黒歴史 単語

黒歴史（くろれきし）とは、

1. アニメ「∀ガンダム」に出てくる用語。『正歴』以前の宇宙戦争の歴史を指す。
2. また、上記の意味より転じたインターネット用語。無かった事にしたい作品や恥ずかしい思い出、忘れたい過去などの意味で使われている。

本稿では１と２を同時に解説する。

概要

黒歴史とは『∀ガンダム』に登場した用語で、本作の表舞台から葬られていた過去の文明・歴史のこと。
この単語が登場したのは1999年の事である。

また歴史から抹消された過去の宇宙戦争の歴史を指し、それが転じてインターネット上などでは消したい過去を表わすようになる。
インターネット用語の「黒歴史」が使われるようになったのは2000年代初期のことで「萌え」というオタク用語が流行りだした時期と重なる。

∀ガンダムの黒歴史

『∀ガンダム』は『機動戦士ガンダム』に始まるガンダムシリーズの歴史の遠い未来の物語だった。
この設定は当時業界に大きな衝撃を与えた。現在のガンダム業界でも度々話題にされる。

ガンダムを見たことの無い人にとってはあまりピンとこないかもしれないが、ガンダムという作品は最初の宇宙世紀を舞台にした『機動戦士ガンダム』、それと同じ世界の話である続編やサイドストーリーが展開している。これが宇宙世紀シリーズと呼ばれる作品群である。

次第に宇宙世紀と異なる世界観の新たなTVシリーズのガンダムが台頭。その第一作が『機動武闘伝Gガンダム』。ガンダムをガンダムファイトというコロニー国家間の代理戦争で用い、そのぶっ飛んだ演出や世界観と共に“ガンダムをぶち壊したガンダム”としてよく知られ、人気を博している作品である。

次にまた異なる世界の『新機動戦記ガンダムW』 『機動新世紀ガンダムX』と、宇宙世紀と切り離した作品が展開されてきた。G、W、Xの三つは「アナザー三部作」と呼ばれる。

これらの作品は宇宙世紀を含めて互いの世界と無関係と思われていたが、『∀ガンダム』においては全て同じ世界の出来事であった。

そして『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダム00』『機動戦士ガンダムAGE』はもちろん、今後作られるであろうガンダム作品も全て黒歴史に包括するものとされている。これは2014年に発売されたMS「ターンＸ」のキット解説書の記述だが、文中ではビルドファイターズ等のガンプラ作品は含まないとも言われており、SDガンダムの扱いなどは不透明なままである。

∀ガンダムの作中に登場する「冬の宮殿」に残されていた黒歴史の記録では、他のガンダム作品の映像が保存されていてそれは地球の人々にとっては神話のようなものだった。

∀ガンダムの世界は正暦（西暦ではない）という年号を用いており、この正暦以外のガンダムシリーズの歴史を「黒歴史」として捉えている（なお、ここでは黒歴史に当てはまる全ての時代が「宇宙世紀」とひっくるめられている）。つまり、最初の機動戦士ガンダムを始めとする宇宙世紀シリーズも黒歴史、機動武闘伝Gガンダムも黒歴史、新機動戦記ガンダムWも黒歴史・・・とガンダム世界が黒歴史として扱われている。
それら他のガンダム作品とガンダム作品の間にはどれぐらいの長い期間が開いているかは明確にされていないが、相当な時代の開きがあることは確かである。

また、∀ガンダムの作中での「黒歴史」という単語は決して悪い意味ばかりで使われている単語ではなく、
「消されてしまったが忘れてはならない過去の戦争の歴史」
「繰り返してはならない古代戦争の歴史」
という意味でも使われている。

黒歴史に至るまでの経緯

上記の世界がなぜ“黒歴史”と呼ばれるのか。

人類は他の恒星系への移民を達成し、「空間跳躍技術」「超空間交通システム」「ナノテクノロジー」等に代表される超高度文明を築いていた（過去にはそれらを利用、妨害した「DG細胞災害」「超空間擾乱」と呼ばれるテロ、戦乱、災害も起きていたようである）。

話を戻すとかつて地球から外宇宙へと旅立った「スペースノイド（宇宙移民者）」「ニュータイプ（特殊な脳波を発する者）」と呼ばれる者達が存在した。詳細は不明ながらスペースノイドがニュータイプ用に開発したと考えられる一機のモビルスーツが外宇宙から地球圏へと流れ着いた。
モビルスーツは現在「ターンX」として知られる機体で、地球圏に住む者にとっては遥か先を往く技術が使われたオーバーテクノロジー機であった。

未知なる技術は外宇宙の脅威を感じさせるには充分だったのだろう。当時の地球の人々は万が一の事態に備えてターンXの技術を解析して「∀ガンダム」というお髭のモビルスーツを製造した。結果的に言うと想定された外宇宙からの侵略はなかったようだが、二機はお互い敵味方に分かれ人類同士が起こした戦争において投入。地球側と月に隔離された者達の戦争は長きに渡り、正暦の世では最終戦争「アーマゲドン」と呼称された。

この最終戦争で人類の超高度文明は一度滅びる。最終戦争で地球文明を塵に還した力の正体はターンエーやターンXに採用された特殊なプログラムを持つナノマシン、「月光蝶」と呼ばれるシステムである。

無数に散布したナノマシンは地球文明を分子レベルに分解、ナノマシンによってあらゆる科学技術は衰退した。だが皮肉にも科学技術が地球に悪影響を及ぼす科学を消滅させた事で、地球は緩やかに再生しつつあった。

人類は後退したが「黒歴史」としてこれまでの過去を封印し、再生に向かう地球と見守る月と共に「正暦」という新たな歴史の時代に生きた。

参考：「全記録集（2巻）」「電撃データコレクション20」「MGターンX説明書」。

∀ガンダムの「∀」の意味

「∀」は「全て」という意味の数学記号で（本来はターンエーとは読まない）、「∀ガンダム」とは「全てのガンダムを肯定する」という意味のタイトルだった。

と同時に、∀ガンダムは文明の最後に現れたガンダムであり、以降に作られる「ガンダム」シリーズも全て黒歴史に含むという意味でもあった。∀ガンダムのキャラクターデザインを手掛けたあきまん（安田朗）もこの見解であり、∀ガンダム以後に放映された『機動戦士ガンダムSEED』のコズミック・イラも自身の漫画の中で黒歴史に含むとした。
（もともとコズミック・イラにはコアファイターらしきものが存在している設定があり、当初より黒歴史を意識していた形跡がある）
あきまんによれば、富野監督によってSDガンダムのようなものも∀ガンダムに登場させる案があったとか。

このように全てのガンダムと名前の付く作品は黒歴史と正暦で繋がっていると考えられる。そういった意味では、様々なメディアを通じて作品を重ねてきたことで生まれた「○○ガンダムはガンダムじゃない」というファン同士の論争に対する解答と言えるかもしれない。
もっとも、「西暦」が舞台のガンダム00を黒歴史に含んでいいのか、とか、SDガンダムを黒歴史に含む派と含まない派の対立など、たいがい別の論争の種になったのだが。

はじまりのG

TVアニメ『ガンダム Gのレコンギスタ』のリギルド・センチュリーは、『夜のG-レコ研究会』にて富野監督直々に『∀ガンダム』の未来を想定して製作した、とする胸中が語られた。
ただしあくまでも構想に過ぎず、富野監督個人にはガンダムの全てを決定する権限は与えられていない。

同座談会に参加したサンライズPによると、Gのレコンギスタが今後どういう扱いになるのかは整理がついておらず、何らかの機会に発表する可能性はあると語っている。

現在の宇宙世紀ガンダムの世界観も本をただすとミノフスキー粒子という重要な根幹設定の後付けから始まり、そこから歴史の合間を縫っていくように付け足された設定や、整合性を取る為の後付けが大部分を占める。
また時間移動やら異世界やらメビウス銀河やらの設定がパズルのピースのように散在したSDガンダム（騎士・武者・コマンド）等も近年復刻されたコンプリートBOXで設定が整理されたという事実がある。

黒歴史についても、恐らく機会に恵まれれば公式に決まると見られる。