JP2004010664A - 表面に樹脂層を有する材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面にポリアミド酸層を有する材料を製造する方法であって、(a)無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料の該官能基と、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させることにより、当該材料の表面にポリアミド酸層を形成する工程を含む製造方法;表面にポリイミド層を有する材料を製造する方法であって、前記工程(a)の後に、さらに(b)当該ポリアミド酸層をイミド化することによりポリイミド層を生成させる工程を含む製造方法;表面にポリイミド層を有する材料であって、当該ポリイミド層がポリイミド微粒子により形成される層である材料、或いは当該ポリイミド層が前記官能基を介して材料の表面に形成されたポリイミド薄膜により形成される層である材料。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に樹脂層を有する新規な材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドは、機械的特性に加えて耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等に優れ、電気・電子材料、自動車、その他金属・セラミックスの代替材料として幅広く利用されている。
【0003】
従来提案されているポリイミド薄膜の製造方法は、ポリアミド酸ワニスを基板上にディッピング、キャスティング、スピンコートなどの方法を用いて薄膜を形成し、加熱や触媒などによってイミド化させる方法;ポリイミドの原料であるジアミンと無水テトラカルボン酸を真空蒸着した後、加熱してイミド化する方法などである。しかしながら、従来の方法で得られるポリイミド薄膜は、基板と物理的に接着しているのみであり、接着性の良好な基板上にしかコーティングができない。また、これらの方法では複雑な形状の基板へのナノサイズで制御された均一なコーティングが不可能である。従って、基材への密着性、緻密性、均一性などの点でさらに優れた薄膜が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、表面に樹脂層(ポリアミド酸層又はポリイミド層)を有する新規な材料及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料を用い、当該官能基、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させて、当該材料の表面にポリアミド酸層を形成させ、次いで当該ポリアミド層をイミド化してポリイミド層を生成させることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記の各項に係る発明を提供するものである。
項1 表面にポリアミド酸層を有する材料を製造する方法であって、
(a) 無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料の該官能基と、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させることにより、当該材料の表面にポリアミド酸層を形成する工程を含むことを特徴とする製造方法。
項2 表面にポリイミド層を有する材料を製造する方法であって、
(a) 無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料の該官能基と、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させることにより、当該材料の表面にポリアミド酸層を形成する第一工程、及び
(b) 当該ポリアミド層をイミド化することによりポリイミド層を生成させる第二工程
を含むことを特徴とする製造方法。
項3 反応を有機溶媒の存在下で行うことを特徴とする項1に記載の製造方法。
項4 第一工程において、反応を有機溶媒の存在下で行うことを特徴とする項2に記載の製造方法。
項5 第二工程において、ポリアミド酸のイミド化を有機溶媒中で加熱することにより行う項2又は4に記載の製造方法。
項6 第二工程において、ポリアミド酸のイミド化を気相中で加熱することにより行う項2又は4に記載の製造方法。
項7 表面にポリイミド層を有する材料であって、当該ポリイミド層がポリイミド微粒子により形成される層であることを特徴とする材料。
項8 ポリイミド層が、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を介して材料の表面に形成される層であることを特徴とする項7に記載の材料。
項9 表面にポリイミド層を有する材料であって、
当該ポリイミド層が、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を介して材料の表面に形成されたポリイミド薄膜により形成される層であることを特徴とする材料。
項10 材料が、シリコンウェハであることを特徴とする項7又は8に記載の材料。
項11 材料が、シリコンウェハであることを特徴とする項9に記載の材料。
項12 ポリイミド層の厚さが10〜1000nmであることを特徴とする項7、8又は10に記載の材料。
項13 ポリイミド層の厚さが10〜1000nmであることを特徴とする項9又は11に記載の材料。
項14 層間絶縁膜用材料である請求項7又は8に記載の材料。
項15 層間絶縁膜用材料である請求項9に記載の材料。
【0007】
【発明の実施の形態】
本明細書において、「ポリイミド」には、「ポリアミドイミド」が含まれる。
【0008】
本発明の方法は、表面にポリイミド層を有する材料を製造する方法であって、(a)無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料の該官能基と、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させることにより、当該材料の表面にポリアミド酸層を形成する第一工程、及び(b)当該ポリアミド層をイミド化することによりポリイミド層を生成させる第二工程を含む方法である。
【0009】
本発明は、前記方法の第一工程のみを含む方法、即ち、表面にポリアミド酸層を有する材料を製造する方法であって、(a)無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料の該官能基と、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させることにより、当該材料の表面にポリアミド酸層を形成する工程を含む方法も含む。
【0010】
以下、第一工程(工程(a))及び第二工程(工程(b))を詳述する。
【0011】
(1)第一工程
第一工程では、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料を用い、当該官能基、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させて、当該材料の表面に、ポリアミド酸層を形成する。
【0012】
本発明において、基材となる材料としては、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有するものであれば特に限定されるものではなく、得られる材料の用途に応じて公知の材料より適宜選択することができる。
【0013】
無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、酸クロライド基、無水カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基などが挙げられる。基材となる材料は、1種又は2種以上の官能基を有している。
【0014】
材料が表面に無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を有していない場合には、例えば、かかる官能基を有するシランカップリング剤で常法に従って材料の表面を処理することにより、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を付与することができる。シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。
【0015】
基材となる材料としては、例えば、シリコンウェハ、ポリイミド、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂などのプラスチック材料、ガラス、セラミックス、金属等の無機材料などが挙げられる。
【0016】
材料の大きさは特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、シリコンウェハの場合は、通常、厚みが0.5〜5mm程度、直径20〜330mm程度である。
【0017】
無水テトラカルボン酸としては、特に制限されず、例えば従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものも使用できる。具体的には、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂環族テトラカルボン酸二無水物;チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の複素環族テトラカルボン酸二無水物等を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、特にBTDA、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が、反応性、得られる薄膜の物性(耐熱性、機械的強度等)、コストの点で好ましい。
【0018】
また、本発明では、無水テトラカルボン酸の一部を酸クロライドで置換したものを使用することができる。酸クロライドで置換すれば、条件によって反応速度を大きくできる等の効果が得られる。酸クロライドとしては、例えばジエチルピロメリテイトジアシルクロライド等を用いることができる。
【0019】
本明細書において、ポリイミドには、ポリアミドイミドも含まれる。ポリアミドイミドを製造するためには、公知の原料を用いればよい。例えば、無水テトラカルボン酸の一部に代えて、ジカルボン酸クロライドを用いることにより製造することができる。具体的には、(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、環状脂肪族テトラカルボン酸二無水物、複素環族テトラカルボン酸二無水物等の無水テトラカルボン酸と、(ii)芳香族ジカルボン酸クロライド、脂肪族ジカルボン酸クロライド、環状脂肪族ジカルボン酸クロライド、複素環族ジカルボン酸クロライド等のジカルボン酸クロライドと、(iii)芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、環状脂肪族ジアミン等のジアミン化合物とを原料として用い上記したようなポリアミド酸層の場合と同様の方法でポリアミド−ポリアミド酸層を形成し、それを定法にしたがってイミド化して得ることができる。
【0020】
ジアミン化合物としては、特に制限されず、例えば従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものも使用できる。例えば、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド(ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン(PPD)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(ASN)、3,4−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビベンジル、R(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、S(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン等の1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(nは、3〜10)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;1,2−ジアミノメタン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノドデカン、1,11−ジアミノウンデカン等の脂肪族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミンのほか、3,4−ジアミノピリジン、1,4−ジアミノ−2−ブタノン等を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、特にTPE−Q、ASD、DPE、TPE−R、MDA、BAPB等が、反応性や得られる微粒子の物性(耐熱性、結晶性)の点で好ましい。
【0021】
また、ジアミン化合物のほかに、他のアミン系化合物(モノアミン化合物、多価アミン化合物等)も用いることができる。これらにより、得られる材料の特性を変えることができる。
【0022】
無水テトラカルボン酸とジアミン化合物の組み合わせとしては、具体的には、(1)p−フェニレンジアミンとピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(2)p−フェニレンジアミンとBTDAとの組み合わせ、(3)o−フェニレンジアミンとピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(4)4,4’−ジアミノジフェニルサルファイドとピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(5)p−フェニレンジアミンと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(6)p−フェニレンジアミン及びo−フェニレンジアミンとピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(7)p−フェニレンジアミン及びo−フェニレンジアミンと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(8)p−フェニレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルサルファイドとピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(9)p−フェニレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルサルファイドと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(10)p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルサルファイドとピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(11)p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルサルファイドと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(12)p−フェニレンジアミンとピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(13)o−フェニレンジアミンとピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(14)4,4’−ジアミノジフェニルサルファイドと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(15)4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド及びp−フェニレンジアミンとピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(16)4,4’−ジアミノジフェニルサルファイドと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(17)1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(18)DPEとBTDAとの組み合わせ、(19)ASDとBTDAとの組み合わせ、(20)p−フェニレンジアミンとBTDAとの組み合わせ、(21)DPEと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(22)ASDと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(23)p−フェニレンジアミンと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、(24)DPEとピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(25)ASDとピロメリット酸二無水物との組み合わせ、(26)p−フェニレンジアミンとピロメリット酸二無水物との組み合わせ等が挙げられる。
【0023】
第一工程では、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物と、材料の表面の官能基とを反応させるが、該反応は、有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒の存在下で反応させる方法としては、具体的には、(I)有機溶媒中に材料を予め浸漬させておき、該溶媒に無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を加えて材料の表面の官能基と反応させる方法;(II)有機溶媒に無水テトラカルボン酸とジアミン化合物を溶解させた溶液を別々に調製し、該溶液を材料にスプレーコーティング、ディッピング、スピンコート、キャストなどの方法により塗布し、その後材料表面の官能基と無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法としては、(III)無水テトラカルボン酸とジアミン化合物とをそれぞれ溶媒に溶解して溶液とし、無水テトラカルボン酸及び/又はジアミン化合物と反応し得る官能基を表面に有する基材(材料)を、それぞれの溶液に交互に一定時間毎に浸漬することを繰り返して当該官能基、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させて当該材料の表面にポリアミド酸層を形成し、分子オーダーで薄膜を形成することが可能である。この場合、無水テトラカルボン酸溶液又はジアミン化合物溶液としては、同一のものを繰返し用いてもよく、異なる種類の無水テトラカルボン酸溶液又はジアミン化合物の溶液を用いてもよい。
【0025】
第一工程で使用する無水テトラカルボン酸とジアミン化合物との割合は、通常、無水テトラカルボン酸:ジアミン化合物=1:0.5〜1.5程度(モル比)、好ましくは1:0.9〜1.1程度(モル比)となるように設定すればよい。
【0026】
有機溶媒を用いる場合の該溶媒の種類は、実質的に無水テトラカルボン酸及びジアミンを溶解し、基材となる材料に化学的および物理的に大きな影響を与えないようなものであれば、特に限定されるものではない。
【0027】
かかる有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、2−プロパノン、3−ペンタノン、テトラヒドロピレン、エピクロロヒドリン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトアニリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、酢酸メチル等が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用することができる。
【0028】
反応に有機溶媒を用いる場合、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物と有機溶媒との割合は、ポリアミド酸を得るための反応が進行する限り特に限定されるものではなく、無水テトラカルボン酸及びジアミンの種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば上記(I)の方法では、通常、反応混合物中の濃度が、それぞれ、0.01〜2モル/リットル程度、好ましくは0.1〜1モル/リットル程度となるような量である。
【0029】
また、上記(I)の方法では、無水テトラカルボン酸とジアミン化合物は同時に溶媒に加えてもよく、いずれかの化合物を先に加え、充分溶解させた後にもう一方の化合物を加えてもよい。例えば、材料の表面の官能基がアミノ基であれば、無水テトラカルボン酸を先に加え、アミノ基とカルボキシル基を反応させた後にジアミン化合物を加えればよく、官能基がカルボシル基の場合には、ジアミン化合物を先に加え、カルボキシル基とアミノ基を反応させた後に無水テトラカルボン酸を加えればよい。
【0030】
無水テトラカルボン酸及び/又はジアミン化合物は、溶媒を撹拌しながら添加してもよく、その場合、撹拌は、公知の撹拌方法(撹拌装置)によって行うことができる。
【0031】
また、上記(III)の方法において、無水テトラカルボン酸溶液とジアミン化合物溶液のいずれに先に浸漬させてもよいが、例えば、材料の表面の官能基がアミノ基であれば、まず無水テトラカルボン酸溶液に浸漬し、アミノ基とカルボキシル基を反応させた後にジアミン化合物溶液に浸漬すればよく、官能基がカルボシル基の場合には、ジアミン化合物溶液に先に浸漬させ、カルボキシル基とアミノ基を反応させた後に無水テトラカルボン酸溶液に浸漬させればよい。
【0032】
第一工程における反応温度は、特に制限されず、通常0〜130℃程度、好ましくは20〜50℃程度とすれば良い。なお、反応時間は、通常10分間〜48時間程度、好ましくは4〜24時間程度である。
【0033】
第一工程により、材料の表面にポリアミド酸層が形成される。
【0034】
第一工程で得られる材料は、公知の方法に従って固液分離して回収すればよく、例えば、基材が板状や塊状などの固体物であれば、公知の手動又は電動の補足器具を、材料の大きさに応じて適宜選択して用いることができる(例えば、ピンセット、トングスなど)。粉体や粒状体であれば遠心分離器やデカンテーションや濾過などの公知の方法で固液分離することができる。
【0035】
(2)第二工程
第二工程では、第一工程で得られたポリアミド層をイミド化することによりポリイミド層を生成させる。イミド化する方法は、特に制限されないが、本発明では特に(i)有機溶媒中で加熱してイミド化する方法(熱閉環)、(ii)有機溶媒中における化学反応によりイミド化する方法(化学閉環)、又は(iii)気相中で加熱してイミド化する方法(熱閉環)を採用することが望ましい。
【0036】
上記(i)の加熱による方法は、例えばポリアミド酸層を有する材料を有機溶媒中に浸漬させ、通常130℃以上、好ましくは130〜250℃程度の温度で加熱すればよい。有機溶媒としては、ポリアミド酸の貧溶媒であり、かつ、イミド化反応に必要な温度以上の沸点を有するものであれば制限されず、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、トルエンなどが例示される。或いは、上記有機溶媒中に水と共沸混合物を構成し得る溶媒(以下「共沸溶媒」ともいう)を含むことが好ましい。すなわち、本発明では、共沸溶媒を上記有機溶媒の一部又は全部として用いることもできる。共沸溶媒としては、例えばキシレン、エチルベンゼン、オクタン、シクロヘキサン、ジフェニルエーテル、ノナン、ピリジン、ドデカン等を用いることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、共沸溶媒は上記有機溶媒中10容積%以上含むことが好ましい。共沸溶媒を使用することによって、特に副生する水(主に縮合水)を共沸させ、これを還流等により反応系外へ除去できることから、未反応のアミド結合の加水分解を抑制し、ポリアミド酸の分子量の低下等を防止できる結果、基材の表面上に均一なポリイミド微粒子又は薄膜が形成されるので好ましい。
【0037】
有機溶媒中に浸漬させるポリアミド酸を担持した材料の割合は、有機溶媒の種類等に応じて適宜設定すれば良く、基材が完全に浸漬するような割合であればよい。
【0038】
上記(ii)の化学反応による方法では、公知の化学閉環方法を適用することができる。例えば、ポリアミド酸層を有する材料をピリジン及び無水酢酸からなる有機溶媒中に浸漬させ、撹拌しながら通常15〜115℃程度の温度で24時間程度加熱すればよい。両溶媒の配合割合は適宜設定すればよい。
【0039】
上記(iii)の気相中での熱による方法では、通常130℃以上、好ましくは130〜250℃程度の温度で、必要に応じて減圧下で、4〜24時間程度加熱すればよい。より具体的には、第一工程で溶媒を用いた場合には、基材表面の溶媒を乾燥した後、熱風循環式オーブン、電気炉などの気相中で加熱してイミド化を行うことができる。加熱は、昇温しながら行ってもよく、オーブンや電気炉などを一定温度まで昇温した後、材料を入れ、一定温度で一定時間行うこともできる。
【0040】
第二工程で得られる材料は、公知の方法により回収し、必要に応じて石油エーテル、メタノール、アセトン等の有機溶剤で洗浄すればよい。
【0041】
このようにして、表面にポリイミド層を有する材料が得られる。
【0042】
例えば、上記(i)及び(ii)のように、溶媒中でイミド化を行うと、材料の表面に、通常、平均粒径が10〜1000nm程度、好ましくは10〜50nm程度のポリイミド微粒子層が形成される。この場合、ポリイミド層の厚さは、ポリイミド微粒子の粒径と同程度であり、通常、10〜1000nm程度、好ましくは10〜50nm程度である。
【0043】
また、この場合、ポリイミド微粒子は無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を介して材料の表面に形成されていると考えられ、複数のそれらポリイミド微粒子からなるポリイミド層は、前記官能基を介して材料の表面に形成される層であると考えられる。図1(a)にその模式図を示す。
【0044】
一方、上記(iii)のように、気相中でイミド化を行うと、材料の表面に、通常、10〜1000nm程度、好ましくは10〜50nm程度のポリイミドの薄膜が形成される。当該ポリイミド薄膜は、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を介して材料の表面に形成されていると考えられる。図1(b)にその模式図を示す。
【0045】
ポリイミド微粒子又はポリイミド薄膜からなるポリイミド層が官能基を介して材料の表面に形成されていることは、FT−IR、EDX、ESCAなどにより化学的組成を測定し、SEMやAFMなどにより形態を観察することによって確認することができる。
【0046】
本明細書で、ポリイミド微粒子又はポリイミド薄膜が無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を介しているとは、例えば官能基がアミノ基であった場合は、−NH−を介して材料表面にポリイミド微粒子又はポリイミド薄膜が形成されており、官能基がカルボキシル基であった場合、−CO−を介して材料表面にポリイミド微粒子又はポリイミド薄膜が形成されている。
【0047】
本発明では、第一工程と第二工程を繰り返して、複数のポリイミド層を有する多層構造とすることもできる。
【0048】
本発明には、上述の第1工程〜第2工程により得られた、ポリイミド層を表面に有する材料も含まれる。
【0049】
本発明の材料は、炭素材料、炭素薄膜、層間絶縁膜、ラミネート材、レジスト、電子デバイス用材料(例えば、LOCテープ)などに利用できる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、材料の表面を非常に緻密に、密着性及び均一性良くポリイミド層で被覆することができる。また、本発明のポリイミド層の形成方法によれば、材料表面をポリイミドの薄膜あるいはナノオーダーで制御されたポリイミド微粒子からなるポリイミド層でコーティングすることができる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより一層明確にする。
【0052】
実施例 1
シランカップリング剤によって表面をアミノ化処理したシリコンウエハ[5インチシリコンウェハを、約3cm×約3cmの大きさに裁断したもの]をDMF100ml中に浸漬した後、無水テトラカルボン酸である4,4’−ジアミノベンゼンスルホン酸 4.97gを加え完全に溶解してから1時間撹拌し、次にジアミンであるBTDA 6.44gをDMF100mlに溶解したのち加え、24時間撹拌してアミド化重合反応を行った。反応終了後、シリコンウエハを溶液中から取りだし、表面に物理的に吸着したポリアミド酸をDMFで洗浄してから乾燥して、表面をポリアミド酸薄膜で被覆されたシリコンウェハを得た。
【0053】
次に、表面をポリアミド酸で被覆したシリコンウエハを250℃のオーブン中で1時間熱処理してイミド化し、シリコンウエハ上をポリイミド薄膜で被覆した。
【0054】
また、表面をポリアミド酸で被覆したシリコンウエハをDMFに浸漬し、140〜150℃で4時間還流しポリアミド酸をイミド化し、シリコンウエハ上をナノサイズのポリイミド微粒子層で被覆した。
【0055】
シランカップリング剤により表面をアミノ化処理したシリコンウエハ、オーブン中で加熱した後のシリコンウェハ、溶媒中で加熱した後のシリコンウェハのAMF画像を、それぞれ図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)及び(b)は、表面にポリイミド層を有する材料の模式図を示す。図1(a)は当該ポリイミド層がポリイミド微粒子により形成される層である場合の模式図であり、図1(b)は、当該ポリイミド層が、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を介して材料の表面に形成されたポリイミド薄膜により形成される層である場合の模式図である。
【図2】図2(a)はアミノ化処理したシリコンウェハ、図2(b)は実施例1でオーブン中で加熱した後のシリコンウェハ、図2(c)は溶媒中で加熱した後のシリコンウェハのAMF画像を示す図である。
Claims (13)
- 表面にポリアミド酸層を有する材料を製造する方法であって、
(a) 無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料の該官能基と、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させることにより、当該材料の表面にポリアミド酸層を形成する工程を含むことを特徴とする製造方法。 - 表面にポリイミド層を有する材料を製造する方法であって、
(a) 無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を表面に有する材料の該官能基と、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を反応させることにより、当該材料の表面にポリアミド酸層を形成する第一工程、及び
(b) 当該ポリアミド層をイミド化することによりポリイミド層を生成させる第二工程
を含むことを特徴とする製造方法。 - 反応を有機溶媒の存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 第一工程において、反応を有機溶媒の存在下で行うことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
- 第二工程において、ポリアミド酸のイミド化を有機溶媒中で加熱することにより行う請求項2又は4に記載の製造方法。
- 第二工程において、ポリアミド酸のイミド化を気相中で加熱することにより行う請求項2又は4に記載の製造方法。
- 表面にポリイミド層を有する材料であって、当該ポリイミド層がポリイミド微粒子により形成される層であることを特徴とする材料。
- ポリイミド層が、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を介して材料の表面に形成される層であることを特徴とする請求項7に記載の材料。
- 表面にポリイミド層を有する材料であって、
当該ポリイミド層が、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1種と反応し得る官能基を介して材料の表面に形成されたポリイミド薄膜により形成される層であることを特徴とする材料。 - 材料が、シリコンウェハであることを特徴とする請求項7又は8に記載の材料。
- 材料が、シリコンウェハであることを特徴とする請求項9に記載の材料。
- ポリイミド層の厚さが10〜1000nmであることを特徴とする請求項7、8又は10に記載の材料。
- ポリイミド層の厚さが10〜1000nmであることを特徴とする請求項9又は11に記載の材料。
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-
2002
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