グローバルで開発を行うAI開発企業が GitHub Enterprise Cloudを導入。全社統一の開発環境でソースコード管理を厳格化し情報漏えいリスクの回避と生産性強化、意思疎通の向上を実現。
✔ プライベートリポジトリのアクセス制限を細かく設定し情報漏えいリスクを回避 ✔ Pull Requestで遠隔地間のリモート開発のコミュニケーションを活発化 ✔ チャットや管理ツールなどの連携性を活かしてシステム開発の複雑化に対応 ✔ 海外拠点とのコラボレーションをGitHubで促進
AWL株式会社(以下、AWL)は、将来の産業を再定義する可能性を持つ AI(人工知能)と、知恵・洞察・学問のシンボルである OWL(フクロウ)を組み合わせた独自の造語を2019年3月から新社名に取り入れている。2016年にAI開発を専門とするスタートアップとして設立した同社は、東京、札幌、ベトナム・ハノイの3拠点で開発を推進し、14カ国から参集したスタッフで構成されたグローバルテックカンパニーとして急成長を遂げている。
注目は、北海道を中心にドラッグストアチェーンを展開するサツドラホールディングス株式会社とともに実証実験を重ねてきた「A Iカメラソリューション」だ。特徴は、小売や量販店など幅広く利活用可能な汎用性と、安価な初期導入・月額費用で豊富な機能を活用できる点にある。それを可能にしたノウハウは2つ。1つは、専用ハードウェア「AWLボックス」の開発だ。同社はソフトウェアだけではなく、ハードウェアでディープラーニングやAIを実行する技術も並行して開発を進め、それによりコストの削減に成功している。もう1つは、店舗内に設置された既存の防犯カメラの活用。高額なAI専用カメラに交換する必要はなく、AWLボックスを防犯カメラが接続しているネットワーク機器につなぐだけで、AIによる画像解析が実行できる。
このAIカメラソリューションによって、万引き・不正行動の抑止や、来店者の店舗内行動分析、購買者属性分析などのマーケティング支援、サイネージを活用した情報提供などの販売活動支援、従業員の就業状況や職種ミスマッチ検知などの働き方最適化などの実現をめざすという。
こうした最先端のAIと周辺技術の開発を支えているのが、「GitHub Enterprise Cloud」(以下、GitHub)だ。
「当社では、2017年に札幌の開発拠点を開設したのを機に、A Iの開発が本格化しましたが、即戦力として活躍できるAIエンジニアが逼迫しており、国内では必要な人員が確保できません。そこで広く海外にも目を向け、優秀な人材を積極的に採用して、現在は多国籍企業として開発を進めています。その中で、ソースコード管理が非常に重要となることから、GitHubに注目しました」と語るのは、AWL チーフソリューションエンジニア 氏家 要氏だ。
GitHubはソースコード管理の世界的なデファクトスタンダードであり、継続的に新技術がアップデートされかつ可用性が高く、エンジニアファーストの視点で作り込まれているため、外国人スタッフからも受け入れられやすいと氏家氏は考えたという。
一方、AWL シニア開発マネージャー 半澤 寛典氏は、会社の多国籍化に加え、協力会社のスタッフと共同作業する機会も多くなってきたことから、全社統一の開発環境でソースコード管理を厳密におこなう必要性を感じていたと語る。「GitHubには以前から注目していましたが、例えば全リポジトリへのセキュリティポリシー適用や、パブリックリポジトリへのアクセス制限、無許可でのパブリックリポジトリへの切り替えの禁止など、企業が必要とするレベルのセキュリティ機能が強化された、エンタープライズプランが望ましいと考えていました」(半澤氏)
AWLでは、2019年の春頃から、情報セキュリティ管理部門と、GitHubに知見を持つエンジニアが中心となって導入の検討を開始した。
GitHub以外のツールも広く調査していたのは、AWL シニアAIエンジニア 史 興氏だ。「同じGit系でGitLabなど他のツールも検討しましたが、使い勝手は変わらないものの、クラウド版は安定性に欠け、たびたび大きなエラーが発生するなど、企業で活用するには社内にサーバーを立てて運用するしかなく、手間とコストを考えると採用には至りませんでした」(史氏)
そして、2019年 8月、正式にGitHubの導入が決定した。AWLでは、ベトナムオフィスでA Iの基礎技術を研究開発し、札幌オフィスではそのA Iコア技術を製品に組み込むエンジンを開発し、店舗のリアルなデータで活用できるようにする。そしてそれを東京本社に持ち込み、フロントエンドで活用できるようにデザインし、サービスとして提供するという流れを作っている。GitHubはその開発プラットフォームとして活用している。
GitHubの活用開始からまだ日は浅いが、すでにいくつかのメリットが確認されているという。
1つ目は、情報漏えいリスクの回避。GitHubではプライベートリポジトリのアクセス制限を細かく設定でき、仮にうっかりミスなどがあっても情報漏洩のリスクが回避可能なため、エンジニアの不安要素を取り除くことにもつながるという。また、部署やプロジェクトといった単位で Teamを追加しておけばリポジトリごとにRead/Write/Adminの権限を設定することができるので、協力会社と正社員の権限も明確になっている。
2つ目は、Pull Requestの効用。開発では海外の協力会社とも同時並行でコラボレーションが進んでいくため、Pull Requestの開発生産性が改めて認識されているという。「Pull Requestを介することでソースコードレビューがしやすくなるとともに、機能のマージも容易になりました。遠隔地間のリモート開発ではお互いに密なコミュニケーションが困難になりがちですが、Pull Requestを使えばコミュニケーションも今まで以上に活発になっていると感じています」と氏家氏はいう。
3つ目は、連携性の高さ。現在、GitHubにはWebhook(URLへの POSTリクエスト)や、Slack、Chatworkなどのチャットツール、OpenProject(プロジェクト管理ツール)のほか、AIシステム開発の成果物であるモデルとソースコードを一体的に管理する社内サービスなどが連携している。半澤氏は、「今後さらにシステムも大きく、複雑になるため、 CI/CD(継続的インテグレーション/デリバリー)も自動化していく必要があります。それを考えると、連携する機能が多いことは望ましく思います」と述べる。
4つ目は、意思疎通の向上。ベトナムオフィスとは英語でやり取りするが、細かいルールを設定して説明する必要があり、それが若干壁になっていた面もあった。しかし現在は GitHubによってエンジニア同士の共通認識が促進されているという。「AI開発においては多くのメンバーが関わるので、コミュニケーションや意思疎通は非常に重要です。以前は海外との情報の受け渡しがスムーズではない面もありましたが、今は『GitHubで開発を進めよう』の一言で伝わるのはうれしいですね。GitHubのような世界共通のツールを使えるようになった効果は大きいと実感しています」と史氏は評価する。
今後 AWLでは、GitHubを中核に、社員やビジネス規模の増加に対応できる自動化や生産性向上の仕組みを段階的に強化していくという。また、SAML認証によるシングルサインオンの導入が可能になったため、Active Directoryの整備とともに、ユーザーアカウント一元化とID管理の効率化をすすめていく考えだ。さらに、将来的にはGitHub Actionsの導入も視野に入れ、CI/CDのさらなる強化をめざすという。
「当社はまだGitHubの機能を十分に使いこなしてはおらず、他のシステムとの連携や自動化もまだ道半ばなので、それを推し進めるためのサポートと情報提供をこれからもギットハブ・ジャパンには期待しています」と半澤氏は語る。
普及期に入り競争が激化するAI開発レースに、日本発の多国籍企業として一石を投じた AWL。その潜在力の高さとアプローチのユニークさに業界の視線は熱い。
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