名前の多様性

 ミャンマー国家顧問兼外相のアウン・サン・スー・チー氏は、「アウンサンスーチー」で一続きの名前だという。ミャンマー人には、一部の少数民族を除けば姓がない▲パスポートには国際標準に合わせて姓と名に無理やり分割した名前が書き込んであるが、あくまで便宜的なもので、現地の感覚では違和感があるという▲岩波新書「世界の名前」から引いた。姓がなかったり、姓の代わりに父親の名前が付いていたり、家族でも男性か女性かで姓が異なったりする例が紹介されている▲名前の形式は、民族によりけりで多様なもの、日本人名は本来の形式を生かせばよい-ということだろうか。ローマ字で表記する際、欧米式の「名・姓」の順番ではなく、日本語表記と同様「姓・名」の順番にするよう、文化庁が近く政府機関や都道府県などに要請する▲文化庁の国語審議会は2000年に「姓・名の順番が望ましい」と答申した。これを受けて文化庁は各方面に対応を求めたが、行政機関などでは改まらなかった。20年近くたって再び要請するが、今回はどうなる▲日本人が英語で名乗る際も「名・姓」の順に言うことが多い。県内で使われている中学英語の教科書では、日本人名は「姓・名」の順だという。ローマ字表記も自己紹介もいずれそのように変わるだろうか。(泉)

 


© 株式会社長崎新聞社