SCAR(スカー)とは、 |
1960年代より今日までアメリカ軍等で使用され続けているM16、M4シリーズを更新する、いわゆる次世代ライフルになるはずだった銃。
特徴・スペック
SCARは「特殊部隊用戦闘アサルトライフル (Special operations forces Combat Assault Rifle)」の略だが、下述の通りアサルトライフルとしてだけでなく様々な形態として運用でき、また主力ライフルとしての運用を目指したものであるため、若干その名に偽りありである。かっこいいけど。
現在の対応弾薬は5.56mmNATO弾および7.62mmNATO弾。
使用弾薬ごとに「SCAR-L(ライト)」、「SCAR-H(ヘビー)」の名前が付けられている。
また、現在米軍で開発中の6.8mm弾への対応も予定されている。
レシーバーの芯やボルト、バレル等を除いた素材のほとんどを、軽量だが軍務に耐えうる強化樹脂製とし、動作機構には信頼性が高く反動も軽減しやすいショートストローク・ガスピストン+ターンボルトロッキングを採用。外装の上部はフル・フラット20mmレイル化してあらゆる照準器に対応し、側面、下部にもレイルを備え拡張性を高めている。銃床は大きな肩当に伸縮機構を持ち、頬当て部も2段階で高さを変えられるため、おおよその体系・光学機器に対応できる。折りたたみ式でたたんだ状態での射撃も可能。
言ってしまえば、特に変わった事はせず、しかしひたすらに銃に求められる要件をきっちりクリアした銃である。
本銃の特徴として高い汎用性、というか可変能力が挙げられる。
上述の通り基本モデルだけでも5.56mmと7.62mmが用意されているが、それぞれスタンダード、ロング、ショートの、3サイズの銃身パーツを組み替えられるのだ。ショートバレルにダットサイトを装着したCQB仕様、ロングバレルに二脚とC-MAGを装着した機関銃仕様、ロングバレルに高倍率スコープを装着すれば狙撃銃仕様と、あらゆる条件に対応が可能である。もちろん基本となるレシーバーやボルト等は共通である為、同時に生産性も確保されている。
なお、トリガーやマガジンキャッチの操作系統はM16系統と共通化され、M16系からの移行を行いやすい配慮がされている。SCAR-LのマガジンもM16と共通である。
難点としては、がっちりした構造のために重量がやや重めな点が挙げられる。そしてこの構造のために、万一ジャム(多重装弾)が発生してしまうと、いちいち工具を使って銃を分解しないとならない(M16系なら工具なしでリカバリー可能)。
更に排莢口上部に配置されたチャージングハンドルはボルトの動きと連動しており、発射すると前後にガコガコ動く。光学機器によっては干渉してしまうほか、このクリアランスを考慮せずに障害物で依託射撃を行った場合、ボルトが障害物に引っ掛かって動作不良に繋がってしまう。
その他、銃床の折り畳みロックボタン(プラ製)の強度が低い、マウントレイルに射撃時の熱が伝わりやすい、左利きの射手には頬当ての出っ張りが気になる、といった細かい欠点も報告されている。
現行型では、ハンドルとボルトを非連動化するオプションキットがリリースされたり、銃床ロック機構が強化されたりと、大体の難点は改善されている。しかしリリース当時においては、これらの細かい難点が米軍からの評価を下げる原因になってしまったようだ(後述)。
機種名一覧
また、SCAR装着を前提に開発されたオプション武器として「EGLMグレネードランチャー」が存在する。
米軍での試験運用は…
2003年の米国特殊作戦軍のトライアルに勝利し、2005年にSOCOMで試験運用が開始。SCAR-LとHはそれぞれ「Mk.16 Mod.0」「Mk.17 Mod.0」の名称で採用された。
2009年には600挺のMk.16が第75レンジャー部隊に配備されたが、翌年にはSOCOMが新規調達を停止し、2013年末に運用を終了した。以後はMk.17と狙撃用モデルのSCAR-H TPR「Mk.20 Mod.0 SSR」が運用されている。一応、海軍ではMk.16も引き続き運用されているようだが……。
こうなってしまった理由は「コストの割にM4から更新する明確な利点がない」という米軍のコメントが全てを表していると言えよう。いくら性能が良くても、現行のM16・M4にも豊富なカスタムパーツが登場しており、SCAR-Lで出来ることはM4でも大体出来るのである。おまけに当時のSCARは「M4の欠点は解消されているが、M4には無かった欠点がある」状態だった。M16により確立され尽くした米軍の武装システムを更新する理由もない。
一方、Mk.17が残されたのは「大は小を兼ねられる」ためである。コンバージョンキットを組み込めば「5.56mm仕様のSCAR-H」が出来上がる。これならわざわざMk.16を残さなくても、Mk.17を状況に応じて組み替えて運用すればコスト削減になるわけである。
その後のSCAR
最大の市場である米軍採用の開拓は振るわなかったとはいえ、米国の法執行機関では国境警備隊や議事堂警備隊に導入されていることが確認できる。更に民生用の「16s」と「17s」は大人気であり、一時は予約1年待ちという状態にもなっていた。全体としては良くはないが悪くもない、それなりのセールスを記録したと言っていいかもしれない。
他国軍向けのセールスも、FN社お膝元のベルギーを始め、フランスやペルー、リトアニア、セルビアなどで採用が決定し、初期のずっこけから鑑みれば順調に、堅調に推移している。コロンビアではギャングからドラムマガジン付きの16sが押収されたことすらあった。
また、優れたモジュラー機構とストックの構造は、開発時期が近く開発思想にも共通点が多いマグプル社のMASADAと並んで、後に開発された銃器にも少なからぬ影響を与えている。一例をあげれば豊和工業の20式小銃などは、外見からSCARの影響が強く見て取れる。
関連動画
関連項目
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- アサルトライフル
- ファブリックナショナル
- M16 / M4カービン
- HK416 - H&K社が開発したM4改修型。M4置換候補の一つであった。
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