ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。
第56回は
文
地元民の協力で、世紀末の世界をリアルに表現
「ゾンビ映画」の中で3本の指に入る僕のお薦め映画。この作品は2002年に本国で公開され、「トレインスポッティング」などを手掛けた
「28日後...」がゾンビ映画として人気を誇っているのは、やはり俊足ゾンビが登場したことが理由だろう。これまで走るゾンビが登場する映画はあったが、狂暴性に溢れ、韋駄天走りするゾンビは見たことない。世の中に「走るゾンビ」を定着させた映画ではないだろうか。僕もこの映画で走るゾンビに出会い、更にゾンビ映画の深層世界に誘われた。そして、感染系ホラー映画というカテゴライズなだけあって、ホラー要素も多彩で、突如現れるゾンビの演出や、走るゾンビを明確に見せず、壁や道路にゾンビの影を映し出すといった手法などで、鑑賞者の心拍数を上げる演出がちりばめられている。それに加えて、劇中で流れる不安や恐怖を煽るサウンドもまたいい。ボイル監督のこだわりが詰まった珠玉のゾンビ映画だ。
あらすじ等は割愛するが、この作品は低予算であり、イギリスの地元民の協力があって作られた。「28日後...」で印象的なのは、誰もいないロンドンの街をジムが歩くシーンではないだろうか。最初観た時は合成で消しているのだと思ったが、後で調べてみると早朝に街を封鎖して撮ったのだとか。映画制作に寛容な地元民の力で、世紀末の世界観がリアルに感じられる。低予算映画は地元民の協力無くしては撮れないだろう。
大半のゾンビ映画は、ゾンビから逃走し、戦うといったサバイバル要素を中心とする中、「28日後...」はロードムービーの要素があると思った。それは、主人公達と共に移り変わっていく街の雰囲気や、登場人物達の行動や心情が、常に前へ前へと進んでいるからだ。その背景には「俊足ゾンビ」の影響が大きくあるだろう。鈍足ゾンビだったらこうはならない。あいつらが必死に追いかけてくる限り、前進しなければならない。ジム達は安住の地を見つける事ができるのか。そして「28週後...」へと続いていく。是非、過酷なゾンビロードムービーを堪能して貰いたい。
磯村勇斗(イソムラハヤト)
1992年9月11日生まれ、静岡県出身。特撮ドラマ「仮面ライダーゴースト」のアラン / 仮面ライダーネクロム役、連続ドラマ小説「ひよっこ」でヒロインの夫となる役を演じ脚光を浴びる。出演したドラマ「きのう何食べた? season2」が現在放送中で、映画「月」「正欲」も公開中。またドラマ「サ道2023SP」が12月24日にオンエア、「不適切にもほどがある!」が1月に放送スタートする。2024年には主演映画「若き見知らぬ者たち」が公開。
「28日後...」(2002年製作)
英ロンドンで、1滴の血液で感染し、精神を破壊する新種のウイルスが漏洩。ウイルスによって激しい怒りに支配された感染者は、人間の声を聞いただけで相手を殺そうと襲いかかるのだった。それから28日後、ジムは病院の集中治療室で昏睡状態から目覚め、生き残った非感染者たちとともに車を走らせるのだが……。
「トレインスポッティング」のダニー・ボイルが監督を務め、キリアン・マーフィー、
「28日後…」Blu-ray発売・販売中、デジタル配信中(購入 / レンタル)
税込価格:Blu-ray 2096円
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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