2019/07/04 17:00

Boris、ポップサイドの帰着点──驚きの〈TRASH-UP!!〉からリリースの新作『tears e.p』を独占ハイレゾ配信

Boris

日本、そして世界のエクストリーム・シーンを牽引する存在として精力的な活動を続けるバンド、Borisが新作『tears e.p』をドロップ。〈TRASH-UP!!〉設立10周年記念企画の第1弾としてリリースされた今作は、COALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKI率いるSADESPER RECORDによるプロデュース楽曲をはじめ、そのディーパーズや彼らも影響を公言するバンド、D-DAYのカバーなどEP作品ながらとても中身の濃い作品かつ、ポップな側面が全面に押し出された1枚に仕上がっております。OTOTOYではそんな今作を独占ハイレゾ配信するとともに、メンバーであるAtsuoへのインタヴューを掲載。また、購入者特典には歌詞ブックレット(PDF)も付属するのでぜひチェックを!

〈TRASH-UP!!〉設立10周年記念企画第1弾作品!!

Boris “どうしてもあなたをゆるせない” from 『tears e.p』
Boris “どうしてもあなたをゆるせない” from 『tears e.p』
※購入者特典として歌詞ブックレット(PDF)が付属いたします

INTERVIEW : Atsuo (Boris)

Borisが〈TRASH-UP!!〉からリリースという知らせに、頭に「?」マークが並んだ人、膝を打った人、様々な反応が見られましたが、いかんせん今回のEPは情報量が多い(笑)! NARASAKI率いるSADESPER RECORDによるプロデュース楽曲にCOALTAR OF THE DEEPERSやD-DAYのカバー、そこから見る『New Album』以降にタッグを組み続けている成田忍の存在などなど…そもそもなんで〈TRASH-UP!!〉からリリースなの? という素朴な疑問も。しかもすでに新作アルバムもリリースが決定していてこれも気になるぞ…ということで25周年ツアー以降の流れも含め、気になること全部訊いてみました。

インタヴュー&文 : 高木理太
編集補助 : 鎮目悠太
写真 : Miki Matsushima
Alive Painting : Akiko Nakayama

もともとポップな楽曲が、より研ぎ澄まされた

──去年(2018年)の9月で25周年ツアーが無事終わり、LP『Phenomenons Drive』、THE NOVEMBERSとのスプリット、A/N【eɪ-ɛn】での活動やMORRIEさんのアルバムへの参加、栗原(ミチオ)さんと再びライヴをするなど目まぐるしく濃い活動が続く中、今回なぜ〈TRASH-UP!!〉からリリースすることになったのでしょうか?

僕がBorisとは別にサウンド・プロデュースやデザインでいろいろなバンドをお手伝いさせてもらっているんですね。イライザ・ロイヤル&ザ・総括リンチもお手伝いしてるんですが、そのドラマーが〈TRASH-UP!!〉をやってる(シマダ)マユミさん。何度も顔を合わせる内に「じゃあ〈TRASH-UP!!〉で出してくださいよ」みたいな話になったんです。今はピントがあっている部分がアイドル的な側面が強いですけど、〈TRASH-UP!!〉自体はもともと多種多様なジャンルに精通しているので、一緒に面白い事出来るかな、と思いまして。

──なるほど。ここ最近の目まぐるしい活動の中で、〈TRASH-UP!!〉から出そうという今作への動きはどこから始まっていたんですか?

去年の夏に彼女達のインストア・イベントがあって。そこでディレクターの屑山(屑男)さん(TRASH-UP!!)とも話して具体的な話になっていったのかな? その後なんとなくリリースしたい曲が絞られてきつつ、全体のアイデアが広がり、NARASAKIさんや成田(忍)さんが関わっていただけると決定したのが1月辺り。そこからはすごいスピードで作業が進んだ気がします。

──そういった意味で、今回のEPは特に人と人とのつながりっていうのがすごく見える作品になっていると思うんですけど、やはり一番のトピックはNARASAKIさん、SADESPER RECORDプロデュースによる「どうしてもあなたをゆるせない」だと思うんですが、どういう経緯でプロデュースが決まったんでしょうか?

2011年に『New Album』というアルバムを成田さんにプロデュースしていただいたんですけれど、そのあと成田さんの紹介でNARASAKIさんに会わせていただきました。今〈TRASH-UP!!〉はアイドルにフォーカスしてるって文脈も作用して、NARASAKIさんと一緒にやれたらいい感じで曲を届けられるんじゃないかなと思ったんです。Borisはかなりの未発表曲があるんですが、去年の25周年ツアーのファイナルの入場者特典で未発表音源集のコンピレーションを配布したんです。アーカイヴを整理していて、特にポップな曲をリリースするタイミングがなかなかないんですね。その中のすごく気に入っている1曲がまず決まって、そこからリリース・アイデアが育っていきました。その曲をNARASAKIさんにプロデュースしていただくのに対して、僕らがCOALTAR OF THE DEEPERSのカバーを成田さんと一緒にやったら面白そうだねって。うちのTAKESHIは元々COALTAR OF THE DEEPERSの大ファンでしたし。

──もともとあった曲だったという話が少し出ましたけれど、この曲の制作に関してはどういう風に進めていったんですか?

既に編曲、録音まで終わっている曲をNARASAKIさんにお渡して、ポスト・プロダクションは完全におまかせです。最終ミックスは一緒に立ち会いで作業したんですが、すごいディティールへのこだわりでしたね。

──最初に音源聴かせてもらった時に、「めちゃくちゃポップなのがきたっ!」と思いました。こういう感じにしましょうみたいなのはある程度決めてたんですか?

もともとがポップな楽曲だったんでね。より研ぎ澄まされたというか、切れ味よくしていただいたという感じです。

──なるほど。そのNARASAKIさんとのタッグがあってのディーパーズのカバーだと思うんですけど、この曲「To The Beach」を選んだのはなぜだったんでしょう?

これはもう、ハマるのが一目瞭然というか。Borisでやるならこの曲になるなという感じで。他の代表曲のようなKANNOさんのキレッキレのリズムとか僕は出来ないんでね(笑)。

──割と原曲に近いアプローチですよね。

そうですね。僕らのサウンドシステムで鳴らしたらどうなるか?みたいな感じでやってみました。ライブだと更に面白く体感していただけると思います。

Takeshi (Vocal,Bass & Guitar)

〈TRASH-UP!!〉とは共有出来ているものがたくさんある

──このディーパーズのカバーが成田さんプロデュースで、これまた成田さんと縁の深いD-DAYの「Peaches」のカバーも入ってますよね。

これも遡ると、出会いの順番としては (川喜多)美子さん(D-DAY Vo.)からの紹介で成田さんに会わせていただいてるんですね。『Heavy Rocks(2011)』を録っている時にPEACE MUSICの中村(宗一郎)さんとちょっとコーラス入れたいなっていう話になって。そしたら中村さんが「家も近いし、ちょっと美子さんに電話してみようか」っていう話になって。そうやって美子さんに録音に参加してもらった後に、成田さんをご紹介いただいたっていう。またそこから『New Album』のプロデュースに繋がって、今に至ると。実はこの「Peaches」のカバーも2016年に録音されていたものです。美子さんが白血病を患って大きな施術で入院されていていた時期に有志で励ます会が企画されたんですね。僕らは出席出来なかったんですが、ビデオ・メッセージを募っていたので「Peaches」を急遽録音、ビデオも撮影して送りました。

──じゃあ今回このタイミングで日の目を見ることになったんですね。

今回こうして収録できたのはすごく嬉しいんです。長時間は無理だけど短い時間なら歌も歌えると伺ったので今回のレコ発に出演していただける事も決まりました。美子さんは予後まだまだ大変な中、10年ぶりにステージで歌う事を決心していただいて、本当に感謝しています。2010年以降のいろんな人との出会いが今作にはぎゅっと凝縮されています。

──今回のEPでの重要人物になるのは成田さんになるんですかね?

NARASAKIさんから「どうしてもあなたをゆるせない」の最初のヴァージョンを送っていただいた時に「URBAN DANCEになってる!」って思いました。僕もNARASAKIさんも成田さんが在籍していたURBAN DANCEの大ファンなんです。アレンジのアプローチを成田さん文脈で新しく構築してもらえました。そういう意味でも成田さんの引力でいろんなことが起こった気がしますね。

──だからなのか、今作からはメンバーのみなさん含め楽しみながら色々進んでいったようなのが曲からものすごく分かる気がします。そして今作はアートワークも印象的で。

あんまりアイドルとか詳しくないんですが、成田さん関連で風男塾を見させていただいてたりしたので〈TRASH-UP!!〉のいまの動きにもうまく合流できた。かな?(笑)。今回レーベルとすごくいい関係でコラボレーションが出来ました。〈TRASH-UP!!〉ならではの視点で、こたおちゃんをモデルに起用を提案してもらったり、写真のコンセプト決める段階でも話がスピーディー。〈TRASH-UP!!〉のお2人とは世代も近いし、文化的背景も共有出来ているものがたくさんあるので、ミーティングの展開とスピード感、とても気持ちいいです。

──それが結果的に今回のEPの情報量の多さに繋がってるわけですね。

〈TRASH-UP!!〉からリリースされるとイメージしたときに色々な面白いことがたくさん起こるような要素をたくさん詰め込んだ感じですね。

──今回のEPってBorisという主体の存在はもちろん外せないんですけど、多くの人が関わっているがゆえに器っぽい感じになっていると思いました。

そうですね。いつも僕らはそうなんですよ。風呂敷を広げるのだけは得意 (笑)。

Atsuo (Vocal,Drums,Percussion & Electronics)

──回収してくれる人が誰かいたほうがいいわけですね(笑)。

いかんせん今回のEPはすごいスピードで進行したので、まだ俯瞰で見れてないところもあります(笑)。でもこのキラキラしている全体感とかはマユミさんの人柄かなと。

──結果的にそこに自然と寄っていったと。マユミさんの存在がとても大きいんですね。

もう一人の重要人物ですね。いろんなコーディネートとか、デザインもお任せしてますし。バンドもそういう動きにワクワクしながら制作出来ましたから。

要はシンプルに楽しいことだけしていたい

──このEPのリリース後は〈TRASH-UP!!〉の10周年イベントにも出て、レコ発もありますもんね。

ご迷惑をおかけしないように、とは思ってます。10周年イベントでは(笑)。

──Borisを知ってるけど、ちゃんと聴いたことなかったりライヴ見たことないっていう新しいところにリーチするチャンスなのかなって勝手に思いつつ。あの並びにBorisがいるのだいぶ強烈ですよ(笑)。

本当に〈TRASH-UP!!〉と絡むの面白いんですよ。ずっとね「バンド」にこだわってやっていたところがありましたが、ツアーを重ねるうちにそういう方法論に疲れたっていうのもあったり。そういう中でA/N【eɪ-ɛn】のような映画的表現を試みたり、今はそういう時期なんです。〈TRASH-UP!!〉って音楽だけじゃなく守備範囲がものすごく広いじゃないですか。文化的素養が「素晴らしいもの」から「酷いもの」まで膨大に蓄積されてるお二人ですから、こちらも手加減しなくていいし、なんでも受け止めてくれる。すごくのびのびとさせてもらってます。解放された感じといいますか。

Wata (Vocal,Guitar,Keyboard,Accordion & Echo)

──以前インタヴューをさせてもらった時に、バンドがどんどんほぐれて来ているっていうことをおっしゃっていたと思うんですけど、こんなほぐれ方をしていくのかと思っていて。『DEAR』のあの感じの延長線を予想してたら、THE NOVEMBERSとのスプリットだったり、栗原さんとまた一緒にやり始めたりとかっていう色々な動きがあって。これってバンドとしても予想していなかったことになっていますか?

自分たちで計画を立てて、それを軸に動くんですけど、実現しないこととかもやっぱりあって。それはそれで今やらなくていいことなんだなっていう感覚で捉えたりもします。まわりとの関係性の中でやるべきことだけが実現されて行くっていう感じがしますね。なるようにしかならない。こうしたいんだって思っても迂回しなきゃたどり着けないこともやっぱりあるし。どういうプロセスが自分たちのビジョンへの最短かっていうのはわからないけど、迂回しているようで、実は近道でやれているんじゃないかなって思ってます。

──さっきの言葉に出た、バンドっていう方法論に疲れたっていうのも大きいんですかね? そういう観念から離れていっていろんなことをやってみたいというか。

大体のバンドってつまんないですよね。…あ、やばいこと言ったかも(笑)。

──えっ!?

世界を廻って色々観てきた中で、やっぱりずっと観ていられるような凄いバンドっていうのは本当に少ない。「バンド」っていう方法論で枠に収まってしまっているなと実感することがほとんど。「バンド」っていうものへの愛とか、「音楽」っていうものへの愛が逆に不自由さを産んでいる側面もあると思うんです。そういうのをあえて壊していかなければならないというのは常々意識しています。今のBorisはもっと現実に干渉していくような表現。現実に作用するドキュメンタリー映画のような、大きく表現というか「現象」が起こるような活動にシフトしていると思います。もっともっとスリリングで面白いことが起こるようにしていかないといけないと思っていて。…要はシンプルに楽しいことだけしていたい(笑)。

──なるほど。だからこそ今回のEPは楽しいっていう気持ちが音からすごく伝わります。

音楽だけにこだわらず、面白いことが起こる切掛けを詰め込めた気はしますね。自分達と〈TRASH-UP!!〉で何が起こるのか? 実際この楽曲をライブでどう演奏するのよ? みたいな自分達自身も巻き込まれていますからね(笑)。あと〈TRASH-UP!!〉と今回一緒に組んで自分の持っていたアイドル観と彼らが携わっているアイドルといわれている人たちの差異をすごく感じました。アイドルっていう概念が大幅に更新されていますよね。

──もうちょっと具体的に聞いてもいいですか?

もっとリアルじゃないですか。現実と虚構がシームレスで、参加している人達の日常もヴィヴィッドに色付くというか。この前SAKA-SAMAの定期公演も見させてもらったんですけど、カイ先輩がライブの途中で突然ステージからいなくなったりとかして。歌詞を忘れたみたいなんですが。いや、すごいなと。〈TRASH-UP!!〉周辺は特に。

──(笑)。そういうのが新鮮に思えたんですね。

ただただ恐ろしい風景ですからね、同じアーティストとしては(笑)。でも何かが起こっているていう。いろいろなバンドを見てて何も起こらないまま時間が過ぎていくことをたくさん経験しているんで、そういう新鮮さとかはありますよね。今まさに目の前で出来事が起こっている感じというか。

──なるほど。最後になんですが、次のアルバムのリリースもすでに決まってますけど、こちらはどういう感じのサウンドになるのか言える範囲で聞かせてもらえたらなと。

アルバムは…このEPより先に出来上がってるんですね。僕らはある方向を掘っていったら、反対側にドーンと揺り返しがよく起こるんです。だから今回のEPが生まれる前の反対側。『DEAR』のその先。縦のグリッドも、横のピッチっていうグリッドにも捕われないグニャグニャな方向性になってるかな。EPのレコ発や〈TRASH-UP!!〉10周年のイベントもあるんですが、このEPの曲もライブ用のアレンジでまた違った感じになっていきます。ツアーに向けて両極の方向性を一つのステージで見せていくようなセットになると思うので、色々楽しみにしてもらえたら。

『tears e.p』のご購入はこちらから

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LIVE SCHEDULE

TRASH-UP!! 10th Anniversary 大TRASH-UP!!まつり 2019 AqbiRecといっしょ!

2019年7月30日(火)@東京 Zepp DiverCity
出演 : 春野さ子 / NILKLY / グーグールル / MIGMA SHELTER / SAKA-SAMA / カイ / ATOMIC MINISTRY / おとといフライデー / Boris
時間 : OPEN 19:00 / START 19:30
チケット : 前売 3500円 / 当日 4000円(共に+1d)

Boris “tears e.p” Release Party

2019年8月12日(月・祝)@東京 新代田 Fever
ゲスト : 川喜多美子
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
チケット : 前売 3800円 / 当日 4300円(共に+1d)

Z.O.A x Boris

2019年10月13日(日)@東京 高円寺High
出演 : Z.O.A / Boris
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
チケット : 前売 4500円 / 当日 5000円(共に+1d)

CELESTE (France) x heaven in her arms Japan Tour 2019

2019年11月4日(月・祝)@東京 新大久保EARTHDOM
出演 : CELESTE (France) / heaven in her arms / Boris
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
チケット : 前売 4000円 / 当日 4500円(共に+1d)

その他ライヴの詳細はこちらをご確認ください

PROFILE

Boris

Takeshi : Vocal, Bass & Guitar
Wata : Vocal, Guitar, Keyboard, Accordion & Echo
Atsuo : Vocal, Drums, Percussion & Electronics

公式HP : https://borisheavyrocks.com/
Twitter : https://twitter.com/Borisheavyrocks

この記事の筆者
高木 理太 (Rita Takaki)

1993年生まれ、志田未来と同じ生年月日。お酒はほどほどに。

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[インタヴュー] Boris

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