JP2002340914A - マイクロノズル、その製造方法、スポッティング方法及びスポッタ - Google Patents

マイクロノズル、その製造方法、スポッティング方法及びスポッタ

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JP2002340914A
JP2002340914A JP2002070139A JP2002070139A JP2002340914A JP 2002340914 A JP2002340914 A JP 2002340914A JP 2002070139 A JP2002070139 A JP 2002070139A JP 2002070139 A JP2002070139 A JP 2002070139A JP 2002340914 A JP2002340914 A JP 2002340914A
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discharge port
micro
nozzle
active energy
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Takanori Anazawa
孝典 穴澤
Atsushi Teramae
敦司 寺前
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Kawamura Institute of Chemical Research
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多数の吐出口から多数種の溶液を各々個別の
流路を通して、溶液間のコンタミネーションなしに同時
に吐出し、多数のスポットを一挙に、且つ容易に形成で
きるマイクロノズル、その製造方法、スポッティング方
法及び該マイクロノズルを装着したスポッタを提供す
る。 【解決手段】 互いに独立した4つ以上の毛細管状の流
路と各流路の吐出口及び注入口とを有するマイクロノズ
ルであって、隣接する各吐出口の中心間距離が該吐出口
の直径の4〜10000倍であり、隣接する各注入口の
中心間距離が隣接する該吐出口の中心間距離より大き
く、かつ注入口の直径が吐出口の直径より大きいことを
特徴とするマイクロノズル、その製造方法、スポッティ
ング方法及び該マイクロノズルを装着したスポッタ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、種々の用途に用い
られる微小な吐出口を有するノズルに関し、複数種の液
体を複数の吐出口から同時に吐出し、複数種の塗布液を
多数の微小な点状に塗工することのできるマイクロノズ
ル、その製造方法、及びスポッティング方法に関する。
本発明はまた、多数のプローブが基材の表面に多数のス
ポットして固定されたマイクロアレイ等を製造するため
のスポッタに関する。
【0002】本発明のマイクロノズルは、特に、いわゆ
るDNAチップ、免疫診断薬、バイオセンサー等の製造
装置として使用されるマイクロアレイ製造用のスポッタ
用ノズルとして有用である。
【0003】
【従来の技術】マイクロアレイの製造の一工程である、
プローブの溶液を基板上に多数の点状に塗工(スポッテ
ィング)する方法として、インクジェット法、光化学的
方法、針によるスタンプ法(接触法)等が知られてい
る。しかし、非常に多くの異なる溶液をスポッティング
することは相当に困難であり、スポットを順次形成する
方法か、あるいは一度に複数ではあるが少数のスポット
を形成し、それを順次行う方法しか知られていなかっ
た。
【0004】目的数のスポットを一度に形成するには、
必要数の吐出口を有するマイクロノズルから多数種の溶
液を同時に吐出する方法を用いれば可能であることは予
想されるが、微細な複数の吐出口を有するノズルのそれ
ぞれの吐出口に異なる溶液を供給する方法や、多数の微
小な吐出口に配管を接続する具体的な方法は知られてお
らず、実現もしていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、多数の吐出口から多数種の塗布液を各々個
別の流路を通して、塗布液間のコンタミネーションなし
に同時に吐出し、多数のスポットを一挙に、且つ容易に
形成できるマイクロノズル、その製造方法、それを用い
たスポッティング方法、及び該マイクロノズルを装着し
たスポッタを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決する手段を鋭意検討した結果、吐出口径、吐出口
間隔、及び注入口間隔を特定の関係とすることで上記の
課題を解決できること、そのような構造のマイクロノズ
ルを、多数の吐出口を有する部材と、表面や内部に毛細
管状の流路となる欠損部が形成された部材を固着した構
造とすることで容易に形成できること、及び、これらの
部材を、活性エネルギー線硬化性組成物を素材として使
用して、少なくとも一方が半硬化状態で密着させて再度
活性エネルギー線を照射することにより積層する方法に
より形成できることを見いだし、本発明を完成するに至
った。また、本発明者らは、上記のマイクロノズルを使
用することにより各注入口に独立にポンプを接続するこ
となく、貯液槽状に形成した各注入口に独立に塗布液を
貯液し、該マイクロノズルを塗布対象と接触、押圧、印
打することによって、容易に上記課題を解決できること
を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明は、互いに独立した4つ以上
の毛細管状の流路と各流路の吐出口及び注入口とを有す
るマイクロノズルであって、隣接する各吐出口の中心間
距離が該吐出口の直径の4〜10000倍であり、隣接
する各注入口の中心間距離が隣接する該吐出口の中心間
距離より大きく、かつ注入口の直径が吐出口の直径より
大きいことを特徴とするマイクロノズルを提供するもの
である。
【0008】また、本発明は互いに独立した4つ以上の
毛細管状の流路と各流路の吐出口及び注入口とを有する
マイクロノズルであって、隣接する各吐出口の中心間距
離が該吐出口の直径の4〜10000倍であり、隣接す
る各注入口の中心間距離が隣接する該吐出口の中心間距
離より大きく、かつ注入口の直径が吐出口の直径より大
きいマイクロノズルの製造方法であって、
【0009】部材を貫通する互いに独立した4つ以上の
毛細管状の流路と各流路の吐出口を有する部材(A)
と、前記部材(A)の吐出口に接続する部材中の流路又
は前記部材(A)とで流路を形成する欠損部を有し、活
性エネルギー線硬化性組成物の半硬化物からなる部材
(B)とを積層し、
【0010】次いで活性エネルギー線を照射して部材
(B)を硬化させるとともに部材(A)と部材(B)と
を接着させることを特徴とするマイクロノズルの製造方
法を提供するものである。
【0011】また本発明は、互いに独立した4つ以上の
毛細管状の流路と各流路の吐出口及び注入口とを有する
マイクロノズルであって、隣接する各吐出口の中心間距
離が該吐出口の直径の4〜10000倍であり、隣接す
る各注入口の中心間距離が隣接する該吐出口の中心間距
離より大きく、かつ注入口の直径が吐出口の直径より大
きいマイクロノズルの製造方法であって、部材を貫通す
る互いに独立した4つ以上の毛細管状の流路と各流路の
吐出口を有し、活性エネルギー線硬化性組成物の半硬化
物からなる部材(A)と、前記部材(A)の吐出口に接
続する部材中の流路又は部材(A)とで流路を形成する
欠損部を有する部材(B)とを積層し、次いで活性エネ
ルギー線を照射して部材(A)を硬化させるとともに部
材(A)と部材(B)とを接着させることを特徴とする
マイクロノズルの製造方法を提供するものである。
【0012】また、本発明は前記マイクロノズルを用
い、塗布液を塗布対象物に点状に塗布するスポッティン
グ方法を提供するものである。更に本発明は前記マイク
ロノズルを有するスポッタを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】始めに本発明のマイクロノズルに
ついて説明する。本発明のマイクロノズルは、互いに独
立した4つ以上の毛細管状の流路と各流路の吐出口及び
注入口とを有するマイクロノズルであって、隣接する各
吐出口の中心間距離が該吐出口の直径の4〜10000
倍であり、隣接する各注入口の中心間距離が隣接する該
吐出口の中心間距離より大きく、かつ注入口の直径が吐
出口の直径より大きいものである。
【0014】本発明のマイクロノズルの外形は特に限定
されるものではなく、塗布対象物の形状や、本発明のマ
イクロノズルを装着する装置に応じた形状を採りうる。
例えば、シート状(フィルム状、リボン状などを含む。
以下同じ)、板状(凸又は凹の曲板状を含む。以下同
じ)、筒状(ローラー状)、その他複雑な形状の成型物
であり得るが、シート状や板状のように表裏が平行な面
を有する形状であることが好ましい。さらに、吐出口が
設けられた面(以下、「ノズル面」と称することがあ
る)が円柱の一部であるような凸曲面(かまぼこ状)で
あって、反対側が平面であるような形状が特に好まし
い。この時ノズル面は、直径が好ましくは5cm〜10
m、更に好ましくは10cm〜1mの円柱の一部である
ことが好ましい。なお、上記の形状は、後述のスペーサ
ーや固定用構造などの付帯構造を除いた部分の形状を言
う。
【0015】ノズル面が上記の曲面状のマイクロノズル
を用い、ローラーのように接触面を順次移動させること
により、マトリックス配置された吐出口の一方の端から
1列ずつスポッティングすることで、多数の吐出口から
正確にスポッティングすることができる。
【0016】あるいは、本発明のマイクロノズル全体を
可撓性のあるシート状に形成することも好ましい。可撓
性のあるシート状に形成したマイクロノズルを柔軟性の
ある部材でノズルの背面から押して、ノズル面をスポッ
ティングすべき塗布対象物に密着させ、その状態でスポ
ッティングすることにより、解像度の高いスポッティン
グが可能となる。また、ノズル面にスポッティングに際
してスペーサーとして働く凸状構造を設け、マイクロノ
ズルを塗布対象物(例えばマイクロアレイ用基材)に接
触させたときに吐出口と塗布対象物の距離を一定間隔に
近接させた状態に維持するようにすることも、スポット
間のバラ付きを抑制するために好ましい。該スペーサー
は、厚みが3〜100μmであることが好ましく、10
〜50μmであることがさらに好ましい。
【0017】本発明のマイクロノズルの流路は、該マイ
クロノズルを構成する活性エネルギー線硬化性組成物の
硬化物の欠損部として形成されている。活性エネルギー
線硬化性組成物の硬化物とすることで、その形成が容易
となる。但し、本発明のマイクロノズルは全部が活性エ
ネルギー線硬化性組成物の硬化物で構成されている必要
はなく、一部は他の素材で構成されていても良く、例え
ばノズル面は他の部材で構成されていても良い。
【0018】流路は、1つの注入口及びそれに対応する
1つの吐出口に、枝分かれしていない1本の流路で連絡
していることが好ましいが、互いに独立した4つ以上の
流路を有していれば、1つの注入口が枝分かれした流路
でそれぞれ複数、好ましくは2〜10、さらに好ましく
は2〜4の吐出口に連絡していても良い。このようなマ
イクロノズルは、複数個の塗布対象物に同時にそれぞれ
4つ以上のスポッッティングをすることによって、複数
のマイクロアレイを同時に製造する用途に適する。
【0019】注入口の直径は上記吐出口の直径より大き
く、かつ、注入口の中心間距離が該吐出口の中心間距離
より大きい。これにより、複数の異なる塗布液の注入を
容易に行うことができ、塗布液を注入するための配管の
接続が容易となる。本発明で言う注入口は、マイクロノ
ズルの表面に流路の他端が開口したものを言うが、配管
が接続されていても良い。この場合は、マイクロノズル
表面部分の寸法をもって吐出口の寸法とする。
【0020】本発明のマイクロノズルは、同じ方向に吐
出口が開口しており、複数の吐出口から一つの塗布対象
物に複数の点状に塗布できる構造を有する。例えば、塗
布対象物が平面状である場合には平面、塗布対象物が凸
状の曲面の場合にはそれに対応する凹状の曲面、塗布対
象物が段差を有する場合には、それに対応した段差を有
する面に各吐出口が開口するよう形成されている。
【0021】吐出口の数は4つ以上であるが、通常4〜
10000であり、さらに10〜10000であること
が好ましく、30〜1000であることが更に好まし
い。吐出口の数が3以下であると、本発明の効果が発揮
されにくく、過剰に多いと製造が困難となる。
【0022】吐出口の配置は任意であり、例えば、線状
配置、複数列の線状配置、マトリックス配置、交互配
置、円状配置、同心円状配置、放射状配置などであり得
るが、線状配置、複数列の線状配置、又は縦横方向に配
置された形状(マトリックス配置)であることが好まし
い。但し、各列の吐出口は同位置配置であっても交互配
置であっても斜状配置であっても良い。
【0023】本発明のマイクロノズルは、独立した複数
の点状にスポッティングすることを目的とするため、吐
出口の中心間距離が吐出口の直径の4倍以上、好ましく
は5倍以上、更に好ましくは6倍以上であり、これは公
知の複合繊維紡糸用ノズルに比べて大きい。また、吐出
口の中心間距離は、吐出口の直径の10000倍以下、
好ましくは100倍以下、更に好ましくは10倍以下で
ある。この範囲より小さいと、独立した点状にスポッテ
ィングすることが困難となる。またこの範囲より大きい
場合、ノズル寸法が大きくなりがちである。
【0024】吐出口の中心間距離は任意であり、例え
ば、製造するマイクロアレイのスポットの中心間距離と
することができるが、2〜1000μmであることが好
ましく、5〜500μmであることが更に好ましい。勿
論、この中心間距離は一定である必要はなく、又、縦方
向と横方向で異なっていても良い。
【0025】吐出口の形状は任意であり、円、六角形、
矩形、スリット状などであってよいが、円又は矩形であ
ることが好ましい。吐出口の直径は1〜500μmであ
ることが好ましく、1〜300μmであることがさらに
好ましく、3〜200μmであることが最も好ましい。
但し、断面が円でないものは同じ断面積を有する円の直
径で表現するものとする。過小であると製造が困難とな
る上、吐出速度が低下し、過大であると微小なスポット
の形成が不能となる。
【0026】吐出口はマイクロノズルの平面状の表面、
曲面状の表面、台状の凸構造の上部平面に形成されてい
ても良いし、あるいはこれらの表面より吐出口の周囲が
壁状に高くなった筒状であっても良い。特に、塗布すべ
き対象部位が溝状の凹部の底である場合には、吐出口
は、該溝の底に届くだけの高さの上記台状の凸構造の上
部平面に形成されていること、または上記筒状に形成さ
れていることが好ましい。
【0027】本発明のマイクロノズルの好ましい形態と
しては、(1)部材を貫通する互いに独立した4つ以上
の毛細管状の流路と各流路の吐出口とを有する部材(以
下、「部材(A)」と称する)と、(2)活性エネルギ
ー線硬化性組成物の硬化物からなり、かつ部材(A)の
吐出口に接続する部材中の流路、又は、部材(A)と積
層された面に流路を形成する欠損部とを有する部材(以
下、部材(B)と称する)とが積層されてなるものが挙
げられる。
【0028】以下、本発明のマイクロノズルについて上
記部材(A)と部材(B)で構成されている場合に付い
て説明するが、それ以外の構造であっても説明は同様で
ある。また、本明細書においては、部材(A)は吐出口
の開口部(ノズル面)を下に向けて置かれた姿勢でもっ
て、上下、高さなどを表現する。
【0029】始めに、部材を貫通する互いに独立した4
つ以上の毛細管状の流路と、各流路の吐出口とを有する
部材(A)について説明する。吐出口は部材(A)を貫
通して穿たれた孔状の流路(部材(A)に形成された流
路を「流路(A)」と称する場合がある)の開口部とし
て設けられている。流路(A)の直径や形状は一定であ
っても深さ方向で異なっていても良い。また、穿たれる
方向は必ずしも部材(A)のノズル面に直角でなくても
良いし、複数の流路(A)は互いに並行でなくても良
い。
【0030】部材(A)の外形は、上記マイクロノズル
の形状に応じて任意の形状を取りうるが、上記した本発
明のマイクロノズルの好ましい形状と同様であり得る。
それらの中で、例えば、平面状、台状、表面にスペーサ
ーとなる凸部を有する形状が好ましい。
【0031】部材(A)は、全体又はノズル面が部材
(B)より小さく形成され、例えば接触式で使用される
ときに、吐出口付近のみが塗布対象物と接触する形状で
あることも好ましい。特に、スポッティングすべき対象
部位が溝状の凹部の底である場合には、部材(A)が台
状である代わりに、部材(A)の幅が該塗布対象物の溝
の幅より小で、その厚みが該溝の深さに対応した厚みと
することも好ましい。
【0032】部材(A)の厚みは任意であるが、0.5
〜500μmが好ましく、3〜100μmが更に好まし
い。厚みが過小であると製造が困難となり、過大である
と微細な吐出口の形成が困難となる上、使用時の吐出量
が減少し、高速でのスポット形成が不能となる。後述の
ように、部材(A)を疎水性の素材で形成し、部材
(B)を親水性の素材で形成するときは、部材(A)の
厚みは薄い方が好ましい。部材(A)は、上面、即ちノ
ズル面の背面に、部材(B)と積層されたときに流路と
なる欠損部を有していても良い。
【0033】部材(A)は任意の素材で構成されていて
よく、例えば、ガラス、水晶等の結晶、ステンレススチ
ール等の金属、シリコンなどの半導体、セラミック、炭
素、重合体などであり得る。部材(A)は、異なる素材
で形成された複合体、例えば積層体であって良いが、そ
の全体が同じ素材で構成されていること、または下記の
ように薄いフィルム状の部材の積層体であることが、製
造が容易であり好ましい。
【0034】これらの素材の中で、ノズル面を疎水性に
し易い点から重合体が好ましい。重合体は単独重合体で
あっても共重合体であっても良く、また、熱可塑性重合
体であっても熱硬化性重合体であっても良い。生産性の
面から重合体は活性エネルギー線硬化性組成物(以下、
部材(A)を構成する活性エネルギー線硬化性組成物を
「組成物(A)」と称する場合がある)の硬化物である
ことが好ましい。
【0035】部材(A)のノズル面を構成する素材は、
水との接触角が45度以上であることが好ましく、55
〜110度であることが更に好ましく、60〜95度で
あることが最も好ましい(以下、このような表面特性を
「疎水性」と称する)。水との接触角がこの範囲未満で
あると、各吐出口に導入される液体でノズル面が濡れ、
スポットの広がりや、液体間のコンタミネーションを誘
発しがちである。
【0036】ノズル面の水との接触角自体は高いことに
よる不都合はなく、例えば180度であっても良いが、
ノズル面の接触角を高くすると、部材(A)に穿たれた
孔の内表面、即ち吐出口を開口部とする流路(A)の内
表面も同時に高くなりがちであり、吐出圧の制御が難し
くなる。流路(A)内表面の接触角は小さいほど好まし
く、90度以下であることが好ましく、70度以下であ
ることが更に好ましい。
【0037】この点から、部材(A)は複数の層から成
る複合体とし、表面の極薄い層を疎水性の素材で形成し
て、その奥層を親水性の素材で形成することも好まし
い。或いは、部材(A)を薄いフィルム状として、親水
性の部材(B)と積層することも好ましい。部材(A)
は耐久性の面から、少なくともノズル表面と成る部分は
硬度の高い素材又は耐摩耗性の良い素材を用いることが
好ましい。
【0038】部材(A)に使用できる重合体としては、
例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポ
リスチレンとマレイン酸との共重合体、ポリスチレンと
アクリロニトリルとの共重合体の如きスチレン系重合体
や、ポルスルホン、ポリエーテルスルホンの如きポリス
ルホン系重合体や、ポリメチルメタクリレート、ポリア
クリロニトリルの如き(メタ)アクリル系重合体や、ポ
リマレイミド系重合体や、
【0039】ポリカーボネート系重合体や、ポリオレフ
ィン系重合体や、塩化ビニル、塩化ビニリデンの如き塩
素含有重合体や、酢酸セルロース、メチルセルロースの
如きセルロース系重合体や、ポリウレタン系重合体や、
ポリアミド系重合体や、ポリイミド系重合体や、フッ素
系重合体や、ポリ−2,6−ジメチルフェニレンオキサ
イド、ポリフェニレンサルファイドの如きポリエーテル
系又はポリチオエーテル系重合体や
【0040】ポリエーテルエーテルケトンの如きポリエ
ーテルケトン系重合体や、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリアリレートの如きポリエステル系重合体や、エ
ポキシ樹脂や、ウレア樹脂や、フェノール樹脂などが挙
げられる。これらの中でも、部材(B)との接着性が良
好な点などから、スチレン系重合体、(メタ)アクリル
系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリスルホン系
重合体、及びポリエステル系重合体が好ましい。
【0041】部材(A)に使用できる重合体は、活性エ
ネルギー線硬化性組成物(以下、「組成物(A)」と称
する)の硬化物であることも好ましい。部材(A)を組
成物(A)の硬化物で形成することは、柔軟性、疎水性
などを幅広く制御することが容易である上、部材(B)
と接着することが容易であるために好ましい。組成物
(A)に関しては、好ましい親水性と疎水性との比や好
ましい硬度が異なること以外は、後述の組成物(B)と
同様である。
【0042】吐出口と流路(A)の形成方法は任意であ
り、ドリル穿孔、レーザー穿孔、リソグラフ(エッチン
グ)、フォトリソグラフ(活性エネルギー線によるパタ
ーニング硬化または活性エネルギー線によるパターニン
グ分解を言う。以下同様)、マイクロ光造形法などを利
用できる。これらの中で、部材(A)の素材に組成物
(A)を使用し、フォトリソグラフにより、部材(A)
のオンサイト重合による形成時に、吐出口と流路(A)
も同時に形成する方法が好適である。
【0043】続いて、活性エネルギー線硬化性組成物の
硬化物からなり、かつ部材(A)の吐出口に接続する部
材中の流路、又は、部材(A)と積層された面に流路を
形成する欠損部とを有する部材(B)について説明す
る。以下、部材(B)について、図8及び図9に示され
た簡単な模式図を一例として説明する。部材(B)(2
2)、部材(23)は、部材(A)(21)に積層して
固着されることにより、その一端が部材(A)の各流路
(28、28’、28”、28''')にそれぞれ接続さ
れ、他端が部材(B)(23)表面に注入口(27、2
7’、27”、27''')として開口している毛細管状
の流路(25、26、25’、26’、25”、2
6”、25'''、26''')(以下、必要に応じて4系統
の内の1系統のみを示して説明する)となる構造を有す
る。
【0044】流路は、部材(B)内部に毛細管として形
成されていても良いし、表面に欠損部(25)が設けら
れており、該欠損部を有する部材(B)(22)の面を
部材(A)(21)側にして部材(A)に積層されるこ
とによって、該欠損部(25)の側面と部材(A)(2
1)と積層された面で毛細管状の流路(25)が形成さ
れていても良い。部材(B)は欠損部(25)と毛細管
状の流路の両者を有していても良い(実施例1、図1〜
7)。
【0045】流路(25、26)は、吐出口(24)に
つながる流路(A)(28)に吐出すべき液体を供給す
る流路であり、吐出口の直径より大きな直径であること
が好ましい。そのようにすることで、流路抵抗を減じ、
高速のスポッティングが可能となる。流路の他端は注入
口(27)として部材(B)(23)に、又は部材
(A)と部材(B)の間に開口している。
【0046】注入口(27)の中心間距離は吐出口(2
4)の中心間距離より大きく、「注入口の中心間距離/
吐出口の中心間距離」の比が1より大きく、該比が3〜
300であることが好ましく、更に5〜100がより好
ましく、さらに10〜50が最も好ましい。本発明にお
いては、この比を大きく取ることができる。この比が過
小であると本発明の効果が発揮されないし、過大である
とノズルが過剰に大型となり不都合が生じる。
【0047】注入口の中心間距離を吐出口の中心間距離
より大きくすることにより、大径の流路を形成して圧力
損失を減じることができ、大径の注入口への配管の接続
が容易になり、注入口への液体供給が容易になる。
【0048】流路(25、26)の断面積は任意である
が、吐出口の面積より大きいことが好ましく、部材
(A)(21)と接する部分で最も小さく、注入口(2
7)で最も大きくすることが更に好ましい。このような
構造により、流路抵抗を減じることができる。
【0049】また、各流路(25、25’、25”、2
5''')は長さを同じとすることも、各流路の圧力損失
を揃える意味で好ましい。或いは、流路(25、2
5’、25”、25''')の断面積を調節することによ
って、各流路間の圧力損失を揃えることも好ましい。
【0050】注入口(27)は部材(A)、部材
(B)、またはその両方の任意の面に開口していても良
く、部材(A)(21)と部材(B)(22)の間に開
口していても良いが、部材(B)の、部材(A)と反対
の面に開口していることが好ましい。
【0051】吐出口(24、24’、24”、2
4''')と注入口(27、27’、27”、27''')の
位置関係は任意であり、例えば、吐出口から放射状に引
き出された流路の他端に注入口が形成され、ノズルの中
心付近に吐出口群を有する形状、或いは、吐出口から一
方向に引き出された流路の他端に注入口が形成され、吐
出口群と注入口群が離れている形状等であり得る。吐出
口がマトリックス配置されている場合には、注入口は部
材(B)の上面に吐出口と同じ順に配置された拡大され
たマトリックス配置とすることが好ましい。
【0052】注入口(27)は、吐出液を送液するため
の機構、例えばピエゾ素子、加熱機構などのインクジェ
ット方式の駆動機構に接続されるための構造、例えば注
入口の円錐構造、注入口周囲の凸状構造、オーリング保
持構造などに成形されていても良いし、配管を接続する
ための機構、例えばホース口、ネジ孔、ルアーフィッテ
ィング(約1/4回転でシリンジを固定できる規格の接
続具)、オーリング保持構造などが設けられていても良
いし、配管が固着して接続されていても良い。
【0053】或いは、注入口(27)はウェル状となっ
ていても良い。ウェル状である場合には、特段の送液機
構無しで、液体の自重や毛細管現象による移動のみで送
液される。ウェルの上に水柱、水銀柱、オイル柱などに
より圧を掛けるための管が接続されていても良いし、圧
力気体などによる加圧機構を設けても良い。また、部材
(B)中には、他の構造、例えばピエゾ素子や加熱機構
などのインクジェット方式の駆動機構、ダイヤフラムポ
ンプ、台親フラムバルブ、流路に接続された濾過機構な
どが設けられていても良い。
【0054】ただし、上述した注入口は部材(A)に部
材(A)を貫通して穿たれた孔状の流路(A)の開口部
として設けられていてもよい。
【0055】部材(B)の外形は、部材(A)に積層し
て密着固定することが可能であれば任意であり、部材
(A)の場合に示した形状と同様である。部材(B)の
高さ(厚み)は任意であるが、好ましくは10μm〜3
0mmであり、更に好ましくは100μm〜10mmで
ある。厚みが過小であると製造が困難となり、過大であ
ると微細な流路の形成が困難となる上、使用時の吐出量
が減少し、高速でのスポット形成が不能となる。なお、
本明細書に於いては、部材(B)についてもノズル面を
下にして置かれた部材(A)上に積層された姿勢で上
下、高さなどを表現する。
【0056】部材(B)は、活性エネルギー線硬化性組
成物(以下、「組成物(B)」と称する)の硬化物で形
成されている。組成物(B)の硬化物で形成されること
により、内部に流路を有する構造の形成が容易となり、
親水性や柔軟性などの制御が容易となる。
【0057】部材(B)は、それぞれが組成物(B)の
硬化物で形成された部材を複数積層した積層体からなっ
ていることが好ましい。このような積層体からなる部材
(B)の例としては、注入口と該注入口に接続する部材
中の流路とを有する部材(B1)と、部材(A)及び部
材(B1)と積層された面とで流路を形成する欠損部又
は部材中の流路を有する部材(B2)とを有するものが
挙げられる。
【0058】さらに具体的に説明すると、部材(B)が
2つの部材(部材22、部材23)を積層してなり、該
部材(B)を構成する層が毛細管状の流路(25)とな
る欠損部(25)を有するものであることが好ましい。
【0059】該部材(B)が積層体である場合、部材
(B)を構成する各部材の積層方向は任意であり、例え
ば部材(A)(21)との接触面に並行、直角、或いは
他の角度で積層されていて良いが、部材(A)(21)
との接触面に並行に積層されていることが好ましい。
【0060】以下、部材(B)が積層体であり、部材
(B)を構成する複数の各部材(22、23)が部材
(A)との接触面に並行に形成されており、ノズル面を
下にして置かれた部材(A)(21)の上に積層して固
着されている状態で説明する。このような構造は、例え
ば、部材(22)中に層構成素材の欠損部からなる欠損
部(25)を有し、該部材(22)が他の部材(23)
(又は、一方が部材(A)(21)であっても良い)に
よって挟持積層されることによって該欠損部(25)が
毛細管状の流路(25)となるものである。
【0061】欠損部(25、26)は例えば線状であっ
て良いし、該部材(23)を上下に(厚み方向に)貫通
する流路(26)の断面となる任意の形状であっても良
い。該欠損部が線状である場合は、線は直線状に限られ
ず、曲線、ジグザグなど任意の線であり得る。この場
合、流路は該部材(22)内に、該部材(22)と並行
に形成される。
【0062】欠損部(25、26)が流路の断面となる
形状である場合には、円であることが好ましいが、矩形
やスリット状など、任意の形状であってよい。この場
合、各部材の欠損部の位置を少しずつずらして積層し斜
めに形成された流路とすることもできる。
【0063】欠損部(25)は、部材(22)が部材
(A)(21)と接する場合には、流路(A)(28)
に接続される位置に設けられるし、部材(B)が複数の
部材が積層してなり部材(B)を構成する他の部材(2
3)と接する場合には、他の部材(23)に設けられた
欠損部(26)に接続するよう設けられる。形成される
流路は、部材(B)を形成する部材の縁(即ちノズルの
側面)に注入口(27)として開口していても良いし、
部材(A)から最も遠い部材(23)(即ち、ノズルの
背面)に開口していても良い。
【0064】また、部材(B)が複数の部材を積層して
なる場合、線状の欠損部(25)を有する部材の数は1
層でも良いが、ノズルの吐出口数が多い場合には、線状
の欠損部を有する多数の層を積層することによって、多
数の層に部材(A)と部材(B)の接触面に平行な流路
を形成することが好ましい(実施例1及び図1〜7)。
具体的には前記部材(B)が、(1)注入口と該注入口
に接続する部材中の流路とを有する部材(B1')と、
(2)部材(B)を構成する部材同士が積層された面で
流路を形成する欠損部と、部材中の流路とを有する部材
(B3')と、(3)部材(A)及び部材(B3')と積
層された面とで流路を形成する欠損部と、部材中の流路
とを有する部材(B2')とを有するものが挙げられ
る。その場合、該部材(B3')を多数の部材を積層す
ることによって形成してもよく、該部材(B3')の数
は2〜40であることが好ましく、4〜30であること
が更に好ましい。
【0065】部材(B2')は、線状の欠損部を有する
部材と孔状の欠損部を有する部材が交互に積層されてい
る(実施例1及び図1〜7)と、各層に設けられる流路
の位置の干渉を避け、設計の自由度が高くなり好まし
い。この場合には、線状の欠損部を有する部材の数が2
〜20であることが好ましく、3〜15であることが更
に好ましい。これより少ないと、多数の吐出口数を有す
るノズルの形成が困難となるし、多過ぎると、製造が困
難となる。
【0066】吐出口がマトリックス配置であり、注入口
を拡大されたマトリックス配置とする(例えば、実施例
1及び図1〜7)には、部材(B2)が流路となる欠損
部を有する複数の部材で構成されており、部材(A)に
近い層に形成された流路が外側の吐出口に連絡し、部材
(A)から遠い部材ほど中心部に近い吐出口を担当する
ことが好ましい。従って、Nを自然数とした場合に、2
N列の吐出口を持つマイクロノズルを製造する場合は、
N層に積層された水平な流路となる欠損部を有する部材
を有することが好ましい。
【0067】欠損部(25)の形状が線状であり、該線
状の欠損部が流路となる部分については、欠損部(2
5)の幅が流路の幅となり、欠損部を有する部材(2
2)の厚みが流路の高さとなる。部材(B)が複数の部
材からなる場合、各部材の厚みはそれぞれ1〜1000
μmであることが好ましい。また、欠損部の形状が孔状
(26)であり、該孔状の欠損部が流路(26)の断面
となる場合には、その直径は好ましくは1〜1000μ
m、更に好ましくは10〜500μmである。
【0068】これより薄い、或いは小さいと、製造が困
難となる上、吐出口への液体供給速度が不足するし、こ
れより厚い或いは大きいと、ノズルが過剰に大型とな
る。但し、流路となる欠損部が同時にウェル(26)な
どの他の構造である場合にはこの限りではない。
【0069】部材(B)(22)と部材(A)(21)
との積層方法は、吐出口(24)や流路(A)(28)
と流路(25)が接続され、部材(A)と部材(B)の
相対位置が固着される方法であれば任意であり、例え
ば、ネジ止め、かしめ、はめ込み、他の部材による圧迫
等であり得るが、接着、粘着、融着、表面溶解と乾燥に
よる一体化、重合による一体化などであり得る。
【0070】接着は、例えば、溶剤型接着剤の使用、無
溶剤型接着剤の使用、溶融型接着剤の使用が挙げられ
る。融着は、熱、超音波、高周波などによる融着を挙げ
られる。溶解と乾燥による一体化は、固着すべき部材の
表面への溶剤塗布又は溶剤吸収によるものが挙げられ
る。重合による一体化は、固着する部材を活性エネルギ
ー線硬化性組成物の半硬化物として形成し、これを相手
の部材と密着させた状態で活性エネルギー線を更に照射
して硬化させると同時に接着する方法が挙げられる。こ
れらの中で、活性エネルギー線硬化性組成物を使用した
重合による一体化が、微細な空隙を閉塞せず、生産性も
高いために好ましい。
【0071】部材(B)が複数の部材で構成されている
場合、該部材(B)を構成する各部材の固着方法は任意
であるが、部材(A)と部材(B)の固着方法と同様の
方法を用いることができる。それらの中で、組成物
(B)を使用した重合による一体化が、微細な空隙を閉
塞せず、生産性も高いために好ましい。
【0072】固着する部材が欠損部を有しないものであ
る場合には、他の好ましい固着方法として、組成物
(B)を液面に展開した状態で活性エネルギー線を不十
分に照射して、接着する部材の硬化物又は半硬化物を形
成し、それを上と同様の方法で接着する方法も好まし
い。該部材に欠損部を設ける必要がある場合には、固着
後、レーザー穿孔などにより欠損部を形成することが出
来る。
【0073】組成物(B)を展開する液体は任意であ
り、例えば、水(水溶液を含む。以下同様)、シリコン
オイル、水銀、ハロゲン化ナフタレン等を挙げることが
できるが、水が好ましい。組成物(B)には溶剤を添加
することも好ましい。液面展開は、液面上から組成物
(B)を滴下又は流下しても良いし、液体中に押し出し
ても良い。
【0074】部材(B)が複数の部材からなる場合、各
部材を連続的に形成しても良い。例えば、組成物(B)
の未硬化層に活性エネルギー線をパターニング照射し、
非照射部分の未硬化の組成物(B)を除去すること無
く、その上に組成物(B)からなる部材(B2)の第2
層を形成し(或いは組成物(B)の液面下に、部材(B
2)の厚みとなる深さに部材(B1)を沈め)部材(B
2)に活性エネルギー線をパターニング照射し、この工
程を繰り返す方法(マイクロ光造形法)を採ることもで
きる。
【0075】この際、パターニング照射した活性エネル
ギー線が表面層のみを硬化させ、下の層の非照射部を硬
化させないようにするためには、組成物(B)の活性エ
ネルギー線吸収率を高くして下層に届かないようにする
方法、吸収されやすい活性エネルギー線、例えば電子線
を用いる方法、口径比の大きい光学系を使用して表面層
にのみ焦点を合わせる方法などにより実施できる。
【0076】組成物(B)は、活性エネルギー線の照射
により硬化樹脂を形成するものであり、活性エネルギー
線硬化性化合物を含有する。組成物(B)は活性エネル
ギー線硬化性化合物単独であってもよく、複数種の活性
エネルギー線硬化性化合物の混合物でもよく、第3成分
を含有していても良い。活性エネルギー線硬化性化合物
は、活性エネルギー線によって硬化するものであれば任
意であり、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン
重合性等任意のものであってよい。
【0077】活性エネルギー線硬化性化合物は、重合開
始剤の非存在下で重合するものに限らず、重合開始剤の
存在下でのみ活性エネルギー線により重合するものも使
用することができる。活性エネルギー線硬化性化合物
は、付加重合性の化合物であることが好ましく、活性エ
ネルギー線重合性官能基として重合性の炭素−炭素二重
結合を有するものが好ましく、中でも、反応性の高い
(メタ)アクリル系化合物やビニルエーテル類、また光
重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド系化合物
が好ましい。
【0078】更に、活性エネルギー線硬化性化合物は、
半硬化の状態で形状保持性が高く、硬化後の強度も高い
点で、重合して架橋重合体を形成する化合物であること
が好ましい。そのために、1分子中に2つ以上の重合性
の炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下「1分子中
に2つ以上の付加重合性の官能基を有する」ことを「多
官能」と称する)であることが更に好ましい。
【0079】活性エネルギー線硬化性化合物として、好
ましく使用できる多官能(メタ)アクリル系モノマーと
しては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アク
リレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレ
ート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレー
ト、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ
ポリエチレンオキシフェニル)プロパン、
【0080】2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイ
ルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ヒ
ドロキシジピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレー
ト、ビス(アクロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシ
アヌレート、N−メチレンビスアクリルアミドの如き2
官能モノマーや、
【0081】トリメチロールプロパントリ(メタ)アク
リレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレ
ート、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、
カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシ
アヌレートの如き3官能モノマーや、ペンタエリスリト
ールテトラ(メタ)アクリレートの如き4官能モノマー
や、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレー
トの如き6官能モノマー等が挙げられる。
【0082】また、活性エネルギー線硬化性化合物とし
て、重合性オリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)を
用いることもでき、例えば、質量平均分子量が500〜
50000のものが挙げられる。そのような重合性オリ
ゴマーしては、例えば、エポキシ樹脂の(メタ)アクリ
ル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸
エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エ
ステル、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するポ
リウレタン樹脂等が挙げられる。
【0083】マレイミド系の活性エネルギー線硬化性化
合物としては、例えば、4,4′−メチレンビス(N−
フェニルマレイミド)、2,3−ビス(2,4,5−ト
リメチル−3−チエニル)マレイミド、1,2−ビスマ
レイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、ト
リエチレングリコールビスマレイミド、N,N′−m−
フェニレンジマレイミド、m−トリレンジマレイミド、
N,N′−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N′
−ジフェニルメタンジマレイミド、N,N′−ジフェニ
ルエーテルジマレイミド、N,N′−ジフェニルスルホ
ンジマレイミド、
【0084】1,4−ビス(マレイミドエチル)−1,
4−ジアゾニアビシクロ−[2,2,2]オクタンジク
ロリド、4,4′−イソプロピリデンジフェニル=ジシ
アナート・N,N′−(メチレンジ−p−フェニレン)
ジマレイミド等の2官能マレイミドや、N−(9−アク
リジニル)マレイミドの如きマレイミド基とマレイミド
基以外の重合性官能基とを有するマレイミド等が挙げら
れる。マレイミド系のモノマーは、ビニルモノマー、ビ
ニルエーテル類、アクリル系モノマー等の重合性炭素・
炭素二重結合を有する化合物と共重合させることもでき
る。
【0085】これらの活性エネルギー線硬化性化合物
は、単独で、又は、2種類以上を混合して用いることも
できる。また、活性エネルギー線重合性活性エネルギー
線硬化性化合物は、粘度の調節、接着性や半硬化状態で
の粘着性を増すなどの目的で、多官能モノマーと単官能
モノマーの混合物とすることもできる。
【0086】単官能(メタ)アクリル系モノマーとして
は、例えば、メチルメタクリレート、アルキル(メタ)
アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ア
ルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、フェノキシジアルキル(メタ)アクリレート、フェ
ノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)ア
クリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコー
ル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)
アクリレート、
【0087】グリセロールアクリレートメタクリレー
ト、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒ
ドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−
アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルア
クリレート、エチレノキサイド変性フタル酸アクリレー
ト、w−カルゴキシアプロラクトンモノアクリレート、
2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレ
ート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、
【0088】アクリル酸ダイマー、2−アクリロイルオ
キシプロピリヘキサヒドロハイドロジェンフタレート、
フッ素置換アルキル(メタ)アクリレート、塩素置換ア
ルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸ソーダエトキ
シ(メタ)アクリレート、スルホン酸−2−メチルプロ
パン−2−アクリルアミド、燐酸エステル基含有(メ
タ)アクリレート、
【0089】スルホン酸エステル基含有(メタ)アクリ
レート、シラノ基含有(メタ)アクリレート、((ジ)
アルキル)アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級
((ジ)アルキル)アンモニウム基含有(メタ)アクリ
レート、(N−アルキル)アクリルアミド、(N、N−
ジアルキル)アクリルアミド、アクロロイルモリホリン
等が挙げられる。
【0090】単官能マレイミド系モノマーとしては、例
えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、
N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミドの如き
N−アルキルマレイミドや、N−シクロヘキシルマレイ
ミドの如きN−脂環族マレイミドや、N−ベンジルマレ
イミドや、N−フェニルマレイミド、N−(アルキルフ
ェニル)マレイミド、N−ジアルコキシフェニルマレイ
ミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、
【0091】2,3−ジクロロ−N−(2,6−ジエチ
ルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2
−エチル−6−メチルフェニル)マレイミドの如きN−
(置換又は非置換フェニル)マレイミドや、N−ベンジ
ル−2,3−ジクロロマレイミド、N−(4′−フルオ
ロフェニル)−2,3−ジクロロマレイミドの如きハロ
ゲンを有するマレイミドや、ヒドロキシフェニルマレイ
ミドの如き水酸基を有するマレイミドや、N−(4−カ
ルボキシ−3−ヒドロキシフェニル)マレイミドの如き
カルボキシ基を有するマレイミドや、
【0092】N−メトキシフェニルマレイミドの如きア
ルコキシ基を有するマレイミドや、N−[3−(ジエチ
ルアミノ)プロピル]マレイミドの如きアミノ基を有す
るマレイミドや、N−(1−ピレニル)マレイミドの如
き多環芳香族マレイミドや、N−(ジメチルアミノ−4
−メチル−3−クマリニル)マレイミド、N−(4−ア
ニリノ−1−ナフチル)マレイミドの如き複素環を有す
るマレイミド等が挙げられる。
【0093】組成物(B)は、該組成物の必須成分であ
る活性エネルギー線硬化性化合物と共重合可能な、両親
媒性の重合性化合物を含有することが好ましい。両親媒
性化合物を含有することで、その硬化物を水に膨潤しに
くく、且つ親水性で、生体成分に対して低吸着性の表面
を形成することが可能となる。
【0094】両親媒性重合性化合物は、分子内に親水基
と疎水基の両者を含有し、活性エネルギー線の照射によ
り、活性エネルギー線硬化性組成物に含有される活性エ
ネルギー線硬化性化合物と共重合することが可能な重合
性官能基を有するものである。活性エネルギー線硬化性
化合物が1分子中に2個以上の重合性炭素−炭素不飽和
結合を有する化合物である場合には、両親媒性重合性化
合物は、1分子中に1個以上の重合性炭素−炭素不飽和
結合を有する化合物であることが好ましい。
【0095】両親媒性重合性化合物は架橋重合体となる
ものである必要はないが、架橋重合体となる化合物であ
ってもよい。両親媒性重合性化合物はまた、活性エネル
ギー線硬化性化合物と均一に相溶するものである。この
場合の相溶とは、巨視的に相分離しないことを言い、ミ
セルを形成して安定的に分散している状態も含まれる。
【0096】両親媒性重合性化合物は、分子中に親水基
と疎水基を有し、水、疎水性溶媒の両者とそれぞれ相溶
する化合物である。この場合に於いても、相溶とは巨視
的に相分離しないことを言い、ミセルを形成して安定的
に分散している状態も含まれる。両親媒性重合性化合物
は、0℃において、水に対する溶解度が質量百分率で
0.5%以上で、且つ25℃のシクロヘキサン:トルエ
ン=5:1(質量比)混合溶媒に対する溶解度が質量百
分率で25%以上であることが好ましい。
【0097】ここで言う溶解度は、例えば、溶解度が質
量百分率で0.5%以上であるとは、少なくとも質量百
分率で0.5%の化合物が溶解可能であることを言うの
であって、質量百分率で0.5%の化合物は溶媒に溶解
しないものの、該化合物中にごくわずかの溶媒が溶解可
能であるものは含まない。水に対する溶解度、あるいは
シクロヘキサン:トルエン=5:1(質量比)混合溶媒
に対する溶解度の少なくとも一方がこれらの値より低い
化合物を使用すると、高い表面親水性と耐水性の両者を
満足することが困難となる。
【0098】両親媒性重合性化合物は、ノニオン性親水
基、特にポリエーテル系の親水基を有する場合には、親
水性と疎水性のバランスが、グリフィンのエイチ・エル
・ビー値(HLB値)にして11〜16であるものが好
ましく、11〜15であるものが更に好ましい。この範
囲外では、高い親水性と耐水性に優れた成形物を得るこ
とが困難であるか、それを得るための化合物の組み合わ
せや混合比が極めて限定されたものとなり、成形物の性
能が不安定となりがちである。
【0099】両親媒性重合性化合物が有する親水基は任
意であり、例えば、アミノ基、四級アンモニウム基、フ
ォスフォニウム基の如きカチオン基や、スルホン基、燐
酸基、カルボニル基の如きアニオン基;水酸基、ポリエ
チレングリコール基、アミド基の如きノニオン基や、ア
ミノ酸基の如き両性イオン基であってよい。両親媒性重
合性化合物は、親水基として、好ましくはポリエーテル
基、特に好ましくは繰り返し数6〜20のポリエチレン
グリコール鎖を有する化合物である。
【0100】両親媒性重合性化合物の疎水基としては、
例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキルフェニル
基、長鎖アルコキシ基、フッ素置換アルキル基、シロキ
サン基などが挙げられる。両親媒性重合性化合物は、疎
水基として炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン
基を有する化合物であることが好ましい。炭素数6〜2
0のアルキル基又はアルキレン基は、例えば、アルキル
フェニル基、アルキルフェノキシ基、アルコキシ基、フ
ェニルアルキル基などの形で含有されていてもよい。
【0101】両親媒性重合性化合物は、親水基として繰
り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有し、
且つ、疎水基として炭素原子数6〜20のアルキル基又
はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。
これらの両親媒性重合性化合物の中でも、ノニルフェノ
キシポリエチレングリコール(n=8〜17)(メタ)
アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコ
ール(n=8〜17)(メタ)アクリレートが特に好ま
しい。
【0102】活性エネルギー線硬化性化合物と両親媒性
重合性化合物の好ましい割合は、活性エネルギー線硬化
性化合物及び両親媒性重合性化合物の種類や組み合わせ
によって異なるが、その他の活性エネルギー線硬化性化
合物1質量部に対して、両親媒性重合性化合物0.1質
量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であ
ることが更に好ましい。この値未満であると、高い親水
性の表面を形成することが困難となる。
【0103】また、両親媒性重合性化合物の割合は、そ
の他の活性エネルギー線硬化性化合物1質量部に対し
て、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下
であることが更に好ましい。活性エネルギー線硬化性化
合物1質量部に対する両親媒性重合性化合物の割合が5
質量部よりも多い場合、水に対して膨潤性となりがちで
あり、接液部を構成する重合体がゲル化するものに成り
がちである。
【0104】活性エネルギー線硬化性化合物と両親媒性
重合性化合物の混合比を適宜選択することにより、湿潤
状態でゲル化せず、かつ高親水性、低吸着性を示す硬化
物を製造することが出来る。両親媒性重合性化合物の親
水性が相対的に強いほど、例えばグリフィンのHLB値
が大きなものほど、好ましい添加量は少なくなる。
【0105】組成物(B)には、必要に応じて、光重合
開始剤、重合遅延剤、重合禁止剤、溶剤、増粘剤、改質
剤、着色剤等を混合して使用することができる。組成物
(B)に必要に応じて混合使用することができる光重合
開始剤は、本発明で使用する活性エネルギー線に対して
活性であり、活性エネルギー線硬化性化合物を重合させ
ることが可能なものであれば、特に制限はなく、例え
ば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオ
ン重合開始剤であって良い。
【0106】そのような光重合開始剤としては、例え
ば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,
2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセ
トフェノン類や、ベンゾフェノン、4、4′−ビスジメ
チルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサント
ン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサン
トン、2−イソプロピルチオキサントンの如きケトン類
や、
【0107】ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、
ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチ
ルエーテルの如きベンゾインエーテル類や、ベンジルジ
メチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケ
トンの如きベンジルケタール類や、N−アジドスルフォ
ニルフェニルマレイミド等のアジドなどが挙げられる。
また、マレイミド系化合物などの重合性光重合開始剤を
挙げることができる。
【0108】組成物(B)に光重合開始剤を混合使用す
る場合の使用量は、非重合性光重合開始剤の場合、質量
百分率で0.005〜20%が好ましく、0.1〜5%
の範囲が特に好ましい。光重合開始剤は重合性のもの、
例えば、活性エネルギー線重合性活性エネルギー線硬化
性化合物として例示した多官能や単官能のマレイミド系
モノマーであっても良い。この場合の使用量は、上記に
限られない。
【0109】組成物(B)が含有することができる重合
遅延剤や重合禁止剤としては、α−メチルスチレン、
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンなどの
活性エネルギー線重合性化合物としては重合速度の低い
ビニル系モノマーや、tert−ブチルフェノールなど
のヒンダントフェノール類などが挙げられる。活性エネ
ルギー線として光線を使用する場合には、パターニング
精度を向上させるために、重合遅延剤及び/又は重合禁
止剤と光重合開始剤を併用することが好ましい。
【0110】組成物(B)に必要に応じて混合使用する
ことができる増粘剤としては、例えば、ポリスチレンな
どの鎖状重合体が挙げられる。組成物(B)に必要に応
じて混合使用することができる改質剤としては、例え
ば、撥水剤や剥離剤として機能するシリコンオイルやフ
ッ素置換炭化水素などの疎水性化合物;親水化剤や吸着
抑制剤として機能するポリビニルピロリドンやポリエチ
レングリコールなどの水溶性重合体が挙げられる。組成
物(B)に必要に応じて混合使用することができる着色
剤としては、任意の染料や顔料、蛍光色素、紫外線吸収
剤が挙げられる。
【0111】本発明は、また、本発明のマイクロノズル
を好ましく製造することのできる製造方法を提供する。
本発明の第一のマイクロノズルの製造方法は、部材を貫
通する互いに独立した4つ以上の毛細管状の流路と各流
路の吐出口を有する部材(A)と、前記部材(A)の吐
出口に接続する部材中の流路、又は前記部材(A)とで
流路を形成する欠損部を有し、活性エネルギー線硬化性
組成物の半硬化物からなる部材(B)とを積層し、次い
で活性エネルギー線を照射して部材(B)を硬化させる
とともに部材(A)と部材(B)とを接着させることを
特徴とするものである。以下、説明の簡略化のため、特
に断りのない限り塗工は注型を含むものとする。また、
塗膜は注型物を含むものとする。
【0112】本発明の第一の製造方法は、先ず、一時的
な支持体の上に部材(B)を形成する活性エネルギー線
硬化性組成物(組成物(B))を塗工して、未硬化塗膜
を形成することが好ましい。
【0113】本発明の製造方法で用いられる一時的な支
持体は、組成物(B)をその上に塗工、或いは注型する
ことが可能であり、且つ、組成物(B)を硬化させた後
に、剥離、溶解、分解などの任意の方法により除去でき
るものである。一時的な支持体の形状は特に限定する必
要はなく、用途目的に応じた形状を採りうる。
【0114】例えば、シート状(フィルム状、リボン
状、ベルト状を含む)、板状、塗膜状、ロール状、その
他複雑な形状の成型物等であり得るが、組成物(B)を
その上に塗工、或いは注型し易く、また、活性エネルギ
ー線を照射し易いという観点から、接着すべき面が平面
状、または平面を曲げた2次曲面状の形状であること、
特に可撓性のあるシート状であることが好ましい。
【0115】一時的な支持体は何らかの支持体上に形成
された塗膜のように、複合体であってもよい。一時的な
支持体はまた、升目、図面、位置合わせ記号などが印刷
されていても良い。一時的な支持体の素材は、上記の条
件が満たされれば特に制約はなく、例えば、重合体(ポ
リマー)、金属、ガラス、石英の如き結晶、セラミッ
ク、シリコンの如き半導体などが挙げられるが、これら
の中でも、重合体及び金属が特に好ましい。
【0116】一時的な支持体に使用する重合体は、単独
重合体であっても、共重合体であっても良く、また、熱
可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良
い。生産性の面から、熱可塑性重合体又は活性エネルギ
ー線硬化性の架橋重合体であることが好ましい。
【0117】一時的な支持体の除去が剥離によるもので
ある場合には、多くの種類の組成物(B)に対して溶解
しにくく、その硬化物からの剥離が容易であるものとし
て、ポリオレフィン系重合体、塩素含有重合体、フッ素
含有重合体、ポリチオエーテル系重合体、ポリエーテル
ケトン系重合体、ポリエステル系重合体が好ましく用い
られる。
【0118】一時的な支持体の除去が溶解によるもので
ある場合には、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエ
チレングリコールなどの水溶性樹脂や、カルボキシル基
含有樹脂などのアルカリに可溶性の樹脂や、アミノ基や
4級アンモニウム塩含有樹脂などの酸に可溶性の樹脂が
好ましく用いられる。
【0119】また、一時的な支持体は、ポリマーブレン
ドやポリマーアロイで構成されていても良いし、積層体
その他の複合体であっても良く、表面処理物であっても
良い。更に、一時的な支持体は、改質剤、着色剤、充填
材、強化材などの添加物を含有しても良い。表面処理
は、組成物(B)による溶解防止を目的としたもの、組
成物(B)の硬化物からの剥離の容易化を目的としたも
の、組成物(B)の濡れ性向上を目的としたものなどで
あり得る。
【0120】表面処理方法は任意であり、例えば、コロ
ナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理、スル
ホン化処理、フッ素化処理、シランカップリング剤等に
よるプライマー処理、表面グラフト重合、ラビング等の
物理的処理等が挙げられる。
【0121】一時的な支持体は、組成物(B)をその上
に薄く塗工する場合には、組成物(B)により濡れるも
のであるか、又は、はじく力が弱いものであることが好
ましい。即ち、使用する組成物(B)との接触角が90
度以下であることが好ましく、45度以下であることが
更に好ましく、25度以下であることが最も好ましい。
【0122】一時的な支持体が表面エネルギーの低い素
材、例えば、ポリオレフィン、フッ素系重合体、ポリフ
ェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等
の場合には、一時的な支持体の接着面の表面処理によ
り、使用する組成物(B)との接触角を小さくすること
が好ましい。
【0123】しかしながら、表面処理によって、硬化さ
せた組成物(B)が剥離不可能なほど強固に接着するこ
とのないよう処理の程度を選択する必要がある。これら
の表面処理方法としては、例えば、コロナ放電処理、プ
ラズマ処理、紫外線処理、プライマー処理等が好まし
い。濡れ性の制御は、表面処理の他に、一時的な支持体
にブレンドする改質剤の選択によっても実施できる。
【0124】一時的な支持体に含有させることができる
改質剤としては、例えば、シリコンオイルやフッ素置換
炭化水素などの疎水化剤(撥水剤)、水溶性重合体、界
面活性剤、シリカゲルなどの無機粉末などの親水化剤が
挙げられる。一時的な支持体に含有させることができる
着色剤としては、任意の染料や顔料、蛍光性の染料や顔
料、紫外線吸収剤が挙げられる。一時的な支持体に含有
させることができる強化材としては、例えば、クレイな
どの無機粉末、有機や無機の繊維や織物が挙げられる。
【0125】一時的な支持体に塗工する未硬化塗膜の厚
みは、硬化時の収縮などにより若干変化するが、概ね硬
化物層の厚みとなるため、塗膜の好ましい厚さは、本発
明のマイクロノズルにおける部材(B)の厚みと概ね同
様である。また、塗工する組成物(B)は、部材(A)
を構成する組成物(A)と同じであっても異なる種類で
あっても良い。
【0126】一時的な支持体に組成物(B)を塗工する
方法としては、支持体の上に塗工できる任意の塗工方法
を用いることができ、例えば、スピンコート法、ローラ
ーコート法、流延法、ディッピング法、スプレー法、バ
ーコーター法、X−Yアプリケータ法、スクリーン印刷
法、凸版印刷法、グラビア印刷法、ノズルからの押し出
しや注型などが挙げられる。また、組成物(B)を特に
薄く塗工する場合には、組成物(B)に溶剤を含有させ
て塗工した後、該溶剤を揮発させる方法を採用すること
もできる。
【0127】一時的な支持体上に塗工された、組成物
(B)の未硬化の塗膜に、部材(A)の吐出口に接続す
る部材(B)中の流路となる部分、前記部材(A)及び
部材(B)を構成する他の部材(B)(前記部材B2又
は前記部材B2')と積層された面に流路を形成する欠
損部となる部分、又は注入口となる部分(即ち、これら
は欠損部となる部分である)を除いて活性エネルギー線
を照射して、照射部分の組成物(B)を半硬化させる一
方、組成物(B)の活性エネルギー線未照射部を未硬化
部分として残す(以後、この操作を「パターニング露
光」若しくは単に「露光」と称する場合もある)。
【0128】ここで言う半硬化とは、組成物(B)が非
流動性または難流動性となる程度であり、且つ、未反応
の活性エネルギー線重合性官能基が残存する程度に硬化
させることを言う。このような半硬化状態は、活性エネ
ルギー線を完全硬化するには不十分な量だけ照射するこ
とにより得ることが出来る。活性エネルギー線の照射量
が過小で、硬化の程度が不十分であると、未硬化部分の
除去の選択性が不十分となって目的の形状の樹脂欠損部
が形成されなくなる他、部材(A)と固着する工程に於
いて、組成物(B)が部材(A)または部材(B)の欠
損部に入り込み、形成される流路を閉塞させたり、流路
断面積の変動をもたらす。
【0129】一方、照射量が過大で硬化の程度が過剰で
あると、半硬化塗膜が柔軟性を失うと共に接着性が低下
し、接着が不完全となる。好適な半硬化の程度は、使用
する系での簡単な実験により最適値を求めることができ
る。
【0130】パターニング露光におけるパターンの形
状、即ち欠損部とする部分の形状は、部材(A)の吐出
口に接続する部材(B)中の流路、前記部材(A)及び
部材(B)を構成する他の部材(B)と積層された面に
流路を形成する欠損部、又は注入口となる形状である。
上記欠損部は、吐出口と流路だけでなく、必要に応じて
その他の構造、例えば注入口なども同時に形成すること
ができる。
【0131】本発明に用いることのできる活性エネルギ
ー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、レーザー光
線、放射光の如き光線や、エックス線、ガンマ線、放射
光の如き電離放射線や、電子線、イオンビーム、ベータ
線、重粒子線の如き粒子線が挙げられる。これらの中で
も、取り扱い性や硬化速度の面から紫外線及び可視光が
好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0132】硬化速度を速め、硬化を完全に行う目的
で、活性エネルギー線の照射を低酸素濃度雰囲気で行う
ことが好ましい。低酸素濃度雰囲気としては、窒素気流
中、二酸化炭素気流中、アルゴン気流中、真空又は減圧
雰囲気が好ましい。
【0133】露光方法、即ち欠損部となる部分以外の部
分に活性エネルギー線を照射する方法は任意であり、例
えば、照射不要部分をマスキングして照射する、あるい
はレーザーなどの活性エネルギー線のビームを走査する
等のフォトリソグラフィーの手法が利用できる。
【0134】本発明のマイクロノズルの第一の製造方法
においては、露光後、非照射部分の未硬化の組成物
(B)を除去して欠損部とする(以下、この操作を「現
像」と称する場合がある)。現像方法は任意であり、例
えば、圧縮空気などによる吹き飛ばし、ろ紙などによる
吸収、水などの非溶剤の液体流による押し流し、溶剤に
よる溶解、揮発、分解等の方法が利用できる。これらの
中で、非溶剤の液体流による押し流し又は溶剤による溶
解が好ましい。また、押し流しや溶解は、超音波洗浄、
液体中での振とう、吐出液や噴霧液による洗浄など、任
意に選択できる。
【0135】パターニング露光と現像によって形成され
る欠損部の寸法は、活性エネルギー線未照射部(非露光
部)の寸法と必ずしも同じではなく、活性エネルギー線
未照射部の寸法より大きくなる場合もあるし小さくなる
場合もある。即ち、活性エネルギー線の種類や照射量、
活性エネルギー線硬化性化合物の反応性、活性エネルギ
ー線重合開始剤の種類や添加量、重合禁止剤や遅延剤の
添加量、現像方法等により変化しうる。例えば、照射光
量が多いと、欠損部寸法は非露光部寸法より小さくなり
がちである。
【0136】一時的な支持体に塗工された組成物(B)
の半硬化塗膜は、現像後、部材(A)と接触させ、その
状態で更に活性エネルギー線を照射して、組成物(A)
の半硬化塗膜を更に硬化させて部材(A)と接着させ
る。ただし、組成物(B)の半硬化塗膜を更に硬化させ
るとは、組成物(B)の硬化塗膜を部材(A)と十分な
強度で接着し、組成物(B)の硬化物層から一時的な支
持体を除去可能な程度に硬化させることを意味する。従
って、必ずしも重合性反応基が完全に消失するまで硬化
させる必要はない。
【0137】本工程の活性エネルギー線照射を、一時的
な支持体を除去可能ではあるが組成物(B)中の重合性
反応基が完全に消失していない程度にとどめ、部材
(B)表面に他の部材を固着させる強度を増すことも好
ましい。例えば、一時的な支持体の除去後に、部材
(B)の形成と同様にして、例えばスペーサーなどの構
造体を部材(B)表面に固着形成する場合などである。
【0138】本工程で固着するための硬化に用いること
のできる活性エネルギー線としては、組成物(B)を半
硬化させる工程で用いる活性エネルギー線を使用するこ
とができるが、半硬化に用いたものと同じである必要は
ない。
【0139】部材(B)を部材(A)に接着した後、部
材(B)から一時的な支持体を除去することにより、部
材(B)を部材(A)に転写する。一時的な支持体の除
去方法は任意であり、剥離、溶解、分解、溶融、揮発な
どであり得るが、生産性が高い点で、剥離が好ましく、
水などの液体中での剥離も好ましい。
【0140】また、部材(B)が複数の部材からなるも
のである場合、上記と同様にして組成物(B)から部材
を形成した後、該部材上にさらに上記と同様にして組成
物(B)から部材(B)を構成する他の部材を繰り返し
形成することによって製造することができる。すなわ
ち、組成物(B)から前記部材(B1)を形成した後、
該部材(B1)上にさらに上記と同様にして部材(B
1)と同一又は異なる組成物(B)からなる部材(B
2)を形成し積層する方法が挙げられる。また、組成物
(B)から前記部材(B1')を形成した後、該部材
(B1')上にさらに上記と同様にして部材(B1')と
同一又は異なる組成物(B)からなる部材(B3')を
1回以上繰り返し形成し、さらに該部材(B3')上に
部材(B1')又は(B3')と同一又は異なる組成物
(B)からなる部材(B2')を形成し積層する方法が
挙げられる。
【0141】このとき、部材(B)が複数の部材からな
る場合、各部材の流路となる欠損部は上から見て位置が
重ならないように配置することにより各部材に独立した
線状の流路を形成することができるが、位置が重なる場
合は該部材の間に縦の流路となる孔状の流路を有する部
材を挟持することにより、独立した2段の流路を形成す
ることができる。転写して接着する部材は、欠損部を有
していないものであっても良く、この場合には、積層接
着後にレーザーアブレーションなどによって欠損部を形
成することができる。
【0142】部材(B)が複数の部材からなる場合、各
部材の形成順序は任意であり、部材(A)と接触してい
る側からでも良いし、部材(A)の反対側からでも良
い。また、部材(A)に部材(B)の一部である前記部
材(B2)又は部材(B2')と積層させた後、さらに
前記部材(B2)上又は部材(B2')上に各々前記部
材(B1)又は部材(B3')を積層させてもよい。
【0143】本発明の第二のマイクロノズルの製造方法
は、部材を貫通する互いに独立した4つ以上の毛細管状
の流路と各流路の吐出口を有し、活性エネルギー線硬化
性組成物の半硬化物からなる部材(A)と、前記部材
(A)の吐出口に接続する部材中の流路、又は部材
(A)とで流路を形成する欠損部を有する部材(B)と
を積層し、次いで活性エネルギー線を照射して部材
(A)を硬化させるとともに部材(A)と部材(B)と
を接着させて、本発明のマイクロノズルを製造するもの
である。
【0144】本発明のマイクロノズルの第二の製造方法
は、先の第一の製造方法で説明した組成物(B)の代わ
りに組成物(A)を用いた以外は同様にして部材(A)
の半硬化塗膜を形成し、それを部材(B)に積層して、
さらに活性エネルギー線を照射して部材(A)の硬化を
進めて部材(A)と部材(B)とを接着するものであ
る。
【0145】本発明のマイクロノズルの第二の製造方法
において、活性エネルギー線の非照射部分として形成さ
れる欠損部は、流路となる欠損部や注入口となる欠損部
である。流路となる欠損部は、該樹脂層に平行な方向に
流れる流路を形成する線状の欠損部であり得るし、該樹
脂層に垂直な方向に流れる該樹脂層を貫通する孔状の欠
損部であり得る。また現像において、非露光部の未硬化
組成物(A)を完全に除去せず、欠損部の底が支持体表
面に届いていない溝状とすることもできる。このような
溝状の欠損部を形成し、必要な部位にレーザー穿孔など
により貫通孔を設けることも可能であるが、現像により
表裏を貫通した流路を成形することが好ましい。
【0146】次に本発明のスポッティング方法について
説明する。本発明のスポッティング方法は、本発明のマ
イクロノズルを用いて塗布液を塗布対象物に点状に塗布
(スポッティング)する方法であり、1操作で4以上、
好ましくは10〜10000、更に好ましくは30〜3
000、最も好ましくは50〜1000の異なる溶液を
同時にスポッティングする方法である。勿論、複数の異
なる溶液として、同一の成分や組成の塗布液を使用する
こともできる。なお、本発明のスポッティング方法にお
いてマイクロノズルと塗布対象物との接触とは、スペー
サーを介しての接触も含み、また、吐出口と塗布対象物
の接触とは、スペーサーを介しての接触は含まないもの
とする。
【0147】同時にスポッティングするスポットの配置
は任意であるが、列状配置或いはマトリックス配置が好
ましい。本発明のマイクロアレイ製造方法は、1度のス
ポッティング操作で1基のマイクロアレイを製造するこ
とが可能であるが、形成すべきスポット数が特に多いと
きには、複数回のスポッティング操作により1基のマイ
クロアレイを製造しても良い。その場合には、マイクロ
ノズルを複数個用いて、基盤上に順次或いは任意の順序
でスポッティングする方式が好ましい。
【0148】本発明のスポッティング方法は、本発明に
成るマイクロノズルを用い、塗布液を各吐出口から同時
に吐出して、塗布対象物に点状に塗布(スポッティン
グ)する方法である。同時に吐出することによって高速
スポッティングが可能となり、塗布液を吐出させる装置
も簡単になる。
【0149】本発明のスポッティング方法は、塗布対象
物をノズル面へ概垂直な方向から近接または接触させて
塗布液を塗布し、その後再び概垂直な方向に離すことに
より塗布することが好ましい。この方法によって塗布す
ることにより、形状、寸法の揃った点状、特に点の形状
が円であるように塗布することが出来る。上記のマイク
ロノズルと塗布対象物との距離の制御は、マイクロノズ
ルを移動させても良いし、塗布対象遺物を移動させても
良い。
【0150】本発明のスポッティング方法は、マイクロ
ノズルを塗布対象物に印打、接触、押圧、或いは非接触
で近接させる方法を採ることが出来る。印打、接触、押
圧においても、マイクロノズルがノズル面にスペーサー
を有するものである場合や他のスペーサーを使用する場
合には、吐出口は塗布対象物に接触せず、特定間隔まで
近接することになる。スペーサーを設けることにより、
容易に吐出口と塗布対象物の間隔を一定に保つことが出
来、スポッティング速度を上げてもスポットの大きさの
均一化と再現性の向上が図れ、スポッティング速度が向
上する。
【0151】マイクロノズルと塗布対象物の上下、或い
は左右の位置関係は任意であるが、スポッティングが印
打や押圧であり、後述の吐出液の供給が重力によるもの
である場合には、ノズルを上から下へ移動して印打若し
くは押圧することが好ましい。
【0152】吐出口から例えば半球形に(以下、球の一
部を平面で切り取った形状を全て「半球形」と称する)
押し出した吐出液を塗布対象物に付着させる場合には、
塗布対象物に近接後に吐出液を押し出しても吐出液を押
し出した後近接させても、同時でも良い。ポンプを使用
する場合には、一定速度で押しだし、一定時間間隔で塗
布対象物を近接させて定量的にスポッティングする方法
が好ましい。
【0153】スポッティング時の吐出口と塗布対象物の
距離は、好ましくは吐出口の直径の0.2〜10倍、さ
らに好ましくは吐出口の直径の0.5〜3倍である。こ
の範囲とすることで、スポットの形状、位置、及びスポ
ット間隔を正確に制御でき、スポッティング速度も向上
する。
【0154】但し、後述の、吐出液の供給が重力や毛細
管現象による場合であって、該供給速度を遅くした場合
には、好ましくは吐出口の直径の0〜3倍、さらに好ま
しくは吐出口の直径の0〜1倍である。即ち、スペーサ
ーを設けずに吐出口を塗布対象物に接触させる方法も、
スポッティング速度は遅くなるものの、小さなスポット
が形成できるため好ましい。本発明のスポッティング方
法においては、いずれの場合にも、吐出口と塗布対象物
の距離はスポッティングされる塗布液の量を球状にした
ときの直径より小さいことが好ましい。即ち、塗布液は
空中を飛んで塗布対象物に付着するのではなく、マイク
ロノズルと塗布対象物の両方に付着している瞬間があ
る。
【0155】本塗布方法における吐出口への吐出液の供
給方法は任意であるが、重力又は毛細管現象による自発
的な供給であることが好ましい。これは、例えば貯液槽
状の注入口に吐出液を注入することで実施できる。注入
口に塗布液や他の液体を満たしたパイプなどを装着し、
その液柱圧により塗布液の供給速度を上げたり、吐出口
から吐出液を半球状に押し出してもよい。適当な液柱高
を選択する頃で、吐出口から吐出液が半球状に押し出さ
れた状態で安定させることが出来る。また、該液柱口を
調節することで該半球状の吐出液の量を調節でき、スポ
ットの大きさを調節できる。本供給方法は、スポッティ
ングするための装置が簡略化でき、多数のスポットを同
時に形成する場合にも、各注入口に配管を接続する必要
がなく好ましい。
【0156】また、吐出口への吐出液の供給は、ポンプ
などによる供給であっても良い。これにより、吐出口か
ら液体を半球状に押し出し、吐出口に近接させた塗布対
象物に付着させる方法を採ることが出来る。この方法に
於いては、シリンジポンプ、ギヤポンプ、しごきポン
プ、ダイヤフラムポンプなどのポンプや、ピエゾ素子、
電磁的アクチュエータ、圧空式アクチュエータなどによ
るダイヤフラム部や柔軟な配管の途中のパルス状の圧迫
による押し出し、バルブの開閉、圧空などの加圧を使用
できる。
【0157】スポットがスポッティング操作後に、滲み
によって広がるのを防止するために、或いは、特に本発
明のマイクロアレイ製造方法がスタンプ式、即ち、ノズ
ル面が塗布対象物に接触する方式である場合にはスポッ
ティング量を制御するために、スポッティングすべき液
体の粘度を調節することも好ましい。粘度は5〜500
mPa・s(cps)であることが好ましく、10〜1
00mPa・sであることが更に好ましい。
【0158】粘度調節方法は任意であるが、水溶性のポ
リマー或いはオリゴマーを塗布液に添加し溶解させる方
法が好ましい。水溶性ポリマー或いはオリゴマーは任意
であり、ノニオン性、カチオン性、アニオン性の親水基
を有するポリマー或いはオリゴマーが使用できるが、ノ
ニオン性親水基を有する化合物が、プロッティングすべ
き生化学物質との相互作用が少ないため好ましく、例え
ばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポ
リ(N置換)アクリルアミド、ポリビニルアルコール、
ポリヒドロキシメチルスチレン等が好ましく使用でき
る。
【0159】塗布されたスポットの直径は、スポッティ
ング後の滲みなど、塗布対象物の表面特性により大きく
変化するが、マイクロノズルの吐出口の寸法や形状にも
依存する。従って、マイクロノズル吐出口の直径は、目
的とするスポットの直径の1/10〜1/2とすること
が好ましい。スポットの中心間距離は、マイクロノズル
の吐出口の中心間距離によって決定される。滲みによる
スポットの変形や隣接するスポットとのコンタミネーシ
ョンを防止するなどの目的で、スポッティング後、直ち
に乾燥することが好ましい。乾燥方法は任意であるが、
熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥が好ましい。
【0160】塗布液中の成分を塗布対象に化学的に結合
させるなど、乾燥するまでに時間と温度を要する場合に
は、保湿や加温することも好ましい。本発明のスポッッ
ティング方法は、1度のスポッティング操作で1基のマ
イクロアレイを製造することが可能であるが、形成すべ
きスポット数が特に多いときには、複数個のマイクロノ
ズルを用いて、塗布対象物に任意の順序でスポッティン
グし、1基のマイクロアレイを製造することも好まし
い。
【0161】本発明のスポッタ(塗布液を塗布対象物に
点状に塗布する装置)は上述したマイクロノズルを有す
るものである。本発明に成るスポッティング方法のシー
ケンスによりスポッティングする機構を有する装置であ
る。本発明のスポッタは、マイクロノズルを装着する機
構、塗布対象物を保持する機構、及び、該マイクロノズ
ルから塗布液を吐出させる機構を有すること以外は任意
である。
【0162】該マイクロノズルから塗布液を吐出させる
機構としては、マイクロズルを塗布対象物に接触、押
圧、又は印打する機構や、マイクロノズルと塗布対象物
を接触させた状態で衝撃を与える機構や、ピエゾ素子、
加熱素子、電磁的アクチュエータ、圧空式アクチュエー
タ、バルブの開閉、柔軟な配管の途中の衝撃による圧迫
などにより塗布液をパルス状に押し出す機構や、シリン
ジポンプ、ギヤポンプ、しごきポンプなどのポンプや圧
空などの加圧機構を使用できる。
【0163】本発明のスポッタは、マイクロノズルと塗
布対象物の間隔を変化させ、接触又は所定の間隔にセッ
トできる機構を有することが好ましい。
【0164】本発明のスポッタは、乾燥装置を有するこ
とも好ましい。乾燥装置の方式は任意であるが、熱風乾
燥、赤外線乾燥、真空乾燥が好ましい。塗布液中の成分
を塗布対象に化学的に結合させるなど、乾燥するまでに
時間と温度を要する場合には、本発明のスポッタは、保
湿機構や加温機構を有していることも好ましい。
【0165】本発明のスポッタは、1度のスポッティン
グ操作で1基のマイクロアレイを製造することが可能な
ものであるが、形成すべきスポット数が特に多いときに
は、複数個のマイクロノズルを装着し、塗布対象物に任
意の順序でスポッティングし、1基のマイクロアレイを
製造する装置とすることも好ましい。或いは又、複数個
のマイクロノズルを装着し、複数の基盤上に同時にスポ
ッティングし、複数のマイクロアレイを同時に製造する
装置であることも好ましい。
【0166】
【実施例】以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定される
ものではない。なお、以下の実施例において、「部」
は、特に断りがない限り「質量部」を表し、「%」は質
量百分率を表わす。
【0167】<活性エネルギー線>ウシオ電機株式会社
製のマルチライト200型光源ユニットを用い、365
nmにおける強度が50mW/cm2の紫外線を窒素雰
囲気中で照射した。
【0168】<測定方法>実施例中の測定は次の方法に
より行った。 〔引張弾性率及び破断伸び率の測定〕シート状試料を幅
10mm、長さ100mmの短冊型に切断して測定用試
料とした。これらの試料は、24±1℃、湿度55±5
%の室内に16時間以上静置した後に測定に供した。引
張試験器として東洋精機製作所製の「ストログラフV1
−C」を用い、24±1℃、湿度55±5%雰囲気中
で、掴み具間距離80mm、引張速度20mm/分で測
定した。
【0169】〔重合性化合物の水に対する溶解性の測
定〕重合性化合物(b)0.5部、0℃の水99.5部の
混合溶液を調製し、激しく撹拌し、0℃にて24時間静
置した後、目視にて相分離の有無を判定した。
【0170】〔重合性化合物の疎水性溶剤に対する溶解
性の測定〕シクロヘキサン62.5部及びトルエン1
2.5部からなるシクロヘキサンとトルエンの混合溶媒
を用意し、重合性化合物(b)25部、シクロヘキサン
とトルエンの混合溶媒75部を混合して25℃にて激し
く攪拌し、25℃にて24時間静置した後、目視にて相
分離の有無を判定した。
【0171】〔水との接触角の測定〕試料を温度25±
1℃、湿度55±5%に24時間静置した後、協和界面
科学製接触角度計CA−X型を使用し、上記と同じ温
度、湿度で、安定化時間3分で測定した。
【0172】<活性エネルギー線硬化性組成物の調製>
実施例で使用した活性エネルギー線硬化性組成物の調製
方法を以下に示した。 〔組成物A1の調製〕活性エネルギー線硬化性化合物と
して、3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本
インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV426
3」)10部、及びジシクロペンタニルジアクリレート
(日本化薬株式会社製の「R−684」)90部、重合
遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペ
ンテン(関東化学社製)を0.5部、及び紫外線重合開
始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケト
ン(チバガイギー社製の「イルガキュアー184」)5
部を混合して、組成物A1を調製した。
【0173】〔組成物B1〕架橋重合性の活性エネルギ
ー線硬化性化合物として、3官能ウレタンアクリレート
オリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニ
ディックV4263」)を60部、及び1,6−ヘキサ
ンジオールジアクリレート(第一工業製薬株式会社製の
「ニューフロンティアHDDA」)を20部、両親媒性
の重合性化合物としてノニルフェノキシポリエチレング
リコール(n=17)アクリレート(第一工業製薬株式
会社製の「N−177E」、HLB値=14.64、水
又はシクロヘキサンとトルエンとの混合溶媒の両者に可
溶)を20部、重合遅延剤として2,4−ジフェニル−
4−メチル−1−ペンテン(関東化学社製)を0.5
部、及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキ
シルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュ
アー184」)5部を均一に混合して組成物B1を調製
した。
【0174】〔実施例1〕 (部材の作製)一時的な支持体として、ポリプロピレン
二軸延伸シート(二村化学社製の「FOR」、厚さ30
μm、片面コロナ処理済み)[以下、OPPシートと称
する](図示せず)のコロナ処理面に、50μmのバー
コーターを用いて組成物A1を塗布し、フォトマスクを
使用して、図1に示された部材(A)の吐出口(2)及
び流路(A)(13)と成す部分以外の部分に紫外線を
2秒間照射して、流動性を喪失した半硬化状態の塗膜と
成し、非照射部分の未硬化の組成物A1を、エタノール
50%水溶液に浸漬して5秒間の超音波線状により除去
し、直径100μm、中心間距離300μmで4×4に
マトリックス配置された吐出口(2)と流路(A)(1
3)を形成して、一時的な支持体上に形成された、厚さ
35μmの部材A1(1)を形成した。
【0175】50μmのバーコーターの代わりに250
μmのバーコーターを使用したこと、組成物A1の代わ
りに組成物B1を用いたこと、フォトマスクのパターン
が、図2に示された形状の欠損部を形成するものである
こと以外は上と同様にして、OPPシートを一時的な支
持体(図示せず)として用い、その上に組成物B1の硬
化物で形成された、厚さ約185μmの部材(B)の第
一層(3)を形成した。部材(B)の第一層(3)に
は、部材A1(1)の吐出口(2)の外側2列に相当す
る位置(4)から、外側の列間距離が10mmである位
置に設けられた直径1mmの4個×2列の孔状の欠損部
(5)に至る横方向の流路となるべき線幅150μmの
線状の欠損部(6)が形成されている。また、部材A1
(1)の吐出口(2)の内側4個×2列に相当する位置
に直径200μmの孔状の欠損部(7)が設けられてい
る。
【0176】別途、部材(B)の第一層(3)と同様に
して、図3に示された形状の、線状の欠損部(6)を有
しないこと以外は部材(B)第一層(3)と同様の、部
材A1(1)の吐出口(2)の外側4個×2列に相当す
る位置に設けられた孔状の欠損部(4’)、部材A1
(1)の吐出口(2)の外側4個×2列に相当する位置
に設けられた孔状の欠損部(4’)、内側4個×2列に
相当する位置に設けられた孔状の欠損部(7’)、及び
部材(B)の第一層(3)の孔状の欠損部(5)に相当
する位置に設けられた4個×2列の直径1mmの孔状の
欠損部(5’)が設けられた、図3に示された形状の、
部材(B)の第二層(8)を形成した。
【0177】また別途、部材(B)の第一層(3)と同
様にして、図4に示された形状の、部材A1の中心側の
2列の吐出口に相当する位置(7”)から、列の中心間
距離が6mmの位置に設けられた4個×2列の直径1m
mの孔状の欠損部(9”)にそれぞれ至る線幅150μ
mの線状の欠損部(10)、及び、部材(B)の第二層
(8)の孔状の欠損部(5’)に相当する位置に設けら
れた直径1mmの4個×2列の孔状の孔状の欠損部
(5”)を有する図4に示された形状の、部材(B)の
第三層(11)を形成した。
【0178】また別途、組成物(B)の塗布厚みが2m
mであること及び紫外線照射が10秒であること以外は
部材(B)の他の層と同様にして、部材(B)の第三層
(11)の孔状の欠損部(5”)及び(9”)に相当す
る位置に、直径1mmの孔状の欠損部(5''')及び
(9''')が設けられた層を形成し、12mm×12m
mの範囲を残して周囲を一時的な支持体ごと切除し、図
5に示された形状の、部材(B)の第四層(12)を形
成した。
【0179】(部材の接着)部材(B)の第四層(1
2)と部材(B)の第三層(11)を各孔状の欠損部の
位置を合わせて密着させ、窒素雰囲気中で、部材(B)
の第三層(11)側から紫外線を3秒間照射して、これ
らの層を形成す組成物(B)の硬化を進め、2つの部材
を接着した。そして、部材(B)の第三層(11)から
一時的な支持体(図示せず)を剥離し、部材(B)の第
四層(12)と接触している12mm×12mmの部分
を残して周囲を切除した。
【0180】更に、同様にしてその上に部材(B)を構
成する第二層(8)、部材(B)を構成する第一層
(3)、及び部材A1(1)を順次接着し、部材(B)
を構成する第四層(12)の一時的な支持体(図示せ
ず)も剥離して周辺部を切除し、これら全体に紫外線を
60秒間照射して完全に硬化させることにより、図6及
び図7に示された形状のマイクロノズル[D1]を作製
した。
【0181】即ち、このマイクロノズルは、部材(A)
と部材(B)の間に、水平な方向(即ち、ノズル面に並
行な方向)に伸びた流路(6)を有し、また部材(B)
中にも水平な方向に伸びた流路(10)を有し、これら
と、部材(B)中の垂直な方向に伸びた流路(4’)及
び(7、7’)、部材(B)中の垂直な方向に伸びた流
路(5、5’、5”、5''')及び(9”、9''')、及
び部材(A)中の流路(A)(13)によって、吐出口
(2)と注入口(5'''、9''')がそれぞれ互いに結ば
れている。また、流路(5、5’、5”、5''')及び
(9”、9''')部分はウェル状となっている。
【0182】更にこのマイクロノズルの上の、中心部の
吐出口(2)が形成された範囲に相対する部分の部材
(B)上に、直径2mmの真鍮棒(図示せず)をエポキ
シ接着剤にて垂直に接着した。
【0183】(素材の特性試験)別途、上記の部材作成
に用いたOPPフィルムを一時的な支持体として用い、
この上に組成物(A)1又はB1を塗布して、上記と同
じ紫外線を60秒間照射して硬化させ、一時的な支持体
から塗膜を剥離して厚み各185μmのシート状成形物
を作製して引張試験及び接触角の測定を行った。その結
果、組成物(A)1硬化物の特性は、引張り弾性率が
1.6GPa、破断伸び率が2.8%、水との接触角は
81度であった。また、組成物(B)硬化物の特性は、
引張り弾性率が580MPa、破断伸び率が7.2%、
水との接触角は13度であった。
【0184】(スポッティング試験)フルオレシン(和
光純薬工業製)の0.01%及び平均分子量約2000
のポリエチレングリコール(創和化学社製)1%を含む
水溶液を、シリンジを用いて、製造したマイクロノズル
の16個のウェル(5''')及び(9''')に一杯に入れ
たところ、溶液は自発的に流路に入り込みノズル面に達
したが、吐出口(2)から垂れたり、ノズル面を濡らす
ことはなかった。
【0185】このマイクロノズル[D1]を、真鍮棒を
持って、インクジェット印刷用のOHPシートにスタン
プ式に押しつけた後、直ちに該OHPシートをヘアドラ
イヤーを用いて熱風乾燥した。顕微鏡下でブラックライ
トを照射したところ、16個のスポットの蛍光が認めら
れた。
【0186】〔実施例2〕 (マイクロノズルの作製)吐出口が10行×10列にマ
トリックス配置されていること、線状の流路を有する樹
脂層の数、及びその間に設けられた孔状の流路を有する
樹脂層の数がそれぞれ5層であること、及びマイクロノ
ズルを部材(A)側が凸な、直径約1mの円筒の一部で
ある形状に成形したこと以外は実施例1と同様にして、
吐出口が直径100μm、中心間距離300μm、層内
の線状の流路が幅150μm、高さ約185μm、層を
貫通する縦の流路が直径200μm、ウェルとして使用
する注入口の直径が1mmである、外形寸法26mm×
26mmの100ホールマイクロノズル[D2]を作製
した。更にこのマイクロノズル[D2]の上の、中心部
の吐出口が形成された範囲に相対する部分に、直径4m
m×4mmの真鍮角棒(図示せず)をエポキシ接着剤に
て垂直に接着した。
【0187】(スポッティング試験)OHPシート上で
ノズル面を転がすようにしてスポッティングしたこと以
外は、実施例1と同様にしてスポッティングしたとこ
ろ、100個のスポットの蛍光が認められた。
【0188】〔実施例3〕 (マイクロノズルの作製)100個の吐出口が1列に成
形されていること、線状の流路を有する樹脂層が、それ
ぞれ20本の流路が設けられた5層であること、その層
間に設けられた孔状の流路を有する樹脂層の数が5層で
あること、ウェルとして使用する注入口が20穴×5列
に設けられていること、及び、マイクロノズルのノズル
面が直径約30cmの円筒の一部(但し、吐出口が同一
平面内にある方向)であること以外は実施例1と同様に
して、吐出口が直径100μm、中心間距離300μm
で層内の線状の流路が幅150μm、高さ約185μ
m、層を貫通する縦の流路が直径200μm、ウェルの
直径が1mmである、外形寸法15mm×50mmの1
00ホールマイクロノズル[D3]を作製した。
【0189】更にこのノズルの部材(B)上の、吐出口
が形成された範囲に相対する部分に、幅50mm×厚さ
2mm×高さ30mmのアクリル板(図示ず)をエポキ
シ接着剤にて垂直に接着した。
【0190】(スポッティング試験)実施例1と同様に
してスポッティングしたところ、100個のスポットの
蛍光が認められた。また、スポッティング操作を500
μm中心間距離で100回行ったところ、10000個
のスポットが形成された。
【0191】〔実施例4〕 (マイクロノズルの作製)吐出口、注入口の中心間距
離、流路の寸法、及び各層の厚さが異なること以外は、
実施例1と同様にして、吐出口が直径約10μmで中心
間距離が30μm、層内の線状の流路が、吐出口との接
続部付近が約20μm、他の部分が約100μm、高さ
約35μm、層を貫通する縦の流路が、吐出口との接続
部付近が直径約20μm、他の部分が直径100μm、
ウェルの直径が1mmである、外形寸法5mm×5mm
の16ホールマイクロノズル[D4]を作製した。更に
このマイクロノズルの上の、吐出口が形成された範囲に
相対する部分に、直径1mmのステンレス棒をエポキシ
接着剤にて垂直に接着した。
【0192】(スポッティング試験)実施例1と同様に
してスポッティングしたところ、16個のスポットの蛍
光が認められた。
【0193】〔実施例5〕 (マイクロノズルの作製)6個の吐出口が1列に成形さ
れていること、線状の流路を有する樹脂層が、6本の流
路が設けられた1層であること、ウェルとして使用する
注入口が3穴×2列に設けられていること、以外は実施
例1と同様にして、吐出口が直径200μm、中心間距
離500μmで樹脂層内の線状の流路が幅150μm、
高さ約185μm、ウェルの直径が1.6mmのマイク
ロノズル前駆体を作製した。
【0194】このマイクロノズル前駆体の部材(B)側
に、注入口の位置に各直径1.6mmの6個のウェルと
なる孔を穿った、外形寸法25mm×75mm×3mm
のポリスチレン板(大日本インキ化学工業製)を組成物
A1と紫外線を用いて接着した。
【0195】さらに、一時的な支持体として、実施例1
で用いたと同じOPPシート(図示せず)のコロナ処理
面に、50μmのバーコーターを用いて組成物A1を塗
布し、フォトマスクを使用して、スペーサーと成す部分
に紫外線を2秒間照射して、流動性を喪失した半硬化状
態の塗膜と成し、非照射部分の未硬化の組成物A1を、
圧空で吹き飛ばして除去し、これを上記マイクロノズル
前駆体の吐出口形成面に密着させて、紫外線を30秒間
照射することにより、半硬化状態のスペーサーを硬化さ
せると同時に部材(A)に固着し、その後OPPシート
を剥離した。以上の操作により、500μm×500μ
m、厚み約25μmの矩形のスペーサーが、吐出口の列
の両側に、各吐出口の中心を通る線からの距離が各1m
mで各7個2列に並び、各矩形間の間隔が500μmに
配列された、外形寸法25mm×75mmの6ホールノ
ズル[D5]を作製した。
【0196】(スポッティング試験)マイクロノズル
[D5]を使用したこと、塗布対象物として25mm×
75mm、厚み1mmのアルデヒド基固定スライドグラ
ス[テレケム インターナショナル社(Tele Chem Inte
rnational Inc.)社製、オーガノアルデヒドSMA]を
用いたこと、及び塗布液としてアミノ基を有する蛍光標
識DNA断片[エスペックオリゴサービス社製、5’−
C6アミノ基−3’−FITC−26塩基オリゴヌクレ
オチド)とマイクロスポッティングソルーション[テレ
ケムインターナショナル社(Tele Chem International
Inc.)製]の1/1混合溶液を用いたこと、以外は実施
例1と同様にしてスポッティングした。この塗布対象物
を50℃にて1時間保持した後、水洗、熱風乾燥し、蛍
光顕微鏡(オリンパス製)で観察したところ、直径約6
00μmの6個の蛍光スポットが観察された。
【0197】〔実施例6〕 (マイクロノズルの作製)実施例5で作製したマイクロ
ノズル[D5]の注入口の各ウェルに、外形1.6m
m、内径0.5mmのポリエチレンチューブをシアノア
クリレート系接着剤(東亜合成化学社製。アロンアルフ
ァ+)にて接着し、マイクロノズル[D6]とした。
【0198】(スポッタの作製)塗布対象を位置決めピ
ンとバキュームにより、一定位置に固定する機構を備え
た、上下に可動な台座、該台座に固定され、該台座に設
けられた孔を通して塗布対象のスポット形成部を観察す
るテレビカメラ(ソニー製)、該テレビカメラで撮像し
た画像を投影する画像モニター、位置決めピンとバキュ
ームにてマイクロノズル[D6]を一定位置に保持する
マイクロノズル装着機構、及び、6連マクロシリンジポ
ンプ、を有するスポッタを作製し、マイクロノズル[D
6]の各チューブの他端を、実施例5で使用したものと
同じ蛍光兵標識DNA断片含有溶液を充填した6連マイ
クロシリンジポンプ(KDサイエンティフィック社製、
IC−3260型)の各マイクロシリンジにそれぞれ接
続した。
【0199】(スポッティング試験)塗布対象として実
施例5で使用したものと同じアルデヒド碁固定スライド
グラスを用い、上記台座の上方に水平に置き、マイクロ
ノズル[D6]のスペーサーが塗布対象物のスライドグ
ラスに接触するまで台座を上昇させた。次いで、上記6
連マイクロシリンジポンプの各シリンジから蛍光標識D
NA断片含有溶液を各1μL/分(設定値)でマイクロ
ノズルに導入したところ、マイクロノズルの吐出口より
DNA溶液がゆっくり吐出されて半球状に盛り上がり、
塗布対象物の表面に付着した。その時点でシリンジポン
プを停止し、台座を下降させてマイクロノズルから離し
た。この塗布対象を実施例5と同様に処理し、蛍光顕微
鏡で観察したところ、実施例5より直径が揃った直径約
500μmの6個の蛍光スポットが観察された。
【0200】
【発明の効果】本発明は、多数の吐出口から多数種の溶
液を各々個別の流路を通して、溶液間のコンタミネーシ
ョンなしに同時に吐出し、多数のスポットを一挙に、且
つ容易に形成できるマイクロノズル、その製造方法、及
び、該マイクロノズルを用いたスポッティング方法、該
マイクロノズルを装着したスポッタを提供できる。本発
明のマイクロノズルは、多数の異なる種類の溶液のスポ
ッティングが高速で行え、また、各吐出口に異なる塗布
液を供給することが容易である。
【0201】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1及び4で作製したマイクロノズルの
部材(A)の平面図の模式図である。
【図2】 実施例1及び4で作製したマイクロノズルの
部材(B)を構成する第一層の平面図の模式図である。
【図3】 実施例1及び4で作製したマイクロノズルの
部材(B)を構成する第二層の平面図の模式図である。
【図4】 実施例1及び4で作製したマイクロノズルの
部材(B)を構成する第三層の平面図の模式図である。
【図5】 実施例1及び4で作製したマイクロノズルの
部材(B)を構成する第四層の平面図の模式図である。
【図6】 実施例1及び4で作製したマイクロノズルの
平面図の模式図である。
【図7】 実施例1及び4で作製したマイクロノズルの
立面図の模式図である。図中、吐出口、流路(A)、流
路、ウェル、及び注入口となる連続した空洞部を白抜き
で示した。
【図8】 本発明の説明に用いたマイクロノズルの平面
図の模式図である。
【図9】 本発明の説明に用いたマイクロノズルの立面
図の模式図である。
【符号の説明】
1 :部材(A) 2 :吐出口 3 :部材(B)第一層 4 :部材(A)の外側の列の吐出口に相当する
位置 4’ :孔状の欠損部、流路 4” :孔状の欠損部、流路 5 :孔状の欠損部、流路、ウェル 5’ :孔状の欠損部、流路、ウェル 5” :孔状の欠損部、流路、ウェル 5''' :孔状の欠損部、流路、ウェル、注入口 6 :線状の欠損部 7 :孔状の欠損部 7’ :孔状の欠損部 7” :欠損部(7’)に相当する位置 8 :部材(B)第二層 9” :孔状の欠損部、流路、ウェル 9''' :孔状の欠損部、流路、ウェル、注入口 10 :線状の欠損部 11 :部材(B)第三層 12 :部材(B)第四層 13 :流路(A) 21 :部材(A) 22 :部材(B)第一層 23 :部材(B)第二層 24、24’、24”、24''' :吐出口 25、25’、25”、25''' :線状の欠損部、
溝、流路 26、26’、26”、26''' :孔状の欠損部、流
路、ウェル 27、27’、27”、27''' :注入口 28、28’、28”、28''' :流路(A)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺前 敦司 千葉県八街市雁丸11−67 Fターム(参考) 2G042 BD19 CB03 EA20 FB05 HA02 2G058 AA09 EA05 EA11 ED12 ED19

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに独立した4つ以上の毛細管状の流
    路と各流路の吐出口及び注入口とを有するマイクロノズ
    ルであって、隣接する各吐出口の中心間距離が該吐出口
    の直径の4〜10000倍であり、隣接する各注入口の
    中心間距離が隣接する該吐出口の中心間距離より大き
    く、かつ注入口の直径が吐出口の直径より大きいことを
    特徴とするマイクロノズル。
  2. 【請求項2】 前記マイクロノズルが、活性エネルギー
    線硬化性組成物からなるものである請求項1に記載のマ
    イクロノズル。
  3. 【請求項3】 前記マイクロノズルが、部材(A)と部
    材(B)とが積層されてなるものであり、前記部材
    (A)が部材(A)を貫通する互いに独立した4つ以上
    の毛細管状の流路と各流路の吐出口を有し、前記部材
    (B)が活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からな
    り、かつ部材(A)の吐出口に接続する部材(B)中の
    流路又は部材(A)と積層された面に流路を形成する欠
    損部を有する請求項1に記載のマイクロノズル。
  4. 【請求項4】 前記マイクロノズルが、部材(A)と部
    材(B)とが積層されてなるものであり、前記部材
    (A)が部材(A)を貫通する互いに独立した4つ以上
    の毛細管状の流路と各流路の吐出口を有し、前記部材
    (B)が活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からな
    り、かつ部材(A)の吐出口に接続する部材(B)中の
    流路と部材(A)と積層された面に流路を形成する欠損
    部と注入口を有する請求項1に記載のマイクロノズル。
  5. 【請求項5】 前記部材(B)が、注入口と前記注入口
    に接続する部材中の流路を有する部材(B1)と、部材
    (A)及び部材(B1)と積層された面とで流路を形成
    する欠損部又は部材中の流路を有する部材(B2)とを
    有する請求項4に記載のマイクロノズル。
  6. 【請求項6】 前記部材(B)が、注入口と前記注入口
    に接続する部材中の流路を有する部材(B1)と、部材
    同士が積層された面で流路を形成する欠損部と部材中の
    流路を有する部材(B3)と、部材(A)と部材(B
    3)と積層された面とで流路を形成する欠損部又は部材
    中の流路を有する部材(B2)とを有する請求項4に記
    載のマイクロノズル。
  7. 【請求項7】 前記毛細管状の流路が水との接触角が4
    5度未満の素材で形成されている請求項1に記載のマイ
    クロノズル。
  8. 【請求項8】 前記吐出口が設けられた部材(A)の表
    面が、水との接触角が45度以上である請求項1に記載
    のマイクロノズル。
  9. 【請求項9】 前記吐出口が設けられた部材(A)の表
    面に、厚み1〜100μmのスペーサーが形成された請
    求項1に記載のマイクロノズル。
  10. 【請求項10】 請求項1に記載のマイクロノズルの製
    造方法であって、部材を貫通する互いに独立した4つ以
    上の毛細管状の流路と各流路の吐出口を有する部材
    (A)と、前記部材(A)の吐出口に接続する部材中の
    流路又は前記部材(A)とで流路を形成する欠損部を有
    し、活性エネルギー線硬化性組成物の半硬化物からなる
    部材(B)とを積層し、次いで活性エネルギー線を照射
    して部材(B)を硬化させるとともに部材(A)と部材
    (B)とを接着させることを特徴とするマイクロノズル
    の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1に記載のマイクロノズルの製
    造方法であって、部材を貫通する互いに独立した4つ以
    上の毛細管状の流路と各流路の吐出口を有し、活性エネ
    ルギー線硬化性組成物の半硬化物からなる部材(A)
    と、前記部材(A)の吐出口に接続する部材中の流路又
    は部材(A)とで流路を形成する欠損部を有する部材
    (B)とを積層し、次いで活性エネルギー線を照射して
    部材(A)を硬化させるとともに部材(A)と部材
    (B)とを接着させることを特徴とするマイクロノズル
    の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記部材(B)が、部材(A)と積層
    された面とで流路を形成する欠損部又は部材中の流路を
    有する部材(B2)である請求項10又は11に記載の
    マイクロノズルの製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項1に記載のマイクロノズルを用
    い、塗布液を塗布対象物に点状に塗布するスポッティン
    グ方法。
  14. 【請求項14】 塗布液が毛細管現象により吐出口へ供
    給される請求項13に記載のスポッティング方法。
  15. 【請求項15】 塗膜液の粘度が5〜500mPa・s
    である請求項14に記載のスポッティング方法。
  16. 【請求項16】 塗布液に水溶性ポリマーを添加する請
    求項15に記載のスポッティング方法。
  17. 【請求項17】 請求項1に記載のマイクロノズルを有
    するスポッタ。
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WO2004053480A1 (ja) * 2002-12-02 2004-06-24 Arkray, Inc. 分析用具の製造方法
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