JP2003217693A - 半導体微粒子層、光電変換素子及び光電池 - Google Patents

半導体微粒子層、光電変換素子及び光電池

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 高い空隙率及び膜強度を有する半導体微粒子
層を作製する方法、この方法で作製された半導体微粒子
層、並びに該半導体微粒子層を用いた光電変換素子及び
光電池を提供する。 【解決手段】 半導体微粒子層の作製方法は、半導体微
粒子及びシクロデキストリン類を含有する分散液を用い
る。光電変換素子の作製方法は、半導体微粒子層に色素
を吸着させることを特徴とする。また、光電変換素子は
この方法で作製されたものであり、光電池はかかる光電
変換素子を用いたものである。使用するシクロデキスト
リン類は、少なくとも2つのシクロデキストリン骨格が
連結した化合物であるのが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体微粒子層の作
製方法及びこの方法によって作製された半導体微粒子層
に関し、更に該半導体微粒子層を用いた光電変換素子及
び光電池に関する。
【0002】
【従来の技術】光電変換素子は各種光センサー、複写
機、光発電装置等に用いられている。光電変換素子には
金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色
素を用いたもの、これらを組み合わせて用いたもの等が
あり、様々な方式が実用化されている。
【0003】米国特許4927721号、同4684537号、同5084
365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号、WO98
/50393号、特開平7-249790号及び特表平10-504521号に
は、色素によって増感した半導体微粒子を用いた光電変
換素子(以下、「色素増感光電変換素子」と称する)並
びにこれを作製するための材料及び製造技術が開示され
ている。色素増感光電変換素子の利点は、二酸化チタン
等の安価な酸化物半導体を高純度に精製することなく用
いることができるため比較的安価に製造できる点にあ
る。半導体微粒子として二酸化チタンを用いる場合、こ
の半導体微粒子の作製方法としては、ゾル−ゲル法、ゲ
ル−ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法、
清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版
(1997年)に記載の硫酸法及び塩素法等が知られてい
る。ゾル−ゲル法としては、Barbeらのジャーナル・オ
ブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー, 第80巻,
第12号, 3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、Burn
sideらのケミストリー・オブ・マテリアルズ, 第10巻,
第9号, 2419〜2425頁に記載の方法が知られている。
【0004】色素増感光電変換素子を作製する際、通常
は上記のような方法で得た半導体微粒子を導電性支持体
上に製膜して半導体微粒子層を形成する。製膜方法とし
ては、半導体微粒子の分散液又はコロイド溶液を導電性
支持体上に塗布する方法、印刷法、電解析出法、電着法
等がよく知られており、分散液を用いた湿式の製膜法が
特に一般的である。半導体微粒子の分散液は半導体微粒
子と分散媒を含む。通常、分散液の粘度を調節したり半
導体微粒子層の空隙率をコントロールする目的で、分散
液に分散助剤を添加してもよい。分散助剤としてはポリ
エチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カ
ルボキシメチルセルロース等のポリマー、界面活性剤、
酸、キレート剤等が使用できる。しかしながら、このよ
うな分散助剤を使用して作製した半導体微粒子層を用い
た色素増感光電変換素子は、変換効率が必ずしも十分に
高いとは限らず、なお一層の変換効率向上が望まれてい
る。
【0005】一方、半導体微粒子層の空隙率を高めて半
導体微粒子層中の抵抗を低減させることは、電解質の拡
散性向上に繋がり、特に非有機溶媒系電解質を用いた場
合には変換効率の向上のために非常に望ましい。しかし
ながら、空隙率の向上のために分散助剤ポリエチレング
リコールの添加量を増量すると、半導体微粒子層を形成
した際にクラックが生じてしまうという問題があり、添
加量の増加には限界がある。また、ヒドロキシエチルセ
ルロースやカルボキシメチルセルロースのように多数の
水酸基を有するポリマーの場合、半導体微粒子間の接合
力が強いためにクラックは生じ難いが、少量の添加でも
分散液の高粘度化が著しく、更に溶解性が乏しいため添
加量の許容範囲が狭いため、空隙率を高める目的には適
さない。このような状況下、高い空隙率及び膜強度を有
する半導体微粒子層を形成するために好適に使用できる
分散助剤の開発が強く望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高い
空隙率及び膜強度を有する半導体微粒子層を作製する方
法、この方法で作製された半導体微粒子層、並びに該半
導体微粒子層を用いた光電変換素子及び光電池を提供す
ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者は、シクロデキストリン類を半導体微
粒子の分散液に添加することによって、高い空隙率及び
膜強度を有する半導体微粒子層が得られることを発見
し、本発明に想到した。
【0008】即ち、本発明の半導体微粒子層の作製方法
は、半導体微粒子及びシクロデキストリン類を含有する
分散液を用いることを特徴とする。また本発明の半導体
微粒子層は当該方法によって作製できる。
【0009】本発明の光電変換素子の作製方法は、上記
本発明の半導体微粒子層に色素を吸着させることを特徴
とする。また、本発明の光電変換素子はこの方法で作製
されたものであり、本発明の光電池はかかる光電変換素
子を用いたものである。
【0010】本発明で使用するシクロデキストリン類
は、少なくとも2つのシクロデキストリン骨格が連結し
た化合物であるのが好ましい。特に好ましいシクロデキ
ストリン類として、α、β又はγ-シクロデキストリン
をエピクロロヒドリンで架橋したポリシクロデキストリ
ン、並びにα、β又はγ-シクロデキストリンと下記一
般式(I)で表される化合物を50:1〜1:50のモル比で
混合して得られる化合物が挙げられる。 MXn ・・・(I) 一般式(I)中、Mは周期律表の第3〜6族及び第12〜15族
のいずれかに属する元素を表し、好ましくはチタンを表
す。Xはハロゲン又はアルコキシ基を表し、nは2〜6の
整数を表す。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明では、半導体微粒子層を形
成する際に半導体微粒子の分散液中にシクロデキストリ
ン類を分散助剤として添加することによって、高い空隙
率と膜強度を両立した半導体微粒子層を作製する。本発
明の半導体微粒子層は、光電変換素子の感光層、光触媒
(例えば抗菌剤等)等に使用可能である。また、本発明
の光電変換素子は該半導体微粒子層に色素を吸着してな
る感光層を有し優れた変換効率を示す。本発明の光電池
はこの光電変換素子を用いたものである。以下、本発明
で使用するシクロデキストリン類、並びに本発明の半導
体微粒子層、光電変換素子及び光電池について詳細に説
明する。
【0012】[I]シクロデキストリン類 本発明で用いるシクロデキストリン類とは5つ以上の単
糖が環状に連結した化合物を指し、シクロデキストリン
類の単糖の種類(グルコース、ガラクトース、マンノー
ス等)、単糖の光学純度(D体とL体の比率)、連結の仕
様(α-グリコシド結合、β-グリコシド結合、2価以上
の連結基を介した結合等)、環の大きさ等は特に限定さ
れない。
【0013】代表的なシクロデキストリン類として、
6、7又は8つのグルコース環が環状にα-グリコシド
連結した化合物(α、β又はγ-シクロデキストリン)
がある。また、これらのシクロデキストリンから合成さ
れる化合物もシクロデキストリン類として使用でき、そ
の例としてはシクロデキストリンを修飾した化合物(修
飾シクロデキストリン)、シクロデキストリンを連結基
によって架橋したポリマー(ポリシクロデキストリ
ン)、シクロデキストリンの環内に他の化合物を包接さ
せた化合物(包接シクロデキストリン)等が挙げられ
る。シクロデキストリン類の中でも、α、β及びγ-シ
クロデキストリン、修飾シクロデキストリン、ポリシク
ロデキストリン、並びに包接シクロデキストリンが好ま
しく、ポリシクロデキストリンがより好ましい。
【0014】上記修飾シクロデキストリンは、α、β又
はγ-シクロデキストリンの水酸基等を修飾基で置換し
た化合物である。置換方法は特に限定されず、例えば、
水酸基を保護基で保護するする方法、水酸基を酸化して
アルデヒド基やカルボン酸基とした後に修飾基を導入す
る方法、水酸基を脱離基に変換(p-トルエンスルホニル
化等)した後に求核置換反応で修飾基を導入する方法等
が好ましい。特に好ましい修飾シクロデキストリンとし
て、水酸基を置換又は無置換のアルキル基(メチル基、
エチル基、ヒドロキシエチル基等)で保護した化合物等
が挙げられるが、少なくとも1つの水酸基が残っている
ことが好ましい。
【0015】上記ポリシクロデキストリンは、α、β又
はγ-シクロデキストリンを連結基によって連結した化
合物であり、重合度等については特に限定は無い。連結
に用いる架橋剤の種類や価数は特に限定されず、その例
としては、置換又は無置換のアルキレン基(エチレン
基、2-ヒドロキシプロピレン基等)を形成する架橋剤
(例えばジヨードエタン、エピクロロヒドリン等)、置
換又は無置換のフェニレン基やヘテロ環基(トリアジン
環基、ピリミジン環基等)を形成する架橋剤(例えばト
リクロロトリアジン等)、水酸基と容易に反応する金属
アルコキシドや金属ハライドのような架橋剤(例えば下
記一般式(I)で表される架橋剤等)等が挙げられる。MXn
・・・(I)
【0016】一般式(I)中、Mは周期律表の第3〜6族の
いずれかに属する元素(スカンジウム、イットリウム、
ランタノイド類、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、
バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、
タングステン等)又は第12〜15族のいずれかに属する元
素(亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲル
マニウム、スズ、アンチモン、ビスマス等)を表し、好
ましくはチタンである。また、Xはハロゲン(F、Cl、B
r、I等)又はアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、
イソプロポキシ基、ブトキシ基等)を表し、好ましくは
アルコキシ基である。nは2〜6の整数を表し、Mの価数
に応じて決定される。
【0017】上記架橋剤の中でも、置換又は無置換のア
ルキレン基を形成する架橋剤及び一般式(I)で表される
架橋剤が好ましく、エピクロロヒドリン及びテトラエト
キシチタンがより好ましく、エピクロロヒドリンが特に
好ましい。
【0018】α、β又はγ-シクロデキストリンと架橋
剤を混合して架橋する際のモル比(シクロデキストリ
ン:架橋剤)は、好ましくは50:1〜1:50であり、よ
り好ましくは1:20〜2:1である。ポリシクロデキス
トリンはシクロデキストリンと架橋剤を通常15〜250℃
で5分〜24時間程度、好ましくは50〜120℃で30〜180分
混合することで容易に合成でき、また容易に入手できる
ものもある。
【0019】好ましいポリシクロデキストリンの具体例
として、下記表1に示すシクロデキストリンと架橋剤
を、表1に示すモル比(シクロデキストリン:架橋剤)
で混合して得られる化合物(1)〜(26)を示すが、本発明
はそれらにより限定されない。なお、化合物(1)は東京
化成製ポリ-β-シクロデキストリンである。
【0020】
【表1】
【0021】上記包接シクロデキストリンは、シクロデ
キストリン類(修飾シクロデキストリンやポリシクロデ
キストリンを含む)の環内に他の化合物を包接させた化
合物である。包接される化合物は特に限定されず、置換
又は無置換の脂肪族炭化水素、ポリエーテル類、アリー
ル化合物及びヘテロ環化合物等が使用できる。好ましい
包接シクロデキストリンとして、ポリ-β-シクロデキス
トリンにポリエチレングリコール20000を包接させた化
合物が挙げられる。
【0022】[II]半導体微粒子層 本発明の半導体微粒子層を光電変換素子の導電性支持体
等の上に形成する際には、半導体微粒子を含有する分散
液(又はコロイド溶液)を塗布する方法の他、ゾル−ゲ
ル法等を使用することもできる。光電変換素子の量産
化、半導体微粒子を含有する分散液の物性、導電性支持
体の融通性等を考慮すると、湿式の製膜方法を用いるの
が比較的望ましい。湿式の製膜方法としては、塗布法、
印刷法、電解析出法及び電着法が代表的である。また、
金属を酸化する方法、金属溶液から配位子交換等で液相
にて析出させる方法(LPD法)、スパッタ等で蒸着する
方法、CVD法、或いは加温した基板上に熱分解する金属
酸化物プレカーサーを吹き付けて金属酸化物を形成する
SPD法を利用することもできる。
【0023】半導体微粒子の分散液を作製する方法とし
ては、ゾル−ゲル法、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使っ
て粉砕しながら分散する方法、半導体を合成する際に溶
媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が
挙げられる。半導体微粒子の種類は特に限定されない。
本発明の半導体微粒子層を光電変換素子に用いる場合
の、半導体の好ましい態様については後述する。分散液
に用いる分散媒は、水又は各種有機溶媒(メタノール、
エタノール、イソプロピルアルコール、シトロネロー
ル、ターピネオール、ジクロロメタン、アセトン、アセ
トニトリル、酢酸エチル等)であってよい。
【0024】本発明では、半導体微粒子を分散媒に分散
する際に、分散助剤として上記シクロデキストリン類を
添加する。シクロデキストリン類の添加量は、分散液全
体に対して好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは
0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%とする。
また、必要に応じてポリエチレングリコール、ヒドロキ
シエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのよ
うなポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤等を分散助
剤として更に添加してもよいが、これらの添加量はシク
ロデキストリン類と同量以下であることが好ましい。
【0025】好ましい塗布方法の例としては、アプリケ
ーション系としてローラ法、ディップ法等、メータリン
グ系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリ
ケーションとメータリングを同一部分にできるものとし
て特公昭58-4589号に開示されているワイヤーバー法、
米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記
載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カー
テン法等が挙げられる。また汎用機としてスピン法やス
プレー法も好ましい。湿式印刷方法としては凸版、オフ
セット及びグラビアの三大印刷法をはじめ、凹版、ゴム
版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から液粘
度やウェット厚さに応じて塗布方法を選択してよい。
【0026】半導体微粒子層は単層に限定されず、粒径
の違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類
が異なる半導体微粒子(或いは異なるバインダー、添加
剤等)を含有する層を多層塗布したりすることもでき
る。一度の塗布で膜厚が足りない場合にも多層塗布は有
効である。
【0027】本発明の半導体微粒子層を光電変換素子に
用いる場合、一般に半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚
さと同じ)が厚くなるほど単位投影面積当たりの担持色
素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電
子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きく
なる。従って光電変換素子の半導体微粒子層の好ましい
厚さは0.1〜100μmである。本発明の光電変換素子を光
電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは好ましくは
1〜30μm、より好ましくは2〜25μmである。導電性支
持体1m2当たりの半導体微粒子の塗布量は、好ましくは
0.5〜100g、より好ましくは3〜50gである。
【0028】半導体微粒子層の空隙率とは、単位体積中
の半導体微粒子の非占有率を表す。従ってその値は、膜
厚と単位面積当たりの半導体の塗布質量及びその比重か
ら求めることができる。好ましい空隙率は上記好ましい
厚さと好ましい塗布量から求められ、具体的には40〜80
%が好ましく、50〜70%がより好ましい。
【0029】半導体微粒子層の空隙率が高いほど電解質
の拡散性が向上する。特に、溶媒を含まない溶融塩電解
質組成物を用いる場合、空隙率が高いことは非常に好ま
しい。しかしながら、空隙率が高いほど半導体微粒子間
の接合度合いが少なくなり膜の強度が低下するため空隙
率には上記のような好ましい範囲がある。膜強度に関し
ては種々の評価法があるが、簡便な方法として、市販の
粘着テープを膜の全面に貼り付け、剥がした後の質量変
化等で比較評価する方法があり、その質量変化が小さい
ほど膜の強度が強く好ましい。
【0030】半導体微粒子を導電性支持体等の上に塗布
した後、半導体微粒子同士を電子的に接触させるととも
に塗膜強度や導電性支持体との密着性を向上させるため
に、加熱処理するのが好ましい。加熱処理における加熱
温度は好ましくは40〜700℃であり、より好ましくは100
〜600℃である。また加熱時間は10分〜10時間程度であ
る。ポリマーフィルムのように融点や軟化点の低い基板
を用いる場合、高温処理は基板の劣化を招くため好まし
くない。またコストの観点からもできる限り低温(例え
ば50〜350℃)で加熱処理を行うのが好ましい。低温化
は5nm以下の小さい半導体微粒子や鉱酸、金属酸化物プ
レカーサーの存在下での加熱処理等により可能となり、
また、紫外線、赤外線、マイクロ波等の照射や電界、超
音波を印加することにより行うこともできる。同時に不
要な有機物等を除去する目的で、上記の照射や印加のほ
か加熱、減圧、酸素プラズマ処理、純水洗浄、溶剤洗
浄、ガス洗浄等を適宜組み合わせて併用することが好ま
しい。
【0031】加熱処理後、半導体微粒子の表面積を増大
させたり、半導体微粒子近傍の純度を高め、色素から半
導体微粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四
塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や三塩化チタ
ン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよ
い。また、半導体微粒子から電荷輸送層へ逆電流が流れ
るのを防止する目的で、粒子表面に色素以外の電子電導
性の低い有機物を吸着させることも有効である。吸着さ
せる有機物としては疎水性基を持つものが好ましい。
【0032】半導体微粒子層は、多くの色素を吸着する
ことができるように大きい表面積を有することが好まし
い。半導体微粒子層を導電性支持体上に塗布した状態で
の表面積は投影面積に対して10倍以上であるのが好まし
く、100倍以上であるのがより好ましい。この上限は特
に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0033】[III]光電変換素子 本発明の光電変換素子は、好ましくは図1に示すように
導電層10、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40を
この順に積層してなり、感光層20を色素22によって増感
した半導体微粒子21とこの半導体微粒子21の間の空隙に
浸透した電荷輸送材料23とから構成する。感光層20は上
述した本発明の半導体微粒子層に色素22を吸着させて形
成する。感光層20中の電荷輸送材料23は通常、電荷輸送
層30に用いる材料と同じものである。導電層10と感光層
20の間には下塗り層60を設けてもよい。また、光電変換
素子に強度を付与するために、導電層10及び/又は対極
導電層40の下地として基板50を設けてもよい。本発明で
は、導電層10及び任意で設ける基板50からなる層を「導
電性支持体」、対極導電層40及び任意で設ける基板50か
らなる層を「対極」と呼ぶ。なお、図1中の導電層10、
対極導電層40、基板50はそれぞれ透明導電層10a、透明
対極導電層40a、透明基板50aであってもよい。このよう
な光電変換素子を電気的仕事(発電)をさせるために外
部負荷に接続したものが光電池であり、光学的情報のセ
ンシングを目的に作られたものが光センサーである。
【0034】図1に示す光電変換素子において、半導体
微粒子がn型である場合、色素22により増感した半導体
微粒子21を含む感光層20に入射した光は色素22等を励起
し、励起された色素22等中の高エネルギーの電子は半導
体微粒子21の伝導帯に渡され、更に拡散して導電層10に
到達する。このとき色素22は酸化体となっている。光電
池においては、導電層10中の電子が外部回路で仕事をし
ながら対極導電層40及び電荷輸送層30を経て色素22の酸
化体に戻り、色素22が再生する。感光層20は負極(光ア
ノード)として働き、対極導電層40は正極として働く。
それぞれの層の境界(例えば導電層10と感光層20との境
界、感光層20と電荷輸送層30との境界、電荷輸送層30と
対極導電層40との境界等)では、各層の構成成分同士が
相互に拡散混合していてもよい。以下各層について詳細
に説明する。
【0035】(A)導電性支持体 導電性支持体は(1)導電層の単層又は(2)導電層及び基板
の2層からなる。(1)の場合、導電層の材料としては、
導電層の強度や密封性を十分に保つことができ、且つ導
電性を有するもの(例えば白金、金、銀、銅、亜鉛、チ
タン、アルミニウム、これらを含む合金のような金属材
料等)を用いることができる。(2)の場合、感光層側に
導電剤を含む導電層を有する基板を導電性支持体として
使用することができる。好ましい導電剤の例としては金
属(白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、
インジウム、これらを含む合金等)、炭素及び導電性金
属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフ
ッ素又はアンチモンをドープしたもの等)が挙げられ
る。導電層の厚さは好ましくは0.02〜10μm程度であ
る。
【0036】導電性支持体の表面抵抗は低い程好まし
い。この表面抵抗は好ましくは50Ω/□以下であり、よ
り好ましくは20Ω/□以下である。
【0037】導電性支持体側から光を照射する場合に
は、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。
実質的に透明であるとは、可視〜近赤外領域(400〜120
0nm)の光の一部又は全域において光の透過率が10%以
上であることを意味する。この透過率は好ましくは50%
以上、特に好ましくは80%以上である。特に、感光層が
感度を有する波長域の光の透過率が高いことが好まし
い。
【0038】透明導電性支持体としては、ガラス、プラ
スチック等からなる透明基板の表面に導電性金属酸化物
からなる透明導電層を塗布、蒸着等により形成したもの
が好ましく使用できる。透明導電層をなす好ましい材料
の例としては、フッ素又はアンチモンをドーピングした
二酸化スズ、インジウム−スズ酸化物(ITO)等が挙げ
られる。透明基板としては、コストと強度の点で有利な
ソーダガラス、アルカリ溶出の影響の無い無アルカリガ
ラス等からなるガラス基板や、透明ポリマーフィルム等
が使用できる。透明ポリマーフィルムをなす材料の例と
しては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレ
ンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート
(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポ
リフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(P
C)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PS
F)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリイミド(P
I)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィ
ン、ブロム化フェノキシ樹脂等が挙げられる。十分な透
明性を確保するためには、上記導電性金属酸化物の塗布
量はガラス又はプラスチックの基板1m2当たり0.01〜10
0gとするのが好ましい。
【0039】導電性支持体の抵抗を下げる目的で金属リ
ードを用いるのが好ましい。金属リードは白金、金、ニ
ッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀等の金属からな
るのが好ましい。透明基板上に金属リードを蒸着、スパ
ッタリング等で設置し、その上に導電性の酸化スズ、IT
O膜等からなる透明導電層を設けるのが好ましい。金属
リード設置による入射光量の低下は、好ましくは10%以
内、より好ましくは1〜5%とする。
【0040】(B)感光層 本発明の光電変換素子において、感光層は上述した本発
明の半導体微粒子層に色素を吸着させて形成する。感光
層において半導体微粒子は感光体として作用し、光を吸
収して電荷分離を行い電子と正孔を生ずる。色素増感し
た半導体微粒子では光吸収及びこれによる電子及び正孔
の発生は主として色素において起こり、半導体微粒子は
この電子又は正孔を受け取り、伝達する役割を担う。
【0041】(1)半導体 本発明の光電変換素子に用いる半導体は、単体半導体
(シリコン、ゲルマニウム等)、III-V族系化合物半導
体、金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化
物、それらの複合物等)、ペロブスカイト構造を有する
化合物(チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウ
ム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸
カリウム等)等であってよい。本発明で用いる半導体
は、光励起下で伝導体電子がキャリアーとなり、アノー
ド電流を与えるn型半導体であることが好ましい。
【0042】好ましい金属カルコゲナイドの例として
は、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニ
ウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリ
ウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又
はタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アン
チモン又はビスマスの硫化物、カドミウム又は鉛のセレ
ン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の
化合物半導体の例としては亜鉛、ガリウム、インジウ
ム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素又は銅−
インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物等が
挙げられる。更には、MxOySzやM1xM2yOz(M、M1及びM2
はそれぞれ金属元素を表し、x、y及びzは価数が中性に
なる組み合わせの数である)のような複合物も好ましく
用いることができる。
【0043】本発明の光電変換素子に用いる半導体は、
好ましくはSi、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5
CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、SrTiO3、GaP、In
P、GaAs、CuInS2又はCuInSe2であり、より好ましくはTi
O2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbS、CdSe、
SrTiO3、InP、GaAs、CuInS2又はCuInSe2であり、特に好
ましくはTiO2又はNb2O5であり、最も好ましくはTiO2
ある。TiO2の中でもアナターゼ型結晶を70%以上含むTi
O2が好ましく、100%アナターゼ型結晶のTiO 2が特に好
ましい。また、これらの半導体中の電子電導性を上げる
目的で金属をドープすることも有効である。ドープする
金属としては2又は3価の金属が好ましい。半導体から
電荷輸送層へ逆電流が流れるのを防止する目的で、半導
体に1価の金属をドープすることも有効である。
【0044】本発明に用いる半導体は単結晶でも多結晶
でもよいが、製造コスト、原材料確保、エネルギーペイ
バックタイム等の観点からは多結晶が好ましく、半導体
微粒子からなる多孔質膜が特に好ましい。また、一部ア
モルファス部分を含んでいてもよい。
【0045】半導体微粒子の粒径は一般にnm〜μmのオ
ーダーであるが、投影面積を円に換算したときの直径か
ら求めた一次粒子の平均粒径は好ましくは5〜200nm、
より好ましくは8〜100nmである。また、分散液中の半
導体微粒子(二次粒子)の平均粒径は好ましくは0.01〜
30μmである。粒径分布の異なる2種類以上の半導体微
粒子を混合して用いてもよく、この場合、小さい粒子の
平均粒径は好ましくは25nm以下であり、より好ましくは
10nm以下である。入射光を散乱させて光捕獲率を向上さ
せる目的で、粒径の大きな、例えば100〜300nm程度の半
導体粒子を混合することも好ましい。
【0046】種類の異なる2種以上の半導体微粒子を混
合して用いてもよい。2種以上の半導体微粒子を混合し
て使用する場合、一方はTiO2、ZnO、Nb2O5又はSrTiO3
あることが好ましい。また他方はSnO2、Fe2O3又はWO3
あることが好ましい。さらに好ましい組み合わせとして
は、ZnOとSnO2、ZnOとWO3、ZnOとSnO2とWO3等の組み合
わせを挙げることができる。2種以上の半導体微粒子を
混合して用いる場合、それぞれの粒径が異なっていても
よい。特に上記TiO2、ZnO、Nb2O5又はSrTiO3の粒径が大
きく、SnO2、Fe2O3又はWO3が小さい組み合わせが好まし
い。好ましくは大きい粒径の粒子を100nm以上、小さい
粒径の粒子を15nm以下とする。
【0047】半導体微粒子の作製法としては、作花済夫
の「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技
術情報協会の「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技
術」(1995年)等に記載のゾル−ゲル法や、杉本忠夫の
「新合成法ゲル−ゾル法による単分散粒子の合成とサイ
ズ形態制御」、まてりあ, 第35巻, 第9号, 1012〜1018
頁(1996年)等に記載のゲル−ゾル法が好ましい。また
Degussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分
解により酸化物を作製する方法も好ましく使用できる。
【0048】半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾ
ル-ゲル法、ゲル−ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高
温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の
「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997年)
に記載の硫酸法又は塩素法を用いることもできる。さら
にゾル−ゲル法として、Barbeらのジャーナル・オブ・
アメリカン・セラミック・ソサエティー, 第80巻, 第12
号, 3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、Burnside
らのケミストリー・オブ・マテリアルズ, 第10巻, 第9
号, 2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0049】(2)半導体微粒子層 本発明の光電変換素子に用いる半導体微粒子層は、上記
半導体を用いて、本発明の半導体微粒子層の製造方法に
より形成することができる。
【0050】(3)色素 感光層に用いる増感色素は、可視域や近赤外域に吸収特
性を有し半導体を増感しうるものであれば特に限定され
ないが、金属錯体色素、メチン色素、ポルフィリン系色
素及びフタロシアニン系色素が好ましく使用でき、中で
も金属錯体色素が特に好ましい。また、光電変換の波長
域をできるだけ広くし、且つ変換効率を上げるために、
二種類以上の色素を併用することができる。この場合、
目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように併
用する色素とその割合を選ぶことができる。
【0051】色素は半導体微粒子の表面に対して吸着能
力の有る適当な結合基(interlocking group)を有する
のが好ましい。好ましい結合基の例としては、-COOH
基、-OH基、-SO3H基、-P(O)(OH)2基及び-OP(O)(OH)2
のような酸性基や、オキシム、ジオキシム、ヒドロキシ
キノリン、サリチレート及びα-ケトエノレートのよう
なπ伝導性を有するキレート化基等が挙げられる。中で
も-COOH基、-P(O)(OH)2基及び-OP(O)(OH)2基が特に好ま
しい。これらの結合基はアルカリ金属等と塩を形成して
いてもよく、また分子内塩を形成していてもよい。また
ポリメチン色素の場合、メチン鎖がスクアリリウム環や
クロコニウム環を形成する場合のように酸性基を含有す
るなら、この部分を結合基としてもよい。以下、感光層
に用いる好ましい増感色素を具体的に説明する。
【0052】(a)金属錯体色素 金属錯体色素のうち、金属フタロシアニン色素、金属ポ
ルフィリン色素及びルテニウム錯体色素が好ましく、ル
テニウム錯体色素が特に好ましい。ルテニウム錯体色素
の例としては、米国特許4927721号、同4684537号、同50
84365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号、特
開平7-249790号、特表平10-504512号、WO98/50393号、
特開2000-26487号等に記載のものが挙げられる。
【0053】本発明で用いるルテニウム錯体色素は下記
一般式(II): (A1)pRu(B-a)(B-b)(B-c) ・・・(II) により表されるのが好ましい。一般式(II)中、A1は1又
は2座の配位子を表し、好ましくはCl、SCN、H2O、Br、
I、CN、NCO、SeCN、β-ジケトン誘導体、シュウ酸誘導
体及びジチオカルバミン酸誘導体からなる群から選ばれ
た配位子である。pは0〜3の整数である。B-a、B-b及
びB-cはそれぞれ独立に下記式B-1〜B-10のいずれかによ
り表される有機配位子を表す。
【0054】
【化1】
【0055】式B-1〜B-10中、R1はそれぞれ水素原子又
は置換基を表し、該置換基の例としてはハロゲン原子、
炭素原子数1〜12の置換又は無置換のアルキル基、炭素
原子数7〜12の置換又は無置換のアラルキル基、炭素原
子数6〜12の置換又は無置換のアリール基、前述の酸性
基及びキレート化基が挙げられる。ここでアルキル基及
びアラルキル基のアルキル部分は直鎖状であっても分岐
状であってもよく、またアリール基及びアラルキル基の
アリール部分は単環であっても多環(縮合環、環集合)
であってもよい。B-a、B-b及びB-cは同じであっても異
なっていてもよい。上記一般式(II)により表されるルテ
ニウム錯体色素はB-a、B-b及びB-cのうちいずれか1つ
又は2つのみを含んでいてもよい。
【0056】本発明で好ましく使用できる金属錯体色素
の具体例を以下に示すが、本発明はそれらに限定される
ものではない。
【0057】
【化2】
【0058】
【化3】
【0059】(b)メチン色素 本発明で使用できる好ましいメチン色素は、シアニン色
素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等のポリメ
チン色素である。ポリメチン色素の例としては、特開平
11-35836号、同11-67285号、同11-86916号、同11-97725
号、同11-158395号、同11-163378号、同11-214730号、
同11-214731号、同11-238905号、特開2000-26487号、欧
州特許892411号、同911841号及び同991092号に記載の色
素が挙げられる。好ましいメチン色素の具体例を以下に
示す。
【0060】
【化4】
【0061】
【化5】
【0062】(4)半導体微粒子への色素の吸着 半導体微粒子に色素を吸着させる際には、色素の溶液中
によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を
浸漬する方法、又は色素の溶液を半導体微粒子層に塗布
する方法を用いることができる。前者の方法の場合、浸
漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が利用
可能である。浸漬法を用いる場合、色素の吸着は室温で
行ってもよいし、特開平7-249790号に記載されているよ
うに加熱還流して行ってもよい。後者の方法の場合、ワ
イヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョ
ン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等が利用でき
る。また、インクジェット法等によって色素を画像状に
塗布し、この画像そのものを光電変換素子とすることも
できる。
【0063】色素の溶液(吸着液)に用いる溶媒は、好
ましくはアルコール類(メタノール、エタノール、t-ブ
タノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセ
トニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニ
トリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジク
ロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベ
ンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒ
ドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,
N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド
等)、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジ
ノン、3-メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エ
チル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチ
ル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(ア
セトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素
(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)又
はこれらの混合溶媒である。
【0064】未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗
浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中で
アセトニトリル、アルコール系溶剤のような有機溶媒を
用いて行うのが好ましい。
【0065】色素の吸着量は、半導体微粒子層の単位面
積(1m2)当たり0.01〜100mmolとするのが好ましい。
また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒
子1g当たり0.01〜1mmolであるのが好ましい。このよ
うな色素の吸着量とすることにより半導体微粒子の増感
効果が十分に得られる。色素の吸着量が少なすぎると増
感効果が不十分となり、また色素の吸着量が多すぎると
半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果が低減
する。色素の吸着量を増やすためには、吸着前に半導体
微粒子を加熱処理するのが好ましい。半導体微粒子表面
に水が吸着するのを避けるために、加熱処理後には常温
に戻さずに半導体微粒子層の温度が60〜150℃の間で素
早く色素の吸着を行うのが好ましい。
【0066】(5)色素吸着液への添加剤 色素間の凝集等の相互作用を低減したり、色素の吸着量
を増加させたりする目的で、無色の化合物を色素吸着液
に添加し、半導体微粒子に共吸着させてよい。このよう
な添加剤としては、カルボキシル基を有するステロイド
化合物(ケノデオキシコール酸等)、スルホン酸化合物
(及びスルホン酸塩類)、少なくとも1つのウレイド基
を有するウレイド化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土
類金属塩等が好ましく使用できる。これらは単独で使用
しても組み合わせて使用してもよい。
【0067】色素の凝集を低減する目的で特に好ましい
添加剤として、界面活性な性質を持つカルボキシル基を
有するステロイド化合物(ケノデオキシコール酸等)や
下記のようなスルホン酸塩類が挙げられる。
【化6】
【0068】好ましいウレイド化合物の具体例を以下に
示す。ウレイド化合物の添加量は色素に対して好ましく
は0.1〜1000倍モルであり、より好ましくは1〜500倍モ
ルであり、特に好ましくは10〜100倍モルである。
【化7】
【0069】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の
中では、アルカリ金属塩が好ましく、リチウム塩が特に
好ましい。これらの塩を形成するアニオン種は特に限定
されず、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、
カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、スルホンアミ
ド、スルホニルイミド(ビストリフルオロメタンスルホ
ンイミド、ビスペンタフルオロエタンスルホンイミド
等)、スルホニルメチド、硫酸、チオシアン酸、シアン
酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ
りん酸等の塩であってよい。中でも、ヨウ素、ビストリ
フルオロメタンスルホンイミド、チオシアン酸、テトラ
フルオロホウ酸又はヘキサフルオロりん酸の塩が好まし
く、ヨウ素、ビストリフルオロメタンスルホンイミド又
はテトラフルオロホウ酸の塩がより好ましく、ヨウ素塩
が特に好ましい。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属
塩の添加量は色素に対して好ましくは0.1〜1000倍モル
であり、より好ましくは1〜500倍モルであり、特に好
ましくは10〜100倍モルである。
【0070】(6)半導体微粒子の処理 色素を吸着した後、半導体微粒子の表面を処理用の化合
物(以下、「後処理剤」と称す)で処理することが好ま
しい。ここで「処理」とは、半導体微粒子と後処理剤を
ある時間接触させる操作を意味し、接触後に半導体微粒
子に後処理剤が吸着していても吸着していなくてもよ
い。
【0071】好ましい後処理剤の例としては、界面活性
剤(ステロイド類、ポリエーテル化合物等)、4級アン
モニウム化合物、塩基、ウレイド化合物、シリル化合物
等が挙げられる。これらは単独で使用しても組み合わせ
て使用してもよい。塩基はその共役酸のpKaが3〜8
(テトラヒドロフラン:水=1:1、25℃)であるもの
が好ましく、その例としてはピリジン化合物(4-t-ブチ
ルピリジン、4-メトキシピリジン等)が挙げられる。ま
た、ウレイド化合物やシリル化合物の具体例としては、
以下に示す化合物(II-1)〜(II-13)等が挙げられ、中で
もシリル基が置換したウレイド化合物((II-6)や(II-7)
等)がより好ましい。
【0072】
【化8】
【0073】処理を行う際、後処理剤は溶媒に溶解又は
分散して用いることが好ましいが、後処理剤自体が液体
の場合は無溶媒で使用してもよい。以下、後処理剤を溶
媒に溶解した溶液を処理溶液と称し、後処理剤を溶媒に
分散した分散液を処理分散液と称す。処理は処理溶液を
用いて行うのがより好ましく、処理溶液に用いる溶媒は
好ましくは有機溶媒である。
【0074】有機溶媒を用いる場合は、後処理剤の溶解
性に応じて適宜選択できる。例えばアルコール類(メタ
ノール、エタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコー
ル等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリ
ル、3-メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、
ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタ
ン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類
(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチ
ルスルホキシド、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミ
ド、N,N-ジメチルアセタミド等)、N-メチルピロリド
ン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、3-メチルオキサゾ
リジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、
炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プ
ロピレン等)、ケトン類(アセトン、2-ブタノン、シク
ロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテ
ル、ベンゼン、トルエン等)、これらの混合溶媒等が使
用できる。中でもニトリル類、アルコール類及びアミド
類は特に好ましい。
【0075】処理溶液又は処理分散液(以下、両液をま
とめて処理液と称す)を用いて処理する場合、半導体微
粒子層を該処理液に浸漬する方法(以後、浸漬処理法と
記す)が好ましい。また、処理液をスプレー状に一定時
間吹き付ける方法(以下、スプレー法と称す)も適用で
きる。浸漬処理法を行う際、処理液の温度や浸漬処理時
間は任意に設定してよいが、処理液の温度は好ましくは
20〜80℃であり、浸漬処理時間は好ましくは30秒〜24時
間である。浸漬処理の後には溶媒で半導体微粒子層を洗
浄するのが好ましい。洗浄には処理液に用いた溶媒と同
一のもの又はニトリル類、アルコール類、アミド類等の
極性溶媒を用いるのが好ましい。
【0076】処理液中のこれら後処理剤の濃度は、好ま
しくは1×10-6〜2mol/lであり、より好ましくは1×1
0-5〜5×10-1mol/lである。
【0077】(C)電荷輸送層 電荷輸送層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有
する電荷輸送材料を含有する。本発明で用いる電荷輸送
材料は、(i)イオンが関わる電荷輸送材料であっても、
(ii)固体中のキャリアー移動が関わる電荷輸送材料であ
ってもよい。(i)イオンが関わる電荷輸送材料の例とし
ては、酸化還元対イオンを含有する溶融塩電解質組成
物、酸化還元対のイオンが溶解した溶液(電解液)、酸
化還元対の溶液をポリマーマトリクスのゲルに含浸した
いわゆるゲル電解質組成物、固体電解質組成物等が挙げ
られ、(ii)固体中のキャリアー移動が関わる電荷輸送材
料の例としては、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材
料等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は複数併用し
てもよい。本発明では、電荷輸送層に溶融塩電解質組成
物又は電解液を用いるのが好ましい。
【0078】(1)溶融塩電解質組成物 光電変換効率と耐久性の両立という観点から、溶融塩電
解質を電荷輸送材料に用いることは好ましい。溶融塩電
解質とは室温において液状であるか、又は低融点の電解
質であり、その例としてはWO95/18456号、特開平8-2595
43号、電気化学, 第65巻, 11号, 923頁 (1997年)等に記
載のピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウ
ム塩等が挙げられる。溶融塩の融点は100℃以下である
のが好ましく、室温付近において液状であるのが特に好
ましい。
【0079】本発明で用いる溶融塩は、下記一般式(Y-
a)、(Y-b)及び(Y-c)のいずれかにより表されるのが好ま
しい。
【0080】
【化9】
【0081】一般式(Y-a)中、Qy1は窒素原子と共に5又
は6員環の芳香族カチオンを形成する原子団を表す。Q
y1は炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄
原子からなる群から選ばれる原子により構成されるのが
好ましい。Qy1が形成する5員環はオキサゾール環、チ
アゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イソオキ
サゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、
トリアゾール環、インドール環又はピロール環であるの
が好ましく、オキサゾール環、チアゾール環又はイミダ
ゾール環であるのがより好ましく、オキサゾール環又は
イミダゾール環であるのが特に好ましい。Qy1が形成す
る6員環はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、
ピラジン環又はトリアジン環であるのが好ましく、ピリ
ジン環であるのが特に好ましい。
【0082】一般式(Y-b)中、Ay1は窒素原子又はリン原
子を表す。
【0083】一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中、Ry1〜R
y11はそれぞれ独立に置換又は無置換のアルキル基(好
ましくは炭素原子数1〜24であり、直鎖状であっても分
岐状であっても、また環式であってもよく、例えばメチ
ル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチ
ル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、
t-オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル
基、2-ヘキシルデシル基、オクタデシル基、シクロヘキ
シル基、シクロペンチル基等)、或いは置換又は無置換
のアルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜24であり、
直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えばビニル
基、アリル基等)を表す。Ry1〜Ry11はそれぞれ独立
に、より好ましくは炭素原子数2〜18のアルキル基又は
炭素原子数2〜18のアルケニル基であり、特に好ましく
は炭素原子数2〜6のアルキル基である。
【0084】一般式(Y-b)中のRy2〜Ry5のうち2つ以上
が互いに連結してAy1を含む非芳香族環を形成してもよ
く、一般式(Y-c)中のRy6〜Ry11のうち2つ以上が互いに
連結して環を形成してもよい。
【0085】上記Qy1及びRy1〜Ry11は置換基を有してい
てもよい。この置換基の好ましい例としては、ハロゲン
原子(F、Cl、Br、I等)、シアノ基、アルコキシ基(メ
トキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシ
エトキシエトキシ基等)、アリーロキシ基(フェノキシ
基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基
等)、アルコキシカルボニル基(エトキシカルボニル基
等)、炭酸エステル基(エトキシカルボニルオキシ基
等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾ
イル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、ベン
ゼンスルホニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ
基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホニルオキシ基(メ
タンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基
等)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル基等)、アミ
ド基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、カ
ルバモイル基(N,N-ジメチルカルバモイル基等)、アル
キル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピ
ル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-カルボキシエチ
ル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、トル
イル基等)、複素環基(ピリジル基、イミダゾリル基、
フラニル基等)、アルケニル基(ビニル基、1-プロペニ
ル基等)、シリル基、シリルオキシ基等が挙げられる。
【0086】一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)のいずれか
により表される溶融塩は、Qy1及びRy 1〜Ry11のいずれか
を介して多量体を形成してもよい。
【0087】一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中、X-はア
ニオンを表す。X-の好ましい例としてはハロゲン化物イ
オン(I-、Cl-、Br-等)、SCN-、BF4 -、PF6 -、ClO4 -
(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CH3SO3 -、CF3SO3 -、CF3
COO-、Ph4B-、(CF3SO2)3C-等が挙げられる。X-はI-、SC
N-、CF3SO3 -、CF3COO-、(CF3SO2)2N-又はBF4 -であるの
がより好ましい。
【0088】本発明で好ましく用いられる溶融塩の具体
例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるわけ
ではない。
【0089】
【化10】
【0090】
【化11】
【0091】
【化12】
【0092】
【化13】
【0093】
【化14】
【0094】
【化15】
【0095】溶融塩は単独で使用しても2種以上混合し
て使用してもよい。また、LiI等の他のヨウ素塩やLiB
F4、CF3COOLi、CF3COONa、LiSCN、NaSCN等のアルカリ金
属塩を併用することもできる。アルカリ金属塩の添加量
は、組成物全体に対して0.02〜2質量%であるのが好ま
しく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
【0096】溶融塩電解質は常温で溶融状態であるのが
好ましく、これを含有する組成物には溶媒を用いない方
が好ましい。後述する溶媒を添加しても構わないが、溶
融塩の含有量は組成物全体に対して50質量%以上である
のが好ましく、90質量%以上であるのが特に好ましい。
また、組成物が含む塩のうち50質量%以上がヨウ素塩で
あることが好ましい。溶融塩電解質組成物は後述のよう
にゲル化して使用してもよい。
【0097】溶融塩電解質組成物にはヨウ素を添加する
のが好ましく、この場合、ヨウ素の含有量は、組成物全
体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5
質量%であるのがより好ましい。
【0098】(2)電解液 電解液は電解質、溶媒及び添加物から構成されることが
好ましい。電解液に用いる電解質の例としては、I2とヨ
ウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、
テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウム
ヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモ
ニウム化合物ヨウ素塩等)の組み合わせ、Br2と臭化物
(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物、テト
ラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロ
マイド等の4級アンモニウム化合物臭素塩等)の組み合
わせ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセ
ン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナト
リウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等の
イオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン
等が挙げられる。中でも、I2とLiI又はピリジニウムヨ
ーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニ
ウム化合物ヨウ素塩を組み合わせた電解質が好ましい。
電解質は混合して用いてもよい。
【0099】電解液中の電解質濃度は好ましくは0.1〜1
0Mであり、より好ましくは0.2〜4Mである。また、電解
液にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の添加濃度
は0.01〜0.5Mである。
【0100】電解液に使用する溶媒は、粘度が低くイオ
ン移動度を向上したり、若しくは誘電率が高く有効キャ
リアー濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発
現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒
の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカー
ボネート等のカーボネート化合物、3-メチル-2-オキサ
ゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエ
ーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアル
キルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテ
ル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリ
プロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エー
テル類、メタノール、エタノール、エチレングリコール
モノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアル
キルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエ
ーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテ
ル等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレン
グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン
グリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセト
ニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリ
ル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化
合物、ジメチルスルホキシド、スルフォラン等の非プロ
トン極性物質、水等が挙げられる。これらの溶媒は混合
して用いることもできる。
【0101】また、J. Am. Ceram. Soc., 80 (12) 3157
-3171 (1997)に記載されているようなtert-ブチルピリ
ジンや、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を
前述の溶融塩電解質組成物や電解液に添加することが好
ましい。添加する塩基性化合物は揮発性が無いことが好
ましい。また、電荷を有する塩基性化合物(ピリジン誘
導体、イミダゾール誘導体等)が好ましく使用でき、負
電荷を有するピリジン化合物が特に好ましく使用でき
る。塩基性化合物を電解液に添加する場合の好ましい濃
度範囲は0.05〜2Mである。溶融塩電解質組成物に添加
する場合、組成物全体に対する塩基性化合物の質量比は
好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは1〜2
0質量%である。
【0102】(3)ゲル電解質組成物 本発明では、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官
能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法
により、前述の溶融塩電解質組成物や電解液をゲル化
(固体化)させて使用することもできる。ポリマー添加
によりゲル化する場合は、“Polymer Electrolyte Revi
ews-1及び2”(J. R. MacCallumとC. A.Vincentの共
編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物を
使用することができるが、特にポリアクリロニトリル及
びポリフッ化ビニリデンが好ましく使用できる。オイル
ゲル化剤添加によりゲル化させる場合は工業科学雑誌
(J. Chem. Soc. Japan, Ind. Chem. Sec.), 46, 779
(1943)、J. Am. Chem. Soc., 111, 5542 (1989)、J. Ch
em. Soc., Chem. Commun., 1993, 390、Angew. Chem. I
nt. Ed. Engl., 35, 1949 (1996)、Chem. Lett., 1996,
885、及びJ. Chem. Soc., Chem. Commun., 1997, 545
に記載されている化合物を使用することができるが、ア
ミド構造を有する化合物を使用するのが好ましい。電解
液をゲル化した例は特開平11-185863号に、溶融塩電解
質をゲル化した例は特開2000-58140号にも記載されてお
り、これらも本発明に適用できる。
【0103】また、ポリマーの架橋反応によりゲル化さ
せる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマー及び
架橋剤を併用することが望ましい。この場合、好ましい
架橋可能な反応性基は、アミノ基、含窒素複素環(ピリ
ジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール
環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピ
ペラジン環等)であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に
対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(ハロゲン化
アルキル類、ハロゲン化アラルキル類、スルホン酸エス
テル類、酸無水物、酸クロライド類、イソシアネート化
合物、α,β-不飽和スルホニル化合物、α,β-不飽和カ
ルボニル化合物、α,β-不飽和ニトリル化合物等)であ
る。特開2000-17076号及び同2000-86724号に記載されて
いる架橋技術も適用できる。
【0104】(4)正孔輸送材料 本発明では、溶融塩等のイオン伝導性電解質のかわり
に、有機固体正孔輸送材料、無機固体正孔輸送材料、或
いはこの両者を組み合わせた材料を使用することができ
る。
【0105】(a)有機正孔輸送材料 本発明において好ましく使用できる有機正孔輸送材料の
例としては、J. Hagen, et al., Synthetic Metal, 89,
215-220 (1997)、Nature, Vol.395, 8 Oct.,p583-585
(1998)、WO97/10617、特開昭59-194393号、特開平5-234
681号、米国特許第4,923,774号、特開平4-308688号、米
国特許第4,764,625号、特開平3-269084号、同4-129271
号、同4-175395号、同4-264189号、同4-290851号、同4-
364153号、同5-25473号、同5-239455号、同5-320634
号、同6-1972号、同7-138562号、同7-252474号、同11-1
44773号等に記載の芳香族アミン類、特開平11-149821
号、同11-148067号、同11-176489号等に記載のトリフェ
ニレン誘導体類等が挙げられる。また、Adv. Mater.,
9, No.7, p557 (1997)、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.,
34, No.3, p303-307 (1995)、JACS, Vol.120, No.4, p6
64-672 (1998)等に記載のオリゴチオフェン化合物、K.
Murakoshi, et al., Chem. Lett. p471 (1997)に記載の
ポリピロール、“Handbook of Organic Conductive Mol
ecules and Polymers, Vol. 1,2,3,4”(NALWA著、WILE
Y出版)に記載のポリアセチレン及びその誘導体、ポリ
(p-フェニレン)及びその誘導体、ポリ(p-フェニレンビ
ニレン)及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及び
その誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニ
リン及びその誘導体、ポリトルイジン及びその誘導体等
の導電性高分子も好ましく使用することができる。
【0106】Nature, Vol.395, 8 Oct., p583-585 (199
8)に記載されているように、ドーパントレベルをコント
ロールするためにトリス(4-ブロモフェニル)アミニウム
ヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカル
を含有する化合物を正孔輸送材料に添加してもよい。ま
た、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層
の補償)を行うためにLi[(CF3SO2)2N]のような塩を添加
してもよい。
【0107】(b)無機正孔輸送材料 無機正孔輸送材料としてはp型無機化合物半導体を用い
ることができ、そのバンドギャップは好ましくは2eV以
上、より好ましくは2.5eV以上である。また、p型無機化
合物半導体のイオン化ポテンシャルは、色素の正孔を還
元するためには色素吸着電極のイオン化ポテンシャルよ
り小さいことが必要である。使用する色素によってp型
無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範
囲は異なるが、一般に好ましくは4.5〜5.5eV、より好ま
しくは4.7〜5.3eVである。好ましいp型無機化合物半導
体は1価の銅を含む化合物半導体であり、その例として
はCuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se2、CuGaSe2、Cu
2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2等が挙げられる。中
でも、CuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。
他のp型無機化合物半導体の例としては、GaP、NiO、Co
O、FeO、Bi2O3、MoO2、Cr 2O3等が挙げられる。
【0108】(5)電荷輸送層の形成 電荷輸送層は2通りの方法のいずれかにより形成でき
る。1つは感光層の上に先に対極を貼り合わせておき、
その間隙に液状の電荷輸送層を挟み込む方法である。も
う1つは感光層上に直接電荷輸送層を付与する方法で、
対極はその後付与することになる。
【0109】前者の方法の場合、電荷輸送層を挟み込む
際には、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス
又は常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換す
る真空プロセスを利用できる。
【0110】後者の方法において、湿式の電荷輸送層を
用いる場合は、通常未乾燥のまま対極を付与しエッジ部
の液漏洩防止措置を施す。またゲル電解質組成物を用い
る場合には、これを湿式で塗布した後で重合等の方法に
より固体化してよい。固体化は対極を付与する前に行っ
ても後に行ってもよい。電解液、湿式有機正孔輸送材
料、ゲル電解質組成物等からなる電荷輸送層を形成する
場合は、前述の半導体微粒子層の形成方法と同様の方法
を利用できる。
【0111】固体電解質組成物や固体正孔輸送材料を用
いる場合には、真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理
で電荷輸送層を形成し、その後対極を付与することもで
きる。有機正孔輸送材料は真空蒸着法、キャスト法、塗
布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重
合法等により電極内部に導入することができる。無機固
体化合物はキャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬
法、電解析出法、無電解メッキ法等により電極内部に導
入することができる。
【0112】(D)対極 対極は前述の導電性支持体と同様に、導電性材料からな
る対極導電層の単層構造でもよいし、対極導電層と支持
基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導
電剤の例としては、金属(白金、金、銀、銅、アルミニ
ウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素、導電性金
属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、フッ素ドープ
酸化スズ等)等が挙げられる。この中でも白金、金、
銀、銅、アルミニウム及びマグネシウムが好ましい。対
極に用いる基板は、好ましくはガラス基板又はプラスチ
ック基板であり、これに上記の導電剤を塗布又は蒸着し
て用いることができる。対極導電層の厚さは特に制限さ
れないが、好ましくは3nm〜10μmである。対極導電層
の表面抵抗は低い程よく、好ましくは50Ω/□以下、よ
り好ましくは20Ω/□以下である。
【0113】導電性支持体と対極のいずれか一方又は両
方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するた
めには、導電性支持体と対極の少なくとも一方が実質的
に透明であればよい。発電効率の向上の観点からは導電
性支持体を透明にして光を導電性支持体側から入射させ
るのが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を
有するのが好ましい。このような性質を得るためには、
対極として金属又は導電性酸化物を蒸着したガラス又は
プラスチック、或いは金属薄膜を使用してよい。
【0114】対極は電荷輸送層上に直接導電剤を塗布、
メッキ又は蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を有する基
板の導電層側を貼り付けて設置すればよい。導電性支持
体の場合と同様に、特に対極が透明の場合には、対極の
抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。
金属リードの好ましい態様は導電性支持体の場合と同じ
である。
【0115】(E)その他の層 対極と導電性支持体の短絡を防止するため、導電性支持
体と感光層の間には緻密な半導体の薄膜層を下塗り層と
して予め塗設しておくことが好ましい。この下塗り層に
より短絡を防止する方法は、電荷輸送層に電子輸送材料
や正孔輸送材料を用いる場合は特に有効である。下塗り
層は好ましくはTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO又はNb2O5
からなり、さらに好ましくはTiO2からなる。下塗り層
は、例えばElectrochim. Acta, 40, 643-652 (1995)に
記載のスプレーパイロリシス法や、スパッタ法等により
塗設することができる。下塗り層の膜厚は好ましくは5
〜1000nmであり、より好ましくは10〜500nmである。
【0116】また、導電性支持体と対極の一方又は両方
の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護
層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。これらの
機能性層の形成方法は、その材質に応じて塗布法、蒸着
法、貼り付け法等から適宜選択できる。
【0117】(F)光電変換素子の内部構造の具体例 上述のように、光電変換素子の内部構造は目的に合わせ
様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面
から光の入射が可能な構造と、片面からのみ可能な構造
が可能である。本発明の光電変換素子の好ましい内部構
造の例を図2〜図9に示す。
【0118】図2に示す構造は、透明導電層10aと透明
対極導電層40aとの間に、感光層20と電荷輸送層30とを
介在させたものであり、両面から光が入射する構造とな
っている。図3に示す構造は、透明基板50a上に一部金
属リード11を設け、その上に透明導電層10aを設け、下
塗り層60、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40を
この順で設け、更に支持基板50を配置したものであり、
導電層側から光が入射する構造となっている。図4に示
す構造は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60
を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30と透明対極
導電層40aとを設け、一部に金属リード11を設けた透明
基板50aを金属リード11側を内側にして配置したもので
あり、対極側から光が入射する構造である。図5に示す
構造は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、更
に透明導電層10a(又は40a)を設けたもの1組の間に下
塗り層60、感光層20及び電荷輸送層30を介在させたもの
であり、両面から光が入射する構造である。図6に示す
構造は、透明基板50a上に透明導電層10a、下塗り層60、
感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40を設け、この
上に支持基板50を配置したものであり、導電層側から光
が入射する構造である。図7に示す構造は、支持基板50
上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設
け、更に電荷輸送層30及び透明対極導電層40aを設け、
この上に透明基板50aを配置したものであり、対極側か
ら光が入射する構造である。図8に示す構造は、透明基
板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感
光層20を設け、更に電荷輸送層30及び透明対極導電層40
aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、
両面から光が入射する構造となっている。図9に示す構
造は、支持基板50上に導電層10を設け、下塗り層60を介
して感光層20を設け、更に固体の電荷輸送層30を設け、
この上に一部対極導電層40又は金属リード11を有するも
のであり、対極側から光が入射する構造となっている。
【0119】[IV]光電池 本発明の光電池は、上記本発明の光電変換素子に外部負
荷で仕事をさせるようにしたものである。光電池のう
ち、電荷輸送材料が主としてイオン輸送材料からなる場
合を特に光電気化学電池と呼び、また、太陽光による発
電を主目的とする場合を太陽電池と呼ぶ。
【0120】光電池の側面は、構成物の劣化や内容物の
揮散を防止するためにポリマーや接着剤等で密封するの
が好ましい。導電性支持体及び対極にリードを介して接
続する外部回路自体は公知のものでよい。
【0121】本発明の光電変換素子を太陽電池に適用す
る場合も、そのセル内部の構造は基本的に上述した光電
変換素子の構造と同じである。また、本発明の光電変換
素子を用いた色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池モ
ジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりう
る。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミッ
ク等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹
脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取
り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材
料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板
側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体
的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタ
イプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、
アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体
型モジュール構造等が知られており、本発明の光電変換
素子を用いた色素増感型太陽電池も使用目的や使用場所
及び環境により、適宜モジュール構造を選択できる。具
体的には、特願平11-8457号、特開2000-268892号等に記
載の構造や態様とすることが好ましい。
【0122】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0123】合成例1 本発明においてシクロデキストリン類として好ましく使
用できる化合物(6)を以下の通り合成した。テトラエト
キシチタン(11.4g)のトルエン(120ml)溶液中に、窒
素雰囲気下、β-シクロデキストリン(11.3g)を加え2
時間加熱還流した。80℃に温度を下げた後、溶媒のトル
エンを約80ml留去し室温まで冷却した。析出した白色残
渣を濾別後、50℃で真空乾燥して白色固体の化合物(6)
を14.5g得た。得られた化合物(6)の組成比を1H-NMRによ
って確認したところ、β-シクロデキストリン:チタン
元素:エトキシ基=1:5:5であった(δ(2%D2SO
4/D2O):4.85(d)、3.72(dd)、3.68(bs)、3.55-3.30
(m)、1.00(t))。
【0124】実施例1 1.二酸化チタン粒子塗布液の作製 オートクレーブ温度を230℃にしたこと以外はバルベら
のジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエ
ティ, 第80巻, 3157頁に記載の方法と同様の方法で、二
酸化チタン濃度が11質量%の二酸化チタン粒子分散物を
得た。この分散物中の二酸化チタン粒子の平均サイズは
約10nmであった。この分散物に、分散助剤として二酸化
チタンに対して20質量%のポリエチレングリコール(和
光純薬製、分子量20000)を添加し、混合して二酸化チ
タン粒子塗布液TH-1を得た。また、分散助剤を下記表2
に示すように換えたこと以外は塗布液TH-1と同様に、二
酸化チタン粒子塗布液TH-2〜TH-12をそれぞれ作製し
た。
【0125】
【表2】
【0126】2.色素吸着二酸化チタン電極の作製 フッ素をドープした酸化スズをコーティングした透明導
電性ガラス(日本板硝子製、表面抵抗:約10Ω/cm2
の導電面側に、上記塗布液TH-1をドクターブレードで12
0μmの厚みで塗布し、25℃で30分間乾燥した後、電気炉
(ヤマト科学製マッフル炉FP-32型)を用いて450℃で30
分間焼成した。二酸化チタンの塗布量は18g/m2、塗布層
の膜厚は12μmであり、二酸化チタンの比重(4.17g/c
m3)から計算したこの層の空隙率は64%であった。焼成
後、冷却し、ルテニウム錯体色素シス-(ジチオシアネー
ト)-N,N'-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシリ
ックアシッド)ルテニウム(II)錯体(R-1)の吸着液に16
時間浸漬した。吸着温度は25℃、吸着液の溶媒はエタノ
ールとアセトニトリルの1:1(体積比)混合物であ
り、色素の濃度は3×10-4モル/リットルとした。色素
の吸着した二酸化チタン電極をエタノール、アセトニト
リルで順次洗浄し、色素吸着二酸化チタン電極T-1を作
製した。また、塗布液TH-1に換えて塗布液TH-2〜TH-12
を用いたこと以外は電極T-1と同様に、色素吸着二酸化
チタン電極T-2〜T-12をそれぞれ作製した。各電極の塗
布層の空隙率を、膜厚と塗布量から求めた結果を表3に
示す。
【0127】3.膜強度の評価 上記塗布液を塗布してなる塗布層の膜強度を評価した。
色素吸着前の塗布層全面に粘着テープ(ニチバン株式会
社製、包装用セロバン粘着テープ、No.405、24mm巾)を
貼り付け、これを剥がした後、残存した二酸化チタンの
質量を測定した。この質量から求めたTiO2残存率を表3
に示す。
【0128】4.光電変換素子の作製 上記のように得た色素吸着二酸化チタン電極T-1(2cm
×2cm)を、円形(直径8mm)の電極が残るように周囲
を削った後、その上に直径1cmの丸い穴を持つ厚さ25μ
mの熱可塑性樹脂(1.5cm×1.5cm)を穴が電極を囲むよ
うに載せ、100℃で20秒間圧着した。次に、1-メチル-3-
プロピルイミダゾリウムアイオダイド(Y6-8)と1-エチ
ル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレード(Y
6-2)の混合液(Y6-8:Y6-2=2:1(質量比))に2
質量%のヨウ素I2を溶解して溶融塩電解質組成物を調製
し、これを電極上に10μl注液し、50℃で12時間放置し
て電極に染み込ませた。これを白金蒸着ガラス(2cm×
3cm)と重ね合わせ、はみ出した余分な電解質組成物を
拭き取った後、130℃で30秒間圧着し、溶融塩電解質を
電荷輸送層に用いた比較用の光電変換素子CM-1を得た。
なお、これらの操作はすべて露点-50℃以下のドライル
ーム内で行った。この光電変換素子は、図10に示すよう
な、導電性ガラス1(ガラス2上に導電層3が設層され
たもの)、色素吸着二酸化チタン層4、電荷輸送層5、
白金層6及びガラス7が順に積層された構造を有する。
また、電極を下記表3に示すものに換えたこと以外は光
電変換素子CM-1と同様に、比較用の光電変換素子CM-2及
びCM-3、並びに本発明の光電変換素子CM-4〜CM-12をそ
れぞれ作製した。
【0129】5.光電変換効率の測定 500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光を分光フィルタ
ー(Oriel社製「AM1.5」)を通すことにより模擬太陽光
を発生させた。この模擬太陽光の強度は垂直面において
100mW/cm2であった。各光電変換素子CM-1〜CM-12の導電
性ガラスの端部に銀ペーストを塗布して負極とし、この
負極と白金蒸着ガラス(正極)を電流電圧測定装置(ケ
ースレーSMU238型)に接続した。各光電変換素子に模擬
太陽光を垂直に照射しながら電流電圧特性を測定し光電
変換効率を求めた。下記表3に各光電変換素子の変換効
率を示す。
【0130】
【表3】
【0131】表3より、従来の分散助剤を用いた比較例
の半導体微粒子層に比べ、本発明の半導体微粒子層は同
じ空隙率の時の膜強度がいずれも向上しており、電極T-
6のように空隙率を70%以上としても強い強度を保つこ
とがわかる。また、従来の分散助剤を用いた比較例の光
電変換素子と比較して、シクロデキストリン類を分散助
剤として用いて作製した本発明の光電変換素子はいずれ
も変換効率が高いことがわかる。
【0132】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明では、半導
体微粒子の分散液にシクロデキストリン類を分散助剤と
して添加することによって、膜強度及び空隙率に優れた
半導体微粒子層が形成できる。この半導体微粒子層を用
いた色素増感光電変換素子は優れた変換効率を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図2】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図3】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図4】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図5】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図6】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図7】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図8】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図9】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図10】 実施例で作製した光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【符号の説明】
10・・・導電層 10a・・・透明導電層 11・・・金属リード 20・・・感光層 21・・・半導体微粒子 22・・・色素 23・・・電荷輸送材料 30・・・電荷輸送層 40・・・対極導電層 40a・・・透明対極導電層 50・・・基板 50a・・・透明基板 60・・・下塗り層 1・・・導電性ガラス 2・・・ガラス 3・・・導電層 4・・・色素吸着二酸化チタン層 5・・・電荷輸送層 6・・・白金層 7・・・ガラス

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体微粒子及びシクロデキストリン類
    を含有する分散液を用いることを特徴とする半導体微粒
    子層の作製方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の半導体微粒子層の作製
    方法によって作製された半導体微粒子層。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の半導体微粒子層に色素
    を吸着させることを特徴とする光電変換素子の作製方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の光電変換素子の作製方
    法によって作製された光電変換素子。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の光電変換素子を用いた
    光電池。
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