韓流ブームの始まりはK-POPから♪
韓流ブームは「冬のソナタ」が大ヒットした2003年から始まる。ヨン様の微笑みにノックアウトされたご婦人方が、深夜テレビにかじりつき、埃にまみれたパソコンを取り出しては「ぺ・よ・ん・じ・ゅ・ん」とおぼつかない指先でネット検索に挑戦! 10%を超えたらOKといわれた土曜日の深夜11時枠で最終回20%をたたき出した。(冬ソナのブームについては「NHKと冬のソナタ」を参照)
■韓流ブーム、第1号はBoA
しかし、この韓流ブームは音楽から始まったというのをご存知だろうか。
2001年、BoAという少女が彗星のように現れた。愛らしい容姿に、抜群のダンスセンスと圧倒的な歌唱力。おまけに韓国語、日本語、英語の3つの言葉を自在に操る。彼女は、これまで韓国に見向きもしなかった若者のハートをがっちり掴んだ。この頃韓国は、映画などのソフトを海外に売っていくという国策を執っていた。BoAは海外進出を狙って日本語と英語を特訓してデビューした、いわゆる芸能界の海外派遣要員第1号だったかもしれない。
■日韓ワールドカップ
BoAが日本デビューを果たした翌年の「日韓共催のサッカーワールドカップ」は、若者たちをさらに韓国に近づけた。この年、初めてテレビの地上波で韓国の連続ドラマが放送された。「イヴのすべて」だ。華やかなマスコミを舞台にした典型的な韓ドラだったが、物語が大幅なカットされたり、オーバーアクションの演技やストーリー展開といったところが影響したのか、期待したほどの人気は出ず“早すぎた韓流ドラマ”といわれてしまった。実は、これより先に、兄と妹との切ない恋物語を描いた純愛ドラマ「秋の童話」がWOWOWなどで放送されたが地上は出なかったので、このときは大きな話題にはならなかった。
映画では、北朝鮮工作員と韓国諜報部員との悲恋を描いた「JSA」「シュリ」などの作品が公開されたが、日本人にはテーマが重すぎたようだ。
■冬ソナブームの始まり
そんな時「冬のソナタ」がNHKから放送された。淡い初恋がテーマの美しい純愛ドラマで、これまでの韓ドラとは一線を画したものだった。「冬のソナタ」はアメリカ一辺倒だったNHKの海外ドラマ枠に新風を吹き込んだ。視聴者層も、これまでの男性や、20代~30代という若い世代の女性から、40代~80代までの比較的高い年代の女性に取って代わった。その後、「天国の階段」「夏の香り」「春のワルツ」「悲しき恋歌」といった切ない純愛ドラマが次々とテレビで放送され人気を博した。
■K-POPボーイズグループの活躍
音楽でも、BoAに続けと神話、リュ・シウォン、SE7EN、K、シン・スンフンらが続いた。リュ・シウォンやKは、韓国よりむしろ日本での方が人気があったかもしれない。しかし、BoAを超えるほどのアーティストは出てこない。ブームというものはせいぜい3、4年!2005年ごろになると、ブームは沈静化したかに見えた。
■スーパースター「東方神起」からガールズグループ
そんな時、メンバー全員がメイン・ボーカルを務められる実力の、イケメン男性グループが日本でデビューした。彼らは日本で合宿し、徹底的に日本の文化や言葉を学んだ。東方神起だ!BoAが拓き、東方神起が整地した道を、John-Hoon、SS501、T-maxらが歩き、遂には、BIGBANGが2009年のレコード大賞で最優秀新人賞を獲った。沈静化したと見られたブームは、音楽シーンでは、治まるどころかK-POPとしてもっと大きなうねりとなっていた。そして2010年、これまで不毛と言われてきたK-POPガールズグループが、KARA、少女時代の相次ぐ日本デビューで一気に火を噴き、社会ブームを巻き起こすほどになった。最近では、K-POPアイドルたちを抜きにして、日本の音楽シーンを語ることはできないほどだ。(BoAや東方神起らが日本でリリースしている音楽は、正確にはJ-POPに分類されるが、ここでは広義で韓国アーティスト全般をK-POPと呼ぶ)
■韓流ブームから韓流ジャンルへ
彼・彼女らは、ドラマの世界にも大きな影響を与えた。2005年以降、花美男と称される美しい俳優たちや、若手人気アーティストがラブコメや、サスペンス、職業に焦点を当てたドラマに主演し、若い層の支持を取りつけた。ラブコメは「私の名前はキム・サムスン」「宮」「コーヒープリンス1号店」「花より男子」など。サスペンスは「復活」「魔王」、職業は「白い巨塔(原作は日本)」「ベートーベン・ウィルス」など。
さらに、「チャングムの誓い」に代表される歴史ドラマが男性ファンを虜にした。実在の人物を描いた大河ドラマで、「朱蒙」「ソドンヨ」「海神」「太王四神記」といった骨太な英雄伝や、「王の女」「女人天下」「チャンヒビン」といった韓国版大奥といったものまで、ネット配信はもちろん、DVDレンタルショップのレンタル回数も飛躍的に伸びることになる。
かくして、韓国エンタメは一過性のブームを乗り越え、“韓流”というジャンルを日本に誕生させた。一番の功労者は、もちろん、優れた韓国の俳優やアーティストたちだが、“インターネット”が大きく役立ったということも忘れてはいけない。テレビや新聞、週刊誌など既存のメディアがカバーし切れなかった部分を、これまでパソコンを触ったこともなかった人までが、ネットの世界や動画配信サイトを頼りに情報収集にのりだしたのだ。そうすることで、これまで若者や男性向けの番組に無理に合わせてきた、女性や高齢者の余暇の過ごし方を、好きなときに、好きな番組を選択し、欲しい情報を収集するという積極的な楽しみ方に変えていった。
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