2019/06/21 20:30

T.V.NOT JANUARYが問う“普通”の意味──新たなサウンドを獲得した3rdアルバム『ふつー』をリリース

T.V.NOT JANUARY
左より、横田川純也(Vo,Gt)、本島航(Vo,Gt)、池田俊彦(Vo,Gt,Dr)

メンバーそれぞれが東京、埼玉、静岡に暮らしつつマイペースな活動を続けるアコースティック・グループ、T.V.NOT JANUARYが前作から4年ぶりとなるアルバム『ふつー』をリリース。これまでのアコースティックなサウンドから、バンド・サウンドも取り入れた今作ではあだち麗三郎がプロデュースを担当。ゲストには田中馨、mei eharaらが花を添え、これまで以上にポップに突き抜けた1枚に。今回OTOTOYではそんな傑作『ふつー』が生まれるまでに迫ったインタヴューを公開。また、ここだけの購入特典としてアルバム収録曲のアウトテイクが付いてくるのでこちらもぜひチェックを。

あだち麗三郎をプロデューサーに迎えた3rdアルバム!

T.V.NOT JANUARY / 「HELLO」&「semi」【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
T.V.NOT JANUARY / 「HELLO」&「semi」【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
※OTOTOYのみのボーナス・トラックとして「GUTS」「金麦わら」を収録しております

INTERVIEW : T.V.NOT JANUARY

T.V.NOT JANUARYの音楽には嘘がない。嘘が無さすぎて時に怖さも覚えるくらいに。今までのフォーキーなサウンドからバンド・サウンドを取り入れて音色はより色彩豊かになったけれども、核にある“らしさ”は変わっていなくて、この先10年後、20年後、いつか自分がボケてしまった時に聴いても“普通”に良いと思えるような素敵な作品だなとこの作品を再生するたびに思っている。変わったけど変わってない、変わってないけど変わったそんな今作を堀り下げるべく、メンバーに話を訊いた。

インタヴュー&文 : 高木理太

ちゃんと音楽できる人と作れた

──T.V. NOT JANUARYといえばこれまでアコースティック、フォーキーなサウンドでしたけど、今作『ふつー』では大きな変化としてバンド・サウンドを取り入れてますよね。今回そうしたバンドの音を取り入れようと思ったのは何がきっかけだったんですか?

横田川 : 最初は今回のアルバムの曲を今までの感じで録音したんですけど、一回ボツにしてて。

池田 : 今まで通りアコギで録った音源を聴いた時に、もっと違う感じ、エレキ弾きたい、ホーン入れたい、厚みを出したいとかっていう部分をみんな思っていて。けれど自分たちだけじゃどうにもいかないから、誰か頼める人がいないかなと。

本島 : そう漠然と考えてた時に、今回のプロデュースをしてくれているあだち(麗三郎)さんが乗ってきてくれたっていう。

池田 : ちょうど自分がHei Tanakaであだちくんと一緒にやっていたり、あだちくんも自分のバンドの企画に昔、T.V.NOT JANUARYを呼んでくれたりとかしていて。

──それで白羽の矢が立ったのがあだちさんだったと。いざあだちさんと録音するってなって、プロデューサーとしてどういうお願いをしたんですか?

池田 : それが頼んだ段階ではそんなにビジョンもなくて。

本島 : 自分たちでは思いつかないことをお願いしたかったからね。

池田 : 漠然とした思いをあだちくんと考えれたらいいなっていう感じでお願いしたよね。

──聴いた感想として、かなりあだちさんによるプロデュース、アレンジが施されてると思うんですけど録音は結構大変だったんじゃないですか?

池田 : 今までだったら基本は自分たちの世界だけでやってたから早かったんだけど、今回は音を重ねたりとかゲストを呼んで録音したりっていうのはいろんな場所でやったからかなり時間が掛かったかな。途中途中でアレンジも変わったりしてたしね。

──ちなみに期間でいうどれぐらい掛かったんですか?

池田 : それこそボツにしたアコギだけで録ったやつとかも入れると1年以上掛かってると思う。ベーシックを録ったのが去年(2018年)の6月とかだから。

──ベーシックを録ってから1年近くかかったのはなんでなんですか?

横田川 : ベーシックを録る時にアレンジが固まってなくて。ベーシックを録ってからアレンジを考えていったからだと思うんですよね。

池田 : あだちくんが一回デモを作ってくれたりしたもんね。

横田川 : 鍵盤とかで音足してくれたりとか。

本島 : 僕らは行き詰まってたけど、あだちさんはどんどんアイディアを出してくれて。そこに僕らは付いていくっていう。

──なるほど、やっぱりあだちさんの存在がかなり重要だったんですね。

横田川 : めちゃくちゃデカかったですね。

池田 : やっぱあの人の感覚、天才性みたいなものを目の当たりに出来た仕事というか。そういう人と一緒にやれたのは本当に良かったなと。自分たちだけだとのんびりしちゃうから(笑)。ちゃんと急ぐとこは急ぐよっていうペース配分とか、僕らが思ってもいないようなアレンジが出て来たんで、それを全部飲み込むだけではなく、ちゃんとああだこうだ言えたのも良かったかな。特に「semi」みたいなリズムのドラムとかは僕らじゃ思い浮かばないし、ホーン隊のメロディ一つ取っても、もう少し渋くアレンジするようなところを前に前にっていう感じになってたりとか。

──そういう意味ではプロの仕事を体感したっていう感じですかね?

池田 : そうかも。今までちゃんと音楽できない集団だったからね(笑)。ベース弾いてくれてるメルセデス(増田)(あだち麗三郎とおいしい水)とかすごかったもん。構成表作って、横ちゃんが作った「semi」のコードを構成表作って1時間後には録音でバリバリ弾いちゃうみたいな。

本島 : ちゃんと音楽できる人と作れたっていう(笑)。

──(笑)。ちなみにレコーディングはどの曲が大変だったとかあります?

本島 : 「GUTS」かなぁ? 何回も作って壊してっていうのを繰り返したかも。

横田川 : 自分も「GUTS」のアレンジが定まらなくてって辛かったなぁ。

池田 : 俺もそうかな、歌の音程とか難しくて。

──全員一致で「GUTS」と(笑)。

池田 : あとは肉体的な苦労でいうと、mei(ehara)ちゃんが歌ってくれた「ラブレター」の録音の日が真夏で。あだちくんの家で録ったんだけど、録音するときはエアコン止めなきゃいけないからみんな汗だくっていう。しかもコーラス・ワークとかもあらかじめ考えてたわけではなくて、meiちゃんが来てから色々試したりしながらやったから、結構な時間かかって、とにかく暑かった。面白かったけど(笑)。

──歌の部分に関してもあだちさんのプロデュースが結構加わってたんですか?

本島 : そうですね。わりと歌い分けみたいなのが結構あって。これまでは全員が同じところを歌ってたんだけど、今回はハモりも多いしソロ・パートも多いしっていう。

池田 : 3人で歌ってるところをあえて一人に直したりもしたし、自分たちだったらつけないようなところにコーラスつけてみたりとかっていう作業は結構あったかな。

──ここまで話を聞いて思ったのはすごい録りに苦労を重ねたのに、アルバムからはその苦労感みたいなのが出て無いですよね(笑)。収録曲も7曲であっさりと終わってしまいますし。

一同 : (笑)

池田 : それはあだちくんのミックス力と僕らの感じなのかもしれない(笑)。

──なんか、もうもうちょっと苦労感を伝えてもいいんじゃないかなと(笑)。

池田 : でももっと短期間でこれぐらいのヴォリュームのことをこなしてる人もいっぱいいるんだろうなと思うと、バンドってすごいなと思うよね。音作りも分からないからエレキ・ギターをセッティングして弾くのにもすごい時間かかったし。

本島 : 今回レコーディングをやるときに、普段使ってるギターを一切持っていかないようにしようって言ってて。だからその時点で面白かったよね。

池田 : 僕らみたいに普段遠距離でやってるバンドは、レコーディングの時にそういうことをしてもいいのかもって思った。新しい発見しかないし。次になんか違うアレンジの可能性を見つけられるなと思ったというか。

今回は普通のタイトルがいい

──そうやってバンドとして結構大きな変化があったアルバムだとは思うんですけど、今までの作品と並べて聴いても違和感は感じなくて。これまでのTVらしさ、芯みたいなのは全くブレてないですよね。その辺りはこうした大きな変化をする上でどう考えてました?

横田川 : 池田さんがアレンジをもっと加えようよって話を出した時に、TVは何やってもTVの音楽になるでしょっていうのを言ってて。それは結構腑に落ちた気はしますけどね。結構今までのアコースティックな編成とかにこだわりを持っちゃってたところもあるんですけど。

本島 : 今まで自分たちで完結しちゃってたし、それでいいかなと思ってたけど、やってくれる人がいるならいろんな意見出してもらった上で自分たちも演奏したいっていう気持ちになったというか。

池田 : 最初はこうやって誰かにお願いすることに実はみんな不安もあって。でもあだちくんに今までの音源とか、録ってボツにした音源とかを聴かせた時にすごい「いいね〜」と言ってくれて。第三者だし、一緒に多くは歩んできてないけれど「これは絶対大丈夫だ」って思えて。今バンドとしては咲ちゃんがお休みしてて、3人になった時に他の人と関わりがなくなってしまうのは嫌だなと。関わって形が変わる、自由になる方がいいんじゃないかなって。

──咲さんがお休みしてるなかで、3人でやることに対して閉塞感があったっていうのは事実なんですか?

池田 : そこがすごい難しくて、自分たちの中では「これでいい」と思ってたところもあって。それこそ空き瓶とかを鳴らすだけでも音楽になるし、もっと言えば楽器とかがなくてもTVでいれるじゃんと思いたいし、もっと自由にも出来る3人だって知ってるからこそ、逆にこのタイミングでバンドでガチッとやってみたっていう。

──たまたま今回はバンドという選択肢を取ったけど、もっと極端に、振れ幅のあるものをやってもよかったってことですか?

池田 : そうだね。全部打ち込みの曲とかもやっていいんじゃないかなっていう考えも自然と出てきてる状態というか。

──バンド・サウンドをトライしたことで、これがありならこれもありでしょっていう状態になってるってことですよね。

横田川 : なってるなぁ〜、めっちゃなってるなぁ〜。

池田 : それはあだちくんプロデュースっていう道を選んでよかったことの一つだと思ってて。これまでの自分たちで見えずに作ってたタガを外したいなとは思ってたけど、どうやって外せばいいか分からなくなってた状態から脱せた気はするよね。

──今の話を聞くと、アルバムのタイトル『ふつー』がより深い意味を持って来るというか。

横田川 : 「普通」っていう言葉はいろいろな意味を含んでますけど、まずはやっと普通に、本来出したかった音の形で作れたなっていうのはありますね(笑)。

一同 : (笑)

──そう言った意味での『ふつー』でもあると(笑)。タイトルのアイディアは誰発ですか?

池田 : アルバムのタイトルを考えてる時に、以前までのアルバムが後々見ると変なタイトルが多いから、短い言葉がいいよねとは言っていて。そしたら本島が「今回は普通のタイトルがいい」って何回も言って。

──今までが変化球すぎてっていうことですよね(笑)。

池田 : そう、それをあだちくんが拾ったんだよね。じゃあ『ふつー』にしようよって。自分的にはめちゃくちゃいい言葉が来たと思ってて、元々普通という言葉がすごく嫌いというか。誰かに向けて自分も言ってしまうことがあるけど、「普通」って勝手にそれぞれが持ってる概念だから存在しないものでしょ。そういう意味では「普通」って広義というか、あってないようなものっていうのがすごくいいなって。

本島 : みんなにも「普通」っていうのを考えてほしいですよね。

池田 : そう、それこそ今回のサウンドを“普通のバンド編成”とかって言われるのかもしれないけど、これって普通じゃないんだよっていうのは提示したいなっていう気持ちは今あるかな。

──あと1個、こうしたアルバムを作ったことによってライヴでの再現性みたいなものが変わって来るじゃないですか。その辺りは制作する段階でライブと作品は別物という考え方だったんですか?

池田 : 作品でこういうものを残そうが先なんだけど、作品でやっちゃたらライヴでもやりたいになったらいいと俺は思ってたかな。

──結果バンドの今後として新しい形で再現するなり、別の方向性にいければっていうことですよね。

池田 : そう。だから8月に渋谷のWWWでやる片想いとのツーマンはこれまで通りメンバーだけでもやるけど、バンド編成もやりたいなと思っていて。

──そのときは今までの曲もバンドでアレンジしてみたりとか?

本島 : そういうチャレンジもしたいですね。なのでそれはぜひ見に来て欲しいです。

──ちなみに今回こうした作品を作ってみて、さっき色々やってみたいっていう状態だって話されてましたけど、具体的にこの先みたいなのは考えてます?

横田川 : まだどうなるかは全然分からないですけど、僕は曲めっちゃ作ってありますよ。

池田 : 横ちゃんは作るペース早いからね。自分もあだちくんアレンジでやってみたかったけど、上手く進まなくて今回のアルバムに入らなかった曲があるかな。本島は?

本島 : うーん…今回ので出し切っちゃって、今の所は無い。

一同 : (笑)

『ふつー』のご購入はこちらから

過去作はこちらにて配信中!!

LIVE SCHEDULE

〈T.V.NOT JANUARY「ふつー」ツアー!!!!〉

名古屋編
~T.V.NOT JANUARY &あだち麗三郎と美味しい水 ダブルレコ発パーティー~
2019年6月23日(日)@金山ブラジルコーヒー
出演:T.V.NOT JANUARY / あだち麗三郎と美味しい水
DJ : SKULL MASCARAS / SHOULDER TACKLE
OPEN 19:00 / START 19:30
TICKET 2,500+1d

松本編
~T.V.NOT JANUARY 3RD NEW ALBUM レコ発& Give me little more. 6周年パーティー~
2019年7/20(土)@松本 Give me little more.
出演:T.V.NOT JANUARY / 他
OPEN 未定 / START 未定
TICKET:未定

東京編
~T.V.NOT JANUARY 3RD NEW ALBUM レコ発ツアーファイナル~
2019年8月1日(木)@渋谷WWW
出演:T.V.NOT JANUARY / 片想い
DJ&FOOD:後日発表!
OPEN19:00/START19:30
TICKET:前売 3000円 / 当日 3500(共に+1d)

その他ライヴの詳細はこちらをご確認ください

PROFILE

T.V.NOT JANUARY

2008年頃からみんなでギターを弾きながらみんなで歌うというスタイルで活動を開始。曽我部恵一氏に見いだされ2011年「はーひーまっとしょぬぴりー」(ROSE RECORDS)を発表。2015年には「ヤンキー発電所」(P-VINE RECORDS)を発表。同年、「森、道、市場」へ出演。2018年8月、7インチレコードシングル「semi」を自主発表。同年12月「愛日燦々」へ出演。活動当初より、子ども向けイベントからパンクイベント、深夜のパーティなどシーンを飛び越えたライブ活動を続けており、様々なアーティストと共演。自主企画では写真家、料理人、パティシエとの共同企画「いち」を開催し、平賀さちえ、三輪二郎、ショピン、知久寿焼、折坂悠太らと共演。近年ではウェブCMの音楽提供や、メンバー個々でも、池田によるHei Tanaka、mei ehara (bandset)への参加や、横田川による地元静岡での音楽イベントの開催(音楽と暮らしetc)など個々の活動も目立つ。また、池田は小林カツ代氏のエッセイ本の挿絵やトクマルシューゴ氏が音楽監督を務めた舞台「麦踏みクーツェ」サウンドトラックのジャケット絵を担当、本島は「みるみるレディオ」という自主ラジオの放送などを行っており、音楽を飛び越えた形での表現活動も魅力。

公式HP : https://www.tvnotjanuary.com/
Twitter : https://twitter.com/tvnotjanuary

この記事の筆者
高木 理太 (Rita Takaki)

1993年生まれ、志田未来と同じ生年月日。お酒はほどほどに。

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[インタヴュー] T.V.NOT JANUARY

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