ボディピアス

「私は長年、何の理由もなく苦痛の伴う手術を人々がどうして行うのか納得できませんでした。

　しかし女性の多くが、より大きな愛のために苦痛を受け入れているという結論に至ったのです。

　ピアスを開けた女性は、そうでない人より美しいと発見しました。

　疑いの解けた私自身もピアスを開けました。傷が癒え、リングを通したのです。

　すると不快感や苦痛はなく、擦れ、滑る感覚が非常な喜びを与えるのです。

　同僚たちもこの話をした私に同意しました。」

―ファッション雑誌『VOGUE』より

本来、ボディピアスは身体の穿孔(開けられた穴)という意味になり、英語圏においては耳を含め、全てのピアスを指す。

しかし日本においては耳以外の穿孔手術、及びその装飾品を指す方が定着している向きがある。

ピアスは割礼、刺青に並んで肉体改造の一種に数えられている。

世界で最も広く知られているピアスは、耳と鼻とされている。

又、インプラント治療により、ピアスを固定する場所を増やすという手術も確立されている。

現在、学術的に信頼出来る情報が少なく、誤った情報も見られる為、ピアスの歴史は分かっていない。

最も古いと考えられるのはエジプトのミイラに施された耳の穿孔手術と装飾品であり、舌、唇、乳首、ヘソ、性器等、様々な地域で行われていたと信じられている。

しかし、その後、キリスト教やイスラム教の拡大により、この様な民族固有の文化が急速に委縮し、第2次世界大戦後に再びファッションとして流行する迄の実態を掴む事はできなくなっている。

1970年頃にアメリカにおいて異文化に対する憧れからピアスはファッションとして広まったと見られている。

ピアスを着ける動機は、様々なケースがある。

• 宗教的儀式
• 霊的な理由
• 自己表現
• 美的感覚
• 性の悦び

いずれにしても自分の所属する集団に対する臣従、あるいは反抗の意志表明である。

これはピアスの様な肉体改造が学校や雇用者、宗教団体等によって議論の対象となっている事から避けられない問題である。

つまり現代社会にピアスを認める集団と認めない集団があり、ピアスを開けるという行為は、明確にどちらかに属するかを宣言する事に繋がるからである。

装飾品(ボディピアスジュエリー)には、アレルギー反応の起こり難い物が好ましいと考えられ、古代では金が用いられた。

しかし金は非常に柔らかい素材である為、僅かな力で損傷し、ピアスに傷がついて、それがピアス穴を傷つける危険がある。

特に噛む危険がある舌ピアスには相応しくない。

そこで現在では金合金で作られ、多くはパラジウム、ホワイトゴールドが使われているが、亜鉛やニッケル等のアレルギー物質が使用されている物もある。

金の利点は、アレルギーが起こらない点であり、最低でも純度は18K以上が好ましいとされている。

他の金属ではステンレス鋼、ニオブニウム、チタンが一般的に使用され、特にチタンがアレルギー反応が起こり難い為、より良い選択と考えられる。

最も好ましい選択はプラチナやパラジウムで作られたピアスである。

逆に最も避けなければならないのは、複数の金属を組み合わせた物で種類が増えれば、それだけリスクが増える事になるので注意しなければならない。

特にニッケルのアレルギーが警告されている。

下等なピアスは銀メッキが施された金属を使用している場合があり、これらはすぐに変色し、身体にも悪影響がある。

他に銀、青銅(ブロンズ)製のピアスも古い歴史がある。

しかし銀は銀中毒になる危険があり、口、鼻、性器等は避けなければならない。

又、青銅はピアス穴の周りが緑色に変色してしまう問題がある。

プラスチックを用いた装飾品、傷口が塞がる迄の緩衝材は、インプラント等にも使用されてきた。

ポリマー素材は軽く、アレルギーの心配も少ないが吸水性があり、残留物等が感染症を起こす危険がある。

アクリル(プレキシガラス)は、70度以上で加熱殺菌出来ず、ピアス穴との摩擦で怪我する人もおり、皮膚炎等も発生した。

20世紀後半に入り、原爆実験等でも大きな役割を果たしたテフロン(PTFE)は、薬品などの保存にも使用される安定した素材であり、加工し易い事もあって一般的である。

自然由来の素材としては、木材、琥珀、象牙等の骨を加工した装飾品が作られている。

これらは金属製の物と違い、冷たくならないという利点がある。

特に琥珀は琥珀色に代表される黄色だけでなく白や緑、黒っぽい物や複数の色が混じり合った物、中に昆虫や植物が入っている物もあり、多彩を極め、個性的である。

しかし温度・湿度変化で破損する危険性があり、過熱による殺菌にも適していないという欠点がある。

又、十分に研磨されていないと滑りが悪く、怪我の元になる。

さらに木材は植物の種類によってはアレルギーが起こり、骨や角、象牙等は細かな隙間に雑菌が入り込むという危険がある。

特に木材は、水を吸うと質が悪くなり、光沢が失われてしまう。

しかも象牙等は非合法な手段で製造された物も多い。

ガラス製、セラミック製のピアスは、有害な金属を含まず、ちゃんとした成形がなされた製品であれば十分な耐久性がある。

ただし、破損の危険性は金属製の物より高いことが指摘されている。

いずれの素材にしても国により最低規格が定められており、表面仕上げやプレスフィットのネジ山の位置等が法律で定められている。

輸入品は当然、国によって規格が異なるため注意が必要となる。

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