群雄割拠のメンズアイドルシーン。メジャーからインディーズまでさまざまなグループが存在する中で、ほかにはない個性を持つことは重要だ。甘党男子はその名の通り、お菓子が大好きな男子6人からなる。しかし彼らは単なるキャラ付けとしての「お菓子好き」ではない。むしろ「日本全国でお菓子を配る」ことが主目的であり、その目的のためにアイドル活動を行っているのだ。
音楽ナタリー初登場となるこの特集では、甘党男子にとって大きな飛躍の年となった2024年の活動をおさらい。初のZeppツアー、初の全国流通CDリリースと波に乗る6人の“年末大反省会”を大晦日に掲載する。2025年のさらなる飛躍に向け、彼らが今考えていることとは?
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 臼杵成晃
お菓子配りのプロとしてやらせてもらってます
──音楽ナタリー初登場ということなので、まず簡単に自己紹介をお願いします。
二ノ宮一馬 はい! アイムキャンディ! キャンディ大好き、一応リーダーやらせてもらってます二ノ宮一馬です。みんなからはポンコツだと言われていまして、背中を押してもらうタイプのリーダーです。よろしくお願いします!
石塚利彦 シュークリーム大好き、石塚利彦です。グループの最年少やらせてもらってます。
神久保翔也 おいおい!
二ノ宮 逆、逆! 最年長でしょ。長老(笑)。
石塚 最年長、41歳の石塚です。よろしくお願いします。
三上義貴 アイス大好き、三上義貴です。今年1年は「モテたい」をテーマにやってきたんですけども、あんまりモテなかったので、もっと縁起のいい男になれるようがんばっていきたいと思っております。
神久保 たい焼き大好き、青色の神久保翔也と申します。甘党男子内では一番の田舎育ちです。
成瀬敦志 お団子大好き、成瀬敦志です。最年少でかわいい担当のあっしーです。よろしくお願いします。
神久保 こっちの「最年少」は本当です。声も高いです。
菅井義久 パンから生まれたパン太郎、菓子パン大好き菅井義久です! 僕はイジられキャラと、あとギャグ担当をやっています。
二ノ宮 「ギャグ担当」は聞いたことないんだけど(笑)。
神久保 「イジられ担当」は合ってます。
──ありがとうございます。そんな皆さんはもともとアイドル志望で集まったのではなく、「スイーツを世に広めたい」という志のもとに集結した人たちなんだそうですね。
神久保 スイーツ関連の催事でMCの権利がもらえる「スイーツ&スマイルコンテスト」というものがありまして、僕らはその参加者だったんです。そのときに「なんか今回のファイナリスト、面白いかも」「ちょっと歌を歌ってみようか」って主催の方が言い出して始まったのがこの甘党男子でして、そもそもアイドルとして集められたグループではないんですよ。そこから「スイーツの歌を歌って、皆さんにお菓子の喜びを届けていこう」というコンセプトで活動を重ねていくうちに、少しずつアイドルみたいになっていった感じです。
三上 今はもう“お菓子配りアイドル”と呼ばれるくらい、お菓子を配らせたら世界で一番うまいアイドルグループになりました。
二ノ宮 お菓子配りのプロをやらせてもらってます。
──そうなると、「なんで俺たち歌って踊ってるんだろう?」と感じながら活動していた時期もあったわけですか?
石塚 それは最初から今までずっとそうです。
二ノ宮 え、今でも?(笑)
石塚 ときどき思います。はい。
二ノ宮 やっぱり歌って踊るつもりでこの世界に入ってきていないので、パフォーマンス中に間奏で何してたらいいか最初はわからなかったんですよ。そこで「間奏中にお菓子を配る」という発想になったところから“お菓子配りアイドル”の形が定まり始めたっていう。
三上 ただ、徐々に活動を重ねていく中で「お前ら、お菓子配りに頼りすぎていて歌もダンスもヘタだな」って言われるようになってきたりして。
二ノ宮 レッスンで先生にハッキリ言われてましたね。「お菓子配りに逃げるな」「パフォーマンスにちゃんと向き合え」みたいな。
石塚 でも僕らは「嫌だ!」って(笑)。あくまで「お菓子配りがしたいんだ!」と思ってました。
神久保 「お菓子を配りたくてやってるのに、なんでダンスでこんなに怒られなきゃいけないんだ?」って、僕は逆ギレしてましたね。
──その意識が変わったタイミングはあったんですか?
三上 時期で言うと、コロナ禍で少しずつ意識が変わりました。
神久保 コロナの時期に「お菓子配っちゃダメ」って言われたんですよ。お菓子を配るための活動なのに、ライブに呼ばれても「コロナ禍なんでお菓子は配らないでください」と言われるようになって。
石塚 本来の目的を封じられちゃったんですよね。
三上 あの時期はヤバかったよね。
神久保 僕らからすると翼をもぎ取られたみたいな感覚だったんですけど、リーダーが「もう耐えるしかないから、1回パフォーマンスを磨くほうに集中しよう」って。
二ノ宮 そこで初めて「ちゃんとアイドルをやらなきゃいけない」という時期に差しかかった感じですね。
石塚 「バレた!」って思いました。
一同 ギャハハハハ!
二ノ宮 お菓子配り以外まともにできないことがそこでバレた(笑)。
成瀬 そういう状況になったことで、そもそもアイドルを続けるか続けないかもみんな考えたと思うんですよ。そこで僕らは甘党男子を続けることを自分の意思で選択したわけなので、それがコロナ禍前後で一番変わったところだと思います。活動に対する気持ちの部分ですね。
菅井 同時に、僕らの武器というものを再認識する期間でもありました。「お菓子を配る」なんて、言うなれば誰にでもできることじゃないですか。それを僕らはお菓子の歌を歌いながらできる、なおかつこれだけの人数に配ることができるんだぞ、というものを世間に知らしめたい気持ちが芽生えてきて。
石塚 実際にパフォーマンス力が上がれば集客が増えるし、そうなればより多くのお菓子を配れるんですよ。コロナ明けはその相乗効果を実感できた期間でしたね。
神久保 なぜアイドルとしてのスキルアップが必要なのかを、やっと自分たちで理解できたんです。
お菓子の誤発注事件
──そうやって着実に“お菓子配りアイドル”としての完成度を上げてきた皆さんですが、今年はZeppツアー開催や初の全国流通盤「あまだんスイーツボックス」リリースなど、大きな出来事の多い1年になりましたね。
神久保 「あまだんスイーツボックス」はタイトル通り、本当に甘党男子のいろんな面が詰まった箱のような作品になってるなという感じがします。
石塚 なんか甘党男子には「CDを出さない人たち」ってイメージがいつの間にかついていたみたいで、リリースを発表したときはすごくびっくりされました(笑)。甘党男子の楽しさが詰め込まれた、すごくいい作品になったんじゃないかなと思いますね。
菅井 今までにやってこなかった感じの大人っぽい楽曲もあったりして、子供から大人まで楽しめるアルバムになっています。
三上 甘党男子の今と昔がちゃんと詰まってるCDだなというのは感じますね。
神久保 今年はそのCDリリースも含めて、けっこう初めてのことが多くて。海外に行ったのも初めてでしたし。
石塚 アルバムにも入っている「シャーベット」という曲は、岐阜県の高校野球中継テーマソングに採用していただいたんですよ。すげえことが起きてる!って思いました。
神久保 Bリーグ・ファイティングイーグルス名古屋さんのハーフタイムショーに出させてもらったりもしたしね。あと僕個人としては、地元の岩手県軽米町で初めてライブができたのもうれしかったし……コロナもあって、あんまりトピックが作れていなかった数年を経て、今年はキャッチーなトピックがバババッと続いた感覚はありますね。
三上 ナタリーさんに初登場とかね。
二ノ宮 最新で言うとそれだね(笑)。今までやってきたことが、本当にちょっとずつ実になってきた1年でした。甘党男子に関わってくださった方々との輪が、大きく強くなってきた。
菅井 それを僕たちは“甘党の輪”って呼んでるんですけど。
三上 その“甘党の輪”を名付けてくれたのは、今僕らがお世話になっているサンミュージック名古屋の社長、和田さんです。
二ノ宮 ありがとうございます! 社長!
神久保 でもその社長が、5月にお菓子の誤発注という大事件を起こしたんです(笑)。
石塚 それも今年の大きなトピック(笑)。僕らが配るためのお菓子を発注するときに、3カ月で配る分として9000個を頼んだつもりが、桁を間違えて9万個届くという。
──コントの入りみたいなお話ですね。
石塚 ホントですよね(笑)。賞味期限もあるし、どうにか配り切るしかないと。僕らとしては「こんなに配れるなんてうれしい」という気持ちだったんですけど……。
二ノ宮 最初はね(笑)。
石塚 いざフタを開けてみたら、真夏に9万個のお菓子を配るなんてとんでもない話だった(笑)。
三上 どう計算してもライブだけで配りきれる数じゃないんで、「毎日街頭で配るか」という話になって。
石塚 ひさびさにシフトというものを組みました。
三上 まさか休みがなくなるとは思わなかったです(笑)。メンバーはみんなそれぞれ役者業とかお笑いとかラジオとか、グループ以外の仕事もしていたりするので。でもどうにか、3カ月かからずに配り終えることができて……。
石塚 いやいや、違う。「これ、長引かせるのは危険だ」と思ったからギアを上げたんですよ。1人2、3時間はいけるかなと思ってたら、真夏の炎天下では1時間半で限界だってことがわかって。
三上 その分、短時間でたくさん配れるスキルをどんどん身に付けて。最初は「1日500個とか配れたらいいよね」って話してたんですけど、最終的に1日3000個配れるようになってましたから。
──本来の発注量であれば1カ月で配るはずだった数字を、1日で?
二ノ宮 そうなんですよ! 「こういうやり方がよさそうだぞ」とか「あの場所が狙い目かも」とみんなで情報を共有しながら。
神久保 「今、波来てるから気合い入れろ!」とか。
石塚 配る場所も自分たちで選んだんですよ。新大久保あたりによく行かせてもらったりするんですけど、僕らが始めた頃は何かを配ってる人が全然見当たらなかったのに、最近増えてる。僕らが新大久保の新しいトレンドを生み出したのかなって(笑)。
菅井 時代を作っちゃったかもね。
石塚 今思えば、いい経験でしたね。2023年の10月からホームページに配布数実績を載せているんですけど、それが夏場のがんばりで10万個を突破したんですよ。それによって「ちゃんとお菓子を配っている人たち」みたいな見え方にはなったのかなって。誤発注のおかげで(笑)。
神久保 僕はまだ許してないですけどね。
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いかに大会場でお菓子を配るか問題