鶴の結成20周年記念ライブ「結成20周年記念 鶴の野恩返し~みんなにワイワイお祝いしてもらう会~」が7月23日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)にて開催される。
鶴は2003年に結成された「ウキウキ&切なさの伝道師」をキャッチコピーに掲げる3人組バンド。昨年4月からは4回目の47都道府県ツアーを開催するなど、結成20年を迎えた今も精力的な活動を行っている。
鶴の結成20周年を記念した本特集では、Official髭男dism、THE イナズマ戦隊、SCOOBIE DO、BRADIO、リアクション ザ ブッタ、EMMA(THE YELLOW MONKEY / brainchild's)という、鶴と親交のある6組のアーティストに鶴の魅力をヒアリング。これを鶴に伝え、3人に“20年”を振り返ってもらった。
取材・文 / 秦野邦彦撮影 / 斎藤大嗣
3人でやるライブは過去一番ハマってる
──結成20周年おめでとうございます! まずは4回目の全国47都道府県ツアー(2022年4月~2023年4月開催。群馬のみ会場の都合にて日程未定)を終え、7月23日に東京・日比谷公園大音楽堂にて開催される「結成20周年記念 鶴の野恩返し ~みんなにワイワイお祝いしてもらう会~」を目前に控える、皆さんの心境をお聞かせください。
秋野温(うたギター) 4回目の全国47都道府県ツアーは、お世話になってきたライブハウスがコロナ禍で大変な中、僕らなりに応援できることを考えて。クラウドファンディングで集まった入場料の一部を先払いするためにスタートさせたのが始まりでした。もしコロナがなければ、この結成20周年のタイミングでのツアーだったんじゃないかと思います。とはいえ、結果的に20周年記念ライブは野音を押さえることができて、すごくいい流れになりましたね。
笠井“どん”快樹(ドラム) 僕はすごく緊張しいで、野音のことを考えるとドキドキしっぱなしになっちゃうので、ツアーが終わるまでは何も考えまいと思っていたんです。なので否応にも気持ちは高まりつつも、ドキドキしています(笑)。
神田雄一朗(ウキウキベース) 僕はまったく緊張しないタイプなので(笑)、何かあるたびに「これ野音でやったら気持ちいいだろうな」とワクワクしながら想像を膨らませてますね。ここ最近、3人でやるライブは過去一番ハマってる感じがするし、シンプルに楽しいので、そのまんまの空気が当日出せればいいなと思ってます。
7人での「夏の魔物」、待ってます
──今回は鶴の結成20周年をお祝いする企画として、皆さんとゆかりある6組のアーティストの方々に「結成20周年を迎えた鶴の魅力は◯◯だ」「私が好きな鶴の曲。」という2つのお題に答えてもらいました。まずはこちらから。
小笹大輔(Official髭男dism)
結成20周年を迎えた鶴の魅力は
音数の多さではなく、音の解釈の一致から産まれる圧倒的な音圧。
ただタイムが正確に合致しているとかそんな平面的な話ではなく、楽曲やフレーズ毎に誰が前に出て引っ張って誰が後ろで支えるのか、そういった解釈が取り決めなしに常に最高の形で取捨選択されていく美しさ。
その阿吽の呼吸が鶴の音の魅力で、これからも何十周年と時を重ねていくごとに深みを増していく、最強の武器だと思います。
私が好きな鶴の曲。
以前髭男4人+秋野さんという5人編成でカバーさせて頂いた大好きな曲です。
5人居てもコーラスワーク、演奏の再現に四苦八苦しましたが、すごく勉強になるとともに最高に楽しかったです…いつか7人で演奏させてください!
秋野 小笹くん、ありがとう!
──ヒゲダンとの最初の対バンは、彼らが結成2年目の2013年8月、島根県松江市のライブハウスでした。
秋野 まだ彼らが地元の松江にいた頃ですね。ライブハウスの店長が「地元にすごくいいバンドがいるから」って対バンを組んでくれたんです。当時から彼らは鶴のことを知ってくれていて、すぐ仲よくなって。2度目に対バンしたときは、彼らが上京するタイミングでしたね。
──鶴の魅力は「阿吽の呼吸」とのことですが、皆さんとしてはいかがですか?
秋野 今も昔もそんなに意識してなかったんですけど、コメントでいただいた「そういった解釈が取り決めなしに」みたいな、鶴にしか合わないタイム感はどうやら存在するらしいです。
神田 逆に言うとクリックに合わせて演奏するとか、“全員バチバチに合わせる”ことがめっちゃ苦手なんです(笑)。
笠井 すぐほかの楽器に引っ張られるからね(笑)。
──「夏の魔物」のカバーは2016年11月、ヒゲダンが1st EP「What's Going On?」リリースを記念したLINE LIVEに秋野さんがゲスト参加したときに披露されています。
秋野 鶴を広く知ってもらうきっかけになった曲ですね。彼らが東京に出てきたあと、配信設備があるスタジオでライブするってときにゲストで呼んでもらったんですけど、こっちが緊張しました(笑)。当時、藤原(聡)くんに好きなミュージシャンを聞いたらスティーヴィー・ワンダーって答えていたのがすごく印象的で。ああいうソウルミュージックのコード感的に「夏の魔物」はヒゲダンに合ってるのかなと思います。7人での「夏の魔物」、僕らはいつでも待ってます。
終わらないtoフィーバー
──続いてはTHE イナズマ戦隊からボーカルの上中丈弥さん、ドラムの久保裕行さんです。
THE イナズマ戦隊
上中丈弥(Vo)
結成20周年を迎えた鶴の魅力は
諸先輩方、手前味噌ながら我々もそうなのですが、長続きするバンドはほぼほぼ仲良しだと思います。しっかりとした信頼の関係性で成り立ってて、その関係性が生み出すグルーヴがステージを包み込みオーディエンスを包み込むのだと思います。
私が好きな鶴の曲。
対バンした時に衝撃を受けました。ついついテクニカルになってしまいがちな楽曲なのですが、鶴のパワーサウンドがいい塩梅に仕上げてると思います。もちろん彼らはテクニカルなバンドなのですが。大好きです。
久保裕行(Dr)
結成20周年を迎えた鶴の魅力は
音楽愛、楽器愛、バンド愛に溢れていて話してて楽しい!
ライブもその愛を惜しみ無く観る側に注いでくれてハッピーにわいわい出来る。
鶴らしい色んな活動のアイディアは愛を感じずにはいられません!
私が好きな鶴の曲。
「321」はなんか自分が辛いときの救いになってくれた。
「バタフライ」は鶴フェスや鶴と鶴を好きな人を包み込んでくれる。
「ニューワールド」鶴は同じ時代に、同じ時間軸で、自分のそばで音楽を鳴らしてくれてる温かさがあります。
秋野 鶴を結成した2003年にメジャーデビューした大先輩です。
神田 まず、久保さんの言葉からは愛しか感じないよね(笑)。
秋野 “愛”も“仲良しグルーヴ”も、そっくりそのままイナ戦のことです(笑)。最初に会ったとき、久保さんが一番見た目が怖かったんです。イベントの打ち上げの会場が同じ居酒屋で、「イナズマ戦隊さんいるなら挨拶しようよ」って個室に入っていって。
神田 ちょうど向こうが帰るタイミングだったのかな。
秋野 僕らは当時まだアフロヘアーで、打ち上げのときにアフロ3人で「はじめまして」って挨拶したらポカンとされたんです。当たり前なんですけど。
神田 そのときは「怖かったねー」で終わったんですけど(笑)、よく考えると、久保さんは突然の出来事に驚いただけだったんだよね。
秋野 それ以降対バンする機会が増えたんですが、相性がものすごくいいんですよ。お客さん同士も交わってくれて。
笠井 そういえば俺は1回目か2回目の対バンのあと、一緒にサッカーしたなあ。
秋野 鶴が2013年に自主レーベル(Soul Mate Record)を立ち上げたタイミングぐらいから仲よくさせてもらってるんですけど、事務所やメジャーレーベルに所属せずに自力で活動してる僕らのやり方にもすごく興味を持ってくれてます。丈弥くんが言う「長続きするバンドはほぼほぼ仲良し」っていうのはまさにイナ戦そのものです。僕らから見ても、イナ戦は仲良しの空気が出すぎてますね。バンド内でも丈弥くんはガンガンしゃべるし、楽屋でも盛り上げるし、ほかのバンドのステージに出ても全部自分のものにしちゃうし。明らかに出すぎてても、それをメンバーが見て「さすがうちのボーカルや!」って言うんです。君たち全員バカなの?(笑) めっちゃ仲いいんだなって感じますね。
──久保さんは好きな曲を3曲挙げています。「バタフライ」は2019年に鶴の地元・鶴ヶ島市運動公園で開催された鶴主催の野外イベント「鶴フェス」のテーマソングにもなりましたね。
秋野 「バタフライ」は3周目の47都道府県ツアーに向かうときに書いた曲で、最初から「鶴フェス」のテーマソングにしようと思って書いた曲ではなかったんです。でも、曲が完成したら「もうこれ『鶴フェス』の歌じゃん!」と思って。「鶴フェス」にはイナ戦にも出てもらいましたけど、こうして挙げてもらえると僕らの思いをしっかり受け止めてくれたんだなってうれしい気持ちになります。
──上中さんは「踊れないtoフィーバー」を挙げています。
秋野 イナ戦と対バンすると、だいたいこの「踊れないtoフィーバー」で丈弥くんが乱入してくるんですけど、いつまでも終われないんですよ。“終わらないtoフィーバー”というものが生み出されてしまって(笑)。
神田 すごいよね。人のバンドの曲に乱入してきて新しいフォーマット作って帰っていくの(笑)。
秋野 僕らが後攻のときにアンコールに乱入してもらうと、丈弥くんがエンディングを何回も繰り返すから、終電に間に合わないってお客さんたちから何回か苦情来てます(笑)。俺だったら、さすがにしつこいからそろそろやめようと潮時を感じそうだけど、さすが丈弥くんは違うよね。山口百恵さんが引退ライブで歌い終わってマイクを置いた「さよならの向う側」みたいに「潮時の向う側」に行っちゃう人(笑)。
神田 “向う側”に行かないと伝説にならないからね(笑)。
打ちのめされながら対バンできる幸せ
──SCOOBIE DOはメンバー全員からコメントが届きました。
SCOOBIE DO
コヤマシュウ(Vo)
結成20周年を迎えた鶴の魅力は
ロックバンドはせーのででっかい音を鳴らして楽しくてそれで全部。ロックバンドは最高。鶴はロックバンド。やったー! またやろーねー!
私が好きな鶴の曲。
この曲を聴くと「鶴だなぁ。秋野くんと神田くんとどんくんだなぁ」とニンマリ楽しい気持ちになるのです。
マツキタイジロウ(G)
結成20周年を迎えた鶴の魅力は
いつどこで会っても気持ちのいい3人&森田さん。
バンドも社会であり経済でもあると考えれば、気遣いと思いやりがなきゃ続かない。
一人ひとりがそれぞれの一部となりながらステージに上がるとよりデッカく見える鶴にいつも勇気をもらってます。
20周年おめでとう!
また一緒に旅しましょう!
私が好きな鶴の曲。
曲の後半が別の曲みたいに変化して、その後半の部分がめっちゃ好きです。
ナガイケジョー(B)
結成20周年を迎えた鶴の魅力は
3人でのアンサンブルにこだわり続けてきた演奏力&コーラスワークの巧みさ、ソウルメイトを楽しませたいというサービス精神&ユーモア、音楽仲間への惜しみない愛。
すべては彼らの音楽への、そして“鶴であること”への誠実さに尽きるのかなと思います。
私が好きな鶴の曲。
“遠回りしたって 近づいているんだ”という歌詞は
小さな一歩をいつも大事にしている鶴らしいフレーズでいつ聴いてもグッときます。
この曲を掲げて鶴フェス開催へと挑んだ彼らの姿勢とフェス当日に得た感動には、同い年のバンド仲間として誇り(&ちょっぴり嫉妬心)を抱いて、その日の夜はお酒をたくさん飲みました。
オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)
結成20周年を迎えた鶴の魅力は
鳴らす音は勿論そうなんだけど、
いつも正直に思ったことを口に出してくれるし、こちらの話も聞いてくれるし、
アクションとリアクションが屈託ないんですよ、3人が!
私が好きな鶴の曲。
この前、久しぶりに一緒に打ち上げをやったとき、
この曲はバンドがこれからセルフマネジメントでやっていく決意表明でもあり、
ファンの皆さんへのラブレターのような曲、と教えてくれましたよね。
そのことを聞いて、何だか嬉しかったなぁ。
で、ボクは、こうも思いました。
この曲を発表した2013年の時点で、近い将来の7月に(ここ重要)、
都会のど真ん中にあるあの公園で、でっかい音で鳴らすために作ったんじゃないか、
としか思えないんですよ!
ロックンロールのマナーとしては100点満点中100万点!
笠井 コヤマさんの「やったー!」がいいね(笑)。
神田 これもうコヤマさんの気持ちじゃん(笑)。
秋野 僕は20歳ぐらいの頃やってたトラックドライバーのアルバイトのとき、毎日のように延々とSCOOBIE DOを爆音で鳴らして聴いてたんです。ずっと追っかけていた人たちと最初に対バンしたのが2008年、仙台の「MEGA☆ROCKS」というイベントでした。僕らがデビューしたばかりの頃で、スクービーも自主レーベル(CHAMP RECORDS)を始めて間もない時期。今と比べて人を寄せ付けないオーラをすごく感じて、めっちゃ怖かったんです。……さっきからいろんな人を怖がってますよね(笑)。
笠井 向こうはそんなつもりないんです。僕らがビビりなだけで。
秋野 「好きで聴いてました!」って話しかけたいんだけど、ライブを目の当たりにすると音楽の圧とかエネルギーに圧倒されちゃって。
神田 すごくストイックに見えたもんね。もう一生敵わないなって思って。そういう意味で気軽に近寄れなかったんです。恐れ多いというか。SCOOBIE DOは先輩ですが、ベースのジョーくんは同い年なので普通に友達になればいいと思うんですけど、こっちが怖気づいちゃって。
秋野 対バンしたいけど、真っ向勝負はイヤだったよね?
神田 そうそう。だから年1回はスクービーと対バンして修行しようって言ってました。でもようやく最近、自分たちの成長もあるし、40歳を越えて自信というかあきらめというか、「俺らは俺らだし」みたいなふうに思えるようになってきたので、たぶんそういう壁はなくなっていってる感じもします。どうせ敵わないけど、うちらもいいとこあるし、みたいな。
秋野 とはいえ最近はスクービーと対バンしても怖気づかなくなりました。もちろんライブを観るといまだに打ちのめされるんですけど、同時に「こんなに好きなバンドのライブで、毎回打ちのめされながらも一緒に対バンできるって、なんて幸せなことだろう」って。つい先日も大阪で一緒にやって、そう思いました。
──恒例のツーマンライブ「SCOOBIE TSURU」も全県制覇の勢いですね。
秋野 うれしいことに、僕らがスクービーとの対バンに怖気づいてた時代も、スクービーのお客さんはすごく反応してくれるんです。そういえば僕らが自主レーベルを始めるときも、コヤマさんとMOBYさんに相談しました。コヤマさんはラーメン食べながら「やりたいようにやったらいいんじゃない?」って感じでしたけど(笑)。
神田 この間も野音に向けて経験者の話を聞きたくて「こんな内容を考えてるんだけど、どう?」って話をしたんです。そしたらいろんなアドバイスこそしてくれるものの、最終的には「まあ、好きにやったら?」って(笑)。
笠井 バンドのスタイルがプロフェッショナルなんですよね。入りからショーみたいな感じで仕上がってるんです。役割分担がきれいに決まっていて無駄な動きがない。スクービーみたいな、ステージに上がった瞬間パーッて花開く感じに憧れて「うちらもテキパキやろうよ」ってがんばった時期もあるんですよ。続かなかったですけど(笑)。
神田 それくらい影響をもろに受けてる。
──好きな曲についてもメンバーそれぞれの個性が出てますね。
神田 言葉に愛とセンスを感じますね。ちなみにコヤマさんが挙げてくれた「本当は泣き虫」という曲のベースを作るとき、俺は完全にジョーくんの音数の多いおしゃべりなベースを意識してました。
秋野 愛すべき先輩として、これからもずっと追い回したいと思ってるんで、今後もSCOOBIE DOとして走り続けてほしいなと思います。