そして全体として正の屈折力の後続レンズ群を有し、変倍に際し前記各レンズ群の間隔が変化するように少なくとも前記第2レンズ群が光軸上を移動し、かつ、光路中の任意の位置に絞りと、回折光学面を有することを特徴とするズームレンズ。
  2. 前記後続レンズ群は、正の屈折力の第3レンズ群を有していることを特徴とする請求項1のズームレンズ。
  3. 前記後続レンズ群は、物体側より順に、正の屈折力の第3レンズ群、負の屈折力の第4レンズ群、正の屈折力の第5レンズ群を有することを特徴とする請求項1のズームレンズ。
  4. 前記回折光学面は前記第1レンズ群中に配置されていることを特徴とする請求項1、2又は3のズームレンズ。
  5. φDを前記回折光学面の設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φN1Dを前記回折光学面を含む第1レンズ群全体の光学的パワー、φN2を前記第2レンズ群の光学的パワーとするとき、
    |φD/φN1D|<0.15
    0.3<φN1D/φN2<2.0
    の条件式を満足することを特徴とする請求項4のズームレンズ。
  6. 前記回折光学面は前記後続レンズ群中の正の屈折力のレンズ群に配置されていることを特徴とする請求項1、2又は3のズームレンズ。
  7. φDを前記回折光学面の設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φPを前記回折光学面を含む正の屈折力のレンズ群全体の光学的パワーとするとき、
    |φD/φP|<0.08
    の条件式を満足することを特徴とする請求項6のズームレンズ。
  8. 前記回折光学面は前記第2レンズ群中に配置されていることを特徴とする請求項1、2又は3のズームレンズ。
  9. φDを前記回折光学面の設計波長、設計回折次数の光に対する光学的パワー、φN2Dを前記回折光学面を含む第2レンズ群全体の光学的パワー、φN1を前記第1レンズ群の光学的パワーとするとき、
    |φD/φN2D|<0.12
    0.3<φN1/φN2D<2.0
    の条件式を満足することを特徴とする請求項8のズームレンズ。
  10. 前記回折光学面は、光軸に対し回転対称な形状であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項のズームレンズ。
  11. 撮像素子上に像を形成する為の光学系であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のズームレンズ。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載のズームレンズを有していることを特徴とする光学機器。
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